めちゃくちゃ更新遅くなりましたすみません!!
ハグの日に合わせた話を書いてたら迷走して戻ってきました。近いうちに番外編で出します。
UA131000over、お気に入り399件ありがとうございます!
今回もよろしくお願いします!
カルマside
「……ぬぬ……ぐ……ッ、何とか……何とか手は無いものか……ッ」
俺等と鉄格子を挟んで向こう側、烏間先生が手に持っているのは『死神』から奪い取ったスマホで、その画面を指一本でタップするだけで、俺等が閉じ込められたこの牢屋のどこかが開く、らしい。まあ、死神があの端末使って操作してた扉は天井の格子戸だったから開くのはあっちだとは思うけど。で、
理由はねー……言わずもがななんだけど、俺等側でニヤニヤと笑っている殺せんせー……『死神』の周りの犠牲を気にしない手法とはいえ、こんな簡単に暗殺成功寸前の状況まで追い込めたのだから、烏間先生的には生徒だけを逃がして先生だけ閉じ込めたままに確実に殺したいところなんだろう。
……あー……っとにムカつく、あのナメた顔。
「出ようと思えば出れるんですこんな檻。マッハで加速して壁に何度も体当たりしたり、音波放射でコンクリートを脆くしたりね。ただ、それはどれも一緒にいる生徒にとても大きな負担をかける……だから貴方に『
ま、殺せんせーがその思惑を分かってないわけが無いし、おちょくる言い方をしつつも出る方法を考え付いてないわけも無く、俺等を気遣うためにやらないってのもみんなが分かってるわけで。最後に大きくため息をついた烏間先生は、諦めたように画面のボタンを押そうとした、はずだった。
それを止めたのは黒衣の手……ピ、と烏間先生のすぐ隣に立っていた《銀》の分身が先生の腕を掴んで止めて、視線をそのままふいっと背後にズラした。怪訝そうに彼を見ていた先生は、それを見ていた俺等も誘導されるがままにそちらを向くと……
「……なんだ、まだ脱出していなかったのか?」
「「「……っ!!」」」
ぐにょん、と空間を歪ませて2人目の《銀》が……分身だと思われる方はずっとここにいるし、多分、こっちが本体だと思うけど……呆れたような声色で話しながら現れた。烏間先生も一瞬硬直してたし気付いてなかったでしょアレ。マジで全然気配なかったんだけど。
「……ッあー……あのな《銀》殿、あなたのプロ意識は買っているが、頼むから味方には気配を消さないでくれ……反射で攻撃したらどうする……」
「フフ、性分なものでな。反撃されたならば返してやるから安心しろ。……それで?『死神』はお前達なりにはとうに無力化したのだろう、なぜさっさと出ようとしない」
「……いや、開けるさ。ただ、ここまで来たら子ども達を犠牲にせず超生物のみ檻に残せないものかと抗いたくなっただけだ」
「ああ、なるほど……組織に属するが故のしがらみか」
小さく笑う《銀》はどこか言い聞かせるような口調の烏間先生と話しながら檻の方へ近付いて、どこか興味深そうに鉄格子をカンカンと軽く叩いたり触ったりしている。……そういえば、ここで『死神』と契約破棄してから直ぐに脱出のために色々やってもらってたし、その時も分身を置いて離れた時も檻には一度も触ってなかったもんね、この人。
触手が溶けるから殺せんせーが触れないこの檻、気になってたのか……だとしても今?マイペースというか呑気だよねこの人、なんて思っていれば烏間先生を止めていた分身の方の《銀》が静かに離れて空間を歪めながら檻の中へと入ってきた。歩いて俺等へと近付きながら視線をめぐらせると、自分の近くから離れろと言うように静かに腕を軽く振ってきて、俺等は壁の近くへと誘導される。《銀》の分身自体は烏間先生達がいるのと反対側……背後にある鉄格子へと向かい、同じように鉄格子に触れている。
「……時にカラスマ、この檻は政府が必要として作ったものか?それとも、『死神』が今回のために黙って作ったものか?」
「……?ああ、この地下貯水施設そのものは国が作ったものだが、明らかに追加されたものに関しては政府は一切関わっていない。むしろ国の洪水対策の狭間にこれがあっては万が一異物が挟まった際に機能しない可能性があるからな、暗殺も失敗に終わった今は早急に取り除く予定だが……」
「ふむ……ならば今、破壊しても構わないな?」
そういうや否や、2人の《銀》はあの大剣をどこからともなく取り出して右手に構え、体勢を低くして……って、え?この人まさか物理的に檻壊そうとしてる?
「ま、待て!なんでそうなる!」
「お前の持つ端末で操作できる扉は天井の格子。開けたとして外に出るなら防衛省の手を待つよりそこの超生物が抱えて一気に上げた方が早い……が、それはイコール超生物に借りを作ったことになる。
「それは、そうだが……、だからってな……」
「ヌルフフフ……私は生徒達を助けられるなら何でもいいんですがねぇ」
「フフ、それに。せっかく潜入したというのにほとんど体を動かさずに帰るのも癪だ」
「……お前、さてはそっちが本音だろう」
「さてな」
「はぁ……、いいだろう。生徒に当たらないようにしろ」
「わかっている」
……確かに《銀》は殺せんせー暗殺のために『死神』と契約を結んでた。とはいえその内情は『死神』が自分の暗殺の邪魔をされないように、契約を盾に身動きが取れないようにしていたようなもの……これまでの言動を見る限り、結構自由な暗殺者だろう《銀》にとっては結構ストレスだったのかも。
ちょっと楽しそうに烏間先生を言いくるめた《銀》は改めて俺等を壁から離れないように指示すると、ぐ、と右手の大剣を抱え込むように身体に力を込めたかと思うと、ブワリと俺等にまで感じる威圧感が増して……そのまま、
「「ハァッ!!」」
──────ガッシャァン!
……一撃だった。竹林の爆薬でも壊せないと言われ、触れない殺せんせーや非力なビッチ先生はもちろん、素手の烏間先生、檻の外まで『死神』を拘束するために来ていた防衛省の人達も破壊せず端末で檻を開けようとしていたのに、《銀》は大剣の一振でいとも容易く破壊してしまった。振り返れば背後の鉄格子も《銀》の分身によって破壊されている。
「……フン、造作もないな」
「内功を練り上げ、解放する……今のクラフトは≪麒麟功≫ですか。《剣聖》ら武の達人が使う爆発的に身体能力を上げる技術をここまで使いこなすとは、さすがは伝説の魔人ですねぇ」
「お褒めに預かり光栄だ。……、あぁ、そこの防衛省職員、拘束したからと気を抜くな。相手は何処に何を隠しているか分からないだろう?」
「は、」
「───ッ……」
「……ぁ……」
「……え?あっ!す、すみません!!」
「何?何かあったの?」
「さぁ?……でもあっちって防衛省の人達が『死神』を捕まえてるところだよね」
「……、……《銀》殿」
「お前達の戦いは見ていたが、『死神』は身体のあちこちに暗器を埋め込んでいただろう。両手足を拘束しただけで無力化したとは言い難い……お前の一撃で意識を奪ったからと気を抜くのは早計だ」
「……はぁ、……あぁ、生徒達への配慮、感謝する。肝に銘じておこう」
大剣を軽々と納め、軽い動作で体の向きを変えた《銀》は軽く腕を振り抜いた、ように見えた。今、何か、投げた……?気になってその動線を追おうとした時には防衛省の人達が壁になっていたけど、隙間から見えた先にあったのは、針のようなものが刺さり、ガクリと体から力が抜けたように崩れ、動かなくなってしまった『死神』の姿だった。
クラスメイトは『死神』の方で何かあった、くらいの認識らしく不思議そうなざわめきがあるだけだった。誰も、慌ててないし、怯える気配もない……多分、俺等の目の前じゃない所でのことだから、しっかりその瞬間を見ちゃったのは俺だけ、なのかもしれない。一瞬、俺の中にザワつくものを感じたけど、直接目視したわけじゃないから、どちらかというと戸惑いも大きい。……まさか、《銀》は『死神』にトドメをさして、
──────ピト
「──────ッ!?!?」
「経絡を突いて気の巡りを遮断しただけだ。しばらくは眠ったままだろうが、別に死んだわけじゃない」
「ッ!あ、《銀》……」
「お前は敏いな、赤羽業。E組の子ども達の誰もが気を向けていなかったことに気が付いている。自身に、周りに危害を加えようとするものが他にないか無意識に私の動きを追っていたんだろう。その警戒心の高さは評価する……が、いつか知らなくていいことにまで首をツッコミそうだな」
「……そう、かもね」
「……安心しろ、お前達を
首筋に何かが触れる感覚に驚いて慌てて手をやれば、それはいつの間にか俺の傍に来ていた《銀》の手だった。ほとんど黒衣に覆われた彼の、唯一と言っていいほど数少ない黒衣から見えている肌色に、勢いで掴んでしまったその手の体温に、圧倒的な強さを見せるこの人も人間なんだと再認識する。
いきなり触れられて驚いたからか、あんなに大きな武器を振り回してるくせに小柄な見た目に違わない小さな手に逆に動揺したのか、いつの間にかあれだけザワついていた気持ちもどこかに行っていた。……そう、小さいんだ。こんなに小さいくせに、この人は俺等より、俺より強い。条件さえ整えば、もしかしたら烏間先生よりも……。それに、……やっぱりこの人には何処か重なるものを感じて──────
「…………」
「……まだ、何か不安か?」
「え、……あっ、」
目の前の《銀》が中々いなくならないし、淡々とした口調の中に若干の心配の色を感じて思考の海から上がってみれば、俺は彼の手を握りこんだままだったらしい。そのまま彼の手をいじっていたらしい手を慌てて離せば、目の前の人はクスクスと笑いながら俺から距離をとった。
「……フフ、お前、私を脅威と感じておきながら中々度胸があるな。何か、お前の思うところでもあったか?」
「~~っ、なんでもないからほっといてよ!」
俺の事を可愛らしいとでも思っていそうな口調に恥ずかしさが込み上げてきて、ついぶっきらぼうに言い返してしまった。離れていった彼がクラスメイト達に囲まれながらビッチ先生の腕に戦術導力器を構えているのを見つつ、そっと周りを伺う……幸いにもこのやり取りはクラスメイト
「ヌルフフフ……《銀》さんは気付いてなさそうですが、彼の姿形と重ねるとはカルマ君はそろそろアミサさん不足でしょう?これは早くアミサさんを抱きしめてあげないといけませんねぇ!」
「うっさいよ!」
ホッと肩の力を抜いたのもつかの間……代わりにというか、当たり前のように殺せんせーにはバッチリ見られてたみたいで、ニヨニヨとした顔のまま触手でつつかれた。……あーもうマジで腹立つ!!
◆
ここでやることは全て終わったと《銀》が俺等の元を去り、《銀》によってしっかり昏倒させられたらしい『死神』を見張る防衛省の人達を残して、俺等E組と殺せんせー、烏間先生に腕を掴まれて連れてこられているビッチ先生は1つの部屋の前に来ていた。烏間先生がビッチ先生を連れてきているのは目を離して勝手に居なくなられるのを避けるため、らしい。ビッチ先生は腐っても凄腕の殺し屋には違いないわけで、部下の人達では心許ないんだろう。意外にもビッチ先生は一切しゃべろうとしないけど逃げずに腕を引かれるがままに着いてきていた。
不貞腐れているようにも見えるビッチ先生は、烏間先生に引かれる腕とは反対の手で、さっき烏間先生に渡されたバラの花をくるくると回している。……てことは不貞腐れてるんじゃなくて、嬉しいくせに頭ん中で色々考えてそれを正直に表に出せてないだけだな、あれ。
「……ここ?」
『はい、アミサさんのスマホのGPSはここを示しています!エニグマの反応も中にありますし、間違いないかと』
『死神』によってハッキングされていたモバイル律はようやく回復したものの、《銀》から事前にハッキングされる可能性のあるセキュリティの脆弱性を示唆されていたにも関わらず、為す術もなかったことに落ち込んでいた。
……さすがに誰もどうしようとなかったことなのだからと律を励ましつつ、E組最後の1人と合流するため、『挽回のために頑張ります!』と張り切る律が案内する入り組んだ地下施設の中を歩いていれば、実はこの辺りまでC班が一度来ていたことが分かった。
「C班はこの部屋へたどり着く前に、こっちから来た《銀》に捕まったんだ。もしかしたら《銀》は真尾を閉じ込めた後にC班と遭遇したのかもしれないな……」
「あの時『人体感知センサーが反応してる』ってイトナ君が言ってましたし……それがアミサちゃんだったとすれば、私達が《銀》さんと遭遇してなければその時点で合流できてた可能性もありましたよね」
「センサーで調べる前に、原が吉田に持たせたマイクで音を拾って『死神』にA班が全滅させられたと言っていた。この事からC班と反対方向にいたA班と『死神』が相対していて、ビッチ先生の方にいたのはB班なことは分かる。だから時間的にA班が倒された後のサーチなことと『死神』がすぐに来れる距離じゃないことを踏まえれば、反応の正体はアミサの可能性が高い……が、ここはあくまでも国の施設だ、職員の可能性もあったからなんとも言えない」
「それもそっかぁ……」
「そもそも合流できてたとして、《銀》の言い分を聞く限り真尾は戦力にならなかったと思うけどな……」
「「「あぁ、うん……」」」
ぼそっと誰かが言ったそれに、アミーシャがいるだろう部屋の扉の前で全員が頭を押さえたり明後日の方を向いて呆れている。
そう、去り際に《銀》はアミーシャについての情報を残していった……心配よりも『お前、またか』と言いたくなる呆れが勝ってしまうほどのことを。
〝『死神』が計画の障害になり得るとして個別に狙いターゲットにしていたことや、お前達から私の立場のボロが出ないようにするためとはいえ、黙ってクラスメイトを1人隔離していたことは謝ろう〟
〝では、アミサさんは無事なんですね〟
〝てかそう言いつつ連れては来ないんだ……〟
〝無事、ではあるな。……相対してすぐ私を『死神』側の協力者と状況を把握し、倒れたA班から遠ざけ、他の班、加えて『死神』側との合流を遅らせる為に実力差を考えない無謀な勝負を挑んで来たのはあの時は最善手かもしれないが……最後まで面倒を見る義理はない〟
〝は、まーたやらかしてんの!?私ら守るためにッて!?〟
〝結果的にお互い無事だったとはいえ……はぁぁ……〟
〝まったく……しょうがない妹分だなぁ、本ト!みんなで迎えに行ってやんなきゃな!〟
〝あ、律に探してもらおうぜ!いけるか?〟
〝『は、はい!やっとお役に立てますね!』〟
〝…………〟
〝《銀》さん?〟
〝……いや、単独行動を起こし、言いつけを守らなかったのに、お前達は見捨てないのか……、……そうだ、やはり、この場所は眩しすぎる……踏み込んでいい世界じゃない、な〟
〝……、《銀》さん、なんか……〟
〝……気にするな。彼女も一時的に眠らせている、慎重に抜くことだ〟
ちょっと《銀》さんの様子が変な気はしたけど、誤魔化されてしまった。なんというか、あの人の中で、絶対に超えないようにしてる一線を引いてるというか……俺等がそれに気付いていても踏み込ませてくれない、何かがある。
それよりももう、誰が聞いても『それはそう』としか言えない彼女の行動にどう反応すればいいのかを考えてしまう。これが『死神』にA班がやられたあの時の去り際に言ってた『私が守る』の意味だったってこと?……もしそうなら……え、バカじゃないの?
「…………」
「なんか言いたそうだね、カルマ君」
「……もう、首輪とリード付けて繋いどきたい……」
「こらこら;」
「すごい分かるけど物騒;」
「だいぶ危ない発言だけど今回に関しては完全同意なんだわ;」
「……でもアミサちゃんだと、縄抜けくらい簡単にしちゃいそうだと思いません?」
「ありそうだからやめて奥田ちゃん;」
目を離してなくても、離すつもりが無くても何かを起こす彼女を、これ以上どうすればいいんだっての。一応衝動的に自分が盾になるよう動く癖があるとはいえ、少なくとも素直だから言われてることは理解してるのは救いなのか……それでもどうにもならないことに変わりはない。
大きくため息をついて扉に手をかける。《銀》曰く扉のロックや罠はないらしいけど、念の為烏間先生が確認した上でゆっくり開いていく、と、見えてきたのは物置のような部屋だった。金属製の棚がいくつも並んで固定され、ここで使うためだろう備品が積まれている。
「……物置部屋、でしょうか」
「ああ、ここには施設を動かす職員が常駐することもある。そのための備品を集めているんだろう」
「ここも動かした形跡がありますねぇ……」
「記録と違ってくると困るな、ここも調査しなくては……」
「ふーん……」
「あ、カルマ君!一人で行くのはっ」
「……あっちは先生達が勝手にやるでしょ。《銀》は眠らせたって言ってた、でもアミーシャが起きてる可能性もある。万が一目を覚ました時に隔離とはいえ保護した子どもが危険な目にあう状況にはあの人は置かないと思うんだよね……だから罠とかはほぼ無いとみていいはず……」
『死神』に好き勝手に改造されてるとはいえ国の施設だもんねぇ……先生達の会話を他所に、俺はさっさと棚の間を見回して彼女を探して歩く。慌てたように渚君含め何人かが着いてきてるのを気にせず、見落としがない程度に確認しては次の通路へ……棚は多いけど倉庫ってほどの広さではなく、すぐ最奥の棚にたどり着いて、そして。
「ッ!いた!」
「どこに、あっ……!」
「真尾!」
アミーシャは、最奥の棚に鎖で縛りつけられた状態でぐったりと項垂れて座り込んでいた。すぐ彼女の元へ駆け寄り鎖を解きにかかる。解きながら外傷の確認もしていけば、超体育着のおかげか目立つ大きなケガはなさそうだけど……露出した顔には切り傷や打撲痕がいくつか見える。この感じ、服の下も衝撃を吸収しきれなかった攻撃の跡が残っている可能性もあるか。
……そういえば、アミーシャを眠らせているって《銀》は言ってたけど、寝息もほとんど聞こえないし、薬とかって感じじゃないよね……なんて、軽く油断してた俺は項垂れた顔を上げさせた彼女に刺さるソレが目に入ってきて、思わず息を飲んだ。
「……こ、の針……『死神』に刺さってたのと同じ……」
「何!?カルマ君、見たのか!?」
「あ……は、はい。《銀》の動きを追ってたら、壁になってくれてた防衛省の人達の隙間から……その、見えちゃって、」
「そうか。……少しでも心身に不調があればカウンセリングを手配するから必ず言うように。《銀》殿が手心を加えてくれていて助かった、でなければ死体を見せてしまうかと……まったく……」
「…………」
慌てて俺の方に来て小さな声で愚痴る烏間先生……やっぱり、あの時防衛省の人達が俺等に『死神』が見えないように壁になってたのはそういうことか。毒とか暴力で倒れる姿こそ俺等でも見た事あるけど、さすがに死体は無いからね……だとしても、万が一でもそれに準ずるものは目に入らないようにしてくれてたんだろう。
ただ……このあたり、この人達は状況と行為が矛盾してるって気づいてんのかな。俺等は暗殺、殺せんせーの命を奪うことを最終目標としてる……つまり、最終的には自分たちが手をかけた死体を見ることになる。クラスメイトもそうだけど、命に手をかけるってことをあまり考えてない、関心がないように感じる。……ま、俺も夏休みにアミーシャの思いを知らなければ、みんなと一緒だったかもしれないけどさ。
「……へーきだよ。これを言うのもどうかとは思うけどアミーシャのこういう姿見るの初めてじゃないし、今回は寝てるだけって聞いてるし」
「……そうか」
「……でもさぁ、烏間先生……慣れちゃダメって分かってるけどさ、この子の出身を考えればこれからも一緒に居続けるなら、もしもは覚悟しなきゃいけない気もしてるんだよね、俺」
「……そうだな」
鎖を全て解き、そのまま俺の方へ倒れてきた力の入らない死んだように眠る存在を抱きしめながら話す俺を、少しの間何も言わずに見ていた烏間先生は、大人だからこそ俺の知らない彼女の事情も知ってるんだろう。ちょっと黙ったかと思えば俺の言葉を認めながらぐしゃ、と頭を撫でてきた。……なにさ、子ども扱い?……はは、烏間先生からしたら俺なんて子どもでしかないか。
若干の照れと気恥しさで少し顔を逸らした時、腕の中の身体が小さく身じろぎしていることに気付く。見ればアミーシャに刺さっていた針を片手に烏間先生が離れていくところで……もしかして俺の頭撫でながら抜いってったのか。《銀》はこの針で気の巡りを遮断して眠らせているって言ってたから……抜けば、目が覚める。
「……っ……」
「起き、うわっ」
「っ、む、こうはダメ、私がッ、ぅッ……」
「アミーシャ!」
「ッ!」
目を覚ましたかと思えば、間髪入れずに腕の中を出ようと抵抗してきて、慌てて彼女の両頬を挟んで抑え、無理やり目を合わせる。無理やり顔を上げさせたからか、体が痛むのか最初こそ顔をしかめていたけど、名前を呼んで少しの間そのままでいれば彼女は数回の瞬きのうちに落ち着いていき、キョトンとした表情に変わっていく。
「……あれ、なんでカルマがここにいるの……?」
「……はぁぁぁ……ッとにもー……」
「よかった、後遺症も無さそうですし……流石は確かな技術といいますか」
「俺等もいるぞー」
「え、え?……あれみんな?殺せんせー?なんで……ッそうだ《銀》さんが『死神』のッ!あの人は味方じゃなくてッ!」
顔を俺に掴まれたままだから、視線だけ動かしてE組のみんなが覗き込んでることに気付いたんだろう。焦ったように伝えようとしてくれてるんだけど、さ。
「あー、あのさ。もう全部終わってんだよね……」
「……え?」
「『死神』も烏間先生が倒したよ。ビッチ先生も救出完了!」
「《銀》さんは『死神』といつでも契約破棄できるように動いてたみたい。ちゃんと私達の味方だったよ」
「真尾伝いで救出に支障がでないようにって隔離してたみたいだな。直接は言えなかったみたいだけど、真尾の行動力も危険視しつつも評価してたぜ」
「アタシらはあんたが《銀》に単独挑んで捕まってるって聞いたから迎えに来てるってわけ。あんたさえ動けるならもう帰るだけよ」
「アミサちゃんがいない間に殺せんせーも合流してますよ、ほら」
「え……え?だってさっきいなくなったばっかで……え??」
「うーん、そんな気はしてたけどアミサだけ時系列がだいぶ過去で停滞してるんだよねぇ……」
「単独行動するから混乱すんだって……」
「あ、え?……わ、っカルマ、私歩けッ……い゛ッ……」
アミーシャからすれば《銀》に眠らされた時、つまりまだ殺せんせー達と合流せず『死神』が俺等を牢屋に捕らえていた頃だと思ってるから、まさかの全員揃ってる今がどんな状況なのか飲み込めないんだろう。
もうあとは帰るだけだし混乱したままでもいいかと彼女をしれっと抱き上げようとしたあたりでようやく思考が追いついてきたのか、アミーシャは慌てて離れようと腕を上げた瞬間に顔をしかめ、動きを止めた。……さっきも痛そうにしてたし、ハッキリ口にはしてないけど見えていないところを痛めてるので確定でしょ、これ。
「……エニグマは?」
「え、……あ、あれ、ないっ……もしかしたら、《銀》さんとの戦闘中に落としちゃったかも……っ」
「あー……でもさすがに戦ったのはこんな狭い部屋の中じゃないでしょ?廊下で足止めしようとして《銀》さんに挑んだ後、《銀》さんにこの部屋へ運ばれたんだとしたら……身に付けてたものもここにありそうだよね」
「なら……おーい、この部屋のどっかに真尾のエニグマ置いてあったりしないかー?」
「やり方はあれだけど《銀》さんなら拾ってそうだよね……備品に紛れて隠してあるとかありそう」
「俺そっちの棚登ってみるわ!」
「じゃあ私達は入口付近から見て回ろうか」
「あうぅ……もう、色々ごめんなさい……」
「これに懲りたら勝手に動かないで欲しいんだけど?」
「…………」
「はぁぁ……」
アミーシャも気付いてなかったようで俺に言われて初めて装備を確認し始め、身に付けていたものが全て無くなっていると焦りだした。この部屋に入る前に律が『エニグマの反応もこの部屋にある』と言っていたわけだし、確実にここにはあるはず……着いてきていたクラスメイトが部屋に散らばって探しに動きだす。
自分を囮にしたことは反省してなさそうだけど、さすがに自分のために動いてくれた、現在進行形で動いているクラスメイト達がいることに対してはいたたまれなくなったみたいで、アミーシャの表情はどんどん沈んでいく。ついでだからと流れに乗って釘を刺すつもりで苦言を呈してはみたけど……無言で顔を背けるあたりそれは約束できないんだな、……ダメじゃん。
「あ、あれじゃないかな?……っと、……うん、アミサちゃんの戦術導力器だと思う」
「超体育着に着けるホルダーもあったぞ、これも多分そうだろ!」
「!……うん、全部ある……っありがと、2人とも……」
「はー、よかった……」
「みんなも、先生たちも……勝手に動いて、ごめんなさい……ありがと、ございます」
「もういいよ、無事合流できたしね」
「こんだけ言っても反射で動いてるんじゃねー、もうどうしようもなくなったら今後は紐付けてでも行かさないから覚悟しときなさいよ!」
「そんで端っこは真尾が全力出せない相手に持たせとこう。4班の女子相手ならコイツでも躊躇するだろ。いざとなれば力の杉野と制御の渚とカルマもいる。よし完璧」
「こっちが手綱掴んどけばある程度は制御できるしね、多分」
「あはは、責任重大だ……」
「紐と手綱って……さっきのカルマ案の首輪とリードが若干採用されてる……」
「えっ……!?く、首輪とリードって、私ペットじゃないんだから、そんな冗談カルマが言うわけ、」
「ばっ……!!確かに言ったけどなんで今バラすんだよ!」
「!?!?!?」
「あ、いや、違ッ……言ったのは違わないけど変な使い方じゃないからね!?あくまでも捕まえとけば目を離さないで済むかなって例えただけであってッ」
「う、うん、そうだよねっ!?……ん?例え……え、あれ、てことは変な使い方もあるの?」
「う、」
「それはねー、」
「か、考えなくていいし教えなくていいんだよッ!」
「……久々に見たわぁ、カルマの自爆とピタゴラ感ある脱線」
「ちょっと離れてただけなのに日常が戻ってきた感がすごい」
「やっぱ面白いわお前ら。付き合い始めても変わんねーとこも含めてよ」
神崎さんが声を上げたかと思えばサラッと棚に登り、小さな機械を手に取って確認している声がして、その向かいあたりでは木村が黒い布でぐるぐる巻きになっているものを手に取って飛び降りている。木村はまだしも神崎さんも立体的な機動力ついたよね……なんて考えていれば、差し出されたそれらを安心したように抱きしめてお礼を言うアミーシャ。
で、普段なら気にしないだろうクラスメイトの呟きを、自分の無茶に対する反応を怖々待ってたせいで珍しく拾ってしまったらしい。彼女は俺に支えられたまま距離を取るような動きをするから変な曲解される前にと慌てて弁解して、下手に情報処理能力が高いことでいらないことに気付いた上で純粋に答えにくい問いに変換されたそれを、面白がるようにクラスメイトが悪ノリして……っていつかもやったな、こんなやり取り。おい
「褒められた行動じゃないが、真尾さんは命の危険を誰よりも知っている。その上で、自分が前に出た方が時間を稼げると判断し、《銀》殿の合流を遅らせ、『死神』の予定になかった捜索に時間をさかせたことで俺達の到着が間に合った可能性もある。そこに関しては動いてくれて感謝している」
「だとしても!今回は全員が命の危険を感じる事件になったことに違いありません!今後、このような危険に生徒達を決して巻き込みたくない。安心して殺し殺されることができる環境作りを……
「……分かっている、当然打つ手は考えた」
不本意ではあるけど、いつも通りのE組、いつも通りの先生たちが揃ったと……やっと、今回の事件は全部終わったんだって実感が湧いてきた。改めてアミーシャを支えながら部屋を出たところで、殺せんせーは俺達1人1人の頭に触手を伸ばしてきて、烏間先生へと向き直った。
殺せんせーを暗殺するために、E組の生徒を巻き込む……生徒を大切にしている殺せんせーには致命的かもしれないけど、俺等はこれでも普通に生きてきた中学生でもあるんだ。これが毎回まかり通ってはいくつ命があっても足りない。だからこそ、国が巻き込んだ俺等29人は最後まで守ってもらわなくちゃ割に合わないんだと、国に再認識してもらう。
そのために、E組の生徒29人は後日、烏間先生の考えた案……『暗殺によって生徒を巻き添えにした場合……賞金は支払われないものとする』……この条項を手配書に明記しない限り、E組生徒全員が暗殺教室をボイコットするという要求書に、サインし提出することになる。
ループ元のお話はこちら
https://syosetu.org/?mode=write_novel_submit_submit_edit&nid=138458&volume=86
「とりあえずエニグマが手元に戻ってきたんだから、自分のケガを回復してください」
「は、はい……っエニグマ駆動───」
「烏間先生〜、露出してるところは仕方ないとしてさ、超体育着って衝撃吸収されるんじゃなかったの?」
「言われてみれば、茅野も相当すごい音出してたのに今歩けてるもんな」
「あーうん、バキボキすっごい音鳴ったし、かなり衝撃来て痛いけど、骨とかには異常あるような痛みではなさそうだし……」
「茅野さんの場合、『死神』は人質にするためにも殺すわけにはいかなかったから、動けない程度の確実なダメージを優先したはずだ。真尾さんの場合は……、殺すつもりはなくとも邪魔をさせるわけにもいかない、確実に後を追えないようなダメージが必要だったということ。加えてこれはテスト段階の装備でもあり、ダイラタンシー現象も万能ではないという事だ。完全に全ての衝撃は吸収できないし、強すぎる威力によっては割れてしま……いや、国の実験では相当な耐性があったはずだが……《銀》殿の一点集中攻撃が規格外なだけか……あとからサンプルのために調書をとる必要があるな……」
「烏間先生が悩んでる……」
「そりゃそうでしょ、地球上にこれ以上の耐性を持った服はないって言っておきながら貫通してんだもん」
「ところで当たり前のようにカルマ君がアミサちゃんを離さないんですが」
「付き合ってようがもうちょっと人の目をだな……」
「え、俺の特権でしょ?状況説明役もいるだろうしぃ」
「こっちはこっちで当たり前のように言うし……全員心配してたのに変わりはないってのによ」
「……なら、
「ん、狭間、なんか考えでもあんのか?」
「まぁね。……アミサ、後で男女問わずE組全員のところに行って抱きついときなさい」
「「「はぁ!?」」」
「!」
「狭間サン!?!?」
「あんたの中では【圧倒的な力で『死神』にやられた私達】ってところで認識が止まってんでしょ。A班に限れば目の前で見てるわけで、さっきからキョロキョロしてんの、分かってるわよ。あんたなりにでも無事を確認したいんでしょうし」
「…………」
「えぇ、俺嫌なんだけど……」
「命をかけた後の安否確認みたいなもんよ、なにも提案でしかないんだからこれくらい我慢しなさいよね。それに器が小さい中二半は嫌われるわよ」
「……ぐ……、……、……はぁ、分かったよ」
「ま、どうするかはアミサが決めることだけどね」
++++++++++++++++++++
長かった死神編のループはここで終わりです!
基盤となるもの、実際に起きたことは同じ内容でも、視点やそれぞれの選択が色々変わって違うものに見えてたらいいなと思ってます。
次回、また少し違った世界線のお話をお届けできるようがんばるので、ぜひ読み比べてくださると嬉しいです!
今回もご愛読ありがとうございます!
Q:《銀》として動いていたオリ主が、どうやって縛られ針を打たれたなんて状態できたの?
A:《分け身》を有効活用してます。実際のゲーム対戦時でも《銀》の分身は3体まで体力以外全く同じものを作り出すことができていたので、
オリ主本体(以下:①)が『死神』襲来後にA班から離脱
→①は《銀》として振る舞いE組と『死神』に合流
→烏間先生VS『死神』が始まると①は《分け身》で分身(以下:②)を牢屋組の護衛として生み出し離脱。
→『死神』を烏間先生が撃破後、①はビッチ先生と話す
→①、②で牢屋破壊後離脱
→C班との矛盾を無くすため、C班が探れなかった部屋に入り、①を怪しまれ無い程度に②で攻撃し拘束。②は①が戦闘不能となったことで消失
みたいな時系列だったと思ってください。