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今回、回帰前と歌ってる歌が変わっています。
少し周りとのかかわり方が変わっているので、オリ主の心境にも変化があるのかもしれません。
今回もよろしくお願いします!
カルマside
「おいE組。真尾さんが出るっていうイベントは次か?」
「おわっ!?進藤!?」
「ビックリした……よくこの客の多い中俺らを見つけたな」
「大所帯だから自然と目がいったんだ。それに……赤髪な上、身長の高い男の猫耳は暗くても目立つだろう?」
「……」
「あはは……確かに目印になるかもね」
「おー、おっきいお兄ちゃんだね!カルマ達のお友達ー?」
「うん?そうだな……友達と言うよりは戦友って感じかもしれないな」
「ほー、仲間って感じー?あ、ねぇねぇ似合うでしょ、カルマとナギサの猫耳、キーアが選んだんだよー!」
「いいセンスしてるじゃないか、って……お前も猫耳だったのか」
「まさかの気付かれてなかった!?」
「というかキーア、お前マジで物怖じしないのな。初対面だぞコイツ」
「んー?なにがー?」
「ロイドさん、よくみなさんも真尾に対して言ってますけど……キーアちゃんもこれが通常運転なんですか」
「はは、そうだね。出会った時から誰に対しても、ついでに何が起きてもまるでアトラクションのごとく全く動じないから、……アミーシャと正反対っていえば分かりやすいかな」
「あ、ものすごくよく分かりました」
「……うん、なるほど。断れなかったんだな。赤羽も真尾と子どもには甘いのか」
「うっさいな」
浅野が目の前のステージでギターをかき鳴らし、下級生だろう生徒がキャーキャー声を上げてるのを冷めた目で見ていれば、突然背後から声をかけられてさすがに驚いた。普段ならこんな隠しもしない気配なんてすぐ気付けるのに、この場の音楽と声援でかき消してくるから……振り返ればそこに居たのはいつぞや争った野球部のキャプテンで。
俺らを探してたらしく近くに来るけど、大所帯で固まって場所を確保してたから気付いたのかと思いきや手がかりは俺の頭に付いた猫耳かよ……外そうとするとキーアがめちゃくちゃ悲しそうな顔するから外せないんだよね。……ん?俺らを探してた理由、今おかしくなかった?
「あれ、そういえば進藤はなんでこれから真尾が出ること知ってるんだ?」
「……!そうだよ、真尾の出演についてはこっちから出した条件で浅野が情報規制してたはずだろ?!」
「は、情報規制なんてされてるのか?ミスコンの写真掲載のブースにPOPが付いてたぞ。【E組の歌姫、○:○○よりA組のイベントカフェにて歌唱!】って」
「「「は??」」」
磯貝と前原と渚君が勢いよく俺の方を振り返って来るけど、俺だって寝耳に水だ。というか磯貝に関してはあの場にいたじゃん……あ、違うか、証拠の音声を持ってるのが俺だから流せって意味ね。すぐにスマホを操作して、あの日……浅野君を呼び出して証人の前で言わせた言質を録音したボイスメモを開く。
──────ザザッ
〝……ねぇ、浅野クン。先に俺から条件出させてよ〟
〝……言ってみろ〟
〝本番まで、共演するアミーシャの顔を、素性を隠すこと。曲の選択権はこっちにすること。練習するならE組の誰かを同席させること。じゃなきゃステージに出すことは俺が許さないから〟
〝フン、番犬が……まあいいだろう。どれも真尾さんの負担を減らすためのものだしな……方法は僕も考えていたしちょうどいい。他にも要求や内容を決めたら真尾さんを通して僕に連絡しろ〟
──────ブツッ
「……ちゃんと録音されてるよ。日付も残してある」
「……どういうことだ……?勝つためにルールの穴をついてくる浅野だとしても、真尾には害を与えたくないはずだろ。他のやつ相手ならまだしも……約束を破るとは思えないんだけど……」
「ステージはミスコン衣装でやるって話だったよね……別に運営に申請しなくていいんだよね?」
「そのはず、なんだけどな……」
「……進藤君、そのPOPって他の候補者にも付いてたの?」
「……言われてみればE組の写真だけだったな……他の候補者と違ってE組はステージアピールがなく、動画と写真参加のみだから生徒会による救済処置かと思ってたんだが」
E組だけ、か。これで悪口とかならいつものことかって思えるけど、そんな感じじゃないし……むしろE組の利になるような付け足しだからよく分からない。でも本校舎にわざわざE組だけ注目を集めるような装飾をつけるやつっているのか……?
浅野君のギター演奏をBGMに頭を悩ませていれば、ふと思い出したように進藤が付け足した。
「あぁ、あと何故か『ここに注目!』って矢印の代わりがタコ足になってたな」
「「「犯人ウチの担任かよ!!」」」
「情報規制の意味……」
あっさりと犯人判明。タコ足って……殺せんせーなにやってんの。
「ユウマ君、なんで君達は情報規制なんてしたんだ?E組の宣伝も兼ねてA組のステージにアミーシャが出演するなら、事前に出演を知らせないと意味がないんじゃないか?」
「えっと、普通ならそうする方がいいんでしょうけど……真尾がこれから上がるのは、椚ヶ丘中学校のトップとも言える浅野達のステージのゲストだから……『E組のくせに』『場違いだ』以外にも『
「……どういうこと?」
「E組がこの椚ヶ丘中で差別待遇なのはみなさん知ってますよね。でも、このE組制度が適用されるのは3年生になってからなんです。3年生が卒業して次の学年になる移行期間である2年生の2月までは、E組は存在しないからそこまでじゃないんですけど……」
「真尾の場合、E組に来る前から『成績下位であるE組は誰よりも立場が低いためどう扱っても構わない』っていうこの学校の校風を受け入れられなくて反発してて……既にカルマと渚以外の生徒、教師らほぼ全員から異端扱いの上、いじめに発展しかけてたんです」
「え……」
「な……ッ」
「い、いじめなんて……そんなの許せません!」
「それにカルマとナギサ以外のほぼ全員って……」
「あー……E組にももしかしたらいたかもしれねー……でも、こう言っちゃ悪いんだけど、俺ら成績下位組は自分のことで精一杯だったから人に構う余裕なかったんすよ。というより学年に200人近くいるから3年生まで真尾と関わりがなかった奴が多いってのが正しいかも」
「それでも俺達の学年に、校風に従わない異端児って呼ばれてる女の子がいるっていうのは有名だったんですよ。どの子が真尾かは分からなかったけど、噂はみんな知ってたんじゃないかな」
「ウチの中学はE組っていう誰もが見下す対象を作って全員で差別することで、自分はああなりたくないからならないために学力を高め、落とされないために素行良く過ごしましょうって方針の学校だからなー……みんなそれを分かってて入学してるし、むしろ教師が先導してるくらいだから、表立っていじめって形にはならないんすよ」
「そんな、……あ、だからあの子はいつもカルマさんとナギサさんのことしか……」
「そ、リーシャさんに心配かけたくないからって《魔眼》を使ったことも髪を切った経緯も黙ってて、なんでも我慢してきたような子だよ。おにーさん達が自分を守るためにこっちに通わせてるのを理解してて、居場所を見つけられない、何を信じればいいか分からないなんて状況、あの子が言うわけないでしょ」
「3年生のE組行きが決まると明確に上下関係ができます。アミサちゃんはそうなる前から同じような扱いをされて、何が正しいのか、何が当たり前なのかってずっと悩んでたんです」
「俺もそれが当たり前だと思ってたから
「進藤みたいに意識の変わった生徒もいますけど、E組差別がなくなったわけじゃないんです。そんな環境にアミサちゃんを代表で出す以上、負担をかけたくないし悪意に晒したくない……そのための情報規制です」
「なるほどな……全部アミ姫を守るためってことか」
「ありがとうございます、みなさん」
俺はそもそも渚君とばかりつるんでたから他の奴らがどう思ってたかとか考えたことなかったけど、……そうだよね。今でこそ殺せんせーのおかげでE組は勉強でもそれ以外でも頭角を表してるけど、大半が成績不振で集められた奴らだもん。自分のことで精一杯、どころか自分のことでも手に余る奴らが周りを気にする余裕なんてなかったはずだ。
俺は成績は余裕だったから自由にしてたけど……俺も、元担任を信じ続けてたら……盲信して、自分の正義を捨てていたら……あちら側に立ってたのだろうか。……なんて、俺らしくないか。
「……そーいえば、俺ら『本番まで』って条件つけてたっけ。せんせーが当日ならセーフでしょうってやった可能性ない?」
「あー……つまりあれか?『事前に情報を出してヤジが飛ぶ、誰も来ない、なんてことになったら大変ですが、当日なら既に予定を組んでいる者も多い。しかもミスコンの掲示ブースのみの開示に限れば、E組とか関係なく真尾さんに興味を持ってきてくれる客を見込めますからねぇ』とか考えてたってか」
「そう。せんせーって小心者だしさ、ミスコンの小さいブースだったら進藤みたいに目当ての女子でもいなけりゃまともに見ないし影響ないって考えたんじゃない?」
「……まあ、俺が真尾さんの写真と動画を見に行ったことは否定できないからE組担任の思惑通りかもな。
「そうなのか?……、……うお、マジだ!感想いくつか上がってる……はは、渚が女子だって思われてるの多いな」
「女装って注釈あるのに!?」
「逆に思われてんだよ、普段ボーイッシュでミスコンで女らしさを出したって」
「へぇ、仕事してるねー渚
「やめてよカルマ君……最悪だぁ……」
「渚以外だと……神崎の生け花と真尾の歌の投稿への反応の数がすごいな。特に真尾の歌……恋愛ソングだったよな、これ?録音なのに本トに恋してるってのが伝わってくるって評判みたいだぞ」
「恋する相手を知ってても思わずグッとくる表現力だよな。……そう睨むなって、真尾もお前宛に歌ってんだから嫉妬する必要もねぇだろ」
「……俺宛に歌ってるから嫌なんだよ」
前原がスマホでSNSを確認して椚ヶ丘のミスコンに対する評判を見つけて画面を向けてくる……当然E組以外の出場者にもコメントは来てるけど、E組の5人にもかなりいい印象を持たれてるようだ。でも、……正直いろんな意味で複雑だ。
「なんで?」
「どんな歌なの?……あら、『セルリアンブルーの恋』ね」
「キーアも歌ってたことあるよな?」
「うん!でもキーア、この曲嫌いじゃないよ?カルマは嫌なの?」
「だってこれ、本気の恋ではあるけど叶わないって決めつけてるじゃん。全部叶わなくてもいいからこうしたい、独占したいけど口に出すことはできないって歌でしょ」
「うーん、確かに片思いの曲って解釈するのが正しいかもしれないわ」
エリィさんの言う通り、アミーシャがミスコンのアピール用にするからとE組の前で披露した『セルリアンブルーの恋』。伸びやかに切なく歌い上げていたラブソングで俺もアミーシャが歌う曲の中でも結構好きな曲だけど……もしこれが俺宛だとしたら。『叶うことなどない』とか『言葉にできない想い』とか『届くことなどない』とか、……失恋とまではいかないけど片想いというか……どう考えても自分の愛は叶わないものと決めつけて押し殺しているような歌でしょ、これ。だから、あまりいい気はしない。
自己犠牲して、自己評価が低くて、自分は釣り合わないってどんどん自分の価値を下げてしまうあの子の歌って言われてかなりしっくりきてしまうのが、余計に。
「そうか?……でも考えようによっては口に出せないくらい大きい愛を、想いを常に抱えてるって解釈でもいいんじゃないか?」
……だから、なにか考えてる様子だった磯貝がなんて事ないような顔でポツリと言ったそれは、何を言ってるのかわからなかった。意味を理解してもすぐピンと来なくて、そちらに視線をやって続く言葉を待つ。
「真尾ってさ、バカにするつもりはないけど……自分の思ってることにも上手く理解が追いついてないこと多いだろ。今、自分の感情に名前をつけて向き合う練習をしてるようなものじゃないか?」
「……まあ、そうだね」
「てことは、理解してない感情もあれば、わかっていても表現の仕方がわからない気持ちもあるわけだ。お前が居ないところでも結構お前に対して思ってることを話してくれてて、聞いてる限り本人も自覚してないけどお前相当愛されてるぞ」
「あー、前になんでこれを本人に伝えねぇの?って言ったら『なんで言うの?』って返されたもんな……あの感じ、言わなくても伝わるとかじゃなくて言っちゃダメだって考えてそうだったよ。……本人以外相手に惚気けることを恥ずかしいとも思って無さそうだったけどよ」
「…………」
「なんにしても……あの選曲でどんな解釈を意図したのかなんて、アミサちゃんの真意はアミサちゃんにしか分からないよ。だから聞いてるこっちがどう感じるかはある程度自由なんじゃないかな」
……曲の解釈は聞く側、……俺の自由、か。だったらさ、コイツらは俺を励まそうとしてくれてんのに、じゃあ俺がナイーブな曲だって感じてたらダメじゃんとか、……言うのは野暮なんだろうな。
「ま、そんな表現力抜群な真尾の生歌をこれから聞けるわけだからな。ミスコンを見た奴はこれから詰めかけてくるんじゃないか?」
「……変な虫が付くのは勘弁だなぁ……」
進藤の言う通り、見て分かるパフォーマンスってこともあってアミーシャと渚君に注目が集まっているらしい。俺個人としてはかなり気に食わないけど、
──────ワッ!
「浅野せんぱーい!」
「やるな五英傑ーッ!」
……なんて話していると、いつの間にか浅野君に合流して演奏していた五英傑でのバンド演奏が終わる頃だった。ステージでは五英傑が声援を受けながらドラムの位置を変え、中心を囲むように立ち位置のセッティングが進められている……、もうすぐ、彼女の出番だ。
『皆、察してるとは思うが……ここでもう1人ステージに呼ぼうと思う。プログラムに載せてなかった特別ゲストなんだが……今聞いた情報によると、何やらミスコンのブースで彼女の出演に関する告知があったようだ。僕は、僕らは全く関与していないことを先に宣言しておく』
浅野君の前口上で客席がザワついている。進藤みたくミスコンブース経由できてる奴らはこの特別ゲストがアミーシャだと知ってるわけだけど、それ以外の奴らからしたら五英傑のステージのつもりで来てるわけだから困惑でしかないだろう。それでも中学部のトップである浅野君が招致したゲストだからと期待が高まっているようにも感じる……まさかE組生だとまでは予想をつける客はいないようだ。
『改めて告知するが、このイベントカフェのステージには著名人も来てくれる関係で撮影禁止にしてるものもあるけど、僕等のステージはパンフレット通り許可してるからSNS掲載もオーケーだ。存分に宣伝してくれ……彼女の演目も、もちろん許可する……が。……彼女を呼んだのは僕のわがままだ。だから演目中はどんな文句も僕が許さない。何か言いたいことがあるなら終わった後に、僕に直接言いに来ればいい』
それだけ言ってマイクを置いた浅野君に、客席はザワついてる。無理もない、ここまで客を盛り上げてきたのに、ブーイング前提の演者をステージにあげると言ってるんだから。浅野君の意図を読み取ろうとしているんだろう。
浅野君は先手を打って客席を牽制したつもりだろうけど……アミーシャは、大丈夫だろうか。
「カルマ君」
「!」
「僕らが信じてあげなきゃ、ね?」
「……うん」
静かに近寄ってきていた渚君に触れられて、ふ、と緊張が抜けた。俺は無意識に悪い方向へばかり考え込んでいたのかもしれない……あの子が頑張ると言った時点で、こうなることも予想していろいろ動いたんだ。怖がりで消極的なあの子が自分で立つと決めた覚悟を俺が、俺らが信じてやらなくて誰が信じるんだ。
静かにステージの照明が消える。ドラムの荒木がスティックでリズムをとって浅野君のギターを中心に曲が始まって、……え、まだあの子がステージに上がってるように見えないのに?
なのに、マイクを通して大きく息を吸い込む音がした。
ふわ、とステージの中央……そこに、銀色に光る蝶が見えた気がした。それに気付いて瞬きをした直後、いつの間にかそこには、アミーシャが立っていた。もしかして、《月光蝶》の応用……?五英傑が動揺していないところを見ると、アイツらには見えるようにして客席側には見えないようにしてたってことか。
突然現れた彼女に客席がどよめく中に「なんであいつが」「E組を呼んだってこと?」なんて否定的な声が聞こえる。俺らが事前に手を打っていたこと、浅野君の忠告があったこともあってか大声で罵るやつはいない。だけど、
「わあぁッ!真尾せんぱーいッ!!」
「うわ、ラッキーすぎる……!事前予告なく先輩のステージ見れるなんて……!」
「いや、ミスコンの真尾先輩のPOPにだけはこのイベントのことが予告されてたらしいぞ!なんでそんな限られたとこにだけ……」
「先輩、歌上手い……E組なのに浅野先輩が呼んだってことは相当だってことだもんね……?」
「この後恥をさらしてやるためかもよ!」
「まさかぁ、売上ランキングかかってるのに自分のイベント犠牲にする?」
「わざと失敗させてって?浅野の戦略、E組を落とすためなのか……?」
「浅野君のことだから何か考えがあるんだよ、じゃなきゃあんな異端児なんてこのステージに呼ばないでしょ」
「せっかく五英傑のステージだから来たけど帰ろっかなぁ……」
「いや、ミスコンのブース見たか?あっちにも宣伝するくらいだ、お手並み拝見と行こうぜ!」
下級生だろう、男女何人かのグループがステージに向かってアミーシャの名前を呼び、目を向けている奴等がいる。近くにいれば聞こえる声で、なんでE組を呼んだんだろうって話し合う奴等もいる。
……期待と批判、五分五分……いや、批判の方がまだ上って感じかな。それでも、良くも悪くも期待が向けられてるのは感じられる。
「……なんか、まるで殺せんせーに向けられた歌みたいだね」
「はは、分かる気がする。俺らの境遇全部ぶっ壊して、新しい刃に作り替えて、立ち向かえってな」
思わず、というように渚君と磯貝が口にした、歌詞に注目する言葉に意識を向ける。彼らの言う通り、アミーシャが選んだこの曲は直接的では無いけど殺せんせーを思い起こす。
E組の大半が、E組に来たことでもう這い上がれない、自分は落ちこぼれだから何も言う権利もなく、全て閉ざされたって、絶望してただろう。殺せんせーは、俺やアミーシャのように、何も信じられなくなって自分を含めて全て壊してしまえばいいって考えだって、全て受け止めた上でそれを戦う力に変えてくれた。
出会った頃から、この学園で公然とされた『
訴えかけるような歌声が、マイクを通してではあるけど会場中に響き渡る。きっと、撮影してる律を通してE組の飲食店にもこの歌声は届いてるんだろう……律の事だし、音量調整とかも音割れハウリングなくバッチリなんだろう。映像を通してでも、きっと歌に重ねられるアミーシャやE組生の思いに、感情移入してしまうほどの迫力だと想像できる。
それを最後まで力強く歌いきった彼女と、その歌を殺さず各々の個性を尊重し合いながら演奏した五英傑は、ステージの上で荒くなった息を整えている。
ふいに、会場のどこかから拍手が響いた。それを皮切りに、目の前のパフォーマンスに圧倒されて静まり返っていた会場が、息を吹き返したと言わんばかりに割れるような拍手の音が鳴り響いた。普通なら反応があってホッとする場面だろうに、拍手の大きさに逆にビビって逃げようと後ずさってるのがなんとも彼女らしい。
『1曲目、これは【閃光の行方】だったね。ミスコンのアピール動画ではかなり儚い歌を歌っていたから予想外の選曲で僕らも驚いたよ』
『……私の所属してる3年E組では、たくさん挑戦をしてるの。きっと、私がここに立ったのを見て思うところがある人もいると、思います。でも……期待してくれる人がいるから、励まして、道を示してくれる人がいるから。その人に向けて、歌いたくて……』
『素敵な楽曲だったよ。……さて、これで僕がE組とはいえ彼女を招待した理由がわかっただろう。ここまで
「……っ、さすがは浅野君だ!」
「E組なんかでも目を配ろうとするなんて!」
「真尾先輩、可愛いしキレイです〜!!」
「あの生徒会長?人心掌握っていうか、カリスマ性っていうか……人を意識を動かす力っていうのかしら。すごいわね〜……何でも自分の思い通りにするためなら使うって匂いがするわ」
「彼は人の善性を照らしながら一緒に進もうとするエステルとも、立ちはだかる壁を乗り越えるために足掻くロイドとも、また違ったリーダーシップをとる人なんだろうね。僕ら側で例えるなら……
「ちょっと分かりますね……私が黒月と契約してた時も、足元をすくわれないように気を張ってましたから」
アミーシャの言葉を上手いこと自分の株を上げるのに使いやがった感があってイラッする。
「うわ、マジだ!反対で気になったから来てみれば……」
「お手並み拝見と行きますか」
1曲目が終わったところで体育館の入口が開放されたんだろう……浅野クン曰く、こっちのステージの開始に伴って閉じた反対側にいた奴らも来たね。なるほど、出入りのたびに500円、途中入場オーケーだからああやって興味をもった奴等が何度も出入りして搾取されてる、と。なんとも頭のいいシステムだね。
アミーシャから言葉を引き出しつつ少しの間続けられるステージ上での会話も、体育館の出入り時間を稼ぐためなんだろうなー……
『……さて、激しい曲の後だけど2曲目にいけるかい?』
『う、うん。……えっと、次は、私からいろんな人たちへ感謝の気持ちを歌いたいなって……』
『ほぼアカペラに近いから僕以外の4人は3曲目に向けて準備をさせてもらうよ。……じゃあ、……いつでもどうぞ』
浅野君以外の4人が舞台袖に下がって、アミーシャと浅野君だけがステージに残る。数回アカペラの音程確認のためだろう、浅野君がギターで同じ音を鳴らしたあと、アミーシャがステージから客席を見て……俺らの方へ視線を向けて手を伸ばした。
さっきの曲とは真逆の、しかもミスコンの曲とも違った穏やかで明るい曲調……浅野君のギターもほとんど鳴らない。要所要所でアクセントで弾くくらいだ。
体育館の中に彼女が楽しそうで軽やかな歌声が響く。言葉通り、感謝を伝える歌……彼女の仕草を素直に受け取るなら、俺らE組に、リーシャさん達に向けた、とてもあたたかい気持ちになる曲だ。
まるで、アミーシャがE組に来てから経験して、学んで、感じてきたことをそのまま歌に乗せているかのような歌詞。語りかけるようなそれは、決して大きい声じゃないのに心にスっと入ってくるような優しさがあった。
みんな違って、みんなにそれぞれの想いがあって、それぞれの正義があって、みんなが尊重し合えるE組……そこで過ごしてきて、俺もだけど見てもらえること……見捨てないで受け止めてもらえることの安心感を知った。アミーシャでいえば、さっき磯貝達と話してたことがまさにそう。空っぽで分からないことだらけだった自分と向き合うために、たくさんの愛情を詰め込まれてるんだ。感謝の歌としてピッタリだろう。
歌声の余韻が消えていき、また体育館には大きな拍手が響いた。少し照れくさそうに笑う彼女を横目に、俺ら4人は視線を合わせて頷く。
「じゃ、E組の歌姫にサプライズを仕掛けに行きますかね!」
「進藤、俺らの代わりにこの場所譲るな。ちょっと行ってくるから」
「は?おい、お前らどこに……」
「楽屋!というか待機場所?そこに行くことになってんだわ!」
「行ってらっしゃい。頑張ったあの子を1番に迎えてあげてくださいね」
「1番近い特等席なんですから、アミーシャを泣かせるくらいはさせてください」
「ハードルは上げないでくださいよ……」
「僕らは、あの子が敵陣に1人じゃないってことを行動で見せることにしたんだ。アミサちゃんが僕らに対して『ありがとう』って言うなら、僕らは『一緒に戦う』って応えるのが筋でしょ?」
「ま、見ててよ。E組の戦い方ってやつをさ」
またステージ上で浅野君と軽く話してる彼女は、緊張を紛らわすために受け答えに必死になってるだろうから、多分客席を見る余裕がない。進藤をリーシャさん達の中へ残し、堂々と人の間を通り抜け、さっき茅野ちゃんが教えられていた楽屋へと向かえば……そこに待っていたのは先に退出していた浅野を除いた五英傑の4人。
……もうすぐ、3曲目が始まる。
「遅かったじゃないか……2曲目の途中には来る予定じゃなかったかい?」
「なんで時間だってのに悠々と歌を聴いてるんだお前らは!!」
「いやぁ……つい聞いちまって。悪ぃな!」
「軽いんだよお前……」
「ごめんごめん、でも明らかに俺達宛に歌ってますってされたら動くわけにいかないかなって。ここに来てるのがバレるのもだけど、聞いてないって思われるのもな」
「私からしたら来ないかと思ったよ〜……最悪私だけだったらどうしようかと思っちゃった」
「それは無いから安心して」
「よし、浅野には合図を出したからいつでもいいぞ!」
「じゃ、あとは手筈通りに……頼んだよ、4人とも」
「「「任せて!」」」
++++++++++++++++++++
回帰前は【way of life】と【セルリアンブルーの恋】でオリ主自身の気持ちとE組への思いをリンクさせた選曲をしていました。あと、小説のタイトルである『私の進む道』と関連付けたかったのもあります。
が、今回は死神事件を経てオリ主が『寂しい』『失いたくない』など様々な感情を自覚できるようになったこと、抱えている秘密を少し手放したことで周りを見る余裕ができていること、直接家族が客席で歌を聴いていること、などからみんなと縁を繋ぐきっかけになった『殺せんせー』と『E組』、『家族』への感謝を伝えたいという思いから【閃光の行方】と【いつも思うこと】の2曲になりました。
ミスコンに出たことで、前は途中からの上、律越しにしかオリ主のパフォーマンスを見れなかった進藤君が、リアタイの上生歌を聞けるという状況になりました。気付いたら登場していたよ進藤君(笑)
まだA組のステージはあと1曲続きます。
歌詞をお借りしました(ファルコム音楽フリー宣言の規約上、こちらにコピーライト表記します)⬇
「閃光の行方 / 英雄伝説 閃の軌跡II オリジナルサウンドトラック / Copyright © Nihon Falcom Corporation」
「いつも思うこと / イースvs.空の軌跡 オルタナティブ・サーガ オリジナルサウンドトラック/ Copyright © Nihon Falcom Corporation」