暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA134000ありがとうございます!
たくさん見てくださってて嬉しいです。

前回の続きから書いていたら1話分お話ができちゃいましたので投下します。

今回もよろしくお願いします!



112話 通信の時間

 

カルマside

 

 

 

 

 

 ……こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 俺としては、あれだけ隙を見せなかった《銀》が明らかに口を滑らせたって分かるほど動揺していた《碧の大樹》について知りたかっただけなんだけど……まさかピンポイントでアミーシャがガッツリ関わってる事件だった、なんてね、思うわけないじゃん。アミーシャの言い方からして《銀》は何かのタイミングで調査に関わっていたから、結末を見届けるために最後まで付き合った……って事なのは分かったから目的は達成したけどさ。

 というか事件よりも、アルカンシェルの襲撃事件を自分のせいだと抱え込んでいたことと、日本に来た経緯を自分が役に立たないからだと思い込んでいたことの方が衝撃だった。元々自己評価が低くて自分のせいって思い込みがちではあったけど……こんな大きな事件とか数年単位の避難とか、個人に責任があるわけないことまで自分に非があると思い込んでるだなんて、って。泣きすぎて途中から何が何だかわかんなくなってきてそうだったから、俺の方に倒して落ち着くように撫でてたらそのまま寝落ちたこの子を抱き直しながら思う。

 

〝アミーシャちゃん〟

 

〝アミーシャ〟

 

〝アミ姫〟

 

「……、こんなに愛されてるんだから、いらない子なわけないのにね」

 

 こんなに見てくれる人たちがいるのに、何がここまでこの子自身を否定的にしてしまうんだろう。それを教えてくれそうなのは、その今も電話が繋がる画面の向こうの人たち、ではあるんだけど……

 アミーシャが寝落ちたと分かって早々に烏間先生の手に戻されたスマホには、彼女が泣いた原因である人達の姿が映し出されていた。

 

「それにしても……1学期以来だよね、アミサちゃんがここまで制御できない泣き方したの」

 

「精神的に疲れて寝落ちるのもね」

 

「っはー、泣き止んでくれてよかったわ……わかばパークで泣いてる子どもの相手もしたけど、真尾はチビ相手と違うもんなぁ……カルマはすげぇよ」

 

「……いつも通りにしただけだけどね、俺の特権だし」

 

『いつも通り、……ふふ、私達にも懐いてくれてるとは思うけど、あなたたちはそれ以上に信頼を得てるのね。どこかずっと気を張り続けて警戒しかしてなかったアミーシャちゃんが、誰かの前で泣けるようになったのは素直に嬉しいわ』

 

『ですね、過去のこともありますし……まともに覚えてないとはいえ、ずっと人を怖がっていてもおかしくありません。……私と同じように出会った人に恵まれたんでしょう』

 

『ティオちゃん……ッ』

 

『私としては()()アミーシャちゃんが赤髪の子に体を預けて眠れてることに感動してるんですがッ!あんな安心しきった寝顔なんて見たことないですよ〜っ!あの子達がうらやましい……っ』

 

『それな、リーシャ以外にあんな姿見せたことないだろ。《碧の大樹(あん時)》だってメルカバでの休息時間は結構あったけど、1回も見たことないぞ』

 

『俺もない……探索組の時は誰より先陣切って飛び出してくし、待機組の時は部屋の隅で小さくなって「私は何をしたらいいんでしょうか」って困ってる顔でキョロキョロしてるし……今思えばずっと緊張してたんだろうな』

 

『僕も見たことないね。というかノエルの反応を見る限り女性陣全員そうだろう?人たらしのロイドでも見た事ないなら、誰も知らないあの子の素の姿なんだろう』

 

『あのな、ワジ?人たらしってどういうことだよ』

 

『ロイドのことだけど。キミ、ホントに色んなところで色んな人を男女問わず敵味方関係なくたらしこんでくるじゃないか』

 

『しかも自覚なしだからタチが悪いのよね……』

 

『弟貴族め……』

 

『心外なんだよなぁ……俺は思ったことしか言ってないし、やったことないぞ……』

 

『そういうところですよ』

 

『ロイド、いつか刺されそうだよねー!シュラバってやつ?』

 

『ぐふっ……キーア、そんな言葉は覚えなくてよろしい』

 

 スマホから聞こえてくる会話から、アミーシャの成長を喜んでもらえてる様子と、向こうでかなり可愛がってもらってたんだろうことが伝わってくる。彼等が話してる内容と俺と出会う前のアミーシャ本人が警戒の塊だったことを踏まえると、素の甘えんぼうな姿は見せてない代わりに、尊敬できて慕ってはいる対象なんだろう。

 あとは……ロイドってやつが危険ってことしか分かんないんだけど。何?たらしこむって。しかも男女敵味方関係ない上無自覚って。最後、明らか子どもっぽい高い声に言葉で刺されてるけど……本人が理解してないだけで日常的なんだろうな。

 

『ほ、ほら、みんなが変な事言うから向こうの子達が明らかに変な目で見てるじゃないか……!』

 

「いやー……なんて言いますか……なぁ?」

 

「自分のために滅多に泣かないアミサちゃんが泣くくらいだし、いい人達なのは分かるんですけど……」

 

「他の人達はともかくロイドって人が色んな意味でやばいってことはなんとなく分かりました……これ、アミサちゃんを近付けていいのかな……カルマ君が離さなくなりそう」

 

「えー、当然じゃんE組でも何を使ってでも遠ざけるけど。でもアミーシャはそのヤバい人のこと慕ってるみたいだし、無理やり離したらかわいそうだよね。うん、しょうがないから俺もセットで今後共々ヨロシクね?ロイドおにーさん」

 

『「しょうがないから」の声色が本気(マジ)ですね……こんなに敵意むき出しの「よろしく」はなかなか聞きませんよ。よかったですね、ロイドさん』

 

『全然よくないんだけど?!』

 

『まだ直接会ってないのに要注意人物扱いされてるわね……』

 

『あー……先にアレコレ話した俺らが言うのもなんだが、天然ジゴロってやつ?タチが悪いだけで悪いヤツじゃねぇんだよ。タチが悪いだけで』

 

「「「(今、タチ悪いって2回言った……)」」」

 

『むしろ悪人とは対極の善人すぎるお人好しだからね。それがいい所なんだけど毎回誤解させる言い回ししかしないというか、言うこと成すことが全部クサイというか』

 

『ロイドの言葉選びを気にしないで、しかも流した上で会話が続いてくのってリーシャとアミーシャくらいだよねー!あ、でも2人もおかしいって思わず同じような返事してるからお互い様か!』

 

『アミーシャちゃんは素直なだけですし、リーシャさんは一応相手を選んでちゃんと場にあった返しをするから、見境ないのはロイドさんだけですよ!とにかく、ロイドさんの被害者は私達だけで十分です。あの子達まで影響されないようにしないと!』

 

『……;……えっと、みんなフォローはないのか?』

 

『事実ですし』

 

『う……そんなバッサリ……そ、そうだ、さっきから気になってたんだけど、そのカルマ君っていうのは……』

 

「……あのさ。俺のことよりそろそろその人達が誰なのかってことは俺らには教えてもらえないの?」

 

『『『……、あ。』』』

 

 とりあえず、警戒対象だなー……なんて思ってアミーシャを再度抱え込んで若干カメラから見えにくい位置に離してみれば、渚君達も同じようになんなんだあの人って感じには思っていたらしい。……いや、別に怒りはしないよ、近付けたくないだけで。向こうは向こうでいい印象を与えたいのか正直なのか謎だけど、茶髪の男の人がいじられまくってる。

 その茶髪の人が話題を変えようとしてるけど、このままじゃ向こうのペースで話が進みそうな気がしたから、全部言い切る前に先に疑問を投げれば、思い出したように全員の口が揃った。やっぱ忘れてたよね、アミーシャをはさんでお互い何も自己紹介してないんだから。

 

『えーっと、説明していい感じですか?カラスマさん』

 

「正直まだ交渉中で明かすつもりはなかったんだが……カルマ君がいいタイミングで話を持ってきたから説明するのもやぶさかでもないと思っているところだ。……ところで教員室の外に何人か来ているだろう?」

 

「「「!」」」

 

「あー……邪魔した?」

 

 烏間先生の言葉に部屋の入口を見れば、廊下からそっと顔を覗かせていたのは前原で。俺ら、アミーシャを落ち着かせようとしてたし、スマホの会話にばかり意識を向けてて今まで全然気にしてなかったから……気にしてみれば部屋の外に数人の気配が感じられた。

 烏間先生に声をかけられたことをきっかけに、前原、神崎さん、片岡さん、中村、千葉、速水さん、なんていう、どんなメンツ?って謎の集まりで入室してきた。クラスに残ってた話の取りまとめ役兼気になった野次馬代表が見に来た感じか……多分だけど。

 

「あ、その……教室の方までアミサちゃんの泣き声が聞こえたから気になって。お父さんの件で泣いた時と同じくらいじゃなかった?」

 

「まぁ、あれだけ大泣きしてれば隣だし聞こえるよね……一応嫌なことがあって泣いたわけじゃないから、そこに関しては安心してほしいかな」

 

「そっか……。それならよかった」

 

「カルマ達がいるから心配してなかったけど、あのアミサが泣くなんてよっぽどの事だからさ……つい来ちゃったのよ。大事な話の途中だったんでしたらすみません」

 

「いや、大丈夫だ」

 

「で、当の泣いた本人はカルマの腕にしがみついて丸まってると……」

 

「……アミサ……これは寝てるだけよね?」

 

「うん、散々泣いて寝落ちただけ。スマホ取り上げたら代わりに引っ付いて離れなくなっちゃった〜」

 

「遊び疲れた子どもかっての……てか「離れなくなっちゃった〜」ってその姿勢になるよう仕向けたのはお前だろどうせ」

 

「……なんのことかなー」

 

「うっわ、白々しッ」

 

「こんだけ人が集まればこいつの事だし起きそうなもんだけど。体力使い果たすくらい泣ききったんだな……だいぶ珍しい」

 

「……つまり、今ならいつもより触っても起きないってことよね……?」

 

「えっと、……速水?」

 

「真剣な顔して見てると思ったら……」

 

「うーん、カルマの今の体勢じゃ難しいんじゃないか……というか確かに真尾は小動物っぽいとは思うが同い年だぞ、それでいいのか;」

 

「「…………」」

 

「んむゅ……、……すぅ……」

 

「「………………かわい、」」

 

「写真撮っとこ」

 

「……カルマ君、無言で体勢変えないで……あと2人とも心の声漏れてるから;」

 

「速水ならいいかって思ったんだろうけどな;」

 

「中村、写真あとでちょうだい」

 

「いいわよ〜」

 

「カルマ君ブレないね……」

 

「速水さんは速水さんで無言で頬つついてるし……すごく気持ちはわかるけど2人して嬉しそうだね;」

 

「おうおう、仕事人の片割れが見たことない表情してるわぁ……」

 

「で、何をどうしたらあんな大泣きしてカルマに抱きついたまま寝落ちるなんてことになんのよ?」

 

「ありがとう中村、流れを戻してくれて。それを聞こうとしたところでお前らが来たんだよ」

 

 人数が若干増えただけで既にカオスだ。最初こそ口を開いたのは先頭で教員室を覗いていた前原だったけど、神崎さんと片岡さんが烏間先生の方へ行って事情を聞こうとしてるし、後の4人は俺とアミーシャの方に集まってきた。

 俺の近くで速水さんがしゃがんでアミーシャの頬に手を伸ばしてたから、黙って触りやすいように抱き直せば彼女も無言で触りだして……口元が緩んでいていつものスンとした無表情に近い顔と比べてかなり溶けているといってもいい。アミーシャって撫でてもらうの好きだから普段も触らせてくれるけど、E組相手だってのに嬉しそうな反面若干強ばってるんだよね。寝てるからこそ警戒も何も無いし、力の入ってない頬を触り放題ってことで……あ、変な鳴き声みたいな声と同時にアミーシャの表情が緩んだのを見て、速水さんの表情も更にやわらかくなった。

 

『急に人数増えたなって、1、2、3、……アミーシャが泣いたからって6人も来たのか。すごいな……』

 

『でも私達でもキーアちゃんが泣いたら集まるでしょ?同じようなものじゃないかしら』

 

『リーシャさんに見せたいですね、この光景』

 

『いいなぁ、アミーシャちゃんの寝顔写真……』

 

『ノエル?』

 

『……彼らは?』

 

「彼女のクラスメイトだ。()()計画も控えていることだし、……顔を合わせておくのもいいかとも思うが……」

 

『うーん、……全員じゃないんですよね?』

 

「ああそうだ。マオさんを含めてE組は29名いるがもう放課後だからな……招集をかけたわけでもないから、さすがに帰っている生徒もいるだろう。片岡さん、教室に何人くらい残っている?」

 

「え?えっと確か……5人もいたかな……」

 

「だいたいの人達は心配しつつも帰りましたよね。アミサちゃんを心配して帰りたがらなかった人と、何があったか知りたくて残ってる人だけだったと思います」

 

 ……計画って言ってるし、近々俺らとこの人達が顔を合わせる機会が元々予定されてたのか。だけど今日彼らを知ることになったのは俺が突発的に教員室(ここ)に来て、彼らに繋がることを聞いたから……つまり、烏間先生にとっても彼らにとっても想定外のこと。もちろん放課後残るようにーなんて指示はなかったから、後からここに来た6人を待つ奴ら以外はみんな帰っただろう。

 多分、顔合わせ自体はそんなに問題ないんだろう。ただ、当然今挨拶できない奴らのために同じことを遠く離れたところにいるだろうこの人達とまた都合をつけて……という二度手間になるから迷ってるだけな気もする。といったところで渚君のスマホからピコピコ電子音が鳴ってみんなの視線がそちらに移る。

 

『あ、あの!私から提案があるのですがいいでしょうか?』

 

「!……律か、どうした?」

 

『こちらへ今教室に残っているみなさんを呼ぶには狭いですし、かといって帰ったみなさんをまた招集するのも非効率的だと考えます。そこでですが、まず私本体の方へ会話を中継してまだ残っているみなさんへ話を共有、その様子を録画しておいて、この場にいないみなさん含め全員のスマホへ一斉通達、という形をとるのはいかがでしょうか?』

 

「なるほど……律を経由するならセキュリティも安心だ。君達と彼らの了承を得られるならそれでもいいな。……どうです?」

 

『俺達は大丈夫です、な?』

 

『ああ、関係者だけで留めてくれるんだろ?』

 

「もちろんです」

 

「あ、じゃあ私教室にいる人達に聞いてきます!」

 

 律の提案を聞いた烏間先生がスマホの向こうへ伺いを立て、その返答を聞いた片岡さんが足早に教室へ走っていった。烏間先生からの指示を聞かずとも残ってる奴らへ録画してもいいか聞きに行ってくれたみたいだ……さすが、周りを見れる学級委員は動ける。

 

『じゃ、ここにいる君達へは先に軽く自己紹介させてもらおうかな。というか変な人じゃないってことを弁解させてくれ……』

 

 スマホから声がしてみんなでそちらを向けば、茶髪の男……ロイドって人がさっきまでいじられてた時と違って真っ直ぐ俺らの方を見つめながら口を開く。

 

 

 

 

 

『俺はロイド・バニングス。クロスベル警察に所属してるアミーシャの保護者……は、ちょっと違うか……うーん、父親代わりにはなれないけど、兄貴分みたいなもの、だと思ってくれればいいかな、よろしく!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんで、なんで起こしてくれなかったの……ッ!」

 

「いやそもそもあんな泣き方して寝落ちたのはアミーs、ってちょっと、痛、ねぇ、首に爪刺さってるんだけど」

 

「爪たててるのッ叩いてもカルマにダメージないでしょっ」

 

「それはそうでしょ。だってアミーシャの照れ隠しって手加減してくれるから、俺からしたら小動物の甘噛みでしかないんだよ」

 

「〜ッい、いつか、本気でやるもん……っ」

 

「そのいつかは来るのかな〜?だって、……俺に本気で攻撃とか、アミーシャにできるの?」

 

「~~~っっ、でき、……うぅ〜っ」

 

 

 

 ずるい。

 

 

 

 ざわざわする気配が増えた気がして目を開けたら視界に入ってきたのは黒色。泣きすぎたせいだろう、ちょっと腫れぼったくて重たい目を寝返りを打つようにその黒色へこすり付けながら反対側を向いたら、揺れる赤色が私の顔をくすぐって。……、……ちょっと意味がわからなくて数秒固まってたら、どうやら私はカルマの肩に正面から寄りかかる格好で寝ていたらしい。なんで寝ちゃったんだっけ……整理のついてない思考にのんびりとした「起きたの〜?」なんて声が入ってきて、何も考えずに小さく返事をして顔を上げたら、……なんかたくさんの目が私を向いていて再度固まった。

 まだ、先生たちと最初からいたカルマたちは分からないでもない。正直泣き顔をさらしてしまったのに羞恥心しかないとはいえ、勝手に泣いたのは私だから。……でも、泣いたりそのまま寝ちゃったりしたところを最初より増えた友だちにまで見られ、というか見守られてるのはちょっと違わないかな。

 

 だというのにやっと頭が覚醒したと同時に見られていた恥ずかしさにぶわっと顔に熱が集まるのを感じて、慌ててカルマの首に腕を回して顔を隠しながら爪を立てて抗議すればこれだもん。軽い力で顔をあげさせられて、目を合わせる形で顔を固定されたかと思えばそのまま見つめてきて……ってもう、なんでカルマは照れずにできるのかがホントに分からない。

 ……自分を見失いでもしない限り、私はこの人に本気で攻撃なんてできないんだろうな。

 

「はい、俺の勝ちね。……で?何が不満なの」

 

「不満って、だって、だって人数増えてる……っ、私が寝ちゃってる間に絶対なにかあったもん……っ!」

 

「あー、……うん、かわいかったよ」

 

「……、なにがっ!??」

 

「あは、いろいろとね」

 

「もう、まーたやってるし。カルマはともかくアミサ、今もアタシらいんの忘れてない?カルマとのソレは見られてていいの?」

 

「だ、だって、カルマはいつも一緒にいるでしょ……?」

 

「あー、そっかー……ソウダネー……」

 

「アミサちゃん、やっぱり恥ずかしがるところがズレてるんだよね……」

 

「保護者っていうかお兄さん達が見てるのわかってて堂々と見せつけるカルマ君も相当だと思うな……」

 

「さすが真尾、鈍いところは鈍いのに鋭いところは鋭い。な、速m……」

 

「……………」

 

「……すんません」

 

「なんで地雷ってわかってて踏みに行くんだお前」

 

「いや千葉だってあのギャップにはグッとくるだろ!?てかきただろ!?!?」

 

「……、……それは、まぁ……」

 

「千葉?」

 

「……すまん」

 

 私とカルマが一緒にいるのはみんな知ってることでしょ、なんて思ってたけど、そういえばお兄ちゃんたち見てたな……、……でも、変なことはしてないと思うんだけど……?って莉桜ちゃんに言ったら、カエデちゃんと有希子ちゃん共々すごい半笑いな表情になった。なんで。

 陽斗くんがポロッと言ったことに凛香ちゃんが無言でそっちを睨むように見て反応したあたり、何かしたのはカルマと凜香ちゃんだよね、多分……何したんだろ……

 

『えっと、……そういえば最近見ましたね、あんな感じの、こっちまで熱くなっちゃいそうな2人……』

 

『ん、確かに?誰だっけか……、……あぁ!エステルとヨシュアのやり取りに似てんのか!』

 

『あの2人も相当なバカップルだったからね。人目憚らないで2人の世界に入ってくあたりそっくりだと思わない?』

 

『あの2人は家族のように育ったって言ってたからな。家族としてのコミュニケーションがそのまま恋人としてのやり取りになって……、……ん?って、……え!?あ、アミーシャとあの赤髪の彼ってそういう!?』

 

『あ、やっと?』

 

『多分、気付いてなかったのはロイドさんだけですよ』

 

『キーアでも分かったのにー……』

 

『はじめっから友達の距離通り越してたじゃねーか。むしろアミ姫が緊張せず体を預けて寝てる時点で気付けよ……』

 

『本人達が言ってないから確証は無いけど、あれだけ「人たらし」って言われてるのを聞いた彼からあからさまにロイドが敵視されてたら、そうとしか思えないわよね……』

 

『ビデオにして姿が見えるようになってからあからさまに見せつけてますしね』

 

『……は、はは、……なんかごめんアミーシャ……』

 

 スマホの向こう側でも何か盛り上がってるし……ちょっとむくれつつ、向こうから聞こえた新しい名前に少し顔を上げる。

 エステルさんとヨシュアさんか……リベール王国の遊撃士(ブレイサー)で、《碧の大樹》事件の時に私たちが敵の本陣に乗り込むための陽動を担当してくれた。《碧の大樹》が出現したあとに、物資の補給と市街地の状況調査でマインツの宿屋へ行った時に初めて顔を合わせたけど……

 

〝ねぇねぇ、もしかしてリーシャさんの妹って……!〟

 

〝!〟

 

〝あ、はいそうです。アミーシャといいます……ほら、挨拶〟

 

〝は、……はじめ、まして……〟

 

〝……ッ、わ、わ、よろしくねアミーシャちゃん!ほえー……髪の長さは全然違うけど、顔立ちというかそれ以外はリーシャさんをそのまま小さくした感じなのね、うーんかわいい〜っ!ね、今いくつ、とか聞いていい?〟

 

〝え、えと、その……11歳……〟

 

〝えぇっ!?私より7つも下なの!?小さいとは思ってたけど結構離れてたわね〜!私はエステル、エステル・ブライト。ロイドくん達みたいに私のこともお姉ちゃんって呼んでいいからね!〟

 

〝エステル。一気に距離詰めすぎ、驚いてるよ……ごめんね、ビックリしたでしょ。僕はヨシュア、こっちのエステルと、向こうで寝てるレンとは家族なんだ……よろしくね〟

 

〝う、ううん、……へーき〟

 

 エステルさんは、とりあえずすごくグイグイ来るお姉さんだなぁと思った。ヨシュアさんは逆にとても落ち着いていて、エステルさんのフォローをしつつ気遣ってくれる人な印象……あまりにも性格が正反対すぎて水と油みたいになりそうなのに、上手く調和してお互いに分かりあってるというか……素敵な関係。そんな2人に、私とカルマが似てる……?……そう、なのかな。だとしたらそれは嬉しいし、喜んでいいこと、なのかもしれない。

 この2人とレンさんは、私がクロスベルを出る時に遊撃士への依頼という形で途中まで同行してくれたんだけど……私を小さな子ども扱いしなかった。リーシャの妹、で判断するんじゃなくて、アミーシャ・マオとして実力を認めた上で付き添い、信頼して送り出してくれた。それが、ひどく嬉しかったのを覚えている。

 

「エステルさんとヨシュアさん、……レンさんとも……会いたいなぁ……」

 

「……、アミーシャ、それをあの人達に言わなくていいの?」

 

「!」

 

 ……あれ、声にでてた?慌てて口に両手を当てて隠す……完全に無意識、だった。

 

「口塞いでも遅いって俺が聞いちゃってるんだから。……で?今こそ滅多にないワガママを言う場面なんじゃないの」

 

「……、……ううん、言わない。だって、3人とも違う国の人だもん、そう簡単には都合つけれるわけないって分かってる。……ロイドさんたちの顔を見れただけで、十分」

 

「……ふーん」

 

 私の応えを聞いて何故かカルマが不満そうな表情をしてるけど、さすがにこの願いは申し訳なさすぎるんだ……依頼でもなんでもなく、ただ会いたいからってだけで国を超えてもらうなんて、そんな軽々しく言えるわけないんだから。

 それに、私とエステルさんたちは遊撃士と依頼人の関係なだけであって、そんな事を気軽に頼める友だちとか戦友って呼べるほどの関係でもないわけで……でも、せっかくクロスベルが落ち着いたなら、……いつか、会えるといいな。

 

「さて、真尾さんも起きたところでそろそろ共有と録画をしたいんだが……構わないか?」

 

「あ、そのために起こしたんだったね」

 

「いや、カルマ君はそれを分かっててアミサちゃんの反応がかわいいからってそのままにしてたじゃんか……」

 

「ひぇぇ……ご、ごめんなさい……っ」

 

『いや、俺達もずっと見られなかった君の姿だけじゃなく、君がそっちの彼らに愛されてることを知ることができたからいいさ。アミーシャが素直に甘えられる相手を見つけることができたのは俺も嬉しいし、えらいぞ』

 

『そーそー気にすんなって!アミ姫が知らないウチに色々済ますと拗ねるからーって起こしてもらう事にしたのはこっちの事情なんだからな!』

 

『それを伝えちゃうのもどうかと思いますが……』

 

 烏間先生の声で流れが戻ってきて、急いで姿勢を正す。カルマに着いて教員室に来た私たちと、様子見に来てくれた6人の内教室に戻ったメグちゃんと有希子ちゃん、千葉くんと凜香ちゃんを除いた2人がここにいる。殺せんせーもいるけどいいのかな……烏間先生がもうどうにでもなれって顔してるからいいんだろう、きっと。

 クスクス笑う声が聞こえて目を落とせば、自分のスマホで律ちゃんが楽しそうな笑顔で笑っていた……全部見てるもんね、律ちゃんからしたらこの短い時間でいろんな感情を見れて楽しいんだろう。

 

『うふふ、……それでは共有を開始しますね!』

 

『はは……、じゃあ改めて。椚ヶ丘中学校3年E組のみんな、はじめまして。俺はクロスベル警察、特務支援課に所属する捜査官のロイド・バニングス。一応リーダーを務めさせてもらっていて、一緒の画面に映ってるのが俺の仲間の……』

 

『はじめまして、私はエリィ・マクダエル。よろしくね』

 

『ランディ・オルランドだ。俺はこのメンバーの中では最年長だが、まぁ気楽に絡んでくれや』

 

『ティオ・プラトー。アミーシャの戦術導力器(戦術オーブメント)等導力機器を制作しているエプスタイン財団から出向し、特務支援課に所属しています』

 

『ノエル・シーカーと申します!本所属はクロスベル警備隊の方で国境警備などを担っていますが、特務支援課には出向という形でご一緒させていただくことが多く……よろしくお願いします!』

 

『ワジ・ヘミスフィア。本所属はロイド達警察とは違って七耀教会なんだけど……ま、色々あって一緒に行動することも多い戦う神父さんだと思ってくれればいいかな』

 

『で、この子が特務支援課の所属とは少し違うんだけど……』

 

『はじめましてー!ロイドの家族でキーア・バニングスだよ!』

 

『キーアは非戦闘員だけど、後方支援のサポート要員だと思ってくれたらいいよ』

 

 私たちの方は烏間先生の小さなスマホ画面ではあるけど、教室の方では画面共有、とかいうので律ちゃん本体に映してるらしい。ホント、便利でみんなのためになることを考えてくれる律ちゃんさまさまだと思う。

 

『長々と話すのもアレだし、今日はいろんな偶然が重なって連絡が取れただけなんだ。簡単に済ませるから、今から話すことに質問とかあればカラスマさんを通じて連絡して欲しい』

 

『あ、もしアミーシャ関係で連絡してくれる時はアミーシャを通じてでも、そこの赤髪君や青髪君あたりを経由してくれてもいいからね。君達ならリーシャと通じてるんでしょ?』

 

「わ、ワジさん!?!」

 

「いや、確かにリーシャさんと連絡先交換してますけど……」

 

「この人愉快犯だ……」

 

『ワジ……』

 

『堅っ苦しく話したって彼らもつまらないだろうし、別に公式の場でもないんだからいいだろ?』

 

『はぁ……俺らからしても願ったり叶ったりだけどさ……とと、ワジのおかげで話がズレた。んんッ、……カラスマさんとは話を詰めていたんだけどほぼ本決まりだからみなさんにも伝えます。端的に言えば……俺達は近々3年E組のみなさんに戦闘や戦略、交渉術などを教えるために日本に行く予定です』

 

『時期はカラスマって人と相談してまた伝えるからねーっ!』

 

「「「……へ?」」」

 

「…………え?」

 

『といっても、俺等のは対魔物・魔獣相手の戦い方だからなぁ……どこまで参考になるか分からんが』

 

『私達はそれぞれの得意分野があるから、分かれて指導するつもりよ』

 

『巨大生物、機械兵……色々と相手にはしてきたけど、武器が当たらないほど素早い超生物はないからね。ふふ、少し楽しみだよ』

 

「「「え、えぇーーーッ!!??」」」

 

「にゃや!?せんせー魔物と同列扱いされてます!?」

 

 まさかの、特務支援課のみなさんが来日……!?もちろん私も知らなかったし、むしろ殺せんせーが国家機密で暗殺対象ってことが知られてるのもビックリだ。数人に私の方を伺う視線を向けられたけど思いっきり首を振っておく。ホントに知らなかったし、そもそもあの人たちが無事にこうして連絡が取れるようになったのも知らなかったんだって……!

 当然教員室でも驚きの声が上がったし、隣の教室からも同じように、叫ぶ声が聞こえた。暗殺者、殺し屋とはまた違う人たちから指導を受けられるってことだもんね。というかワジさんの言い方からすると、ワジさんも殺せんせーに暗殺仕掛けようとしてないかな?;

 

 

 

 

 

 ……というか、殺せんせーいるのにこの話してよかったの;

 

 

 

 

 

 




〝はー、つまりこのメンバーだとティオちゃんよりも年下かぁ……ねぇヨシュア、最年少ってなると、年上ばっかりの中で一緒に行動してたティータやレンと似てると思わない?〟

〝そうだね。まあ年齢や体格はそうだとしても、戦闘、潜在能力に関しては、レンはともかくティータより確実に上だろうけど〟

〝なんで?〟

〝だって彼女は《銀》だろう?〟

〝……!〟

〝驚かせてごめんね。僕とレンは《結社》の執行者だったんだ。その繋がりで同僚だった《痩せ狼》と引き分けた実力のある凶手がいるって情報は聞いたけど、でもその《銀》が2人いるという話は聞いたことがない……つまり、本気を出したら分からないけど、《銀》として戦う時には君とリーシャさんに大きな差がないってことだ〟

〝なーる、そゆこと。素の実力はリーシャさんのが上かもしれないけど、別人が同じ人を演じた上で見分けがつかないくらい相当強いなら、それはアミーシャちゃんの実力でもあるわ。なら、この後の戦いには安心して送り出せるわね!〟

〝あとは……レンと同じってところも、かな〟

〝ッ、……そっか、そうだったわね〟

〝……どーして?〟

〝おっと、……どうかしたのかい?〟

〝……私、子どもだから戦うのおかしいって、言われるかなって……思ってて……、しかも、レンさんと一緒って……〟

〝あちゃー……ごめんヨシュア、あたしは上手く言えないわ……〟

〝……、……まさか。僕なんて10歳になる頃には《執行者》と呼ばれる立場になっていたし、レンなんてもっと幼い頃に機械兵器との適合者として《執行者》になった。おかしいなんて思わないよ〟

〝……そう、なんだ。……レンさんも、私と同じくらいの頃から……〟

〝ありがとヨシュア、助かったわ〜……〟

〝僕こそ軽率に話しちゃったからね。この子もティオさんと似てるってことを失念してたよ〟











「アミーシャ、渚君達と先に教室戻ってて。烏間先生にもうちょっと聞きたいことあってさ」

「う、うん。……ロイドさんたち、またね」

『ああ、会えるのを楽しみにしてるよ。……、行ったかな。カルマ君だったよね、何か俺達に用があるのかな?』

「うん、あのさ……エステルとヨシュアとレンって人に連絡取れたりする?」

『……え?』

「アミーシャが会いたがってる。……国が違うから難しいのは分かってるって強がってるけど、アンタ達の顔が見れたことで珍しく欲を出してるからさ。俺としては叶えてやりたいんだよね〜……顔だけでも見せてあげられないかなって」

『『『……』』』

「……難しいならいいよ。元々俺がアミーシャが言わなかった願いを勝手に話したんだし、聞かなかったことにしておいて」

『いや、なんていうか……、アミーシャの近くに君のような子がいてよかったと思ってさ』

「はぁ?」

『良くも悪くも私達は、アミーシャの兄がわり、姉がわりとして保護者にはなれても家族ほどの信頼関係は築けていません。背中を預けて戦える程度の戦闘能力としては信頼されていても、警戒心の塊なアミーシャからしたら私達との間にどうしても壁がありました』

『別れ間際にやっとお兄ちゃん、お姉ちゃんって呼んでくれるようになったくらいだったものね。なのに今はさん付けに戻っちゃってるし……』

『ま、何が言いたいかって、心配してた妹分がいい奴見つけたなってことだよ。俺らがそっち行った時にゃ、面と向かって話そうぜ!お前のこともちゃんと教えろよ?』

『兄として君に興味があるしね』

「……こちらこそ」





「「「…………」」」

「クロスベル再独立の調印式、終わったばかりなんだよな、こっち」

「後始末があるからって、関係者はみんなクロスベルにいますもんね」

「…………エステル達、ギルドにいると思うか?」



++++++++++++++++++++



オリジナル話でした。
1周目では学園祭で顔を合わせた時に起こるエピソードとして描きましたが、今回は先に通信越しで顔合わせをしたのでこんな形に。
そして書いてたら会話の流れ上想定外にヨシュエスレンも名前が出てきて、作者としてもちょっとよく分からないです。……一緒に登場するかはまだ決まってません!



今回でゲスト回は一旦区切りまして、次回から暗殺教室側のお話に戻ります。次も楽しみにしてくださると嬉しいです!
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