暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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戦闘訓練の時間・2時間目

「お疲れ様。日が暮れてきたし、そろそろ切り上げようか」

 

「はーい」

 

クロスベル警察特務支援課の人達による戦闘訓練……俺が師事したワジさんは、E組生がひたすら素手で彼相手に攻撃を仕掛け、身体運びや避け方などでワジさんが気になったことをその場で教えるという方法で訓練を進めていた。それと同時に場を読み、どう動けば味方の邪魔にならないように動けるか、どう動くのがその場で最善なのかということも実地で教えてくれて……正直こっちの方が楽しい。だけど俺は先を読むのは得意な方だから、どちらかといえば前者の格闘技や技術を盗むことに専念していて、ワジさん相手に組手をしたり、集団戦で連携を試したり、ワジさんにバディを組んでもらい他のE組生を巻き込んでの模擬戦を行ったり……と、想像してたよりもかなり有意義な時間を過ごせたと思う。

 

「……お、……わったー……」

 

「ありがとう、ございました……」

 

「こんだけしごかれたのに普通に立ってるカルマ、流石すぎるぜ……」

 

まだ明るいとはいえ少し日が傾いてきて、このまま続けると今度は視界が狭まって危険だとワジさんは判断したみたい……俺等の訓練はここで終わりのようだ。地面にぶっ倒れてる奴、座り込んでる奴ととにかく疲れきって息を整えてる奴らが大半だった。俺も散々戦ったわりには、結局一撃ってほどの攻撃も入らなかったなー……そう内心反省しながら腕を回していると、膝に手をつきながら息を整えていた杉野が俺を見て「体力オバケ」だの言ってきた。当然一発入れておいた。

 

 

────ピリリリリリ

 

 

「「「!!」」」

 

「おっと、僕だね……もしもし」

 

『ワジ、そろそろ暗くなってきたから訓練打ち止めにしようと思うんだけど、戻ってこれそうか?』

 

「グッドタイミング。ちょうど終わろうと思ってたところだよ……どこに集合?」

 

『最初に集まった校舎横に来てくれ』

 

「了解、リーダー。……全員聞こえたよね、行くよ」

 

突然鳴り響いた呼出音……音の出処はワジさんの持つ戦術導力器、エニグマ。確か、あれには通信機が内蔵されてるってアミーシャに聞いた気が……フタを開いて耳に当てるかと思えば彼が何やら操作をした途端、通話相手なのだろうロイドさんの声が俺等にも聞こえてきた。こっちでいうスマホとか携帯のスピーカーモードみたいな扱いなんだろう……見慣れない機器を当たり前のように扱う姿は、俺等からしたら不自然なはずなのにすごく自然に見えた。

歩き出したワジさんの後について、俺等も集合場所へ向かう。さっきまで座り込んでた奴らがすぐに歩けるって事は、その位の体力は残してあったということ……いや、ワジさんはこれを見越して訓練内容を組んでたんだろうな……改めて自分との実力差を痛感する。どんどん進んでいくワジさんとクラスメイトの後をのんびり最後尾から追いかける途中に、俺は何となく気になったことを聞こうとポケットにしまっていたスマホを取り出し、中にいる彼女へと声をかける。

 

「……律」

 

『はい、お呼びですか?カルマさん』

 

「ワジさんが今使ってたエニグマの通信ってさ、スマホの通話と何か違うの?あれって大陸違うところの通信機なわけじゃん、基地局経由するにしても遠すぎね?」

 

『少々お待ちください……、……えっと、そうですね……カルマさんのおっしゃる通り、スマートフォンや携帯電話……私が本体と接続してるのもそうですが、全て無線基地局を経由しています。対してエニグマはそれさえあればお互いの周波数を合わせて通信できるものだそうです。私に関しては独立したプログラムを皆さんのスマートフォンにダウンロードさせてますから、私本体とでは通信が無理な環境でも、私がダウンロードされたスマートフォン同士でしたらエニグマと同じように使用できますね。つまり、スマートフォンでは圏外となる場所でも、エニグマの通信機能でしたら繋がる可能性が高いと考えていただければいいかと。代わりに周波数を合わせれば通信できる分、傍受される可能性が上がってしまいます……最近はリベール王国のラッセル博士が開発に成功した、』

 

「ストップ、少し脱線してるし気になったとこは分かったからいいよ。……ところでさ、そんな知識どこで仕入れてきたの?」

 

『えへへ……実は私、インターネット回線だけでなく、導力ネットワークへの介入を練習してるんです!先程ティオさんに教えていただいてから、ヨナさんのパソコン経由でちょっと』

 

「早速指導された技術を実戦してるわけねー……一応あとでティオさんに報告しとくか。律、ハッカーはハッカーでもホワイトでいてよ」

 

『???』

 

「いくら律がAIでも、クラスメイトが逮捕(delete)されることになるのは嫌ってこと」

 

何気なく聞いたんだけど、結構大変なことやらかしてる……ま、ハッキングって行為がいいとは言えないけど、今後もかなり役に立つ第2の刃、だよね。さっきの今でここまで学習してる上に実践し始める行動力は律の凄いところだけど、いつか知らなければよかった事実とか持ってきちゃいそうなのが怖い……。

俺としてはそう思っての一言だったんだけど、律にとっては何か思うところがあったみたい。笑顔でニコニコとしていた表情をピタリと固まらせ、困ったように眉を下げた。……何か俺、おかしなことでも言った?

 

『……クラスメイトが逮捕、ですか……』

 

「……何?律が人間じゃないからってそれがありえないことじゃないでしょ。一応ハッキングって犯罪だしさ……ていうか、俺がクラスメイトを心配するのはおかしいこと?」

 

『い、いえ!私のことをそんなふうに言っていただけるなんて嬉しいです!……、ただ……』

 

「ただ?」

 

『……、……なんでもありません。それにその私はまだ、人の考えている有益な情報というモノの取捨選択がまだ苦手ですし……私の持つ情報も不確定すぎて、さすがにお話しすることはできませんから』

 

「あっそ。……俺じゃなくていいからさ、話せる人には話しなよ」

 

『……はい!』

 

……既に何か情報を仕入れてたみたい、しかも軽々しく話せない……情報漏洩したらやばいタイプの。ただでさえ俺等は殺せんせーって国家機密を抱えてんのに、律が話せないってことはそれ以上ってことでしょ?もしくは俺が聞いたらマズい話……国家の闇は一般市民の耳に入れるわけにいかないって感じかな。ま、この様子だと聞き出すのは諦めた方がいいか……下手に探って記憶消去なんてヤだし。だからといってそんな誰かに話せないような大層な情報を、自分の好奇心で探ったものとはいえ律1人に抱えさせるほど俺は愚かじゃない。内容はともかくふわっと事情だけでも烏間先生に言っとくか……、律は転校生暗殺者って立場だし、開発者()はいるとはいえ、管轄は烏間先生でいいんだよね?

 

 

 

 

 

『……ごめんなさい、これだけは……』

 

「……何?聞こえn……」

 

「おーい、カルマー。早く来いよー!」

 

「……はいはい、聞こえてるから。そんな大声出したら体力無くなるよ〜」

 

「そこまでやわじゃねーよ!元野球部舐めんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所に着くと、既に揃っていたのは連絡してきたロイドさんのグループだけだった。とはいえ、それぞれ他の訓練場所でも夜目が効かないと危ないってちょうど判断したところだったらしくて、そんなに待つことなく全グループが集合。本格的に日が暮れてきて、夕陽はあたりを茜色に染め始めた。グラウンドにいた生徒が全員指示通り、最初の集合場所へ集まった頃……

 

「全員揃ったか?」

 

「烏間先生〜、アミサちゃんの姿が見えませーん!」

 

「ん?うちもリーシャが戻ってきてないな……」

 

点呼をとる烏間先生の声に磯貝と片岡さんがそれぞれ男女の人数を数え始めたけど、アミーシャの姿がどこにもないような……倉橋さんも同じことを思ったのかすぐさま手を挙げながら報告している。キョロキョロと周りを見ているロイドさんの様子から、特務支援課側はリーシャさんがいないんだろう。この集合場所からはグラウンド全体が見渡せるけど、もう人影なんてないし……そもそも訓練中にあの姉妹の姿を1度も見てないような気がする。

 

「あ、そういえば……烏間先生!僕、訓練が始まってすぐくらいに、アミサちゃんがリーシャさんと裏山の方に歩いてくのを見ました!もしかしたらまだ帰ってきてないのかも……」

 

「なに……?」

 

「あー、やっぱりアミ姫はリーシャを選んだかぁ」

 

「ノエルさんと私は確かに分野が違うから来ないだろうとは思ってたけど……」

 

「他の人も含めて懐いてくれてるとは思いますけど、こういう時に頼られた事ってホントに無いですよね……」

 

ふと思い出したように顔を上げた渚君が烏間先生に心当たりを話した瞬間、特務支援課の人達の間にやっぱりかとでもいうような雰囲気が漂った。あの人達、ヘコんでるというか落ち込んでるというか、地味に傷ついてない……?

言ってる内容から察するに、普段から頼ってくれないアミーシャが、こういう専門的に教えられる場をお膳立てすれば来てくれると期待してたけど、彼女はなんの迷いもなくリーシャさんを選んだことにヘコんでるってところかな。

 

「……まあしょうがないだろう、今のところアミーシャを完全に理解してるのはリーシャしかいないんだから。……ティオ」

 

「……了解しました、生体反応を追います。《アクセス》……ヒットしました、ここから裏山へ入って少しの所にある岩場の空き地です」

 

「わかった。……えっと、多分あの姉妹は集中しすぎて時間を忘れたまま、まだやってるんだと思う。今から俺等で迎えに行こうと思うんだけど……君達も2人の訓練風景、見に行くか?」

 

「「「!!!」」」

 

「ホントですか!?」

 

「え、リーシャさんって舞台アーティストなのに訓練も何も……」

 

「バカ、真尾が言ってただろ、魔物と戦う力を持つ人は普通に戦闘とかやってるって。リーシャさんもそうってことだろ?」

 

「あの舞台を作り上げるアーティストなんだから、訓練も相当積んでるんじゃない?」

 

「むしろその舞台の訓練だったりして」

 

思わぬロイドさんの誘いにE組皆が盛り上がる。俺も烏間先生やE組生を相手にした暗殺訓練くらいでしか彼女の動きを見たことがないから、見れるものならぜひ見てみたい。しかも、いつもアミーシャが尊敬し、絶賛しているリーシャさんと一緒に行っている訓練……もしかしたら誰かが言ったようにアルカンシェルの舞台を想定した練習をしてる可能性もあるわけで、ファンとして気にならないはずがないよね。

だけど、誘った張本人であるロイドさんがどこか迷っているような表情で……困ったように頬をかいている。ちらほらとその様子に気付いた奴が増えて注目が集まってから、ようやく口を開いた……曰く、ここまで乗り気になるとは思わなかった、と。

 

「見に行くのは全然構わないし俺としてもアミーシャの頑張っているところを知って欲しい。ただ、覚悟がないなら見ないことをオススメするよ……着いてきたら、多分君達が見たことのない彼女を見ることになるから」

 

「俺等の見たことのない……真尾?」

 

「あなた達の知ってるアミーシャちゃんは、小さくて危なっかしいけどどこか器用な子って印象じゃない?でも多分、姉妹2人で訓練してる彼女は、そんな印象を覆しちゃうんじゃないかしら……」

 

「あの子達も僕達も望まないから全部は教えてあげられないけど……少しだけネタばらししてあげようかな。……あの姉妹は特務支援課の誰よりも、段違いに強い。それこそ一騎当千……僕達6人がかりでも勝てるか怪しいね」

 

「「「え」」」

 

「いや、ワジも俺達以上だろ。サラッと自分を抜くな」

 

「いやだな、僕は聖痕(スティグマ)を使う時だけしか強さに自信はないよ。それ以外の時はロイド達と同等さ」

 

「どうだか……」

 

「嘘くさいです」

 

……アミーシャが、リーシャさんが、ロイドさん達以上の実力者……?俺なんてついさっきまでワジさん相手に組手をしてもらって、全く技を仕掛けさせてもらう余裕なかったんだけど。涼しい顔で繰り出してくる拳と蹴りは、烏間先生よりも柔軟すぎて目で追うのがやっとだし、ギリギリ体が反応できるってレベルだったのに、……それ以上?そのワジさんもロイドさん達が言うには、かなりの実力を持っているらしい。俺等っていう子ども相手だったから全力には程遠い力しか見せなかったんだろう。そんな彼等にそこまで言わせる実力が、アミーシャの隠していることの一端なんだろうか……

 

「まあ、今はワジの実力どうこうは関係ないしおいておくぞ。今のを聞いても来る気がある子だけ、着いておいで」

 

「私が先導します。……やめるなら今ですよ」

 

そう言って、ロイドさんとティオさんを先頭に彼等は考え込む俺等を待つことなく裏山へと歩き出してしまった。俺等は何も言えず、困惑とともに固まっていた……この人達は俺等にどうして欲しいんだ。

 

誘っておきながら、来るのに難色を示す。

 

情報を開示しながら、全ては教えてくれない。

 

知ってほしいと言いながら、知らないでいてほしいと言う。

 

まるで正反対の言動は、なんと言うか……ロイドさん達もなにか迷っているんじゃないかって感じがする。アミーシャ達は知られたくないと思っているけど、彼等としては知ってもいいんじゃないかと考えてるというか、教えたいけど知って欲しくないというか……あー、ダメだ、考えれば考えるほど何が言いたいのか分からなくなってきた。

せっかく誘ってくれたんだし遠慮なく着いていかせてもらおう、聞いてすぐはそう思ったはずなのに。ダメ押しのように告げてきたティオさんの言葉に迷いが出てきて……俺は特務支援課の彼等を追いかけることもできず、足を止め、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〝まあしょうがないだろう、今のところアミーシャを完全に理解してるのはリーシャしかいないんだから〟

 

「……………………………………………」

 

……、……なんだろう、ロイドさんの言葉を思い出したら無性に腹が立ってきた。〝今のところ〟とはいえ、〝アミーシャを理解してるのはリーシャさんだけ〟……?さっきの言葉がぐるぐると回っていて、頭の中を巡る度にムカムカした気持ちが膨らんでいく。

……俺は、アミーシャの恋人だ……アミーシャと俺は、出会ってからずっと一緒にいたんだ。アミーシャがリーシャさんと連絡を取っていたのだとしても、この3年近くを誰よりも側で、隣で見ていて理解してるのはリーシャさんじゃなくて俺だって自信をもって言えるし、もしかしたら客観的に見れる分アミーシャ自身よりもアミーシャのことを知ってるかもしれない。……こうとも考えられないか?俺が知ってるのはこの3年分だけど、アミーシャの隠していることを知れば、彼女の過去の一端を知ることに繋がる。過去や隠し事を知ることができれば、俺は彼女の全部を理解することができる、誰よりも彼女の理解者であれるって。……だけど、

 

「……カルマは優しいんだね」

 

「……ッ!!……キーア、なんで」

 

「なんとなく、カルマが迷ってる気がしたから。自分もリーシャのように……ううん、リーシャ以上にアミーシャの理解者でありたい。だけどアミーシャが知られたくないって思ってるコト、勝手に知ろうとして踏み込むわけにはいかないから諦めるべきなんじゃないかって思ってるのかなって」

 

「……そーだよ。こんなの、リーシャさんに嫉妬してるだけのただの独占欲……俺、もう1回失敗してるんだ。こんな醜い感情、またアミーシャにぶつけることになったら……」

 

「……いいんじゃないかなー。それが偽りのないカルマ自身だってことでしょ?」

 

ちがう?と、いつの間にか近づいてきて目の前で首をかしげて問うキーアの姿に、俺の中の迷いが晴れていくようだった。そうじゃん、アミーシャは人の本質を見抜くことに長けてる……偽りのある相手には一切心を開かないし、なにより警戒心を向けてかかわろうともしない。俺自身で向き合う為にも、本心のまま行動する方がいいに決まってる……それをこの無邪気な笑顔をした年下の子に気付かされた。

嫌われるかもしれない、目も合わせてくれなくなるかもしれない……そんな怖さがないと言ったら嘘になる。知りたくなかったことを知ってしまう怖さも同じだ。だけどその程度で俺が目を逸らしてどうするのさ、俺は何があってもずっと彼女の横に立つって決めたんだから。……そのためには。

 

「……キーア。俺の所に来たってことはアミーシャの居場所を知ってるんだよね?案内、任せていい?」

 

「んー、別にいいけど?こっちだよ!」

 

ニコッと笑みを浮かべたキーアは、俺の腕を掴んですぐさま走り出す。いきなり走り出すとは思ってなかったから一瞬足がついて行かなかったけど……俺の方が足は速いおかげで直ぐに持ち直せたし、小走りでついて行くことにした。キーアって境遇聞く限り俺より場数踏んでそうなのに、突発的に動く行動力も突拍子もないことを当たり前のように言える言動も年相応……いや、それよりも子どもらしい子だ。だけどかなり聡い子でもある……この子なりにどう話せば俺がのってくるのか考えてたんだろう。俺の願いに躊躇いも迷いもせずに俺を導き引っ張るこの手が証拠だ。

キーアと話して、この子も結構重いものを背負ってることを知った。それでもこの天真爛漫さを失わずにいれたのは、ロイドさん達みたいな支える存在がいたからなんだろう。別人の話なんだから俺とアミーシャに置き換えるっていうのも変だけど、俺も、そうなれたら……

 

「あ、カルマ!」

 

「……私達も行く?」

 

「どうしよう……」

 

「僕は行くよ……僕だって、アミサちゃんの理解者になりたいんだ」

 

「渚、私も行く!」

 

「……俺はあえてやめとこうかな。知るのが怖いのもあるけど……全部を理解して受け入れる奴以外に、何も知らないまま受け入れる奴がいてもいいと思うんだ」

 

「……私もそうしようかな。興味はあるけど、アミサちゃんの強さはこの教室で見てきてるわけだから……私はこの教室でのアミサちゃんも大切にしてあげたい」

 

「確かに、ただ待ってる存在っていうのも、いたらありがたいもん」

 

ロイドさんは行くか行かないかE組全体で決めろとは言わなかった……つまり、選ぶのは個人の自由ってこと。俺はすぐに追いかけることを選んだけど、追いついてきた渚君と茅野ちゃん以外のクラスメイト達が、何を考えて何を選択したかまでは知らない。言い訳を並べて『知る怖さ』に勝てなかったのだとしても……責めることはできない。腕を引かれたまま、俺は前を見続けた。……ていうか、さっきも思ったんだけどこの子指導に回ってない時点で非戦闘要員なんだよね?全く息切れもせずに喋って走って……子どもっていろんな意味で規格外だよ、本ト。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……1つ、変わったよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

走って追いかけたおかげか、先を歩いていたロイドさん達に追いつき、今は一緒にマオ姉妹がいるだろう場所へと向かっている。こっちの方向で岩場ってことは、多分人面岩のあるあそこのことだろう……足元が岩場ではあるけど場所によっては落ち葉が降り積もってるし結構広いから、いい鍛錬場だって俺等の暗殺訓練でも烏間先生がよく使う場所。アミーシャが案内したのかな……そう考えていると、俺等の歩く獣道の向こうから何かをぶつけ合うような音が聞こえ始めた。でも移動する気配とかそういう音とかは全然聞こえてこない……そこにいる、んだよね?

 

「……生体反応あり、この先のはずです」

 

「よし。ついて来たのは……赤羽君と……」

 

「……渚君と茅野ちゃん、来たんだ」

 

「僕はカルマ君みたいにアミサちゃんに対して恋愛感情あるってわけじゃないけどさ……僕だって、アミサちゃんのヒーローだ。何も知らないままただ待ってるだけなんてできないよ」

 

「私は……アミサちゃんのことを知りたいから。色々未知数なところばっかりな子だけど、ことが済んだあとも……お互いに全部知った上で、友達になりたいって思えたから」

 

『ちなみに来てない皆さんは、〝知らないからこそ支えられることもある〟とのことです!』

 

「……ふーん、そう」

 

E組(おれら)の中で訓練風景を見に行くと決めてついてきたのは、俺を含めてたったの3人……律入れて4人か。正直少ないと思ったけど、残った側にも色々考えがあるらしい。とにかく俺も、渚君も、茅野ちゃんも、それぞれが違った思いでだけど、この場所まで来る気になれたロイドさんの言葉でいう覚悟のあるメンバーってわけね。

黙々と足を動かしていると、先頭を歩くティオさんとロイドさんが止まって俺等を振り返る。確か、ここの茂みを抜けたらひらけた場所に出るはずだ。

 

「こんなギリギリに言うのもなんだけど……本当にいいんだね?」

 

「ですが覚悟をもってることはすごく伝わってきましたし……もし何かあったとしても私達が必ず手助けしますから」

 

「「「はい!」」」

 

「……ねぇ、カルマ、ナギサ、カエデ……お願いがあるの」

 

「どうしたの、えっと……キーア、ちゃん?」

 

「その……ここに来たってことは、3人とも強い想いがあるんだと思うの。だから、お願い……何を見ても、アミーシャを嫌いにならないでね」

 

「……え……」

 

「もういいかな……行くよ」

 

「「「……!!」」」

 

俺等に対して訴えるようにまっすぐ見つめるキーアを不思議に思いながら獣道を抜けて、一気にひらけた場所に出るとその場所の中心に彼女達はいた。夕焼け色に染まっていく森の景色の中で、オレンジ色のトップスのリーシャさんと俺等と同じ超体育着を着たアミーシャは、色のせいか暗くなる景色に同化しつつある。さっきここに向かう途中にぶつかり合う音しか聞えないとは思ってたけど、こう実際目にしてみても変わらない。彼女達は周りの様子なんて全く目に入ってないんだろう……この暗さだというのに、まだナイフ片手に打ち合いを続けていた。……あー……見て思ったことを色々並べたけど、これじゃあ現実から目を背けてるだけだし、そろそろハッキリ言おう……俺等はこの光景を見て言葉を失ったんだ。

今の時間、はっきりいって自分の手元どころかお互いの顔の判別すら難しくなりつつある程に日が落ちてきていて暗いんだ。その状況なのに、あの2人は移動のスピードもナイフを突き出す速度も変わらないし、迷いもない。どちらかが攻撃を仕掛ければどちらかがナイフを使ってそれをいなし、しゃがんだり跳ね上がったり左右にフェイクを入れて本命の突きを繰り出したり……次々と攻撃のパターンが移り変わっていく。目が離せなくなっている俺等の近くで、同じようにあの2人の訓練の様子を見ていたランディさんが頭を掻きながら大きくため息をついた。

 

「……はー、またか……あの様子を見る限りあの2人、休憩挟まずにずっとやってるな」

 

「え!?」

 

「休憩挟まずにって……訓練始まって3時間近く、ずっとってことですか!?」

 

「それでこの動き……」

 

「ううん、だいぶ消耗はしてるんだと思う。だってナイフの動きが見えるもの」

 

「そうですね……まずお2人とも普段と得物が違いますし、本調子でしたらナイフの太刀筋なんてあってないようなものです」

 

3時間近く休憩することなくずっとナイフ訓練をし続けられる体力、どちらかが倒れたり途切れたりすることなく相手の攻撃を見切り、隙を突こうとする動きの数々は明らかにレベルが違いすぎる。烏間先生と同等……彼女の得意分野だとしたら上を行くかもしれない。確かに覚悟も何も無ければこんなの見れないや……だってたったこれだけなのに、俺等はアミーシャに今までの訓練で手加減されていたのだと痛感させられてしまったから。

それでも踊るように繰り広げられるナイフ捌きからは目を離せない。見たことの無いような動きと、無駄のない体捌きは〝舞い〟と言ってもいいくらいに綺麗でずっと見ていたいと思うくらい……、……ん?あれ……あの姉妹の動きが早すぎるせいで確信がもてないんだけど、お互いのナイフの切っ先が狙ってる場所って……

 

「とにかく、このまま放っておいたら夜になろうが武器を落とそうがどちらかが気絶するまで続けんぞ、アレ。問答無用で止めに入った方が良くないか?」

 

「仕方ないな……赤羽君、確かあの姉妹が使ってる対先生ナイフという物は、人間には影響がないんだったよな?」

 

「……え?あー、そーだけど。ほらこれ、ただのゴムだし」

 

「はー……だったらなんとかなる、よな……俺が止めてくるよ。危ないから俺以外は来ないこと。特に君達3人は巻き込まれたら大変だ」

 

俺が自前の対先生ナイフの切っ先を曲げて見せたのを見て、だいぶ大きなため息をついたロイドさんの肩にランディさんが慰めるように手を置いた。安全なはずなのにそんなに躊躇うって、何が……?決心したように顔を上げたロイドさんは、腰に装備していたトンファーを両手に構えて、この場所を動かないよう言い含めてから俺等が見ている場所を飛び出していく。ランディさん曰く、トンファーという武器は攻撃するためというより、自分と攻撃した相手を守るための武器といった方が適切らしい。それもあって彼1人で送り出したんだとか……止めに入って怪我をさせたら意味ないしね、逆も然りだけど。

彼を見送ってからアミーシャとリーシャさんの方へ視線を戻したけど、彼女たちはまだ訓練を止める様子が見えない。そんな激しいナイフの応酬の中ロイドさんがトンファーを構えたまま近寄っていき……姉妹のナイフがお互いに打ち合った反動で2人の間が一瞬開いた瞬間、彼が飛び込んだところまではハッキリ見えた。そこで多分ロイドさんがトンファーを一閃したんだろう……彼が低姿勢で動きを止めたのを最後に姉妹の動きも止まった。というか、お互いに止めざるを得なかったんだろうけど。

 

「……っ、ぶな……」

 

「あ、」

 

「あ……」

 

「『あ』、じゃないだろ2人とも……ホントにその武器じゃなかったら俺、死んでたぞ……」

 

ロイドさんはアミーシャとリーシャさんの胴体にトンファーを当ててることから、2人の距離を広げようと外へ力を入れて引き離すつもりだったんだろう。そりゃあそうだ、戦いを止めるなら身動きを止めるか武器を手放させるか物理的に距離を取ってしまえばいいんだから。

問題は……ロイドさんのことが目に入ってなかっただろう姉妹のナイフの切っ先が半端なくヤバい位置にあったこと。どこにって……リーシャさんのナイフは後ろ手にロイドさんの目に向けて寸止めされているし、アミーシャのナイフはロイドさんとすれ違いざまに首の頚動脈を切りつけるように押し付けられていたから。どっちも狙いは人体の急所……本物の武器だったらロイドさんはほぼ確実に即死してる。

 

「リーシャ、アミ姫、毎度毎度長時間の訓練お疲れさん」

 

「今回もだいぶ集中されてましたね……はい、ワジさん作のピンキーローズです」

 

「あ、まだ残ってたんだね、ソレ。カクテルなのにいいのかい?」

 

「本当は運動後に合わないかもしれませんが、効果が魅力的です……ノンアルコールカクテルですから、アミーシャでも飲めますし」

 

「あはは……ひさしぶりだったので、つい熱中してしまいました。いただきますね」

 

「『つい』で人体の急所を狙い合う模擬戦なんてするなよ……俺、トンファーで距離取ってたのに致命傷って笑えない……」

 

俺と渚君、茅野ちゃん以外の姉妹を迎えに来た特務支援課の人達が近寄っていき、思い思いに声をかける。毎度毎度って……2人が訓練する度に時間を忘れてるってことか。そして、リーシャさんがノエルさんから何やらボトルに入っている飲み物を受け取り、それを見たロイドさんがため息とともにボソリとこぼした言葉で俺の見たものが見間違いじゃなかったことを知る。やっぱりさっき俺が感じたのは気のせいじゃなかったんだ。

首周り、目、脇、鳩尾、動脈の通る手首……あの姉妹はお互いが攻撃する時に、必ず相手の急所となる場所を狙っていた。対先生ナイフは人体に影響がないとはいえ、ゴム製だからそれなりの固さがある……それこそ、勢いをつけたら立派な鈍器になるだろう。トンファーを持つロイドさんだったから、攻撃が当たりはしたけどなんとか威力を殺せたんだ。割り込まなければ姉妹のどちらか……もしくは2人ともがお互いの攻撃で気絶していてもおかしくなかっただろう。

 

「……アミサちゃん」

 

「……っ!……」

 

「わっ、……やっぱり気付いてなかったのね?」

 

「……、……お姉ちゃんは、知ってたの……?」

 

「んー……誰かまではさすがに読み取れなかったけど、違う気配が増えたのは結構早くに分かってたわ」

 

「…………」

 

何も言えないでいる俺や渚君とは違って、早くに状況を飲み込んだんだろう……茅野ちゃんがアミーシャへ声をかけた。声をかけるのと一緒に近寄ろうとしたんだろうけど、足を前に出した瞬間、身体をビクリと震わせたアミーシャは、すぐさまリーシャさんの背中へと隠れてしまった。姉妹の会話から、アミーシャが俺等が来ていたことに全く気づいてなかったことが分かって……気配に敏感な彼女が気づかなかったなんて、どれだけ集中してたんだか。それだけひさしぶりに会えたお姉さんとの稽古が楽しかったんだろうけど。

とにかく……そろそろ恥ずかしいのか見られて気まずいのか、リーシャさんの背中にすがりついたまま顔をあげようとしない彼女をこちらに向かせたい。……〝アミーシャの事はリーシャさんが1番知っている〟……そう言ったロイドさん達だって俺等よりも昔の彼女を、彼女の本質をよく分かってる。

 

「アミーシャ」

 

「か、カルマ……その……」

 

「これで、隠し事は全部?」

 

「……!」

 

「これだけ戦える実力も、長時間動き続けられる持久力も、相手の急所を見極める動体視力も、アミーシャが隠してたこと……なんでしょ?」

 

「……そう、だけど……、……でも、」

 

「…………別にいいんだよ、まだ全部言えなくても。何回も言ってるじゃん、俺は待ってるからって……いつか、教えてくれるのを。今回のことだって、アミーシャには不本意だったかもしれないけど、俺は嬉しかったんだけどな」

 

「…………」

 

「……僕とカルマ君が一緒にいた時間は結構長いと思う……それでもお互いに知らないことはたくさんあるよ。それと同じなんじゃないかな?僕も、カルマ君も、茅野だって……他の皆がまだ知らないアミサちゃんのことを先に知れて嬉しいんだ」

 

情報を提示し合える関係……交換条件や探り合いなんてしなくても信じられる関係。疑わずに信じることって、どんなに付き合いが長くても難しいことだ……むしろ、付き合いが長いからこそ人はその分警戒する。彼等の間にはその警戒がない、それはそれだけ彼女から信頼されてるってこと……多分、俺はその信頼の域までは達してない。だから、迷ってるのかな。俺の言葉ではアミーシャを動かすのに何かが足りないみたいだ。渚君も援護してくれたんだけど、むしろ警戒させて余計にリーシャさんの後ろから出てきづらくしちゃった?まずったかなー……

さて、どう攻略すべきかな……そう次の手を考えている時だった。最初に声をかけてからずっと、何か考えている様子だった茅野ちゃんが、思いついたように口を開いたのは。

 

「……なんか、私には分かる気がするなぁ……」

 

「え」

 

「茅野?」

 

声をかけづらく近寄ることもできない俺等を横目にさっさと近づいて行った茅野ちゃんは、リーシャさんに軽くお辞儀してからアミーシャの隣から軽く髪をかきあげるように頭を撫で始める。リーシャさんから顔を上げようとはしないけど、少し身動ぎした様子のアミーシャに、茅野ちゃんはいつものお喋りをしてるように話しかけていく。クラスメイト、というよりは……E組で公言しているとおり、アミサちゃんよりちょっとだけ大きいお姉さん、という感じで。

 

「アミサちゃんは、知られたくなかったんでしょ?男の人より……ううん、E組の皆よりも自分には色々下地がある分できることが多いってこと」

 

「…………、わかんない……」

 

「うーん……なら、我慢してたんだよ。アミサちゃん的には守られるばっかりは嫌だけど、E組皆がアミサちゃんを可愛がりたいと思って甘やかしてるからそれを言い出せずに溜め込んでた。私達に顔を合わせづらいって思う理由がわからないなら……そういうのとか、しっくりこない?」

 

「……なんとなく、そんな気がする……けど、それじゃ……」

 

「私は別にいいと思うよ?強い女の子ってかっこいいと思うし……むしろ、か弱く見えるアミサちゃんの新たな一面って感じでさ、すっごく新鮮」

 

「だって、その……私は……」

 

「あはは、女が男よりも強いとか、ただ男のプライド抉るだけだもん。言えるわけないよね!」

 

「か、茅野……;」

 

「……抉ってるの、アミーシャじゃなくて茅野ちゃんだと思うんだけど……」

 

何を言い出すかと思えば……アミーシャの気遣い(?)を無に帰すくらい聞いてる俺等の心をガッツリ抉ってくる言葉だった。いや、確かにそうだけどさ;守りたい対象が自分より強くて逆に守られるとか、プライドバッキバキじゃん?……男女差別とか言うなよ、大事な奴こそ守られるよりは守りたいって思うのが男心ってヤツでしょ。

アミーシャを撫でることはやめないまま俺等の呟きをキレイに無視した茅野ちゃんは、空いた手をリーシャさんを掴んでいる彼女の手に重ねる。ゆるゆると顔を上げたアミーシャに笑いかけながら、茅野ちゃんは促す。

 

「ほら、一緒に帰ろ。気まずいなら4月の最初の頃みたいに、またちょっとずつやってけば大丈夫だよ」

 

「……うん」

 

「どーせこれ見てたのも、渚とカルマ君と私だけなんだし。2人が黙ってれば誰にもバレないもん!ね?」

 

「はは……僕等が黙ってることは決定事項なんだ」

 

「あー、もうそれでいいよ。だから、帰ろう……ほら、」

 

「……ヤだ。今日はカエデちゃんとがいい」

 

「…………」

 

「……ふふん」

 

「……カルマ、今日は明らかに茅野の勝ちだよ」

 

「……わーってるよ、はぁ……」

 

茅野ちゃんの手を取ったアミーシャは、リーシャさんの背中からようやく出てきた。泣いてたとかじゃないんだろうけど複雑そうな表情を見る限り、自分の考えとか色々上手く飲み込めないんだろう。それでもリーシャさんから離れられたってことは、納得したのか落ち着いたのかってとこかな。

そろそろ本格的に暗くなってきたから、集合場所に帰るぞ、といつの間にか俺等だけにして、話し終わったのを見計らったように離れたところから声をかけてくれたロイドさん達に手を上げて答える。とりあえず、俺はいつものようにアミーシャの手を引こうとしたんだけど……避けられた上にアミーシャは茅野ちゃんの腕にしがみつくように抱きついた。行き場をなくした手をどうしようかと固まっていれば、勝ち誇ったように笑う茅野ちゃんと、諦めろとばかりに俺の方へ手を置いてくる渚君。……まあ、納得したくないけどしょうがないか……今回アミーシャを動かしたのは紛れもなく茅野ちゃんだもんね。……納得はできないけど。

 

こうして、色々と思うところはあったわけだけど、無事に特務支援課の人達による戦闘訓練は幕を閉じたのだった。

ただ…………、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういえば赤羽君」

 

「……何?」

 

「今日、俺達はアミーシャの家に泊まるんだけど、よかったら夕飯も一緒しないか?」

 

「おお、それはいいな!そっちのミドリちゃんとミズイロ君もどーよ?」

 

「ミドリちゃん……って、私ですか!?」

 

「え、ミズイロ君って…………男に見てもらえた!?」

 

「待って、渚君。驚くところがおかしい」

 

 

 

 

 

……俺がこの人達と過ごす時間は、まだ終わらないみたいだ。

 

 

 

 

 




「すごいね、茅野……僕等じゃ全然ダメだったのに」
「あはは……たまたまだって。それに、最初からアミサちゃんに対しての好感度MAXの2人からすると、思いつかなくて当たり前だと思うよ」
「へ?」
「なんで?」
「女の子は強がりだから。特にアミサちゃんは鏡みたいな子だって言ったのはカルマ君じゃん。好意しか向けてこない相手に好意を返す上で、この子が心配かけるわけないでしょ」
「う……」
「それでも、さ……悔しいなーって」
「ふふ……こういうのは、女同士の方がよく分かってるってこともあるんだよ」
「……みたいだね」
「それに……」
「……?」
「……茅野?」
「……う、ううん気の所為!なんでもなかった!」
「そう……?」
「アミーシャ云々もそうだけどさ、茅野ちゃんだって話せるなら色々話しなよ。いつか溜め込んで爆発させそう」
「き、気をつけるね……
(危ない危ない……子役時代に演じてきた感情にそっくりだったから、なんて、私の正体バラすようなもんじゃん。あいつの暗殺が終わるまでは……最後まで演じきらなくちゃ)」



「(うあああああああああ……ッさ、3人とも……私いるの、忘れてないよね!?なんで私をはさんだまま私についての話をしてるのぉ……!?)」



「…………あの緑の女の子……」
「……うん、うまい具合にアミーシャの悩みをすり替えてたね。本人もそれに気づいてなさそう」
「あれ、アミーシャに何も言わせずにただそれらしいことを並べてただけですもんね。アミーシャにとっては肯定も否定もできない内容でしたから、そのままそれが真実としてまとまってしまいましたけど」
「……あの女の子、私に対して『すいません』って言ってたんです。多分、アミーシャの意思じゃないだろうけどこの場をおさめるために嘘をつきます、ってことじゃないかと思うんです」
「すごいな、あの短い時間でそれだけのシナリオを描いてたのか」
「……あの子も多分、訳アリなんだろう……俺達が関わることは出来ない大きな何か、のな」



「それにしても、あの緑の子が並ぶとあの2人、仲のいい双子かなにかに見えるんだが」
「「「わかる」」」
「あ、ということは私に妹がもう1人できたってことですね!」
「え、違……いや、そうなのか?」
「私に聞かないでください」
「リーシャ、そこは〝アミーシャは私の妹なのに〟って思うところなんじゃ?」
「というか、アミーシャが妹ポジションなのに変わりはないんですね」
「「「だってアミーシャだから」」」
「なんて説得力……」
「根拠があるわけじゃないはずなのにな……」


++++++++++++++++++++


少々更新が遅くなりました。後半のカエデの場面に少し迷いまして……使う言葉を選んでいたら遅くなりました。下手にやると、今後やりたいお話とダブりそうで難しかったです。今回悩んだ分、そのお話で使えそうな内容のストックができたのでバンザイではあります。

今話は見たことのあるお話だったと思います。同じ場面を違うように書くのって思ったよりも難しい……やると決めたからにはやってみせます。そんなにかぶる場面があるわけでもないですし!

次回は、オリジナルです。
番外編として書くと言っていたのに、気づいたら本編に昇格していました。次回のお話は、1周目にはなかった出来事だと思って下さい。

では、また次のお話で。

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