UA125000ありがとうございます!
インターミッション2話目です!
E組教室組と、裏山組でそれぞれ知らないんだけど!?と後でなりそうな部分は、インターミッション後に緩和かなにかで補完しようと思います。
ここらで、ちょこちょこ描写はしてきたけど小説内では使ってこなかったネタを出しますね!
今回もよろしくお願いします!
渚side
そんなに長い話を聞いていた感覚はない……だけどティオさんが口を閉じた時、僕等の教室には誰もが、殺せんせーですら何も言葉を発せない沈黙が広がっていた。リーシャさんが、ティオさんが、それぞれ知る限りの情報を明かして、なぜアミサちゃん1人だけで日本に留学させたのかを教えてくれたけど……毎日楽しそうに過ごしているあのアミサちゃんに、そんな
話しているリーシャさん達の表情から明るい話だとは思ってなかったけど、想像以上に彼女は自分のことを顧みることが出来ない子だったみたいだ。今の話を聞いて、これまでクラスメイトとして付き合ってきてなんとなく理解していたつもりだった部分以外に、すぐには受け入れきれない部分もあるけど、とりあえず……
「そういえば……あの子、死神事件の時、『壊れてる』『調整されてる』ってワードが精神汚染のきっかけじゃなかった……?」
「あの、アミサちゃんが、壊れるっていうのは……」
「……本当に何の力のない子だったなら、きっと自分の無力さに落ち込むだけで済んだんです。でもあの子には、様々なことをこなしてしまうだけの能力があった。ラインの長さに反してEPが低いという問題があるとはいえ、最高位の
アーツ適正でいうなら《水》属性縛りとはいえ同じ一直線のラインを持つティオさんには霞んでしまう。身体能力でいうならロイドさんやランディさん、そして幼い頃から一緒に育ってきた姉であるリーシャさん。頭の良さに関してはノエルさんの専門的な知識、ロイドさんやエリィさんの柔軟な思考・判断、ワジさんの賢さや世渡り術には及ばないと自分の能力に線引きをしてしまっていたらしい。
リーシャさん達が言うには様々な分野で抜きん出た才能をもっているアミサちゃんだけど、僕等はそれを垣間見ていたにもかかわらず、あまり実感がわかないでいた。頭がいいのはテストの結果でわかるし、運動できるのも、情報収集力が高いのもわかる。でも、そこまで異次元の存在とも思えなくて……近くにカルマ君っていう同レベルの天才がいるから目立たないのかもしれない。
でも、それだけじゃなくてアミサちゃんが自分の力を理解できず、自己評価が低いからこそ表に出すこともしなかったから、余計自然と僕等のレベルに溶け込んでいたんだろう。
アミサちゃんの自己評価の低さや、内側に入れた人が傷つくことを嫌う性格と、なまじ大抵のことが出来てしまうからこその自己犠牲は、ここから来ているんじゃないかとリーシャさんたちは考えているんだそうだ。
「もし、あのまま私達の近くに置いていたら、アミーシャは遅かれ早かれ自分から危険に飛び込んでいたでしょう。私達を巻き込まないために、誰にも言うことなく……私達の代わりに危険を引き受けるために」
「……俺等と一緒にいた時も、似たようなことが何度もありました。俺等が気付いた時には既に危ないことに首を突っ込んだ後とか、隠れて無理した後だった、なんて事は少なくなくて……」
「だけど何度も繰り返しみんなで、1人で引き受けなくていいんだって言い続けたら、ちょっとは相談してくれるようになったよね?」
「むしろ1人でやろうとしてたけど、真尾が俺等の言葉を思い出して躊躇っているうちに見つけれたって事も増えてきたよな」
「……そうなんですね」
きっと、アミサちゃんはE組に来てからも、同じだったんだろう。他人が傷つくことを嫌い、傷つくくらいならと自分を犠牲にして飛び出していく……そんな姿は幾度となく見てきたから。
E組に落ちて間もない頃、僕とカルマ君とがアミサちゃんと一緒に過ごしている時、彼女から日本に来た理由を聞いたことがある。確か……『私はただの留学で来たんじゃない。クロスベルから……これから荒れる魔都から逃がされたんだと思う。誰よりも幼かった私を巻き込まないために……危険から遠ざけるために』ってちゃんと言ってた。
あの時、当事者の家族なのになんの力にもなれないのは悔しいけど、なんで遠ざけられていたのかはしっかり理解してるから、って悲しそうに笑ってたけど……きっと、
「……皆さんと過ごすアミーシャは、少しずつですけど自分というものを自覚しつつあると思うんです。周りに全然関心を向けなかったあの子が、皆さんと何をしたのかとても楽しそうに話してくれるんです。……きっと、これからも助けてもらうことになると思います……あの子がこっちで生きていくのか、私達と向こうに帰るのかはまだ分かりませんが……あと最低でも半年、アミーシャを、妹を、よろしくお願いします」
「……はい!」
「もちろんです!」
「コロセンセーさん、カラスマ先生も……あの子は色々特殊な立場ですが、生徒として見守ってきてくれてありがとうございます。よろしくお願いします」
「はい、もちろんです」
「大事な生徒ですから、責任をもって預かります」
ふと、今の今までずっと口を挟まずに聞いていた殺せんせーはどう感じているのかが気になってそちらを見てみれば、ほっこりと顔を染めて何度も頷いていた。
そういえば、随分前のことだけど殺せんせーはアミサちゃんに言っていた……やっと人に頼ることが出来ましたね、って。確か、アルカンシェルへ行ったあとのことだったから……もしかしたら、あの帰り際にリーシャさんからこの事を聞いていたのかもしれないなぁ……
と、この辺りで途中から僕等の話よりE組の教室内を興味深そうに見始めていた……確かワジさん、だったかな。黄緑の髪の男の人がくふくふと笑いだした。
「話が一段落したところで……いいかな?さっきから僕、後ろの画面のお嬢さんがチラチラと見せてくれてる写真がすごく気になるんだけど?」
「ワジさん、キョロキョロしてると思ったら……」
「画面の?……って律!?」
「あ、そういえば写真のまとめ頼んでたんだった!」
『皆さん、アミサさんの写真とか動画をお見せするって言ってましたけど、なかなか呼ばれませんでしたから……区切りが着いてそうですし、そろそろお見せしてもいいのかなと思いまして……』
「ごめんごめん、待たせちゃったね……えっと皆さん、こちらの律が今日までのE組での写真や動画を集めてくれてるのでよければ……」
『個人のスマホから有志で提供いただいた写真や動画などもまとめてあります!』
「お、マジか!」
「見たいです、ぜひ!」
ワジさんの言葉に振り返ると、律がひょこひょこと教室の後方で何枚かの写真を表示させてアピールしてた。そういえば殺せんせー達にリーシャさんが会いたがってるって伝えた時にお願いしてくれてる人がいたな……リーシャさんたちの話が衝撃的すぎてすっかり忘れてたや。
せっかくだからみんなで鑑賞会しようといつぞやの、一学期末テストの後みたいに、クロスベル御一行に前列へ入ってもらいつつ律のモニター前へみんなで集合する。
「うわ、この写真撮ったの誰だよ!カルマと渚の後ろから出てこない真尾とか懐かしすぎる……ほぼ髪の毛しか写ってないぞ」
「この頃は顔が写ったものは貴重だったよねぇ……」
「女子会やった時の写真だー!この時まだみんな苗字呼びだったんですよ!」
「直前にカルマ君に珍しく怒られてたから目の周り真っ赤だね」
「何やったんですか?」
「アミサちゃんが苦手な大人の人に対して私達のためにって1人で直談判しにいってストレス性の過呼吸起こしました……で、それをカルマ君が知らないところでやったので『助けられないところで無理するな』って」
「そう思うと本トカルマって自覚する前から真尾のこと大好きだよなぁ……」
「あ、こっちって修学旅行の時じゃない?ほら、4班で集合して旅館の浴衣着ての写真だし!」
「お友達に囲まれてアミーシャちゃん、楽しそうですね!すごく自然な笑顔ですし!」
「本ト……いいお友達に恵まれたんですね。あっちでは絶対見れないから嬉しいです」
「これ前原との兄妹コーデじゃんこれ。うわ別人……というか前原そっくり」
「ウィッグと軽くメイクしただけなんだけどなぁ」
「この時は仕草というか行動まんま前原をコピーしてたよな。なぁ、諸々の戦犯?」
「その節は大変お世話になりました……」
「あっはっはっ!渚とアミサのリゾート姉妹コーデ……っ」
「ちょっとなんで僕の女装まで公開されてるの!?」
「え、お前女じゃなかったのか!?」
「ランディさん!?僕ズボン履いてますよね!?」
「女子の浴衣大集合……岡島仕事してんなぁ……」
「こっち撮ったのも俺だな!」
「なんだよこの輪投げ……すげぇ真剣な顔してるな」
一学期の頃のものすごく懐かしい写真がたくさんある……今では考えられないくらいE組ですら怖がってた時期もあれば、クラスメイトの間で自然な笑顔を浮かべている幸せそうな写真、真剣な表情で毎日を過ごしている写真もある。
大半はみんなが自分のスマホで撮ったものだけど、ちょこちょこ混ざってるプロ顔負けな写真は、ほとんど岡島君が撮ってそうだ。なんていうか日常の一部を切り抜いたっていうより、普通なら残せないような瞬間を激写してるっていうか……そんな魅力を感じる写真達。すぐにエロに持ってこうとする彼だけど、こういう特技があるから侮れないよね。
「……ねぇ、みんな。カルマか渚が……まあほぼカルマなんだけど、アミサと一緒に写ってる写真撮りすぎじゃない?」
「だって真尾ってたいてい2人と一緒にいるんだもんよ、必然的にそうなるって!」
『カルマさんと一緒に写ってる写真でしたらこれとかどうです?この時はまだお付き合いする前ですよね!』
確かに僕等とツーショット、もしくは3人でいる写真がたくさんある。というか、女子だけの写真以外にはほぼどっちかが必ず写りこんでるレベルでたくさんある。僕含めて多分カルマ君とアミサちゃんも慣れてるのもあって茅野とか杉野とか4班メンバーと一緒にいると居心地いいし楽なんだよね……って気付けば集まってることよくあるからなぁ……
そんなことを話してれば、カルマ君との写真の話題になるのも必然でそれに乗っかった律がひょいっと持ち出してきたのは……
「「「これ撮ったの岡島だろ」」」
「よく撮れてるだろ!?プールでのカルマ赤面事件!!」
「な、なにこれ、アミーシャが自分で乗ったのかい?」
「そうですそうです、プールに向かう途中の山道でカルマ君に頭から体重かけられて暑かったし重かったからってやり返したんですよ。『悔しければ俺より大きくなれ』って言ったカルマ君の自業自得なんですけど、好きな子だから落とすわけにないし、だからといってこの格好で押し付けられたらっていう。めちゃくちゃ焦ってました」
「アミーシャちゃん……;これはさすがに……」
「カルマ君がかわいそうね……」
「異性との距離感を教えなかった私達も悪いですね……」
「僕達もロイド筆頭に可愛がっちゃったからね……ダメだと思わなかったんだろう」
「いや、男なら喜ぶべきだろこんな状況めったにねーぞ!?」
「ランディさんは黙っててください」
「あの赤髪の男性、岡島と前原みたいな人だね」
「……ランディさん、連絡先交換できたりしませんか!?」
「時間のいい時語りましょう!」
「おう、いいぞー!リーシャとアミ姫ができてんなら導力器と繋げられるんだろ、いっちょやってみっか!」
「あぁ……なんか波長があっちゃった……」
「これか、お前らが言ってた『ねえさん天然炸裂の結果カルマをプールに沈めた事件』って」
「誰だイトナに説明した奴」
ものすごく懐かしいプールでの写真……そういえば岡島君、この時カメラ持ち込んで撮りまくってたね……カルマ君の頭の上に乗り上げて、図らず胸を頭に押し付けることになっちゃってるのに気づかないアミサちゃんの写真。殺せんせーに没収される前にこんなツーショット撮ってたんだ。
僕達からしたら懐かしいものから最近のものまで振り返って楽しんでたけど、リーシャさん達からしたら会えなかった間のアミサちゃんの成長記録のような……カルマ君とアミサちゃんの交際記録を暴露されてるようなこれを見て、愛しそうな目を向けている。ホント、会えない間も愛されてたんだなぁ彼女は。
僕等は盛りあがっていたから、教室の外に意識を向けてる人なんて当然誰もいなくて……
───ガラッ
「たっだいまーっっ!」
「キーア、走ったら危ないって!ここ意外とささくれだってるんだから!ほらそっちの手貸して……」
勢いよく開けられた扉から黄緑色の塊と赤髪の人物が飛び込んできた。外からの足音、全然気づかなかった……キーアちゃんが勢いよく開いて入ってきて、後ろには体勢を崩しかけたカルマ君が続く……よく見てみると、キーアちゃんがカルマ君の手を引っ張ってきたみたいだ。
カルマ君はキーアちゃんに対して地味にお兄さんらしいことをしてあげてたみたいで、今も扉を開けたところでキーアちゃんが手を怪我してないか見てあげてる。……本ト、イタズラとか喧嘩してない時とか面倒くさがらなければちゃんと優しいんだよね、カルマ君って。全部それで損してる気がするよ……
「ん?みんななにやってんの?」
「わぁ、写真だー!!プール?みんなで行ったミシュラムのビーチみたいだねーっ!」
「へ、プール……?なッ!?!?」
「あ、おかえりカルマ君。……あ」
「「「あ、タイミング……」」」
「……ばっ、り、律!?!な、なんでそんな写真出してるんだよ消してッッッ!!!てか写真提供者絶対岡島だろこれ!!」
「やっべ!!」
「カルマ真っ赤だねぇ、アミーシャがギューってしてくれて嬉しかったの?」
「アミサちゃんと同じような思考の子だ……説明していいのこれ!?」
『な、なら渚さんと一緒に撮ったこっちならどうですッッ!?』
「ハァッ!?!?渚君!?!」
「律、慌てて変えてもそれも律に頼まれて無断で撮ったやつだから!!それより待ってカルマ君、僕のは不可抗力だしなんなら岡島君も起こす前に1枚撮ってたはずでしょ?!」
「しょーがないだろ、俺が撮った寝顔若干ブレてたんだから提供するのはプライドがだな!!」
「そういう問題じゃないんだって!というか僕のスマホにもうデータないんだから後生大事にとってた律か殺せんせーにキレてよ!!」
キーアちゃんっていう小さい子が興味をもっちゃったことに慌てたのかテンパったのか、律が次に表示させたのは、夏休みのホテル潜入から帰ってきたヘリコプターの中で、穏やかに眠ってるカルマ君と、その彼に膝枕されて眠っているアミサちゃんの写真。月明かりに照らされてどこか幻想的にも見えるこれ……殺せんせーが欲しいって言って、律が僕に依頼してきて僕のスマホで撮った写真だ。
「そもそもなんでいない間に暴露会始まってんだよッアミーシャだけくり抜いて見せりゃいいじゃん!」
「あんた含めての名物カップルなんだから、保護者にこそ見せなきゃでしょ?」
「……いやいない間に暴露大会って今更だけど、これが普段お前含めみんなが真尾にやってる事だからな?」
「俺みたいな野郎なんて出さなくていいんだよッ」
「私達からしたらアミーシャが彼氏君とどう過ごしてるか分かるから嬉しいですよね?」
「はい、私達の知らない姿ですし、2人ともかわいいです」
「だよなぁ、心底楽しそうだし、お前が随分アミ姫の天然鈍感行動に苦労させられてんだってよーく分かったわ」
「どの写真に写りこんでるキミも、アミーシャのことしか見てないね。……ふふ、妹分を愛でてる僕達からしても妬けちゃうなぁ」
「……~~~ッ」
「……えと……みんな、大騒ぎだね……?」
「俺達がいない間に何があったんだ……?」
カルマ君が言い返すに言い返せなくなってきた辺りで、後ろから穏やかに入ってきたのはアミサちゃんと、茶髪の男の人……ロイドさん、だったかな。2人とも教室に入ってくるなりみんながギャーギャー騒いでるからキョトンとしてる。
「あ、これもしかして……」
「……そーだよ、潜入終わりの時の写真だって……」
「……私、気づいたらお部屋だったからこうやって帰ってきてたんだ……えへへ、カルマ、ちゃんと連れて帰ってくれてありがとね」
「……………………許すしかないじゃん、もぉ……」
「なんか怒ってたの?」
「もう怒れなくなったからいいんだよ……」
「そう……?ふふ、」
ロイドさんを連れて律の表示する写真の近くまで来たアミサちゃんからしたら、これは知らない出来事。だから照れることも恥ずかしがることもせず、むしろ前後の流れを知らないままにカルマ君へお礼を伝えてる。
カルマ君からしたら寝顔を見られたくなかったか何かでまだ怒りたかったんだろうけど、何も知らないアミサちゃんが嬉しそうにしてるのをみたら、もう写真を提供したみんなのことを怒れないんだろう。アミサちゃんを捕まえてぐりぐりと頭を押付けながら抱きしめてる……あの、それこそみんなの前だけど……ああ身内認定してるからいいのか。アミサちゃんはアミサちゃんでよく分からないまま抱きしめられた腕の中から手を伸ばしてカルマ君の頭を撫でてあげてるし……
「あの、律さん……これらの写真後で送ってくれます?妹の様子ですし、あとから見返したくて、……あ、あと遅れてきて見れてないロイドさんとイリアさん達にも見せてあげなくちゃ」
『分かりました!』
「ちょっとリーシャさん!?!?!?」
リーシャさん;
◆
渚side
「さて、お互いの話し合いは終わったみたいだし……リーシャ」
「はい。……えっと、カラスマさんという方は……」
「……俺だが。……!君がもしや……」
いろいろあったけど、再度自分の席に着いた僕等を見たあと、リーシャさんがアミサちゃんの持つ
「……私が当代です。妹は影なので……遅くなりましたが、日本政府からの要請を受けてるので事情を知っています。安心してください」
「
「十分だ、俺が保証しよう……そうか。今日来たのは真尾さんに会うためだけでなく、生徒達のためでもあったということか」
「はい」
烏間先生と彼等だけで話している内容……必要以外の言葉が全部省かれてて何を話してるのか全くわからないんだけど、僕等に関係あることなのかな。E組生徒が興味深げに見ていることに気がついたんだろう……烏間先生が説明しようと僕等の方を向いて口を開こうとした……のをロイドさんが手を出して遮ったのを見て、静かに後ろへ下がった。
「じゃ、俺は遅れてきたし自己紹介からかな。俺はクロスベル警察、特務支援課のリーダーを務めるロイド・バニングスです。アルカンシェルの3人は完全にアミーシャに会うために来日したけど……俺達はアミーシャの件とは別に日本政府からの要請で、3年E組の皆さんに戦闘について教えるために来ました」
「「「……………へ?」」」
「といっても、俺等のは対魔物・魔獣相手の戦い方だからなぁ……どこまで参考になるか分からんが」
「私達はそれぞれの得意分野があるから、分かれて指導するわね」
「巨大生物、機械兵……色々と相手にはしてきたけど、武器が当たらないほど素早い超生物はないからね。ふふ、少し楽しみだよ」
「「「え、えぇーーーッ!!??」」」
それってつまり、この人達は対殺せんせーのための戦い方を教えに来たってこと……!?ていうかそれ以前に、なんでこの人達は殺せんせーのことを知ってるの!?
落とされた爆弾に、さっきまでの雰囲気はどこにいったのかと言うほど、僕等の中には違った意味のざわめきが走っていた。
◆
「へぇ……それが君達にとっての戦闘服ってわけか」
「わぁ……とても似合ってますね!それに警備隊の物とはまた違って機能性が充実していそうです!」
ロイドお兄ちゃんを筆頭に私たちに爆弾を落としてくれたクロスベル御一行は、超体育着に着替えてグラウンドに整列した私たちを見て興味深そうな感想を漏らしていた。そうでしょ、E組みんなでお揃いなんだよ……なんて、普段ならすぐに返事をしていたんだろうけど、言えなかったあたり私も動揺してたんだと思う。
……一応言っておくけど私、お姉ちゃんたちが学園祭に来ることもだけど、お兄ちゃんたちが私たちの指導のために来たことも知らされてなかったからね。
私たちが着替えている間に話し合ったのか、烏間先生は完全にオブザーバーか何かに回るらしく、この訓練は特務支援課中心に行うみたい。
「全員揃ったな、では、ロイド捜査官……」
「わ、えっと、俺に敬称なんていりませんから!実際カラスマさんの方が歳上なんですし……!」
「……わかった。ではロイド殿、よろしく頼む」
「う、はい……殿って敬称じゃないのか?まあいいか……。えーっと、……訓練の方法だけど、俺達は君達の事をアミーシャに聞いてる限りの情報でしか知らないから、こちらで君達の能力に適した組み分けはする事ができない。だから君達自身が気になる、もしくは高めたい分野のメンバーの所へ自由に行くという形にしようと思う。これなら興味がある場所を自由に回れるし……どうかな?」
「おー、いいんじゃね?なら、まずは自己紹介といくか。ティオ助が簡単に説明したとはいえ、さすがに一度じゃ誰が誰なのか一致してねーだろ」
「そうだな……じゃあ、まずは俺からか。
──俺はロイド・バニングス。武器はトンファーだから俺は中衛、もしくは武器を介した前衛型だな……あとは捜査官としての知識や兵法なんかも教えられると思う」
ロイドお兄ちゃんが訓練方法というか指導形式を簡単に説明して、ランディお兄ちゃんに促される形で個人の得物や教えられる内容を話していくことになったようだ。1番手を引き受けたロイドお兄ちゃんは持参していたトンファーを両手に構え、軽く2回ほど振り抜いてみせた。
「先に男性陣の紹介を終わらせちゃおうか。
──ワジ・へミスフィア。武器はグローブだから格闘技と思ってもらっていいよ。僕はけっこう蹴り技も使うし……後は簡単な投擲にカードを使うこともある。……あ、カラスマさんは防衛省だっけ?一応僕の本所属は特務支援課じゃなくてこっちだから」
「……!その紋章は
「うん、僕だね」
手にはめた手甲やブーツの仕込み板などを軽く叩いてみせて、軽くその場でいくつかの蹴り技を見せてくれたワジお兄ちゃん。多分ナイフを得意とするE組生にとってはすごく参考になる戦い方をする人なんじゃないかって思う……どちらかといえば動きそのものは烏間先生に近いから。
サラッと烏間先生に対して星杯騎士団のメダルを見せて所属を明かしてたけど、……え、みんなってメルカバで日本まで来たの……?あれって簡単に乗り回していい乗り物だっけ……確かに扱いとしてはワジお兄ちゃん所有の個人艇だけど。
「んじゃ、次は俺な。
──ランディ・オルランド。武器はスタンハルバード……斧って言った方がわかりやすいか?あとはブレードライフルだな。俺が教えられるのは壁役、前衛、戦略って所か……俺は説明するより実践で教えてやる。あとは……あー……昔、
「猟兵……」
「……《赤い星座》って猟兵団を知ってるか?俺はそこの跡取りだったんだ……ま、今じゃ親父も死んで俺もこっちに落ち着いたし、完全に足は洗ってる。カラスマさんの部署は国防を担ってるんだろ、名前くらいは聞いたことあるんじゃないか?」
「……!《西風の旅団》と対を成すと言われる猟兵団……相当な実力者だな」
どうやって持ち込んだんだってくらい大きなハルバードを担ぐランディお兄ちゃんだけど、よく考えたらメルカバで来てるなら持ち込み制限とか関係ないよね。単純な戦闘力というか火力で言ったら、彼はこのメンバー1だから……暗殺よりも正面からの壁役や拮抗を崩す一手を学ぶなら丁度よさそう。
付け足すように告げられた、言わなくてもいいだろうランディお兄ちゃんの昔の所属を明かしたのは……ティオお姉ちゃんが紹介させなかった分、自分でちゃんと伝えるため、信用を得るためでもあるんだって。というかここまで簡単な説明だけで理解出来る烏間先生ってすごい……こういう一面を見ると、烏間先生って本職は先生じゃないんだなって改めて思う。
「ランディのそれって話しちゃっていいのかしら……まあ、本人がいいのならいいけど。
──エリィ・マクダエルよ。競技射撃が趣味で得物はそれを改造した導力銃だから、専門は遠距離……特に銃手の子に指導できると思うわ。あとは……交渉術かしら。よろしくね」
「あ、では私もエリィさんに系統が似てるので続けます!
──ノエル・シーカーと申します!武器はサブマシンガンで、他にもグレネードランチャーや電磁ネット、スタンハルバード、ロケットランチャー……爆弾含め、兵器でしたら一通り使えますのでお声がけ下さい!」
お嬢様然としたお淑やかなエリィお姉ちゃんと、元気いっぱいで真面目なノエルお姉ちゃんは、同じ後衛型で銃器を扱う。前衛も出来なくはないけど基本後方支援中心の2人は、千葉くんや凛香ちゃんみたいな
「──ティオ・プラトー。武器は
ティオお姉ちゃんは戦闘としては魔導杖に導力魔法というアタッカーとしては完全に後衛型……でも導力技術なんて素人が一朝一夕で真似できる代物じゃないし、それ以前に適性で差が出てしまう。ティオお姉ちゃんの所へは、知識だったり自分の
「……全員、なんとなくでも把握したか?」
「「「烏間先生!」」」
「今回の訓練は特務支援課の方々に任せるため、俺は特に何も言わない。強いていうなら……自分の限界を、苦手を、得意を知り、彼らから技術を盗め。今この場にいるゼムリア大陸出身者全員が色々な意味で過酷な経験をしてきているからな、俺の指導や普通に生活してきている君等では得られないものを学べるはずだ」
「あ……」
「磯貝、どうかしたか?」
「……特務支援課って聞いたことあるとずっと思ってたんだ。前に殺せんせーが歴史の勉強ついでにってくれたクロスベルタイムズに載ってた……2年前、クロスベルの異変を解決したっていう」
「はは、解決したっていうより関わったの方が正しい気もするけど。俺達だけで何とかしたわけじゃないし……それよりもよく知ってるなキミ、ええと名前……イソガイ君でいいのか?」
「は、はい!磯貝悠馬です!……あ、悠馬が名前です。……あの、俺、ロイドさんの指導を受けたいんですがいいですか?」
「ユウマ君だね、もちろんだよ。よろしく!」
烏間先生が一区切り付け、磯貝くんがロイドお兄ちゃんの元へ真っ先に近寄ったのを皮切りに、他のみんなもそれぞれが師事したい人のところへと足を進めていった。
中には自分の得意分野を伸ばすためというよりは、興味と苦手分析のために正反対のメンバーへと近づく人もいて、偶然のこの機会を生かそうとしているのがわかる。
みんなが移動していく姿を私は最後まで見ていた……私の選択肢はみんなと違ってもう1つある。私が先生として選ぶのは……特務支援課の人たちじゃない、近くで様子を見ているお姉ちゃん一択。
幼い頃からの目標で、誰よりもお互いの実力を知っていて、自分の力に
「……ふふ、来ると思った。でも私は特務支援課じゃないよ、アミーシャ?」
「それでも、一緒に戦ったでしょ?リーシャお姉ちゃん」
「……得物はお互い無し、ナイフを貸してくれる?それでやりましょう」
「……はい!」
このグラウンドを使うらしい特務支援課の面々を尻目に、どこかへと歩き出したお姉ちゃんを追いかける。久しぶりの私にとっての訓練……どこまでできるのか……少しだけ、ワクワクしてきた。
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「カルマ君、難しい顔してるけどどうかしたの?」
「……烏間先生は過酷な経験をしてきたのはこの場にいるゼムリア大陸出身者
「うーん……そうなるのかな?」
「でも、2年前はアミーシャはこっちにいたわけだから、クロスベルの異変には関わってないと思ってたのに……キーアに聞いた話でもそういうのは無かったし……」
「あ、
「……まーね」
「よかったね、また少し彼女の事が知れて……あと、難しく考えすぎじゃない?烏間先生にとって、まとめてあの人達を形容するにはちょうどよかっただけ、とかさ」
「……うーん……まあ、いいか……」
「納得してないよねー……ほら、カルマ君は誰の所に行くのか決めたの?アミサちゃんなんてカルマ君が考え込んでる間にリーシャさんの所へ走っていっちゃったよ」
「……決めてるよ、俺は──」
「ところで私、なんかロイドさんに既視感というか……こんな感じの人について聞いた覚えがある気がするんだけど」
「……奇遇ね、私もよ」
「わ、私も聞いた覚えがあって……」
「そうか?俺は優しい人って感じた程度だけど」
「俺もー。あと天然タラシって」
「失礼だろ。……俺も思ったけど」
「おい」
「……ちょっと待って。なんか引っかかった人ー?」
(女子が全員手を上げる)
「……女子全員ってどういうこと!?」
「女子全員で共通の話題ってこと……?それか女子だけで一緒にいた時に何か……」
「どうかしたのか?」
「い、いえ!なんかロイドさんの事を聞いたことがある気がするって話してた程度です!」
「え、」
「なに、ロイド……キミ一人で日本に来たとか」
「まさか、あるわけないだろ!」
「あ、いえ……初めてお会いしたはずなんですけど、人柄に聞き覚えが、」
「でも何でなのかは誰も思い出せなくて……」
「あー!!!思い出した!!」
「中村さん、声大きいって」
「ご、ごめんごめん……って違う!ほら、あれよ、修学旅行!アミサが話してた人だ!『弟系草食男子を装った喰いまくりのリア充野郎』があだ名の!」
「「「ぶっ!?」」」
「よ、ヨナにしか言われたことないぞソレ!?誰がアミーシャに言ったんだ!?」
「私が教えました。さすがはアミーシャ……期待通り意味を知らないままに広めてくれたんですね」
「え……これって、言っちゃダメなことだった……?」
「いえ、ナイスです」
「ティオ、お前か……!」
「だって、ロイドさんそのままを表してるじゃないですか」
「ふ、くくっ……い、言われたのは事実なんだ……っ」
「ぶは……っ、言い得て妙じゃねーか……っ」
「ワジ……ランディ……ッ!」
「あ、あと盛大な告白劇についても聞きました。『俺が勝ったら君は俺がもらう』っていう……」
「わあぁぁあぁあっっ!!??あ、アミーシャちゃんッ!?それは言っちゃダメなヤツ!!!」
「「「(あ、この人か、言われたの)」」」
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インターミッション2話目でした。
今回は色々な理由話です。
オリ主を1人に留学させた理由、クロスベル御一行の来日理由、……フリースペースでは既視感を感じた理由(笑)
小説内でちょこちょこと写真を撮る描写はあったんですが、ここで使いました!卒業アルバムに行くまでに需要があるとは。
もちろんこの後、終業式での動画も流出するのでカルマもオリ主もキレます(笑)
いちばん美味しいところを持っていくのはワジかリーシャだと思って描きました。
では、また次回お会いしましょう!