暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA135000、ありがとうございます!

お話としては祝100話!(閑話や番外編を除く)
キリがいい話なのに若干(?)暗いです。

今回もよろしくお願いします!



114話 ゆめみる時間

 

 

 

 ……、……ここは、どこ?

 

 

 

〝いやだ!いかない、いきたくない!!〟

 

〝つれてかないで!!〟

 

〝はなしてぇ!!〟

 

〝大人しくしろ!〟

 

 

 

 めにうつるもの、きこえるおと、ぜんぶがぼやぼやしてる。ただ、くらいこと、わたしよりおおきなひとが、……おとなが、たくさんいるのはわかる。

 ……わたしと、おなじくらいのこどももたくさん、いる、……のかな。ないてるこえ、おこってるこえ、たくさんのおとがきこえる。

 

 

 

〝‪✕‬番、お‪✕‬もだ。今日は‪✕‬‪✕‬……〟

 

 

 

 ……わからない。みたことない、はず。……それなのに、このばしょを……わたしは、しっている……?

 

 

 

〝ほら、✕✕……《‪✕‬‪✕‬》の‪前にいつものお‪薬‬だ、‪✕‬みなさい。ゆっくりでいいから‪全部、‪‪✕‬✕‬まで‪飲み‪✕‬すんだよ〟

 

〝‪✕‬くて美‬✕‬しいだろう……?‪✕‬が効‬いてくれば、もう‪何‬も‪✕‬えなくていいからね……〟

 

 

 

 ……つめたいこえ。……しらないこえだ。……ことばはやさしいのに、あたたかくない。

 

 

 

〝‪あぁ、また‪✕‬れたのか。おい、‪✕‬付けておけ〟

 

〝‪‪✕‬の力の‪制‬‪✕‬‪✕練‬だ。……ほら、あそこに的があるだろう?……?ああ、お前は気にしなくていい、壊れた‪✕‬を‪✕‬てる、ただそれだけのことだ〟

 

 

 

 …………………………あか。あかいいろ。

 こわれたものをかたづけて。わるいものはバイバイするの。ひとつ、ふたつ、みっつ、……あかがふえる。それが、わたしのしごとで……、わたしの?……わたしのしごと、……そうだっけ……?

 

 

 

〝な、なんだお前達は!!〟

 

〝うわぁぁぁッ!!!〟

 

 

 

 ……、……あれ。……、また、いろがかわった。あかもふえた、なのに……くらく、ない?

 

 

 

〝……確認が取れた。行方不明になっていたお前の妹で間違いない〟

 

〝……こんなことになってたなんて……でも、でも、こんな場所でも生きててくれた……っ!……おかえりなさい、これからはお姉ちゃんが一緒だからね……〟

 

 

 

 ……このこえは、あたたかい。わたしのすきな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────」

 

 ……今、見えていたのは……夢?目を開けたら、いつもの天井。つまり、私はただ、眠っていただけ。

 ……ただ、音も、色も、内容も、何もかもがめちゃくちゃで何も分からない。唯一分かるのはとても嫌なものを見ていた、ということだけ。……私は何を見ていたんだろう。

 

「……、…………、…………さむい…………」

 

 私は、なんで泣いてるんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺せんせーによる椚ヶ丘中学校を卒業した後について考える進路相談があった次の日。いつもなら一緒に登校することが多い渚くんから『先に学校に行くから2人で登校してね』って連絡があって、今朝は私とカルマの2人で山道を登る。それに関してはよくあること、なんだけど……

 

「アミーシャ、なんかあった?」

 

「……え、なんで?」

 

「いや、ずっと顔色悪い気がして。普通そうにしてるつもりだろうし、ちょっと見たくらいなら変わらないけど、……でも、なんかいつもと違う」

 

「その、……私にもよく分からないことだから説明にならない、と思う」

 

「でも、いつもと違うことはあったんだ。……話せない?断片的でも、感じたことだけでもさ。ちょっとその顔色で溜め込ませるのは、俺がほっとけない」

 

「…………」

 

 隣を歩くカルマが、朝合流してすぐくらいから私を見て怪訝そうな顔をしていて……表情に出てるだけで何も言わないから私からも何も言わずそのままだったんだけど、山道を登り始めてついに黙ってられなくなったらしい。

 そんなに分かりやすく顔に出てたのかな……自分の頬をむにむにとつまみながらつい考えるけど、分かるはずがない。そして原因は『これ』と言えても『どんな』とか、私自身が分からなすぎて絶対説明にならないんだけど。正直話したところで何か変わるとは思えない……でも、このまま彼を心配させたままにもしたくない、し……その聞き方は断れない。歩きながら少し速さを落とし、隠さずに話してみることにした。

 

「……ホントにわかんないの。朝、起きたら嫌な夢を見た気がしてるんだけど、いろいろ思い出せなくて……それが気持ち悪いというか、怖いというか……それだけ」

 

「嫌な夢?まー、夢って大抵起きたら覚えてないものだけど……」

 

「ううん、内容を覚えてないって事じゃなくて……、そもそもの内容も、出てきたものも、聞こえたものも、色も、……ちゃんと見たのになんにも意味が分からないの。ただ、何かあるってことが分かるだけで……暗くて、冷たくて、……怖かった。でも……何が嫌で何が怖かったのかも、よく分からないの。ただ、嫌な気持ちだけ残ってて、起きた時からなんか、寒くて……」

 

「……寒いって、熱は……なさそうか。体調が悪いわけでもないんだよね?」

 

「うん。……なんだろ、体が物理的にっていうんじゃなくて……心が、寒いというか……ホント感覚でしかないの。……ごめんなさい、上手く言えなくて……」

 

「謝んなくていいよ。……というか確かにそれは何もしてあげられないね、俺こそ無理やり聞いてごめん」

 

 ……カルマに謝らせてしまった。やっぱりこんなわけの分からない話を聞かせて困らせるより、最初から話さないでおいた方が嫌な気分にさせずにすんだんだろうな……

 それでも彼の言う通り、断片的にだけでも共有できたのは少し気が楽になったような気がする。せめて、それが嬉しかったんだって伝えよう……そのつもりで彼を見ると、何か考えている表情。これは彼の中で考えがまとまらないと話を聞いてもらえないな……そう思って待っていれば、少しあとにひとつ頷くと、

 

「……今日、俺ん家おいで」

 

「……へ?……あ、夜ご飯?今日はカルマのお家に……」

 

「そうじゃなくて」

 

 カルマはいつも通りの顔で、そう言った。だから普通にいつも通りの夜ご飯をどっちの家で作るか程度の提案だと思ったのに、そういうことじゃないらしい。

 

「あのね……この流れでいつもと一緒なわけないじゃん、泊まりにおいでってこと。お互い行き来して夕飯まで一緒にいることは多くても休みの日以外で泊まりあうことは久々でしょ?」

 

「それはそう、だけど……なんでいきなり……」

 

「家で1人にしたくないって言ってんの。そっちの家から離れて見なくなるならそれでいいし、それでも見るなら家に原因はないってこと。……夢の中までは入れないけどさ、一緒に寝てれば何かあれば起こしてあげられる。それに1人じゃなきゃ、寒くないし安心できるでしょ」

 

 少しでも夢を見た原因になりそうなものから離れられるように、それでいて私が眠れるように。もしまた夢を見て目が覚めても1人にならないように。それはとても魅力的な提案に思えた。

 ただ、あまり見たくない夢をまた見るかもしれないと悩む私からすれば嬉しいことではあるけど、……1つどうしても確認しておかなければいけないことがある。

 

「……一緒にお布団で寝るのやだって言ったのはカルマなのに」

 

「あのさぁ……」

 

 だって、少し前に体調を崩して私に何もさせないためにってお泊まりした時には、カルマはダメだと言ったから。今回も体調を崩してるってわけじゃないけど私が安心して眠れるようにお泊まりするのに、今回一緒に寝るのはいいのか。

 

「そもそも俺がなんで嫌がってるのかわかってないよね?」

 

「う。だ、だって、普段とやってること変わらないし、停学中は私を1人にすると寝ないからって、一緒のお布団だったから……何が違うの……?」

 

「はぁ……俺が自覚してるのと、シチュエーションが全然違うでしょ……人の気も知らないで……。ダメ元で聞くけど『据え膳食わぬは男の恥』って言葉と意味知ってる?」

 

「え……、……んと……イリーナ先生が言ってたことあったような……確か『据え膳』ってできてるご飯のことだから、それを食べない男の人はかっこ悪いってことで……?……あ、夜遅く帰ってきて、『ご飯あるよ』って言ってるのに『食べてきたから』って断るやつ?」

 

「……本トよく物の見事にそこまで脱線するよねぇ。ビッチから聞いた時点で()()()()方面の言葉ってくらいは察してもいいんじゃない?」

 

「……、え?そ、そう、……なの?」

 

「うん……まぁいいや、アミーシャがそんなつもりないのは分かってるし、分かってないのも知ってたから……、これ言い出したらキリがないし。ハッキリ言えば男を簡単にベッドに誘うなってこと。付き合い始めたばっかりだしそもそも中学生だし……そりゃあいつかはって思うけど、さすがにまだキス以上の関係に進む気ないからね?」

 

「……、……!?ご、ごはんは私だった……!?」

 

「あ、やっと意味わかった?」

 

 突然の言葉クイズ、多分長さ的にことわざ?かな……真面目に単語から意味を考えていたのに、カルマは呆れ顔。ヒントなのかほぼ答えなのか、イリーナ先生から聞いた気がする言葉はそういう方面というワードから改めて考え直す……つまり、卑猥な意味がある可能性。

 その後のちょっとだけ顔を赤くしてこちらを見ないカルマ自身の補足で、やっと言いたいことがわかってブワりと顔に熱が集まる……確かに私が理解してないからって、こんな場所でもそうじゃなくても、面と向かってハッキリ教えてくれるわけないよね、伏せるはずだ、……うん。私にそんな、……た、食べたいって思ってもらえるような魅力があるとは思えないけど、私の軽率な行動がカルマになにかしらの我慢をさせてたってことなのはちゃんと理解した。

 

「てわけで普段はやめて欲しいわけ。でも今はかわいい彼女が不調なのに見てるだけとか、俺は薄情でも人でなしでもない。そんで弱ってるところに手を出そうとも思わないってこと。……分かった?」

 

「分、かった……」

 

「じゃあこういう時こそいつも以上に世話を焼くのが俺の役目であって恋人の特権なのも覚えといて。他のヤツには任せたくないのも恋人として当たり前なの。夢なんて触れないし内容を差し替えてあげることも、根本の解決のために何かしてあげる事もできないけど、それを無くせない代わりに和らげるとか、中断させるとか……できることはあるはずだから」

 

 この話はここまでというように、ぐい、と力強く手を引かれ、私の顔を見ないままに進んでいく背を追いかける……話すためとはいえちょっとペースを落としすぎてたのか、E組校舎まではまだまだだ。

 ふと、引いてくれる手に視線を送る……、あまり意識したことがなかったけど、私の手は彼の大きな手に隠れてしまっていた。身長が全然違うのは分かってたけど……こんなとこでもこの人と差があったんだ、なんて。そっと握り返すと、繋いだ力が少し強くなった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 殺せんせーの1回目の進路相談では、こうなりたいって未来をしっかり描いてるヤツもいれば、進路は描けてないけどこれはしたいって希望はあるヤツ、とりあえず進学を考えてるヤツ、それすら思いつかなくてこれから数回相談を続けることを選択したヤツがいたらしい。みんなの前では直接話さないヤツもいたけど、仲間内で話したことは暗黙の了解で話していい範囲だけ広まってるから、ほぼそんな内訳でいいはず。

 俺は、クラスの中では明確に未来を考えてる方に入るんだろう。この国で進路を決めるなら、有事の時にしがらみやらなんやらで動けなくなる政治家より、官僚として国を裏から動かすポストに就きたい。だけど今、俺自身の1番の望みはアミーシャの居場所であり続けること……だから彼女の進路によってはゼムリア大陸に渡るのもやぶさかでもない。なんならゼムリア大陸との外交官って立場も悪くないよね、文句ある?って宣言したら『文句も何も……良くも悪くもカルマ君らしい選択ですねぇ……』なんて言われた。当然でしょ?彼女と出会い、E組で一緒に過ごしたことで俺の中に芽生えた譲れない願望……殺せんせーの言い方を借りるならいざという時に刺せる武器、第2の刃となりうるものだ。

 

 ま、そんな感じで大体のヤツらがなんとなくでも相談できた中……アミーシャと渚君に関してはいろいろと問題が出てきたらしい。

 

「今日の渚くんのお母さん、すごかったね……」

 

「まぁ、俺も遊びに行った時に結構アレな感じはしてたし……そもそも渚君の家って結構複雑だからねー。母親のあの感じについてけなくなって父親とは別居状態って言ってたから」

 

「……うん。それは聞いた事、ある」

 

 俺の家で夕食を食べ終え、食べ終わった皿もそのままにアミーシャと並んでテレビを見ながら話題になるのは今日の放課後のこと。1学期末にA組との対決のおかげで全体的に向上した成績が2学期中間テストでガクッと落ちたのは、わかばパークでの勉強禁止労働があったのが原因。それは分かってるけど、その分学校では学べなかったことを知れた貴重な経験だったからあれでよかったんだとE組の生徒は納得してる。でも、教育熱心で敷いたレールを進ませることに固執する渚君の母親は、なんとか渚君の成績に箔をつけようと渚君の意志を無視した本校舎復帰のため三者面談を望んでE組に来て……俺らも覗き見したけど、あれは三者面談とは名ばかりの、渚君を黙らせ、母親の主張だけを通そうとするただの一方的な押し付けだった。

 勝手に野次馬してただけの俺等は口出しできなかった。母親の勢いに乗せた罵倒が始まるまでの穏やかな会話を正確に聞き取ったアミーシャに聞く限り、渚君は普段から母親の顔色を伺いながら過ごしてきたことがうかがえた。母親の意に沿わないと罵倒され、強制され……渚君が自信なさげにしている時があるのは、この当たりが原因なんだろう。

 

「あとは……渚くんがどうお母さんと向き合うかにかかってる、と、思う。今まで従順で、必ず言うことを聞いてきて……渚くんが合わせることでお母さんの理想は叶ってきたから……」

 

「そうだね……どこまで渚君がハッキリ言えるかにかかってる」

 

「あの時、渚くんのお母さんは、お母さんの失敗を渚くんが踏まないようにって言ってたけど……渚くんとお母さんは違うから、渚くんは渚くんらしくいられたら……」

 

「……人生の2周目、だっけ。ゲームだったら強くてニューゲームとかパワーアップとか、引き継ぎ要素とかあるけどさ、あれは同じ人が繰り返すから意味があるわけで母親と渚君じゃあ繰り返しにはなんないのにね。そもそも性別も違うし」

 

「繰り返し……そっか……」

 

「そ。切ろうとしなかった長い髪も母親が伸ばせなかったから代わりにさせて、普段から1歩引いてるのも希望したところで母親にやらせてもらえないから最初から諦めてる。……色々強制されてきた結果なんだろうね」

 

「………………」

 

「ちなみにこれ、アミーシャも結構似てるって気付いてる?」

 

「え」

 

「ま、アミーシャの場合は一切強制されてないけどね。前に言ったことなかったっけ、渚君とアミーシャは似てるとこあるって。……アミーシャだってリーシャさんの代わりでも写し身でもない、誰の2週目でもないんだから色々と諦める必要も無いんだよ」

 

「…………………」

 

 俺からそんな返しをされると思ってなかったのか、彼女は顔を逸らした。多分ちょっとは自覚があるんだろう。最近はこの諦め癖がなりを潜めていたから放置してたんだけど、アミーシャ自身の進路相談や渚君と母親のやり取りを見たことでまた再燃してきてる節がある。

 

「……でも、迷いは吹っ切れてた気がする。きっと、大丈夫。……だよね?」

 

「もう、アミーシャが吹っ切れてないじゃん。大丈夫だって、俺らは信じてればいいんだよ」

 

「……うん」

 

 あ、話も逸らしたな。他人には肯定的に見れてるんだけどね……自分を認めるまでたどり着くのはまだまだ先が長そうだ。アミーシャは少し目を伏せながら渚君を心配してるけど、多分大丈夫だと思う。なんたって、あの三者面談のあと、殺せんせーの導きで迷いが晴れた表情になって帰っていったんだから。

 すぐには解決しないかもしれないけど上手くきっかけが作れれば、今の渚君なら正面から母親と向き合えるだろう。今まで母親を怒らせないように自分の希望を押し殺してきた渚君が何になりたいとか、何がしたいとかはまだなさそうだけど、母親への遠慮が無くなれば俺のようにふとしたきっかけで『譲れないもの』と出会うだろうし。

 

 

 

 だから……どっちかというと、目の前の彼女の方が渚君より深刻だ。渚君の三者面談の後、帰宅前に1人だけ殺せんせーに呼び出された俺は、アミーシャの抱えるものの一部を教えられた。曰く、彼女は自分の価値も、望みも見えていないと。

 

 

 

〝アミサさんは、目の前にあるものだけが自分の未来であり、それしかないと思い込んでいるために他の可能性が何も見えていません。誰かに強制されたわけでもなく、他の道を示されているにもかかわらず、です〟

 

〝それって、リーシャさん情報?〟

 

〝あとは昨日の進路相談での様子ですね。アミサさんは自分が自分のために何かを願うことを悪だと思っている節があります。彼女だって生きている人間なのですから、少なからず彼女なりに譲れないものや、やりたいことがあるはずです。しかし、彼女はそれが自分の願いなのかどうかが分からない……故に必要ないものとして処理してしまう〟

 

〝……自己評価が低いのもそうだけど……そういうことなら普段からわがままなんて言わないはずだよね。願いそのものを認識してないってことだから。周りに合わせて満足してるというか、それで自分のやりたいことをしたと誤認してる。……で?俺にそれを話した理由は?〟

 

〝……今のところ、アミサさんが認識してしなくても唯一分かりやすく『譲れないもの』だと分かるのが姉であるリーシャさんと君ですから。そして彼女の居場所であることを望む君なら、先生たちでは見えないものが分かるかもしれません。ですから情報としてお渡ししておこうと思いまして〟

 

〝ふーん……〟

 

〝……嬉しそうですねぇ。お互い義務感あって成り立つ関係でなく、想いあって支え合う2人の進展を先生は応援してますよ。……ですが!!行き過ぎた不純異性交友は許しませんからねッッ!!〟

 

〝……最後がなきゃ素直に感謝できるのにさぁ……〟

 

 ……だいぶ余計なことも言ってきたけど、ようはアミーシャの願いを見つけたら自覚させたり離さないように手助けしたりしてほしいってこと。じゃあ今までやってきたことと変わらないじゃんとも思うけど、俺の主観だけじゃなくて他の視点(先生目線)でも危うさがあるって分かっただけ収穫かな。俺のやりたいことでしかないからもちろん協力する。

 ……アミーシャ自身が意識してるのかは分からないけど、普段の言動の端々で『離れることになるまでは』『いつか終わりが来る』ってニュアンスをこの子は滲ませてることが多い。それってつまり、本人が分かりやすく望んでいても最終的には叶わないって思って諦めてるってことでしょ?人は変わるものだけど、何でもかんでも諦めからはいるのは彼女の悪い癖だし、俺との恋人関係を含めて勝手に終わりが来るものだと思われてるのも腹が立つ。だからこそ、俺が介入してもっと周りを見させて……あわよくば彼女の願いや譲れないことが全部俺起因になって、より離れられなくなってくれたらいいな、なんて。

 

「……俺ってこんなタイプじゃないと思ってたんだけどね」

 

「カルマ、どうかしたの……?」

 

「ん?……いーや、アミーシャが俺の彼女でよかったなって」

 

「……、渚くんの話の中にそうなる要素あった……?」

 

「あったあった。というかいつも思ってる」

 

「適当なんだから、……もう」

 

 俺の返事に少し照れて困った顔をするのですら愛おしい。俺が1人の女の子にここまで執着することになるだなんて思ってもなかったけど、それもこれもこの子と出会ったからだろう。彼女のために何でもかんでもして尽くしたいわけじゃない、だからといって何か返して欲しいわけでもない、……ただ、俺がしたいようにして、彼女を俺のものにしたいっていう独占欲。

 ここまで大きな感情を、欲を育てたのは俺自身だけど、もちろん他でもないアミーシャでもある。毎日毎日いろんな顔を見せる彼女がかわいくて、変なところで無知なところがおもしろくて、謎に発揮される度胸にハラハラさせられて、それでいて人の感情の機敏に敏感だからこそ寄り添える優しさと素直さに惚れ直して。責任はとってもらうよ……いつか、彼女が俺の重さに気付いたとしても離れられないように、もっと……、……なんてね。

 

「あ、そうだ……昼間の足跡の話、あれだけ烏間先生に連絡してきて、いい?やっぱり気になってて……」

 

「あー、あのサイズの違うやつ?確かに気付いたの俺らだけっぽかったもんね……ってもう10時じゃん、じゃあ風呂の準備しながら電話しておいでよ、皿洗っとくから」

 

「あ、ありがと……お願いします」

 

 気分を切りかえて、パタパタと泊まりの荷物を置いてる部屋に走っていった彼女を見送ってからキッチンへ戻り、夕飯の皿を流しへと運ぶ。皿を洗いながら思うのは彼女が口にしていた足跡のこと……渚君の母親が帰っていくのを見送ったあと、教員室の窓際に見慣れない靴跡を見つけたんだよね。俺みたいにローファーじゃなくてショートブーツだったり、ビッチ先生みたいにヒールだったりを履いてあの校舎に来てる誰かの靴裏って可能性はあったけど……サイズが大人の足だった。

 アミーシャは殺せんせーを狙う殺し屋が覗いてできた靴跡かもね、なんて冗談めかして言ってたけど、案外間違ってないんじゃないかって思ってる。防衛省を通して『E組生徒を巻き込んだ暗殺をしかけた場合、賞金は支払われないものとする』って認めさせたから、俺らには影響がないはず……でもそれが万が一、E組生徒の関係者なら関係ない、なんて抜け穴をついてくる殺し屋が現れたら。

 

「…………」

 

 ……やめよう、そんなタラレバを考えてしまったら、国まで信用できなくなりそうだ。

 

 

 

 洗い物を終えてなんとなしに風呂場を覗くけどアミーシャがいない……もしかして、まだ電話してるのかな。部屋の方まで行けば話し声がするし、電話が長引いてたみたい……烏間先生、一生徒との電話でここまで長電話することあるんだ……なんて感想が浮かびながら彼女へ声をかける。

 

「アミーシャ、準備できたなら先に……」

 

「……母親が……れた?それで……、超生物の……、……そう、……よかった、無事で……」

 

「……アミーシャ?」

 

「!……あかッ、……か、カルマ。……あれ?私……電話してたはずで、……?」

 

 ……ボソボソと聞こえる声……アミーシャにしては、声色に濃淡がない。淡々とした口調にも違和感を感じてそっとドアを開けると……なんてこともない、電話をしていたのはアミーシャだ。顔を上げた直後は暗い光のない目でどこを見ているか分からなかったけど、扉から見ているのが俺だと気付いたのか徐々に普段の彼女へと戻っていく。

 少し青ざめた表情のまま瞬きを繰り返す中で、彼女の中に何か不安げな色と混乱を感じて、俺は彼女が手に持ったままのスマホをそのまま自分の耳に当てる。

 

「烏間先生?」

 

『……あぁ、赤羽君か。君達は一緒にいるんだな?』

 

「え、はい。なんかあったの?アミーシャの様子が変なんだけど」

 

『いや、……ふむ、一応君も情報提供者だからな……そうだな伝えておこう。たった今、E組校舎にアイツを狙う殺し屋が現れ、渚君とその母親が巻き込まれた』

 

「は!?」

 

『殺し屋はアイツが無力化したから大丈夫だ。君達の情報提供のおかげで事前に対策ができた、感謝する』

 

「いや、それはいいんだけど……渚君は、」

 

『E組を物理的になくそうとした母親に連れてこられて、殺し屋が現れ、殺し屋が自分に危害を加えることができないことを逆手にとってクラップスタナーで気絶させ、アイツが後処理をしたそうだ』

 

「…………そ、そう……」

 

 渚君とその母親が!?いやなんでそんなことに……というかなんでこんな夜に母子(おやこ)で学校にいんだよ。青ざめた顔色で俺のスマホを持たない腕に縋り付く彼女を横目に烏間先生の声へ集中するけど、先生もそれ以上には話してくれるつもりは無いらしい。

 

『真尾さんは相当ショックだったらしくてな、君が変わる前に様子がおかしかったが……心配なさそうか?』

 

「ちょっと自分の言動にも混乱してるし、顔色も悪いけど……俺が見てるから平気だよ」

 

『……君も大丈夫か?』

 

「……、えっ」

 

 

 

 ……、……………俺?なんで?

 

 

 

『君達を、E組の生徒達を巻き込まないと決められた直後のコレだ。君と真尾さんの場合、特に国に不信感をもたれていてもおかしくない……、謝ることしかできないが……すまない』

 

「………………烏間先生は、悪くないじゃん」

 

 ……なんだよ、それ。俺とアミーシャが信じてた大人(先生)に裏切られた経験があることを分かっているから、この人はこうして対応してくる。聞いてすぐは、俺らのこと考えてないじゃんとか言いたかったのにさ、……本ト、この先生はずるい。

 その後、他の生徒は足跡のことすら知らないことを踏まえて夜の校舎で何があったかは話さないように頼まれ、承諾した俺は電話を切った。

 

 

 

 

 

 顔色は悪いけど、動けそうなアミーシャを先にお風呂へと送り、入れ替わりで俺も入って……寝る準備を済ませてから、約束通り彼女を布団の中へ招き入れる。

 正直いろいろ分からせた上で誘ったから躊躇うかとも思ったけど、すんなり入ってきたところを見ると、さっきの電話は彼女にも結構ダメージがあったらしい。電気を消して、向かい合ったまま目を閉じようとした、時だった。

 

「……ねぇ、カルマ。あの日言ってたけど……どんな手を使ってでもずっと隣にいるって、ホント?」

 

「唐突になにさ……ま、いいけど。そのつもりだよ?出会って、近くにいて、同じ時間を共有して、少しずつ出会う前の知らないアミーシャのことも分かってきて……それ全部を踏まえて、俺はアミーシャがいいんだから。俺を嫌いになんてさせないし、ずっと一緒に……って、……アミーシャ?」

 

 ……不安そうに聞かれたそれに、俺は当たり前のように、なんてこともないように、全く躊躇いもせずにあの日の言葉を繰り返す。『一緒にいる』って言うだけなら簡単なことだけど、俺が言ってるのはこの先の未来を約束するもの。まだまだ未来は長く続くのに、たったの15歳くらいの子どもがする約束にしては責任なんてもてないくらい、重たくて壮大なもの。

 ……だけど、俺はそれがどんなに重いかをちゃんと分かっているつもりだ。だから進路も2つの道を用意してるわけだし。

 

 

 

 

 

 俺の返事の途中で体を寄せ、俺の服を掴んできた彼女の手が震えていて……無言で腕を回し、小さな体を抱きしめた。多分、俺らは同じ痛みを共有してると思うから……胸に顔を押し付ける彼女に、俺も苦しくならない程度に少しだけ力を込めて顔を寄せる。

 

「ごめん、……ごめんなさい、少しだけ、こうさせて……」

 

「……少しでいいの?……好きなだけどーぞ」

 

 言葉には出さないけど、俺もすがらせてもらうから。……今日はお互い、変な夢見ないといいね。

 

 

 

 

 





「おはよう!」

「ふぁ……はよ……」

「おはよ、渚くん。……スッキリした顔してる、お母さんと上手く話せたの……?」

「うん、帰ってから色々あって、進路の事は母さんとなんとか決着がついたんだ。僕の好きにしなさいってさ」

「……そっか」





「………………」

「……な、何さ、殺せんせー……近いんだけど」

「カルマ君……先生は鼻がいいんです」

「知ってるけど……何?」

「アミサさんと2人、同じ匂いがしますねぇ。何事も程々にですよ?」

「……!何も無いし余計なお世話だよ!」



++++++++++++++++++++



冒頭の夢は、選択すると一応なんて書いてあるかは読めるようになってますが、それでもまだ伏字で謎を残してあります。察してる読者さんもいるかもしれませんが、心の内に秘めといて貰えると嬉しいです

恋愛相談の時間がなかった分、そこでのオリ主の自覚がカルマによって行われました。やっぱり自分の価値をかなり低い位置に置いてるために自力で自覚はこの子には難しく……それでも、知識はあるので結び付きさえすれば理解は早いです。

渚の時間に、《銀》が行かなかった世界です。つまり原作とおなじ。
いい言い訳をつけて離れることが難しかったのもありますが、行く前に全てが終わっていたというのも大きいかと。
話題で繰り返しの世界について触れていますが、まさかオリ主達がその繰り返しの世界にいるとは……この時点では思い至ることはできないでしょう。それを知ることになるのはもうちょっと先です。

最後の2人ですが、カルマの心情は書いてある通りで、オリ主については言及しません。同じととってもらってもいいですし、まさか……な心情かもしれませんし。色々考察してくださると嬉しいです。

ではまた次回お会いしましょう!
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