暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA140000ありがとうございます!
お気に入りやしおりをはさんでもらえて……
何回でも読みたくなるお話作りを今後も頑張ります!

今回は2日目が始まったところからですが、なにやらただ、ループ前のように2日目を過ごすだけじゃないみたいで……動き出す人がいるみたいですよ……?
今回も楽しんでいただけたら嬉しいです!


では、よろしくお願いします!



123話 学園祭の時間~2日目・前編'~

 

 ついに今日は椚ヶ丘学園祭2日目。いつの間にか『今年何故か爆発力のあるE組が、また何かやらかしてくれるんじゃないか』っていう、今回ばかりは自分たちじゃない外部が勝手に盛り上がったことで発生したE組と本校舎の勝負も、今日が最終日。校舎の立地、E組の差別待遇と貼られたレッテル、予算、宣伝方法……とにかくたくさんの不利な条件が重なった中、頼りになる先生のアドバイスを参考にしつつ私たちがそれぞれこれまでに磨いてきた勉強する以外の刃を活かし、作り上げた1つのお店。物珍しさ以外でもミスコンやA組のイベントで興味を持ってもらう事に成功して、結構お客さんは来てくれた方だと思う。

 ただ、1日目の売り上げは正直そこそこって感じで大繁盛とはとても言えない……椚ヶ丘の学園祭は中学部だけじゃなく高等部も含めての表彰だから、全体では埋もれてしまってるだろう。三村くんが本校舎の生徒に紛れて撮ってきてくれた売り上げ速報の写真には、断トツでトップを独走する中学部3─Aと追いかける高等部3─Aを除いて、他のクラスがほとんど横並びになっている状態で映っていたから間違いない。起死回生の策があるわけでもない私たちは、昨日以上のお客さんは呼びこめないだろうし、トップ争いでは戦えないだろう……そう、重い足取りで校舎へ向かったはずだった。

 

「そっちのテーブルどんぐりつけ麺2つ運んでくれ!」

 

「りょーかいっ!お待たせしました前から失礼しまーすっ!」

 

「プール、聞こえる?追加注文入ったから釣ってきて欲しいんだけど!」

 

『了解!悪いけど倉橋はプール固定で詰めてもらうわ、流石に生き物系は倉橋がいないと効率的に捕まえられない!』

 

「そっち応援行ける?!」

 

「おっけ、行ってきま〜すっ!」

 

「あ、2班に休憩今のうちに取っておくよう伝えて!」

 

「あけびの味噌炒めと川魚の燻製でしたよね、お待たせいたしました!」

 

「3名様ご案内できるー?空いてるなら通しちゃうけど!」

 

「ここ片付ければいけます!通してもらって構いませんっ」

 

 まさか、開店前からものすごい大行列で、こんなにお客さんたちが途切れることなく来てくれるだなんて思いもしなかった。E組29人総出でお客さんの対応や調理、調達、接客に当たることになるのは、朝一番の私たちからすれば予想外もいいところだ。

 この状況になったのは、1日目にみんなでたくさん宣伝して接客を頑張ったこともあるけど、1番大きな理由は来店するお客さんたちが必ずって言っていいほど見せてくれる1つのブログ。

 

「あのさ、ユウジのサイトを見てきたんだけど……」

 

「ね、このブログで紹介してるのってこの店だよね?」

 

 昨日、微妙な別れ方をしてしまった、ゆーじくん。私たちは彼について『有名人を親にもつお金持ちな男の子』くらいのことしか知らなかったんだけど、実は日本全国各地が自慢する大衆食堂から、テレビなどで取り上げられたけどなかなか自分では足を運べない敷居の高い店など、和洋中なんでもありに紹介する、グルメブロガーだったらしい。しかも最も勢いがあって、かなり有名な、だ。

 今ページを開いて見ているだけでもアクセスカウンターがどんどん回っていく……つまり現在進行形でたくさんの人たちに読まれていることを示すブログには、彼の前向きな思いが綴られていた。

 

 

 

【椚ヶ丘の学園祭で、メチャ美味い出店と出会いました。詳しいメニューは次の記事で書くけど、……人生観が変わりました。不利な立地を逆手に取った、自給自足の食材の数々!!『欠点や弱点を武器に変える』……店で働く友達がそう言ってたのを聞いて、偉大な親の陰に隠れて甘やかされ、どこかそれを後ろめたく思ってた自分が……なんか、アホらしくなりました。友達が言うには、『人はお互いに影響を与えあって生きている存在で、それが縁を結ぶってこと』って……そうだよな。おかげで、大切なことを教えてくれた友達にまた会えたんだって思ってます。甘やかされた小遣いだって自分の武器!皆の役に立ちゃいいので、開き直ってオススメの情報を発信します!まずは人生観の変わる山の上の店……味わえるのは、あと1日だけ!】

 

 

 

 そこには、あの時に注文してくれた料理の写真と一緒に細かい感想や私たちが伝えた料理のこだわりなんてものも掲載されていて、いつの間に撮ったのか食材調達班の様子なんかも紹介されている。そして渚くんや私が嘘偽りなく向き合った時の言葉が、ゆーじくんに何か伝えられたのかなって……そう思える言葉が一緒に並んでいた。

 ゆーじくんがとにかく魅力的にお店を紹介してくれてるのもあるけど、やっぱりこの【あと1日】って限定された言葉……つまり学園祭開催期間がもう残り今日しかないってこともあって、このブログを見た人たちが『絶賛する料理を食べたい』って集まってくれてるんだ。……すごい、これが、ゆーじくんが、ゆーじくんにしかない武器を使った結果生み出されたもの、なんだ。そして、彼はお店のこと以外にもE組に来る理由を用意してくれていた。

 

「あ!ねね、あなたよね?彼が絶賛してる料理もだけど、ステージ歌唱した子にも会えるって聞いて楽しみにしてたの!」

 

「SNSの動画も見たよ!衣装着てるし君がそうだよね!?」

 

「え、えと、……は、恥ずかしながら……っその、他にもいるので……みんなにも、会ってってくださいっ」

 

「え〜、何この子!ほっとけない妹感あってかわいい〜っ!」

 

「ね、他の子には無い感じで代表に選ばれてるのもわかるわ」

 

「食った後投票も行ってくるな!」

 

「あ、あわわわ……っ」

 

「すみませんお客さん!ちょっとこの子と間隔開けてあげてくださーい!」

 

「かわいがりたい気持ちは分かるんですが、うちの子見ての通り怖がりで近付きすぎるとビビっちゃうので、少しゆとりを作ってもらえるとありがたいでーす」

 

「めっちゃ小動物に対する対応だ……下手な扱いすると死んじゃいそうってことね、把握」

 

「ミスコン衣装のコンセプトは天使な暗殺者だって書いてあったっけ……分かるわ〜、この子になら絶対油断する自信しかない。気付いた時にはもう死んでるやつ……」

 

「ステージで歌ってる動画見たんだけど、ギャップがすごいな」

 

 お客さんが来てくれた理由がゆーじくんのブログ、ってことを確認してすぐ開店準備のために急いじゃったから、私たちはまだまともに内容を見れてないんだけど、開店した直後からやたらと声をかけられる。その人たちの話を聞く限り、どうやらミスコンについてと昨日のステージの動画をブログ内でも引用して紹介してくれていたらしくて……出演者みんなが話しかけられてるとはいえ、どちらにも出ている私が特に興味をもたれてる、みたいだった。

 ミスコンは私たちからしたらE組のお店に興味をもってもらう手段であり、昨日のステージも『A組のイベントカフェ』ってことでそっちの宣伝にもなってるから、E組に誘導できたらいいな、位のメインの宣伝方法じゃないつもりだった。だけどゆーじくんっていう有名人による……竹林くん曰く、その……『推し』?を応援する宣伝ってこともあって、爆発的に出演者目当てに来てくれてるお客さんがいるみたい。これは嬉しい誤算、でいいのかな。

 

 

 

 ただ……人が集まれば、全員が全員肯定的じゃないのは当たり前のことで。

 

 

 

「動画ではかっこいいというか気の強そうなイメージだったのに、実物はなんか気弱っぽい子じゃない?」

 

「えー嘘ついてたってこと?印象付けるためにわざわざ作ったとか」

 

「ユウジの紹介する店だから来たのにちょっと目的違うやついない?」

 

「アイドルのコラボカフェに来たわけじゃないのになんでこんなに並ばなきゃなんだよ……」

 

「どこが暗殺者なんだか。あんなのビクビクして震えてるただのチビじゃんw」

 

「確かにw」

 

「…………」

 

「……アミサ、気にしちゃダメよ。応援してくれてる人の方が多いんだから」

 

 ……悪い噂話とか、悪口って、自分のことだろうな……ってものほど、ついたくさん拾っちゃうよね。肯定的に応援してくれる人が多いから紛れてるんだけど、お客さんの言ってることはその通りだと思うから反論できなくて……正直、2年生までの差別扱いを、E組が本校舎と戦えるようになるまでの見下す対象を嘲笑うそれを彷彿とさせる言葉は、結構重たく痛いもので、……怖い。昨日、修学旅行で私とカエデちゃんと有希子ちゃんを拉致した高校生のお兄さんたちがきていたように、たくさんの人が来てくれるってことから、こういう個人を攻撃しようとしてくる人だっているのは想定内だったけど。

 それでもE組のみんなが心配そうに気遣ってくれるから、だいじょぶだっていえる。私個人のことは好きになれなくても、お客さんはお店を目的に来てくれてることには変わりないんだから……頑張れる。そんな声を聞かないように意識しながら顔を上げた時、ふと、視界の隅に映ったのは。

 

「あーお客さん、油断しない方がいいですよ」

 

「この子を見くびってるといいことないですよ〜」

 

「なんでだよwこんなビビりなチビに何ができるって、」

 

「あ」

 

「あって何だよ……って、へ?」

 

「うぉっ!?……やば、すごい身体能力……」

 

 並んでる列に明らかに割り込んだだろう人たちと、それを嫌そうに見る元々並んでいたんだろうお客さんが見えて、反射的に体が動いていた。

 私の代わりに言い返してくれているクラスメイトたちの横を抜け、受付の机に置いていたメニュー表を2つ手に取る。そのまま備品を置いている木箱に足をかけて踏み台がわりに跳び上がり、列整備のために並べたカラーコーン等を足場に問題のお客さんたちの方へとフリーランニングを使ってすぐさま移動する。

 

「──────あの、お客さま」

 

「うわぁッ!?」

 

「ど、どこから……?!」

 

 割り込みをした人たちの背後に降り立って、遠慮なくメニュー表をその人たちの体に軽く押し当てる。割り込んだ人たち、と言うよりその周辺の人たちみんなが結構大袈裟なくらいびっくりした声を上げて驚いたように私の近くから後ずさって……あ、何も考えてなかったから無意識に気配消してたかも。姿を消したつもりは無いから私の動きは見えたはずなんだけど、ここでのトラブルに目がいってて見てなかったんだろうな。

 当事者以外からも一気に注目が集まって言葉が引っ込んでしまいそうだったけど……見つけてしまったからにはちゃんと、注意しなくちゃいけない。一度軽く目を閉じて気持ちを落ち着かせてから……改めてお客さんと向き直る。

 

「横入りしちゃ、ダメです。みなさん、ちゃんと並んでくれてますから。……悪い子は、アミサが見逃しません」

 

「は、はい……」

 

「……でも、たくさん並んでて前に行きたい気持ちは分かります、し……早く行きたいって思ってくれて、嬉しいです。みんなにも何かできないか相談してきます、から……もうちょっと並んでてくれます、か?」

 

「わ、わかりました……」

 

「あの、俺ら、ちゃんと並び直すので抜けます。……すみません」

 

「い、いえっ、気にしないでください……店員さん、ありがとね」

 

「……いえ。その、仲直り……よかった。受け入れてくれて、ありがと、ございます。では、お席が空くまでもうしばらくお待ちください」

 

 よかった、分かってもらえた……やっぱりこういう注意するってことは苦手だけど、私なりには伝えられたはず。このやり取りは近くの人たちも見てくれてるから、同じようなことはもう起こらないといいな。

 ホントは周りへの注意喚起もかねて人にはなんの影響もないし安全だから対先生武器を向けようかと思ったんだけど、一般の人たちに防衛省のロゴが入った武器を見せるのも、万が一でも当てるのもまずいかと思っての代わりの措置だ。だからって『衣装の小道具です』って、レンお姉ちゃんの鎌をここで持ち出すわけにいかないしね……アレ、ちゃんと切れる本物だから。

 

「おかえり!動いてくれてありがとね、助かったわ!」

 

「それに上手に場をおさめてたと思う。えらいわよ〜っ」

 

「えへへ……」

 

「ただね、アンタは今ドレス!!あんなことしたら中が見えるんだから大掛かりな動きはしないのッ!!」

 

「ひゃ、ひゃいっ」

 

「あははっ、これはいつも通りだね〜」

 

 行きは大きな争いに発展する前に急ぎたかったから文字通り跳んで向かったけど、帰りはむしろ安全に気をつけなくちゃだから歩いて受付まで戻る。列の中程でのやり取りだったから受付近くからは見えてないと思ってたのに、戻る道中に「かっこよかったよ」とか「あんなに跳べるなんて」とか「やるなー!」とか……あ、あれ?思ってたよりしっかり見られてた。

 そして私を迎えてくれた受付担当のメグちゃんたちに褒めてもらいつつ、……つい、いつもの感覚で軽率に動きすぎたことを怒られつつ。私は自分に割り当てられている受付でのお仕事を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なあ。お前あの子がこっちに来るの、気付いたか?」

 

「まったく。……前言撤回、あの子が暗殺者っていうコンセプトなの、すげぇ納得したわ。こっちを見た瞬間の殺気っての?あの視線ってか、ヤバかった……死んだかと思った」

 

「ユウジが推してるの、なんか分かった気がする……人柄というか、言動というか、一挙手一投足につい視線がいっちゃう子なんだ」

 

「なんていうか……受付の方にいた時とここで話してた時の雰囲気がガラッと変わってすごかったね」

 

「かっこいい……」

 

「……どうせなら生歌聞きたかったね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……うーん、みなさんに相談してみようかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだお昼前だというのにお客さんが全然途切れなくて、メインのどんぐりつけ麺以外のサイドメニューのつもりだったものまでどんどん売れていく。最初こそゆーじくんのブログ経由で来てくれた学園関係者以外の一般の人たちが多かったけど、朝一番に【常設の飲食店ばかり載せていたブログが開催期間残り1日という超限定的な学園祭の店を紹介した】ってことで話題性を見出してくれたテレビ局の取材を見た椚ヶ丘関係者も『テレビに取り上げられるほどなんて、E組だから、とはもう言ってられない』と来店してくれた。

 そのうち、ゆかりがあった人たち……進藤くんの率いる球技大会から和解した野球部が揃って来てくれて。メグちゃんと何やら確執のあったらしい女の子や、前原くんの元カノであの雨の日にE組で復讐する相手となった土屋さん。本校舎だった頃に同じクラスだった……らしい、よく私や渚くんに突っかかってきてたD組の2人に、イリーナ先生の話術に魅せられた高校生たち、その他にもどこかで見たことあるような人たちが……ホントにたくさん、来て、来て、いらっしゃって!

 

「それで相談って?」

 

「……あの、ね。さっき割り込みがあったでしょ?ここまで大盛況だと、ああやって待ってて待ちきれないってお客さんたちがかなりいることになる、よね……今いる人たちもだけど、その人たちに対しても、何かできないかな……って」

 

「確かにテーマパークと一緒だよな。楽しみにして並んでても、待ちが長いってのは辛いもんだ。でも飲食店で1番いい方法は回転率を上げることだが……」

 

「でも飲食スペースをこれ以上増やすのは無理ですよ……みなさん『どんぐりつけ麺』を目的に来てくださる方が中心ですから食べ歩きはできませんし。つまり机は必須ですが、そもそももうE組にある机を総動員してますから……」

 

「じゃあ、待つのは仕方ないとして……せっかく来てくれたから食べる以外の付加価値、とか?1日目にも来てくれた人にも、リピーターだからこそ違いがあるとか……」

 

「今から特典を付けるってなるのはさすがに用意する余裕も余力もないし、物にしちゃうと不公平って逆に炎上しそうじゃないかな?」

 

「なら今、ここでしか味わえない体験……とかかなぁ」

 

「…………」

 

 さすがに29人全員が今日が終わるまでずっとシフトに入りっぱなし、というのはみんなの体力が絶対もたないから、結構短いスパンで休憩や意見交換、お客さんの様子を見に行くなんてことを交代で回している。だから、私の抜けられるタイミングでさっきの人たちに話したことを、一緒にシフトから外れている4班の渚くんたちに話を持ちかけてみていた。

 共感はしてもらえるけど、やっぱりこのタイミングで何かしようっていうのは難しいよね……このために練習をしてきたものなんてないし、下手にやったことの無いものに手を出したら逆に失礼になってしまうかもしれないし。みんなも一緒に悩んでくれてるけど、どうもできないからこのまま現状維持するしかない、仕方ないことだから……それで、諦めようとした時だった。

 

「ええと……無償で満足いただける、ここに来たからこそ味わえるもので……待っている方にも目や耳で楽しんでいただけるものってことですよね。昨日の生徒会長さんもステージに上がる有名人は個人的なツテを使って無償で招待したと言ってましたし……食品を扱う申請は事前に必要だけど、別にあるものを使うだけなら必要ない、……なら、問題ないはず」

 

「へ……リーシャさん?」

 

「お姉ちゃん?」

 

「……私たちがここに来る時にお客さんたちが話してたことを聞いて、考えてたことがあるんです」

 

 今日も、昨日に引き続き学園祭に遊びに来てくれていたお姉ちゃんたちは本来お客さんって立場だけど、今日のE組のお店閉店後に限っては戦闘指南の講師にもなる。だからE組校舎内への立ち入りも問題ないってことで、基本休憩組が使う教室や教員室に詰めていて、意見交換に大人としての目線で参加してくれてたりする。私の提案というか相談を聴きながらロイドお兄ちゃんたちの方を見て何か考えてる様子だったリーシャお姉ちゃんが、改めて私たちの方へ向き直る。

 

「カラスマさん、飲食スペース横の空いたところって使って構いませんか?」

 

「あ、ああ。E組の敷地はE組の店で使用すると申請してあるからな。山を含め全てE組の敷地だから構わないが……」

 

「場所も確保できるなら……律さん、E組のホームページ等で宣伝してください。『椚ヶ丘学園祭、中学部3年E組の店にて、午後から出張版アルカンシェル公演を行います』、と」

 

『え……?』

 

「「「!?」」」

 

 リーシャお姉ちゃんの口から出たそれは、まさかの提案だった。その場で話を聞いていた烏間先生も、4班のみんなも想定外のソレにお姉ちゃんの方へバッと顔を向けたのに、すぐそばにいるロイドお兄ちゃんたちは何故か納得したような表情をして頷いている。……これは、何をしようとしてるのか、お兄ちゃんたちは分かってるってことなのかな。

 

「出張版アルカンシェルって……マジで言ってます?」

 

「ええ。確かイベント系は600円までという規定はありましたよね?でもこれはアミーシャの家族として、E組に対して好意で行うものですからお金を取るつもりはありません」

 

「確かに……A組も無償で飲食できるようにしてたくらいですから、逆パターンでもルール上問題ないですし、できなくはないです」

 

「でも、本トにいいんですか?」

 

「それにこんな突発的になんて、大丈夫なんでしょうか……」

 

「私がやりたいのはアルカンシェルで練習公演と称して行った、いわゆるなんでもありな舞台なのでイレギュラーに対応しやすいんです。それに……その時の出演者もここに居ますし」

 

「てことは……やっぱり演目はアレね?」

 

「はい。【幾千万の夜を超えて】……これなら最小限のリハーサルで実現できるはず。協力お願いできますか、エステルさん、ヨシュアさん、レンさん、キーアちゃん」

 

「モチのロンよ!前の通りあたしはバックダンサー、ヨシュアはハーモニカ、レンとキーアちゃんはコーラスでいいわよね?」

 

「ええ、構わないわ」

 

「はーい!」

 

「了解」

 

「俺達は作戦の後方支援を担当してたからエステル達とは違って舞台は上がれないな……特務支援課は会場警備と誘導を担当するよ」

 

「リーシャ・マオはクロスベルまで行かないと会えないアーティストだからな……ホームページと今いる客にのみ告知するとしても今以上に人が増えてもおかしくないぜ」

 

「ええ、サクッと配置を決めてしまいましょう」

 

 前の通りってエステルお姉ちゃんが言ってるってことは、私がクロスベルから離れていたこの2年近くの間に、アルカンシェルの団員じゃないエステルお姉ちゃんたちが一緒にステージに上がって何かしらの公演をしたってこと。イリアお姉さんやシュリさんとも一緒に踊ったのかな、コーラスや楽器が出てくるってことは全員が踊ったわけじゃないのかな、あのステージに立ってたんだ……いいな、なによりもうらやましい。

 リーシャお姉ちゃんの思いつきのような提案に、舞台に出演していた側らしいエステルお姉ちゃん、レンお姉ちゃん、キーアちゃんとヨシュアお兄ちゃんが快諾している。お姉ちゃんたちの中では既にプランがあるらしくて、聞いてる限り1回演ってる動きを思い出すためにこれから軽くリハーサルをしたら、今日の午後から数回公演してくれようとしてるみたい。私たちが話に入れない間にもサクサクとみなさんの役割が決まっていく。

 

「音源はどうしますか?ヨシュアさんのハーモニカだけじゃ流石に薄いと思うんですが……」

 

「そうだね……あの時もピアノ、バイオリン、ギター、フルート、リュート、ドラム……いろんな楽器を弾けるメンバーがそれぞれに持ち寄ってたから、僕だけじゃ踊りにくいと思う。でもここにはそんな楽器はないだろうから、生演奏しつつ音源は別で流した方がいいんじゃないかな」

 

「確かリツさんが昨日のステージの様子をここに中継してたんですよね。データを送りますから同じ要領で彼女に頼むのがいいと思います。……リツさん、いかがですか?」

 

『か、可能です!お任せください!』

 

「あとはここにある楽器で即興であの曲を演奏できる人がいれば、くらいか……ナギサ、そもそもここって楽器はあんのか?」

 

「えっ!?えぇっと、キーボードと個人持ちのリコーダーくらいなら……隔離校舎とはいえ一応音楽の授業もあるので……」

 

「昨日のバンドに出ていた5人もさすがにあの曲しか練習してないでしょうし……リコーダーであの曲は音が足りませんし、あの難易度を即興では……」

 

 ……楽器。ヨシュアお兄ちゃんが上げてるような楽器を今から用意するのは、本校舎から借りたら可能かもしれないけど、それを扱える奏者がいない。元軽音部の千葉くんや、カルマと渚くん、カエデちゃんと磯貝くんと陽斗くんが楽器は練習してたけど、今から新曲を客前で披露するっていうのは無理があるだろう。

 一応渚くんが言う通り、E組でも音楽の授業をするために必要最低限の設備として生徒個人持ちのリコーダーと、歌唱指導で使う持ち運びできるキーボードがあるけど、これも……、ううん、E組には即興でも完璧に音を魅せていたプロ並みの腕前の人がいるじゃないか。ダメ元でも頼んでみようと静かに私たちの様子を見守っていた先生へと視線を向ける。

 

「……イリーナ先生。キーボード、弾けたりしませんか……?」

 

「は、わ、私が!?そうね、ちょっと楽譜を見せて……ああ、これはピアノメインではない曲ね……なるほど……」

 

「律ちゃんに頼んで全部流してもらってもいいけど……ヨシュアお兄ちゃん以外にも生での演奏もあった方が絶対厚みが出ると思う。先生ほどの腕前なら、いけないかなって……」

 

「……、……ええ、できなくはないわ。いいわよ、やってやろーじゃない。そうと決まればすぐ動くわ!律、楽譜出して私のパッドに送って!1時間ちょうだい!」

 

『了解です!』

 

「っお願いします!」

 

「……彼女はいけるのかい?」

 

「だいじょぶ、イリーナ先生のピアノ、すごいから」

 

「ビッチ先生は幻想即興曲を暗譜で弾けるピアノの腕前です。きっと期待に答えてくれると思います!」

 

「君達が太鼓判を押すなら心配ないね」

 

「……ねぇアミーシャ、女声歌唱パートを歌えないかしら。あの時は《蒼の歌姫(ディーバ)》が歌ったらしいんだけど」

 

「!」

 

 唐突に、リーシャお姉ちゃんが言い出したのは……今からやろうとしている演目の歌唱パートだった。原曲にもあるから知ってるけど……待って、え、今言った人って。

 

「《蒼の歌姫》って、確か帝国歌劇場のスター歌手……だよね?そんなすごい人がその公演に協力したの……?」

 

「協力というかなんというか……」

 

「あの時は元々《蒼の歌姫》と《怪盗紳士》がいない状態で公演する予定だったんですよ……だから一切要請も何もしてないんですけど、あの人達がどこから聞きつけたのか乱入してきたんです……」

 

「ホント、どうやってあの時あの場であの演目をやるって知ったんだか……結社も暇なのかな」

 

「《怪盗紳士(ブルブラン)》に関してはオリビエさん(ライバルと認めた人)がいたからって言うのもありそうだったけどね……リハーサルにもない展開だったけど、あのおかげて衛視隊の注意を引き付けて作戦を成功させられたんだ」

 

「私は昨日のステージを見てアミーシャなら歌えると思ったし……何より『アミーシャの歌を聞きたい』ってお客さんがいたから、最初から頼もうと思ってたの」

 

「…………、」

 

「メイン歌唱があるだけでかなり変わります。アミーシャがやれるならやって欲しいです」

 

「……律ちゃん、私のスマホで公演の動画を見せて」

 

『……はい!』

 

 曲は知っていたけど、当然歌ったことなんてない。律ちゃんが多分お姉ちゃんの言う練習公演……リーシャお姉ちゃんどころかイリアお姉さんもいない、シュリさんと見たことない女の人を主役に据えた大人数のステージ映像を流してくれた。……衣装を着てるのはシュリさんだけ、他は練習着だったり普段着だったり……しかも明らかに学生だと思われる人たちまで参加してるし、確かにこのステージはなんでもありだ。

 途中からどこからかステージに現れた女性が響かせる女声パートを聞き取るだけでも相当高音域だと思う。しかもホールで響かせるように歌うから、いつもと勝手が違う……私にこの声が出せる、かな。

 

「あ、ぁー、もう少し上かな、……a、A〜……、……Ah──────……、……うん。多分、できると思う。分かった、このパートは私が歌う」

 

「ええ、……引き受けてくれてありがとう」

 

 冒頭の音だけ拾って声を出す。耳で軽く拾っただけで正しい音は確認してないけど……多分、この音域だったら……プロのオペラ歌手のような響きや表現力は見せられないと思うけど、歌うだけならやれなくはない。スマホで楽譜を表示させ、音源を流して音を確認していく……と。

 

「……ねぇ。いくつか提案があるんだけど」

 

 みんながお姉ちゃんたちの勢いに飲まれたのか固まっている中、私のスマホを横から覗いて見ていたカルマが急に話し出した。動画を見て、何か考えがまとまったらしい。

 

「まず、この練習公演ではメインダンサーをシュリさんともう1人、つまり2人でやったんでしょ。それでエステルさん含めて3~5人がバックダンサーをしてる……今回、メインを踊れるのがリーシャさんだけだとしたら、バックダンサーが1人ってのは見栄えが悪いと思う」

 

「それは確かに思いましたが……突発的にやろうとしてますし、今回は仕方がないかと……」

 

「リーシャさんに大きく踊ってもらって、あたしが全体的に動くしかないかなーって思ってたわ。カルマ君は何か解決案があるの?」

 

「解決案っていうか、エステルさんって動きの指導できる?」

 

「んえっ?」

 

「E組に体操部出身の奴がいるんだよ。身体能力でいえばアミーシャ並に動けるし、そいつなら多分バックダンサーくらいの動きならすぐ仕上げられるはずなんだけど……どう?」

 

「それって岡野さん?」

 

「うん。ここで求められてるのは手足の先まで美しさを魅せる完璧な演技じゃなくて、体全体を使って舞台を大きく見せる演技でしょ。岡野なら短時間で習得できる」

 

「……んーそうね、全くダンス経験がなかったあたしでもできたんだもの。元々の下地がある子ならいけると思うわ!」

 

「人数のバランス的にも丁度よさそうだね」

 

「おっけー、じゃあ神崎さん岡野に事情話して呼んできて。岡野のシフトには同じくらい機動力のある木村入れとけばいいからさ」

 

「分かった伝えてくるね」

 

「次、コーラスなんだけど屋外ってのもあって流石にレンさんとキーアだけじゃ声が拡散しちゃって声量足りないだろうからさ……渚君追加で」

 

「……え゛、僕!?!?」

 

「吹奏楽やってたんだから人より音感あるでしょ。……俺的には茅野ちゃんと速水さんの2人も出て欲しい」

 

「わ、私!?それに速水さんもって」

 

「渚君含めて音楽で殺せんせーからの歌唱評価高いじゃん。欲を言えば磯貝もオク下で入れたい」

 

「カルマ君……それって僕に女声パートやれって言ってない……?」

 

「渚君、男声のオク下出るの?」

 

「出ないけどね……分かったよ……」

 

「……で、奥田さんは何。そんなキョトンとして」

 

「あ、えっと……カルマ君ってアミサちゃん以外のE組のこともそんなに細かく見てたんですね……ちょっとビックリしちゃいました!」

 

「そんなハッキリ;」

 

「奥田空気読めって;とりあえず俺は磯貝に声掛けてくるわ」

 

「だったら私は速水さんに交渉してくるね!今調理担当だし中にいるはずだから!」

 

「……、まあいいやよろしく〜。今のメンバーを追加で入れれば層が厚くなるでしょ。……で、最後に」

 

 ポンポンポンとE組の才能……得意分野をカルマが上げていき、今微妙に足りてなかったポジションに当てはめていく。隣で聞いてただけでもすごくしっくりくる人選で、カルマは人の本質を、適性を見抜いて適切に配置するのが上手いと改めて思う……みんながこれに気づいてるかは、分からないけど。

 今名前をあげられた4班以外の3人も快く引き受けてくれるだろうからと、有希子ちゃんとカエデちゃんと杉野くんが交渉するために教室を出ていった。これだけでも相当ステージの質が上がりそうだと感じるけど、カルマはまだ何かあるらしい……私のスマホを操作して見せたいんだろう場面まで動かして……

 

「……これ。さっきから言ってる《怪盗紳士》がやったっていうこの男声歌唱パートさ、俺がやるから」

 

「!」

 

 その、《怪盗紳士》らしい人が登場する場面をお姉ちゃんたちに見せて宣言した。

 

「カルマ君も音楽の成績、っていうか全教科オール5で完璧なのになんでコーラスに入らないのかと思えば……」

 

「ここで歌いたいからだったんですね……」

 

「アミーシャのパートナー役は譲りたくないから。当然でしょ」

 

「カルマさんなら器用ですしすぐできるようになりそうですが……結構音域が広いですよ?」

 

「やる」

 

「……はぁ、まぁここで揉めるのもめんどくさいですし、時間もありません。すぐにアミーシャと合わせてきてください」

 

「了解、……ありがと」

 

 まさか私の相手役に、しかも演技とか普段通りでできることじゃなくて歌っていう技能に特化したことに立候補するなんて……リスクを取らないといけないことはやりたがらないと思ってた。だからやるとしてもコーラス隊のような複数人いてカバーし合えるものの方かと思ってたのに。

 多分お姉ちゃんたちも他に歌える人もいないし、いないならいないで私だけでもって感じだったんだろう。心配しつつめんどくさいっていつもの口癖で話を切り上げたティオお姉ちゃんの一声で決まってしまった。カルマも歌が上手いとは思うけど……ジャンルも違えば人前でソロ歌唱になるのに……だいじょぶ、かな……

 

「ということはメインダンサーにリーシャ、バックダンサーにエステル、コーラスにレンとキーア、ハーモニカにヨシュア以外にE組からキーボードにイリーナさん、音響はリツさん、女声男声歌唱はアミーシャとカルマ君、追加でコーラスにナギサ君、ユウマ君、カエデさん、リンカさん、バックダンサーにヒナタさんか……ここまで役者が集まれば形になるんじゃないかな」

 

「戻りましたー!みんな今からシフト調整してこっち来てくれるって!」

 

「よっしゃ!俺と奥田と神崎さんは残りのE組への伝達と今いる客への宣伝に回るぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

「うん、分かった」

 

「客に見られちゃ意味ないし練習は基本校舎内で!コーラス隊はこのまま教員室を借りるのがいいと思う。エステルとヒナタさんが合流したら、リーシャとアミーシャとカルマ君も一緒にリツさんのいる教室を使うと確認と合わせがしやすいんじゃないかな」

 

「それで行きましょう。……みなさん、ご協力よろしくお願いします」

 

「「「了解!」」」

 

 こうして、急遽決まった出張版アルカンシェル公演の実現に向けて、限られた時間での練習が始まった。私たちだけでは取れてたったの3時間程度の練習時間で形になるものは作れなかっただろうけど、生演奏・生歌唱分以外は音源があること、もともと既にこの演技ができる人がいることで練習時間の少ない拙いE組の動きをカバーできること、目立つ主役(リーシャ・マオ)がいることでそこまで他に目が行かないだろうって打算で、人数の偏りによる違和感は消せる。

 問題は完全別パートだからこそ誰かにカバーしてもらうことができない私とカルマだ。音をとる段階でカルマがこの音域が歌えるのは確認できたし難なくソロでは歌えそうだったけど、いざ合わせてみると私とデュエットになる部分で釣られそうになるのか音が揺れる。自分の音を聞きつつ相手の声とズレないように聞かないといけない……合唱より音の数が少ないからこそ少しズレると違和感から直そうとして余計に音が分からなくなる難しさがあった。それでも、諦めずに繰り返し音を聞いて声を出してくれる彼に……私も声で応えたい。

 

 途中、ソロで音を再確認したいという彼を教室へ残し、私自身の魅せたいことを実現できないか……リーシャお姉ちゃんと軽く打ち合わせて、……そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Noside

 

 突如、椚ヶ丘中学校3年E組の学園祭ホームページに動きがあった。

 

 それに世間が気が付いたのは1つのブログ……【ボンボンが行く!!法田ユウジの食べ歩き日記】のブログ主がとある記事の返信記事として引用していたから。

 

 

 

 曰く、【俺だって生で見たかったのに!!】と。

 

 

 

 食べ物の記事でもないのに、素の自分を晒してまで悔しがる彼のコメントに興味をひかれた読者が、ホームページに飛んだ先には……日本でも有名なクロスベル自治州にある劇場アルカンシェルのスターの1人である、リーシャ・マオが主役となって特別公演を行うと彼女の写真付きで紹介されていた。なんでもこのE組に在籍する生徒の1人がリーシャとの関係者で、彼女の好意から、そして来店する客への感謝の気持ちで公演を決めてくれたそうだ。

 時間は午後2時半と3時半の2回のみ。出張版な上、出演者はリーシャ以外アルカンシェル関係者ではなく協力者が演じることや、演目も練習公演として行ったものを流用するため料金もかからず見ることができるらしい。出演者の一部には店を開くE組からも数名抜擢されているのも見所なんだとか……

 

 

 

 ……余談だが、ブログの主が悔しがっているのは、リーシャ・マオの公演を見られないことではなく、その記事に追記されていた出演予定者の中に彼が推しているE組の少女の名前があったことが原因だったりする。ミスコンや1日目のステージ出演のごとくひっそりと告知されていたため、毎度運試しのようなことをする集団だ。見つける人がいなかったらどうする気だったのか……いやそれを踏まえての現地宣伝なのか。

 

 

 

 閑話休題(それはさておき)

 

 現地では先の通り、彼女が公演をすると決めた直後にE組の生徒からアナウンスがあり、約3時間後に1回目の公演を開演すると告知されるとそのまま敷地で待機する人、身内に連絡を取り始める人など様々な動きがあった。当然そのままだと居座る客が席を占領する可能性があっただろう……そうならなかったのは、なにやらリーシャの護衛として着いてきていたクロスベルの警察職員によって、ステージ代わりにするスペースに誘導される動きがあったかららしい。店を目当てに来ている客を入れ、店そのものの回転率を下げないためにも、飲食スペースで待つことはできないよう規制されていたんだとか。

 3時間近くの待ち時間はあったものの、観覧、飲食スペースに近い校舎から歌声や楽器、ダンスを練習する声が聞こえていたから、退屈することなく待てたらしい。そして、

 

 

 

 

 

「みなさん、椚ヶ丘中学校学園祭に、そして中学部3年E組のお店に来てくださり、ありがとうございます。突然の告知にもかかわらず、こんなにたくさん……とても嬉しいです」

 

 時間になってステージとして用意されたスペースに13人の人物が並ぶ。後方に楽器を担当するのだろう人物が2人……キーボードを机に乗せた女性は接客でもE組のサポートとして動いていたことから、この教室の教師なのかもしれない。もう1人は黒髪の男性がハーモニカを構えて立っている。中央の列には、長い茶髪をツインテールにした女性とE組の体操部出身の女生徒が間を開けて並び、その近くにスミレ色の髪の少女、黄緑色のツインテールの少女、E組の男子学級委員やミスコンにエントリーしている2人、そして制服の上からエプロンをつけた気の強そうな女生徒が集まって立つ。最前列にはアナウンスをする主役であるリーシャ・マオが、そしてその脇には今色々と話題になっているドレスを着た女生徒と赤髪の男子生徒が並んでいた。

 

「縁あってこちらの学園祭に来ましたが、E組のみなさんに掛け合いこの時間を作らせていただきました。演目名は───【幾千万の夜を超えて】。クロスベルでもアルカンシェル復活公演として、私リーシャ・マオと、シュリ・アトレイド、そしてイリア・プラティエが演じましたが……ここでは、その練習公演を再現する形でE組の数名の生徒、関係者、経験者に協力を仰ぎ実現しました。どうぞ、お楽しみください」

 

 ざわざわとしていた観覧スペースが、リーシャ・マオの語りに段々と静かになっていく……、おもむろに彼女が片手を上げ、指を鳴らし──────演目が、始まった。

 

 





「ねぇユウマ。ちょっと聞いてもいいかい?」

「あ、っと、ちょっと待ってください。……よし、どうかしましたかワジさん」

「悪いね。キミらってさ、ミスコン、A組のステージとブログでも紹介されてて外部に対してE組の中で1番知名度があるってことと、ミスコン規定の『2日目は衣装を着て接客OK』を利用してアミーシャにあの《殲滅天使》の衣装を着せたんだよね」

「そうですそうです。受付なら真尾目当てで来た客と必ず接触するポジションな上、ウエイトレスではないけど話す機会ができますし……どうせなら真尾にも俺ら以外と関わる機会を作るべきだと思ったんで。きっかけ作りも兼ねて着てもらいました」

「へぇ。ちゃんと考えてるね……でもどうやって説得したの?」

「説得も何も、頼んだら『いいよ』の一言でしたよ」

「……え?そんな簡単に快諾するとは思えないんだけど」

「え?」

「いや、相当渋ったでしょ?制服と猫耳くらいならまだしも、1人だけあの衣装なわけだし」

「確かにみんなと違うからって嫌そうでしたけど、可愛いって褒められてからはやる気になって、」

「あれ、可愛いって褒められてやる気になるの?あの性格じゃ嫌がりそうなのに」

「……へ?」

「……ん?」

「あー……横からすみません。磯貝君、多分想像してる人が違うわ」

「……?……、……あ、真尾のことじゃない?!」

「……うん、これは僕が悪かったね。アミーシャに対して独占欲の強いカルマがあの衣装を着せて一番人目につく受付をさせるなんて嫌がりそうなのに、よく許可したなと思ってさ」

「あはは……見立て通りですよ。現に……」

「…………………」

「わぉ、超絶不機嫌」

「でも、想像されてる通り、カルマは真尾にゾッコンなので真尾本人がやる気を出したらあいつも断れないんですよ。ま、後から2人でやれることがあれば、他は外してそこで一緒にいさせてやろうかなって考えてます」

「ふふ、よく分かってるね。……なんかリーシャが考えてるみたいだから、もしかしたらそのやれることは案外すぐに訪れるかもよ」

「……?」



++++++++++++++++++++



 ループ前が結構しっかり原作沿いに描写したつもりなので、今回の2回目の状況をどう……起こった出来事を変えすぎないように、それでいてしっかり変えようかとだいぶ悩みました!その結果、
【同じ出来事】
・E組の店がユウジのブログで大繁盛
・E組と縁のある人達が多数来店
【違う出来事】
・既にクロスベル組が現地にいるため合流のタイミングが早い
・来たお客さんになにかしたいと提案
▶閃の軌跡IVであったアルカンシェルの練習公演出演者がいるじゃん。リーシャも違う場面でこの演目やってたな……
▶E組にひなたちゃんいるな……踊れると信じてる
▶コーラス隊にも足したい。questionのMVに表示される成績表から、音楽の評価5の生徒を抜粋して参加させる()

ということになりました。ちゃんと調べたつもりなので、音楽の評定5なのはコーラス隊+カルマ、オリ主であってるはず。カルマもコーラスに置くつもりだったんですが、まあ、《怪盗紳士》のポジションが空いてたら……誰にもできないからこの小説のカルマなら来るよね、という独断と偏見でいつのまにやら。

次回、この練習公演の様子をお届けします!
今回もありがとうございました!
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