UA126000ありがとうございます!
前半はオリジナル要素、後半で原作に戻ります!
名無しで期末テストに参加したオリ主、その心境は?というお話です。珍しくカルマが他の人にオリ主への関わりを譲ります。……珍しい。
今回もよろしくお願いします!
渚side
今、E組の教室は喜びとはまた違ったざわめきで満ちていた。原因は言わずもがな、カルマ君が見つけてきて、そのまま教卓に乗せられたアミサちゃんの2学期期末テストの答案用紙。……正確には国語、数学、理科、社会、英語……五教科全ての答案が『100点満点』の回答がされてるのに、上から0点と書き換えられた、だけど。
E組全員50位以内という目標を達成できたかと思えた矢先の出来事だったから、驚きどころの話じゃなくて……とりあえず、僕等だけでコレについての話し合いをしているところ。
「原因……理由っていってもなー……、……アミサちゃんがこの結果に納得できなくて、自分で上から0点って書き換えたとか」
「100点が納得できないってどんなだよ……まず、全校に貼り出される順位表に名前がない時点で本校舎側も結果は把握してるってことだろ?自分で書き換えたって線は無くなるんじゃないか?」
「……考えたくねーけど、本校舎の先生の嫌がらせか?」
「本校舎の先生がアミサちゃんの名前をわざと消して、0点扱いにしたってこと?」
「……おう。生徒目線でのE組差別はだいぶ落ち着いてきてるけど、先生からのは別だろ……」
「……確かに、真尾はE組落ちの時に先生との確執があったわけだし……有り得るな」
「……いや、多分これはアミーシャが自分でやったんだと思う。名前の記入欄がキレイすぎる……一度書いて消されたんだったら跡が残るはずだよ、ほら」
1枚の答案……多分数学だね、それを手にして空白の名前記入欄を指でなぞるカルマ君に、皆が何も言えなくなる。見せてもらった答案の最終問題には、ほんの数行だけ答えが書かれてるんだけど……よく見なくても大量の計算式を書いた跡が残っている。もし、アミサちゃんがちゃんと名前を書いていて、それを別の人が消したのだとしたらこんな感じに跡が残ってるはず。
……ホントに彼女は、なんでいきなりこんな事をしたんだろう……理由を聞こうにも、アミサちゃんはいつの間にか教室からいなくなってて聞けないし。彼女の答案を手に持ったまましばらく黙っていたカルマ君は、殺せんせーを振り返って窓の外を指さした。
「……殺せんせー、まだホームルームを始めるまでに時間ってあるよね?俺、その辺探してくるからさ、行ってきていい?」
「にゅ……そうですねぇ、では……」
「待ってカルマ、私達も探しに行くわ」
「今回に関してはお前ら2人の問題ってわけでもないし。協力させてくれ」
「……、……それはそうだけど……でもお前等に探す宛てあんの?さっき机の中確認したけど、エニグマもスマホも全部入れっぱ。律は頼れないよ」
「お前なら居場所に検討くらいついてないのか?」
「探してくるって言ったじゃん。テンパった時とか見聞きしたことはあってもあの子が初めてする行動とかでもなければ知らないよ」
「むしろそれは検討つくのか……」
「なんにせよ、1人よりは2人、2人よりかはクラス全員でだろ!」
「リアルタイムで更新できるマップを作れる律を含めて28人、順位表貼るまではいたってことはまだ出てったばっかなんだから、人海戦術で裏山も本校舎も全員で探しゃあ見つかるだろ!」
「……2人からいきなり規模でかくなり過ぎだし」
いつものように1人で動こうとしていたカルマ君だったけど、殺せんせーが言い切る前に片岡さんと磯貝君が一緒に探すことを申し出る。自分がやるべきだと思ってるのか理由は分からないけど、カルマ君はその協力を渋ってて……だけど、その程度で折れるほど僕等は甘くない。
ある意味、今回起きた事は個人的な事に過ぎないんだ。今回のテストにはE組全体の目標をかけて挑んでたから皆過剰に反応してるけど……要点を絞ると『アミサちゃん個人のテストの扱いについて』なんだから、僕等には関係ないっていえば関係ないんだよね。
だけど僕等E組は、殺せんせーの暗殺で繋がり、トップ50位以内という目標を殺るために同じ場所を目指す結束力の強い集団でもある。しかもアミサちゃんはみんなを引っ張ったり積極的に前に出たりする子ではないけど、E組全員から大なり小なり愛される友達思いの優しい女の子……たった1人の事だとしても、放っておくはずがない。
「……はーーーー、しょーがないなぁ……ありがたく扱き使ってあげるから、存分に働いてよね」
「言い方がいちいち腹立たしいんだよ、お前!」
「なんだ、今のが寺坂に向けて言われた事だって気付いたのか」
「てめぇもだぞイトナァッ!」
僕等に諦めるつもりがないと察したんだろう、カルマ君は大きくため息をついて、いつものように寺坂君を雑に扱って憎まれ口を叩きながらも頼ってくれた。……こうしてみるとこのカップルって、こういう人を巻き込まないために人を頼らないあたりがそっくりだなぁ。
カルマ君に便乗する形でサラッと毒を吐いたイトナ君に詰め寄る寺坂君を何人かでなだめていると、カルマ君が「ちょっと、」と僕等に声をかける。
「寺坂はどうでもいいんだけどさ「あァ!?」……探しに行く前に1ついい?もし、俺以外でアミーシャを見つけて会話することになったら、見といて欲しいことがあるんだけど」
「……見ておくこと?」
「うん。俺も最近気付いたんだけどさ……もし、────」
◆
渚side
「(……で、僕が見つけちゃうっていうね)」
カルマ君からのお願いというか……アミサちゃんの本心を知るための手掛かりとして〝あること〟を教えてもらい、各々心当たりの場所──まぁ、大抵が裏山なんだけど──へと探しに出た。テスト返しが終わって今日この後にはもう授業が無いとはいえ、一応まだ下校時間じゃないから、根が真面目なアミサちゃんは学校の敷地からは出て無いだろうってことで。
ちなみに殺せんせーは、もしも僕等がいない間にアミサちゃんが戻ってきた時のために、教室に残るらしい。
〝渚君、ちょっと〟
で、教室から出ていく皆を追いかけようとしたら僕1人がカルマ君に止められて……参考になるかわからないけどって前置きの後に教えてくれたんだ。アミサちゃんは自分がキャパオーバーしたり、何かしら行動を起こしたりした時には、カルマ君の行動をなぞる時があるってことを。なんでそれを僕に教えてくれたのかは分からない……でも、彼はこれを見越してたのかな。
裏山にあるプール付近を見に行くというカルマ君を送り出して、僕はその手前……僕と、カルマ君と、アミサちゃんと、そして殺せんせーしか来たことが無いに等しい、2人が飛び降り暗殺を仕掛けたあの場所。この場所はかなり切り立った崖になってることもあってか、クラスメイトも来ないし先生達も訓練で使わないここに来てみたら……居たんだ。
崖から迫り出した細い木の上に、崖の向こうを見ながら危なげなく立っている彼女が。
「……律、見つけたことだけみんなに伝えて」
『皆さんを呼ばないんですか?』
「うん。きっと、人数が増えたら在り来りのことしか言ってくれないから。それに、ここはほとんど人が来ない……アミサちゃんにも逃げ場は必要でしょ?」
『……分かりました!では、皆さんには教室で迎えてあげてくださいとだけ伝えておきますね!』
小声でスマホに呼びかければすぐに律が顔を出した。不思議そうにしつつ了承の返事をしてくれた律の姿を確認して、僕は彼女の元へ足を進めた。
協調性を重視することを学んだ律からすれば、『みんなで探してるんだからみんなで迎えに行かないのか』って不思議そうだったけど、アミサちゃんのようにみんなのことを考えすぎちゃう子には逆効果だったりするんだよね。多分みんなが集まったら彼女は、本心を全て押し殺して『みんなが望む言葉』しか言わなくなってしまう……正直、僕相手でも本心を全て引き出すのは無理な気はしてるけど、少しは違うと信じたい。
「……アミサちゃん」
「……渚くん……?なんで、……あ、そっか、答案用紙……机に入れてきちゃったから、誰か……カルマが見つけたのかな?……持ってきて、ここで捨てちゃえばよかったな……」
後ろからいきなり声をかけたにもかかわらず、アミサちゃんは全く動じてなくて……軽く顔をこちらに向けた彼女はまるで見ていたかのように、彼女が教室を出たあと僕等がどう動いたのかを正確に予測している。
ただ、それは僕との会話として成り立ってなくて、自分で自分に言い聞かせてるだけのようにも聞こえた。それだけを口にして、また黙ってしまったアミサちゃんの一挙一動に注意を向けながら、僕はちゃんと会話をしようと口を開く。
「順位表にアミサちゃんの名前が載ってなくて、皆驚いてたよ。で、アミサちゃんが置いてったテスト見つけて、もう1回驚いた」
「驚いたって……みんな、怒ってないの……?」
「怒ってるっていうよりは、……うーん困惑してるって感じかな。今までにも学年のテストはあったのに、何でこのタイミングでやったんだ?って」
そう、別に僕等は怒ってない。確かに『全員で』っていう目標があったのに、皆が本気で取り組んでることも分かってたのに、なんでわざわざ0点にされるような行為をしたのかって思いはあるけど……その程度だ。
だってさっきも言ったけど、全員50位以内なんていうのはあくまでも殺せんせーが出した目標で……個人のテストをどうしたってそれはその人の自由であり、強制することなんて出来ない。まあ、扱いは0点でも、彼女は実質500点満点って結果を出してるわけだし。……ていうかそれを気にしてるってことは、もしかしてアミサちゃん、僕等に「なんでこんな事をしたんだ!」……みたいに怒られるのが嫌で逃げてきたってこと?……いやいや、そんなまさか……
「……そっかぁ……みんなは、優しいね」
「……あ、」
……なんて、思わずアミサちゃんなら有り得そうなことを想像して乾いた笑いが出そうになった時、目の前の彼女が木の上で僕の方を振り返って困ったような顔で……自然に持ち上げられた右手が髪を……正確には右側の髪の毛に指を通しながら口元を隠すようにして握る仕草を見て、僕の思考はそこで止まった。
「……えへへ、ちょっと前から気になってたんだ。名前を書かないでテストを受けたらどうなるのかな〜って……。テストが返ってきてから、みんなが目標に向けて頑張ってる中で、私だけふざけたことしちゃったなって思って……それでつい、逃げちゃったんだけど」
……………………。
カルマ君、君が言っていたのはこういう事なんだね。
「……そっか。……他には?」
「……、……え、」
「他にも、何か教室に居づらくなった理由はない?」
「……それだけ、だよ?」
心配して理由を尋ねてる風を装った2回目はうまく誤魔化されちゃったけど、カルマ君の言ってることを信じるなら……少なくとも最初の言い訳は何かを隠してるサインだ。僕の態度を不思議そうに見る彼女は気付いていない
〝──右手で髪を握る仕草?〟
〝そ。アミーシャってさ、素直すぎるくらいだからほとんど嘘つかないし、ついたとしてもすぐに分かるんだけど……たまにつく何があっても隠し通したい嘘って、俺でもほとんど分からないんだよ。……一人称が『アミサ』になる時と、右手で髪を握る仕草をする時以外は。照れた時とか隠れたい時にも髪をいじってるけど、右手だけの時は多分なにか隠したい時〟
……って。カルマ君がそれに気付いた最初のきっかけは、夏休みにホテルへ潜入した時の事らしい。僕等全員に毒を盛られてることが分かってから、カルマ君はことある事にアミサちゃんの体調を気遣っていたけどその都度大丈夫だと返されるばかり。見た感じ普通の表情や言動だったから自己申告がない以上納得するしかなくて……結果、彼女は自分の体が既に致死性の高い毒に侵されている事を倒れるまで誰にも悟らせなかった。
後から思い返したら、件の右手を動かす仕草があったらしくて……振り返ってみれば、中1で知り合った時から時々見せていた仕草だってことに気付いたらしい。その時その場面でしていてもおかしくないさり気ない仕草だからこそ全然気付けなかったし、未だに分からない時の方が多いことに変わりはないらしいんだけど。
「もう一度言うけど、僕等は怒ってなんかないよ。ただ、やった事を知らせずに黙っていなくなったから、何かあったんじゃないかって心配してるだけ」
「……ホントに?」
「ホントに。ちゃんと、そうやって説明すればいいんだよ。だから、……一緒に教室に帰ろう?」
「…………………」
今、僕の目の前にいるアミサちゃんは、カルマ君が言っていた通り表情も声色も何もかも普段の彼女と変わりないし、言ってる内容にも納得がいく。だけどまるで怒られることを怖がってる子どもみたいで……彼女の右手はこのままだとこんがらがっちゃうんじゃないかってくらい髪を指に巻き付けて、くるくると巻いて遊ばせている。
……あの仕草、どこかで見たことがあると思ったら学園祭だ。中村さんから、わかばパークでカルマ君とイチャついてるから『きしのよめ』なんてあだ名を付けられたんじゃないか、ってからかわれた時に髪をいじってた。……『子どもの前でイチャついてなんかない』っていうあれも、ある意味隠したい嘘だよね。アレに関してはバレバレだったし、そこまで隠さなきゃってほどじゃなかっただろうから、ただ顔を隠そうとした仕草かもしれないけど。
「おいで。……あ、ほら、みんな教室で待ってるって」
「……うん、……」
アミサちゃんの立つ木の根元あたりまで近付いて手を差し出しながら、律からのメッセージを見せつつ一緒に教室へ帰ろうと促すと、ゆっくりと僕の方へ戻ってきてそっと重ねられる彼女の右手……それにはあまり、力は込められてなくて……二言三言、何か言ったように聞こえたけど、ほとんど聞き取れなかった。
「……──────……」
「……?どうかしたの?」
「……ううん、なんでもないよ……それより……ごめんね。みんなで50位以内を達成するって言ってたのに、こんな形で裏切っちゃった……」
「それは僕1人じゃなくて、皆に言うことだよ。……でも実力自体は学年1位なわけだし、むしろ誇っていいんじゃ……」
「でも、……公的な記録には載ってないもん……っ」
「ああぁあぁぁ……な、泣かないで……っていうか、後からそんなに気にするくらいならやらなければよかったのに……」
「うぅ、無記名で0点にされるの知らなかったからぁ……」
「だよね、そう言ってたもんね!……あれ、……これ泣かせたら僕のせい……?」
じわりと目を潤ませるアミサちゃんには、今、何を言ってもネガティブに受け取られてしまいそうで……僕は落ち着かせようと必死だった。律にはアミサちゃんを見つけたことを報告してあるから、皆も教室に戻ってる最中だろうし……皆にバレる前に何とか泣き止ませないとマズい気しかしない。繋いだ手が痛い……ていうか、なんで1教科だけを無記名とかじゃなくて、全教科で試しちゃったんだろうこの子……
……結局、アミサちゃんは泣きかけた程度でなんとか落ち着いたから、見た目涙も泣いた跡もなかったからちょっと安心してたんだけど、教室に戻った僕等を見た瞬間にカルマ君にはものすごくいい笑顔で詰め寄られたってことだけ、報告しておこうと思う。
「な・ぎ・さ・くーん……何泣かせてんの?説明。」
「なんでアミサちゃんはここまでなんともない顔してるのに、泣きかけたって分かるのさ!?」
「え、見たらわかるじゃん」
「分かんないよ!?」
「……分からんな……なんか違うか……?」
「アレだけ普通の顔してるのに気付くって……もうカルマが怖いわ」
「あ、愛のなせる技……ってやつですかね……?」
「その愛が変態の域に達してるから怖いんだよ……」
◆
「……ごめんなさい。私の好奇心で、みんなのことを裏切っちゃった」
「はぁー……そういうことならよかったよ、私達が知らない本校舎からの嫌がらせがまだ続いてるのかと思ったから」
「ビビったけどなー……理由のない突発的なお前の行動にはマジで慣れねーわ」
「まー、テストに全力で取り組んだことも、実質1位なことも変わりないしね!」
「そうそう、誇りなさいよ?本気で取り組んだ結果は出てるんだから」
「……う、ん。ありがと」
教室に帰ってきてから、渚くんに伝えたのと同じ事をみんなにも言って、きちんと謝った。そうしたら、みんな安心したように大きく息を吐いて……曰く、私が本校舎の人たちから自分たちの知らないところで嫌がらせを受けてたんじゃないかって思ってたみたい。渚くんの言った通りだった、みんな怒ってなかった……むしろ今回のテスト云々よりもそっちを心配させてた。
「……なに?まだなんか気にしてることあんの?」
「え、や、別に何も……?」
「あれ……思い返せばお前、1度も『今回のテストで1位を目指す』どころか、『50位以内を目指す』すら言ってなかったな」
「「「…………ん?」」」
「……、……」
名前を書かなかったホントの理由は絶対に言えないけど……テストに対する向き合い方も、今回のは最初から最後までずっと迷い続けてたから、真剣に取り組んでたみんなには失礼すぎるんだよね。このテストの結果がどうであっても、私はもう会いたい人に会うって夢を叶えちゃったから……いい成績というものをとってもあまり意味ないなって頭のどこかで思ってしまって、みんなのように真剣に向き合えなかったから……
なんて思ってたら、陽斗くんにズバッと切り込まれた。……多分、数人だけとかなら気づかれることもなく、誤魔化せたんだろうけど、さすがに28人揃ってるといろんな視点で考えが進んじゃうから……これ、まずい気がする。
「そうだろ?殺せんせーと俺等が焚き付けて、カルマの宣言に巻き込まれて、浅野の宣戦布告に巻き込まれて、E組でテスト対策の教えあいをして……た、だけだよな。自分からどうこうしたいって気持ち、1度も言ってなくないか?今回」
「茶化してたカルマはともかく、真尾は『1位をとる心構えはない』って言ってそれっきりだな……?」
「……、言われてみると。そういえば中間でカルマと同率2位だったのも『勝負だったから』とか言ってなかったっけ?」
「……え、じゃあアミサ……もしかして目標も何も言わずに、努力はしてたけど、私達ほど真剣に向き合ってたわけじゃないのに1位の成績取っちゃったのは、テストに真剣だったみんなに失礼……とか考えて、それも後ろめたくて逃げた、なんて……」
「………………」
「「「………………」」」
「……マーオ、兄ちゃんに正直に言ってみろ?」
「……ひ、ろとくん、あの……そんな、こと、ないよ?」
話を広げられて、ピンポイントで答えにたどり着かれてしまった所で……正面に目線を合わせて屈んだ、ニコニコしてる陽斗くんが。な、なんでここであの時みたいにお兄ちゃんぶってるのかは分からないけど、なんとなくもう誤魔化せない気しかしない。
そ、っと一応誤魔化すようにまっすぐこちらを見てくる目から顔を背けて、少しでも顔を見られないように両手でサイドの髪をかき集めながら顔を隠したら……ガシッと両肩を掴まれ、体の向きを女の子たちの方へと向けられた。
「ふぇ、」
「思ってたんだな。あーーーもうなんなんだよ!!」
「そんでカルマ君の言ってたのはこれかぁ!違うかもだけど確かに見た事あるわ!!」
「謎!!いい成績とることを後ろめたく思うアンタの思考回路ホンッット謎!!むしろ褒められに来なさいよ!!全力で撫で回してやるから!!!」
「女子!勘違い娘を存分に褒め倒せ!!」
「「「いえっさー!」」」
「ひぇ……、」
軽くトン、と、陽斗くんに背中を押された先で待っていた女の子たちから思い切り抱きしめられ、頭を撫でられ、言葉で褒められて……こんなに褒めてもらえることだと思ってなかったから、嬉しいよりも戸惑いが勝ってしまってつい固まってしまう。いいのかな、みんなに悪いなって気持ちが無いわけじゃないけど……嫌でもないから耳は塞がずに顔だけしっかり手で隠して甘んじて受けることにした。
途中、なんかカルマの名前も出てたんだけど……なんのことを言ってるんだろう。
「さて、少しドタバタしましたが……このテスト結果を見て、この山から出たいという人はまだいますか?」
「いないに決まってんだろ!」
「2本目の刃はちゃんと持てたし、こっからが本番でしょこの教室は!」
「こんな殺しやすい環境は他に無いし……ねッ!」
女の子たちに揉みくちゃにされてる私を見つつ、仕切り直しとばかりに殺せんせーが私たちに問い掛ける……このE組から出る最低ラインの学年50位以内の成績はクリアした、あとは元のクラス担任が受入許可を出せば本校舎に戻れると。E組生は2学期の期末テストが終わったすぐ後に転級申請を出さないと、自動的に椚ヶ丘高校への内部進学は不可能となる。外部受験をするなら入ることはできるけど……内部生に比べるとやっぱり狭き門だから、これがラストチャンスだ。
でも、殺せんせーもE組のみんながなんて答えを出すのかは分かりきってるんだろう……お茶を飲みながらのんびりと聞いてきてるわけだし。みんなどこに持ってたのかな、武器を構え、メグちゃんの言葉に隠した合図を聞いて一斉射撃をする……お茶をこぼさないまま軽々と避けていく殺せんせーに、笑顔で、暗殺で答える。それを見て、受けて、先生はとても嬉しそうだ。
「ヌルフフフ……茨の道を選びますねぇ。よろしい!では、今回のご褒美に先生の弱点を教えてあげm」
──ドガッシャァァン!!
突然響いた物凄い音に思わず耳を押さえ、同時に起きた校舎の揺れにたたらを踏む。何が起きたの……?校舎の中には私たちE組生と殺せんせー、教員室に烏間先生とイリーナ先生がいるけど……学校というだけでなく『殺せんせー暗殺の舞台』であるここを壊すような人はこの中にはいない。
ということは、……外!そこまで考え、女の子の中心にいたことでそこまで揺れの影響を受けずすぐ体勢を整えることができた私は、すぐに運動場側の窓へと駆け寄り勢いよく開く……運動場に異常はない……、ッ!
「何アレ……」
「校舎が……!」
私が外に原因があると考えて走ったのを追いかけてきたんだろう、メグちゃんが私よりも教室前側の窓から顔を出して驚愕の声を上げた。視線の先には半分くらいが解体されて、崩れているE組の校舎……さっきの轟音と衝撃はきっとこれが原因だ。
私たちの声に教室の中にいたみんなも窓に近づいてきて……同じように崩れた校舎と解体を続けようとショベルを振り上げる重機を見上げて呆然としている。
「退出の準備をしてください」
「「「理事長!!」」」
「今朝の理事会で決定しました。この旧校舎は今日を以て取り壊します」
校舎を壊す業者に指示を出していたのは、浅野理事長先生だった……あと3ヶ月くらいで卒業っていうこの中途半端な時期に、この人は何を言いだすのだろう。理事長先生がいうには、この校舎を壊して卒業までの残り3ヶ月……新しく開校する系列学校の新しいE組校舎、そこの性能試験に協力しろということだった。
常に見張られ、自分の意思では逃げ出せず、まるで刑務所の生活を強いられた中での勉強……それが、理事長先生の考える教育理論の完成系だという。
「い、今さら移れって……それに、勝手すぎる!」
「嫌だよ!この校舎で卒業してぇ!」
そんな理不尽に対する私たちの当然の反論には全く耳を貸さず、私たちの前に出てくれた殺せんせーに対しても理事長先生は態度を崩さない。それどころか……
「……ああ、勘違いなさらずに。新しい学び舎にあなたの存在はないのだから……私の教育にもうあなたは用済みだ」
そう言って理事長先生が懐から取り出したのは、1枚の書類。
「今ここで、私があなたを殺します」
「ヒイィィィィィィィィィィィィッッ!!」
それは、椚ヶ丘中学校の理事長だから……上に立つ支配者だからこそ行使できる権限……殺せんせーの解雇通知だった。
◆
さっきの轟音で気付かないはずがないんだけど……外の様子を確認する前に、私たちに怪我がないかと烏間先生とイリーナ先生が教室に走り込んできた。この人たちは、ホントに生徒を大切に思ってくれている。廊下に1番近かった木村くんが誰も怪我をしてる人がいないことと事情を2人に説明してくれて……烏間先生は1度目を伏せただけで何も言わなかった。
「とうとう……禁断の伝家の宝刀抜きやがった……」
理事長先生は、このE組という校舎を殺せんせー暗殺の場として提供している立場、そして殺せんせーを教師として雇っている雇い主でもある。前に鷹岡さんがこの教室に来た時にも言っていたけど、教師の任命権があるのはこの人……だからこの場を使わせてもらっている立場である防衛省の烏間先生は何も口出しできないってことになる。
「は、はわわわわわ……ふ、不当解雇です!あなっ、あなたが理事長だからって私が人間じゃないからってとんでもない暴挙に出ましたねぇ!こ、こんなの黙って受けるわけにはいきませんよぉ!私だって何か、何か出来、そう、分身、分身します、私分身ができるんですよ!分身して学園の前で大挙してデモをしてやります!そしてそのまま……!」
「そんでコレ、面白いほど効くんだよこのタコには……」
「超生物がデモに訴えるのはどうなの?」
突きつけられた解雇通知にあわあわしていた殺せんせーがどうするのかと思っていれば、『不当解雇を許すな!』とか『浅野學峯は腹を切って地獄の業火で死ぬべきであるだって横暴だもの』とか『労働者よ立ち上がれ』とかのプラカードを持って1人デモ活動をし始めた。
殺せんせー、先生として責められることに弱いから……。自分で言ってるみたいに分身してないのは慌ててるからなのかな……?それと『あと給料やっぱり安いと思うの!』っていうカードは解雇には関係ないんじゃないかって突っ込むべき?
「早合点なさらぬよう……これは標的を操る道具に過ぎない。先程も言ったでしょう、私はあなたを暗殺しに来たのだから」
「……本気ですか?」
「確かに
磯貝くんやカルマの言葉に対してにやりと口角を上げた理事長先生は、業者の人に声をかけて解体を止めさせた。正直、この1年近く暗殺を狙ってきた私たちでも無理だったのに、突然来た理事長先生が突然仕掛けてもうまくいかないとしか思えない。
信用できなくて不振なものを見る目の私たちへ教室の中から外に出るように指示したあと、理事長先生は殺せんせーに対して一言だけ言った。
もしも
「きっと、なんで全教科で無記名にしたんだろうとか、考えてるよね……渚くんは優しいから」
「でも私って存在の痕跡を少しでもこの場所から捨てる方法なんて……私には……これしか思いつかなかったから」
「それに、もう言えないよ……」
「私はもう、時期を見計らってるだけなんだから」
「……?どうかしたの?」
「……ううん、なんでもないよ……」
「前原、よく気付いたね。ああやって、友達として声をかけるよりも俺みたいに『彼氏として』とか『保護者として』とか、それこそ前原みたいな『兄として』みたいにアミーシャが無意識にでも認識してるポジションで声かけると、結構素直になるって」
「いや……正直勢いと、ノリで……あんな分かりやすくなるとは思わんかった」
「カルマ君は知ってたんだ?」
「ん?いや最近まで知らなかった」
「え、じゃあなんで……」
「リーシャさん達が来た時に、ティオさんとエリィさん、ロイドさんが『姉として』『兄として』声をかけたらそこまでずっと頑なだったのに折れてたからさ。そうかなぁって」
「なるほどねぇ……」
「アミーシャとしては甘えたいんだよ。ただ、色々考えて最終的には遠慮しちゃうから……ああやって『甘えていいんだ、だって自分達は〇〇なんだし』って押し出したげると、ガード緩くなるみたい」
「……これからもそうしてやっか」
「今回は俺もアミーシャと同じ立場だから渚と前原に任せたけど、次からはそうはいかないよ」
「いいぜ、俺は俺でカルマが手を出せない時に構うからな!なんせ俺はマオの兄ちゃんだからなっ!」
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無記名=名無し=解雇通知(役職が無い的な)
かなり強引ですが、今回のお話タイトルはこんな意味で付けました。なぜオリ主が無記名でテストを提出したのか、なぜ教室から逃げ出したのか……表向きの理由も嘘というわけではありません。ただ、まだ何かを隠しているということを知って欲しかったので、このような形に落ち着きました。
カルマと渚が気付いたように、実はこのお話にたどり着くまでの閑話含め約100話の中で、オリ主は数回だけ嘘をついたり隠し事をしたりしてます。その時の言葉や前後の仕草をよく見ると実は、ということが分かったりします。
元々嘘つきの仕草はこの連載をする前から考えていたのですが、……オリ主が……素直すぎて……嘘をつかない……ッ!←
というわけで、ものすごーく貴重ですが、数回そんな描写があります。誤字かな……と思われた読者さんがみえるかもしれませんが、それはオリ主が隠し事や嘘をついているってサインです、よく気付かれました!(もし探してくださる方がみえましたら、おじさんぬやキーアがヒントです。彼等はオリ主が隠したい事を普通に察しちゃってる代表ですが)
ちらっとどこかの話で書いたんですが、オリ主は前原君を兄ポジションとして慕っているところがあります。それもあって、その面から来られたことから分かりやすい面が顔を出しました。
理事長先生、登場はさせられましたがキリがいいので今回はここまでです。次回こそ、生死を賭けたギャンブルですね!