暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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2話 お話の時間

 

「あ、あの……さっきはほんとに、ありがとございまっ、ってわ、わ!」

 

「ちょ……っ、!」

 

「わ、大丈夫!?これ使って!……ってカルマ君も笑ってないで手伝いなよ」

 

「ごめんごめん……っ、くくっ、慌てすぎ……っ!!」

 

「あ、あああ……オレンジポテトになっちゃった……!」

 

「〜〜〜っ〜っ」

 

「カルマ君!」

 

 路地裏で助けてもらった後、緊張してたのかなんなのか腰を抜かして立ち上がれなくなった私は赤髪の彼……カルマくんに、その……俗にいう、お、お姫様抱っこというもので、問答無用で運ばれました。当然すぐに降りるって断ったし、暴れてでも下りようとしたんですよ?はじめましての人にいきなりそんなことされて普通でいられる人なんていないと思う……んだけど、カルマくんに「暴れたら投げ捨てる」と言われたので、しかたなかったんです。はい。投げ捨てられるよりは大人しく捕まってるしかないでしょう?……いいですか?「落とされる」、じゃないんです。「投げ捨てる」、なんです。ちょっと怖かった……。

 水色の彼、渚くんは、そんなカルマくんの腕の中で慌てる私を見ても苦笑いでついてくるだけで……ここに私の味方はいないのだと早々に察しました。一応表通りへ出る前には身体の震えも消えて下ろしてもらえたけど……人には見られていなくても、恥ずかしいものは恥ずかしかったです。あ、落としていた私の荷物は渚くんが拾っておいてくれたみたいで、カルマくんに下ろしてもらってから受け取りました。

 

 そして現在、せっかくだからと二人に誘われて、某ファストフード店へ入りそれぞれ注文し、席についたところ。私はオレンジジュースとポテト、渚くんはコーラとハンバーガー、カルマくんはイチゴ煮オレシェイクとハンバーガーにポテト……別に相談したわけじゃないけど注文する順番にだんだん種類が増えてるのがなんだかおもしろい。テーブル席について壁側に私が一人、その正面に渚くんとカルマくんが並んで座りました。

 改めてお礼しなくちゃ、と思った私が勢いよく立ち上がりながら頭を下げたせいでやらかしたのが冒頭のやりとり……トレーの上のオレンジジュースを見事にひっくり返しました、という……ポテトはひっくり返したオレンジジュースで水没するし、カルマくんは声にならない声で笑い転げてるし……前言撤回します。渚くん、さっきは味方じゃないとか言ってごめんなさい……助けてくれるあなたが今、この場で唯一の味方です……!

 

「うぅ、ごめんなさい……いつもは家でしかこんなドジしないのに…」

 

「むしろ家ではするの!?」

 

「あははははっ、は、腹痛い……っ!!」

 

 置いてあった台拭きとか紙ナフキンとかで一緒に拭いてくれる渚くんと、ついに堪えられなくなったのか笑い声を上げながらも手伝ってくれたカルマくんのおかげで、被害は奇跡的に私のトレーの上だけでおさまった。なんとかこぼしたジュースを片付けたところで、新しいジュースを買うのももったいないからとセルフの水をとってきてくれた渚くんはすごく優しい。ありがたくもらうことにして、残る水没ポテトはもったいないから食べるしかない……オレンジ味のふにゃふにゃ……いや、水没したからべちゃべちゃなポテト……。その頃にはカルマくんの笑いもなんとか落ち着いたみたいで、笑いすぎたせいで出た涙を拭っていた。

 

「あー……、笑った。おもしろいね、アミサちゃん」

 

「……笑いすぎです……」

 

「くくっ、ごめんって」

 

「はは……そういえば、真尾さんは何組なの?会ったことないから同じクラスじゃ無いだろうし……あれ、そもそも1年生だよね?勝手にタメ口で話しちゃってたけどまさか年上とか、」

 

「あ、えと、アミサでいいよ、渚くん。カルマくんもいつの間にかそう呼んでくれてるし……。クラス……えと、私は1年B組です」

 

「あ、ありがと……。そっか、僕とカルマ君はD組だから、クラスは違うけど同じ学年だね」

 

「……そっか。2人とも一緒のクラスなんだ……いいなぁ」

 

 笑われ過ぎて落ち込みかけている私を見てか、渚くんは話題を変えてくれた。2人は同じクラス……道理で仲がいいはずだ。椚ヶ丘中学の2年生までのクラス分けはA組だけが特進クラスで、あとのB組~D組は横並びだったはず……だからといって、クラス内で学力差別とかがないわけじゃないのだけど。そんな環境の中でも拗れることなく2人は仲が良さそうで、誰とも性格的に合わなくて全然馴染めない私としては、とても羨ましい。

 第一印象ではいろいろ正反対の二人だって思っちゃったけど、案外それがいいのかもしれない。喧嘩が強くて勝手気ままで、それでいて真っ直ぐなカルマくんに、穏やかで警戒心を与えない、小動物のような渚くんの組み合わせ……まだ出会って少ししか経ってない私のイメージでしかないけど、とにかく、そんな仲のいい2人が羨ましかった。

 そんなことを考えていれば、ニヤリと笑ってゴソゴソとポケットから何かを取り出したカルマくんと私の目が合い、……ってあれ、なんだろう……今、悪魔の笑みを見た気がする……寒気が……

 

「B組っていってもさぁ、アミサちゃんはA組に入れるくらいの学力じゃん?」

 

「わ、私はそんなこと……」

 

「国語88、英語95、数学97、理科60、社会84。合計424点……理科が足引っ張ってる感じ?」

 

「な、なんで……私のテスト結果を知って……あぁっ!?」

 

 カルマくんが取り出したのは、1枚の紙……今日返却されたばかりの私のテスト結果だった。最初は何を取り出したのかわからなくて驚いたのだけど、慌ててカバンの中を確かめてみたら……無い!!不良に追いかけられる前までは手に持っていたからどこかで落としたのだろうとは思ってたけど、まさかカルマくんが手に入れていたとは……それ、個人情報!

 慌てて立ち上がって取り返そうと手を伸ばしたけれど、読んでいたかのようにカルマくんまで立ち上がって、しかも手を上にあげて結果用紙から遠ざけられてしまったら……机を挟んでるし、私はチビなので届くわけがない。ちょっとの間粘ったけど返してくれそうにないし諦めて椅子に座り直せばカルマくんの隣に座ってる渚くんまで私たちの攻防には呆れながらも、しっかり結果を覗き込んでて……うぅ、カルマくんの頭に悪魔の角が見えるよぉ……

 

「うわぁ、アミサちゃん、高得点ばっかり。勉強頑張ったんでしょ?」

 

「うぅ……、て、え、勉強、ですか……?たしかにお家では勉強してるけど……どう、なのかな……私、あんまりあの学校の中ではやる気になれなくて……勉強頑張ってるって言ってもいいのかな……」

 

「へ?」

 

「なんで?」

 

「あ、えっと、が、頑張ってる二人を相手に言うことじゃないんだけど……私、あんまり好きになれないの、中学校(あそこ)。三年生になってからのことだからまだ考えなくていいと思うんだけどE組()へ落ちないために、ってみんな、勉強ばかりしてて……。それは、その……いいことのはず、なんだけど……自分より下の成績の人は見下して、上の人には媚を売って……って、だから……その……あの場所にいるみんなが人のことを人として見ていない気がして……。私は、もっと自由になりたい。だから……成績はそれについてくる形でいいのにな、って……」

 

 話しながらだんだんと小さくなっていく私の声。みんなが当たり前のように受け入れてる風習だから、誰にも言えず、聞いてもらえることがなかった私の意思を、こうやって人に話すのは随分久しぶりなことだった。それでもこれは、私の気持ちなだけであって、2人は違うかもしれない。もちろん私自身これが正しいことを言っているのかも分からないから、しどろもどろな上、自信がもてないまま伝えてしまった。だって、こんなことを考えるのは椚ヶ丘中学校(あそこ)に通う生徒としてはおかしな事、になるんでしょう?まだ周りとほぼ関わりを絶っているからこそ誰にも目をつけられていないけど、このまま進級していけば私の考え方は異質な存在になってしまうんだろうってことは、なんとなく分かってる。……それに、絶対同じ椚ヶ丘中学校の生徒である2人にも、失礼なことを言っていると思うから。

 唖然とした表情をした正面に座る二人の顔を見て、やってしまったと思った。同じ学校に通ってるのにその学校の悪口を言ってしまうだなんて。だから慌てて、「入学して半年で何言ってるんだって感じだけどね」、と2人に笑ってみせた。……ほんと、何言ってるんだろう、私。みんなにとってはそれが【当たり前】なんだから、私がおかしいだけなのに。こんな私みたいな異分子なんて頑張ってる人には迷惑でしかないのに。

 

「……んー、そーかな?俺はいいと思うけどね」

 

「……え」

 

「だって俺、授業も行事もしょっちゅうサボってるもん。分かってるものをやる必要なくね?先生は俺が正しいっていつも言ってるからさ……自分が正しいと思ったことをして何がいけないの?上手に力抜いて、やりたいことはやればいいんじゃね?」

 

「サボりはいいことじゃないと思うけどね……でも、僕も悪いものじゃないと思うよ、アミサちゃんの考え方。自由に、勝手気ままでもいいんじゃないかな?僕はそういうの、憧れるから」

 

 カルマくんに続いて、渚くんにも肯定してもらえた……こんなの、私だけだと思っていたのに。……そう、なのかな。自分の思う通りにしていても、いいのかな。怒られないのかな……?

 

「それよりさー、ずっと気になってたことがあんだよね。……アミサちゃん、髪長くね?」

 

「だいぶ違う話に飛んだよねカルマ君!?」

 

「えと……渚くんも、長いよ?」

 

「ぼ、僕は……その、家の方針だから……っていうか、アミサちゃんのはそれ以上でしょ!」

 

 ………でも、

 

「……私あんまり、自信もてなくて……髪が長ければ隠れられるのかなって、……お姉ちゃんみたいに堂々とできたらな……」

 

「へー、お姉さんがいるんだね」

 

「あ、えと、うん、……自慢の、お姉ちゃん。すごく綺麗でとても強くて、……私の将来の目標なの」

 

 私には、もう歩いていける道があるから……意味を、価値を見いだせないままだけど、それが運命で、私の居場所だから、これでいいの。私の意思が介在しなくったって、それしか、ないんだから……だって、私は……、

 

「ふーん……」

 

「聞いといて、全然興味無さそうだね……カルマ君」

 

「だって……ねぇ?」

 

 ──あんな全部を諦めたような顔してるのを見せられたら、さ

 そんなカルマくんの呟きと渚くんの会話なんて、俯いていた私には、長い髪に全てが隠れていて、全く気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 渚くんとカルマくんに出会った日の次の日。今日も〝いつも〟と変わらない日常なんだろう。上辺だけのクラスメイトとお話しして、進学校らしくどんどん先に進んでいく授業を受けて、部活のある人は部活に出て、後の空いた時間は勉強、勉強、勉強……。

 息がつまる午前中を過ごして、やってきたお昼の休憩時間。この時間も当たり前のように勉強に励む人がいる。それを見たくない私は視界に入れなくてもいい場所にご飯を食べに行こうと、4時間目の授業道具を急いで片付けていく。お昼休みが終われば、また難しい授業が始まる。中高一貫校の椚ヶ丘中学校は、どんどん授業が進んでいく……とくに、国語と英語、数学はとても進むのが早い。それに備えて休息を取らなくては、私は絶対に身が持たない。そんな気持ちでいつも通り周りを見ていなかった。

 

 ……でも、私の知っている〝いつも〟はここまでで。

 

 ──────ガラッ

 

「アミサちゃん、いる〜?」

 

「っ!?」

 

 なんで、ここにいるの?

 

「……か、カルマ、くん?」

 

「お、いたいた」

 

「僕もいるよ」

 

「……渚くんも……どうしたの?急にB組(ここ)に来て…」

 

 昼休みに入っていきなりB組の扉を開けたのは昨日の2人。周りでは他クラスの2人が、昨日まで全く関わりがなかった、いつも1人で過ごしていた私を探して近付いて来るのを見て、何やらひそひそと話している。突然来た理由なんて私にわかるはずもなく、なんだろうって思いながら首をかしげていると、2人で顔を見合わせてにっこり笑ったかと思えば、私に向かって何かを突き出した。

 

「一緒に昼飯食おうと思って!」

「一緒にご飯食べようと思って!」

 

 カルマくんは、菓子パンとか紙パックのジュースとかが入ったコンビニ袋。渚くんは、お弁当の包みと水筒。

 

 ……お姉ちゃん。もしかしたら私、生まれて初めての、同い年のお友達ができたかも知れません





「へぇ、弁当うまそーじゃん。手作り?」

「私、ほとんど一人暮らしみたいなものだから……楽しいよ、作るの」

「すごいね」

「……あの、」

「なーに?」

「どうしたの?」

「……その、急に来たから、ビックリしちゃって……誘ってもらってなんだけど、このお昼の時間ってきっと、いつも、2人の時間なんでしょ?……その、私、迷惑じゃ……」

「……ふふ、気にしないで。それに言い出しっぺはカルマくんだよ。珍しいどころか僕だって初めて見たから」

「え……?」

「ちょ、渚くん、それ言わないでよ」



++++++++++++++++++++



別名、初めてのお友達ができる時間(長い)

オリ主は気を張り続けていれば外見優等生ですが、気が抜ける家では物を落としたりぶつかったり転んだりとドジを踏みまくっています。

あとクロスオーバー先の暗殺者は一子相伝が公式ですがここでは姉妹二人ともに技術が継がれています。
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