暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA144850ありがとうございます!

もうちょっと原作から離れたオリジナル話でいろんなものを深ぼっていくつもりなのでよろしくお願いします!




【絵】129話 訓練後の時間

 

 お姉ちゃんとの戦闘訓練なんて……3年、くらいぶりだったかな。向こうでやってたものとは色々条件が違うとはいえ、本気の、お互いを標的に見立てた、確実に殺すための訓練。……正直、殺せんせーを暗殺するための訓練というよりは、私がいつでも実戦に戻れるように、体がなまらまらないようにするための特訓だったけど、お姉ちゃんは文句も言わずに付き合ってくれた。

 ついつい熱が入りすぎて時間を忘れて気がつけば2時間くらい戦い続けてたらしい。私たちの間に割り込んできた障害を目撃者と判断して、暗殺のみに意識を向けていたからこそ『消さなくちゃいけない』としか考えられなくて、躊躇いなく急所を狙ったところで体に走った重い衝撃……それでやっと周りを見る余裕ができた。

 

 

 

〝……っ、ぶな……〟

 

 

 

 割り込んでトンファーを私たち姉妹に押し付ける形で止めてくれたのは、迎えに来ていたロイドお兄ちゃんで、その後にも特務支援課のみなさんが労ってくれて、……それだけだったらよかったのに、実はカルマたち数人が一緒に来て見てた、なんて。全然気づかなかった。血の気が引くような感覚と寒気がした。……だって、彼らが見ている前でやっていたのはただの戦闘じゃない、訓練の範疇から完全に逸脱したものになっていたから。

 ……隠してたのに。怖いって言われてしまう。いつもの訓練を本気で取り組んでないってバレてしまった。せっかく本気の私を偽って今日までやってこれたのに。嘘つきだって軽蔑されるかもしれない。みんなと同じでいられないと距離を取られてしまう……ううん、とっくに血に溺れてる私は、近くにいちゃダメなんだ。もう、いつもと同じようには、みんなの中には戻れない……そう、思ったのに。

 

 

 

〝詳しく広めるつもりなんてないよ。だから他のみんなはいつも通り、ね?〟

 

〝息苦しくなったら……俺達を頼れ、俺も遠慮なく行く〟

 

〝隠し事をしてるのはみんな一緒、それに完璧じゃないから頼りあうのもみんな一緒、だよ〟

 

〝アミーシャの重荷は俺も背負うから。これ以上にどんな秘密があったって、それを含めて俺の大事な、好きな女の子なんだから全部受け入れてあげる。だからほら、……一緒に帰ろう〟

 

 

 

 半分くらい試し行動のような勢いで腕を軽く広げて待ってくれているカルマに飛びつけば、しっかりと受け止めてくれたことに戸惑う……彼は無意識に出る反射ですら私を避ける動きが一切なかったから。言葉通り私そのものを受け入れてくれているのが感じられたから。こんな、たった今、人を殺せる動きをしていた私を見ていたのに……自分が殺されるかもしれないとか、殺意を向けられる恐怖が無かったというのか。それともそれすら背負おうとしてくれているというのだろうか。

 それは渚君も、カエデちゃんも、イトナくんも……みんな嘘でも、今だけの建前でもなくて。今の私を含めて、全部が私なのだと認めてくれる言葉と態度なんだって、分かってしまった。……ああ、この人たちは、ホントに……信じられなくて疑って、警戒を向けて拒絶しようとする私に、手を伸ばしてくれる……この場所は、どうしようもなくあたたかい。

 

 

 

「ふふ、よかったねアミーシャ。少なくとも、この5人はきっと大丈夫……きっと、何があっても味方になってくれるわ」

 

 

 

 うん、そうだね、お姉ちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、やーっと帰ってきたわね!おかえり!」

 

「お、遅くなりました……っ」

 

「あらまあ泥だらけ。しっかり訓練つけてもらったの?」

 

「怪我とかは無さそうか……時間を忘れるほどやってくるとか真面目だな」

 

「楽しすぎると時間を忘れるって言うでしょ、それじゃないのー?」

 

「……っ」

 

「あ、隠れちゃった。久々でちょっと感慨深いけど指摘しないほうがよかったかなぁ……」

 

「あーあーカルマの後ろに隠れちゃって。……コレ見たあとだと余計になんか懐かしいな」

 

「ロイドさん達もおかえりなさーい!」

 

「あ、あぁ……ただいま?」

 

 裏山を出て校舎の方へ戻ってくると、集合しているのはE組のみんなとエステルお姉ちゃんたちだけでなく、校舎で待機することになっていたはずの殺せんせーまでもが一緒に待っていてくれていた。みんなはともかく殺せんせーに関しては待ちくたびれちゃったんだろう、私なんて校舎からはとても見えない場所で訓練してたわけだし、心配もかけちゃっただろうから……申し訳ないことをしてしまった。

 なのにみんなはしきりに私が楽しかったか、やり切れたのかって聞いてくるだけで、だいぶ待たせてたと思うのに気にもしてない様子。それどころかみんなが口々に懐かしいとか言って殺せんせーを中心に集まって、何か見てる……?返事をしたロイドお兄ちゃんも何となくみんなの雰囲気に狼狽えてるというか、戸惑ってるというか。

 

「おかえり。やっぱり姉妹揃って随分熱中してたんだね」

 

「ただいま。予想通りだったし思った通り止めるのには覚悟してても恐ろしかったよ……君達にこっちを任せきりにしちゃってごめん。ありがとう」

 

「ただいまー!あっコロセンセーもいるーっ!」

 

「もう訓練も終わってるでしょうし、さすがにもうそろそろ合流しても構わないかと思いまして」

 

「悪かったな。コロセンセーを呼びに行かず姉妹を迎えに動いちまったし、ヨシュア達が残ってくれててよかったわ!」

 

「まあね。こっちに残って待ってた分、先にいいものを見せてもらったよ」

 

「いいもの……?」

 

「ええ、お兄さん達も絶対に見たいものばかりだと思うわ」

 

「俺達がぁ?」

 

「どういうことかしら……?」

 

「何を見てるんですか?」

 

「ヌルフフフ……見ますか?きっと貴女方にとって新鮮で微笑ましく映りますよ」

 

「イトナも来いよ、お前も知らないやつだから」

 

「はぁ?」

 

「ねぇ、お前ら本ト何やってんの?」

 

「若干、嫌な予感が……」

 

 キーアちゃんが殺せんせーのところに走っていき、抱きつきながら先生の持ってる何かを覗き込んでる。というか殺せんせーが持ってるというよりみんながスマホを出してるから殺せんせーだけじゃないような……スマホで見せるものといったらメールとか写真とか動画とか……そういうのかな。

 カルマが歩くのに合わせて背中に引っ付いたまま殺せんせーの元へ向かうと、殺せんせーから、みんなから隠しもせずに見せられたそれは。

 

「「んなっ!?」」

 

「ひぇ……っ!?ず、ずっと前の写真……!?」

 

「わぁあ!アミーシャ、どれもかわいいねっ!いろんな顔してるーっ」

 

「お友達に囲まれてアミーシャちゃん、楽しそうですね!すごく自然な笑顔ですし!」

 

「本ト……いいお友達に恵まれたんですね。あっちでは全然見れなかったから嬉しいです」

 

「どれどれ……ふは、どれも誰かと笑ってる。作った笑顔なんかじゃない、文字通り花が咲くようないい顔をしてるじゃないか」

 

 誰が撮ったんだろうってくらい懐かしい中学1年生の髪が長かった頃の私。だいぶぼやけてるし、別の誰かかものを被写体にした何かに映りこんだのを拡大したんだろうけど……よくこんな前の写真を持ってる人がいたなって思う。ひとりぼっちだったからこそ、私でもこの頃の姿は客観的に見たことないし、記録も持ってない。

 それ以外にも4月の最初の頃、カルマや渚君の後ろに隠れてる私や、初めて女子会なるものをファミレスでした時のちょっと涙目な写真、修学旅行の時にE組の友だちと笑ってる写真、変装して陽斗くんとちょっと似た雰囲気に寄せようと真似している写真、夏休みのホテル潜入で女装した渚くんとちょっと照れた顔で並んでる写真、夏祭りの浴衣で輪投げを真剣な顔で構えてる写真。……それ以外にも、今日までにいつの間にか誰かが撮った私や、E組のみんなが写った写真たち。

 

「な、なんでこんな、いろんな写真見せて……」

 

「そりゃあ会えなかった分の真尾を見てもらうためだろ」

 

「家族なのにアミサちゃんの成長を近くで見守れないなんて、寂しいに決まってるもん」

 

「アミサだって会えないのは寂しいって言ってたじゃない。みなさんだって同じよ。……だから、写真だけでも会えなかった分の思い出をこうやって共有するの」

 

「ぁ……」

 

「……アミサさん。そのまま顔を上げて」

 

「……え?」

 

 

 

 ───パシャ

 

 

 

 殺せんせーの声で顔をあげるといつの間にか向けられたカメラ。驚く間もなくシャッターが切られ、差し出されたのは中1の頃の私とたった今撮られた写真。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「先生はアミサさんが中学一年生の頃の姿はE組の皆さんが見つけたこの写真以外に見たことがありません。きっとあなたの家族も知っているのはこのアミサさんのはず……どうです、今のあなたと比べて」

 

「どうって……、……えっと……」

 

「ふむ、アミサさんにはちょっと質問が難しかったですね。言い方を変えましょうか……どちらのあなたも手を胸の前で組んで1人で立っているのに変わりはありませんが、今のあなたの方が前を向いて背を伸ばして立っているとは思いませんか?」

 

「…………こ、れは、急だったからつい、」

 

「いいえ。アミサさんは普段のE組でもこうして立ってますよ。それにもう『1人』の意味も違います。誰にも頼れないひとりぼっちの『1人』ではなく、友達に頼り、支え合えるようになったからこそ自立して立てるようになった『1人』の姿。……大きくなったんですねぇ」

 

「……殺せんせー……」

 

 小さな黒い目を細め、私の頭を先生の触手で撫でながら自分の事のように笑う殺せんせー……改めてもう一度2枚の写真に目を戻す。中1の私は長い髪の毛で顔も体も全部縮こまらせて隠し、誰とも一緒にいられない雰囲気が写真からも伝わってくる。逆にたった今殺せんせーが撮った私は、顔を上げて体が強ばらず自然に立っている。……私、E組に来てこんなに前を向けるようになってたんだ。

 

「ちょっとコロセンセー?僕達保護者代わりと家族を差し置いてそんないいこと言わないでくれないかな」

 

「わ、」

 

「ホントです。そういうのは会えなかった私達が言ってこそじゃないですか」

 

「ニュやっ!?それはすみませんでした!」

 

「まぁまぁ……ティオちゃんもワジ君もその辺にしましょ」

 

「それにしてもアルバムにでもまとめたいくらいいい表情だ。君達姉妹は写真写りもいいし前からグラビア撮影でも通用しそうだと思ってたし……写真集として売られててもおかしくないくらいじゃないか?」

 

「ふふ、もし発売するならすぐ買わないとですね。コロセンセーさん、みなさん、こちらの写真をいくつか頂いても?」

 

「「「もちろん!」」」

 

「俺はあっちの顔真っ赤にしてる2人をからかいに行こうかね〜」

 

「程々にしてあげてくださいよ……」

 

「クスクス、写真ひとつでみんな楽しそうね」

 

「あ、そーだ!カエデちゃんも何か写真あったりしないの?迎えに出てたから聞けなかったのよね〜!」

 

「わ、ありますよ!……えーっと、これとか……」

 

「僕も見ていいかい?……これは……」

 

「氷のお花だー!カエデ達ちっちゃいね、すっごく大きな氷を作ったの?」

 

「……立派なプリン型の氷像……ここまでの規模となるとアーツかな」

 

「そうです!殺せんせーの暗殺の一環でやったやつなんですけど、指先でチョンって触れた瞬間のコレですから、……一瞬で氷の華が咲いたみたいでした!」

 

「すっごいわねー……あたしの導力器でもこの規模のアーツは撃てるけどこんな芸術的には無理だわ……」

 

「エステルは大雑把だしね」

 

「あんですってーっ?」

 

 ……ワジお兄ちゃんとティオお姉ちゃんが殺せんせーに文句を言いながら私を撫で、抱きしめる。エリィお姉ちゃんが2人に声をかけつつE組のみんなに写真を見せてもらって嬉しそうにしてる。ロイドお兄ちゃんとリーシャお姉ちゃんがどの写真がいいか何か話し合ってる。……きっと、もっと前の私ならひとりぼっちに押しつぶされそうな姿なんて見られたくなかっただろうけど、今は見られても恥ずかしいとは不思議と思わない。むしろ、私がここで得られたものを見てもらえて、それを喜んでくれてるのを感じて嬉しいくらいだ。

 レンお姉ちゃんが楽しそうに笑い、エステルお姉ちゃんとカエデちゃんとヨシュアお兄ちゃんがキーアちゃんの指摘でアーツの規模について何やらおしゃべりしてる横で……あれ?ランディお兄ちゃん、ノエルお姉ちゃんに軽く止められつつどこに行くんだろ。

 

「ちょっと待って百歩譲ってアミサちゃんの写真を見せるのは分かるんだけどなんでホテルに潜入した時の僕の女装まで見せてるの!?」

 

「可愛いと思って。アミサと双子コーデ……違和感ないし」

 

「速水さん!?」

 

「ミスコンの前にも女装済とか言われていたのはこういうことか……これは確かに……お前マジで男なんだよな?」

 

「誓って男ですよ……」

 

「あ、でも……あの時は暗かったし急いでたから写真だけ撮ってじっくり見てなかったし、今回のミスコンも肩周りと首元隠す衣装だったよね?こう、ちゃんと見るとさ」

 

「……渚、アミサに比べて肩幅あるね。華奢ではあるけどちゃんと見れば女装だって分かるや」

 

「似合うけど、やっぱり渚も男だねぇ」

 

「ふむ、俺目線こうやって違和感ないポジションに溶け込みつつ、自分を持ち続けて、ここぞという時に力を発揮するポジションが向いてると思うぞ……ナギサ、女装はさておきこれはお前の天賦の才だな!」

 

「……!」

 

「岡島ァ!!!なんでよりにもよってこれチョイスしてんだよ!?!?」

 

「うわやべ俺ってバレてる!!ギブギブギブッッ」

 

「で、あっちの地獄のプロレスは何」

 

「『ねえさん天然炸裂の結果カルマをプールに沈めた事件』を撮った犯人をシメてる現場だ」

 

「誰だイトナにこんな説明した奴」

 

「間違っちゃいないけど」

 

「そりゃあプールでカメラ持ってたの岡島君だけだったもん、バレるって;」

 

「ふ、くく……どの写真もカルマはアミーシャのことしか見てないね。これでこの頃は自覚なしってホント?」

 

「な、は、誰だよこの人にバラしたの!!」

 

「ほぼ全員に決まってんだろ」

 

「1番面白い時期だったんだから」

 

「むしろなんでバラされないと思ったんだ」

 

「ぐっ……ワジさんに言ったら面白がられるに決まってんじゃんかこの人こういう性格なんだから……ッ」

 

「カルマ君も似たような性格だと思いますよ……」

 

「ね、修学旅行の時もすぐに煽って楽しんでたもの」

 

「奥田さんと神崎さんが強い……」

 

 渚くんの方はほんわかしてるし、どことなく嬉しそうな雰囲気だなーって思えてたのに、カルマの方は何か鬼ごっこが始まって、て……あ、岡島くんが捕まってカルマに締められてる。でもあれもじゃれあいの域、なのかな。

 みんなが笑って、嬉しそうで、楽しそうで、幸せそうで……やっぱり命に向き合うホントの意味を知らないみんな。今を精一杯楽しんで、いろんな理不尽に苦しみながらも、みんなで手を取って協力しながら乗り越えて、何も知らないまま生きてるみんな。そんなみんながいるから、私は殺せんせーが言うような『1人』になれたんだ。もう、私はひとりぼっちのアミサじゃない。

 

「……ね、アミーシャ」

 

「……どーしたの?キーアちゃん」

 

「アミーシャは今、幸せ?」

 

「……私、こっちに来て寂しい思いもたくさんしたし、怖いことも誰かを信じるのが嫌になることも、いろんなことがあったから……正直幸せってなんだろって思ってた。多分、みんなに会わなかったらずっと知らないままだったと思う」

 

「うん」

 

「だけど。……私、E組のみんなに会えて、先生たちって信じてもいい人たちを見つけて……ホントに抱えきれないくらいたくさんの幸せをもらってる。だからアミサはここにいれて幸せだよ」

 

「……そっか」

 

 ちょっと心配そう……というか、何か言いたそうな顔で近くに来たキーアちゃんに、今の気持ちを素直に伝える。きっと、少しだけ『私』という隠さないものを受け入れてくれる人を見つけたからって言うのもあるんだろう。すごく、心が軽い。だからこそ、この居場所は無くしたくない。何よりも譲りたくない。……そう思えたのも、きっと。

 

「えへへ……私、みんなのことがだーいすき。だから……わぁっ!?」

 

「なーに可愛い事をこっそり言ってくれてんだよ!そーゆーのはみんなの前で言えよな!」

 

「ひ、ひろとくん!?え、あ、み、みんなもきいてたのっ!?」

 

「あんたの話で盛り上がってんのにあんたが注目されてないはずないでしょ、もう」

 

「大事なクラスメイトであり妹分の愛の言葉を聞き逃すなんて兄貴分がするわけねーだろ?舐めんなよ!」

 

「前原はただのチャラ男じゃん」

 

「っておいッいいこと言っただろ俺!!」

 

「私もあーちゃんだーいすき!」

 

「ちょっと前原、あっち行って!」

 

「俺がコイツらの内緒話に気付いて教えてやったってのにひでぇ扱いだな!?」

 

「勝手に俺1人が分かってます〜って感じに話すからでしょっ!」

 

「真尾の言う通り、誰が欠けてもその時点でもう俺らが好きなE組じゃないもんな。俺もそうだ、みんなだから好きなんだよ」

 

「そうそう、このメンバーがいてこそE組だもんね!ウチはどのクラスにも絶対負けないよ!」

 

「当然先生達も好きだぜ!こんなに俺らに向き合ってくれる大人って親以外じゃ殺せんせーと烏間先生とビッチ先生だけってくらいだもんな!」

 

「お前も素直すぎだよ……その通りだけどさぁ」

 

「ま、E組は闇が浄化されそうなくらい居心地いいものね」

 

「俺も真尾のことが好きだよ。もちろん友達として、ちょっとした時に頼ってもらえるクラスメイトとして、な!」

 

「愛してるはお前の彼氏の専売特許だかんな〜」

 

「当たり前でしょ、女子はいいとして男子はさっさと離れてよね」

 

「うわ、もう復活してるし」

 

「心狭いぞ、俺らは友愛だっつってんだろ」

 

「E組も、先生達も、みんなが好きですよ。私もE組でよかったっていつでも思ってますから」

 

「ヌルフフフ、友愛、親愛、恋愛、師弟愛、兄弟愛……同棲異性関係なく様々な愛情がありますが、人に好意を持って好意を返す関係性はやはりいいですねぇ。誰も不幸にならない、むしろ結束力を高めて気遣い合い、ひとつになれば決して途切れない絆が生まれ、何よりも得がたい経験となる。これは必ずみなさんにとって将来大きな力となるでしょう」

 

「……こんなちょっとした事ですら授業かよ」

 

「あはははっ!」

 

 うーん……キーアちゃんに聞かれたことに、今の気持ちで素直に答えただけ、だったはずが……なんか、いつの間にかみんなの告白大会みたいになっちゃった。

 

 ……だからこそ、改めて決めたよ。こっちにいる間、私の強さはさいごまでこの人達を守るために使うって。傷つけるために使いたくないからこそ、過集中に陥らないように自分を見失わないように。……なったとしても、もっと周りを見れるようになる。それでこそ、守りたいものを守れるって言えるはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

「……、……、…………」

 

「アミーシャ、先に寝てきていいんだぞ」

 

「……やだ……まだねない……」

 

「そんなこと言ったってもう半分くらい寝てるわよ。ほら、ここで寝落ちるくらいなら部屋に行きましょう?」

 

「……んーやー……カルマ、ねたらかえっちゃう、さびし、から……おきてるの……」

 

「あら」

 

「……いつものこの時間に寝ることないから……俺が帰るの寂しいって思ってくれてたんだ」

 

「お前普段泊まらず帰ってんのか……ヒュゥ、紳士だねぇ」

 

「正直、週末は泊まってることが多いのかと思ってました」

 

「夕飯まではほぼ毎日一緒にいるけど泊まりはもう滅多にしないよ、あってアミーシャが不安定な時とか、体調悪い時とかだけだし。アミーシャも恋人って関係での距離間をちょっと意識しだしたから……そもそもアンタらも妹が夜に男と一緒とか心配するでしょ」

 

「カルマさんって趣味嗜好がサディストな割に倫理観というか根幹は常識人ですよね」

 

「それ褒めてる?」

 

「見たままを言っただけです」

 

「……まぁいいや。ほら、久しぶりに烏間先生の訓練以上に本気で動いたから疲れたんでしょ……俺、この人達と話したいから泊まってくし明日もいるから今日は寝といでって」

 

「やだぁ……いっしょなの……」

 

「……、ねぇ、あんたらいるからか異常に甘えたなんだけどどうしてくれんの。俺そろそろ断れなくなってくるんだけど」

 

「あ、あー!キーアも眠くなっちゃったなー。ね、アミーシャ、キーアが寝るまで一緒にお布団いて……?」

 

「……ぅ、」

 

「キーアが寝たら戻ってきていいからっ」

 

「……、……んー、キーアちゃ、ねるま、で……」

 

「っと、……若干まだ意識はありそうだけどここらが限界だな。キーア、部屋に行こうか」

 

「はーい」

 

 戦闘指南の後、それぞれが帰宅した夜。俺は元々約束してた通りアミーシャの家に泊まりに来ていた。今は夕食も終わって団欒……が始まったばかりの午後7時。アミーシャは夕食前からうつらうつらと目をこすり眠たそうにしていてだいぶ抵抗もしてたけど、キーアの棒読みの誘いを受けて手を繋いだあたりで、かくんと力が抜けた。

 いつももっと遅くに家を出るし、彼女も笑顔で送り出してくれるから……こんな寂しいと思ってくれてたのは知らなかった。あの状態でもキーアにはお姉さんぶろうとしてたけど、それまでの言動で台無しだ……まさか眠すぎてこんなに幼児退行するとか。……今この場にはアミーシャにとっての味方しかいないから、かな。

 

「それにしてもあの子……薬物耐性があったのかしら。副作用は無いとはいえ途中で起きない程度の強めの睡眠薬のはずなんだけど」

 

「時間調節も効き方もよかったんだけどね、あんなに抵抗するとは思わなかったよ……しかもまだ完全には寝て無さそうだったしさ」

 

「クスクス、耐性もだけど寝たくないって意思が強すぎたのかもしれないわね」

 

 横抱きにして抱き上げたロイドさん曰く、寝てるように見えてまだこちらの声は聞こえてそうだから、キーアにはついてってもらうことになった。キーアを寝かせるために部屋に連れてくのに、いなかったら安心して寝かせられないからね。

 こんな寝るには早すぎる時間にアミーシャが寝落ちるなんて、リーシャさんのと訓練でそんなに疲れたのか……なんて思ってたのに、レンさん曰くヨシュアさん監修の元で一服『盛った』らしい。いつの間にかと思えば訓練後の水分補給でって……あんな前に違和感なく飲ませてこの時間にタイミングよく眠らせられるんだ、……怖。いや、アミーシャには聞かれたくないことだったからありがたいんだけど、そんな軽くバラされるとは思わなかった。

 

『おいちょっと待てや訂正しろ。倫理観ある奴はわさびとカラシを常備して人の鼻に突っ込むようなイタズラ道具にしねぇんだわ』

 

『う、うーん……カルマ君が常識人かぁ……正義感は分かるけど常識って括りに入れていいのかな……』

 

「と、彼らは言ってますけども」

 

「やだなぁ、俺はいつでも正直に生きてるだけだって」

 

『手が出るって付くだろそれ』

 

『というかサラッと流しましたけど盛ったって……』

 

「だって別の場所に連れ出す理由もなかったもの、家なんだから眠らせちゃえば話は早いわよね。キーアを寝かせるって大義名分もあるから、先にあの子が寝落ちたって一緒に布団に入ったら寝ちゃったってことにもできるし」

 

『軽い軽い軽い;』

 

 ここで、この家にいるハズのない寺坂と渚君の声が俺のスマホから流れた……今、俺のスマホはE組でアミーシャを除いた全員が入ってるグループチャットで通話状態になっている。

 元々はアミーシャの写真とか動画を撮った女子に色々共有してもらってたのを、わざわざ個人でやり取りするのが面倒だからって作ったグループだったはずなのに、いつの間にか本人以外は全員参加してるっていうね。こんな使い方するとは夢にも思わなかったけど、話せなくても通話にだけは参加しておくってクラスメイトを含めて多分全員通話に上がってきてくれている。途中で聞けなくても律が『私がまとめますのでご安心ください!場合によれば先生達にも共有します!』だって、手厚いよねぇ。

 

「で、カルマは何が聞きたいの」

 

『わざわざアミサちゃん以外で来れる人はってE組も招集するんだから、彼女に関わる何かだってことは分かるけど……』

 

「……」

 

 このまま和気あいあいと団欒を楽しみたいところだけど、相談相手として最初に声をかけておいたワジさんと通話口の渚君が話を促してくれた。他のみんなも空気を読んで待ってくれてるみたいだし、そろそろ、俺の荒唐無稽な話を聞いてもらおうか。

 

「……あのさ、未来予知とかパラレルワールドとか。そういうオカルトチックな話、どこまで信じる?」

 

『『『……はぁ?』』』

 

『いやいやいや、どれも夢物語じゃね……?』

 

『あったらいいな、じゃんそれ』

 

『信じたいものだけ信じる、占いみたいなものでしょうか……』

 

『まあ、俺らのクラスも大概だからあってもおかしくないなとは思うけどさ。殺せんせーって超生物が存在するのは確かだし』

 

『それもそうね』

 

「パラレルワールドかぁ……あるんだったらみんながいる、不幸のなかった世界がいいわね。あたしは2人が家族になったところを近くで見て欲しい人達がいるから」

 

「そう、だね」

 

「………………」

 

「でもこれが、私達が選んで進んできた道だから出会えて、家族になれたとも言えるでしょ。だからああすればよかったとか後悔はしない。そうじゃなきゃレーヴェにも、カリンさんにも、お母さんにも失礼でしかないもの!」

 

「……うん、確かにそうだ」

 

「……ホント。エステルって前しか見てないわよね」

 

「失礼な、周りはちゃんと見てるわよ」

 

「レンが言いたいのはそういう意味じゃないと思うけどな……」

 

 思った通り、クラスメイトは困惑しつつ無い寄りの意見だ。一緒に俺の問いかけを考えてくれてたエステルさんとヨシュアさん、レンさんには亡くして取り戻したい人がいるんだろう。それでも返答からして、可能性に縋るのではなく今生きる場所を全力で生きるって気持ちがあるんだろうな。

 

 ……対して。

 

「「「…………」」」

 

 クロスベル組はなにか思うことがあるのか黙りだ。

 

『……なぁ、それ……ロイドさん達がこっちに来る前、≪碧の大樹≫について真尾から話を聞いた時にそんな感じの話してなかったか?』

 

『杉野……』

 

『何それ?』

 

「……過去に、ゼムリアの方には不幸なことは無かったことにして、現在の願い、これからの未来を思うがままに操作できる存在があったんだって」

 

『……≪碧の大樹≫の紡ぐ力、だっけ。杉野よく覚えてたね?』

 

『ははー……あんときゃ盛大に真尾の地雷を踏んだからな、俺でもさすがに覚えてるわ』

 

 俺自身この人達の反応は予想通りだったからそのまま俺の口から話そうかと思ったのに、スマホの通話口の、意外なところから声が上がった。当然あの場にいなかった生徒ばかりだから、キーアの名前は出さずに概要だけ話す……渚君も察してくれた。さすがに≪碧の大樹≫の全容は俺らの勝手で話すわけにはいかないからね。

 

『確かに現実的にもそんな存在がいて、色々書き換えてるんだったらそりゃもうパラレルワールドだわ。漫画的にも過去を書き換えて結果を変えてくストーリーってファンタジーの世界じゃ王道だもの!死んで世界をやり直す的な?』

 

『ゲームで言う【強くてニューゲーム】みたいなやつか』

 

『でも、やっぱりあくまでもフィクションだろ?』

 

「……それが、この話と関係するのかい?」

 

「……学園祭前にさ、殺せんせーの進路相談があったんだよ。相談中に個人で暗殺しかけてもいいですよーって……お前らも暗殺仕掛けた奴いるでしょ?殺せんせー、俺の時にはトゲ生えて模様だらけになって浮腫んで口すぼめてたくらいだし」

 

『あぁ、模様は俺だな。俺は暗殺じゃなくて普通に描いただけだが』

 

『棘は多分私ね、呪いを試したの』

 

『濃硫酸だけでも相当でしたけど、カルマ君と中村さんが虫の卵混ぜてましたから……変質してたかも……』

 

『なんて劇物を生み出してんだよお前らは』

 

『原の弁当で浮腫んだって言ってたぞ、塩分で殺しに来てるって』

 

『あらわざと少しだけ塩辛く作ったのバレてたんだ。それで?カルマ君的に私達の暗殺の内容までは別にどうでもいいんでしょ』

 

「……、アミーシャも暗殺仕掛けてた1人でさ。最終的に寸止めで終わってたけど、……BB弾を利用して触手を5本近く溶かして……あと10秒もあれば殺せんせーの心臓にナイフが届いてたかもってくらいすごい暗殺だったよ」

 

『1人で!?』

 

『マジか……』

 

『あ、殺せんせーに確認してみたところ、教員室が狭いことと突発的に行う暗殺だから1分だけに限ってやったんだそうです。死ぬかと思いましたって返信が』

 

『律の仕事が早い』

 

『もう先生達もこのチャットに入れたいよな』

 

『さすがに先生と個人的に繋がるのはまずいでしょ……烏間先生もそう言ってたしさ』

 

 そう、殺せなくてもたった1人でナイフが届く暗殺を仕掛けてたアミーシャは、途中から目撃した俺目線でもとにかくすごかった。同時に、見えるはずの無いものを見た暗殺でもあったわけで。

 

「……その暗殺で、さ。……()()()進路相談してたはずのアミーシャが今日のリーシャさんの戦闘装束と同じものを着て殺せんせーと向き合ってたんだ。……しかも腹を、触手で突き破られて、大量に血が吹き出してて……あれは明らかに致命傷だった」

 

『『『「「「!?」」」』』』

 

「でも相談が終わったら()()姿()のアミーシャが平然と教員室出てくるからさ……もう、意味わかんなくて。頭ん中に映像が見えたって言うか……俺自身見間違いかと思ったし、アミーシャにも聞いたけどあの子が何かした訳でもなさそうでさ。……正直知らない服装だったからさぁ、俺の妄想か何かだって思ってたよ、……今日、リーシャさんの戦闘装束を見るまでは」

 

『……!そっか、見たことないはずの服装がリアルにあるってことは……』

 

『妄想だとか空想じゃなくて存在するものってことになるもんな』

 

「するってぇと……お前さんが見たのは未来に起こりうることかもしれないと考えたわけか」

 

「うん。……今日リーシャさんに確認したら、向こうでは同じデザインの戦闘服をアミーシャも着てるって言うじゃん?……だったら、俺が見たのは未来の話かパラレルワールドだって思った方が納得できない?って思って。こんな荒唐無稽な話、信じてくれるかわかんないけど」

 

「それで君、訓練中ずっと集中してなかったわけ」

 

「……うん」

 

「ワジ君、これって……」

 

「……キーアとロイドが戻ってから詳しく話すべきだけど、想定できる範囲でだけでも詰めておこう」

 

 他の人達は目配せしてる様子はあるけど何も言えないらしく困った表情な中、少し悩む様子を見せたワジさんが、代表して口を開いた。多分、最初にワジさんへ話を通しておいたのは正解だったのかな。

 

「さて、どうしたものかな……結論だけ言えば、その現象に心当たりはある」

 

「!」

 

「ただ、確証がもてないってことは分かっておいて欲しい。……カルマ、そのアミーシャの暗殺の時に、金色か銀色、もしくは黒色の光を見なかった?」

 

「……光……銀、なら見たかも。……あと、今日の訓練以上に素早い感じがしたから、アーツの≪クロノドライブ≫だっけ、それ使ってたかもしれない」

 

「……『時間』と『認識』を司る黒耀と銀耀か。あの子は《空》属性はそこまで得意じゃないことを踏まえても……潜在的な魔力量を考えればあってもおかしくないね」

 

『《空》……残りは《幻》と《時》だっけか。懐かしいな〜、真尾が戦術導力器の授業をみんなの前でしてくれたの!』

 

『えっと、人が操作できないような事象にあたるのが、確か……上位属性ってやつですよね』

 

『ん?つまり、ワジさんの言う通りなら……アミサが教員室の中をおかしくしてたってことにならない?』

 

「当然アミーシャはコロセンセーの暗殺のために動いてただけだろうし、そんなことするつもりはなかったと思うよ。ただ、暗殺のためにアーツを発動しようとして……多分、正規の使い方をしなかったんじゃないかな」

 

 

 

 ……俺は、薄々自分の中で答えを出していたのかもしれない。それを、この人達に肯定して欲しかったのかもしれない。

 

 

 

「アミーシャは、《幻》属性に限っては戦術導力器を使わなくても銀耀の力を操作することができるんだ。本来僕達が生きる場所は霊的に下位の次元にあるとされ、女神の住む世界は交わらないから、そんな磁場は人工的に作れないはずなんだけど」

 

「七耀教会の聖典に基づく基本理念でしたっけ?」

 

「うん。でも上位属性を司る存在(ひと)を人工的に生み出せた事例があってね……ああ、アミーシャは上位存在でもなんでもないただの人間だから安心して。話を戻すけど……多分、カルマが見たそれは偶然条件があっていたんだろう」

 

「条件……って……」

 

「憶測でしかないけどね。1つ、《幻》と《時》をほぼ同じタイミングで行使したことにより磁場か何かを歪めていたこと。2つ、見たものが実際に起きた場所に近かったこと。3つ、同じような構図が重なったこと。4つ、……カルマが当事者、もしくは目撃者、だったこと」

 

「……っ!」

 

「1番アミーシャちゃんの近くにいたはずのコロセンセーがその光景を見てないなら、それがしっくりきますね」

 

「しかもカルマが見てるのはあくまでも『触手に腹を貫かれ致命傷を負うアミーシャ』であって、『コロセンセーに殺されるアミーシャ』じゃない。……多分、そこに関しては別の何かによって、だと考えていいと思う」

 

「……そっか」

 

「ただ……」

 

 

 

 あの時、アミーシャは言っていた。警察組織で保護されてた子が≪至宝≫を人工的に作り出すために生み出された子なんだと。その子が特務支援課の人達を守り、幸せな未来を作るために≪至宝≫となることを選んだと。

 その保護された子がキーアなのは、彼らと接していけば自ずと分かることだった。約2年~3年前に崩壊した≪碧の大樹≫として、何らかの過去を書き換え、未来を構築したのだろう存在だということも。そして、書き換えられたことを書き換えられた本人は自覚できないのだということを。

 

 

 

 ───ガチャ

 

 

 

「……カルマ君が見たのは、あったはずの未来。これから確実に起こる未来予知とは違って、世界の理を書き換える前に起きたことなんだろう」

 

「ロイドさん、キーアちゃんもおかえりなさい」

 

「アミーシャちゃんは?」

 

「はは、やっぱり慣れない疲れもあったみたいで布団に入れたらすぐ寝たよ。あの感じだと朝まで絶対起きないだろうし、ここまでやれば聞こえることもないから大丈夫なはずだ」

 

『それよりロイドさん、あったはずって?それに書き換えるとか……』

 

『ねぇそれ、さっき杉野君とカルマ君が言ってたやつじゃない?』

 

「私達も、一度同じ経験をしてるんです。とある犯人を捕まえる際、自分達の力を過信して単独逮捕に踏み切ったことで想定外の返り討ちにあい私達は全員殉職した……はずでした。でもその歴史をは無かったことにされて、今ここで生きています」

 

「俺ら自身、カルマみたいに実際に自分が殉職した光景を見るまでは信じられなかったよなぁ……」

 

「ホントよ……まさか過去のちょっとした選択で戦力が変わったとか、助力を得られる結果に変わったとか……未来は選択の上に成り立つとかいうけど、実際に体感するとは思わなかったもの」

 

「でも、例え間違って悲劇を起こしたとしても、それを無かったことにするのは、それに関わった人の尊厳を犯すこと。それじゃあ人は成長できない……そう、教えたんだけどな。まさかその時にはとっくに力を使った後だったとは思わなかったよ」

 

「違うよ。ロイドが教えてくれた時には、もうやり直してる今の世界線だったの。……アミーシャがカルマとナギサに出会う未来に行き着くために。E組のみんなと一緒に笑えるようにするために。みんなを守るために、1人で戦う必要がないように」

 

 

 

 ≪碧の大樹≫の破壊に関わっていたとはいえ、そんなキーアの力について詳しく知ってるのは、ロイドさんやワジさん達から聞いたからかと思ってた。でも、アミーシャも何かを書き換えた過去を見て、実際に変わっている事実を体感しているのだとしたらって。

 ここまでのこととロイドさんの今の発言を踏まえて、俺が出したのは一つの結論。キーアによって書き換えられたのは、ロイドさん達の運命だけじゃない。力を放棄する前に何らかの方法でキーアは運命を変えたんだと。その、対象は───

 

 

 

「……アミーシャはね、2年前にホントは死んでるはずだったの。そして、今のところ15歳までしかアミーシャが生きてる姿を見たことないんだ」

 

 

 





『……アミサさん、ごめんなさい』

「律ちゃん?」

『……実は私、先程のティオさんとの訓練の最中に……アミサさんが……《銀》であることの情報を見つけてしまいました』

「……!」

『ずっと、陰ながらE組を守ってくれてたんですね』

「……私は、私でしかないよ。ただのE組のアミサ……ね」

『……はい』











「アミサはここにいれて幸せだよ」

 これは、嘘だ。

 だって、幸せだけどすごく心が痛いの。みんなのあたたかさが、私の暗いところを際立たせてる感じがして……すごく、痛くて、苦しいの。ずっと一緒にはいられない、いつかはみんなの近くを離れて元の生活に戻る……そんなの分かってる。だけど……

「えへへ……私、みんなのことがだーいすき」

 ……これも、私のホントの気持ちだから。私の譲りなくなくて、無くしたくない、大切なもの。それを守るためならなんだってできる。



++++++++++++++++++++



写真会は確実にこっちの世界の方がみんな幸せです。なんでこんな告白会になったかはよく分かりません……みんながちゃんと今のE組が好きなんだろうなーと思ってたら結束してました。ただ、オリ主の本心はちょっと不穏。

不穏繋がりでカルマのストレスになってたあの場面の解消をするために家に入れたら、気付いたらE組全員集合してました。誰がしゃべってるかはお好きに決めちゃってください。そのおかげで前回はオリ主+カルマ側、他のE組と情報に偏りがあったんですが、今回は全員がきちんと正しく同じ情報を共有できてる形になります。オリ主は知ってしまうと変に暴走するのでこの形で正解だったり……というかオリ主が『キーアによって愛されるように仕向けられてる』可能性に絶望するよか絶対この形の方が幸せです。そんな可能性は万に一つもないわけなので。

やっとインターミッション分の内容にだいたい全部触れることができたと思います……!繰り返しになる部分は書かないつもりなので、読者さんは知ってるていでお話を書きます。なので詳しく思い出したい場合は一旦回帰前の対象話に戻ってこっちに戻ってきてもらう形に……よろしくお願いします。

次回もオリジナル話なのでまだ二学期末には入りません。インターミッション中の出来事を一つまだ回収しきれてないのでそこについて書きますし、やっとオリ主の過去描写が入る予定です。ここまでに察した読者さんたち、ようやくの答え合わせです、お待たせしました。では、次回までお待ちくださいませ!





ちなみにレンとヨシュアの睡眠薬ネタは空の軌跡から引っ張ってきてます。これに関しては状況や対象、人数などは違いますがガチ公式です。こわーい。
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