とある怪異の泥田坊   作:Fヒカル

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銀行強盗

中華屋さてんの前には、特に変わり立てのない、至って普通の銀行があった。

 

その普通の銀行から、叫び声が聞こえたと同時に怒声が聞こえた。

 

何を言っているかは分からないが、いつの間にか警備員(アンチスキル)も居る事に気がついた。

 

銀行、叫び声、そして警備員。

 

ここまでこれば、外で起こっていることは簡単に導き出せる。

 

すなわち、

 

「銀行強盗、か....」

 

そう言って、浜面が水を啜っていると、扉が勢いよく開かれ、いつの間にか席を立っていた上条兄妹が表に出ていた。

 

「相変わらず、こういうことには敏感な兄妹だな...」

「浜っちはいかねぇーの?」

 

これまたいつの間にか横の席まで移動していた服部が、餡かけチャーハンを頬張りながら聞いてきた。

 

「そーいうお前こそ行かねえのか?」

「いやぁー、俺低能力者(レベル1)だよ?俺が行かなくても、あの兄妹で余裕でしょう」

「同感。俺もそう思う」

 

すぐ横で銀行強盗発生という異常事態にも関らず、呑気に飯を食べる浜面たち。

 

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ある日のことです。

 

明智智彦はお金が無くなったので、銀行に行きました。

 

するとそこで銀行強盗に会いました。

 

(なんッッだこれ!?なんでこんなことに!?なに友達に会いました、みたいな流れで銀行強盗にエンカウントしてんだよッ!)

 

少し小さめの銀行内では、それぞれ違う色の目だし帽を被った、THE銀行強盗という風貌の三人が金を詰めたり人質に拳銃を向けたりしていた。

 

「おいブルー。まだ金は詰め終わらないのか」

 

ブルーと呼ばれた、青色の目だし帽を被った男は、子供一人分ほど入りそうなバックに金を詰めながら答えた。

 

「あせんなってアザーブルー。まだ金はたんまりあるし、それに警備員も人質がいりゃ手出し出来ねえだろ」

 

アザーブルーと呼ばれた少し薄めの藍色の目だし帽を被った男は、人質に拳銃を向けながら、「しかしな...」と言葉を濁す。

 

「どうだ?エメナルブルー。警備員の様子」

「大丈夫。いまんとこ入ってくる様子は無い」

 

エメナルブルーと呼ばれた、濃い目の藍色の目だし帽を被った男は、小窓から外の警備員の様子を伺っていた。

 

(....全員青じゃねえかッッ!)

 

明智は、心の中でそう叫んだ。

 

(なんで全員青!?ややこしいわ!アザーブルーとかエメナルブルーとか聞いたこともねえ色使うなら別の色用意しろよ!)

 

全力で心の中で叫ぶ。声には死んでもだせないが、あくまでも心の中で叫んだ。

 

「おいエメラルブルー」

「エメナルな」

「そう、エメナルブルー」

(間違えてんじゃねえかッ!覚えられないんならそんな名前付けんな!ってか何、エメナルって。せめてアクアとかオーシャンにしろよッ!馬鹿かお前らッッ!」

 

心の中で、あくまでも心の中だから大丈夫。

 

「.......」

「.....え?」

 

そう思っていたら、銀行内にある視線を、全部独り占めしていた。

 

「.....あ!?」

 

そして、ようやく今自分がしたことに気づき、背筋が凍った。

 

そう、心の中だけだと思っていた叫び(ツッコミ)が、思わず声に出てしまっていたのだ。

 

しかも、丁度『馬鹿かお前らッッ!』の辺りが...

 

「...おい、今舐めた事行った奴ぁだれだ...」

 

ちょうど三人ともこちらを見てなかった事もあり、言ったのが明智だとはばれなかったようだ。

 

(よ、よかったぁぁぁ)

 

心の底から安堵する明智。

 

「....さっさと誰か吐かねえと殺すぞ」

 

ブルーのその言葉が聞こえた瞬間、ズザァッ、とモーゼの十戒のように人が横にどけ、ブルーに、明智までの道が出来た。

 

(うおおおおおおおおい!このやろおおおおおおおおお!)

 

明智がこの場の全員を呪う間も無く、ブルーが目の前まで来た。

 

「....てめえか?」

「いえっ、違います!これは、その、言葉のあやと言いますか...」

「テメエなんだな?」

「ハィィッ!」

 

ブルーの凄みに、思わず声が裏返った明智。

 

ブルーは、冷たい目つきで銃口を明智に向けた。

 

「....何か言い残すことは?」

「いやちょ、ちょっと待ってぇ!違うんです!これは、な、なんで皆さん青色なのかなぁ~と思っただけで...いやかっこいいですよ!?僕青色好きだなぁ!イカスなぁ!だから、その....すいませんっしたあああ!!」

 

明智の必死な説得(言い訳)を聞き、ブルーは、フッ、っと微笑むと...

 

「遺言はそれでいいんだな」

「待ってぇ!今の微笑みは何!?あっ、許してくれるな?と思っちまったじゃねえか!くそぉぉ!なんでこんな目に会うんだぁぁ!ツッコミで死ぬなんで嫌過ぎるぅぅ!」

 

そう叫ぶも、ブルーが銃を降ろすことは無かった。

 

慈悲も無く、銃口が明智の額に押し付けられ、ゆっくり引き金が...

 

ドゴンッ!

 

...引かれる前に、ブルーの後頭部にドロップキックが喰らわされた。

 

「.......へ?」

 

突然の出来事に、呆けてしまう明智。

 

ドロップキックを喰らわせたのは、信じられない事に一人の少女だった。

 

灰色のプリーツスカートに、半袖のブラウスにサマーセーターと言う服装をした、黒髪で短髪の少女だった。

 

「大丈夫ですか...?」

「へっ?...ああ、はい...」

 

何が起こっているか、さっぱり分からない明智だったが、取り合えずこう思った。

 

(か、可愛い...)

 

その少女はとても可愛かった。さっきまで命の危機だったことを忘れるほど。

 

「て、テメエ何者だ!?」

「まさか、風紀委員(ジャッチメント)....!」

 

そこで、明智と同じく、突然の事態に呆けていた銀行強盗達が、我を取り戻した。

 

「動くなッ!絶対に動くんじゃねえぞ!」

 

そう言って、少女に向けて拳銃を構えるアザーブルー。

 

刹那、少女の姿が消えた。

 

「なっ...どこ..ッ!?」

 

一瞬、驚いたアザーブルーだったが、横に気配を感じ、なんとか一瞬にして移動した少女の蹴りを防ぐ。

 

「チッ、空間移動(テレポーター)か....」

 

少女の能力を見破り、拳銃を構えようとしたが、手には何も無いことに気づく。

 

「なっ..!」

 

見ると、少女の小さな掌に、厳つい拳銃が握られていた。

 

「ッ!...こっのおお!」

 

重火器を使えなくなったアザーブルーは能力を発動させた。

 

アザーブルーの周りから、真っ赤な炎が出現し、一瞬にして部屋が熱気に覆われる。

 

発火能力者(パイロキネシスト)....!!」

「死ねえええええええッッ!」

 

明智が呟いたと同時に、炎が少女に襲い掛かった。

 

当たったら一たまりも無い、灼熱の炎。

 

対する少女は、避けるわけでもなく、攻撃を仕掛けるわけでもなく、じっと固まっていた。

 

「あ、あぶないっ!」

 

炎が少女に当たる瞬間、思わずそう叫んだが、そこで奇妙なことが起こった。

 

「ほい」

 

そんなマヌケな声を出しながら、その炎を左手で触れると、一瞬にして、炎が打ち消された。

 

「な....」

 

あまりのことに驚いたが、それは銀行強盗も同じだったようだ。

 

炎が、打ち消された。否、どっちかと言うと、少女の左手に吸い込まれた、という感じがした。

 

あまりの事態に、思考が追いつかなく明智。

 

「んで...ほいッっしょッ!」

 

そして、こんどは右手が赤色に光ったかと思うと、アザーブルーの使った炎と同じような炎が放たれた。

 

「なぁ......!」

 

何!、という間もなく、アザーブルーは炎に襲われた。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁッ!」

 

悶え苦しむアザーブルー。

 

自身が発火能力者という事もあってか、そこまで重症にはなってないようだが、自分が放ったはずの炎がまさか返ってくるとは思わなかったようで、驚きのあまりなにもできないでいた。

 

「お前....その服、その能力...」

 

今の一連の流れを見ていた、エメナルブルーは、恐る恐る口を開く。

 

「まさか、超能力者(レベル5)第二位の幻想喰い(イマジンイーター)かッ!?」

 

幻想喰い。

 

名門校、常盤台のエースであり、能力開発が発展した学園都市の中でも、六人しかいない超能力者(レベル5)の第二位。

 

その能力は、左手で相手の能力を喰い、右手で発動する。

 

そんな反則(チート)な能力を持った女子中学生。

 

それが幻想喰い(イマジンイーター)

 

「くそッ!こんな奴が居るなんて聞いてねえぞ!」

 

エメナルブルーは、そう喚き立てるが、幻想喰い、もとい上条麻琴は無視してたった今吸収した発火能力で、手に炎を生み出す。

 

「ッ!?」

 

手に握られた拳銃じゃ勝てないと察したエメナルブルーは、咄嗟に手を麻琴に向けた。

 

身構えた麻琴だったが、一向に何も起きない。

 

疑問に思ったが、次の瞬間、後ろから叫び声が聞こえた。

 

「動くんじゃねえ幻想喰い!そこの女の頭ぶち抜くぞッ!」

 

後ろを見ると、人質の一人だった女性が、苦しそうに立っており、銃口が女性に向けられた拳銃が横に浮いていた。

 

恐らくエメナルブルーは念動使い(サイコキネシスト)だったらしい。

 

「くッ、卑怯だぞ!」

 

思わずそう叫んぶ明智。

 

「うるせぇ!銀行強盗やってる時点で卑怯もクソもねぇだろ!」

 

「確かにッ!」と思ってしまう明智。

 

売れないコントみたいなことをやって変な感じだが、状況はかなり深刻だ。

 

麻琴も、動きずらそうである。

 

自分が助けにならないかと考えたが、今のでこちらにも注目が向いてしまっている。

 

(くそッ!あんなこと言わなければ良かった)

 

地味に状況を悪くしてしまったことに、内心舌打ちをしながらなんとかならないか思案する。

 

「ぜってぇに動くんじゃあねえぞ!少しでも動いたらっ..!?」

 

とここで、エメナルブルーが、急に言葉を切った。

 

何かと思った瞬間、ばたりと倒れてしまった。

 

「な....!?」

 

まだ口は動くようだが、体は痺れたように痙攣している。

 

よく見ると、首筋に針のようなものが刺さっていた。

 

「....動いたら....どうするんだ?俺の妹に」

 

そんな声が聞こえたと思ったら、先程エメナルブルーがいた小窓に、どこかの学校の制服をきた、茶髪でストレートパーマの少年が、いつの間にか座っていた。

 

「お、前、は...!?」

「まだ喋れんのか」

「あぐぁッ!」

 

少年の手もとに、青白い火花が散ったと思ったら、エメナルブルーがスタンガンを受けたように痙攣し、今度こそ意識を落とした。

 

「....冬樹、様」

 

彼を見ていた銀行内で、そんな声が聞こえた。

 

それを初めとし、次々と黄色い声が上がる。

 

「冬樹様だ!」

「まさかこんな所でお会いできるなんて...!」

「今日は付いてる!」

 

所々で聞こえる、冬樹という名に、明智も聞き覚えがあった。

 

上条冬樹。

 

上条麻琴の兄であり、彼もまた、超能力者(レベル5)の第4位だった。

 

別名”衝撃電波(ショックウェーブ)”。

 

学園都市一の電撃使い(エレクトルマスター)である。

 

「麻琴!怪我はないか?」

「だいじょーぶ、問題ないよ」

 

ものの数分で銀行強盗を制圧した兄妹が、呑気に会話しているのを見て、助かったことを実感した明智であった。

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