暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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若干の加筆はしましたが、リニューアル前と大きく変わらないので、逆に安心して読んでいただけるかも!です!(笑)

今回もよろしくお願いします!



99話 お茶会の時間

 

「何はともあれ……学年1位おめでとう、真尾さん」

 

「……えと、……ありがと、浅野くん」

 

 2学期の期末テストが終わり、A組との勝負や理事長先生が直接仕掛けに来た殺せんせーの暗殺劇を退けた私たちE組は、冬休みまであと少しという時間をつかの間の息抜きのように過ごしていた。

 お休み前に中学校最後の学校行事が控えてるとはいえ、個々に仕掛ける暗殺以外にみんなで揃って何かをしなくちゃってことはなく、結構自由な時間を取れてる……どうせ冬休みにはE組みんなで盛大な暗殺計画を実行するんだろうし。集中しすぎも良くない、休める時には休むことが大切というのが殺せんせーの言い分。

 

 ということで私は放課後の時間を使って、浅野くんたちと約束のお茶会をしに、いつかの入りそびれたカフェへと来ていた。

 ……のだけど、私は始まったばかりなのに既に帰りたい気持ちでいっぱいになっていた。もしくは現実逃避でもして意識だけでもこの場から逃げちゃいたいなぁ……

 

「順位表にお前の名前がなかった時は何かの間違いかと思ったけどな」

 

「ケケ、模試ならともかく、まさかの学期末テストで無記名提出してるなんざ誰も思わんわ!」

 

「次の日に理事長自ら掲示を貼り替えていたから何事かと思ったよ……その日のうちに問題は解決していたんだね」

 

Amixia Mao(アミーシャ・マオ)……浅野君が教えてくれたからキミの本名だと分かったけど、初めて見た時は本当に驚いたよ。学年に僕が知らない女性がいるなんて思わかなったからね」

 

「……なんで字面だけで女性って分かんだよ……お、煮オレあんじゃん、アミーシャはどれ頼む?」

 

「え、えぇっと……どれにしようかな……」

 

「何を言ってるんだい、分かるに決まっているじゃないか!名前から既に読み取れる花のように可憐な容姿、月夜を舞う蝶の如く美しさ……姉君のいいところをそのまま引き継いだあたり、まさに真尾さんのためにあるようなものだろう?!」

 

お前こそ何を言ってるんだ。僕は名前1つでそこまで分からないし分かりたくもない。ついでに分からないのは…………何故しれっとここに居る、赤羽!」

 

 ポンポンポンとテンポよく進む会話の途中、隣から自然に差し出されたメニューに目を落としていて榊原くんの演説のような主張は半分くらい聞いてなかったんだけど、浅野くんのツッコミで若干意識が戻ってきた。

 

 ……私が現実逃避したい理由、分かってもらえるかな……?テスト前から約束してたこともあって、一応、『テストお疲れ様会』って名目で元々私と五英傑の6人で集まる予定はあったんだけど、気づいたらカルマも当たり前のように同席してたんだよね。

 浅野くんは早々に噛み付いてるし、カルマはそんな浅野くんとの掛け合い?やり取り?を楽しんでる節があるし、他の4人は触らぬ神に祟りなしとばかりにある意味我関せずと受け入れてるし、……何このカオス空間、私はどうすればいいんだろう。

 

「だいたいお前は、何故僕と彼女の約束を知っている!」

 

「そんなの浅野クンからのメッセージ見たからに決まってんじゃん。あんな意味深なメッセージで既読スルーとか、お人好しのこの子が心配してE組(おれら)に相談しないはずがないって分からなかったー?」

 

「……っ、テスト前ならともかく、最近の僕からの真尾さん宛のメッセージを何故お前が知っているのかは百歩譲って脇に置いておこう。どうせ真尾さんのことだ、僕達とお茶会だとでも素直に教えたんだろうしな!」

 

「お、浅野君だいせいかーい。お前ら5人と行きそびれた喫茶店に行くんだって嬉しそうに教えてくれたよ」

 

「嬉しそうに……そ、そうか……、いやそうじゃない、じゃあお前を誘ってないのはわかってるだろう!?彼女だけを誘ったのにお前がついてくる意味がわからん!」

 

「えー?野郎ばかりの所って分かってて1人で行かせるわけないっしょー」

 

「ぐっ……!」

 

「……赤羽(お前)が増えても野郎ばかりだけどな」

 

「「「確かに」」」

 

「……なんか、ごめんなさい……」

 

 テスト前、私が浅野くんのメッセージからA組の様子がおかしいことを察した時……その内容を見られてるわけですよ、カルマに。で、その後に浅野くんと対峙してE組が彼から依頼を受けて、浅野くんが約束の内容を使って挑発したからカルマは色々察してしまったみたい。テストが終わってから浅野くんとはメッセージアプリだけで連絡を取り合ってたんだけど、別に秘密にしてって言われなかったから今日の予定をいつもの雑談の流れで話したら、カルマは下校する時にサラッと合流していて今に至る、と。

 カルマの言い分に対して静かに突っ込みを入れる瀬尾くん。そうだね、五英傑(男5人)()だったところにカルマ()が増えただけだもんね、結局女は私1人に変わりないもんね……。言い合いを続ける2人を置いといて全力で同意したくなったところで、コトリと店員さんが苦笑しながらテーブルにコーヒーを置く。

 

「まあまあ、浅野もカルマもその辺にしとけよ。一応コレ、真尾のお祝いって名目なんだろ?」

 

「……僕としては、あれだけの騒動を起こしておいて再び君がバイトに従事していることに突っ込みたいんだが……?」

 

「いや、今回のこれに関しては一切給料はもらってないから、バイトじゃなくてただの手伝い(ボランティア)。お前らだけじゃなく……アイツらまでいたら店が回らないに決まってるしな」

 

「やっぱり気のせいじゃなかったのか……!」

 

「……赤羽君はともかく、真尾さんにはセコムがどれだけいるんだい?」

 

「あ、あはは……ここで私はなんて答えたら正解なのかな……?」

 

 注文した飲み物をテーブルに置いた店員は、ご存知E組の学級委員長である磯貝くん。そう、ここは〝kunugi-kaze〟……体育祭の前に浅野くんたちと訪れて結局お茶しそびれたあのカフェだ。磯貝くんは校則違反であるアルバイトを生徒会長直々に黙認されたことで、今でもたまにこっそりバイトを続けているみたい。

 今日に関しては、浅野くんがここに来るという前情報(私が行くってことを伝えたんだけど)があったから、文句をつけられないように店長さんに賄いは欲しいけど給料はいらないという交渉をしたらしく、ボランティアでシフトに入っているらしい。だから店の制服を着ないでエプロンだけつけてたんだ……アルバイトは校則違反だけどボランティアはむしろ推奨されてることだもんね。

 

 ……で、浅野くんがテーブルに拳を打ちつけて震えてる理由は、磯貝くんが目線で示す向こう側のテーブルに見慣れた集団……E組のクラスメイトが何人もいるからだったりする。こっちのテーブルまで来ることは無いけど、私からでも見える表情からして多分、……いや確実に見てるし聞いてるよね、あれ。

 榊原くんがセコムって表現するのもなんかわかる気がするけど、あれって私についてきてるの……?うーん……殺せんせーが覗きに来てないだけマシなのかな……

 

「ま、俺はアミーシャに対して下手に手を出されないように代表して番犬しに来ただけだし、話すならどーぞご勝手に」

 

「……邪魔をする気は?」

 

「場合による」

 

「……、…………っ、………………っ、……まあいい。赤羽は空気だと思うことにする」

 

「自己主張の激しい空気だな、見た目的にも」

 

「黙れ、そう思わないとやってられない。僕は最近イラついてるんだ……主にうちの父親のせいで……!」

 

「……理事長先生、そんなに前と違うの……?」

 

 磯貝くんに渡されたバナナ煮オレに口をつけながらひらひらと手を振って視線を外したカルマを、浅野くんは長い沈黙……というか葛藤のあと、無視することに決めたらしい。そして、あの日以来家でも学校でも接し方が変化したという理事長先生の愚痴を漏らし始めた。

 ……浅野くんと理事長先生は親子以前に物心ついた頃から『教師』と『生徒』の関係だったんだって。必要以上に会話のない、家庭というより教室という言葉が適していた生活をしてきて、傍から見れば今更かもしれないけど、教師から父親になろうとする理事長先生の態度の変化が、浅野くんはなかなか受け入れられないみたい。

 

「とにかく会話が増えた。顔を合わせれば話しかけてくる」

 

「……?会話が増えるのは、いいことなんじゃ……?」

 

「……まあ、その日の予定のすり合わせや株価の話でやり合うのはまだいいんだ。まだ理事……父さんの教育の延長線上だと思えば我慢できる」

 

「俺等からしたらその会話内容が既に異次元だと思うんだが」

 

「会社かよ……」

 

「浅野親子だからね……」

 

「問題は呼び名が変わったことだ……今までこの歳まで、徹底して『浅野君』か『君』としか僕のことを呼ばなかった男に『学秀』と呼ばれる恐怖がわかるか……?」

 

「……えと……」

 

「それは……確かに不気味さが……」

 

「くん付けちゃん付けじゃないだけマシじゃない?学ちゃんとか、がっくんとか」

 

「……っおぞましいからやめろ赤羽!想像だけでも寒気がする!!」

 

「てかお前空気に徹するんじゃなかったのかよ」

 

「いじれるとこではいじらなきゃね」

 

「がっくん……かわいい」

 

「真尾さん?」

 

 家族としてあろうとするのはいいことだと思うんだけど……軽く顔を青ざめさせながら寒気がするとまで言われるって……理事長先生はどれだけ先生以外の顔を見せてこなかったんだろう。家柄的に近いものがある榊原くんにはわかる所があるのか頷いてるし、他の3人も便乗して色々と愚痴を吐き出し始めた。

 ……それは決して悪口というものじゃない、ただ、人と正面から向き合おうとしてるからこそ出てくる愚痴。私は聞くことしか出来ないけど……こういうのなら、聞いていても心は痛くない。

 

「……それに……、……」

 

「……?どうかしたの……?」

 

「いや……、……話し続けた僕等にも非はあるんだが……これだけ愚痴を聞かせてるのに、君は嫌な気分じゃないのか?」

 

「……?」

 

「……アミーシャ、コイツらの話聞きながらニコニコしてたからね?負の感情ぶちまけられてんのに、嫌な顔1つしなかったじゃん……それがなんでなのかって事」

 

 結構饒舌に話し続けていたのに、話を聞いている私の顔を見てピタリと口を閉じてしまった浅野くんたち。いきなり黙るなんてどうしたのかと思えば、手元のコーヒーを一口飲んで少し私の機嫌を気にした表情で気遣う言葉をかけられた。

 いきなり話を中断してまで何のことかと思ったんだけど、ここまで静かに私たちの様子を見てたカルマが教えてくれて何となく把握する。……笑って聞いていた自覚はなかったんだけど、別に嫌ではなかったし……聞きながら考えてたことをあげるとするなら。

 

「……今までは5人とも……特に浅野くんなんて、『A組の1番』どころか『学校の1番』っていう責任ばかりで『自分以外はみんな下』って考えだったでしょう?だから自分に向けられる他人の感情とかを切り捨ててるように見えてたの。……でも、今はまだ戸惑ってるみたいだけど、自分たち以外を受け入れようとしてるように見えたから。そんな人たちの話が嫌な気持ちになるはずないし、私でいいならなんでも聞く。それに5人とも、私にとっては大切な友だちだし……どこかで吐き出さないと疲れちゃうよ」

 

「「「…………」」」

 

「……えっと、私……変なこと、言った……?」

 

「真尾さん……」

 

「キミって子は……」

 

「あははっ、……アミーシャらしいよ、人の本質を感じ取って負の感情まで受け入れるあたり」

 

「わ、ぅっ!」

 

 感じていた通りのことを言ってみたら、瀬尾くんと荒木くんと小山くんの3人がそんなことを言われるなんて……みたいな表情で固まってしまった。榊原くんと浅野くんは苦笑いだしカルマは笑ってるし、突っ込まれてない以上失言はしてない、と、思うんだけど。

 まさか自分の発言でこうなるとは思ってなかったから、どうしようかと視線を泳がせていれば、頭に力が加わって強制的に顔は下を向かされて視界はテーブルだけになった……撫でてると言うより通りがかりに押さえていった感じ。私の頭を押さえるように撫でた犯人は笑いながら立ち上がった。

 

「……さてと、お前らがアミーシャを傷つけることはしないって分かったし、俺は向こうのゲス共の牽制に行こっかな〜……」

 

「赤羽、お前……」

 

「……さっさと済ましなよ、俺は何も聞かないでやるから」

 

 笑いのおさまったらしいカルマは、残っていた煮オレを飲み干すと席を立って、奥のE組が集まっているテーブルへと歩いていった……多分、彼なりの気遣いなんだと思う。

 触れていったカルマの手が離れ、顔を上げると浅野くん以外の五英傑みんなでその後ろ姿を見ていて……私が顔を上げたことに気づいたのか視線が戻ってきた。そっと、浅野くん以外の4人が席を立って磯貝くん(店員さん)に話しかけに行く……彼等も空気を読んで、かな。

 

「はぁ……お膳立てがとんでもなくわざとらしくて腹立たしい上、結果は分かっているんだが……それでも、聞かせてくれるか?」

 

「……うん」

 

 まっすぐ私を見てくれている浅野くんに、私もちゃんと応えなくちゃいけない。大きく息を吸い込んで、ゆっくり吐く……かなり長い間、待ってくれてた彼に対して、誠実に。

 

「……ずっと、それこそ私が知らない時から気にかけてくれてありがとう……気づいてなくてごめんなさい。私、浅野くんが理事長先生の意思じゃなくて……浅野くんの意思で私を見てくれてるって知った時、嬉しかった」

 

「……ああ」

 

「最初の頃は『本校舎の人』っていうだけで怖くて仕方なかったけど……だんだん怖くなくなったのって浅野くんがきっかけなんだ。五英傑の他の4人とも接して、少しずつ関わりが増えて……私、幸せだった。でも……」

 

「…………」

 

「……ごめんなさい。私、恩人とか大切なお友だちとしてなら見れるけど……浅野くんの気持ちには応えられません」

 

 頭を下げて、お付き合いを断る返事をした。承諾のお返事もなかなか言い出せなかったけど、お断りをするのも……結構つらいものがある。私なんかを好いてくれてるって知ってるからこそ、余計に。

 浅野くんは最初、じっと私のことを見ていたみたいだけど、大きく息を吐き出してから下げていた私の頭を撫でてきて……そっと顔を上げてみれば、残念そうな顔で笑っていた。

 

「……正直、赤羽とどうなったかの報告もなかったし、僕でもいけるんじゃないかと思ったんだけどね」

 

「それは……、お付き合い始めた直後からちょっと周りがバタバタしてて」

 

「分かってるさ。……返事、してくれてありがとう」

 

 カルマと付き合い始めた直後って、イリーナ先生が攫われた死神さんの騒動があったんだよね……その後も結構バタバタしてて、浅野くんと会う機会もなかった。あまりにも忙しない毎日が続いていたこともあって申し訳ないけど忘れかけていた約束だった……学園祭で瀬尾くんたちから促されなければ、そのままなあなあに流されて、今日みたいな機会はもてなかったかもしれない。

 

 この後、明らかに告白の返事をし終わったことに気づいたんだろう彼等が席に戻ってくるまで、少しだけ2人きりでおしゃべりした。これからの進路のこと、いつものように勉強のこと、A組の様子や機密に関わらない程度にE組のこと。

 そして、実はこのお茶会は学年1位をお祝いするって名目の裏に、理事長先生の洗脳で心配をかけることになった4人が元気だって姿を私に見せるために計画されたんだということを教えられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、さっさと話題を変えよう……ここからは友達としての好奇心だ。学年50位以内という本校舎復帰のノルマを達成しても、今年のE組生は全員が残留を選んだ。2学期中間テストを終えたらE組生の進学は受験となる……この先の進路、真尾さんはどうするんだい?」

 

「……浅野くん、切り替え早いね」

 

「悩んでいても仕方ないしね……そもそもそれくらいの精神がなければ椚ヶ丘の太陽(支配者)なんてやってられるか。それにキミの恋人にはなれなくても……アイツに言えない話を聞けるって立場にはなれるだろう?」

 

「……恋人にはなれなくても……うん、支え合える立場には絶対になれるよ。私のお姉ちゃんも好きな……ううん、大切に想う人がいるけど、どうしても返事は貰えない立場だから代わりに支え続けたいんだって言ってたから」

 

「……リーシャ・マオさんのような素晴らしい方に愛情を向けられて応えられない人がいるんだね?その事実の方が驚いたよ」

 

「なんていうか……ホントなら交わっちゃいけない人、だから」

 

「ふむ……でも、僕等は違うだろう?それに、……そうだな、せっかく新しい関係になるんだ、僕から1つ願い事がしたいんだけど?」

 

「私にできることなら……」

 

「……──────……?」

 

「え、……、私は、いいの?」

 

「君だからいいんだよ。どうかな?」

 

「……うん、いいよ」

 

「ふふ、ありがとう。どうせなら赤羽の前では絶対にそれでお願いしたいな。これくらいの意地悪は許してもらいたいね」

 

「んー、意地悪になるのかは分かんないけど……うん、そうするね。……、じゃあ、誰にも言えないお話を聞かせられる人だからこそ、……カルマには……ううん、E組のみんなには、絶対に伝えないつもりのこと、教えてあげる」

 

「……え?」

 

「私ね……────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

「バイト(仮)の磯貝を除外するとしても前原に岡島、杉野、渚君、イトナ。女子は茅野ちゃんに中村に奥田さん、神崎さん、速水さん、倉橋さん、矢田さん、片岡さん、岡野さん、不破さん、原さん、狭間さん……って律もスマホにいること踏まえたら女子全員いるじゃん。しかも男女合わせてクラスの過半数いるし……なにやってんの全員、暇なの?」

 

「だってさー……気になるじゃん、生徒会長サマがどうやってふられるのか!」

 

「素直故に残酷な言葉で突き放したりしてな!」

 

「お前は真尾に何求めてんだよ……Sっ気?いやいやあいつにゃ無理だろ……」

 

「アミサちゃんが浅野君達とのお茶会を楽しみにしてるのは分かってたから邪魔はしたくないけど……1人で男の人ばかりの所へ送り込むのは、ちょっと……」

 

「心配して集まってみたら気付けばこんな大所帯になってました。場所の提供を店長さんに交渉してくれた磯貝君には感謝ですね」

 

 さすがに分かりきった応えを貰うところを、浅野クンだとしても俺に見聞きされんのは嫌だろうと、俺は思いつきを装って隠れるつもりのないコイツらの席まで移動してきた。ま、浅野クンはどうでもいいし、嫌がらせで残ることも考えるには考えたけど……きっとアミーシャも聞かれたくないだろうし。

 で、誰が来てるかまでは知らなかったから改めて確認してみれば……女子はクラス全員そろって甘味系頼んで食べてて、男子は……うん、想像通りの(ゲスい)メンツだった。前原と岡島はこの手のネタに食いつくのは言わずもがな、渚君と杉野は俺等といつも一緒に下校してるからだろうし……イトナはこの後アミーシャの家で夕飯食べるってことと、なんだかんだで姉のように慕ってるアミーシャをイトナなりに守ろうとしてるからだろう。

 

「ていうか私達は女子会も兼ねてるから。男子はあっちのテーブル戻ってよ」

 

「こっちの方が近いし声が聞こえるかもしれない」

 

「まあそうだろうけどさ……」

 

 聞いてる限り、女子が元々座ってたテーブルに男子……といっても渚君と杉野とイトナに関しては元々のテーブルに居るから、あの2人(前原と岡島)が潜り込んでる感じか。女性限定なら気遣いができるモテ男はさりげなく色々世話焼いてるからいいとして、岡島……隅に追いやられてるし。いつもの事だからほっとく。

 

「てかさ、考えようによっては真尾って魔性の女だよな〜」

 

「あー、なんか分かる気がする」

 

「学校一の不良と理事長の一人息子の2人に告白されてるわけだもんね……どっちもイケメンだけどタイプも中身も全然違うのに」

 

「そうでしょうか?アミサちゃんはカルマ君と浅野君は似た者同士で仲良しさんだってよく言ってますけど……」

 

「あんなのと似た者同士とか、勘弁してよ……」

 

 確かに俺と浅野クンが顔を合わせるたびにアミーシャがよく言ってるけどさ、一緒にされたくないね。……おいそこイトナ、「同族嫌悪だな」とか言ったのしっかり聞こえてんだよ。パフェ食いながら誤魔化すな。

 少し自分がイラついたのを自覚し、イトナの方へ足を向けようとした時、ふいに店内のBGMに紛れていて気にもしてなかったテレビの音声が耳に入ってきて、意味もなく、何となくそちらへ視線をやった。

 

『──次のニュースです。○日午後8時頃、東京都○○市内の林道で男性の遺体が発見されました。被害者男性は○○○○さん。○○さんは次の議員選挙にも出馬予定で──』

 

「……殺人事件、か」

 

「……なんかさ、今まではああいう殺人事件とかのニュース見ても、言っちゃ悪いんだけど私達からしたら他人事って感じだったけど、俺等が暗殺(アレ)に関わるようになってから見ると変な感じしない?」

 

「……身近に感じるよね、なんとなく……私達の場合、対象はタコだから微妙だけど」

 

「しかもこのニュースの場合、いかにも権力者の暗殺って感じがまた深読みしちまうっていうか……日本でさすがにそれはないだろうけど」

 

「でも殺し屋が実在する以上どうなんだろうね。アミサちゃんも《(イン)》さんっていう伝説の存在が故郷にいるとか身近な存在みたいだし」

 

 偶然流れたニュースは、殺人事件について扱ったもの……いつもなら右から左に流れてくそれが気になったのは、俺等が普段から殺せんせーの暗殺、なんてものに関わってるからだろうか。

 俺の他にも何人かそのニュースが耳に入ったみたいで、話題がなかったこともあり機密事項は伏せながらだけどなんとなくで会話が進んでいく。

 

「殺人ならぬ殺タコって?……それなら既にやってんじゃん、カルマが」

 

「その後にたこ焼きになって帰ってくるまでが流れだぞ」

 

「…………」

 

「っておい!カルマストップストップ!」

 

「カルマ君、耐えて耐えて。ここ一応店の中だから!」

 

「……チッ、しょーがないなー……」

 

 いつぞやの黒歴史を掘り返しやがった男2人を締め上げようと、指を鳴らしながら無言で近寄ると、慌てたように磯貝と渚君に止められた。多分この場にアミーシャがいたら、彼女も無言の圧力で詰め寄るとは思うけどなー。

 本気でやってたつもりは無いけど、実際店を荒らすわけにもいかないから盛大な舌打ち1つで諦めてやることにする。店の中だからダメだってなら、外ならいいんでしょ?オーケー把握把握。

 

「カルマ君、悪い事考えてない?角が見える気がする……」

 

「気のせい気のせい〜……ま、先生達も言ってたっしょ、俺等が相手に出来るのは殺せんせーだけ、()()の暗殺、もとい戦闘はよっぽどしないんだから。片足突っ込みかけてるとはいえ、俺等と殺人鬼とか殺し屋の生きてる世界は違うんだし、難しく考えなくていいんじゃね?」

 

「……論点ずらされた……」

 

「話を元に戻しただけだって。続けるけど……本物に比べたら、俺等なんて赤子同然だよ。どう頑張っても本職と学生じゃあ、同じ位置には立てるわけないんだからさ」

 

 渚君と話しながら思い出すのは、戦闘が得意で武器も持ったメンバーを集めたチームだったのに、素手の相手に全く歯が立たなかった、あの死神との戦い。実際に人を殺してきた本物の殺し屋達と、ちょっと暗殺のために1年足らずの訓練を受けただけの学生と、今も国を守るために強くあり続ける烏間先生との差を思い知らされた。

 俺だって散々喧嘩してE組の中じゃかなり強い方だと自負してる……だけど、あの人達にとっては相手にならないどころか、眼中にすら入れてもらえなかった。途中で現れて協力してくれた《銀》さんもそう……依頼人(烏間先生)からの頼みだからって手助けしてくれたけど、超常的な力を使いこなす彼は俺等を圧倒した死神すら簡単に騙してしまった。

 

「まぁなー……」

 

「そもそもなろうと思ってなれるようなもんでもないしね」

 

「そ、違う世界に生きてるんだから。俺等は俺等の場所から殺ればいいんだよ」

 

 俺等が突っ込みかけてる世界ってのはそういう場所なんだろう。だけど殺せんせーも烏間先生も、力は与えてもギリギリを踏みとどまれるように制止してくれてる。だって大量の本物の暗殺者を生み出すわけにはいかないから……そういう進路を希望したなら別だろうけど。

 

 どうでもいいことを話していたせいでアミーシャと浅野クンの会話を全く聞いてないことを思い出した時には、とっくに2人は雑談に入っていて、告白の件は聞けずじまい。どういう風に話したのかは分からないまま終わったけど、2人がギスギスすることも無く上手く話がまとまったみたいで安心……いや、別に心配してたのはアミーシャだけだし。

 

 

 

 ただ、邪魔しないようにと別の話題で盛り上がっていた俺等は、気付いていないところで油断していた。

 

 

 

 俺等は自由に雑談してたけど、殺せんせーの暗殺に関することは伏せて話していた。当たり前だ、この店はほとんどE組が占めてるとはいえ、国家機密を漏らしてはいけない対象(浅野クン達五英傑や磯貝以外の店の人)がいる。下手にしゃべって記憶消去なんて冗談じゃない。

 でも伏せていたのは『殺せんせー』のことと『俺等がその暗殺に関わってる』ってことだけで、他は自分達の考えてることがダダ漏れ……つまり、あのニュースに対する感想は普通に話してた。俺等があのニュースについてどう思ったかについてだし、五英傑にだって別に聞かれてもいいんだけど。隠そうとせずにこうやって普通に話すと、話してる相手以外にも話してることは聞こえてるっていうのを完全に忘れていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……違う世界、か」

 

「どうかしたかい?」

 

「……ううん、……なんでもないよ」

 

 

 

 

 





「おかえり、終わったの?」

「うん、話すのは楽しかったけど、お付き合いはお断りしてきた。私に学秀くんはもったいなさすぎるよ……正直、カルマもなんだけど」

「えー、それでも俺を選んでくれたんでしょ?……って、ちょっと待って。今聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする」

「?」

「アイツのこと、なんて?」

「学秀くん。なんか、お互いに名前で呼び合いたいんだって。特にカルマの前では絶対そう呼べって言われたんだけど……なんでか分かる?」

「……あ、のヤロォ……!!」





「アミサさんは強いな」

「だな」

「天然が入ってるのは相変わらずだけど……浅野君が名前呼びを頼んだ理由も分かってないんだろう?」

「多分な。独占欲の強い奴なら内心キレてるんじゃないか?」

「それが狙いだからいいんだよ。ただ、改めて思ったが彼女は危うい」

「どういう事だ?」

「……彼女が話す言葉には、聞いている僕達は助けられることが多い……だけど、その対象に自分を当て嵌めてない」

「……というと?」

「彼女は言っていたな……『自分に向けられる他人の感情を切り捨ててるように見えたが、今は自分たち以外を受け入れようとしてる』と。彼女から見て僕達はそうかもしれないが……」

「言ってる本人がそうしているように感じない、と。確かにね……」

「いつか誰にも相談せず、何かやらかしそうだな」

「既に期末でやらかしてないか?」

「「「「「…………………」」」」」

「……はぁ……杞憂だといいんだがな」



++++++++++++++++++++



お茶会をしてみたらE組生がほとんどついてきちゃった、の図。
女子は五英傑に送り込んだ妹分を待つ間、本当に女子会やってました。終わったらオリ主も引き込んで再開する予定です。男子?向こうにテーブル取ってあるんだからそっちでやってよ、ここは女の園です!……あ、磯貝君は別だけど。な人が多い。

暗殺っていう非日常な生活を送っていたら、常日頃耳にするニュースの感じ方も変わるんじゃないかな、と考えて今回のお話を練りました。書いてる作者も分かるはずないのですが、もしも、を考えるとこれがしっくりきたので……

期末テストを終えて、表面上に変化はなくてもお互いに認めあってたらいいなと思います。
そして浅野理事長先生が、親子のかかわりを持とうとして浅野君に気味悪がられることってなんだろう……って考えた結果こうなりました。在り来りかもしれないけど、嫌な子は嫌じゃないかなぁと。


では、次回は冬休み前最後の学校行事です!

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