暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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第二部とは違ったクロスベル御一行とのやりとりを書こうとしてたはずなのに、気づいたらだいぶ前に書いておきながら放置してた内容を回収するお話になってました。おかしいな?

第二部で回収すべきか悩んだんですが、ここに入れても問題なさそうだったので入れちゃいます!回収するのは夏休みの話題。うん、懐かしい。

オリ主の表面的な能力を公開します。
第一部ではオリ主が『記憶を思い出さない』ことを選択したので「なぜそんな特異体質なのか?」みたいな詳細は持ち越しですが、ちょこちょこ出てた内容を深堀ったつもりです。

今回もよろしくお願いします!



94話 後始末の時間

 

 なんの予告もなく、突然クロスベルから私の身内とも言える特務支援課のお兄ちゃんたちと、イリアお姉さんたちアルカンシェルのみんなが来てくれた学園祭。私がリーシャお姉ちゃんに『学園関係者以外も中に入れる学園祭がある』って通信したから、外部客の入校が許可されるのをきっかけに遊びに、逢いに来てくれただけ……かと思ってたのに、まさかの殺せんせー暗殺対策の1つとして戦闘指南まで目的にしてるとは……

 確かに殺せんせーが地球を破壊するってことは、日本だけの事じゃなくて世界中に関係することではあるけど……ピンポイントで身内が引き受けるなんて思わないよ。……世界は案外狭いんだなぁ、なんて。

 

「……あ、忘れるところだった。騎士団の方で片付けなきゃいけないことがあったんだ。アミーシャ、カラスマさんはどこだい?」

 

「……えっ、……うーん……教員室、かな。ワジお兄ちゃんたちが訓練してくれたから烏間先生の追加指導はやらないとしてもこの時間で帰ってはないだろうし……、……」

 

「……アミーシャ、今なら言い訳聞くけど?」

 

「………………」

 

「黙りか……とりあえず、僕の用事を済ませよう。E組のみんな、少し聞きたいことがあるんだけどいいかな」

 

 今はもう、本校舎側もとっくに学園祭の片付けが済んで下校しているだろう時間……というか、その時間を狙って訓練を受けてたわけだからそうでないと困るんだけど。超体育着から制服に着替えた私たちE組は、烏間先生の追加訓練以上の訓練を特務支援課のみなさんから受けたこともあって、もうあとは満足したら帰って休めって言われたから、満足できるまで有名人(特務支援課、アルカンシェル)のみなさんとお話してから帰ろうとしているところだった。

 そこに声をかけてきたのはワジお兄ちゃん……何気にE組の校舎や掲示物に興味があるのか、教室で特務支援課、アルカンシェルのみなさんがクラスメイトたちと喋ってるのに対して、リーシャお姉ちゃんと2人、今の今までフラフラと色んなところを見て回って楽しそうにしてたのに。スっと真剣な表情になったかと思えば、私が逸らそうとしている話題をすぐに拾って突きつけてきた……言いたくないし、黙っておけばもしかしたら……

 

 リーシャお姉ちゃんが「後でまた合流するから」とイリアお姉さんの方に近づいていったあと、ワジお兄ちゃんは教卓のところに立ってクラスメイトたちの方を向いた。クラスメイトの結構な人数がここに来てから結構唐突に行動するお兄ちゃんが急に前に立ったことで、不思議そうに注目してるのが分かる。

 

「……≪古代遺物(アーティファクト)≫、≪封じの宝杖(ふうじのほうじょう)≫。帰る前で申し訳ないんだけど、これに聞き覚えのある生徒は残って欲しい。聞き取りするだけだしすぐ終わるから」

 

「「「!!!」」」

 

「「「???」」」

 

「あ、見てただけの子達はすぐ終わるけど、ナギサとカルマはダメ。キミ等影響もろに受けたんでしょ?強制だから最後まで付き合ってね」

 

「あ、はい……」

 

「……そんな気はしたよ」

 

 お兄ちゃんの口から出てきたそれは、夏休みのホテル潜入任務(ミッション)で鷹岡さんが使ったあの謎の道具について……そっか、用事の内容は騎士団の方でって言ってたっけ。当然、屋上まで行ってヘリポートでのやり取りをしっかり見聞きしていたメンバーと、麓のホテルに残って潜入中のことを詳細までは知らないメンバーとで反応が分かれた。

 なんの事か分からない人たちはともかく、私とカルマ、渚くんを除いた12人は、ワジお兄ちゃんが鷹岡さんが何を話していたか覚えがあるか、見た目等を聞き取りしている。私たち?私たちはあとから詳細聞かれるから後回し……当事者じゃなくて、横から見てた客観視が欲しいとかで口出ししちゃダメって言われちゃった。

 

「服から取り出してたし、そんなにでかくなかったよな?肘から手首……もあったかな……杖っていう割には小さいなって思った印象……」

 

「色は……ごめんなさい、夜だったしヘリポートの明かりも緑っぽいライトだったからちゃんと分からないです。でも変な光の色は紫っぽかった気がします」

 

「鷹岡の奴、『時よ凍れ』とか言ってたよな……そのすぐ後に変な光が出て、カルマと渚が動けないとか言い出して……」

 

「LEDとかの光っていうより、アミサのオーブメントで見る感じに近い光り方をしてたと思う」

 

「……スタンガンぶつけても、電気流れても光ったままだったよな」

 

「ああ、まだ動いてるって鷹岡が拾いに行ってたし」

 

「!……リョウマ、タイセイ、それってそいつが手を離してからも?」

 

「お、おう……だよな?」

 

「確か寺坂が手にぶつけて……俺が電気流したスタンガンぶつけて鷹岡の手から落ちて……その後も光ってた。で、その後にカルマが炎のアーツをぶつけてヘリポートの下に飛んでったな」

 

「……そう。ありがとう」

 

 夏休みのことだから、みんなだいぶうろ覚えではあるんだろうけど、それでもそれぞれの意見を確認しながら大体の大きさや見た目、傍から見ていた様子などを話しているのを近くで聞いて、私も自分の記憶とも照らし合わせる。近くで見た私の覚えてるものと一緒だから、間違いはないと思う……カルマと渚くんの方を見れば、2人も小さく頷いてくれたからそのはずだ。

 

「……うん、これくらいでいいかな……キミ達は終わり、ありがとう。さて、お待たせ。アミーシャ含め3人はカラスマさんも混じえて話したいことがあるから案内して」

 

「は、はい!」

 

「教員室は隣だからこっちで……」

 

「ああ、アミーシャ?黙ってても流してあげないよ……キミはお説教ね。あとで必ずティオの解析を受けること。その結果を元に法術もかけ直すから」

 

「………………、やっぱりバレてた……」

 

 烏間先生がいるだろう教員室に先導しようとした矢先に言われたそれに、体がびくりと反応したのは自覚してる……ちょっと予感していたことだったから。さっきお兄ちゃんたちには隠しておこうとしてたこと、勢いで答えちゃったの、聞かれてたよね……ばれてないといいなーと思ってたけど、やっぱりダメだった……

 あからさまに目を逸らして足を止めた私を庇うようにカルマと渚くんが慌てて私の前に出てくれたけど、今回ばかりは2人が思うような事じゃないんだ。

 

「ワジさん、怒らないであげてください!むしろ僕等は助けてもらったんです!」

 

「確かにアミーシャは無茶したかもしれないけど、あの時はこの子もアーツの効かない神経毒で死にかけて……ッ」

 

「あ、違う違う。お説教といっても危険なことに自分から突っ込んで行ったこととか、キミ達を助ける為とはいえ自分を省みずに無理しながら自己犠牲に走ったこととかじゃないから安心して。正直そっちも叱りたいけど今の優先順位的には下だから」

 

「「……えっ」」

 

「……アミーシャ、さっきカルマがキミの導力器を使った状況についてランディに聞かれて答えてたの、ハッキリ聞いたから。……使ったんでしょ、幻属性のアーツ」

 

「……うん」

 

「……もしかしてだけど《アナライズ》ってやつ?俺の目の前で使ったはずなのに、アミーシャがあの時使ったアーツを全部把握していた律が一切認識してなかったから変だとは思ってたんだよ」

 

「そう。でもそれ1回程度じゃないはずだ。少なくとも3回……今日までに導力器を介さずに無詠唱で使ったことがあるね」

 

「…………」

 

「はぁ……沈黙は肯定と受け取るよ」

 

 何も言わずに目を逸らすだけで、ワジお兄ちゃんにもカルマにも十分だったみたい……ため息をついたお兄ちゃんはまだしも、カルマは腕を組んでなにやら考え出した。

 こういう時のこの人たちって、絶対私にとって痛い所を衝くことを言うし、思い出しちゃうから……でも止めようがないし、ホントに思い出して言うかも分からないし……ああもう、やだなぁ。

 

「……この感じ、《アナライズ》を複数回使用って感じじゃないね。それ以外か……」

 

「……《カオスブランド》、《シルバーソーン》」

 

「ッ!」

 

「ふーん、やっぱりこの2つも幻属性のアーツなんだ。普久間殿上ホテルで俺に対して《アナライズ》、イトナと連れ去られた時にネットを破壊するために《カオスブランド》、死神事件の時に《シルバーソーン》……この3つは確実でしょ」

 

「し、《シルバーソーン》はアーツキャンセルされたから不発で、」

 

「つまりアミーシャ、不発だろうと使おうとしたことに変わりはないんだね?」

 

「う。」

 

「まったく……カルマ、覚えておいてくれてありがとう」

 

「あ、いや……はい」

 

 ほぼ、全部言われた……そう、最初の《アナライズ》を使った時には、既にカルマに導力器を手渡していたから、導力器を介さなくても幻属性のエネルギーをどこからか引き出せることには気づいていた。

 咄嗟の時や、導力器を使えない時に役立つと思ってタイミングは見計らって使ってたんだけど……もしかして、お姉ちゃんが控えるようにって言ったのは、他人と違う能力を見られないようにするためって意味じゃなかった……?

 

「あの、幻属性のアーツを使うと何かいけないんですか?アミサちゃんの導力器に普通に銀色のクオーツ、だっけ……セットしてあるのに」

 

「だよね、他の属性アーツはバンバン使ってるけど、そんな制限とか聞いたことないし」

 

「……普通の人なら問題ないんだ。家族であるリーシャの意向でアミーシャにも詳細は話せないから概要しか言えないけど、この子は特異体質でね。EPの上限値が極端に低いのは知ってる?」

 

「は、はい。ラインが一直線なのにおかしいとは聞いてて……」

 

「上限値630ポイント……本来の半分あるかないか、だったよね」

 

「その制限がある代わりなのかは不明だけど……まあ、アミーシャ自身はアーツを使ったことでもう気付いちゃっただろうからキミ達にも教えてあげる。この子は、幻属性に限ってのみ、アーツ、現象を導力器無し、無詠唱で発動することができるんだ」

 

「すごい……」

 

「やっぱり……」

 

「それなら、って……そっか、積極的に使わせなかったのはデメリットがあるってこと……」

 

「……幻属性ってね、認識や精神に干渉する属性なんだ。そこにあるものをないように見せるとか、認識を歪めるとか……、上位属性は人の理に生きるものが通常では干渉できない領域だ。それを人の身でありながら道具を使わずに行使できてしまう……でも、何を媒介にしてるのかが不明。つまり、どこにかはハッキリ分からないし、代償はないのかもしれないけど、どこかに負荷がかかってる可能性があるってこと。軽いもので……今までに頭痛がしたとか、パニックになったとか、あるんじゃない?」

 

「…………」

 

 言われてみればアーツを無理やり使った時は、力を引き出してる感覚で頭が痛くなったり……死神さんとの戦いの時も、何を考えてるのか、実際に何を感じているのかとか分からなくなったりした。気づかないうちに、私は私に負担をかけていたってこと……なのかな。

 それに認識や精神に干渉するってことはもしかしたら、私の記憶に蓋をするためにワジお兄ちゃんの法術だけじゃなくて……この力を媒介にしてるのかもしれない。とりあえず、何を言っても墓穴を掘りそうだから、黙っておくことにする。

 

「もう、キミって子は本当に嘘が付けないね……

──────カルマ、ナギサ。キミ達がこの子の1番近くにいるんだろ。……どうせ衝動的に動いちゃってるんだから無理させるなとか、使わせるなとか難しいことは頼まない。代わりというのもおかしいけど……何かあった時は現実に戻ってこれるように見ててやって。多分、キミ達はアミーシャにとってのトリガーになれるから」

 

「……はい」

 

「わ、分かりました!」

 

「というわけで、アミーシャは帰ってから家族みんなに怒られるように」

 

「あう……」

 

「さ、脱線しちゃってたけど本題を終わらせようか」

 

 嘘は言ってない気はするけど、お兄ちゃんの言動はどこか……私には他にも隠されてることがあるんじゃないかって気がしてしまう。でもそんなツッコミどころなんて用意してくれてるわけが無い。

 モヤっとした気持ちを抱えながらも、ぐしゃ、と私の髪をかき混ぜるワジお兄ちゃんの手を受け入れていれば、申し訳なさそうな表情を浮かべているのに気づく。でも、それにすら何も言えないまま、教員室の扉を開けてしまった……つまり、何も聞く気はないってこと、か。だから私たちも、ついて行くしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼するよ。カラスマさん、いる?」

 

「おや、貴方はワジさんでしたか。どうぞどうぞ、改めまして私はここでアミサさん達の担任をしています。気軽に殺せんせーと呼んでください」

 

「……おい、なぜお前が返事をする」

 

「あら、アミーシャだけじゃなくていつもの3人で来たのね。それに……カラスマの言ってた教会の騎士って彼?思ってたよりヤサシソウじゃない!」

 

「……はぁ」

 

「何よ、カルマより小柄なのにビックリしただけでしょ!騎士って言うくらいだからもっとゴツイのが来ると思ってたのよ!」

 

「……確かにワジお兄ちゃんより、アッバスさんの方がゴツイもんね……」

 

「誰?アッバスさんって」

 

「ワジお兄ちゃんの部下……みたいな人。ん?部下というよりお世話係……?」

 

「アミーシャ、アッバスのことそんなふうに思ってたの?」

 

 教員室には烏間先生だけじゃなくて、殺せんせー、イリーナ先生の2人も揃ってたみたいで、声をかけられた烏間先生以外の2人が興味津々とばかりに返事を返すから、早速烏間先生が大きなため息をついた。

 殺せんせーが空いてる椅子を勧めるのに対して軽く手を振って断ったワジお兄ちゃんを、上から下まで視線でなぞっていたイリーナ先生の言葉を聞いて、今まで考えてなかったんだけど改めてカルマたちの方に顔を向けてみる。……ホントだ、この中だとカルマが1番身長高かったんだ……でも、ワジお兄ちゃんの正騎士であるアッバスさんは体格がかなり大きい覚えがあるからあんまり見慣れないと思わなかった。カルマとは全く違うかなりどっしりしたガタイのいい人だけど。

 

「……お時間をとっていただき感謝します、ヘミスフィア卿。……後ろ2人は放置してもらって」

 

「ロイドも言ってたけど僕の方が年下なんだ、崩してかまわないよ。……でもそうだな……軍関係者だけじゃないけど、当事者だし、今後もアミーシャが関わってく人達だから、例外的に正しい所属で自己紹介させてもらおうかな。

─────七耀教会、星杯騎士団所属。守護騎士(ドミニオン)第九位《蒼の聖典》ワジ・ヘミスフィア。

一応世間一般には非公開の立場でもあるから、他の生徒達には他言無用で頼むよ」

 

「無論だ」

 

「あれ、特務支援課じゃないんだ」

 

「カルマ君がいない時に戦う神父さんって紹介されてたよ」

 

「へぇ……」

 

「守護騎士……なるほど?場合によっては私達殺し屋と同じ穴の(ムジナ)ってワケ。《外法狩り》……ああ、今はもうあだ名が違うんだっけ……彼のように狩りもするんでしょ?」

 

「間違っては無いね、綺麗なお姉さん。というかケビンのこと知ってるんだ?」

 

「まあね、グラハム卿はどうしようも無い《外法》の処理専門みたいな立場だったじゃない。裏の世界じゃ名前も姿も分からなかったけど、存在だけは私達の間にも流れてたわ」

 

「世界にも12人しかいないとされる守護騎士、ですか……まさかアミサさんの身内にいるとは思いませんでしたが。星杯騎士団として名乗りを上げられたということは……」

 

「うん、回収と調査のためだね」

 

「その、せんせー達の反応でワジさんが珍しい場所に所属してるってのは分かったんだけど……星杯騎士団って何かは聞いてもいいの?」

 

「ビッチ先生もかなり物騒なこと言ってたし、回収って何持ってくつもり?」

 

「まぁ、詳細を話すにはキミ達は関係者でありつついろいろ無関係だからねぇ……話していい範囲でざっくり言うなら……僕達星杯騎士団は、《古代遺物(アーティファクト)》の調査、回収を担う戦闘部隊であると同時に事後処理もしてるんだ。で、今回このカラスマさんから《古代遺物》()()()の通報を受けた時に、リーシャから学園祭に誘われてちょうどいいから着いてきたってワケ」

 

「ほ、本トにざっくりだ……」

 

「ふぅん……で、教室で聞き取りしてたこともふまえると、今回はあの《封じの宝杖(ふうじのほうじょう)》関係ってこと?」

 

「うん、話が早くて助かるよ。本物の《封じの宝杖》は僕の同僚が破壊しちゃったから、同じものが出回るとは思えなくてね。今回使われたのは本物の《古代遺物》じゃないってことを踏まえて、教会としてもレプリカなんて代物が出回るのもあってはならないと考えてる。調査に協力、頼めるかい?」

 

 ……やっぱり、偽物でよかったんだ、あれ。《早すぎる女神の贈り物》を勝手に壊しちゃったかもって少しだけ焦ってたんだけど……偽物なら、回収とかめんどくさい事にしちゃったかもしれないけど、まだ安心だ。これで本物だったら素人の私に簡単に壊せちゃったのも問題だと思うけど。

 とりあえず、あの杖を使われた当事者としての事情聴取……でいいのかな、それぞれ思い出しながら話そうとしてた、ら。

 

「えっと……あの時は確か、僕がナイフをこう、隠して持ちながら歩こうとしてて……」

 

「再現した方が早くない?距離感の説明しにくいしさ……渚君そのまま立って構えて、アミーシャはこっち来て寝転んで、……あ、ビッチ先生鷹岡役ね」

 

「なんでよッ!!」

 

 多分、感覚の話をそれぞれの視点で考えて伝えるのがめんどくさくなったカルマが再現しようって言い出した。確かに視覚的に伝えた方が私たちとしても「こんな感じだった」で済むからありがたいと思って、素直にその提案通りに動くことに。

 でもそうなると教員室に全員が上手く入り切るわけが無いから、私とカルマは廊下に出て、あの時と同じように寝転がった格好でカルマに体を支えてもらう。烏間先生と殺せんせーも見ていた立場として動かせないことも考えると、必然的に鷹岡さんポジションに入れるのはイリーナ先生だけなんだけど……どう考えても嫌われ者役って分かってるんだから、代わりでもヤダよね。それでもプリプリ怒りながらも渋々立ってくれてるからイリーナ先生は優しい。

 

「……ポジション的にはこう、だったよね?」

 

「うーん……多分。俺等はこの格好のまま動けなくなって……あの時もアミーシャを支えてる重さも感じてたし、力を入れてる感覚はあった。なのに指1本動かないって変な感覚……何かに押さえつけられてる感じ、というか……」

 

「僕は立ってたんだけど壁に挟まれてるというか、固い膜に全身包まれてる感覚というか……強制的にその姿勢を取らされてるイメージというか」

 

「ね、ねぇ……あの時と違って固定されてないから私重いでしょ、ポジション分かればいいんだし、どいていい……?」

 

「アミーシャはこのままでいいの、ちゃんと支えてあげるから。それより、あんな状態だったのにあの時のこと覚えてるの?……だったら気になったこととかない?」

 

「もう……、んー、気になること、かぁ……、その、私確かにこんな感じの姿勢でその光を浴びたはずなの。でも、鷹岡さんに首を掴んで持ち上げられた時、このままの姿勢じゃなくて……重力に従って体が落ちてた気がする。なんていうか、体の動きを固定されてる割には動くというか、固定されてるような感覚がなかったというか……といってもあの時、そもそも毒のせいで体の自由がなかったから確信がもてなかったんだけど……」

 

「殺し屋のお姉さんの位置で対象が道具を使用、効果範囲は触れているはずのアミーシャを除いた2人のみ……その状態のカルマは動けなかったんだよね?」

 

「うん、だからアミーシャが鷹岡に連れてかれた時も動けなくてさー……」

 

「ふむ、人数制限があったのか、単にレプリカとしての性能が甘かったのか……ナギサ、歩き始める姿勢だったってことは前傾してたんだよね。体重預けて倒れそうになったりした?」

 

「えっ、うーん……そう言われてみれば倒れそうとは思わなかった……あっ、カルマ君が杖をヘリポートから落としたあと、効果範囲から出たからなのか分からないですけど、いきなり前に倒れそうになりました!」

 

「……つまり、体の自由を奪ったと言うよりは空間の時間を止めた、もしくは空間そのものを固定したと見てよさそうだね……アミーシャ、偽物って判断したのは自分に影響がないと考えた時?」

 

「う、うん。カルマと接してるのに私だけっていうのもおかしいし……。本物だったらそれこそ導力を止めでもしないとどうにもできなかったと思うけど、偽物なら外から力を加えたら破壊できそうだなって」

 

「……OK、3人とも楽な姿勢になっていいよ。殺し屋のお姉さんもご協力ありがとね」

 

「はぁい。たっく……私にアンタ達を傷つけたヤツの代わりになんてさせないでよね、私はアンタ達をちゃんと生徒として愛してる先生であって……、……あーもう、失礼しちゃうわ」

 

「ビッチ先生、急に頼んでごめんなさい、でもありがとう」

 

「……し、仕方ないわねっ!許してあげる」

 

「……、あの、……カルマ、起きていい……?」

 

「……チッ、いいよ」

 

「なんで舌打ち……!?」

 

「カルマ君、口頭じゃなくて再現したがったのってさ、アミサちゃんが照れることなく堂々と引っ付いてくれるからラッキーとか考えてでしょ」

 

「〜♪」

 

「僕って保護者の目の前でよくやるねー」

 

「ヌルフフフ、今なら危機もなく触手()がありますから存分に撮れますね……!」

 

 ワジお兄ちゃんの聞きたいことは終わったらしくて、渚くんが私たちの代わりにイリーナ先生にお礼を伝えてくれた。ブツブツ文句は言ってたけど……そうだよね、ちゃんと私たちのことを考えてくれてるイリーナ先生を短時間でも私たちのことを考えない人の代わりに配置したのは気分が悪かったと思う。

 私も体を起こそうとしたのに、なぜかカルマが私を抱えたまま起き上がれないように抑えてくる……体重を預け続けるのも申し訳なくて声をかけたら返ってきたのは不満そうな舌打ちって。それにいいよって言ったくせに離してはくれないんだね……口笛吹いて誤魔化してるけど分かりやすさとかそっちのけでそんな理由だったんだ?

 

「そして、これがその残骸だが……確認してほしい」

 

「効果は切れてるね?」

 

「ああ、回収した時点で壊れていることは確認済みだ」

 

 私たちのやりとりを無いものとしたのか、平常運転の烏間先生はガシャ、と厳重そうな小さなトランクを机の上に置いて蓋を開く……その中には、あの時見た鷹岡さんが持っていた杖、だったものが砕けた様な欠片が乱雑に詰まっていた。

 ……壊れたとは感覚で分かってたけど、ここまでバラバラになってたとは思わなかったな……

 

「……うん、確かに。責任をもって預かるよ」

 

「…………()()?」

 

「カルマ君、どうかしましたか?」

 

「鷹岡の手から落ちた時はまだ壊れてなかったはず……俺が《ファイアボルト》で吹き飛ばして高所から落とした時も壊れたような音も何もなかったんだけど……」

 

 ……あ。そういえば言ってなかったっけ。

 

「あれ、キミでも気付いてなかったんだ。さっき確認したでしょ?……ね、アミーシャ。キミだよね、このレプリカを破壊したのは」

 

「「「!?」」」

 

「………………」

 

「さっきのカルマが言ってた幻アーツ、不発のも含めて確かに3回だったけど……キミに掛けた法術の緩み方からして、()()回数が3回を超えてなくちゃおかしいんだよね」

 

「待ってよ、その時のアミーシャって意識がほとんどなかったはず……導力器だって毒からくる痙攣で体を動かせなかったから、触ることすらできてない。そんな状態で……?」

 

「さっきも言った通り、幻属性に限れば導力器無しでも幻を操ることができる。というか使えると気づいたからには、この子の場合躊躇いなく使ってると見てる……大方、他のみんなが注目しなくなったから自分が壊さないといけないって思ったんでしょ」

 

「うぅ、その通りです……ごめんなさい」

 

「そう判断したのはよくないけど間違ってもないんだよね……自分の状態を軽く見てるとこは褒められないけど、壊しといてくれたことには礼を言っておくよ。防衛省を回収に出しても危険がなかったからさ」

 

「……うん……」

 

「……あの時、何か言ってたとは思ってたけど、アレ詠唱だったわけね……知らない言葉かと思ってスルーしてた……」

 

 結局、お姉ちゃんとの約束……『幻属性のアーツはできる限り使わない』っていうのを破ったこと、使った場面も全部知られちゃった。これからは先生たちもだけどカルマと渚くんも目を光らせてるだろうし、……怒られたくないし、使わないようにしなくちゃ。

 

「さて、僕はこれを1度メルカバに置いてくるからまた後で家に行くね。リーシャも待ってるだろうし寄り道しないで帰ること。カラスマさん、コロセンセーさん、……殺し屋のお姉さんはイリーナさん、でいいのかな?……アミーシャをよろしく頼むよ」

 

「ええ、あなた方の大切な家族、責任もってお預かりします」

 

「この子は大事な生徒であり、色んな意味での教え子だから心配いらないわ」

 

「……彼女の意向を最優先するのでご安心を」

 

「うん、ありがとう。カルマ、ナギサ、キミ達を僕等の事情に巻き込んでしまったのは申し訳ない……僕等はもう数日ならアミーシャの家にいるから、なにか気になることとかあれば声をかけて。リーシャ経由でも連絡してくれていいから」

 

「はい」

 

「分かりました」

 

 

 

 

 

 こうして、ワジお兄ちゃんのお仕事も終え、教室で待っていてくれたクロスベル御一行を迎えに行き、私たちは帰路に着くことになった。

 たった2日間の事だったけど……私たちの出店といい、ステージ出演といい、お姉ちゃんたちの来訪と訓練といい……学園祭、すごく濃かったなぁ……ああ、ホントに楽しかった。さぁ、明日からはついに浅野くんたちに啖呵をきった二学期期末テストに向けての時間が始まる。これが、本校舎の人たちとの最後の戦い(殺し合い)だ。

 

 

 

 

 

 





「「「……アミーシャ?」」」

「ひぅ……」

「まったく……記憶を思い出しかけてると聞いてましたし、こっちで再会して法術が緩んでるとは思ってましたが……リーシャさんとの約束を軽く考えてませんでしたか?」

「うぅ……、他人と違うのを知られたらまずいって理由だけだと思ってて……」

「つまり私達が意図してた理由と違うものに捉えてたのね……確かに安全だろうと思ってた日本(こっち)でまさか戦闘やあなたの過去を抉るようなことに関わると思ってもなかったから……これに関しては私も甘かったとしか言えないわ」

「だとしてもよく分からないままに力を使ったのはやっぱり軽率ですよ!何があるか分からないのに……何かあっても私達は、近くにいられなかったのに……っ」

「アミーシャちゃんの想像通り、悪いことを考える人達にとってあなたは使える特異体質、利用したい人に狙われる可能性……それだけならちゃんとそう説明するわ。あなたの精神を壊さないために、記憶に関わるから伏せてたの……意地悪のつもりじゃなかったことは分かって欲しいの」

「俺達は、リーシャは、君に何のしがらみもなく、子どもらしく成長して欲しいだけなんだ。アミーシャの実力は見てるんだから強いことは知ってるよ。だけど……俺達は特別じゃないんだから守ってくれなくていい、だけど守らせて欲しいとも言わない……年下とはいえ君の覚悟に失礼だからね。それでも今はただの14歳のアミーシャとして生きて欲しい」

「アミ姫の過去も知ってるっちゃ知ってるが……悪いが今のお前にゃまだ受け止めきれねーと俺達は判断してる。お前のその自己犠牲精神を何とかして、そばでお前のことを完全理解して絶対の味方になってくれるやつが確実にいないとな……とは言っても、お前自身、思い出すことはもう望んじゃいないんだろ?」

「……うん。小さい頃のこと、覚えてなくても私は幸せだったんだって気づけたから。その幸せをくれた人たちを守るための力は欲しいけど、みんなを傷つけるくらいならいらないかな、って。お兄ちゃんたちがそんなに言うってことは……私の空白の時間って、相当ひどいんでしょ?E組のみんなには……負担になって欲しくないし、知られて離れられなくなる方が、辛いかなって」

「……アミーシャらしいけど、アミーシャにとっても絶対負担になるんだよ?キーアだって心配してるんだからっ!アミーシャはみんなの事ばっかりで、いつも自分のことは後回しで傷ついてないフリばっかりして……アミーシャだって幸せにならなきゃ、意味が無いんだよ……」

「……うん……ごめんなさい。でも、E組の人たちはみんな、優しすぎるから」

「こっちで3年近く暮らしてきて……あなたの進む道はまだ定まっていないのだとしても……あなたは、あなたのことを知らせないまま、彼等が幸せに生きてくれることを望むのよね。こっちに戻る可能性も残したまま……可能なら関わらせないで彼等を守れるように」

「……アミーシャ、キミは彼等に心配をかけることになっても少しでも表面的な関わりで終わらせるために……もしもの時はいつでも離れられるように……思い出さないことを選んだんだろう。そのためにも、記憶と能力に枷をかけるために使ってる幻の力は極力使っちゃダメだ、いいね?」

「……うん」

「……分かった。キミのまま、全力で戦っておいで。再封印、いくよ。────我が深淵にて煌めく蒼金の刻印よ……」



++++++++++++++++++++



夏休み、ホテルの屋上にレプリカ放置しっぱなしだったなぁ……誰が回収したんだろ、な思いからこの閑話が生まれました。ワジさんの立場を使いたかった。

あと、その時にチラッと言ってた『幻属性のアーツを極力使わない』ように言われた理由も拾ったつもりです。これに関しては完全にこの小説オリジナル設定なので、そういうものなんだ、と思っていただければありがたいです。

オリ主は『過去を思い出さず、今のまま』でいることを選びました。そのため、第一部は本当の意味で自分を理解してくれる人をE組側に作らず、頼らず自分で抱え込むオリ主のままなルートとなります。

次回は二学期末テスト編に入ります!

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