暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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さすがに11人を一気にE組には連れて来れなかったので、まずは半分くらいの人たちを連れてくることにしました。

今回も、よろしくお願いします!



118話 来訪の時間

 

渚side

 いつも通り待ち合わせて、いつも通り電車に乗り、いつも通りE組の山道を登る朝の登校……なんだけど、僕らの中にいつも通りじゃない子が1人。おはよって挨拶した後からずっと無言な上、E組校舎が近づくにつれてどんどん不機嫌そうに眉をひそめて口を尖らせていく彼女……の隣を歩くカルマ君に何があったのかを聞けば、苦笑い気味に「タチの悪いサプライズが原因で昨日からずっと」だそうで。

 多分アミサちゃん本人に僕らの会話が聞こえるからだろう、くわしくは教えてくれなかったけど……彼女が怒るってことはほぼ確実に自分のためじゃないんだろうなぁ、とは思う。自分のための怒り方を知らず、誰かのために怒る子だから……だとしても、怒りの矛先が明らかに学校に向いてるのはどういうことだろう。分からないなりに考えてれば、彼女が不機嫌なまま向かった先は教室ではなく───

 

 

 

 ──────ガラッ

 

 

 

「…………」

 

「おや、おはようございますアミサさん!……にゅや?」

 

「あら、おはよアミ、サ……アンタどうしたの?」

 

「ああ、もうこんな時間か。おはよう、……どうした?」

 

 その隣の教員室だった。当然始業前だから殺せんせー達3人ともが既に出勤して教員室にいるわけだけど、挨拶してくれた先生達に返事することなく無言でスタスタと中に入ったアミサちゃんは迷いなく足を進め……

 

 

 

「なんで……なんでお姉ちゃんたちが来る日を教えてくれなかったんですか、烏間先生ッ!」

 

 

 

 ……今日、はじめて口を開いたかと思えば、烏間先生に対して怒り出した。

 

「……、……ん?……言ってなかったか?」

 

「言ってないです聞いてないです知らないですッッ!もう、とにかくいろいろ、えっと……い、いろいろあって、ちゃんと教えてくれてたらって、その、……も、ものすごく怖かったんですからーっ!」

 

「あ、ああ、すまない……?……ふむ、普段から滅多なことがなければ穏やかな真尾さんにここまで言わせるなんて……何をしたんだ、あの人達は」

 

「カラスマ……そのアミサを見ておいてその感想はないわ」

 

「何がだ?」

 

「いや、……アンタもうそういう所よ……」

 

「アミサさんがここまで情緒不安定になるのが珍しくて困惑する気持ちは同意ですが……烏間先生、些か落ち着きすぎではありませんか……?」

 

 ぽかぽかと烏間先生のことを遠慮なく叩きながら珍しい怒り方をし始めたアミサちゃん……いや本気じゃないとは思うけど手を挙げる怒り方をするところなんてほとんど見た事ないんだけど。

 あと明らかに怒り慣れてなくて1番言わなきゃいけないだろう大事な部分をほぼ『いろいろ』でまとめすぎてるから、怒ってる理由と内容が何も分からない。ついでに烏間先生がアミサちゃんの様子を全く気にしないで分析し始めてるからビッチ先生と殺せんせーが引いている。まあ、僕達も烏間先生の堅物具合には引いてるけど。

 

 ……あれ、今アミサちゃん、お姉ちゃん達が来る日って、言った?……ということは、もしかして。

 

「え、リーシャさん達がもう来日してるってこと!?まだ2週間あるのに!?」

 

「昨日ってイトナ君も夜ご飯食べさせろーってアミサちゃんの家について行ったんじゃなかったっけ?3人でお姉さん達と会ったの?」

 

「そー。で、そん時に一緒に来てた人から俺とイトナが『暗殺訓練受けてる子どもがどれくらいできるのか』ってちょっと試されてさぁ……それが若干命の危険を感じるイタズラだったんだよね」

 

「カルマとイトナがって、……それ、真尾の地雷ど真ん中じゃね?」

 

「うん大正解。和解はしたんだけど、アミーシャはそれが受け入れられなくてあの人達と一悶着あって……あれも多分、烏間先生が事前に言ってくれてたら警戒できたのにって責任転嫁したいんだと思う」

 

「それは……一概に理不尽って言えないね;あの感じ烏間先生もわざとじゃなくて忘れてた感じだし……」

 

「それでも烏間先生に怒りたくなる気持ちはちょっと分かるなぁ……誰も責められないから余計に矛先を烏間先生に向けるしかないんだろうね」

 

「おーい渚達ー、なかなか教室に来ないけどどうかしたの?」

 

「なんだよお前ら、教員室前にたむろって……」

 

「あ、みんな」

 

「なんだって……ほら、」

 

 さすがにこの状況になれば説明してくれる気になったみたいで、カルマ君が簡単に教えてくれたけど……確かに烏間先生がちゃんと訓練日じゃなくて来日する日を伝えてれば避けれたんだろうな、とは思う。茅野も杉野もここまで付き合いがあるからこそ、アミサちゃんの性格をよく分かってる。

 そして僕らが教員室前の廊下で中を見ながら話してれば、後から登校してきたクラスメイトや既に教室にいたみんなも、何人かが興味をもって覗きに来た。どく気のないカルマくんは置いておいて、僕ら3人は入口から中が見えるように少しズレる。

 

「わ、あーちゃんがプンプンしてる〜」

 

「めっずらし。あの子があんな怒り方するなんてほとんどなくない?」

 

「なんだろ、手を出しても許して貰えるって甘えがあるというか、文句は言いたいけどどうにもならないってわかってるというか」

 

「静かに怒ってるなーってのは何度か見たことあるけど、あんな……父親に怒る感じというか、親しいからこそ手が出る遠慮のない怒り方というかはカルマ相手くらいじゃ……?」

 

「あー、見たことあると思ったらカルマ相手か。確かにやってたわね〜、最近は叩いても意味ないって気付いて爪立ててたわ」

 

「……それ通用したか?」

 

「……たしか小動物の甘噛みって言ってたわよね?」

 

「だってアレ本気じゃないし。一応叩いてくるより痛いっちゃ痛いけど、可愛い抵抗にしか思えないって」

 

「ダメじゃねーか;」

 

「あはは……でも、こう見ると怒り慣れてないのがアミサちゃんらしいですね。怖くないを通り越してむしろかわいいですし、カルマ君が言ってることも分かります」

 

「ね、一生懸命なのは伝わってくるんだけど」

 

「お前らなぁ……真尾は結構真剣にキレてるっぽいのに。烏間先生もだけどあしらい方が雑なんだよ;」

 

 ……うーん、誰が見ても微笑ましいって取られ方してるよ。とりあえずまだ時間もあるしってことで、野次馬が増えてきてもまだ文句を言ってる彼女と若干勢いにたじろぎつつよく分かってなさそうな烏間先生を見守ってたけど、ふと、中村さんと話してた隣の彼が気になって視線を上げてみたら。

 

「……カルマ君、顔」

 

「何、俺変な顔してる?」

 

「変っていうか……いつも通りっぽいけど、見る人が見れば緩んでるよ」

 

「……、だってさぁ……」

 

「まぁ言いたいことはわかるけどね」

 

 言わなくてももう分かるよ、可愛くて仕方ないんでしょ。平然とした表情を装ってるくせに、愛おしそうに目を細めて見てるんだから……チラッと見ただけじゃいつも通りだけど、カルマ君を知ってる人からすればわかりやすいと思う。それに、ああやって感情を大きく表に出すって行動を僕ら2人やE組っていう同級生相手じゃなくて、アミサちゃんが今まで苦手で一歩引きがちだった大人相手にやってるんだから見守ってきた立場としても嬉しいよね。

 僕が指摘したことで諦めたように表情を崩して顔を隠した彼をいつも通りベタ惚れだなぁと思いつつ、……いつあの子を回収しようかな、とも思い始めた。そろそろいい時間だし、磯貝君と片岡さんがみんなを教室に誘導し始めたしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、アミサ」

 

「あ、そうだった。今日の放課後、お姉ちゃんたちが来るって……レンお姉ちゃんも校門までは来たけど中までは見れてないから、今日は下見も兼ねてって言ってました」

 

「そんなこと言ってたね、そういえば」

 

「……君達もよっぽど唐突だな」

 

「「烏間先生には言われたくないと思う」」

 

「私、当日だけどちゃんと言ったもん……」

 

「「「(確かにな)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、放課後。

 

「お邪魔しまーす!日曜学校以来だからこういう勉強って感じの場所に来るのも久々だわ〜っ!」

 

「一気に11人というのも目立ちますし、今日は戦闘指南を行う女性メンバーだけにさせてもらいました。男性の方々とキーアちゃんも順番に伺いますから、よろしくお願いしますね」

 

「ああ、よろしく頼む。そちらの3名には以前自己紹介をもらっているが……あなた方にも頼めるだろうか」

 

「あ、それもそうね。じゃああたしから……初めまして!あたしはリベール王国遊撃士教会に所属するB級遊撃士のエステル・ブライト!正直あたしは勉強より体を動かす方が好きだから、よければ後で組手とかやりましょ!よろしくねっ」

 

「ヌルフフフ、正遊撃士はG級からA級まで階級があったはず。B級ということは相当優秀な方ですねぇ」

 

「あはは、ありがと!でもまだまだ目標にしてる人には遠いけど、あたしはあたしらしく上を目指していくわ!……それにしても詳しいのねーコロセンセーさんって。3月までに殺さなきゃいけないって聞いてたけど、あんまり魔物感もないし、見た目以外は人間っぽいのね〜」

 

「反応も人間っぽいですよ。色々と」

 

「バカなるエロのチキンのタコだからね……」

 

「へ、そーなの?」

 

「こ、こらみなさん?!シーですよシーッ!!!」

 

「ふふ……では、私も。劇団アルカンシェルに所属してます、リーシャ・マオと申します。ご存知かと思いますがアミーシャの姉です。……改めてみなさん、いつも妹のことを助けてくれてありがとうございます」

 

「い、いえ!」

 

「……さすが姉妹ってくらい似てるけど、真尾と雰囲気は結構違うな?」

 

「カルマ君が神崎さんと似てるって言ってた意味がわかったわ〜……声と性格もだけど、落ち着いててちゃんと1人で立ってるというか、……あ、あれだ、自己肯定感を上げた真尾って感じ」

 

「でも中身というか思考はそっくりだよ……マジで。全く同じヒヤヒヤすること平然と言うしやるからね、2人とも」

 

「そーなん?」

 

 授業が終わる時間は知らせておいたこともあって、放課後になると予定通りお姉ちゃんたちがE組校舎にやってきた。学園祭の準備があるから見慣れない人が来てもそこまで目立たないだろうし、防衛省との交渉だとかでお姉ちゃんたちの来校そのものは理事長先生に許可をもらってるらしい。けど、一般生徒からしたら『なんでE組にこんな大勢のお客さんが』って思われる可能性がある……これでE組が悪く言われないようにって、お姉ちゃんたちの間で話し合いして半分に分けることにしたんだって。

 初めてE組のある山を登ってきただろうに、お姉ちゃんとエステルさんは息一つ乱さずに楽しそうに先生たちの所へ行った後、まだしてなかったからとE組みんなの前でニコニコと自己紹介している。残りのエリィお姉ちゃんたちはといえば。

 

「……エステルさんとリーシャさん、元気ですね……どういうことなんですかぁ……」

 

「私達も、色々修羅場をくぐりぬけてきた手前、かなり体力はあるつもりだったんだけど……、はぁ、山道、校舎までが遠すぎないかしら……」

 

「疲れました……」

 

 4月の頃のE組生のように、ちょっと息を荒らげて疲れたような顔で休憩している。でも座り込んでないだけすごいと思うし、さすがだなって……エステルお姉ちゃんとリーシャお姉ちゃんが平然としてるのがおかしいんだよ、やっぱり。

 

「あれ、レンお姉ちゃんは?」

 

「とっくにあっちでイトナと律と3人で盛り上がってるよ。ただ会話が異次元なんだけど、……何事?」

 

 戦闘指南に参加する女性メンバーがここに来ているのだとしたら、あと1人いるはずなのにリーシャお姉ちゃんたちの方にもエリィお姉ちゃんたちの方にもいない……と不思議に思っていたらカルマがクイッと教室の後ろの方を指を指した。

 

「……あら、やるじゃない。でもそこまで組むならそっちのコードを書き換えた方がいいわ、私ならそこをついて……」

 

『なるほど……では、バックドアを仕掛けるとして相手に踏ませる罠をここに……』

 

「レン姉さん、律を組み込むとしたらどっちがいい。俺はここをマニュアルにして、こっちを自動制御にしておくべきだと思うんだが……」

 

「そうねぇ……、律が今後も成長することも鑑みれば十三工房並みの人工知能を搭載できることも理論上有り得るわ。そうとなればそれなりの容量が必要だし、重さが……」

 

『でしたら私は……、』

 

 いつの間に。レンお姉ちゃんもあの山道を登ってきたはずなのにケロッとしてるのはさすがだけど。律ちゃんの画面になにやらプログラミングのソースコードとか、導力器から共有したらしい謎の画面とかを写して、あーでもないこーでもないって話してるし、イトナくんは機械整備の方向から律ちゃんと同期する方法を相談してるみたいで、自分なりのアイディアを出しつつ意見をもらおうとしてる。

 挨拶は他の人に任せて早速好奇心の向くままに始めたんだろうな……イトナくんとはもう昨日から関わりあるし、その時にはもう段取りを付けてたのかもしれない。お姉ちゃんはどの分野でもオールマイティに優秀すぎるくらい優秀だからだから……どっちの会話にもしっかり対応してて怖いくらいだ。

 

「あ、あはは……レンお姉ちゃんハッカーでもあるし、ものすごく頭いいから……」

 

「いや、外野で見ててもそれはわかるけど、律とイトナは終着点は同じだとして全く別の分野の話してるよね?なんであれを同時にさばけるのさ」

 

「……情報処理能力もすごいから……?」

 

「はー……上には上がいるってことか……うわっ」

 

「っ!?」

 

 カルマと2人で話してたら、彼の驚くような声と同時にいきなり肩のあたりを引き寄せられて誰かにぶつかった。

 

「ほーら、アミーシャ。カルマ君もだけどっ!もう、2人だけで話してないでこっちに来なさいよね!」

 

「っ、え、エステルお姉ちゃん……?」

 

「び、っくりした……」

 

 誰かと思えば、太陽のような笑顔で楽しそうに笑う女の人。そのまま軽く体ごと移動するよう促されて見えたんだけど、私だけじゃなくて反対側ではカルマのことも捕まえてたみたい。呆れ顔というか、どう対応していいか分からないって感じの困った顔をしてるのが見える……お姉ちゃんよりカルマの方がだいぶ身長高くてちょっと掴みにくそうだな、なんてちょっと場違いなことを考えちゃった。

 

「アミーシャに話を聞いてなんとなくは分かってるけど、あたし達E組の子たちのことほとんど知らないのよ?少しは補助してあげようとは思わんのかね〜?ん?」

 

「補助するも何も……あんた今烏間先生達と話してたじゃん」

 

「そ、それに、レンお姉ちゃんは呼ばないの……?」

 

「呼ぼうかと思ったけど、今はイトナ君と律ちゃんと楽しそうだから……あのままにしとくことにしたの」

 

「あんたが教えろって言いに来たのに省いていいの……」

 

「んー、なんというか……ほら、レンって頭がよすぎるのもあって、同年代でああやって話が合う子が少ないのよね。向こうでも大人に混ざってる方が普通なくらいだったし、同年代の友達もいるけどほぼ1人だし。だからアミーシャとかイトナ君とか、カルマ君と遊びたがるのも話が合うからだと思うわ」

 

 ……そっか、昨日のアレも含めて、レンお姉ちゃんはカルマやイトナくんと仲良くなろうと、お姉ちゃんなりに考えて動いてくれてたのかもしれない。ちょっとやり方が斜め上だったから、私が察せず怖がっちゃってあの結果にはなっちゃったけど。

 ……そうだとしたら、今、律ちゃんとイトナくんと楽しそうにしゃべるあの姿は、本心から楽しんでくれてるのかも。……そうだと、いいな。

 

「あと、どこの集団でも最年少になりがちだったから、1つとはいえお姉さんぶりたいんじゃないかしら」

 

「ちょっとエステル聞こえてるわよ。……否定はしないけど勝手なことは言わないでちょうだい」

 

「否定しないならいいじゃない!だいたいねー、」

 

「……お姉さんぶりたいのはエステルさんもだよね。昨日アミーシャに相当お願いしてお姉ちゃん呼びしてもらってたし?」

 

「っ!うぐ、そ、それはぁ……」

 

「あとヨシュアさんに、出会った時からブライト家として先輩だからって同い年なのにお姉さんぶってたって聞いたけど。でもヨシュアさんの方が誕生日早いらしいね?ふふ、逆じゃない?」

 

「ちょ、何教えちゃってんのよヨシュア!」

 

「あら、その話レンも聞いたことあるわ。だいたい普段から……」

 

 言われてみれば、レンお姉ちゃんは15歳。私もカルマもイトナくんもまだ誕生日が来てないから14歳……既に誕生日が来ているクラスメイトに比べれば、レンお姉ちゃんからしたら私たちは年下だもんね。

 そんなことを聞いてれば、ちょっと照れてるというか、ムズムズしてるというか、少し頬を染めた微妙そうな表情でレンお姉ちゃんが私たちの方へ来た……のを確認したカルマが、何を思ったのかエステルお姉ちゃんに矛先を向けた。というかものすごくいい笑顔でヨシュアさんから聞いたことをぶっ込んだ。……当然レンお姉ちゃんが見逃すわけなく、のっかって。

 

「こ、この……っ生意気なのよアンタ達ーッ!」

 

「あっは、やばいやばいっ、おっと、」

 

「にゅやっ!?お2人とも何事ですか!?!?」

 

「殺せんせーいい所に!ちょっと壁になってくれる?そっちの怖ーいお姉さんから逃げてんの、俺ら!」

 

「うふふ、追いかけっこなんて久しぶりね!どっちが先に捕まるかしら?」

 

「お、いいね。俺と勝負する?レン姉さん」

 

「!あら、そう簡単には負けないわよ」

 

「あ、こら、待ちなさーい!!」

 

「あ、あわわ……カルマも、お姉ちゃんたちも、お、落ち着いてぇ……っ」

 

 ニマニマと楽しそうな顔でレンお姉ちゃんと2人で燃料を投下しだして……あぁ、エステルお姉ちゃんが怒って教室の中で追いかけっこが始まってしまった。全く関係のない殺せんせーまで巻き込まれてるし。

 

「……エステルさんが上手いんだろうけど、カルマがここまで誰かとはしゃいで楽しそうなのは珍しいな。なんていうか、ちゃんと中学生してる」

 

「言い方……でもそうよね、ああいうとこ見るとカルマ君も中学生だなーって思うわ」

 

「言い方変えても同じこと言ってるわよ、2人とも」

 

「エステルさんといつも一緒にいるヨシュアさん曰く、ああいうタイプの子どもに懐かれやすいそうですよ、彼女。リベールにいた時から変わらないそうです」

 

「そういえば、クロスベルに応援で来てた時も、あんなタイプの子と追いかけっこしてたわね……」

 

「カルマ君ってさ、いつも裏で操るか傍から見てるか1人で前に出るかのどれかのことが多いもんねー……でもイタズラとからかいとなれば、いつもあんな感じじゃない?」

 

「……確かに。じゃあアレだ、渚や真尾、俺ら以外と遊ぶの見た事ねぇ、かっこケンカは除くかっこ閉じって感じ?」

 

「だなぁ……あのレンって人が確実にノッてくれる確信と、エステルって人がいい反応してくれるって知ってなきゃできんわな、甘えてんのかね、アイツも」

 

「うーん、まさかあんなことがあったのに、レンちゃんとこんなに波長が合うとは思わなかったわ……止める予定のエステルさんまで一緒に走り回ってるし。……どうしましょ、これ」

 

「とりあえずヨシュアさん(保護者)に連絡だけ入れておきましょう。私達で全部やるのはめんどくさいです」

 

「あはは、私が入れておきますよ」

 

「……打ち合わせを、するつもりだったんだが……」

 

「まぁまぁ。今日は顔合わせですし、まだ日数もあります。私達としてもE組の子達と交流が出来ればそれで大丈夫ですから。またロイドさんを中心に話し合うことになりますし、とりあえずは顔の一致を優先に……」

 

「……あんた、リーシャでよかったわよね。あんたはあんたで何やってんのよ」

 

「え、妹の動画と写真を……あ、もしかして個人情報とかでダメですか?それなら妹とカルマさんと身内だけのものにしますね」

 

「既にカルマは身内認定してんのね……この緊張感のなさ、間違いなくアミサの姉だわ」

 

「……?」

 

 楽しそうな彼を見れるのは珍しくていいんだけど、ここまでノリにのった後じゃ、私には収集つけれない。一応声はかけてみたけど、思った通り無理でした。

 結局烏間先生が上手く逃走経路を塞いでカルマとレンお姉ちゃんがぶつかり、そこをエステルお姉ちゃんが捕獲して追いかけっこは終了した。2人して最後まで笑ってて楽しそうだけど、エステルお姉ちゃんが1番疲れてない……?なんにせよ……放課後でよかったなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、もう打ち合わせも何もないから今日は交流を楽しんでくれ……って烏間先生が頭を押さえながら出ていっちゃって、山道疲れも回復したみんなとE組のみんなで思い思いにおしゃべりすることになって。私は家でもいくらでも話せるから距離をあけてようかと思ってたのに、男女問わず話しかけに行くエステルお姉ちゃんに連れ回され、私目線でどんな人なのかを目の前で説明することに。

 なのに私が口を開く前にほぼクラス全員からちょっと待ってと言われちゃって……私なんかの紹介ではあんまり役に立たないよねって引こうとしたらそういう訳でもないらしく。よく分からないまま、一度背中を向けるクラスメイトたちがOKを出してからそれぞれ紹介していった。……ら、言い終わった時にはほぼ全員が天を仰いでるというか、崩れ落ちてるというか、顔を背けてるというか……みんなスマホ握りしめて、あれはなんだったんだろう。

 

「カルマ君が昨日気が気じゃないって言ってた理由が分かったわ。この子、違う意味でロイドと同じタイプだったわね」

 

「ちゃんといい所をみなさんが分かってくれてるのが伝わってきましたし、よかったです」

 

「うーん、この姉あってこの妹ありって感じだわ……」

 

「そんな、みんなが優しいから……」

 

「優しくても可愛がってもらえるかは別ですよ?そこはアミーシャちゃんの人柄あっての事ですよ」

 

「彼らだって人間です。誰にも彼にも優しくするわけではないでしょうし、アミーシャがあの場で受け入れられてる証拠ですよ」

 

「そ、かな……えへへ」

 

 家に帰ってきてから放課後のことを話してれば、私とエステルお姉ちゃんがみんなの間を回ってる間に、他の人たちも交流できてたみたいで何人か『この子を指導したい』『育ててみたい』って候補が見つかったみたい。どんな指導になるかはまだ未定だけど、男性のみなさんも含めてタイプが違うから、E組のみんなにあった人が見つかるといいな。

 そう、明日以降も楽しみだなぁなんて、軽く考えてたらクルリと振り返ったのはノエルお姉ちゃんだった。

 

「そうだ!アミーシャちゃん、ミスコンに出るの?」

 

「え゛、……なんで、知ってるの……?」

 

 急に持ち込まれたソレは、ちょっと気恥ずかしさが勝って誰にも話してないことだった。E組としての出し物と、浅野くんに依頼されたステージの事は話したよ?絶対みんな来るって分かってるもん、先に伝えといた方が気が楽だから。でも、ミスコンは話してない……情報源はというと。

 

「いやー、E組の子達、ちょっとでも会えなかった期間のアミーシャちゃんを知って欲しいからって……すごいわよ〜?私達にとにかく何でも教えてくれたから」

 

「多分、アミーシャが教えてくれてないことも知ってますよ」

 

「その流れで、学園祭のイベントの1つにアミーシャちゃんがエントリーされてるって聞いて!」

 

「で、でも、出番はほとんどないから……E組は本校舎から遠いから大変でしょって、ステージパフォーマンスしない代わりに写真か動画をいくつか撮って公開するの。2日目の学園祭は、お客さんにエントリーした人って分かるように、その格好で参加していいことになってる……」

 

「それは……、場違いかもしれないけど、よくあのカルマ君が許したね?」

 

「確かにね。あの独占欲のすごい彼が、人前に着飾ったアミーシャを出すことを許可すると思えないけど」

 

「許したというか……カルマも私も知らない内にエントリーさせられてたっていうか……」

 

「あ、やっぱり;」

 

「そりゃそうよね;」

 

「コロセンセーさん、アミーシャが決まったことには強く出ないの分かっててやったんでしょうね……カルマさんはある意味自業自得というか;」

 

「そうなんですか?」

 

「ナギサさんを出すために裏で動いてたら、いらないお節介を焼いたコロセンセーさんによって、アミーシャもエントリーしたって感じみたいで」

 

「あーあ;」

 

「まぁ、彼氏さんからしたら複雑よね。かわいい彼女を見世物にしたくないって気持ちと、着飾らせて自慢したい気持ちと……多分彼的にはしまい込みたいでしょうし」

 

 ちなみに余談だけど、殺せんせーも最初はエントリーしようとしてたみたいで、E組全員+ガチギレ寸前の烏間先生に止められて泣く泣く諦めてたりする。先生が学生の企画にでばるな!とか、国家機密が外部露出ヤバい企画に進んで出るな!とか、いろいろ言われてたなぁ……あまりにも欲望に忠実すぎる殺せんせーが悪い。

 お姉ちゃん達が聞いてくるままに私以外で参加予定の5人の写真をモバイル律ちゃんに協力してもらいながら見せていると、それを静かに覗いていたレンお姉ちゃんが少し考えたあとにこちらを向いた。

 

「ふぅん……ねぇアミーシャ。私が前に着てたドレス、着てみる気はない?」

 

「…………え?」

 

「実は持ってきてるのよね。ホントは支援課のお姉さん達と一緒に家で着せ替えして遊ぶから色んな服持ち寄りましょって話だったんだけど……そんなちょうどいいイベントがあるんだったら、どうせなら着飾りたいわ。身長も多分ちょうどいいし胸も押さえれば何とかなる……それにアミーシャがあんまり着たことないタイプでしょ?」

 

「た、たしかにフリフリの服はあまり着たことないけど……そ、それより、ちょっと待って、レンさ、」

 

「…………」

 

「う、えと……レン、お姉ちゃん……?」

 

「うふふ、なぁに?」

 

 レンお姉ちゃん、いろんな場面でずーっと1番年下だったらしくて……『レンのこと、みんなレディとして扱ってくれないし子ども扱いばっかりで失礼だわ!キーアは年下だけど年上だし……ね、アミーシャは私より年下だもの、お姉ちゃんって呼んでくれるわよね?』とはレンお姉ちゃん談だ。

 まだ呼び名に慣れなくてさん付けしちゃうことがあるんだけど、誰よりも1番気にしてるというか、……いつかの呼び捨てにしないと返事しなかったカルマと同じような圧を感じる。……呼ぶと嬉しそうに笑ってくれるから頑張って呼ぶけど。と、そんなこと考えてる場合じゃなかった。

 

「キセカエって何……、衣装交換ですらないのって……みんな、何する気だったの……?」

 

「交換も楽しそうだけど……かわいい妹分、しかも素材的にも着飾りがいがあって、それを絶対に褒めてくれる男の子がいるなら色々やってみたいじゃない」

 

「そうそう、彼のことだから男に見せて惚れられたくないとか見られたくないとかは言いそうだけど、色んな格好をするアミーシャは絶対見たいと思うのよね」

 

「あー、分かる。ああいうタイプは俺だけがわかってりゃいいってタイプだもんなぁ……」

 

「ついでに見たいと思いつつも面と向かっては多分頼んでこないよね、彼の性格上。またいつか、また今度って言い訳して自分で機会を棒に振ってそう」

 

「気を遣いすぎて直接は言ってこないってことか……アミーシャ、彼ってそういうところあったりするのか?」

 

「え、ど、どうだろ……?前に女の子だけで水着を買いに行った時は、無理やり友だちが聞いたとかで……これはいいけどこれはヤダ、みたいなことを、なんとか聞きだしたみたいなことは言ってたけど……」

 

「マジでそういうタイプかよ。……いや、違うな……アミ姫が鈍感すぎて変な方へ走る前にある程度のラインを引いた可能性もあるな……?」

 

「ふふ、彼なりに葛藤してるのかもよ?アミーシャって変に大胆だからライン引きしておけば周りの女子が止めてくれるって分かっての行動だろうし」

 

「ついでに自分は心構えができるってか……賢いな……」

 

「2人とも、当事者をおいて考察に真剣すぎるだろ……」

 

 レンお姉ちゃんたちと話しているところにランディお兄ちゃんたちも混ざってきて、なぜかカルマの性格?の話に……。

 苦笑いのロイドお兄ちゃんを横目にワジお兄ちゃんとランディお兄ちゃんは2人でなにやら意見を出し合って悩み顔してるんだけど、これ、そんなに深刻な悩みじゃないよね?しかもちょっと楽しそうなワジお兄ちゃんはともかく、ランディお兄ちゃんはなんでそんなに真剣なんだろう。

 

「元々着せ替えする時は家に彼を呼んで反応見ようと思ってたのよ。それに……色々やってれば彼の好みも見つかるかもしれないわよ?」

 

「……!カルマの、好み……分かる?」

 

「あら、食い付いたわね。そのあたりエステルよりも彼のために何かしたいって姿勢が見えて私は好きよ」

 

「あたしよりって……ちょっとレン、ひどくない?」

 

「だって私の身近で恋人関係なのってアミーシャとエステルとヨシュアくらいだけど、アナタ達含めて恋人らしいこと全然してる気がしないんだもの。一緒にいるだけで満足するなんてつまらないわ」

 

「つ、つまらなくて悪かったわねっ」

 

「そんなつもりは無いんだけどね……エステルは元気な格好でいつも笑ってくれてるのが1番素敵だと思うよ」

 

「そ、そかな……ありがと」

 

「んもう、どっちかというとエステルの話だし、ヨシュアはこじらせすぎだと思うわ。勝手にイチャイチャし始めないでちょうだい」

 

 そろそろ衣装合わせの日も近いし、あれよあれよという間にレンお姉ちゃんの服を貸してもらうことに決まってしまった……。さすがにそのままだとサイズ的に着れないし、全体的にレンお姉ちゃんに合わせた色合いだから、私らしくリメイクはするらしいけど……ここからみなさんが暴走しちゃわないかがすごく心配です。

 

 

 

 

 





(みんながスマホを持っていた真実は)
「……お前録ったか?」

「そりゃ録るだろ。てか気づいたやつは男女問わず全員録ったよな?」

「真尾があの人達に俺らを紹介する。紹介する時には名前以外にも特徴を覚えるために何かしらの情報を付け加える……つまり、あいつに紹介させるってことは、素直な褒め言葉が聞けるってのと同義だもんな……」

「はー……、いけね、間違って消さないようにバックアップしとこ」

「これで何時でも聞き返して自己肯定感爆上がりできるわ……」

「必死だねぇ、お前らも」

「うっせーよ!いつでも全肯定な上好意増し増しに届けてもらえるお前とは違うんだわ!!」

「余裕かましてんなよ……真尾の事だ、絶ッ対また予想外なところからぶっ刺しに来るに決まってる!」

「本人以外が何故か持ってくることもあるしな」

「棒倒し前に聞いた男子みんなの印象も、カルマ君だけいろんな意味でおかしかったもんね……」

「なにそれ俺知らないんだけど」

「あー……と、……片岡さーん」

「ん、なに渚ー?」

「前のアミサちゃんが言ってたカルマ君の印象って残ってる?」

「あー……もう時効でしょ。この際見守りグルチャに貼ってあげるわよ、あの子見てないし」

「「「助かる!」」」
※番外編・印象の時間参照





「「「いや、長……」」」

「イトナが復帰してラジコン計画進めてた時期だし、2人が付き合う前だよな……?」

「付き合ってないねぇ」

「この頃から本人の知らぬ間に意識改革目論んでたってことだな」

「……………」

「ほら、刺されたじゃねーか」



++++++++++++++++++++



 今回は女性陣中心にE組と交流してもらったら、リベール組が出張りました。リメイク前にいなかったから動かしやすくて……あと、唯一のカップルがいるので上手く噛み合せやすいんですよね(攻略王ロイドさんは殿堂入りです)。

 もう少し本編に入らない内容が続きます。



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