暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA143000、お気に入り419ありがとうございます!
映画も公開されて暗殺教室の波がまた再燃してますね!!!ちなみに作者も熱が上がりすぎて10年ぶりくらいの映画館に4回見に行きました。……まだ行くかも……

前話の公開後に、『他の訓練風景やE組と来日組の絡みが見れるかも!』な期待をいくつかいただきまして、やっぱり全部は厳しかったんですがいくつかピックアップさせてもらいました!自分なりの解釈で描写してる部分もありますが、読んでいただけると嬉しいです!

今回もよろしくお願いします!



126話 インターミッション~戦闘指南~

 

カルマside

 

「──────ストップ。ねぇ、集中してないでしょ」

 

「……っ」

 

 ……バレバレか。俺は目の前の人との組手で次に出そうとしていた手を止め、その手でそのまま額の汗を拭う。集中してたつもりだったけど、どうしても頭の片隅にある引っかかることが雑念になって動きに出てたのかも。だとしてもここまで通用しないなんてさ。

 目の前で戦闘姿勢を解いたワジさんは、汗ひとつかいてるように見えないってのに……当たり前のことだけど、俺達と違って日常的に戦い、仕事をこなす大人で、すごい人なんだ。すごい人だって分かってるだけに……悔しい。

 

「明らかに身が入ってないよ。さすがにその状態での訓練は危険だ」

 

「……、はい」

 

「……さっきの様子を見る限り、詳細は知らないけどあの姉妹に対して何か思うことがあったんでしょ。他の子達の前で話したくないなら家で聞いてあげるからおいで……とりあえず、他の訓練でも見に行って切り替えてきな」

 

「……うん」

 

 俺が本気でやれてないって察してんならさ、それ込みで叩きのめしてくれてもいいのに。命のやり取りをするための訓練をしてんだから、もっと真面目にやれって怒ってもいいのに。ただ、俺が切り替えるまでってここから離すだけ……この人のこれは、俺にそこまで興味がないから軽く扱ってるだけ?それとも……身内の子の彼氏っていう立場だからって向けられる優しさ、なんだろうか。

 ……いや、やめよう、こんな悪い方にばかり考えるのは。多分、俺が現実でその未来になって欲しくないことが、その未来になってもおかしくないと分かってしまったせいで、どんどん悪く考えてるだけ……そうだ、そうに、決まってる。

 

「ねぇ、大丈夫なの?確かに顔色悪いよ」

 

「そうだぞカルマ。お前リーシャさんが合流したくらいからなんか変だぞ?」

 

「まさか真尾という彼女がいながら姉のリーシャさんに惚れたかぁ?無理もないよな、あんな美女が惜しみなくダイナマイトボディを晒してるくせにウチのビッチと比べて謙虚でおしとやかさが両立されてるなんて目がいかないわけがない!……なーんて、」

 

「……」

 

「っていや待て待て待て冗だnグェッ!!」

 

「いやそりゃあ前原が悪いだろ……」

 

「あ、ワジさーん。さっき教えてもらった投擲のコツ、早速役に立ったわありがとねー」

 

「サイッテー……」

 

 同じようにワジさんへ師事することを選んでいた岡野さんが心配そうに声を掛けに来てくれて……杉野にまで鈍いながら俺の不調は察せられて気遣われてしまった。ダッサイなぁ俺。前原、は……もういいやお前……ワザと俺のことをからかってこいつなりに空気を軽くしようとしたんだろうけど、冗談の種類(タチ)が悪い。だからさっきワジさんから教えてもらったばかりの投擲術で、遠慮なく前原の顔面を狙って対先生ナイフをぶん投げる。

 きっと烏間先生だったら『暗殺術を人に、ましてやクラスメイトに向けるな』くらい言われるんだろうけど、ワジさんはにこやかにサムズアップしてるだけだった……あの人基準でこれは問題ないんだろう。そう考えるとワジさんって真面目なんだか不真面目なんだかよくわかないよね。そういや不良グループのトップ張ってたとか言ってたっけ?不真面目か、じゃあ。

 

「……よし。お言葉に甘えて他の訓練を覗きに行くとしますか」

 

 気持ちを切り替えるために、がむしゃらに向き合う目の前から目を離して他を見るっていう指示も分かる気はする。あの言動でどこまでが本心かどこからが愉快犯なのかよく分からないけど……ここは指示に従って置く方が吉だろう。

 さて、じゃあどこに行こうか。ティオさんの所での能力分析も気になるし、レンさんのところに混ざって色々言い合うのも楽しそうだよね。ヨシュアさんの隠形術はアミーシャに追いつくためにもちょっと興味あるな……ランディさんのところは寺坂達をからかいに行く程度でいいか。あ、俺はロイドさんにも呼ばれてたし、そっちでもいいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どぉりゃぁぁああっ!」

 

「っ!やぁぁあっ!!」

 

「そこ!視線が切れて右側が隙よ!動きにつられてるから見る場所を変えて!」

 

「っはい!」

 

「…………;」

 

 ……あ、守る戦い方ってそういう?とりあえず移動しようと歩き出してすぐ目に入った……というか、耳に入ってきた女の人の勇ましい声。思わずそちらに目を向けたら、エステルさんが片岡さん相手に棍を向けてて、それを片手でいなしながらナイフを向ける片岡さんって現場だった。

 いや、防御術もなにもめっちゃ普通に戦ってるじゃん……?この人、自分の得意分野を紹介する時、ナイフ術とか組手をするみたいなこと言ってなかったっけ?めっちゃ得物振り回してんだけど。

 

「ん?あれ、カルマ君だ。っと、どしたの?」

 

 つい足を止めてそれを眺めていたら、俺が見てることに先に気付いたのはアレだけの猛攻を繰り出していたエステルさんの方で。あの状況じゃお互いしか見れなさそうなのに、……やっぱり周りにも注意を向けてるんだろう。

 

「いろいろ根掘り葉掘り聞くんだーって彼等と一緒になってワジ君とやりあってなかったっけ?」

 

「ちょっと色々あったから頭を冷やすためにも、ティオさんに視てもらいに行くとこなんだけど、……盛大に振り回してるなと……」

 

「あー……最初は組手から始めたのよ。でもそっちは私達、烏間先生相手でも散々やってきてるじゃない。エステルさんが体術専門じゃないこともあって、防御だけならある程度私でも早々についてけたのよね」

 

「だったらコロセンセーさんの速さには及ばないけど、あたしの攻撃をどう反応してどう捌くかに重点を置けばよくないかなって思って!」

 

「それであの連続突きになった、と」

 

「うん!それに暗殺へ応用できなかったとしても、あたしの攻撃は基本直線的な動きをしてるから、捌けるようになれば護身術に転用できるしね」

 

 なるほどね……片岡さんってエステルさんよりも体格いい分、少し上から動きを見れるのに加えて訓練の成果もあるから体術だったらいい勝負になるのか。代わりに武器を持たれちゃうと、長物遣いのエステルさんには手数でもリーチでも敵わない、と。

 片岡さんは元々個人アタッカーでありつつ、周りの状況を見て指揮をするのが得意だから司令塔でもある……ここで防御術を身に付けたら壁役までできるようになるってことでしょ?俺も人のこと言えないけどさ、遠距離以外でどこまで対応できるようになるつもりなんだろ。

 

「そうだ、せっかくだからカルマ君も手合わせしてかない?カラスマさんの防御術がほぼ完璧にできるってアミーシャから聞いてるし、今日までの訓練も見てて、このクラスの中でも体運びとか目線の動かし方とかそこらの不良より確実にできてるから気になってたのよね!」

 

「……んー興味あるけど遠慮しとく。というかこれからティオさんのとこに行くんだってば」

 

「ちぇー、残念。でもせっかくだからこっちに滞在してる間にはやりましょ!カルマ君、アミーシャのこともあってこっちの進路も考えてそうだし、出来次第では遊撃士に推薦してもいいくらいだから!」

 

「エステルさんって大概好戦的ですよね……あ、ティオさん達なら道具倉庫の近くでやるって言ってたわ。そっちに行けば会えると思うわよ」

 

「了解」

 

 絶対諦めて無さそうだし残念そうにもされたけど、このままここにいたら彼女の勢いに乗せられて居座りそうな予感がするから、さっさと誘いを断って彼女達から離れる。

 片岡さんの言う通り道具倉庫の方を見上げれば、ノートパソコンらしきものを広げてイトナと盛り上がっていそうな2人が見える。そちらに足を進めれば、真ん中辺りにタブレットが見えてきた……てことはやっぱり律もいるか……、ッ!?

 

「誰!……ん?」

 

 ティオさんの方にばかり気を取られてたから油断してた。道具倉庫へ向かう途中に積まれた、ロイドさん達がまとめて置いておいたらしい武器とか荷物とかの隙間から視線というか気配を感じて思わず離れ……って。

 

「び、っくりした……狭間さん何やってんの?てか何でそんなとこに挟まってんの?」

 

「あら、バレたわね。ヨシュアさんの訓練の一貫でこのグラウンド全面を使ったかくれんぼ中よ」

 

「かくれんぼ……」

 

「手っ取り早く今の現状を知りたいんですって。移動もあり、協力を求めるのもあり、敗北条件はヨシュアさんに隠れている人が誰かを認知された上でタッチされること」

 

「……なるほどね」

 

 そこまで大量の荷物ってわけでもないし、人が入れる隙間なんて無さそうなのに、そのありえない隙間に潜り込んでいたのは狭間さんで。確かに彼女なら女子の中でも小柄というより細身だから、それを活かせば隠れられそうだとは思うけど……かくれんぼのためとはいえ、よくこんな隙間に入ろうと思ったなってくらい、めちゃくちゃ狭い。

 

「で、そのかくれんぼ中に俺と話してて平気なわけ?」

 

「カルマが来る直前にここから反対側、グラウンドの端の方で岡島の悲鳴が聞こえたわ。真逆に行ってるからそうすぐに帰っては、」

 

「……あー……ごめんねキララさん、見つけたよ」

 

「「あ。」」

 

 ポン、と狭間さんの頭とついでに俺の頭にも手を置いていったのは、いつの間に来ていたのかちょっと困ったような顔で笑うヨシュアさん……彼の小脇にはなんとも言えない表情の渚君が抱えられている。後ろの方から三村と木村、半裸の岡島が追いかけてきてて、……って岡島はどういう隠れ方をしたらそうなるんだ。まーた周りからうわぁって顔で見られてるし、詳細が気にはなるけど。

 

「君で最後だから出ておいで。そしてカルマ君はいらっしゃい、見たところ……僕のところに来たと言うより通り抜けるつもりだったのかな」

 

「そうだけど……」

 

「そっか、興味があれば後でおいで。僕達はこれから簡単に今の隠れ方について講評するつもりだから」

 

「……あっちの見つかった奴らがなんで見つかったのか詳しく聞いたらなんか減る気がするな……渚君は何で見つかったわけ」

 

「あはは……工夫次第で僕のまま周りに紛れられるって言われたからさ、向こうで磯貝君達に指導してるロイドさんを盾にして隠れてみたんだよね。ほら、ロイドさんは指導係のみなさんの中で唯一動かずその場で指導してるから、僕が背後にいてもバレないかと思ったんだ」

 

「物に紛れるんじゃなく自分と同じ人に紛れるって発想はよかったけど、息を潜めるのはまだまだだね。僕が近くに来たって気付いた瞬間に動いただろう?」

 

「動きました……動きましたけど僕は体の向き変えただけなんですよ……」

 

「それでロイドも一緒に動いていたら誤魔化されてあげたし、なんなら僕等の中でもレンとワジ、ランディさん以外には気付かれなかったんじゃないかなって思うよ。だけど動いてないもののそばで別の動きをする気配が揺らいだら、僕達のような戦場を経験してる人からすると別に存在を疑ってしまうんだ」

 

「……それって、アミーシャが誰もいないはずの家にキーアがいるのを察知してたのと同じじゃ……」

 

「そう。ナギサ君のように自分の存在を隠しながら人に合わせて隠れるには周囲にある物の位置、空気の流れ、視線の動き、人の動き……いろんなものを同時に把握する必要がある。ただ1箇所に留まって隠れるだけならキララさんのように同化する方法が1番簡単で分かりにくいと思うよ」

 

「というか何で狭間はカルマに話しかけたんだよ。話しかけたらそりゃバレるだろ」

 

「先に私がここにいるって気付いたのはカルマよ。飛び退くほど警戒されたらもう話しかけるしかないじゃない」

 

「それはごめん」

 

「へぇ、すごいね。探すって目的があるから周りを注視してる僕が気付くのは有り得たけど、カルマ君は横を通ろうとしただけだろう?君は常時周囲をよく見て、感じたものを自分の戦略に活かす力があるのかな」

 

「……さぁ?どーかな」

 

「というか僕はおろしてもらえないんですかぁ!?」

 

「あ、ごめんごめん。……邪魔して悪かったね」

 

 ……これは、ヨシュアさんにも何か興味を持たれているような気がする。ようやく下ろしてもらえてよろよろとヨシュアさんから離れ、地面に膝を着く渚君の傍に行きがてら、ヨシュアさんから軽く距離をとる。軽く目を細めて小さく笑う姿を見るに、多分、この動きの意図もこの人にはバレてるんだろうけどね。

 それにしてもエステルさんといいヨシュアさんといい、見た目はやわそうな一般人にしか見えないのに。もっと言えばティオさんやレンさんなんて非戦闘員と言われても納得してしまうのに。……アミーシャもだけど、人は見た目によらないを実感してしまった気がする。顔をあげると目に入る、ティオさんとイトナ、律の指導……あの異次元の会話が繰り広げられる場所で俺は何が得られるんだろうか……ちょっとだけ、楽しみかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……彼、ちょっと不安定だね」

 

「カルマがどうかしたんですか?」

 

「ああいや。彼ほど戦闘能力が高ければ、レンが興味をもったのも分かる気がするなと思って」

 

「アイツ、E組に来る前の停学原因は別として、元々暴力沙汰で何度も呼び出されてたからな……しかもほとんど負け無し」

 

「そうね、たまーに傷作って登校してくることあったけど、その割には本人ピンピンしてたわ。……ああでもアミサが近くにいるようになってからは見える所に傷を作らなくなったわね」

 

「トラブルがあると口より先に手を出すくらい、カルマ君はちょっとだけ喧嘩っ早いから……そこでの経験で強くなったのもあると思います」

 

「ちょっとかそれ」

 

「やっぱ不良に違いないんだよな……」

 

「で、でも理由が無ければ手を出したりしないから!まぁアミサちゃんが巻き込まれると基本理由なくキレてるけど……」

 

「巻き込まれてんのかい;」

 

「ダメじゃねーか;」

 

「……はは、まるで正義感を持ったレイヴンみたいな子だな」

 

「レイヴンってなんですか?和訳で烏だっけ?」

 

「んー、僕のいたリベールで不良っていうかたむろしてた人達っていうか……そんな感じの彼らに似てる部分はあるなと思ってさ。まあそんな彼等も今じゃ3人組(スリーマンセル)で準遊撃士の資格を取ったんじゃなかったかな」

 

「へぇ……じゃあ更生してんじゃん」

 

「やっぱりそういう人種はそっちにもいるんですねぇ」

 

「……キレてるといやあヨシュアさん達が来日した次の日に、真尾が烏間先生に激怒してたの、この人達は見てないんだっけか」

 

「あー……めちゃくちゃ烏間先生を叩いてたアレな」

 

「ん、何かあったのかい?」

 

「レンさんが仕掛けたイタズラでカルマとイトナを危険に晒したからって八つ当たりしてたんですよ……真尾にとっちゃ、自分以外に命の危険が迫るって状況は地雷なんで」

 

「そこにカルマが含まれてたから余計にッスね。あの2人って傍から見ると一方的にカルマが溺愛してるように見えますけど、実情を知る俺らからすると真尾も相当依存してるんで」

 

「……そっか。レンのことは僕達が止められなかったのが悪いんだけど、そんなことがあったんだね。……うん、今日帰ってから改めてちゃんと話を聞くことにするよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ティオさんの所で自分の身体情報やそこから分かるアーツ適性を含む俺に向いている戦法……それらを分析してもらったことで前衛での近接戦闘が1番向いてるし、やっぱりワジさんの所での指導が俺の特性を伸ばすのに1番いいだろうと再確認。だからそろそろ戻ろうかとも思ったんだけど、せっかく他を見るために離れてるわけだし、ロイドさんのところにも顔を出してみるかと行ってみることにした。

 ロイドさんはE組の出店スペースの机と椅子を数脚だけ残してあるから、そこで座学的なことをやってるんだったっけ……学校の授業っぽく講義みたいなことでもしてんのかな。そう考えながらなんとなしに近付いてみたら、机の大量の紙を広げて頭を突き合わせてなにやら言い合っている様子の磯貝と竹林が。

 

「……磯貝と竹林、何悩んでんの?」

 

「ああ、カルマちょうどいい所に!お前ならこれどう見る?」

 

「はァ?」

 

 2人の周りに広げられてるいろいろ書き込まれている紙束には、軽く上から覗いただけでも人型だったり数字だったり矢印だったり、……なんか雑多だなと思っていれば磯貝が広げて突き出してきた1枚のプリント。それだけは手書きのメモも書かれておらず、なにやら印字された地形図らしきものと文章が書かれているだけ。

 

 

 

【約30人でこの図面の場所へ潜入・交戦する場合、どのように人員を配置し、作戦を実行するのが適切か

※なお、各人員の持ち物は自由に設定して構わないが、現実的に可能なもののみとすること

※最初から判明しているのは地形のみ。相手の人数や武器などは事前情報が無いものとする】

 

 

 

「……ふーん」

 

「俺は10人小隊を組んで正面突破が1番被害も負担も少ないんじゃないと思うんだが……スペースの関係からこの場所から敵は少人数ずつしか出てこれないし、分隊の陽動は必要ないと思ったんだけど……」

 

「いや、この場合はここにあるスペースをうまく使うのが肝だろう。6人小隊で役割をわけ、陽動、支援、防御、交渉……ここで一部隊は待機して、状況を見て強襲する、なんてのはどうかな?」

 

「悪くない気もするけど……この視界の範囲を見る限り、これだけ見渡せるってことは、その分相手からも狙われるってことだよな?リスクを考えると俺はあまり人数を配置したくないな……」

 

「とまあ……こんな調子でまとまらない状態でね。このまま話し合っても平行線だし、僕ら以外の考えも聞いてみたいんだけどどうだろうか?」

 

 地形を利用して多数対少数の戦いに持っていくが正面突破になる代わりに何かあっても対応できるよう交代要員を意識した磯貝の考えと、6人小隊にすることで5つの役割をそれぞれで分担し指示系統が混乱しないように配置しようとする竹林の考え。どっちも別に見当違いなことはしてないと思うし、もちろんどちらも利点があるしもちろん欠点もある想定……だからといって上手く議論が発展もせず意見が割れてまとまらないみたいだ。

 竹林に意見を求められたことでもう一度問題文と地形図を読み直す。……追記された通り、地形以外に相手の情報がことごとく無いのだとしたら、無策で敵地に突っ込めばどんなにこちらが小隊を効果的に組んでいたとしても崩される可能性があるよね。武器とか設備で対応されたら終わりだし、万が一爆弾でも潜ませてたとしたらピンチになってドカン、じゃあ話にならない。ということはそれを先に探る役割が必ず必要で……人員の総数は約30人ってことは結構少ない……し、俺等で勝手に決めていい人員の持ち物……ん?現実的な範囲で自由に設定して構わない、ってことは。

 

「……俺ならまず、このスペースに偵察を走らせる。前提として相手側がまるで分からないからね……地上からでは壁になってて分からなくても、幸い上からなら何も邪魔するものがない。それに煙幕とロープの投擲を合わせれば中に何か下ろせそうだし、上手くやれば爆薬も仕込めるよね。……うん、せっかくだから入り口側の味方に状況をリアルタイムで伝えられる環境を作って、あとはその情報次第で順次使えるものは使おうかな」

 

「いや、ダメだ。そもそもこの場所は敵からも見えるだろう?確かに偵察するならそこはいい立地だとは思うが……」

 

「そもそもそこにどうやって行く気なんだ。道もないしあってないような壁のでっぱりを掴んで登れとでも?」

 

「は、何言ってんの?E組(ウチ)には律がいるんだからイトナの機械と同期させておけば安全に偵察できるじゃん。ドローンとか赤外線センサーつけたヤツとかさ」

 

「……E組?」

 

 2人して俺の考えを聞いた瞬間無理だって決めつけてきたけど、どこが無理なんだ……って軽い気持ちで言い返しただけのつもりだったのに。『E組を想定して配置すれば可能』って返した瞬間磯貝は目を丸くして竹林はメガネをカチャカチャと動かして動揺しているようで……え、もしかしてそもそもそこまでたどり着いてなかった感じ……?

 

「そんな前提はどこにも……」

 

「書いてあるじゃん、〝約30人でこの図面の場所へ潜入・交戦する場合〟って。これ、ロイドさんがハッキリ書いてないだけで明らかに俺等を想定してるでしょ?」

 

「「…………あ。」」

 

「確かに約30人って問題にする上でありえなく無い人数だから違和感ないかもだけどさ、兵法だの戦略だのの事前知識のない俺らにいきなり知らない人を30人も動かす方法なんて問題、この人が出すと思えないんだよね」

 

「言われてみれば……僕も作戦案はいくつか出せてもこの〝適切〟に当てはまるようには動かせなかったから迷ってたんだ」

 

「俺もE組のみんななら指揮できると思うけど、全く知らないやつらを動かすのはさすがに無理だ。すごいな……カルマはこの人数を見て気付いたのか?」

 

「人数もだけど、俺がE組って想定した1番の理由はここ。〝各人員の持ち物は自由に設定して構わないが、現実的に可能なもののみとすること〟……何でも持ち込み可なのに現実的なものしかダメだなんて、どこまでが現実的なのか曖昧じゃん?でも、ロイドさんはそれをわざわざ書いた……つまり空想の構成員の持ち物に、なにかそうだとわかる判断材料があるってこと。俺等はクラスメイトそれぞれの得意分野もだけどそれぞれが持ち込むだろう武器もだいたい分かってるでしょ」

 

「確かに、イトナの機械と律がタッグを組めば危険もほぼなく偵察ができるな……しかも奥田の煙幕と真尾の隠形術、僕の爆薬や岡野さんと木村のクライミング技術も組み合わせれば気付かれず中に入り込むことも可能かもしれない」

 

「言われてみれば、この位置にスナイパー組も置けば戦術が一気に広まるし、やりたい動きに説得力が出る!」

 

「さっき狭間さんと話してきたんだけど、彼女、結構常人じゃ思いつかないような場所にも潜り込めるんだよね。てことは、人が注目しづらい場所に潜り込ませるのもいいなって。……ここまで察して作戦を立てるのも課題だったんじゃない?」

 

 俺なりの回答と理由を告げた途端、新たな視点ができたからか2人していろいろあーでもないこーでもないと俺を放置してまたペンを動かして話し出して……ねーもうこれ聞いてないでしょ。生き生きと、それでも楽しそうに議論を交わす2人を横目に指導係だからこそ口を挟まずに俺等の会話を聞いていたロイドさんへ話を振ると、頬を掻きながら困ったように笑っていた。

 

「うーん、もうちょっと2人に粘ってもらって『この問題に登場するのは知らない人だ』っていう固定観念を捨てられなければ答えを教えようかと思ってたんだけど、カルマ君が来たら一瞬だったね」

 

「ロイドさんは2人が気付くと思って作ったの、これ」

 

「気付いて欲しいなとは思ってたよ。というより、直接的なワードを入れずに気付くか試してみたかったんだ。……大掛かりな何かをする時には事前にしっかり準備をしてイレギュラーにも備えるべきなのは当たり前。だけど、突発的に発生したものは作戦を、戦略を立てる時間も余裕もほぼないと見ていい」

 

「…………」

 

「つまり、その場で手に入れた情報を組み立てて、その場で判断し、その場で動かしていかなきゃいけない。それを経験して欲しかったんだよ」

 

「じゃあ、ロイドさん的に俺は合格?」

 

「そうだね、しっかり俺の意図も汲んでくれてるし作戦参謀として()合格かな。むしろ既に実践できるだけの戦術眼があるし、どんどん活かしていくべきだ」

 

「……その言い方だと他の面では不合格って言いたそうだね」

 

「えぇっと、……まあ、君には悪いけど……」

 

 ……全体的に結構高評価はもらえてるけど、この人の中では引っかかるものもあるってことか。今の問題が、問題を見てすぐに本質を汲み取り対応する力を見ていたように、この短時間の観察でロイドさんなりに俺の対応とかを見て俺の能力を読んだんだろう。それこそティオさんのようにデータ化できるような明確に数字で表せるものじゃない、生きているからこそ都度変化する性格や思考という不確かなものを。

 俺の欠点、か。自覚してるだけでも結構あると思ってるけど、ロイドさんはどこに目を付けたんだろう。聞ける時に聞いておこうと、答えを聞けるまでは動かないと無言で示せばロイドさんは磯貝達の方を指しながら口を開く。

 

「……まだ君の考えを話している途中だったのに、そっちの2人はカルマ君を放置して盛り上がってるだろう?つまり、今この場が戦場だと想定して、()()作戦を立てて指揮をしようとしたら()()()()自立して考えて勝手に動いてる状況だ。つまり、この2人によって君の立てようとする作戦は良くも悪くも確実に変わる未来が見える」

 

「……そうだね」

 

「君としては途中から参加した身だし、大元のたたき台を出しただけだろうからユウマ君とコウタロウ君が自分で考えて作戦を発展させていってもそういう才能のある奴なら構わない、って大事だと思わなかったかもしれない。でも、もしここにいるのが指示待ちだったり考える前に動いたりするような、指示をするリーダーがいてこそ才能を発揮するタイプの子達だったら?……君は君の才能で、制御しきれるかな?」

 

「……………」

 

 ……才能、か。磯貝のように『こいつは信頼できるから任せよう』って思えてしまう人望も、片岡さんや三村のように『人と人を繋ぎ何をすれば次に繋がるか』を活かす周りへの気遣いも、渚君のように『どこにいても誰であっても受け入れる』ような包容力も、前原のように『物事の取捨選択が適切で自分を魅力的に見せられる』行動力も、寺坂のように『1つのことを信じぬいて実行する』近くにいる奴を一緒に動かしてしまう気迫も……全部俺にはない才能だ。

 きっとこいつらは俺と違ってどこか人として惹きつける魅力のある奴ら、なんだろう。前に出ても自然とついていく奴らがいる……そんな人柄。人は誰でも何かしらの才能があるとは思ってる、けど……俺は、そういう人を先導する才能とかないだろうし、俺みたいな奴が指揮すると現場判断で勝手に動く奴らが絶対に出てくる。

 

「君は多分、グループや集団になった際、前に出てリーダーとして全員を率いるということはそこまで得意じゃないんだ」

 

「……まぁね」

 

 ……やっぱり、そういうことだよね。ま、俺も薄々分かってたけどさ……そう、突き付けられたことを事実だししょうがないって飲み込もうとしてたのに。

 

「代わりに、縁下の力持ち、だっけ。君は誰か前に立つ人を定めて、その人にあった戦術を組み、実行役として送り出す……言葉通り裏から物事を動かすことには誰よりも向いていると思うよ」

 

「……え」

 

「カルマ君の人柄についていく、というより君の考えについていく、という感じかな。君は人や場の適正を見抜いてその時に1番向いているプランを組み立てる能力がある。その場で的確に、ある情報やものをフルに使って、使えるものを全て利用して自分の利となるように動かす。多少は現場判断に任せる要素を残していても、大元の枠組みは一切隙のないものを作り上げる才能……それは、君だけのものじゃないかなって」

 

「…………」

 

 ……そういえばこの人、相当人たらしだったね。なに、この……ガッツリ人の気分下げておきながらそれ以上に持ち上げて認めていくっていう手際の良さ。過大評価じゃないかって言いたいのに、この人本心から言ってるっぽいしさぁ……本トに、

 

「ん、どうかしたか?」

 

「……なんかムカつく」

 

「えぇっ;」

 

 そんでもって人をたらしこんでる自覚がない、と。あの人たちが言ってた通りじゃん……まさか俺までもとか思うわけないし?

 この人も相当頭がいいんだろう、それでいてひけらかすこともなく、気配りができて人のいいところを見て無自覚に遠慮なく踏み込むくせに放り出さず最後まで面倒を見る……そりゃ、人見知りなアミーシャが懐くわけだよね。無理やり連れ出すわけでもなく意思を汲み取ってもらえるから彼女からしたら居心地がいいだろうし。

 

「ま、まぁいいや……それに君には望む盤面に持っていくために足りない部分を補う情報収集、分析能力と処理能力、それらを備えながら信じてついてきてくれる実行役としてアミーシャがいるだろ?あの子は頭の回転もいいし、並外れた探知能力は君みたいな子と一緒にいることでより真価を発揮する」

 

「!」

 

「なまじ1人で何とかしてしまうだけの力もあるから、平気で危険な位置に自分を置く悪い癖がある。リーシャですら止められないくらいだから俺達が抑えることもできなくてさ……保護者の1人としても君のような存在がいてくれるのはホントにありがたいんだ」

 

「……そう」

 

「ああ。……だから君は、君だけはアミーシャの何を知ったとしても、手放さないでいてくれると嬉しい」

 

「……うん、……は?」

 

 アミーシャが俺と一緒にいればお互いにお互いの真価を発揮して更に上を目指せるってことかって、純粋に嬉しい驚きだったのに。最後の、どういうこと?

 

「俺達もリーシャの事を知った時は相当動揺したけど、アミーシャは彼女以上に抱えてるものが桁違いだったからさ。……でも、それがあっても俺達からすれば一緒に戦って、過去の一部を背負わせてくれた彼女達は仲間だ。同じように、君が、E組がアミーシャにとっての居場所であって欲しいって思う親心みたいなものかな。……さてと、そろそろ俺はあの2人を止めて講評に入ろうかな。次の課題も試してみたいしね」

 

「ちょ、待っ……、……今のってどういう意味……?」

 

 アミーシャが抱えてる何かが桁違い……?それにリーシャさんのことを知って動揺したって、アルカンシェルのトップスターってことだとしてもそんなに……?ロイドさん的にはそんなに考えて無さそうだけど、俺的には結構謎を残して去っていったんだけど、……本トどういうこと。

 行ってしまったし、あの感じ詳しく聞いても教えてくれもしない気がするからどうしようもないんだけどさ、……そもそも雑念を払うために俺はワジさんのところを離れたっていうのに、新しく意味わからないものを植え付けられた気分なんだけど。どうなのこれ。

 

 

 

 

 

 この時は、まさかロイドさんが気にしていたあれこれを知る機会がそう遠くない時にあるだなんて、思ってもいなかった。

 

 

 

 

 





「……君さ、気分転換させに行かせたつもりだったんだけど。悪化してない?」

「全部、意味深なこと言っていなくなったロイドさんに言ってくれない?さっきまでの悩みが吹っ飛ぶレベルで別の気になること押し付けてきたんだけど」

「ロイドって『君なら当たり前にできるだろ』みたいに変に信用して疑ってない時あるからね。信頼の証って言われたらそれまでなんだけど、むず痒いよね」

「納得したくないんだよ……あとあんな大人がアミーシャに信頼されてるってのがもっとムカついてる」

「まぁまぁ。じゃあどうする?鬱憤ばらしがてらもう一戦いっとくかい?」

「……それはありがたいし大分魅力的な誘いだけど、そろそろあいつら放っておくのも勿体無いって気がしてきたんだよね」

「……なるほど、一理あるね。それに……あの子達対僕等2人って言うのも面白そうだ」

「でしょ?」





「……なんかあの2人、すっごく仲良くなってないか?」

「ワジさんって歳上だよね……でも性質っていうか雰囲気がカルマと似てるからかな……」

「フケずに楽しそうにやってるからいいんじゃねーの?」

「楽しそうなのはいいんだよ……ただ……ねぇ、気のせいだといいんだが、あの2人、めっちゃ笑顔でこっち見てるような気が……」

「……おもちゃを見つけたような顔デスネ。嫌な予感しかしない……」





「さて、そろそろ休憩できたかな。時間ももったいないし、続きやろうか」

「今度は俺等2人対お前らね」

「は、ちょ、カルマ!?なんでお前ワジさんと徒党組んでんだよ!?」

「ワジさん1人ですら勝てないのにカルマ君までそっち回ったら……!」

「ていうか、なんでいきなりそんな事になってんの!?」

「いや、この人と連携試したくなって」
「まあ、この子と連携試したくなって」
「「「鬼!!!」」」





「そういえばさ、エステルさんが俺に対して『そこらの不良より』とか『遊撃士に推薦』とか言ってたけど、それって実際にそういう不良で遊撃士になったやつがいるってこと?」

「そーそー、リベールのルーアンって都市にね、喧嘩はするわ騒ぎは起こすわ迷惑かけてたチンピラがいたのよ。いろいろあったんだけど、気付いたらアイツらも準遊撃士の資格を取ってたわ。今はあたし達の先輩が元関係者だからーって指導係になって鍛えてたはず」

「……ちなみにそのきっかけは?」

「え、きっかけ?勝手に鍛えて教会の門を叩いてたしなー……えーっと……あ、きっかけかどうかまでは分かんないけど、手合わせした時にたむろしてるくらいなら腕っぷしを活かして目指してみたら、くらいは言ったかも?」

「間違いなくそれじゃん」

「ないない、あたしなんかの言葉でやる気になるなら他の人からいろいろ言われて反感持たれてる時点でやめてるんじゃないかな。偶然たまたまあたしの言ったタイミングが合ってただけじゃない?」

「……この人、自分の周りへの影響力とか一切気にしてないんだろうなー……ヨシュアさんならエステルだからとか言って終わりそう」

※どっちの遊撃士もカルマ≒レイヴンという印象を持ってたという話


++++++++++++++++++++



カルマ視点でエステルの訓練、ヨシュアの訓練、ロイドの訓練を書いてみました。一応講師役の来日組は学園祭前の体育の授業=烏間先生の暗殺訓練の様子を見ているので、カルマの戦闘能力も戦術眼も、オリ主との連携も、その他関わりも(隠れてコソコソやってない限りは)全部見てます。それ故のそれぞれからの印象だと思っていただければ。



ティオの訓練はループ前にしっかり書いてるので今回は同じことがあったんだということにさせてください……なのでここでも
・零の軌跡開始時のロイドと同レベルの戦闘能力がある
・もし戦術導力器をカルマが持ったら火属性の縛りと一直線では無いもののある程度のアーツ適正
・ナインヴァリに行きたい話
などはしていることになります。詳しくは第一部のインターミッション~『訓練』~に。



ロイドさんとの訓練で、本来なら2学期末テストでカルマが考えるクラスメイトや自分の才能についてちょっと詳しく考えてもらいました。あのテストの場面では出てこない三村、片岡、前原も、ある意味リーダーとして動ける資質があると思ってるんですよね。E組には誰よりもリーダーである磯貝くんがいるからあまり目立ってないんですけども。



ロイドさんが最後になんか爆弾落として去っていったんですが、これは作者がどうやって今回の話閉めようかな〜と考えてたら勝手に落としてったので、カルマさん共々困惑してます。なのでそろそろオリ主について描写する時間がやってきそうです。
※キーアとの会話、オリ主とリーシャの回収が終わらなかったので、まだこのインターミッションは終わりません
次のお話を書くのと同時にその話の下書きを何度も書き直してるんですが、イマイチ落とし込めなくて苦労してます。なんとなく原作ゲームを知ってる読者さんは察してるかもしれませんが、まだ口外しないでくださいね!答え合わせがどうしてもってことなら感想ではなくメッセージをいただければと……



では、次回でまた。

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