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今回は姉妹を迎えに行くお話。
よろしくお願いします!
カルマside
キーアの案内で先に行ったロイドさん達を追いかけた俺、渚君、茅野ちゃん、イトナの4人……律を入れたら5人か。そこから先はティオさんの案内で歩いてるけど、こっちの方向ってことは、多分人面岩のあるあたり……足元が岩場ではあるけど場所によっては落ち葉が降り積もってるし結構広いから、いい鍛錬場だって俺等の暗殺訓練でも烏間先生がよく使う場所。
アミーシャが案内したのかな……そう考えていると、俺等の歩く獣道の向こうから何かをぶつけ合うような音が聞こえ始めた。でも移動する気配とかそういう音とかは全然聞こえてこない……そんなことある?そこにいる、はずだよね?
「……生体反応あり、この先のはずです」
黙々と足を動かしていると、先頭を歩くティオさんとロイドさんが止まって俺等を振り返る。確か、ここの茂みを抜けたらひらけた場所に出るはずだ。
「こんなギリギリに言うのもなんだけど……本当にいいんだね?」
「くどいよ。確かに元々はただの好奇心だったけど、そんだけあんたらが繰り返すんなら相当なことなんでしょ。ま、そうであってもそうじゃなくても、俺はもうとっくにあの子の全部を抱えて生きていくって決めてるんだから。今から見るのだってアミーシャの一部、だったら当然知りたいに決まってる」
「僕はカルマ君ほどの覚悟はもてないけどね……アミサちゃんのことは僕だって3年近くずっと見続けてきたんです。僕達を絶対の味方だって信じて何度も頼ってくれて……その信頼を裏切りたくない。手を伸ばせるなら、届くところまで伸ばし続けたい」
「私とイトナ君はこのE組に来てからのアミサちゃんしか知らないけど、それでももうほっとけるほど他人じゃないですから」
「ああ。……そもそも俺らは最初から普通じゃない。地球を破壊する超生物に教育されてる、暗殺教室の生徒なんだから今更だ」
「だが……」
「ロイド、これ以上は彼等に失礼だよ」
「そうですよ!私達より若い子達が決断するのが早すぎて心配になる気持ちも分かりますが……ここまで来たら信じてあげるのも大人の勤めです!」
「……そうだな、ごめん。それじゃ……いくぞ」
追いついたところでも本当にいいのかって確認されたけど、そんなに心配なのか……。何度も何度も確認してくるから嫌でも分かる、きっと今から見るものは俺らが全く予想できないようなものだってことが。
それでも全てを受け入れると決めたんだから引くつもりは一切ない、そう4人それぞれ違う視点から訴えれば、
「「「……!」」」
夕焼け色に染まっていく森の景色の中で、夜に近い紫色系統でまとめられた服装なリーシャさんと俺等と同じ超体育着を着たアミーシャは、色のせいか暗くなっていく景色に同化しつつある。さっきここに向かう途中にぶつかり合う音しか聞えないとは思ってたけど、こう実際目にしてみても変わらない。彼女達は周りの様子もましてや俺らが来たことだって全く目に入ってないんだろう……この暗さだというのに、まだナイフ片手に打ち合いを続けているのに、本来聞こえるはずの落ち葉を踏み鳴らすような足音が
……あー……見聞きして思ったことを色々並べたけど、これじゃあ現実から目を背けてるだけだし、そろそろハッキリ言おう……俺等はこの光景を見て言葉を失ったんだ。
今の時間、自分の手元どころかお互いの顔の判別すら難しくなりつつある程に日が落ちていて暗くなってきている。その状況なのに、あの2人は移動のスピードもナイフを突き出す速度も変わらないし、迷いもない。
どちらかが攻撃を仕掛ければどちらかがナイフを使ってそれをいなし、しゃがんだり跳ね上がったり左右にフェイクを入れて本命の突きを繰り出したり……次々と攻撃のパターンが移り変わっていく。少し見ているだけでも同じ動きの組み合わせがない中、あれだけ動き続けているというのにやっぱり目立つ音が聞こえない……目が離せなくなっている俺等の近くで、同じようにあの2人の訓練の様子を見ていたランディさんが頭を掻きながら大きくため息をついた。
「……はー、またか……あの様子を見る限りあの2人、休憩挟まずにずっとやってるな」
「え!?」
「休憩挟まずにって……訓練始まって2時間以上、ずっとってことですか!?」
「それでこの動き……」
「ううん、だいぶ消耗はしてるんだと思う。だってナイフの動きが見えるもの」
「そうですね……リーシャさんは普段と得物が違いますし、アミーシャも知らない武器で戦う相手の動きを探りながらの戦闘……2人ともが本調子でしたらナイフの太刀筋なんてあってないようなものですから」
休憩することなくずっとナイフ訓練をし続けられる体力、俺らがここに来たことに気付いているのかいないのかお互いにのみ意識を向け続ける集中力、どちらかが倒れたり途切れたりすることなく相手の攻撃を見切り続ける動体視力、お互いの隙を突こうとする動きの数々は明らかにE組とレベルが違いすぎる。これなら烏間先生と……いや、軽く烏間先生の上を行くかもしれない。確かに覚悟も何も無ければこんなの見れないや……たったこれだけなのに、俺等はアミーシャに今までの訓練で手加減されていたのだと痛感して、その上であの動きに圧倒されてしまったから。
それでも踊るように繰り広げられるナイフ捌きからは目を離せない。進路相談の時、彼女の本気の暗殺を垣間見たとはいえ、その時以上に見たことの無いような動きと、無駄のない体捌きは〝舞い〟と言ってもいいくらいに綺麗で惹き付けられ、ずっと見ていたいと思うくらい……。……ん?あれ……あの姉妹の動きが早すぎるせいで確信がもてないんだけど、お互いのナイフの切っ先が狙ってる場所って……
「とにかく、このまま放っておいたら夜になろうが武器を落とそうがどちらかが気絶するまで続けんぞ、アレ。問答無用で止めに入った方が良くないか?」
「といっても誰が行くんだい?」
「「「…………」」」
「……、……俺、だよな……」
「というよりロイドしか無理でしょ、あの中に安全に入ってかつ止められるのって。私達じゃ潜り込む以前の問題だもの……」
「魔導杖で魔導弾をぶつけてもいいですけど、不意を打てるかどうか……」
「導力銃もワンチャン弾かれますよね」
「かといって僕が入ったら止められるけど確実に当たるから怪我必須だし」
「俺も同じくだな」
「分かってるよ……カルマ君、確かあの姉妹が使ってる対先生ナイフという物は、人間には影響がないんだったよな?」
「……ッ!?……あー、そーだけど。ほらこれ、ただのゴムだし」
「はぁ~~……だったらなんとかなる、はずだ……」
「あぁ、だからあの2人ともが遠慮なくやり合ってるのね……本物の武器だと殺しかねないけど、この武器なら痛いだけだもの……」
「とりあえず止めてくるよ。危ないから俺以外は来ないこと。特に君達4人は巻き込まれたら『痛いだけ』のナイフでもシャレにならないから……間違っても絶対に割り込もうとしないでくれ」
俺が自前の対先生ナイフの切っ先を曲げて見せたのを見て、だいぶ大きなため息をついたロイドさんの肩にランディさんが慰めるように手を置いた。人体に影響の無い安全な武器のはずなのにそんなに躊躇うって、何が……?決心したように顔を上げたロイドさんは、腰に装備していたトンファーを両手に構えて、俺ら全員にこの場所を動かないよう言い含めてから飛び出していく。ランディさん曰く、トンファーという武器は攻撃するためというより、自分と攻撃した相手を守るための武器といった方が適切らしい。それもあって彼1人で送り出したんだとか……止めに入って怪我をさせたら意味ないしね、逆も然りだけど。
彼を見送ってからアミーシャとリーシャさんの方へ視線を戻したけど、彼女たちはまだ訓練を止める様子が見えない。そんな激しいナイフの応酬の中ロイドさんがトンファーを構えたまま近寄っていき……姉妹のナイフがお互いに打ち合った反動で2人の間が一瞬開いた瞬間、彼が飛び込んだところまではハッキリ見えた。
───ヒュオンッ!
そこで多分ロイドさんがトンファーを一閃したんだろう……風を切るような音とともに彼が低姿勢で動きを止めたのを最後に姉妹の動きも止まった。というかあの感じ、お互いに止めざるを得なかったんだろう。
「……っ、ぶな……」
「あ、」
「あ……」
「『あ』、じゃないだろ。もう終わりだぞ2人とも。はぁぁ〜……その武器じゃなかったら俺、確実に死んでたじゃないか……」
ロイドさんはアミーシャとリーシャさんの胴体にトンファーを当ててることから、2人の距離を広げようと外へ力を入れて引き離すつもりだったんだろう。そりゃあそうだ、戦いを止めるなら身動きを止めるか武器を手放させるか物理的に距離を取らせてしまえばいいんだから。
問題は……ロイドさんのことが目に入ってなかっただろう姉妹のナイフが半端なくヤバい位置に向けられてたこと。リーシャさんのナイフは後ろ手にロイドさんの目に向けて寸止めされているし、アミーシャのナイフは首の頚動脈を切りつけるように押し付けられている。どっちも狙いは人体の急所……本物の武器だったら寸止めされてるリーシャさんの方はともかく、アミーシャのナイフは頸動脈を切り裂いていてるわけだから、ロイドさんはほぼ確実に即死してるか、致命傷一歩手前だ。
「リーシャ、アミ姫、毎度毎度長時間の訓練お疲れさん」
「今回もだいぶ集中されてましたね……はい、ワジさん作のピンキーローズです」
「あ、まだ残ってたんだね、ソレ。カクテルなのにいいのかい?」
「本当は運動後に合わないかもしれませんが、効果が魅力的です……ノンアルコールカクテルですから、アミーシャでも飲めますし」
「あ、あはは……ひさしぶりだったので、つい熱中してしまいました……いただきますね」
「『つい』で人体の急所を狙い合う模擬戦なんてしないでくれ……俺、トンファーで距離取ってたのに致命傷って笑えないだろ……」
「っ!お姉ちゃん、私1kill……!」
「そうね、お互いだと引き分けだったから今回はアミーシャの勝ちかな」
「こらこら;でも当たってさえいればリーシャもヒットしてたわけだし引き分けじゃないのか?」
「いいえ、私はロイドさんが割り込んだと気付いた時点で決定打を与えることに躊躇い、寸止めで終わりました。この訓練ではお互いに殺し合うことが前提のものでしたから、最後まで躊躇わなかったアミーシャの勝ちです」
「そ、そうなのか……;」
俺ら以外の姉妹を迎えに来た特務支援課の人達が彼女達に近寄っていき、思い思いに声をかける。毎度毎度って……2人が訓練する度に時間を忘れてるってことか。そして、リーシャさんがノエルさんから何やらボトルに入っている飲み物を受け取り、それを見たロイドさんがため息とともにボソリとこぼした言葉で俺の見たものが見間違いじゃなかったことを知る。
首周り、目、脇、鳩尾、動脈の通る手首……あの姉妹はお互いが攻撃する時に、必ず相手の急所となる場所を狙っているように見えていた。対先生ナイフは人体に影響がないとはいえ、ゴム製だからそれなりの固さがある……それこそ、勢いをつけたら立派な鈍器になるだろう。トンファーを持つロイドさんだったから、攻撃が当たりはしたけどなんとか威力を殺せたんだ。
「それはいいとして……そろそろあの子達を呼んであげましょうか」
「ッ!……ぁ……っ」
「あらら……やっぱり気づいてなかったのね?」
「……お姉ちゃん、知ってた、の……?」
「んー、さすがに誰かまでは分からなかったけど、気配が増えた事は結構早くに分かってたわ」
こんなマジの殺し合い前提の訓練だったなんて、アミーシャ以外のE組の参加が禁止になるわけだよ。……リーシャさんの言い方的に、ロイドさんが割り込まなければアミーシャの目が狙われていた可能性もあるのに、2人してそういうものだって平然としてるのには若干の恐れを感じる。割り込んだ=邪魔者として遠慮なく狙われたんだろうロイドさんなんて明らかに引いてるし……
そうして声もかけられず、動けもしない間にリーシャさんが俺らという本来この訓練を見るはずのない存在がいることを示してしまった。1つのことに集中すると周りが見えなくなることがあるアミーシャは、案の定俺らの存在に気づいていなかったようで、サッと顔色を悪くしてリーシャさんの背中に隠れてしまった。……気配に敏感な彼女が気づかなかったなんて、どれだけ集中してたんだか。それだけひさしぶりに会えたお姉さんとの稽古が楽しかったんだろうけど。
「アミーシャ」
「か、カルマ……みんなも、その……」
リーシャさんの後ろに隠れた彼女は、明らかに怖がってる。俺らを、というより俺らに見られた事実に……彼女からすれば予想外もいい所、なんだろう。
だけど……俺はリーシャさんの背中にすがりついたまま顔をあげようとしない彼女をこちらに向かせたい。……〝アミーシャの事はリーシャさんが1番知っている〟……そう言ったロイドさん達の方が俺等よりも昔の彼女を、彼女の本質をよく分かってるのは理解してる。でも、それで納得して1歩引いたまま任せたままでいられるほど、俺は大人じゃない。
「勝手についてきて訓練を見たのはごめん。でも……俺の方から知ろうとしなきゃ、向こうで過ごしてたアミーシャに近付けないと思ったからさ。……進路相談の時より戦闘の時間が長いからかな、すごいじゃん」
「……ぇ……」
「これだけ色んな動きができることも、長時間動き続けられる持久力も、相手の急所を見極める動体視力も、アミーシャが俺らと同じ立ち位置にいるために抑えてくれてたこと……なんでしょ?」
「……そう、だけど……、……でも、……」
「なーに、なんか引かれるとか言われるとでも思った?」
声に感情の色が乗ってないな……倒れるとか過呼吸になってた時みたいな身体的な体調不良は見られないけど、怯えの混じった彼女の声からいつもの素直な温かさを感じない。
『来るな』みたいな約束を破ったわけじゃないから責めにくいんだと思うけど、彼女としてはまさかロイドさんが連れてくるとも思わなかっただろうし、見られたくなかったんだろう。返事を言い淀んでる理由だろうことを想像して聞いてみれば、図星だったのか大きく身体を跳ねさせた後、自信が無さそうにウロウロと視線を揺らしてから口を開いた。
「……、こわい、とか……ほんき、だしてない、とか……みんながほんきなのに、って……、……きらわれる、って……」
「そんなことないよ」
「!」
「アミサちゃんは元々ゼムリア大陸の方で人より強い魔獣相手に戦ってたんでしょ?だったら今年初めて戦うことを学んでる僕達よりできることが多くて強いのは当たり前だよ」
「うん、確かにすごい的確に狙ってる所とか音がしない動きとかにはビックリしたけど……今、アミサちゃんの強さを見たところで怖いとか、隠してて嫌いだなんて思わない!むしろすごいって思う!」
「……お前らには悪いが、俺は初めからE組の中でもアミサが突出して強いことには気付いてた」
「……!」
「え、そうだったの!?」
「カルマと同等、もしくはそれ以上……説明はできないが初対面の時から俺の触手が怯えていた」
「……そういや俺には直接言ってきたくせに、アミーシャにはなんか変な感じだったね」
「ああ。シロもE組にはこれから牙となるやつが何匹もいると言っていた……多分実験素体として欲しがってたくらいだからアミサもだ。だがお前は別に実力を隠していたわけじゃない、出す機会がなかっただけだろ。烏間先生との訓練は訓練でしかない、殺せんせーの暗殺も29人もいたら目立たない、俺を守ったりクラスメイトを守ったりしていれば前に出ることもない、『死神』の時だって役割上前に出るタイミングがなかっただけだ」
「そうだよね、プールの時も、『死神』の時も私を守るためにってずっとそばにいてくれたんだから。いつも私を庇うことを優先してくれてたもんね……そのおかげで私は大したことない怪我で済んだんだし」
「かえでちゃん……いとなくん……」
「それに、本校舎にいた頃に人と違うと異端扱いされるって学んだから、僕らに合わせてくれてたんでしょ」
『確かにアミサさんはデータから見ても手を抜いているわけでもない、でもパラメータ的におかしな数値が出ている時が度々。ですが決まってその数値が出てもおかしくないタイミング……ナイフ術で相手にとどめを刺す時、単独で索敵に出る時、本気の戦いに身を置いている時、そういう時だけでした』
「別にいいんだよ、まだ全部見せられなくても。何回も言ってるじゃん、俺も、律も、みんなも、教えてくれるまで待ってるからって。今回のことだって、アミーシャには不本意だったかもしれないけど、俺は知れて嬉しかった」
「……僕とカルマ君が一緒にいた時間は結構長いと思う……それでもお互いに知らないことはたくさんあるよ。それと同じなんじゃないかな?僕も、カルマ君も、茅野もイトナ君だって……他の皆がまだ知らないアミサちゃんのことを先に知れて嬉しいんだ」
「…………」
情報を提示し合える関係……交換条件や探り合いなんてしなくても信じられる関係。疑わずに信じることって、どんなに付き合いが長くても難しいことだ……むしろ、付き合いが長いからこそ人はその分信頼と同時に警戒もする。警戒というか……嫌われたくないっていう予防線をはる、というか。アミーシャとあの人達の間にはその警戒がほとんどない、それはそれだけ彼女から信頼されてるってこと……多分、俺は特別な関係に収まってはいても全てをさらけ出せるほどの信頼の域までは達してない。だから、迷ってるのかな。俺の言葉ではアミーシャを動かすのに何かが足りないみたいだ。
4人も援護してくれたんだけど、むしろ警戒させて余計にリーシャさんの後ろから出て来づらくしちゃった?まずったかなー……さて、どう攻略すべきか。そう次の手を考えている時だった。最初に声をかけてからずっと、何か考えている様子だった茅野ちゃんが、思いついたように口を開いた。
「……でもなんか、私には分かる気がするなぁ……」
「え」
「茅野?」
俺等を横目にさっさと近付いて行った茅野ちゃんは、リーシャさんに軽くお辞儀してからアミーシャの隣から軽く髪をかきあげるように頭を撫で始める。リーシャさんから顔を上げようとはしないけど、少し身動ぎした様子のアミーシャに、茅野ちゃんはいつものお喋りをしてるように話しかけていく。クラスメイト、というよりは……E組で公言しているとおり、アミサちゃんよりちょっとだけ大きいお姉さん、という感じで。
「アミサちゃんは、知られたくなかったんでしょ?男の人より……ううん、E組の皆よりも自分には色々下地がある分できることが多いってこと」
「…………、うん……」
「そっかぁ……いっぱい我慢してたんだね。いつも女の子の中で言ってたもんね、アミサちゃん的には守られるばっかりは嫌だって。だけど、E組皆がアミサちゃんを可愛がりたいと思って甘やかしてるからそれを言い出せずに溜め込んでたんだよね」
「……かも、しれない……けど……」
「私はそれでもいいと思うよ?片岡さんみたいに強い女の子ってかっこいいと思うし……むしろ、か弱く見えるアミサちゃんの新たな一面って感じでさ、すっごく新鮮。……カルマ君だって惚れ直したでしょ?」
「まあね〜どんなアミーシャも俺のだって思えば優越感でしかないし?まぁ、負けてる分悔しいのもあるけど、その分追いかける余地があるってことでもある。それに俺らは1人でなんでもできる天才じゃないから、1人でやる必要も無い。例えば俺でいうなら集団戦術を考えるのは得意な分実行役は任せる、とかさ。適材適所だよ」
「……」
今の訓練を見て俺が勝てないって感じたのも確かだから、今は追いかける立場でも、いつかは横に並びたい。本トなら前に出て守りたいけど、守りたい対象が自分より強くて逆に守られるとか、プライドバッキバキじゃん?……男女差別とか言うなよ、大事な奴こそ守られるよりは守りたいって思うのが男心ってヤツでしょ。
……っと、あとちょっとかな。茅野ちゃんのおかげで話を広げるきっかけができたし、アミーシャ自身も少し顔を上げてこちらを見始めたから、あと一押しで俺らが彼女を非難する気がないということを信じてくれそうだ。
「アミサちゃん達の訓練を見てたのは僕らだけ……どんな訓練してたかは聞かれるだろうけど、着いてこないこと、見ないことを選んだのは他のみんななんだし、詳しく広めるつもりなんてないよ。だから他のみんなはいつも通り、ね?」
「それにお前の一部を知ったからこそ俺達は秘密を共有したようなもの。息苦しくなったら……俺達を頼れ、俺も遠慮なく行く」
「イトナ君ったら;でも、私たちだってみんな隠してる刃はまだまだあるんだから。隠し事をしてるのはみんな一緒、それに完璧じゃないから頼りあうのもみんな一緒、だよ」
「アミーシャの重荷は俺も背負うから。これ以上にどんな秘密があったって、それを含めて俺の大事な、好きな女の子なんだから全部受け入れてあげる。だからほら、……一緒に帰ろう」
アミーシャは、みんなと違うってことを怖がってる。だから戦う力があることはみんなが知っていても、実際の実力を見たことがないクラスメイトにどう思われるかって気にしてるんだと思う。進路相談があったあたりで、自分を知られることで『1人になりたくない』って情緒不安定になっていたくらいだ。信じて、懐に入れて、離れたくないと思ってくれてる相手が、自分を見せた結果離れていくことを恐れている。
そして、アミーシャは嘘をつくことも苦手だ……俺や渚君のようにチラッと聞いてはいても全貌は知らせていないことも、嘘をついている気分になって悪いと思ってるんだろう。隠し事の一つや二つ、それ以上に誰にも言いたくないことなんて、俺にも、渚君にも、当然誰にだってあるだろうに……そんなに知られたくないことを、もしくはこういう小さな綻びから気付かれる可能性のあることを抱えているのか。
「……ッ!」
「っと、……痛いよ、アミーシャ」
アミーシャを撫でることはやめないまま茅野ちゃんは、空いた手をリーシャさんを掴んでいる彼女の手に重ねる。ゆるゆると顔を上げたアミーシャに対して、渚君が秘密を守ることを約束し、イトナが知ったからこその責任と頼り合うことを提案し、茅野ちゃんが誰もが秘密を抱えていることを示唆し、俺が全てを受け入れると告げる。
それでようやく安心してくれたのか、彼女はリーシャさんと茅野ちゃんの手の中を離れて俺に飛びついてきた。泣いてたとかじゃないんだろうけど複雑そうな表情を見る限り、自分の考えとか色々上手く飲み込めないんだろう。それでもリーシャさんから離れられたってことは、納得したのか落ち着いたのかってとこかな。何も言わないまま、ちょっと痛いくらいにしがみついている腕を軽く撫でていれば、一応聞こえたみたいで少しだけ緩めてくれた。
「ふふ、よかったねアミーシャ。少なくとも、この5人はきっと大丈夫……きっと、何があっても味方になってくれるわ」
「さ、そろそろ帰ろうか。E組のみんなやエステル達も待たせてるし、そろそろ本格的に暗くなってきたからな」
「だな。……コロセンセーには対戦はまた後日って言っとかねぇとなぁ」
「ふふ、待ってたのにー、とか皆さんだけずるいじゃないですかー、とか文句言ってくるかもね?あの不思議なセンセーどことなく人間味があるし」
「コロセンセーさんはおかしな見た目はしてますけど、言動はE組を第一に考えた素敵な人ですよ。育てること、導くこと、そして生徒一人一人を見ることを何よりも考えてくれてるのが伝わります」
「んー、でもまぁ、今日の所は指導についてまとめた資料とそれぞれの進路に活かせそうな適性についてまとめたレポートで手を打ってもらいましょう!生徒想いなあのタコさんならしょうがないですねーって受け入れてくれますよ!」
「今からレポートを……?……はぁ、さすがにめんどくさいです」
「家に帰ってから私も手伝うから安心してちょうだい。ティオちゃんはデータだけでも出して共有しておいてくれると助かるけど……」
「……言ってみただけです。アミーシャの大切な友達のためですから、ちゃんとやります」
いつの間にか俺等だけにして、話し終わったのを見計らったように少し離れたところから声をかけてくれたロイドさん達に手を上げて答える。そちらに向かえば早速何やら話し合いを……そういえば校舎待機の殺せんせーに、この人達との戦闘を条件にしてたんだっけ……、……この暗さで下手に延長するとか絶対危ないよね。その辺り先生も分かってるだろうから渋々でも受け入れてくれるとは思うけど文句は言うだろうな、と思って聞いてればフォローも考えてるようだった。ティオさんも面倒くさがってるとはいえさすがだ。
こうして、色々と思うところはあったわけだけど、無事にアミーシャ達姉妹を回収し、みんなの所へ戻ることになったのだった。
「すごいね、茅野……僕ら、なんて切り込めばいいかちょっと悩んだのに」
「あはは……たまたまだって。それに、最初からアミサちゃんに対しての好感度MAXの2人と、家族みたいに慕ってるイトナ君からすると、思いつかなくて当たり前だと思うよ」
「へ?」
「なんで?」
「……?」
「だって、女の子は強がりだから。特にアミサちゃんは鏡みたいな子だって言ったのはカルマ君じゃん。好意しか向けてこない相手に好意を返す上で、この子が心配かけようとするわけないでしょ」
「う……」
「それでも、さ……悔しいなーって」
「ふふ……こういうのは、女同士の方がよく分かってるってこともあるんだよ」
「……みたいだね」
「それに……」
「……?」
「……茅野?」
「……ううん気の所為!なんでもなかった!」
「そう……?」
「アミーシャ云々もそうだけどさ、茅野ちゃんだって話せるなら色々話しなよ。いつか溜め込んで爆発させそう」
「き、気をつけるね……
(危ない危ない……子役時代に演じてきた感情にそっくりだったから、なんて、私の正体バラすようなもんじゃん。あいつの暗殺が終わるまでは……最後まで演じきらなくちゃ)」
「(うあああああああああ……ッみんな……私いるの、忘れてないよね!?なんで私をはさんだまま私についての話をしてるのぉ……!?)」
「……すごいなカエデさん……」
「……うん、うまい具合に場の流れを誘導したね。アミーシャ本人もそれに気づいてなさそうだ」
「あれ、アミーシャにとっては肯定も否定もできない内容でしたから、そのままそれが真実としてまとまってしまいましたけど」
「……カエデさん、私に対して『すいません』って言ったんです。多分、アミーシャの意思じゃないだろうけどこの場をおさめるために嘘をつきます、ってことじゃないかと思うんです」
「すごいな、あの短い時間でそれだけのシナリオを描いてたのか」
「……あの子も多分、訳アリなんだろう……俺達が関わることは出来ない大きな何か、のな」
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少々更新が遅くなりました。後半のカエデの場面に少し迷いまして……使う言葉を選んでいたら遅くなりました。下手にやると、今後やりたいお話とダブりそうで難しかったです。今回悩んだ分、そのお話で使えそうな内容のストックができたのでバンザイではあります。
今話は第一部のインターミッションで姉妹の訓練を見に行っていた場合の世界線でした。見に行かなかった場合はオリ主の強さを見る機会が遅くなる→オリ主の隠し事を知れないためにオリ主が溜め込み、シロの言葉に惑わされる→E組は頼れない、巻き込めないからと離脱……という流れになってましたが、今回5人だけとはいえオリ主を受け入れるメンバーがいることで先の流れが少し変わりました。どう変わったかは今後を楽しみにしていただけると嬉しいです!
では、また次のお話で。読了ありがとうございました!