暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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読者のみなさんは、2026年3月に公開予定の「みんなの時間」はムビチケ買いましたか?
作者は情報解禁とともに速攻買いに行って特典4種類自引きするまで書いました!!

その4種類の特典のうち、1枚のイラストを今回のお話に盛り込んでいます。
その特典では文化祭と言うワードが書かれてましたが、原作に文化祭はないので……まあ、学園祭扱いでいいだろうと……ねじ込みましたので捏造です。それを踏まえて楽しんでいただけると嬉しいです。
※ムビチケ裏面のネタバレはありません。ご安心ください。


今回もよろしくお願いします!




115話 学園祭準備の時間

 

 渚くんがE組から転級させられちゃうかも……な三者面談があって。だいぶすごいお母さんだったから、説得するのは大変そうだなって心配してたけど……殺せんせーを狙った殺し屋さんの暗殺にお母さんと一緒に巻き込まれたことで、渚くんは自分の力を人を害すること以外に使いたいって思えたんだって。無事にお母さんに納得してもらうことができたらしくて、これからも一緒に同じクラスメイトとして3年生を過ごせることが決まった。

 あの日……烏間先生に足跡について電話してすぐに殺せんせーに情報を共有してもらえたんだけど、殺せんせー本人は気付いていたからこそ殺し屋が来るのを普通に待ち受けて堂々と手入れするつもりだったらしい。まさか渚くんとお母さん(イレギュラー)がいるとは思わなくて、姿を見られるわけにはいかないからって慌てて烏間先生もどきの変装をしてるうちに渚くんがクラップスタナーで……な流れだったみたい。その報告を、折り返しで連絡してくれた烏間先生からの電話で受けてる時は生きた心地がしなかった……直後にカルマが来るとも思わなかったからさらに心臓が壊れるかとも思った。

 

〝……アミーシャ?〟

 

〝!……あかッ、……か、カルマ。……あれ?私……電話してたはずで、……?〟

 

 ……驚きすぎて、自分が何を言ってるかも一瞬分からなかったけど、失言しすぎる前にごまかせてよかった。焦りすぎてカルマのことを『赤羽業』ってフルネームで呼びかけるとか……気を抜きすぎた。これからは誰かが来る可能性のある時は、業務連絡であっても《銀》として連絡するのは避けようと思う……

 

 

 

 

 

 ──────そして。学校としての大きな行事は2学期の中間テストくらいだったけど、私たち暗殺教室としてはわかばパークでのボランティア労働に加え、『死神』の襲撃もあった10月ももうすぐ終わり、そろそろ11月。椚ヶ丘学園は、学園祭に向けての準備期間に入っていた。

 

 

 

 

 

「──────よし、俺達E組の出店は『どんぐりつけ麺』をメインに据えた出店でよさそうだな!」

 

「役割分担は各自得意分野の関係で固定で割り振った人もいるけど、基本的には男女問わず食材調達班と接客とキッチンが全員シフトで回ってくると思っといてね」

 

「ラーメンと台所は任せろっつったから村松をメインに据えて、キッチンは原と2人固定で指示役頼むぞ!」

 

「おうよ!とりあえずメインの試作はどんどんやるから意見よこせよ!」

 

「私はその他の食材でみんなでも調理できるもののレシピとか書出していくわね」

 

「心強いですね……」

 

「さすがE組の誇る学級委員達と料理番長達だなぁ」

 

 今回に関してはどちらかのクラスの誰かが焚き付けたわけでもないのに、本校舎では……特に同級生である中学部3年生の間では、既に学園祭におけるA組対E組の対決ムードができあがっていた。どちらかが勝負を仕掛けたわけじゃないから、多分自然と『A組とE組はこれまでことあるごとにイベントで争ってきたから、きっと今回も』ってできあがったものなんだとは思う。これは、E組に課せられた正門から1kmもある山道を登ってまで来てくれるお客さんを呼び込まなくちゃいけないという悪条件の中で、勝てないまでも何かするんじゃないかって期待も含まれているような気がする。

 

 もちろんどうせやるなら勝負がしたいE組のために、殺せんせーはこの山という不利になる立地を逆手にとった提案をしてくれた。

 誰も手をつけていない山だからこそ、自然に自生しているどんぐりや木の実、キノコや自然薯などに加え、プールのために開拓した沢にいつの間にか住みついた生物……それらは全て、お金をかけずに手に入る、E組だからこそ生かすことのできる武器の数々。とりあえず目に付いたものを集めただけでも殺せんせーに鑑定してもらったお陰で、私たちがただの草、実だと思っていたものが実は食用だった、なんてものもたくさん見つかった。

 

「この山奥で誰にも気付かれずに隠れていた最大の強み。あとは君達がそれをどう生かすか……ここから先はみなさんで相談してください」

 

「サイドメニューに充分な量だね。後から採りにいっても在庫も豊富だ」

 

「隠し武器で客を攻撃ってか。ま、俺達らしい殺し屋的な店だわな」

 

「チェ、毒のあるやつは回収しようと思ってたのにさ……」

 

「何に使う気だったのカルマ君……;」

 

「カルマが猛毒を期待して集めてきたものがまさかの食用、まさかの高級食材ってのが1番怖いわ;」

 

「これぞ物欲センサーね……!」

 

「……だから俺、さっきから自然薯が見つからないのか……もっと無欲に探さないといけないんだな!」

 

「磯貝君;」

 

 冷やし固めなきゃいけなかったり燻製にしておいたり、みたいな事前に調理しておいた方がいい料理を除いて、これらの食材を直前に取りに行けば新鮮な産地直送の料理をお客さんに提供できる。ここまで来てもらうお客さんに1kmはある山登りをしてもらわなきゃいけない時間を考えれば、E組の機動力からすれば十分用意可能だ。

 しかも人の手が入ってない山だからこそ、マツタケ、タマゴタケなんて普通にお店で買うと数千円はするだろう貴重な食材もたくさん見つけられる。律ちゃんと連動したマッピング機能を活かせば、いきなり注文が入ったとしても採りに行く時に迷うこともない。

 

「狭間、何となくで商品説明書くから上手く校正できないか?」

 

「なんとなくじゃ困るわよ、せめて特徴くらいは書き出してくれない?」

 

「じゃあ私が作るメニューも添えるから、そこから引用するのはどうかしら?」

 

「……そうね、それならいいわよ、直してあげる」

 

「岡島ぁ、ホームページとメニュー用に写真撮ってくれないか?」

 

「任されたァ!ライトは三村のを貸してくれ!」

 

「お、じゃあ撮影場所は……」

 

「……ただのつけ麺を描くだけじゃあインパクトに欠けるよな……、どんぐり……どんぐり感を出しつつ美味そうな看板……生やすか?……いや……」

 

「……こっちは口出ししない方がいいな」

 

「だな……菅谷の感性に任せようぜ」

 

 美術が得意な菅谷くんがお客さんの目を引く看板を、興味を引く商品説明を読み物を表現することが上手な綺羅々ちゃんが、人からの見栄えをよく知っている岡島くんが食品写真を、三村くんがこのために特設ホームページを作成。

 

「E組の店に興味を持ってもらった()()はいくらでも魅力を伝える準備ができた。残りはE組自体に興味を向かせる動線だな……」

 

「麓で交渉上手な矢田が客引き、シフトの空いてるヤツがチラシ配り、だけじゃ目を引かないよな……」

 

「ホームページだって見てもらうまでが難しい。学園祭の特設ホームページから飛べるように申請は出したが……だからといって言い方は悪いが差別意識のあるE組のページに何人が飛ぶかって話だ」

 

「外部のお客さんは?E組のことを知らない人が多いし、案外見てくれたりしないかな」

 

「いや、それだと数が足りない。そもそもホームページの存在を知らない人だって絶対にいるはずだ」

 

「……ふむ」

 

 ある程度の役割分担と宣伝担当が動きだしたあたりでぶつかったのは、どのようにしてE組を見つけてもらうか、興味を持ってもらうかだった。何せE組だけが山の上。本校舎の人たちも何人かが言っていたけど、ここまで来るお客さんはホントに物珍しさで来るか何か魅力を見つけてくるかだろうから。

 新鮮な山の幸、っていう魅力があってもそれだけじゃあやっぱり足りない。何か、私たちを見つけてもらえる手立ては他にないかな……。何度目か分からない学園祭に向けたホームルームで頭を悩ませていると、教卓でチョークを握っていた殺せんせーが何かを広げ、黒板に貼り付けた。

 

「皆さんが悩んでいる客寄せ……という言い方はあまり良くないかもしれませんが、それに使えそうなものがあるじゃないですか。今年は本校舎の生徒会主催でこのような企画があるようですね?」

 

 そう言って殺せんせーがみんなに見えるように触手で示したのは1枚のポスター。正門からE組に来るまでにもチラホラと貼られていたし、多分本校舎の掲示板にも掲示されてるんだろう四つ切り画用紙サイズのそれに書かれているのは……

 

「あーそれね……【椚ヶ丘学園中・高合同ミスコン】」

 

 デカデカとしたポップ文字で彩られた、ミスコン……というイベントを知らせるものだった。私は聞いた事のないイベントだったからよく分かってなかったんだけど、殺せんせーが言うには各クラスから数人代表として選ばれた女生徒が、外見だけでなく内面や対応力などをアピールして、全校生徒や今回の学園祭の来場者の投票で1位を決めるというもの、みたい。

 なんで女子生徒のコンテストはあるのに男子生徒はないのかは不思議だけど……単にミスコンしかやらないってだけ、なのかな。

 

「昨年までは高等部だけだったのに、誰の圧力かは知らないけど今年は中学部にも企画が降りてきたんだっけ?」

 

「ねー、合同って時点で部門分けられてないんだから高等部に有利すぎね?っていう……」

 

「しかも?ここでもE組不利ってか……なぁ?」

 

「しゃーねーだろ……昨年までの内部進学した先輩達からしてもE組は差別対象なんだし、むしろ参加枠があるだけ意外だわ」

 

 みんなが言うには、ミスコンとなれば開催当日にステージで代表者それぞれの特技やパフォーマンスのアピールタイムが設けられる……らしいんだけど、E組に限ってはいつもの如く、当日学園生の前で直接のアピールが()()()()()()()()()()()()()()用意ができないために、写真と動画で参加することになってるんだって。他の参加者にはあるアピールタイムが削られてる時点でだいぶ格差があるわけだけど、それでも参加枠が用意されてるだけありがたいと思うべきなのかな。本校舎の人たちからすれば笑いものにしようとしてるのか、一応外部の人達が来るためにある程度の見栄えというか差別と言われないためのラインを守ろうとしてるのか、って感じもするけど。

 ただ、他の生徒に比べて露出の機会は少ないとはいえ、学園祭の全校生徒企画にE組が出られることに違いは無いのだ。そしてそれは、見方を変えれば色々といがみ合っている本校舎の面々に顔を合わせずにE組の存在を知らしめることができる、とも言える。

 

「運営が想定しているのは『椚ヶ丘学園のNo.1の女生徒を決める』企画でしょう。しかしこのE組にも与えられた参加枠を上手く使って、E組の存在と、女子の皆さんをアピールすることが出来れば……」

 

E組(うち)の店の宣伝にもなる!」

 

「そういうことです」

 

「なら、……どうせならここでも勝ちに行こうぜ!なんせうちには本校舎に負けない、タイプの違うかわいくてカッコイイ女子達が揃ってるからな!」

 

「棒倒しでは男子だけに任せる形になっちゃったけど、今度は女子がここで役に立つってことね!いいじゃない!」

 

「……そうね、あとの問題は誰を出すか、よ」

 

「代表者は各クラス5人まで、かぁ……」

 

 改めてポスターの注意事項にみんなで目を向ける。ミスコンが見た目だけでなく内面も比べるというからにはかわいい、キレイ、女性らしいだけでなく、何か一芸に秀でた女の子が出るべきだと思うけど……それだけじゃなくて、ある程度最初から全校生徒に知名度のある子が出た方がいいのかもしれない。だって、知られてなくて目も向けてもらえないならせっかく出ても宣伝にならないから。

 でも、そういうことならE組の女の子なら誰が出ても問題ない気はする。だってこの半年で球技大会のエキシビションで勝ったり、期末テストで上位をとって名前を掲載されたり、体育祭で成績を残したりって感じで、男女問わずに本校舎を巻き込んで目立ってきたおかげで、【E組の】っていうだけである程度の知名度は稼げてると思うから。それでも誰を出すべきかみんなが悩み、考えている中、前に立っている殺せんせーは何も動じずにニコニコしながら触手を立てた。

 

「ヌルフフフ……そう、絶対揉めると確信してましたので、先生、エントリーする生徒を既に決めておきました」

 

「「「は!?」」」

 

「では発表しましょう!1人目は、E組のマドンナ神崎さん!」

 

「!」

 

「神崎さんか……殺せんせーが選んだにしてはいきなり納得できる人選だね。というか反対する人もいないんじゃない?」

 

「清楚でお淑やかな落ち着いた女子枠って感じかな」

 

「それな。神崎本人はどうよ?」

 

「えっと、私でいいなら……事前に撮った写真と動画でいいんだもんね、……うん、がんばろうかな」

 

 1人目として名前を挙げられたのは有希子ちゃん。E組で誰もが認める大和撫子って感じのお淑やかな女の子だし、同じ女子としても、代表として出てもらうのに申し分ない存在だと思う。国語のテストで毎回上位にいることもあって、知名度も申し分ないはず……

 有希子ちゃんの反応を見る限り、リアルタイムでのアピールタイムはちょっと嫌だったのかもしれないけど、事前撮影の材料だけでいいなら緊張しないから、と気持ちよくOKしてくれている。

 

「では、次に行きますよぉ……2人目は、律さん!」

 

『わ、私ですか!?』

 

「ちょっと殺せんせー、さすがに律は表に出しちゃダメなんじゃ……」

 

「そうだよ、機械だってバレたらまずいんだろ?」

 

「テストの時みたいにニセ律を召喚するってことか……?」

 

 殺せんせーの指名がまさかの律ちゃんで、みんなの中に不安が出てきた。確かに律ちゃんは人工知能で、殺せんせーのおかげで全身のアバターは用意されてるけど……テストでも人工知能はダメ、全校集会でも生身の姿がないと登録されてる生徒がいないと問題になるからと替え玉を使ってるくらいだ。こんな公になってしまうミスコンに出てしまってもいいのかって。

 律ちゃん自身もどういうことなんだろうって顔をしているし、理由が知りたいと思っていたら声が上がったのはまさかの方向からだった。

 

「いや、イケるわよ!」

 

「不破!?」

 

「だってE組はステージでアピールをすることが出来なくて、写真と動画のみでの参加なんでしょ?データでしかない律がステージでってなると代役立てるか不参加って形でしかアピールは不可能だったけど、写真と動画なら出し放題じゃない!」

 

「……!たしかに〜!今回のミスコンの形式なら律っちゃんがみんなと同じことができるってことだよね〜!」

 

「そっか、ついに律が俺らと同じように行事に参加できるってことか!」

 

「どう?律、出てみる気はある?」

 

『……っ、は、はい!私も皆さんと同じように行事に出てみたいです!』

 

 優月ちゃんの気づきによって、E組みんなの中に安心と喜びが湧き上がってきたのが分かる。それに律ちゃん本人もかなり嬉しそうに目を輝かせている。

 ……当たり前だよね、律ちゃんはどう頑張ってもデータでしかないから、今まで全校生徒の前に生身で姿を見せる必要のある行事には、表立って参加することは絶対にできなかった。あって裏方とか、画面に移るアバターとして出るくらいだし、スマホ越しにみんなのことを見てることしか出来なかった。……だけど、今回の仕様なら確かに律ちゃんそのものとして参加することが可能だ。

 早速どんな衣装を着たらいいんでしょうか……って、嬉しそうにいくつかの衣装サイトを開いている。早いなぁ……それだけみんなと一緒に、同じように参加できる企画っていうのが楽しみなんだろうな。もしかして律ちゃんが参加できるようにってゴリ押しした犯人、殺せんせーか烏間先生だったりする?……さすがに考えすぎかな。

 

「それでは3人目、茅野カエデさん!」

 

「私!?なんで!?」

 

「あー、確かに異議なし!」

 

「わかばパークでの堂々とした姫役、あれくらい見られることに躊躇しないのはすごくいいと思う!」

 

「茅野さんの度胸はアピールとかで活かせそうだし、なにより神崎さんとも律ともタイプが違う、中学生らしいかわいさって面でいいと思う!」

 

「ガキなだけだrぐえっ!?」

 

「ふんっだ。正直あんまり目立つことは苦手なんだけど……でも演出っていうか、他の子を飾る方を中心にやらせて貰えるならやってもいいかな」

 

『一緒に相談乗ってください!』

 

「まっかせて!」

 

 早速いらないことを言った寺坂くんにカバンが投げつけられてるけど……カエデちゃんは裏方を希望しつつ、一応簡易的に参加を了承してくれるみたい。律ちゃんと早速あったら良さそうな装飾について話し合い始めてるあたり、普段から一歩引いたところでみんなをサポートするのが得意なカエデちゃんからしたら、こう、誰かを着飾ったり人に映える見せ方を考えるのが得意なのかもしれない。

 

「そして4人目は渚君!」

 

「「「あー……」」」

 

「ちょっっっと待って!!なんで僕!?これミスコンだよね、僕男なんだけど!?!?しかも絶対かっこよさとかの枠じゃないよね?!それなら片岡さんとか岡野さんとかだろうし……ってしかもなんでみんな『分かる』って顔で頷いてんの!?」

 

「似合うからじゃない?」

 

「カルマ君はその画像消してくれないかな!?」

 

「というか、ミスコンのポスターを見つけて真っ先に渚君にすればと言ってきたのはカルマ君ですからねぇ」

 

「カルマ君???!」

 

「だって注釈で書いてあるじゃん、【公共良俗に反しない程度の女装であれば、参加を許可します】って。これ、ミスターコンをやらない上に、ネタ枠とかクラス内代表として女子が出ない場合の苦肉の策なんだろうけど、渚君なら問題ないよね〜」

 

「問題大ありじゃないかなぁ!?」

 

 そして男の子なのになぜか代表として名前を呼ばれた渚くんと、それになるほどなって反応を見せるE組のみんな……誰も一切反対意見もなく渚くんに意向を聞かないあたり、今までで1番賛成されてないかな……?そしてまさかの発起人はカルマだったらしくて、夏休みにホテルで女装した時の写真をスマホで表示させながら飄々と理由を並べてるけど、……これ、面白がってエントリーさせようとしてるだけなんじゃ。

 確かに私もミスコンがあるならなんでミスターコンがないんだろうって思ってたけど、なるほど、女装の可能性を考えてなかった……これ、全体の何人かはネタで女装する男の子が毎年いるってことなのかな。で、どうせなら男の子でこういう企画に出たい人用に枠を作った、とか……あとは近年のジェンダー問題になぞらえて作った条件だったりして。真実は分からないけど、見てもなかった注釈によって無駄に色々考えてしまいそう。

 

 渚くんは、当然殺せんせーよりも発案者のカルマにくってかかるように詰め寄っているけど、カルマはカルマで知らん顔して聞こえないふりしてる。これ、どっちもすぐには譲らないんだろうな、なんて空気がみんなに流れている中、ニコニコとした殺せんせーと目が合った。……え、目が合った?

 

「そして最後の1人は……アミサさん」

 

「……………え?」

 

「はァッ!?」

 

 ……今、私の名前が呼ばれた?クラスの中から私がまさか選ばれるなんて思ってもなくて呆然としていたら、私よりも先に隣の席の彼が立ち上がって声を上げていた。あれ、渚くんの訴えはもういいの?なんて思ったんだけど、渚くんも驚いたように殺せんせーの方を向いていて……よかった、私じゃ役に立たないって分かってるから2人とも抗議してくれるんだね……ってホッとしたのに。

 

「なんでさ!?渚君差し出すからアミーシャは選ぶなって言ったじゃん!?」

 

「カルマ君んんん!?!?」

 

「カルマ……お前な;」

 

「通りで渚の訴えをてんで聞かないなと思ったよ;」

 

 数倍予想外な手回しをしてたらしい……サラッと暴露してるけど、カルマ、殺せんせーとそんな取引してたの?それを聞いた渚くんはショックを受けた顔してるし、他のみんなも呆れた顔をしてるし……私はこれをどう反応するのが正しいんだろう。

 にしても、私がミスコンに出る……?だって、綺麗で清楚系の有希子ちゃん、かわいいくそれでいて大人っぽさもある律ちゃん、小動物系のカエデちゃん、女装枠とはいえ女の子の中に溶け込めるボーイッシュ枠として渚くん。これだけ系統の違う要素もパターンもあったら私、いらなくないかな。この展開にビックリしすぎて何も言えないまでも、本人である私でさえそう思うのだから、ちょっと荒れていたカルマや渚くん、他のクラスメイトたちも同じような結論になるわけで。

 

「……ま、いーや。候補の段階でしょ?規定にされてんのは上限5人ってだけだし、神崎さんと律と茅野ちゃんはやる気あるんでしょ?ならアミーシャの分はエントリーさせなきゃいいか……」

 

「いや、そもそも僕の女装もなくしてよ……」

 

「それですけども、」

 

 

 

 ──────ピロン

 

 

 

「「「!?」」」

 

 これは殺せんせーからの提案なだけであってまだ確定じゃない。そう思っていたからこそ、カルマと渚くんの怒りというか焦りというか……それが落ち着いたみたいで、切り替えるように2人が私の意思を汲み取りつつ代替案を出しながら席に座った。それを見計らって、話し始めようとした殺せんせーが何か言いかけた空気を割るように、スマホが通知を鳴らした……あれ、今のって。

 

「……あ、わ、私だ……ごめんなさい、」

 

「いえいえ、構いませんよ。授業中ではないですし、急ぎの連絡かもしれませんから、確認していただいても大丈夫です」

 

「え、あ、……ありがと、ございます……?えっと誰からで……」

 

『アミサさん、浅野さんからメッセージのようですよ!』

 

「「「あ、浅野ォ!?」」」

 

「なんで浅野から……?」

 

「へ……?こ、個人的な連絡だったりするの……?」

 

『えーと、……んー、E組に関わりそうな内容ですし、隠すほどの内容はなさそうなので読み上げても?』

 

「う、うん……」

 

 誰かを確認する前に律ちゃんがクラスみんなに差出人をバラしてしまった……問題ないからいいんだけど、みんなの反応が早すぎてびっくりした。まさかの差出人に私が固まっているうちに、みんなの興味は私に届いた浅野くんからのメッセージになったらしく……ひょこ、と画面に現れた律ちゃんがみんなが興味を持ったなら堂々と公開してしまいましょう!って言い出した。

 個人的に内密な話でもないみたいだから了承すれば、律ちゃんは手に持ったメールのアイコンを開き、クラスみんなが耳を傾けているのがわかる。

 

『えっとですね……【真尾さん、お疲れ様。そろそろE組の学園祭での出し物は決まったかい?君のクラスのことだ、また突拍子もないことを考えていそうだが……話していい範囲でまた教えてくれ】』

 

「は、話していい範囲って……どこまで……?」

 

「……アミサ、当日までのお楽しみって答えときなさい」

 

「むしろ【食べ物屋さんをするから食べに来て欲しいな】ってアミサなりにかわいくねだっときなさい。アンタに惚れてる生徒会長なら多分いくらでも金を落としてくれるわよっ!」

 

「……アミーシャをダシにされるのは複雑だけど、生徒会長からは搾り取りたいな……」

 

「むしろ全商品片っ端から頼ませるのよッ!」

 

「み、みんな、電話じゃないからって好きなだけ言うんだね……」

 

「言うだけならタダだしね。でも来て欲しいなとは言っておいて欲しいかも、どうせなら売上に貢献してもらいましょ」

 

「わ、分かった……えっと、【食べ物屋さんだから浅野くんも来てくれると嬉しいな】、と……」

 

「というか生徒会長、こういうメッセージ送ってくるんだ……アミサ、裏でやり取りすることあったのね?」

 

「え、うん、たまにお茶に行かないかーってお誘いくれるよ……大抵ブックカフェとかで一緒に本読むか勉強してるけど……」

 

「うわ、固いお出かけだな……、カルマ睨むなって」

 

「……チッ」

 

 ホントに当たり障りないメッセージだ……近況を聞きつつ、もしかしたらE組を探ってるのかも、ということで細かい内容は伏せつつあわよくば生徒会長を呼ぼうということになった。律ちゃんが読み上げてくれるから私は同時進行で返事のメッセージ文を作成し始めよう……早速E組に来てくれるお客さん確保のために、浅野くん経由で人を集められないかと相談しだしてるクラスメイトもいる。しょ、商魂たくましいね……?

 

『続きを読みますね!えーと、……【そうだ、君のシフトにもよると思うが1つ依頼があるんだ。僕達A組は体育館を貸切ってイベントカフェを経営するんだが……君に、学園祭1日目のA組のステージの演目の1つへ出演して貰えないだろうか?】』

 

「「「……は?」」」

 

「へ?」

 

「なんだって……?」

 

「律、それもうちょっと詳しくなにか書いてないの?」

 

「そ、そうだ、俺達だって真尾をA組に引き抜くようなことなら容認できないぞ……?」

 

 律ちゃんは普通に続きを読んでくれただけなんだろうけど、何気なく思い出したように書かれた内容……もしかして、こっちが本題だったりするのだろうか。聞き間違いかと思ったけど、クラスみんなも困惑してるのを見ると聞き間違いではなさそうだ。

 ……私が、A組の出し物の1つに……?一気に困惑で静まり返ったE組教室だけど、復活の早かったメグちゃんと磯貝くんが律ちゃんに聞いてくれている。……もう1人ある意味復活が早かったカルマはなんか既に怒ってるみたいで、その、地を這う声というか……怖いんだけど……;

 

『【詳しい内容は時間を作ってくれたら説明するよ。ここに書き切れる内容じゃないしね……もちろん君だけの問題じゃないだろうから、信頼できるE組生徒を数人連れてきて構わない。返信を待ってるよ】……とのことです』

 

「……どう思う?」

 

「これだけじゃ安請け合いできないし、浅野の提案通り、この後抜けられそうなヤツで付き添って聞きに行こう。こういうのは早い方がいいだろうし」

 

「……アミーシャ、今日の放課後に5人くらいで行くことと、E組に登る山道の中腹、烏間先生とビッチ先生の車が駐車されてるところを集合場所に指定しといて」

 

「わ、分かった、書いとくね」

 

 カルマの言う通りにメッセージを打ち込む。これはさすがに私1人の一存では決められないし、一応対決ムードが広まってる中の依頼だから、メッセージ文だけでは分からない浅野くんの真意が知りたい。E組の先生たちの駐車場を指定したのは、E組から遠すぎず、かといって浅野くんが無理することもなく、本校舎の生徒たちからも簡単には見つからない場所だからだろうな……私もいい場所だと思う。

 結構衝撃的な内容ばかりで、もうお腹いっぱいだったんだけど……律ちゃんがメッセージやメールを読み上げてくれる時は最後に必ず『以上です』って言ってくれるのに、今はまだ言ってないな……って思った時だった。まさかこの後にさらなる爆弾があるだなんて、誰も思っていなかった。

 

 

 

 

 

『あ、あと少しだけ続きがありますね……【追伸:君、ミスコンに出るのかい?】……以上です!』

 

「「「…………え?」」」

 

 

 

 

 

 ……今、浅野くんの追伸、なんて書いてあったって……?ミスコン?私が出るかって聞かれた?……なんで今、E組でも店の宣伝のために出演しませんかって殺せんせーから話題に振られたばかりのそれが、本校舎にいる浅野くんに聞かれるの……?

 

「……こ、殺せんせー……?」

 

「ヌルフフフ……」

 

 E組の誰もがその答えをもつわけがなくて、当然みんなの視線は殺せんせーに集まる。それを受けた殺せんせーは、ニンマリとすごくいい笑顔を浮かべて、言った。 

 

 

 

 

 

「先程は通知音に遮られてしまいましたが、浅野君もいいタイミングと内容で連絡してくれましたねぇ!アミサさんと渚君のエントリーに関しては確実に反対されると思ってましたから!先生、既に先程の5人でエントリーしておきました!」

 

「「「………………は?」」」

 

 

 

 今、なんと?

 

 

 

「ヌルフフフ……問題なく受理されましたから、提出日までにみなさんで協力して写真や動画を華やかに作成し、本校舎の目を釘付けにしてやりましょう!」

 

「なんでなの!?!?」

「なんでだよ!?!?」

「な、なんでぇ……!?」

 

 

 

 殺せんせー、まさかの事後報告だった。

 この後、渚くんとカルマと私の叫びが重なるのも。E組の誰にも相談せず勝手にエントリーしちゃった殺せんせーがE組みんなから詰め寄られるのも。騒ぎを聞き付けた烏間先生とイリーナ先生が話を聞いて頭を抱えるのも。……もちろん当然のことだったと思う。

 

 

 

 

 





「普通意見聞くだろ!?」

「毎回毎回突拍子もないことやってくれるな……!」

「コードネームの時もこっちの意見聞かずに先生が押し通してたけどさ!」

「さすがに規模が違うでしょ!」

「手厚いサポートのつもりかもしれないけど、今回は本トに段取り悪い!!」

「ニュヤァァァ、す、すみませんでした!!カルマ君にこのポスターと渚君を出す案をもらった時には既に期限ギリギリでして……!」

「だからってなぁ……!」





「…………、…………」

「カルマ、なんか明後日の方向いてるけどどうしたんだよ……」

「あー……っと、……うん、予想外にことが動いちゃった的な……うん……」

「……なぁ、カルマ。お前がギリギリに言ったのって渚が断れなくするためだったりしないか……?」

「……へ?」

「……、はぁ、……渚君だけのつもりだったんだけどなー……」

「お前も原因かよ;」

「しかも結構戦犯じゃねぇか;」

「しょうがないじゃん、アミーシャ出したくなかったんだもん……」

「男がもんって言うなよかわいくねーぞ;」

「思惑キレイに裏切られてるけどな;」

「必死か;」



++++++++++++++++++++



ムビチケの特典、
・寺坂組が揃って村松のラーメンを評価する
・罠に引っかかった渚とカルマの自撮り
・メイドの奥田さんとカルマと竹林君
・ミスコン
の4枚が特典なんですよね(これはイラストが公開されてるのでイラストだけで分かる内容を書いてます)。
この内のミスコンがもし椚ヶ丘学園であったらを想定して、その上でE組を差別化させるなら何ができるか……を考えた結果、観客の前でアピールをさせず、写真と動画でのみ参加という形に落とし込んでみました。そうすると特典イラストと同じように律が参加できる理由付けになるかと思いまして……!
ちょっとこれをネタにしたクロスオーバーなお話も考えてるので、気長にお待ちください!



学園祭ということは、第1部と同じくクロスオーバーが近いですね……!今どのように区別化しながら合流させようか考えてるので、楽しみに待っていてください!

では、また次回のお話で!

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