私の不甲斐なさに落ち込んで、カルマくんの無事に安心して、彼本人から人の温もりをもらってなんとか落ち着いた私はカルマくんに連れられて表通りへ戻った。手元も何も見ないで勢いで髪を切っちゃったから、きっと今は不揃いでガタガタになっているだろう……今はよくても、流石に整えなければ学校に行けない。カルマくんは分かれ道までずっと自分が責任もって整えるから、って言ってくれてたけど、私が勝手にしたことだし流石に申し訳なくて断った(それでも最後まで残念そうに残った私の髪を触ってたけど)。
──そして、次の日。
昨日までと違って軽い頭で学校へ行くと、学年関係なくすれ違う人たちからの視線が刺さるのを感じた。教室に入ったら入ったでザワっと空気が変わり、クラスメイトの何人かでまだ話す部類に入る子達に「ここまでバッサリ切るなんて失恋でもしたのか」と囲まれて聞かれたけど、失恋も何も恋をした事ありません。……事実だからそう答えたのに、みんな残念そうというか、かわいそうというか……とにかく複雑な顔をして目をそらしていました。……何か、答えを間違えてたかな……?でも、考えても分からないし、そうとしか言いようがないので置いておくことにします。
「……それにしても、本当バッサリいったね…」
「えへへ……切っちゃったものは切っちゃったから、もういっその事、と思って」
「……はぁ……」
昨日の一部始終を見ていない渚くんが、「何があったの!?」と朝一番で詰め寄って来てちょっとびっくりした。他の人には言うつもりないけど渚くんだったら話は別、なので詳細に何があったのかを話すと、最初はカルマくん同様無茶をしたことを怒られて……それでも今の髪型も似合ってるって褒めてもらえたんだ。
帰宅してからちゃんと確認したけど、短いところで鎖骨くらい、長いところで腰までとかなりバラバラな長さになっていた。またあそこまで伸ばすにはだいぶ時間がかかってしまうし、これを機に切って揃えてしまおう。そう思って直した今の髪型は、長さを肩口くらいまでに揃えて、ツーサイドアップをお姉ちゃんとお揃いの紙紐で留めている。ちょっと憧れでもあったお姉ちゃんのマネをしてるみたいで、照れくさいけどこれもいいなって思って。
……ちなみに切ってしまった直後に「長いのも好き」と言っていたカルマくんは、私の短くなった髪をいまだに残念そうにしていて、渚くんと話している今も短くなった後ろ髪をずっといじっていたりする……切った本人よりも残念そうってなんなんだろう。……まさか、自分のせいでって考えてないよね?私が決めたんだから、カルマくんのせいでも何でもないのに。
「でも、……よかったの?僕と違って伸ばしてたんじゃ」
「……うん、いいの。まだ怖いけど……頑張れそうな気がするから」
あんなことがあって不謹慎だけど、私を守ろうとしてくれたカルマくんを見て……彼にとって私はどうでもいい存在じゃないって思ってもらえてることが分かったから。私は、ここにいていいんだなって……怖がってばかりいなくても、認めてくれる人がいるって、少しだけ思えたから。少しだけ、前を見てみようと思うことができたんだ。
「だから、カルマくんのせいとか私、全然思ってないからね?」
「……べっつに〜。そんなんじゃないし……」
「じゃあそろそろアミサちゃんの髪いじるのやめなよ……」
「は?……え、……っ!」
「いだぁっ!?」
それでもぶすーっと機嫌が悪そうに返事をしていたカルマくんは、渚くんに言われてやっと私の髪をいじり続けていたことに気付いたみたい。カルマくんはハッとしたように自分の指を見て……何故か渚くんの背中を「バンッ」って音が出るくらい思い切り叩いていた。
すぐに背を向けて自分の席へ行ってしまったカルマくんに、渚くんは痛がりながら、ボソリと「無意識だったんだね…」って呟いてた。……無意識だったんだ。私の髪、触り心地良かったりするのかな。
◆
「カルマってのはてめぇか。よくも人の連れ、ボコってくれたな」
またかーってくらい、それが起きたのは突然のことではあるけど、あまりにも、もう今更ってくらいよくある
喧嘩ばかりしてるように思うかもしれないけど、カルマくんは喧嘩早いとはいえ、自分から好き好んで仕掛けているわけじゃない。自分の考えている『正しさ』に真っ直ぐなだけで、それから外れているのを見つければ見て見ぬ振りをせず、カルマくん自身の持つ強い力を奮って
「え、知らねぇし。先に因縁つけてきたのはそいつだよ」
「嘘つけ!こいつが言うには……」
「よっ」
カルマくんが、カバンを上に投げる。
男たちが思わずそれを見て、一瞬の隙ができる。
彼らが目を戻した時にはもう遅い……そこからはカルマくんの独断場だ。
「聞こえなーい。なんつったの?もう一回言ってよ!ほら、ほら!」
渚くんは上から落ちてきたカルマくんのカバンをキャッチすると、その目線をカルマくんの方へと向けた。……何を言う訳でもない、ただ静かに見つめている彼は、私から見る限り、カルマくんに対して怖がっている様子はないと思う。けど、なんだろう……この目は、何かを諦めてしまっているような……
私はといえば、もう下手に巻き込まれてカルマくんの迷惑になりたくないから、渚くんと一緒に下がっていて喧嘩の舞台へは絶対に上がらないようにしている。止める気は無い、だってカルマくんの『正義』を私は肯定している立場だから。ただ、怪我をしていないか……それだけを見守っている。
そして今日もカルマくんの圧勝で喧嘩は幕を閉じる。私はすぐにカルマくんに駆け寄り、力を奮っていた彼の手を確認させてもらう……よかった、強く殴っていたから赤くなってはいるけど怪我はしていないみたい……。そういえば私は普通に触れてしまっているけど、カルマくんが大人しく手を見せて、触れさせてくれるのは私くらいらしい……聞き出した渚くん曰く、あの日のことがあって、見せないと私が納得出来ないと分かっているから、みたい。私より付き合いの長い渚くんですらないことを私が……?と不思議ではあるんだけど、渚くんはもごもごと口ごもってそれ以上は分からなかった。
適当に投げ出されている男たちを渚くんが壁際まで引きずって(誤解がないように言っておくけど、別に害を与えようとして引きずっているわけじゃない。単に力と身長が足りなくて引きずるしかないだけ)、道の脇に寄せて軽くハンカチで血を拭ってやっている。カルマくんは相手がふっかけてきた喧嘩を買っただけだし、そんな奴にこんなに丁寧に対応しなくてもいいって言うけど、そのまま放置っていうのはなんとなく良心が咎めるんだって。……喧嘩を止めない私が言うことじゃないんだろうけど。
「……ねぇ、いつも俺が喧嘩してるとき、渚くんって離れたとこで見てるよね……俺が言うのもあれだけどさ、こーゆーことが起きたらどうすんの?喧嘩とかしないの?」
「僕が喧嘩?怖いから、多分一生できないよ……まぁ、やらなきゃ死ぬってんなら別だけど……」
ふと、思った。あぁ、2人に出会ったあの日、私が感じた通りだったんだ。2人はやっぱり似ていない。って。……でも、本質は似ているなって。
カルマくんは目に見える〝力〟
渚くんは多分……自分でも気づいてない、目に見えない〝力〟
渚くんの、目に見えないそれは相手が警戒しなくて済む……でも油断出来ない何か、なんだろう。どちらかと言えば私の力に似ているそれが何か、なんて私にだってわからないのだけど。
「……ふーん。……アミサちゃんは怖くないの?」
「……私は、怖くはないよ。でも、怪我はしないで欲しいって思ってる、かな」
「……ごめん、無神経なこと聞いた。……忘れて」
「………………」
……怖いかどうかなんて、答えられるわけがなかった……2人は
だから私は改めて決めた。
この秘密は、私が私として生きていく意味を見つける時までは誰にも明かさない。もしかしたら永遠に明かさないままかもしれない、でも、それならそれでいいと。
私にとっての決意を新たにした日ではあったけど……この日を境に、カルマくんと渚くんが少しずつ離れ始めたのを感じた。全く関わりがなくなったわけじゃないけど、今までとを比べるとどこか遠い。間にいる私には普段と変わりない様を2人は装っていたけど。……私はそれに気づいていたけど、止めることはできなかった。
◆
カルマくんと渚くん……表面上はかわりないように見える二人の間が日に日に広がっているのを見ているしかなかった。今まで私が知っている限り、いつも一緒に勉強して……一緒にご飯を食べて……一緒に遊んでいたと思う。今でも話すことには話しているみたいだだし、私もいる時は今まで通りに感じるけど、2人だけで長い時間を一緒に過ごす姿を全然見なくなった……そう、まるでただのクラスメイトに戻ったかのように。
渚くんはカルマくんに対して一歩引いてどこか諦めているように見えるし、カルマくんは渚くんの何かを警戒してる。お互いがお互いの中へ踏み込みきれずに、留まってしまっているような……反面、私がどちらかと一緒にいる時間は変わってないと思う。カルマくんとも、渚くんとも一緒に過ごしているし……あれ、どちらかとは一緒にいるけど、3人が揃ってる日が、ほとんどないや。
……私、まだ知らないことがいっぱいあるんだよ。教えて欲しいことだっていっぱいあるのに……なにより私はまだ、2人に何も返せてない。
今日も私は、少しずつすれ違って離れていく2人を見ていることしか出来ずに一日が終わっていた……部活もないし、もう下校するだけだ。最近私はどちらかと一緒に帰るか、1人で帰る日が多くなってきた。今日は1人……あの日、3人で買ったキーホルダーへ目を落とす。おそろいが嬉しくて、買った日からずっとカバンに付けている、揺れるそれを見て少しだけ泣きそうになった。
「……キミはあの時から何も変わらないのにね」
リスの頭を軽く撫でて、顔をあげる。私もいつか、離れなくちゃいけない日が来るのかな……でも、離れられる?ずっと一人ぼっちだとばかり思っていた私が見つけた居場所、そこは離れ難いくらい居心地が良くて……彼らも受け入れてくれるから余計に。そこを離れて、私は私でいられるの?
と、その時
────!
「………?」
……今、なんか聞こえた。キョロ、と辺りを見てみれば声が聞こえたのは路地裏……こういう時はたいてい彼が関わってる。1人の時に危なそうなところへ絶対行くなと言われていたことも忘れて、私は引き寄せられるようにその物音が聞こえた通りへ近づいていた。
はたしてそこには、ほぼ想像通りの光景が広がっていた……ただ、思っていたのと違ったのは登場人物。
制服の……多分の椚ヶ丘の男の人とその人の頭を掴んで壁に押し付けるカルマくん……それともう一人、呆然とその様子を見ながら座り込む男の人。座り込んでるとはいえ意識はあるようだし、カルマくんが相手にしたならもっと……なんていうか、凄いはず、……この表現しかできないのだけどそんな様子もなさそうだ。ということは、カルマくんはこの人を助けに入ったんだろう。
「大丈夫?先輩。……3ーE……あのE組?大変だね、そんなことで因縁つけられて。ん?俺が正しいよ?いじめられてた先輩助けて、何が悪いの?」
「そうですよ……怪我、だいじょぶですか…?これ、使ってください」
「!……アミサちゃん。もう、1人の時はこんなとこ来るなって言ってるのに」
「カルマくんがいる気がしたから。ほら、1人じゃないよ」
「そういうこと言ってんじゃないんだけどね〜」
ほら、やっぱりカルマくんは人助けのためだったんだ。迷わず私はうずくまっている先輩へ近寄り、ハンカチを渡す。呆然としていた先輩は最初、ハンカチと私の顔を行ったり来たりとして困った顔をしていたけど、私がハンカチを濡らした方がいいかと思って水筒の水を取り出そうとしていたら慌てて受け取ってくれた。
私の行動を見て、締め上げてる男の人……ううん、先輩がもう動かないことを確認したカルマくんはその人を地面に落として、手を払いながら私の近くまで歩いてきた。
「ありがとう……でも、よかったのかい?僕は……」
「……カルマくんも言ってました。いじめられている人を助けて、何が悪いんですか?」
「でも、僕はE組だから……」
「……私、いつも疑問でした。なんでE組はダメなんですか?いじめられて当然、なんて人はどこにも居ないです。なのに、それも知らずに同じ人を見下して優越感に浸る……かわいそうな人たち」
「…………」
「……本ト、かわいそーだよね……アミサちゃん、帰ろー。送るよ」
「あ、うん」
「あ、あの、ハンカチ……!」
「あ、えと……あげます。……負けないで下さいね、先輩」
E組の先輩に笑顔を向けて、私たちは帰路についた。
あの人たちは、今日が終われば元の蔑み、蔑まれる関係に戻るかもしれない。でも、この一時だけでも救えたのなら……そう思っていた。
このあと、私たちに起こることなんて、考えてもいなかった。
「…………あいつら、覚えておけよ……っ!」
◆
次の日の放課後……帰ろうと準備をしていた時だ。
「……?なんだろ……」
「アミサちゃん」
「あ、カルマくん。……呼ばれた、よね?」
「だね〜……一緒に行こっか」
提出物の不備だったり、簡易的なカウンセリングがあったりで一般生徒でも校内放送での呼び出しは時々ある。カルマくんの場合は喧嘩してその和解?とか状況説明のための呼び出しも多いみたいだけど。それでも大抵呼ばれるのは1人ずつだから、カルマくんと一緒にというのは謎だ。
元々帰るだけだったのもあって2人で教員室へと向かうことにした。廊下では隣に並んで歩いていたけど、2人して無言だった。なんで呼ばれたんだろう、なんにも思いつかないんだけど……もしかして、何か提出物とかに不備があった、とか?そんな風に私は軽く考えていた。……実際は、全然軽いものじゃなかった。
「……来たか」
「あれ、昨日の先輩じゃん」
「あ、あの……大野先生、何か、御用でしょうか……?」
待っていたのは呼び出した本人である、私たちの担任の大野先生と、昨日カルマくんにやられていた先輩……が、包帯だらけで松葉杖をつき、大野先生の隣に立っていた。そこでなんとなく察した……呼び出しの内容はコレの状況確認だ、と。
「……昨日の事は彼から一通り聞いた。お前たちがその場にいたらしいな……だから一応話を聞こうと思ってな」
「昨日……?あぁ、先輩がE組の先輩を一方的にいじめてたやつね。いじめっていけないことじゃん。だから俺が止めに入ったんだよ……どこから見たって悪いことはしてない先輩をリンチしてたんだからさ」
「……真尾、お前はどうだ?」
「え、と……帰る途中に声が聞こえて……行ってみたら、カルマくんと先輩たちがいたんです。いつもの喧嘩かな、とも思ったんですけど、話を聞いてたらE組の先輩だから何をしてもいいっていう先輩をカルマくんが止めてたって……だから、E組の先輩に汚れを拭けるようにハンカチを……」
そうだよ、確かにちょっと怪我をさせすぎてるとは思うけど、E組の先輩はそれ以上にボロボロにされていた。だから一方的なリンチをカルマくんが止めただけ。カルマくんが『正しい』ことを話してるんだから、大野先生だって味方に……
「……いいや赤羽。どう見てもお前が悪い!」
「……えっ」
「……え……?」
……おおの、せんせー?……なに、いってるの?
「頭おかしいのかお前!3年トップの優等生に怪我を負わすとはどういうことだ!……お前もだ、真尾!その場に居たのになぜ止めない!?しかもE組には手を貸しておきながら、こいつには〝かわいそう〟だとかぬかしたらしいな!何を考えてるんだ!」
「え、待ってよ先生……」
「何をって……いじめられて当然の人なんて、いじめられる人が悪いなんてこと、ない。……同じヒトを見下しているようなヒトがかわいそうでないなら、なんなんですか……?」
「何を言ってる、E組に落ちたヤツが悪いに決まってるだろう。自業自得だし、全てそっちに原因があるんだ!お前らはE組なんぞの肩を持って、未来あるものを傷つけた。……彼の受験に影響が出たら、……俺の責任になるんだぞ!?」
……なにを、いってるの?『ただしい』ものの、みかた、じゃなかったの……?いつも、カルマくんのこうどうを、『ただしい』って……いって、
「お前らは成績だけは
……めノまえで、はなしテるノハ……ナニ?ボロボロとくずれて、ヒトがヒトでなくなっていく……
「俺のほうでお前たちの転級を申し出た。最悪見ていただけの真尾は自分の言葉を改めて反省すれば撤回してやるつもりだったがな……おめでとう赤羽、真尾。君たちも3年からE組行きだ!」
────そこから、私は何も覚えていない。
◆
sideカルマ
人の形をした何かから、ボロボロと崩れていき、目の前にいるのは……肉体を失ったタダの物体。
──そいつに絶望したら、俺にとって……そいつは死んだと同じだ。
そいつから出る音は、自己保身でしかなく、俺の耳にはもう音として入らない、雑音のように通り過ぎていく……そっか、もう、目の前のものは要らないものだ。自分の衝動に任せて両手を握りしめた時、静電気が走るようなバチッという音が響いて反射的に顔を上げた。
「ひぃっ!?……あ、……ぁ、あ……!」
……声を上げたのは目の前の
「……………」
……アミサちゃん。俺自身のことで精一杯で、気を配ってやれなかったけど、やり取りをしていく中でだんだんアミサちゃんの様子がどこかおかしくなっていくのは分かっていた。彼女のソレを見つめる両の目の瞳孔が開き、鈍く銀色に怪しく光っているように見える。彼女は何の言葉も発せず、ただ、見つめただけで目の前のソレを自分の支配下に置いた。ソレは動かない、動けない。
……はは、なんだ。俺が信じてたのはこの程度、こんなものだったのか……俺もそろそろ我慢の限界だ。
……気がついたら、
ふと、今の今まで隣にあった気配がなくなった。静かすぎて意識の外にあったけど、……アミサちゃんは?
「……イラナイ」
やけにハッキリと、小さく聞こえたその言葉。それが聞こえた瞬間、俺は反射的に手を伸ばしていた。
「やめなよ」
───間に合った。
ギリギリで掴んだアミサちゃんの手には元々机の上にあったのだろう、先の尖った鉛筆が。その先端は……ソレの喉元に。あと一歩遅ければ、それはきっと……。この小さな身体のどこにこんな力があったのか、俺が押さえつけていても抵抗する手を捕まえたまま声をかける。
「…………」
「そいつはもうイイじゃん。既に死んでる死体をさらにいたぶる必要なんて、無いでしょ?」
全く俺に視線を合わせようとしないアミサちゃんは、少しの間そのままだったけど、だんだん目の色が変わりながらゆっくりと鉛筆を手放し……たと同時に体の力が抜け、静かにその場へ崩れ落ちた。慌てて抱き止めれば、彼女は動かない……気を失っているようだ。
そのまま彼女を抱き抱えて、振り返る。
……あーあ、生きてても人って死んじゃうんだ。はじめて知ったよ、そんなコト。
カルマside
カサリと手に持った手紙を広げる。案の定2人とも停学か……期間は、と……3年が始まって1週間後まで、ね。……あっは、2年の残りは登校すんなって?学力的に追いつかせないで物理的に順位落とそーとしてんの見え見え。……まぁ、いいや。どーせ、2年の範囲はもう終わってるし。
……3年になったらE組確定。
俺たち2人は、同じクラス確定。
……喜ぶことじゃないけど、どこか安心感を覚えている俺がいるのも確かで。どうでもいいはずなのに、変だね。
……さて、渚くんはどうなるのかな。
「…………、」
「あ、起きた?」
「……カルマ、くん?」
「うん」
「……ここ、どこ?」
「俺の家。気を失ってたし、どうせ家で一人なら同じだから、連れてきた」
「……、そう」
……?明らかに、反応がおかしい。ぼーっとしているというか、彼女の目が何も映していないというか……彼女の感情が見えない。そっと手を重ねたらビクリと反応して、手を握りこんだ。
「……いらない、もう、なにもいらない。やっぱり、しんじちゃダメだったんだ、……なにが?あれ?わたし……」
「……、」
「……あは、あははははっ……」
「……うん」
限界、だったんだ。
あーあ、こわれちゃった、オヒメサマ。