UA136000ありがとうございます!
今回は完全オリジナルの、前話で家の中に入ってからのお話です。来訪者はリーシャ+特務支援課4人+出向組2人+キーア+リベール組3人の11人なので書き分けが……でもこんなわちゃわちゃも書いてみたくて挑戦してみました。ら、文字数がまた……
もしこれは誰のセリフ?など疑問点や、感想などあればコメントくださいね!
今回もよろしくお願いします!
「ほんっっとーにごめんね!確かに内緒で来て脅かそうとはしてたけど、あたしとしては後ろから急に声を掛けてビックリさせる程度のつもりだったのよ」
「僕達の視線にアミーシャが気付くのと、カルマ君とイトナ君がアミーシャを前に出さないようにするのはギリギリ想定してたんだけど……まさかレンが君達2人に興味を持って仕掛けに行くとまでは思ってなくて……」
「うふふ、イタズラ好きの『
「アンタはそろそろ反省しなさいよ……」
「一般人じゃないようで彼らは一般人だし、アミーシャの性格上自分以外に危害が加わるかもしれない状況はダメだ、って分かってただろう」
久しぶりの3人での夜ご飯のつもりで帰宅していた私、カルマ、イトナくんの3人は、家に着く前にドッキリを仕掛けられた……多分、元凶のレンさん的にはちょっと危機感を煽るつもりでちょっかいをかけただけ、だったんだろう。けど、最近『死神』さんの事件で痛感したように、殺せんせーを狙う殺し屋や、E組を邪魔だと、利用できると考える存在によって、2人が危険な目にあったらとか、私が原因でケガをしてしまったらとか色々と嫌な『もしも』が頭をよぎってしまって。
犯人が身内だったとハッキリしたことで、最初から危険も何も無かったことがもう頭ではわかっているのに、私は家に入ったあとも上手く気持ちを切り替えられなくなってしまい……今、
「んーと、つまりー……キーアが扉の前で待ってたから、アミーシャが『おうちに誰かいる』ーってなって、カルマとイトナが『誰もいない家に気配があるのは危ない』って思っちゃったってことー?」
「そ、う……なのかな……?いくつか……4つ、くらい、変な感じがあって、どこからって特定できなかったけど……でも家からかも分かんなくて……」
「……これ、特定できてないだけであたし達が追いかけてたのも何となく気付いてたわね」
「ふーん、ならアミーシャ的には私達がここにいるわけないって思い込みと、安全って分かってるから気にしても仕方ないって思考かしら?」
「そーね、レンの言う通り味方って認識してる気配だったから警戒対象から外しちゃった上に、キーアちゃんが楽しみにしてる気配が大きくてそっちが気になっちゃったって感じじゃない?」
「気になる気配は4つあったってことだし……しかも周囲からだけならまだしも誰もいないはずの自分の家から気配がするとか、そっちを警戒するのは当たり前だ」
「キーアちゃん、玄関でずっとソワソワしてたから……分かる人からすれば玄関に人がいるって分かりやすかったと思うわ」
「まあ、キーアは戦闘要員じゃないから気配は消しきれないもんな」
「むぅ……これでもロイドと一緒に逃げてた時、見つからないようにできてたんだけどー?」
「……少なくとも、俺達2人は気付かなかった。だからアミサの様子で判断した。そう考えれば、お前はちゃんと気配を消せてたんじゃないか」
「……そっか!ありがとイトナ!」
一応流れとしては、お姉ちゃんと特務支援課のみなさんは家の中で私が帰ってくるのを待っていて、待ちきれなくなったキーアちゃんが玄関の前で扉が開くのを待ってたと。それと並行して私の通う椚ヶ丘中学校を見に行ったレンさんたち3人が私たちの下校を見つけてこっそり着いてきてて……私だけが家に帰るかと思ってたのに2人も一緒なことと、玄関にいるキーアちゃんに気づいて警戒してしまった私と、それに対してのカルマたちの動きを面白がったレンさんが想定外の動きをしちゃった、と。
とりあえず、背景とかは分かった。理解したとはいえ、……それを飲み込めるかは別だけど。
「だとしても……アミーシャ1人が不審がっただけなのに、よく君達は信じたね?」
「……最近、ちょっと大きな事件に巻き込まれたんだよ、俺ら。その時もアミーシャだけが黒幕の気配、侵入諸々に気付いててさ……そいつ、他の奴らが別件で助けてもらってて、雰囲気も対応も含めて俺らにはいい人にしか見えてなかったから軽く考えててさ……後から痛い目見たわけ」
「あと、誰も気付けなかった救出対象の狸寝入りにも察してた。だからアミサの直感はバカにできない……それで警戒してた」
カルマとイトナくんは、不安定になってる私を支えてくれながらも、画面越しじゃない顔合わせも済ませたからか、エステルさんたち以外のみなさんとも一緒に近くで話してて……口々に今あったことの反省会のような話が繰り広げられてる。
最近のちょっと大きな事件……2人も『死神』さんの事件で……それと私のあの時の行動で思うところがあったんだ。
「なるほどなぁ……アミ姫の危機察知能力ってか、感覚に対する機敏はティオ助と並んで一級品だもんな。成功失敗はともかく、それを上手く活用できるなんてお前らすげーじゃねぇか!」
「……!すごい……そうか、……俺は、すごいのか」
「ふふ……、普通だったらアミーシャちゃんの様子に戸惑ったりバラバラに動いたりしてもおかしくない状況だもの」
「誇っていいと思いますよ。レンさんは学生とはいえ相当な手練れですから。その彼女を相手に臆せず動けたって時点でかなり胆力があると思います」
「聞いた限り、相談もなく連携が取れていた上に、レンちゃんの殺気に対しても、咄嗟の行動にしては立ち位置とその場の状況から守りと攻めの防御と自分の役割を決めて行動できていますし!……警備隊目線で厳しいことを言うと、正直あの動きでは全滅もありえますが……十分及第点かと!」
「アミーシャも私もこれまで生きるために経験してきたことのおかげで些細なことにも気付きます。しかし、細かいところに目がいってしまう分、他の人からすると『その程度で』と捉えられる内容でもおかしくありません。……それを本気で受け止めてもらえるのは嬉しかったでしょう?」
「……ん、信じてもらえるの……嬉しい」
ランディさんを筆頭にみなさんからダメ出しはあっても口々にさっきの動きを褒められて、イトナくんが反応した。見た目はいつも通りあまり表情の変わってないイトナくんなのに、どこか嬉しそうな色を見せている気がする。そういえば触手に囚われていた時も、イトナくんは誰にも負けない強さを欲しがってたっけ。
「でも結果がこれじゃあね……イトナはともかく、俺は喧嘩で殺気とか咄嗟の動きにも慣れてたはずなのにさ」
「いや、喧嘩と戦闘、もちろん暗殺は別物さ。そういう下地や適正の違う君達が戦闘訓練を始めて1年も経ってないし、日常で武器を持つ俺たちとは違って当たり前なんだからそれでいいんだよ。それを土台にして更に伸ばすために俺達が来てるわけだから」
「むしろ僕達を利用するつもりで来なよ。僕達の技を体感して、見て盗むのも勉強だからね」
「……俺らもまだまだってことか。っと、そういえば……」
「んむ」
私がしがみついてない方の手で急に両頬をつまんで来たカルマは、そのまま顔を持ち上げて顔の向きを変えてくる。なんでそんなことをされてるのか分からなくて抵抗もできず、されるがままに彼の方を向いたことで正面から向き合う形になった。
「アミーシャ、あの時また『私なんか』って言ったでしょ」
「!」
「私なんか守らないで、だっけ。ヤバイ時こそ本音が出るよねー、……あれ結構ショックなんだけど」
「ら、らってぇ……」
「だってじゃない。俺にとってアミーシャは誰よりも優先して守りたい大事な女の子だってこと、そろそろ自覚してくれない?キーアがいたからだとしても、無理やり出てこれたのに我慢して後ろにいてくれたのは嬉しかったけどさ……俺の事そんなに信用できないの」
「……カルマが強いのも、自分より私を優先してくれてるのも、知ってる。……分かってるよ」
信用。それは、……してるに決まってる。だって出会ってから誰よりもこの人の想いを、言動を1番近くで見てきたって自信があるし、その姿に誰よりも信頼を預けてるのは私だって言い切れる。……2年と少しの付き合いだから、私が出会う前に、それ以上に彼を見てきた人がいたら、敵わないけど。
だけど……それだけ信じられても、私が代わりになればいい、傷つくのは私でいいって考えがどうしても邪魔してくる。気持ちのもちようだとは思うんだけど……これだけはどうしても受け入れられないし、譲れない。軽く頭を振って頬を押える手を振りほどき、上手くまとまらない気持ちを少しづつこぼしていく。
「……でも、相手が強いって分かってて自分から飛び込んでのケガとかなら、まだ納得できるけど、私を守って、とか……そんなの絶対イヤ。それなら、私が動いた方が……」
「俺もそれが嫌だから怒ってんだけど。なんならいつも同じことをアミーシャがやってんだよねぇ……どうしようもない時はしょうがないけど、たまにはさ、俺らのためにって無理して動くんじゃなくて、俺らが助けに来るのを信じて待ってみてよ」
「待つの、苦手……気づいたら動いちゃう」
「知ってるけどね。……まあ、百歩譲って今回イトナを巻き込んだことは謝ってあげてもいいけど?」
「俺だって、俺がアミサを守りたくて動いたんだから謝られる筋合いは無い。……思えば、俺を助けてくれた時もそうだ。俺を庇って巻き込まれて……俺は傷一つないのにお前は……あんなのは、もう嫌だ」
「ほら。……俺だってアミーシャが死んじゃうかもしれないって姿を何度も見てんの……誰かのために前に出て誰かのために傷つくそれが性分だってのも知ってるけどさ、……やっぱり怖いんだよ。例えアミーシャが望まなくても、俺らは勝手に動くからね」
「……勝手に……そっか、私だけじゃ……」
「なーに?」
「わ、……私、守ってもらわなきゃいけないほど、弱くないもん」
「強情。……よしカルマ、こっちは抑えた存分にやれ」
「オーケー。さーて、俺ら2人に力で勝てないクセに生意気言う小動物はどこの誰だろうねー?」
「や、やぁーらーっ!」
「ふはっ、変な顔」
……そっか、『自分が傷つくのはいいけど、誰かが傷つくのは嫌だ』っていうのは私は譲れないけど、……多分カルマも、イトナくんも譲れない一線なんだ。私がほんの少しこぼした『会いたい』って願いでも叶えようとしてくれたカルマでも、静かにそっと私を支えようとしてくれるイトナくんでも、叶えたくないものがあるってこと。……それが、初めてわかった気がする。
元々しがみついてたのは私だったはずなのに、そのままイトナくんに腕を取られて固定されたかと思えば、カルマがもう片腕を抑え空いた手で再度頬をつまんで引っ張ってくる。一応頭を振って逃げようとはしてみるけど……うん、無理そう。でも、2人の手も、言葉も、怒ったり否定してきたりしてるわけじゃなくて、なんていうかすごく優しくて……今まで何度か私の譲れない気持ちで誰かと対立してきたことがあっても納得できなかったのに、何故か今、急にスっと入ってきて理解できた気がする。
◆
カルマside
「それにしても……画面越しじゃない姿を見て改めて思ったけど、やっぱりアミーシャが子どもらしい言動をしてるのを見るのは初めてだよね。こっちじゃ大人の中で背伸びして邪魔にならないように、失礼のないようにって感じだったし」
「ホント……私達やリーシャさんの近くでは同世代がほとんどいなかったから、ああして甘える方法も分からなかったんじゃないかしら。……ふふ、カルマ君が大人っぽい分まだまだ幼く見えるわね」
「イトナにゃロイドと違った弟属性を感じるな。なんなら妹属性の強いアミ姫のことを姉として慕ってるっぽいし?……なんだァ?カルマはアミ姫のパートナー兼2人の飼い主、いや兄貴分なのか」
「あ、ということは私にとっての弟が増えたってことですね……弟が2人も……ふふ、なんだか嬉しいです。それにあの感じだと、カルマさんは上手くいったんですね、よかった」
「リーシャさん、嬉しそうですねぇ……確かに妹が幸せそうにしてるの見たら分からないでもないですけど。はー、私もフランがいい人を見つけてきたら同じふうに喜んであげられるのかなぁー……」
「えー、なになに?もしかしてあの2人って……!」
「こらエステル、当事者を置いて勝手に踏み込まないの」
「クスクス、ただの
「というかあれは甘え……てるのか?俺にはいじられてるように見えるんだが……なんにせよカルマ君もイトナ君もアミーシャに対して容赦ないな;」
「……素を出してる、が正しいかもしれませんね。こっちに来て、あの子が自分をさらけ出してそれを無条件で受け止めてもらえる場所を増やした証拠です」
「アミーシャ、幸せそう。……よかった」
イトナに半分抑えてもらいながらアミーシャの頬を引っ張ってれば聞こえる、年上の彼らの会話。彼らも別に隠れて話すつもりもないんだろうし、俺も頬のやわらかさを楽しみながら有益な情報でも拾えないかとしっかり耳を傾けて……た、けど。……あの人達、俺らのやり取りを見て好き勝手話してるだけじゃね?その中でもリーシャさんはいつも通り若干ズレて花飛ばしてるし、レンって人は面白がってる雰囲気がすごい。
あと俺とリーシャさんが態度を隠してないのもあって、あの人達に俺らが付き合ってるって完全にバレてるよね。もごもごと抵抗しているこの子は、抜け出そうと必死で多分聞いてないけど……まあいっか、後でちゃんと報告するとして、もう堂々とひっついとこ。頬を引っ張るのをやめてアミーシャを腕の中に入れ、背中抱っこの形にすればちょっと不安そうにこちらを見上げてきた。最初こそガチガチになってたけど段々力が抜けてきたところを見ると……別に本気で怒ってるわけじゃないってことは察しつつ、油断できないとか考えてそうだな。
「……もういいのか?」
「うん。こっから先は甘やかしタイムだから」
「そうか……、……」
「……なんでイトナが寄っかかってくるわけ?」
「ねえさんを構うついでに俺も甘やかせ、にいさん」
「俺イトナの兄さんになったつもりないんだって……ねぇ聞いてる?」
「……家族が、羨ましくなっただけだ」
「……!……はいはい」
「……、イトナくんはここ。カルマのとこは私の場所だからあげないけど、私のとこはおとうとの場所だから」
「……ん」
俺の左側でアミーシャと手を繋いでいたイトナが、何を思ったのか俺の腕へ急に寄りかかってきて、そのまま頭をぐりぐりと押し付けてきた。……え、撫でろって言ってる?何をさせようとしてんだよって言おうとしたのにさ、小さい声で呟かれたそれに断れるわけがなかった……イトナは、この光景を見て寂しくなったのかもしれない。
俺と、アミーシャと、イトナは共通点がある。イトナの父親はイトナを置いて夜逃げして、俺の両親は夫婦仲良くデイトレーダーとして海外を飛びまわり、アミーシャは国家の争いに巻き込まないために国を出されて……全員、何かしらの理由で家族と一緒にいられない毎日を過ごしている。だから1人に慣れてはいる……とはいえ、目の前で家族と再会する姿を見たら……俺を兄に見立てて、甘えに来るくらいには。イトナが無言でアミーシャの腕の中に移動して2人して俺を見上げてさぁ……2人ともを軽く抱えるように撫でてやれば安心したように擦り寄ってきて……3連結で何やってんだろ俺ら、……本ト、仕方ないなぁ。
「ふふ、仲がいいですね」
「リーシャさん」
「お姉ちゃん、どうかしたの?」
「アミーシャ、今日の夜ご飯だけどロイドさん達が作ってくれるって。できあがるまで2人と一緒に待っててね」
「え……いいの?みんなお客様なんだから私が……元々カルマたちの分も作るつもりだったし……」
「驚かせちゃったお詫びも兼ねて、だって。それに一気に人数増えて大変なのもあるし、私達の方が大人数の調理になれてるから。こういう時は甘えていいの、……ね?」
「……でも、」
「というよりそうしてもらうしかないかな。ほら、」
「おーい、カルマとイトナも食べてってくれるだろー?」
「というかそのつもりで用意してるから帰らないでちょうだいね」
「せっかくなので夕食を囲みながらE組とアミーシャのことを教えてもらいましょう」
「もうあそこまで作る気満々なのに、止められないもの」
「あ、はい……」
「わ、わかった、待ってる……」
「俺はラーメン以外が食べれるならかまわない」
「そうだった……元々イトナくんはラーメンに飽きたからお家に来たんだったね……」
「はは、わかったよ、別のメニューにするから安心してくれ」
いつの間にか近くに来ていたらしいリーシャさんが、しゃがんで俺の腕の中にいるアミーシャの頭を撫でながら、夕飯を作らなくていいことを伝えている。……いろいろあったけど、最初の目的はアミーシャの家で夕飯食べることだったんだよね、そういえば。イトナとしては味を変えたいからここまで来たのに、万が一ラーメンが出たら意味が無いからってアミーシャの腕の中で俺に撫でられたままリクエストを飛ばしている、って……ちょっと、今の今までしょぼくれてたくせに切り替え早すぎない?
キッチンの方へ顔を向ければ、ロイドさん達がすでに食材やらなんやらを並べ出していて、エステルさんがレンさんをキッチンへ押し込もうとしてるのが見える。……手際といい準備といい、俺ら、もとい家主であるアミーシャの意思関係なく元々作る気ではあったんだろうな。
「あ、そうだ。みなさんがね、せっかくまた会えたのに他人行儀みたいに話されるのは寂しいって。それに、怖かったのは分かるけど、ギクシャクしたままだと私も悲しいな」
「!で、でも、……あと少しで15だもん、私もお姉ちゃんみたいにしたいの」
「ふふ、私の真似だったんだ?でもみなさんからしたらずっと可愛い妹分だもの。……全部含めてアミーシャがもういいかなって思えたら、呼んであげたらどう?」
「……、しかたない、から……フルーツのデザートも作ってくれたら、……考えてもいい、よ」
「ほらほら、レン!アンタの担当よっ」
「わ、分かってるわよっ!だから押さないでちょうだいエステル!」
多分他の人達に仲介を頼まれたんだろうな……チラチラとこっちを伺う視線というか、何かを感じるし。あとリーシャさんとしてもギクシャクしたままのレンさん達と仲直りもして欲しいんだと思う。タイミングはアミーシャに任せ、でも交換条件次第では許してあげて欲しい、なんて言い方でここまでされたらこの子は断れないよね。
キッチンでの動きやリーシャさんの意図をちゃんと汲んだアミーシャは、珍しくちゃんとお願いを口にしている。キッチンに押し込まれようとしてるレンさんも、無理やり移動させられてることに対してはちょっと抵抗してるけど、素直に向こうへ行ったように見えた。
「じゃ、私も手伝いに行ってくるわね」
「あ、うん……、」
「……、……アミサ、呼び止めなくてよかったのか?」
「!」
離れようと腰を上げたリーシャさんに返事をしたアミーシャだったけど歯切れが悪い。何か言いたいことがあったんじゃないかって聞こうとしたら、俺より先にモゾモゾと彼女の腕の中で体の向きを変えたイトナが先に口を開いた。
「あれ、イトナもう撫でなくていいの?」
「ああ満足した。……それで、なにか伝えようとしたんじゃないのか」
ほっとけばこの子は『そんなに重要じゃないから』『急いでないから』って言わなくなることをイトナも分かってて、あえて聞き直す。殺せんせーも言ってたけど、自分の言いたいことを切り捨てるのが早すぎるんだよ、今回はイトナに感謝だね。
「……、あの、ね、……お姉ちゃんに、カルマとのこととか……イトナくんが今日以外にもご飯食べに来てくれることとか、渚くんとも暗殺頑張ってることとか、E組のみんなのこととか、……もっとお話ししたい。でも、お姉ちゃんもお手伝いするって……邪魔になっちゃうから……」
「……なんだ、そんなこと。話せばいいじゃん、むしろあっちにあんな人数いらないでしょ。なんなら呼び戻そうか?」
「だ、だめ!私のはお姉ちゃんにはどうでもいいお話だもん、迷惑だから……」
「リーシャさんもアミーシャと顔を合わせて話せるのは半年ぶりなんだからこっち優先してくれるって。……アミーシャに会うためにって、早すぎるくらいにこっちに来てくれた人達に迷惑だなんて思うのは逆に失礼でしょ」
「それにさっきティオが言っていた、……夕食を囲みながらE組やアミサのことを聞くと。嫌でも聞かれるぞ」
「そーそー。当分一緒にいれんだよ。上手く話出せないって不安なら俺もイトナも支えてやるしさ……ね」
「……うん、でも、今はいいの。だから……ご飯の時、お隣にいてね」
「ああ」
「うん、もちろん」
案の定、言わなくてもいいことだからって考えてた。確かに些細な話だし、後でもいいし、今絶対に話さなくちゃいけないことじゃない。でも、それはあくまでもアミーシャにとって、俺らにとって些細な話なだけであって、あの人たちにとっては違う。
リーシャさんでさえ半年ぶりに面と向かって話せる機会、それ以外の人達からしたら2、3年振りに顔を合わせるわけで、かわいがってた子が一生懸命話すことならどんな些細なことでも話してくれるなら聞きたい、知りたいって思うのは当たり前なんじゃないかな。ただの顔見知りじゃなくて、家族のように背中を預けられる戦友だったら、もう一定の関わりをもっているんだから……切っても切れない繋がりがもうあるんだから、いくらでも聞きたいと思う。
それでも遠慮しちゃったこの子のもう曲げないだろう意思を尊重して、俺らはここで引き下がっておくことにする。一応隣にいてって願いは引き出せたし、この後夕飯を囲みながらいろいろ話せるように話題を考えておかないとね。
◆
カルマside
「ごちそうさまでしたーっ!ロイドのお鍋も、エリィのケーキも美味しかったーっ!」
「……独特な味の鍋だった。美味いのに個性的な苦味ととろみが混ざって……苦味の元はこのトマトか?」
「そうよー。にがトマトっていってね、あたしとヨシュアの本拠地であるリベール王国で開発されたトマトで、今では各国に輸出が進んでるの。これ単体で食べるとものすごく苦いんだけど、体にはすっごくいいのよ!」
「最初はツァイスの中央工房でひっそり育てられてたのにね……その苦さのせいで食べられず、残された怨念で魔獣になったとか言われてる、それにそっくりなのに因果関係は謎な魔獣もいるんだ。えっと、……ああ、これがそう」
「……ナニコレ、トマトのゆるキャラ?」
「クロスベルにもいますけど、この魔獣が攻撃で飛ばしてくる汁、ものすごく苦いですよ」
「そっくりな別個体で甘すぎるのとか辛すぎるのも出ますよね……とはいえ植物性魔獣ですから大量発生することもありますし、倒すとにがトマトを収穫できることもあるので、そのまま料理に使うこともあるんですよ」
「いやー、気力回復にめちゃくちゃ役立つから見つけたら即買いレベルなんだが、どう料理しても苦味は目立つんだよなぁ。アクセントだと思えば食えなくないし、魔獣との戦闘が多い俺らからしたら結構重宝する食材だけどよ」
「え、でも俺、結構このケーキ好みかも。これもそのにがトマト使ってんでしょ?俺、もっと甘いのが好きだけど普通に食えるし……」
「最初はミネストローネの予定だったんだけど……」
「毎度思うがこのケーキ、失敗でも珍味でもなくこれで成功なんだよな……」
「てか、カルマの味覚はどうなってんだ?ケーキの割には相当苦いぞ」
「……ゲテモノシリーズの飲みすぎだろ」
「煮オレシリーズはハズレないし美味いって。アミーシャでも飲めるんだから」
「わ、私でも飲めるの確かにあるけど、あの、サバ煮オレはさすがにちょっとヤダ……発売予告の出てた豚角煮オレも怖い」
「何だソレ;」
「それはゲテモノって言われても仕方ないと思うな……;」
夕飯ができたって呼ばれてキッチンへ向かえば、大人数だしみんなで食べられるようにって鍋にしたらしい。各々自分の食べたい分をよそって気ままに話しながら食べてればあっという間に空になっていて、気付けば話題は鍋に使われてたトマト……にがトマトって言うらしい、本トに食べたことないくらい苦いトマトについてで盛り上がっていた。いや、マジでなんなのこれ、そのまま食ったらめちゃくちゃ苦いのにこうして調理したら意外と食えるっていう。
ヨシュアさんが見せてくれた魔獣手帳なるものには調理前のにがトマトに目と口をつけたみたいなゆるキャラが載っていてマジで2度見した。素材に爪とか殻とかあるし、魔獣っていうからにはもっとゴツイの想像してたのに……その他の魔獣も見せてもらったけど、獣らしくないものとかが結構……いやなんで陸を魚が泳いでんだよ。
「本ト、こっちと向こうで色々違うねー。だから面白いんだけどさ」
「いや、俺達からしたらカルマ君の知識量と吸収力に驚くしかないんだけど……」
「お前、マジで日本で生まれ育ってんだよな?なんでこっちの歴史とか導力機関、国家間の関係とかまで知ってんだよ……」
「外国についても勉強したとしても、もう現地に住んでるレベルですよ」
「将来そっちに行くかもしれないしねー、知ってて損は無いでしょ」
「お、てことはやっぱり……」
「……アミーシャ、俺から言っていいよね?俺としてもこの人達にはちゃんと言っときたいし」
ランディさんが少し身を乗り出すように話題を振ってくれたから、ここで拾うべきだろう。さっきリーシャさんに伝えたいって言ってたしと隣に座るアミーシャに許可を取れば、ピシッと固まってる姿が目に入った。……この話題から報告に飛ぶとは思ってなかったんだろうな。
それでも少し視線をいろんな場所へ行ったり来たりさせたあと、小さく頷いたのを確認して彼女の肩を引き寄せる。みんなとっくに察してるだろうけど、事実としてさっさと宣言しときたい。
「バレバレだったと思うけどね。……先月から、アミーシャとはお付き合いさせてもらってます」
「あう……そ、そのっ、……私の恋人、……です」
俺の口から報告した後へ続くように、アミーシャがどもりながらもハッキリと俺を恋人だって紹介してくれて……、そういえば、いつも周りが勝手に判断してくれてたり俺が牽制しちゃったりするからこの子の口から俺達の関係を言ってくれる機会ってほとんどなかったな……なんて。かなり嬉しいけど、滅多にこう好意を口にしない彼女から不意打ちのように言われると、さすがに少し照れる。
それに、言うまでは勢いで何とかなったけど、彼女の身内同然な11人から注目されたらね……アミーシャの素直な言葉も相まって2人で真っ直ぐ見続けるのは難しくなってきて、思わず顔を逸らしてしまった。イトナ?元々知ってるし我関せず食後のデザートってまだつついてるから除外。
「わぁぁ!そうかな〜とは思ってたけど、やっぱり!」
「お前、自己肯定感皆無な鈍感天然娘をよく振り向かせたよ!」
「アミーシャちゃんが安心できる人を見つけられてよかったじゃないですかっ!」
「あら、先月ってことはまだ付き合いたてなのね」
「つまり俺達が動画で顔を合わせた時にはもう恋人同士だったってことだよな?夏頃、もう1人の青髪の子と合わせてアミーシャの大切な人だとリーシャからは聞いてたけど……まさかそういう意味だとは思ってなかったな……」
「思ってなかったも何も……ロイドの場合、あれだけあからさまに牽制されておきながら、そもそも2人が恋人同士なことに気付いてなかったじゃないか」
「鈍感ですよね」
「ふふ、丁寧に報告してくれてありがとう。あの日、アミーシャを導ける存在になるって言ってくれたカルマさんになら妹を任せられます……おめでとう、2人とも」
「……どーも」
……この人達、前々から交流してたリーシャさんはともかく、他は今日がほぼ初対面なのに、俺のこと肯定的過ぎない?……でも、それくらいアミーシャを心配してて、アミーシャの感性を信用してるんだと思えば分からなくもないか。
「ねぇアミーシャ、……あとカルマとイトナも。さっきは悪かったわね。ちょっと遊びすぎちゃった」
「あ……」
「これは?」
「……カクテルっぽい匂いがするが」
「ヨシュアがアレンジを教えてくれたのよ。軽くアルコールが入ってるけど飛ばしてあるから未成年でも食べられるわ……リクエストしてくれたフルーツのデザート、今からパイやタルトを作るには時間がかかっちゃうもの」
「これ、2人が……?」
「んー……私がレシピを選んで、ヨシュアにアレンジを助けて貰ったからそうと言えるわね」
「……ん。ありがと、レンお姉ちゃん」
「!……ええ」
そっと横から差し出されたのはリンゴやオレンジの入ったフルーツパンチ……彩りフルーツパンチというそれは、レンさんがさっきのことの謝罪代わりに作ってくれたものらしい。アレンジ元はあの穏やかそうな黒髪のお兄さんらしいけど、レンさんも見た目に違わずオシャレなものを作る人だな……アフタヌーンティーセットとか作れそう。
約束なのもあるからだろう、アミーシャが少し照れくさそうに呼び名をさん付けから変えると、レンさんは少し目を細めて嬉しそうに笑った、……というところで。
「えぇー!レンだけずるいじゃない!1番やらかしておいてなんで1番最初に呼び名を戻してもらってんのよ!」
「……ちゃんと謝ったから、かしら?あときっかけを作ってあげたんだもの、これくらいいいじゃない」
「あんですって〜!?ていうかあたしの方があんたより先にあんたの代わりに謝ってるんですけどっ!?」
「うふふ、嫌われ役になった分の役得ね♡……なんて、私はお願い通りに動いただけだけど。ね、ヨシュア」
「……やっぱりさっきのはそういうことか。改めてだけど止められなかった僕も悪かったよ、ごめん。アミーシャさえよければ、僕のことも前と変わらず頼ってくれると嬉しいな」
「……うん、ヨシュアお兄ちゃん」
「えぇっ、ヨシュアまで!?」
「……アミーシャ、私達も前のように呼んで欲しいです」
「そうですよー!私達もさん付けされるのは寂しいですもんっ」
「……えと……」
「俺達のこともアミーシャさえいいならまた兄貴分として頼って欲しいしな」
「おー、何時でも呼んでくれ!なんならカルマとイトナも兄貴呼びしてくれてもいいんだぜ〜!」
「そうか。だったら遠慮なく、ランディ兄さん含め……何か勘違いしてないか?」
「「「……へ?」」」
即突っかかるエステルさん。何かあれば直ぐに間に入ったり注意したりしてるヨシュアさんが苦笑いで動かないのと、レンさんが軽く笑いながら受け流してるところを見るに、これは放置していても問題ないくらいいつものこと、なんだろう。それに、……言われてみれば1番最初に俺達に謝ってくれてたのって言葉通りエステルさんだな……はは、間違ってない。
というかアミーシャは約束を守ってくれたから呼び方を変えただけなのに、目の前で軽くケンカのようになっていて、それに加えて他の人からも期待の目を向けられて……どうすればいいのかって困った表情を浮かべている。多分これ、ここまで本気で間に入らずしれっと自分も呼び名を戻してもらってるヨシュアさんも、軽く茶化してるレンさんも、ランディさんの言葉に乗っかってすぐに兄呼びしたイトナも分かってるな。
「アミサはリーシャの提案を受けて、レンとヨシュアが
「リーシャさんは別に
「「「……あ。」」」
「……気付いてなかったのね」
「エステルがレンに対してだって勘違いしてたからみんな流されたんだろうけど……リーシャさんも全員に聞こえる場所で言ってたし、最初から人を指定してなかっただろう?」
「そーいえば、アミーシャは誰が作ってくれたか気にしてたもんね?誰が対象なのかって考えてたんじゃない?」
「う、うん、だから、前みたいに呼んでって人が作ってくれるんだと思ってて……え、ち、ちがった……?」
「ううん、私もそのつもりで……」
……わーお、認識の大事故が起きてる。
自分の食器を流しに運んだあと、元々ちゃん付けだから関係ない立場のキーアがのほほんとアミーシャにひっつきに来てる周りで、ちゃんとアミーシャの呼び名変更の条件を分かっていたレンさんとヨシュアさん、提案者本人のリーシャさん以外は大慌て。もちろん俺とイトナも理解してたから平然としてるけど……これ、アミーシャのトンデモ思考に慣れてる俺らだから何が起きてるかすぐ察せただけで、普通はあの人達みたいに混乱するんだろうなぁ……
聞けばヨシュアさんとレンさんはめちゃくちゃ頭がいいらしい……特にレンさんは博士論文を定期的に発表するくらいには天才と言われてるらしくて……って、あの人俺らとほぼ同い年だよね?もっと幼い頃からその天才ぶりを発揮してたとか。
このあと、発端になったエステルさんが謝り倒した上で他の人達もちゃんと条件を分かってなかったからと和解して、改めてアミーシャに呼び方を元に戻して欲しいってお願いすることになり……アミーシャも最終的には全員とハグと撫でてもらうことで呼び方を戻すことにしていた。とんだ夕食になったよね、まったく。
「ふふ、みなさんいつの間にかアミーシャの周りに集まっちゃいましたね」
「……そんなに兄姉って呼んで欲しいもの?確かにさん付けだと距離遠い気はするけど……あそこまで必死になるものなの」
「あら、贅沢な疑問。当たり前に呼ばれてると分からないものよね」
「は?どういう……」
「……カルマ、自分に例えるといい。アミサに今から君付けで呼ばれたらどうだ」
「……え。」
「あとは、そうだね……君の代わりに僕とか他のみんなが呼び捨てしてもらうとか」
「……うわ、最悪。絶ッッッ対イヤ。てか呼び捨ては俺だけなんだから他を呼ぶのもダメに決まってるし、そんな奴いるとか考えただけでムカつくんだけど。殺したくなる」
「物騒だなぁ;」
「……ヨシュアもエステルしか見てないから、状況が変われば似たようなものだと思うわよ」
「でもそういうことだ」
「あはは……確かに元々お姉ちゃん、お兄ちゃんって呼んでもらえてたのに他人行儀に直されるって、カルマさんからしたらこういうことなんですよね」
「うーん、そんなにイヤ?カルマならトクベツな関係なんだから、呼び方くらいで変わらないっていいそうだって思ってたのに」
「……。……アミーシャがなかなか欲しがらないからかな、恋人って立場を手に入れてもさ、際限なく特別なものが欲しいって思っちゃうんだよね。たくさん繋がりを残さないといつか消えちゃいそうで……」
「……カルマさん……」
「アンタらも俺らの会話聞いてただろうけどさ、今年だけでもE組のために行動してアミーシャは何度も危ない目にあってる。何度も、死ぬんじゃないかって姿を見て、俺が代われたらって後悔してきてる」
「!」
「キーアちゃん……?」
「最近も嫌なもん見たばっかなんだよ。アミーシャが死ぬ幻みたいなもの……見たことない服装だったから未来を見たんだと仮定して、……絶対にあんな未来にするもんか」
「あ、……行っちゃいましたね」
「……見たことない服装……アミーシャが死ぬ幻……」
「……今日は彼の精神的負担も考えてやめておこう。もし目の前で大切な存在を亡くすかもって考えるだけで相当キツイから」
「ヨシュアが教授の
「暗示があってもなくても、もうそんなこと考えたくないけどね」
「……キーアちゃん、気になるならこっちに滞在してる間に確認しましょう?」
「……うん」
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今回の来訪者はアルカンシェル組ではなくリベール組なので、来てる人数は一緒ですがメンバーが完全に戦闘寄り……なので、前話から引き続きそんな話題。
渚の代わりにイトナが入ることになるとは、作者も予想外(書いてたら増えました)。
次回はE組と顔合わせ、あとミスコンの話が書けたらいいなと考えてます!待っててください!