暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA145300ありがとうございます!
いつもいろんな反応をいただけて励みになります!

オリジナルは今回で終わると書いてましたがもうちょっと続くことに……あれおかしい。でもこの小説で結構大事なところに繋がるものなので……!すみません。

今回もよろしくお願いします!



★130話 回帰の時間

 

 ……ん、……ぅ、ん……あれ……なんか、苦しい……?けど、嫌な苦しさじゃない……なんだろ……

 

「……………………?」

 

 目を開けると私の部屋だった……正確には私の部屋のベッドの中。窓から入ってくる光でもう明るい時間だと分かるけど……あれ、私……いつ寝たんだっけ……?

 ……たしか、夜ご飯の前くらいから、いつもなら絶対眠くならない時間なのにもうまぶたが閉じそうになってて、寝たくないのに勝手に頭にモヤがかかってる感覚で……でもカルマやお姉ちゃんたちが一緒にいるのに寝るのはもったいなくて。頑張ってたけどキーアちゃんが眠たいなら、眠るまで一緒にお布団に入るって約束して……それで……、……もうそこから思い出せない。まさか私、眠たがってたキーアちゃんを差し置いて1人で勝手に寝落ちたとか?……やってしまった、私の方がお姉さんなのに。

 

「……んん、あみーしゃ、おきたのー?」

 

「……ぇ」

 

 ふと、腕の中というかお腹の上あたりから声が聞こえて、何故か動かしにくい体を少しだけズラして視線を向けると、私のお腹に抱きついて目をこすっている黄緑色の女の子が目を覚ましたところだった。

 

「……キーアちゃん……」

 

「んふふー、……おはよーアミーシャ。昨日の夜ね、キーアをギューってしたまま寝ちゃったんだよー?」

 

「……そう、なの……?」

 

「そーそー、あったかくて気持ちよかったからキーアもそのまま寝ちゃったんだ!」

 

 ……そう、なんだ。……そうだったのかな。

 

「……、……そっか……」

 

「そうだもん、ね、カルマ!おはよっ」

 

「……!」

 

「……も、朝から元気すぎ……、……はよ……」

 

 頭の上から寝起き特有の低くて少しザラついた声がする。そういえばキーアちゃんにお腹へ乗られてる以外に上半身も上手く動かないなとは思ってたんだ。私自身やっと少し目が覚めてきて改めて自分の体を見てみれば、私の頭から上半身を抱き抱えるように回されてる腕があることに気づく。

 キーアちゃんの声でこの腕の主も目を覚ましたことは分かったんだけど、まだしっかり覚醒してる訳じゃないのか軽く私の頭に顔を擦り付けてきたかと思えば抱き直されて……ってカルマ、このままもう1回寝ようとしてない?

 

「な、ん……?」

 

「アミーシャが寂しがってるから……一緒に寝てやれってあの人達に押し込まれたんだよ……ふぁ、あ……あー……ねむ……」

 

「……なる、ほど……?」

 

「うん……ねー、今日休みだしさ、もうちょい寝よーよ……」

 

「えー、起きて朝ごはん食べよー?キーアお腹空いたっ」

 

「キーアだけ行きなよ、俺もうちょいアミーシャと寝とくから……」

 

「なんでアミーシャもなのーっ!……よい、しょっ、ねぇ、起きよーよーっ!」

 

「ぐぇ、ちょっ、と、腹に乗んなって」

 

「だってこうでもしないと起きないでしょっ!ロイドの時は跳び乗ったけどゆっくり乗っただけやさしくしてるもん!」

 

「だからって揺らさな、……待ってロイドさんには跳び乗ったの?」

 

「うん!だって全然起きないんだよ。ティオはアーツで氷作って服の中に入れてた!」

 

「うわエグ」

 

 ……なんか、勝手に私も二度寝することになってる。それが不満だったらしいキーアちゃんは、私のお腹の上から布団の中を器用に移動してカルマのお腹の上に乗ったらしい。そのままカルマのお腹の上でゆさゆさと軽く跳ねてるから同じベッドでカルマに捕まってる私も一緒に揺れる。起こし方の話をしてるうちにカルマの声もだいぶハッキリしてきて二度寝って感じじゃなくなってきてて……

 

「あーもうしょうがないな。起きるって」

 

「ふふん、キーアの粘り勝ちー!」

 

「……、……ふふ」

 

 ……なんか。……なんて表せばいいのかな。勝手に笑いが込み上げてきた。

 

「……あれ、アミーシャ?どしたの?」

 

「なーに、そんな笑っちゃって」

 

「……んーん、なんでもない、よ。2人が一緒で、なんか気持ちがあったかいなぁって、思っただけ。こーいうのを、幸せって言っていいんだろーなって……」

 

「「…………!」」

 

「えへへ……2人とも、だいすき……」

 

「……、……ねぇキーア、いいよね?」

 

「うん。……なんだかキーアもうちょっと寝たいなー」

 

「へ、」

 

 近くに置かれたキーアちゃんの手と、キーアちゃんをお腹に乗せたまま上半身だけ起こしてたカルマの手に触れて、なんとなく、浮かんだ言葉をそのまま言っただけ……だったんだけど。2人して顔を見合せて黙ってるからどうしたんだろうと見てれば、カルマがせっかく起こしてた体をもう一度ベッドに沈めてキーアちゃんも彼の体の上から降りてしまって。

 

「ほら、アミーシャはこのまま俺の腕の中ね」

 

「えーずるい!真ん中入れてっ」

 

「真ん中入れたらキーア潰れるけど」

 

「う、それはやだかも……じゃあキーアは反対側ね!」

 

 ……あれ?もう起きる流れじゃなかったっけ……?何をし始めたのかよく分からないけど、2人して面白がってる顔でもなく、ただただ優しい笑顔で布団に入り直してるから余計に謎だ。困惑してる間に私は、起きた時と変わらずカルマの腕の中に閉じ込められて、キーアちゃんは彼と反対側に寝転がり、お腹に抱きついてた時とは違ってカルマと同じくらいの位置に腕を回してニコニコと笑っていた。

 

「先に起きてみんなに朝ごはん作ってあげよーって思ってたけど、多分寝てればロイドが起こしに来てくれるでしょ!だからキーアももう1回寝るのっ」

 

「え、あの……」

 

「ほら、もうひと眠りしよーよ」

 

「おやすみー、アミーシャ、カルマ」

 

「……、」

 

 おやすみって、朝だよね、今……とっくに目は覚めてたはずなのに、2人に挟まれてたらどうにもあたたかくて。そっと繋がれたそれぞれの片手に安心して……人の、しかも私の大好きな人たちの体温って不思議、自然とまた眠たくなってきた。……まあ、こういう日があっても、いいよね……、もう、逆らわなくてもいいかと私は2人にならって目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 俺とキーアの間に挟まれてウトウトとし始めたアミーシャを見ながら、俺は昨日の夜、キーア達とE組を交えた会話を思い出していた。

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

 

 

『……アミサちゃんが、死んでるはずだった……?』

 

『しかも、生きてても15までって……アイツ今14だろ、あと数ヶ月しか無いじゃねーか!』

 

「正確には、15歳にはなれたよ。……なって10日くらい、かな。……アミーシャ、この教室を卒業できなかったから」

 

『『『…………ッ』』』

 

「……そう」

 

『なんで、……なんでカルマ君はそんなに冷静なのさ!』

 

『そうだよ、確定してなくてもこれから有り得るかもしれないんだよ!?』

 

「……だって、なんとなくそんな気がしてたから。キーアのこと、≪碧の大樹≫のこと、いろんな情報を教えて貰ってきて……今のワジさんの答えで確信したよ。今、この瞬間もアミーシャが、もしかしたらこの教室で誰かが死んだ世界の上でやり直してるんじゃないかって」

 

『そんな……』

 

 キーアの答えを聞いても俺は冷静だった。そうじゃないかって感じてたのもあるけど、いろいろと納得できてしまったから。

 

「1番最初のアミーシャは誰にも心を開かなかった。だから、助けを求めることもホントの意味で戦えない一般人相手にどうすればいいかも分からなくて、躊躇ってるうちに……アミーシャは日本に来てまだ半年も経ってなかった。……おかしいよね、少しでも巻き込まれないように、安全な場所にって送り出したのに……キーア達の手が届かないところで死んじゃった」

 

『……半年……』

 

『そんな、たったの……』

 

『……待って。アミサちゃんが日本に来たのは2年前でしょ?それから半年くらいって、僕らが中1の二学期中間くらいの時期、だよね……まさか、だけど』

 

「……アミーシャと初めて会った日……俺と渚君が襲われてたアミーシャを、助けに入った時くらいじゃない……?」

 

「……うん、そうだよ。あの日、カルマとナギサが間に入ってなかったら、……」

 

『真尾はその時点で、か。……当然だけど、その先は俺らの誰もその事実を知らないまま、そんでもって今頃は真尾のことを知らない28人のE組、だったんだろうな』

 

『そりゃそーか。その時点じゃ誰も真尾のことを知らないから、いない状態での俺らが正史ってことになる』

 

『……そんな。あんな、何となく気になるからってカルマ君が言うからついて行っただけで……』

 

『そんなちょっとした事で、やるかやらないかってだけで、未来は変わるのかよ……』

 

「さっき、エリィも言ってたでしょ。人の未来はちょっとした選択で成り立ってるって。最初のアミーシャはひとりぼっちだったから死んじゃった。だったら、ホントなら死んでた時に介入する人がいたら?その人が一般人相手に戦う術を持ってたら?……その人が、アミーシャのことを大事にしてくれる人だったら?」

 

「……なるほどね。喧嘩ばっかしてて人を壊さない戦い方ができる俺は、キーアからしたら打って付けだったってわけ」

 

 あの、彼女と出会った日。あれは本トたまたま気になって見に行っただけだったから……影も形も知らない時から、キーアが出会うきっかけを作ってた、なんてね。……普通なら勝手に未来を決めんなって思ってたかもしれないけど、そのおかげで俺にとってかけがえのない存在になった女の子を救えたんだと分かれば、……勝手に俺の運命を操作されてたのだと知っても不思議と不快感はなかった。

 

「……でも、しょーじきカルマがここまでアミーシャを大事にしてくれるとは思ってなかったんだ。E組のみんなも……普通に友達になって、アミーシャが一人にならないための抑止力になってくれるといいなって思ってただけだから」

 

『え、それに関しては……ねぇ?』

 

『うん、だってアミサちゃん普通にいい子だもん』

 

『最初こそ何もしてないのに距離取られてなんだコイツって思ってたけどよ、……ただアイツなりに俺らを知ろうとしてただけだよな』

 

『マジそれな。俺ら素行悪い自覚あんのに何の躊躇いもなく寄ってくるし話しかけてくるし、未知の生物かと思ったわ』

 

『しかも明らかにE組で孤立してる時期ですら態度変わらなかったよな。めちゃくちゃ毒気が抜かれる』

 

『ただ接し方が分かってないだけだったわね。人のいい所を見て、見つけられて、感情の機敏を察して立ち回るから、居心地がいいのよ』

 

「君達がそう言ってくれてよかったよ。アミーシャのひととなりは元々知ってたけど、最初は警戒心しかない子なのも分かってたから、キーアがやりすぎて強制的にアミーシャを好きになるように仕向けたんじゃないかって思ってたからな……」

 

「アミーシャの人柄と、あの子が自分を出せるようになるまでみなさんが待ってくださったおかげ、ですね」

 

 スマホの向こうには伝わらないだろうけど、E組の反応を聞いてホッとしたように空気が緩んだ。……みんなは気付いてなさそうだけど、この人達の言い方からしてキーアは人の気持ちもある程度操作できたのかも、ね。

 ……もしかしたら俺も助けなきゃ、守らなきゃ、なんて思いを発露させられてたのかもしれないけど、最初のきっかけこそキーアの力があったとして、今は俺自身がアミーシャに惹かれて並び立ちたい思いで歩いてるんだから、……それは絶対に否定されたくはない。

 

「もう、キーアには過去を書き換えて望む未来に導く力はない。だから、これから先の未来はみんなの選択の先にある……たくさん悩んで、ぶつかって、苦しむこともあると思うけど……こんな話を聞いた後じゃ怖くなるかもしれないけど、……でも、みんな、選ぶことから逃げないで欲しいんだ。誰かの選択に流されないで欲しいの」

 

『……1つ、聞いてみたいんだけどいいかしら』

 

「メグちゃん」

 

「……いーよ」

 

『私達にもこのことを聞かせるって決めたのはカルマだと思うけど、当事者であるカルマ以外には話さなくてもいいこともあったと思う。でも多分、みなさん全部包み隠さず話してくれたと思うのよね……それはなんでかって教えてもらえるのかしら』

 

 確かに、それはちょっと気になってた。俺がE組全員を同席させようとしたのだって、あれが未来視なのかを確定させたかったのと、万が一アミーシャが死ぬような場面が来た時の抑止力になればって思ったからこそ。俺の身に起きた現象の説明こそ伝えても、今後自分の選択の上で自分や人の未来を変え、人を殺すかもしれない、なんてことまでは話さなくてよかったはずだ。

 

「だって、アミーシャが()()()って言ったから」

 

 ……キーアの回答は、すごく端的だった。

 

「たくさんある分岐の中のアミーシャは、幸せが分からないまま死んでいくか、生きていても幸せ()()()って……一度も未来で生きることを、自分が幸せになることを望んでなかった。……でもね、嘘かもしれないけど、初めて今が幸せだって言い切ったの。きっとたくさんの分岐の中で今回が1番最善の道を進んでる」

 

 訓練終わりの、キーアと話していた彼女の言葉を振り返る。アミーシャは確かに「幸せだ」って言い切った……気のせいじゃない、よね。

 

「アミーシャちゃんが未来を向けるようになったのはE組のみんなのおかげだと思うわ。それならカルマ君個人ではなくみんなに伝えるべきだと思ったから、私達は止めなかった」

 

「君達は、これまでにたくさん理不尽とぶつかって、いろんな選択をして今日まで来てると思う。当然間違えたことも後悔もあるだろうけど、それらは全部君達の糧になってるだろう?昨日も言ったけど人が成長する上でなかったことにしちゃあいけない。コロセンセーじゃないけどさ、俺達からも経験談として伝えておきたかったんだ」

 

「あとは僕達もそんなに超人じゃない、ただの人でしかないっていうのも分かってて欲しいしね。こうやって集まってもできない事ばかりだからさ、できないなりにそれぞれの力を持ち寄って解決に導いてるって言うか」

 

「どの口がって感じですけど。でも、みなさんに助けられたから私は今、ここで笑えてるって思えますから……分かる気はします」

 

「何が起きるか分からないのが人生ってな。本来継ぐべき猟兵団の長って地位があった俺が、こうやって足を洗って警察やってんのも、俺を見捨てずに追いかけてきたリーダーと仲間がいてこそだかんな」

 

「私だって、上層部に逆らえなくてみなさんと敵対するしかなかった時に、ルールを捻じ曲げて、上層部の心を動かして救い出してくださったのはロイドさん達ですから。アミーシャちゃんは関係なく、E組という集まりがそんな助け合える人達であって欲しいです」

 

 特務支援課の人達は、アミーシャを助けて欲しいとか身内贔屓をして欲しいとかじゃない。同じようになれと言ってるわけでもない。ただ、E組で誰かに何かあった時、お互いに投げ出さずに見捨てないでいて欲しい……そんな思いがあるんだろう。

 E組の有り様やこれからも俺ららしく支え合っていって欲しい……そんなまとめで落ち着いて、話し込みすぎたしそろそろ解散しようか、という流れになりそうな時だった。

 

「……みなさんに、お願いがあるんです」

 

『リーシャさん?』

 

「今までにE組で経験してきたことを、本人だけじゃなく滞在している間にみなさんや先生達からも聞きました。楽しいことも怖いことも経験してきたと思います。そのお陰でアミーシャがすごくいい成長をしてくれてる……反面、不安定な状態になることも」

 

『アミサが不安定な状態……って』

 

『……『死神』の事件のこと、とかですか』

 

「……はい。その前からも少し話してくれることはあったんですが、《幻》の力を使えることに気付いてからあの子が忘れている記憶……自己防衛で忘れたそれを思い出しつつあるみたいで……」

 

「……!それって、」

 

「ダメよエステル」

 

「でも、アミーシャが忘れてるのってあの事件でしょ?!あたしだって一部しか知らないけど、他の子達の身にあったことを考えたら、アミーシャだって……!」

 

「それでもよ。その時に受けた心の傷を肩代わりしてあげることなんて、レンにもできないわ。だから……E組(この子達)がいるから大丈夫よ、下手に抑えない方がいいわ」

 

「……それに僕達も資料上の事でしか分からない。幼かった僕だって意味を知らないまま潜入してたくらいだ……助け出せたのも……」

 

「……そう、だったわね……ごめん。続けてちょうだい」

 

 リーシャさんの発言に弾かれたように顔を上げたエステルさんを止めたのはレンさんとヨシュアさんで。よく分からない会話だったけど、エステルさん達の間では成り立ってるみたいで、最終的に諦めたように俯いてしまった。

 

「……これまでのことを考えると嫌な予感がするんです……でも、何がきっかけになるかも、アミーシャがどんな状態になるかも予想がつかない。もちろん杞憂で済むかもしれない……何かあれば連絡して欲しいんです。私達が帰国した後だとしても……頼んでばかりで、すみません」

 

『そんな、大丈夫ですよ!』

 

『ちゃんと見てますんで、安心してください!』

 

『そもそも忘れてるんなら相当嫌な思い出ってことでしょ?過去を無理やり詮索するようなことは絶対しませんって!』

 

『私経由で、E組の誰からでもすぐに連絡できるようシステムは組んでおきますね!』

 

「ありがとう、……よろしくお願いします」

 

 リーシャさんは、何を心配しているんだろう。アミーシャ以外のE組に一気に伝えられるからこの場で言った、感はあるから、何かあるとか確信してるわけではなさそう。E組としては当たり前だと思ったから特に迷うことなく返事をしたけど……お礼を言うリーシャさんに、覇気がないというか。なんでか、は最後まで教えて貰えなかった。

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

 

 

 この直後、空気を変えるようにランディさんに捕まって、アミーシャの寝てるベッドにキーア共々押し込まれんたんだよね……予想通り、しっかり寝てたみたいで俺らが何を話してたかは知らないようで安心した。あー、通話繋げっぱなしで連れてかれたから、E組の奴らには何があったのか筒抜けか、休み明けになんか言われそうだわ……

 

「……幸せ、か」

 

 こうやってからかい、からかわれるのもそれができる関係性を築いてなきゃできないから、一種の幸せなこと……なのかな。嬉しいとか、楽しいとか、その場限りの明るい感情と違って、俺としてはこれまでの積み重ねとかも必要な感情、だと解釈してる。それを望まなかったこの子が、俺らとの関わりを通して望むようになったのは、誰から見てもいい変化なんだろう。

 ……願わくば、リーシャさんの懸念が本トにならないのが1番だよね……俺は腕の中の子と、同じように抱きついたキーアを一緒に抱え直して、この不安を押し殺すよう、もう一眠りするために目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まったく。全然起きてこないなと思ったら」

 

「3人とも幸せそうな顔しちゃって……」

 

「もうちょっとだけ寝かせてあげましょうか?」

 

「だね、全部準備できたらもう一度呼びに来ようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚side

 

「それにしても3位かぁ〜……やっぱ悔しいな!」

 

「でも途中で店閉めてこの結果でしょ?圧倒的勝利!をA組に与えなかっただけすごくない?」

 

「本校舎からもだいぶ悪感情を感じなくなってきたよな!」

 

「そりゃあテレビで紹介までされたらなぁ……」

 

 カルマ君からいきなりの招集があったあの夜から数日経ち、そろそろリーシャさん達が向こうへ戻る日が近づいていた。あれからいつも通りの僕らの日常に戻って、遂に学園祭の結果がE組にも知らされて……終了時間までお店を開いてなかったにもかかわらず、なんと中高合わせた中で、それぞれのA組に続く形で堂々の3位!1位以外は内申書に影響しないから成績とかには載せられないし、勝ちたいって気持ちで挑んでたから悔しいけど、僕らからすればだいぶ満足な結果だと思っていた。

 ……あ、ちなみにミスコンは総合結果は元々高等部主体のイベントってこともあって、やっぱり高等部のA組に所属する女生徒が優勝だった。それはそうだよね……とは思ったんだけど、なんと中学部の方だけで集計された得票数や評価はアミサちゃんがぶっちぎりの1位で、E組が湧いたのは言うまでもない。当たり前だよね……誰よりも美しいとか可愛いとかって見た目が抜きん出てる、みたいな要素は無いけど、他の生徒には絶対にない魅力を押し出してた上、優勝した中学部A組のステージにゲスト出演した上にE組の出店でもかなり目立ってたから。だからこそ表彰の話も来てた……んだけど、当然のように本校舎での表彰は全力で拒否して、なんなら1位を取ったことすら辞退しようとしてたのが彼女らしい。結局賞状だけE組に届けてもらって彼女に贈呈して終わったのは言うまでもない。

 

「おはよー」

 

「お、渚はよっす!」

 

「あれ、木村君達、カバン持ったままってことはまだ教室に行ってないってことだよね。玄関に集まってどうかしたの?」

 

 次は二学期期末テストか……本校舎と同じ行事はまだあるけど、対等に争える場としてはもう最後かな。そう、次の大きなイベントに向けて気持ちを新たにしていた僕らは、……まさか、こんなタイミングで新たな事件が起こるとは予想できるはずもなかった。

 

「いやさ、朝一番に登校したやつが見つけたんだけど……」

 

「……何それ、花束?」

 

「そう……E組校舎の玄関前にメッセージカード付きで置いてあってね。でも『死神』のことがあったからあんまり花束にいい思い出ないじゃない、私達。だからどうするべきかちょっと悩んでて……」

 

「花に罪は無いからさぁ、捨てるわけにもいかないし。かといってこれだけのために先生に相談すんのもなぁって……別に事件でもないしさぁ」

 

「メッセージカードって言ってたよね?読んだの?」

 

「それが、『出張版アルカンシェルに感動しました。出演者の皆様へ』ってことしか書いてなくて……」

 

「あの時出てたメンバー複数人宛だから、リーシャさん個人のファンからのプレゼントってわけでもないし、かといって誰かを指定してるわけでもないから困惑してるというか」

 

「な、なるほど……」

 

「はよー……ん?なんの集まり?」

 

「あれ……みんな、教室行かないの?」

 

 さすがに玄関前でたむろするわけにもいかないし、捨ておくこともできなくて下駄箱前までは持ち込んだんだろう花束からメッセージカードを抜き取り読み上げた片岡さんが、困ったようにため息をついた。当然差出人もないから不信感しかないけど、匿名で花束を贈りたかっただけかもしれないことを考えればあまり無碍にしたくない。かといって教室に持ち込むのも怖いし……と、そこにカルマ君とアミサちゃんが登校してきた。

 彼らにも花束のことを共有すれば、怪訝そうな表情にはなったものの捨てるという選択肢はやっぱり出しづらいみたいで……

 

「……はぁ、もういっその事教室に持ち込まず、ここに花瓶立てて飾っちゃう?」

 

「それがいい気がしてきた……ビッチ先生も出演者だからちょうどいいんじゃない?」

 

「あ、じゃあ俺教員室行って花瓶ないか聞いてくるわ。ついでに置いてあった状況も話しとけばいいんじゃね?」

 

「うーん……そうしますか」

 

「お願いね木村君」

 

「任せろ!」

 

「じゃ、残ったメンツの何人かでラッピング外して立てやすいようにしちゃいましょうか」

 

「さすがに花束そのまま飾れませんしね……」

 

「ほら神崎さん、華道の腕前を見せる時よ〜っ」

 

「えぇ、剣山に生けるのと花瓶に生けるのとはまた違うから、私にできるかな……」

 

 神崎さん、ミスコンで披露してた通りの華道部の実績があるから、捕まってるなぁ……でも、どうせ飾るなら綺麗な見た目にまとまってた方が見栄え的にも気分的にもいいよね。乱雑な置き方じゃあ花も可哀想だし。なんとなく見てただけだったんだけど、謙遜しつつも花束を解体して花を仕分けていく神崎さんの手際はすごくよくて、思わず注目してしまう。ゲームと同じであれも神崎さんの武器なんだろうな。

 教員室に走っていった木村君の背を見ながら、僕も靴を履き替える……こんなにたくさん集まってちゃ邪魔だし教室に先に行こうかな。同じようなことを考えたクラスメイトは何人かいたらしく、チラホラと「先に教室行ってるぞー」とか「手伝い必要なら呼んでね」と声をかけて離れていく。カルマ君は興味無さそうだけど、アミサちゃんがちょっと気になってるみたいで靴を履き変えながらチラチラと花の方を見てる……女の子だもんね、気になるか。

 

「何、アミーシャ気になんの?」

 

「え、と……うん。確かにちょっと嫌な思い出はあるけどお花はやっぱりキレイだし……何よりあの突然やったステージに出たみんなに宛ててプレゼントしてもらえたの、嬉しいから」

 

「ふーん……」

 

 そんな彼女にムッとした表情で若干拗ねたように口を尖らせている彼氏が背後から抱きしめているのに呆れつつ、それを見る僕らはどこか微笑ましくなる。アミサちゃんが嬉しそうだから何も言えないけど……アミサちゃん個人宛じゃないとはいえ、見ず知らずの人に魅力を知られて、それを形にされたのが嫌なんだろうなぁ……あ、アミサちゃんに見えない位置にスマホ出してなんか検索してる……; これは勝手に対抗意識を燃やしたカルマ君が別でプレゼントを用意するんだろうなぁ……

 

「あれ……?」

 

「どーしたの?」

 

「あ、うん……この辺りの花言葉が、ちょっと引っかかって……」

 

「花言葉?」

 

「うん。前向きな花言葉もあるんだけど、色によってはあんまりいい意味じゃないから花束に入れないと思う……でも花そのものは普通に花束に使うものではあるからどうなのかなって」

 

「なにそれ、包んだ花屋が気付かなかったのかね?」

 

「さぁ……?」

 

 そんな微笑ましい空気が変わったのは、神崎さんが不思議そうに手を止めた時だった。あんまり花に詳しくない僕からすると見た事あるとかそういうのも分からないし、全部キレイだなとか可愛い花だなとかそういう感想ばかりで、善し悪しとか難しいんだけど、元々華道部だった神崎さんが感じる違和感って。

 さすがに気になって作業している彼女達の近くに行って覗いてみると、既に花の選り分けは終えていたらしい。青いバラ、オレンジのマリーゴールド、黄色いパンジー……そのくらいしか僕でも分かる花はないんだけど、それらを含めて花言葉が気になるってどういうことだろう。というか青いバラってそんな珍しいものが含まれる花束ってすごいし、束になってる時は他の花に紛れてて全然気付かなかったや……青なんて目立ちそうなのに。

 

「あと……この花、なんだろう。見た事ない」

 

 そう言って神崎さんが手に取ったのは青いバラとは違った青っぽい花。そっか、この花が入ってたのもあって青いバラが目立たなかったのかも……他にも名前は分からないけど青系統の花が多いみたいだし。

 

「…………ぁ…………」

 

「アミーシャ?」

 

「………………………………なんでも、ない……」

 

「いや、なんでもないわけないでしょ。律、写真撮るから画像検索できる?」

 

『お任せ下さい!……、えーと……日本のデータベースには見当たりませんね……海外のデータベースにもアクセスしてみます!』

 

「え、ないの?……でもこれ、絶対に生花だよね。誰が見ても新鮮って言うか……花屋で見たことないような花がこんなに綺麗なのって普通?」

 

「日本に売ってない花がこんないい状態で届くことあるの?」

 

「ドライフラワーなら分かるけどね」

 

『……あ!みなさん、1件それらしいものがヒットしました!ただ、詳細が……【■■脈の上に咲く】……【■■御■の■■に接続】、【■■■至■■■】……、……ダメです、ほとんど黒塗りの状態でわかりません……』

 

「は、黒塗りのデータしかない花とか怖ッ!?そんなの花束に入れてきたのこの贈り主……」

 

「や、やっぱり、飾るのやめない……?」

 

「それかその花だけ抜いて他を飾るかだよねー……」

 

「どうしよっか、やっぱり先生呼んでくる?」

 

「そうしようか……」

 

「それでいいんじゃない?得体の知れないもの、もう持ち込みたくないしねー」

 

 ちょっと変な様子を見せたアミサちゃんが気になったのか、カルマ君は律に調べて貰えるよう依頼したけど……出た結果はあまりにも不可解すぎて。本業の人に見てもらったわけじゃなく、ただの画像検索だから律の検索でも漏れたのかと思いきやヒットした情報が怖すぎる。

 さっきまで飾ろうと作業を進めていた神崎さん達も完全に手を止めて気味悪がってる。当たり前だよね、他の花に罪は無いけど、花言葉といい、黒塗りのデータといい……どんどん良くない方向に進んでるんだもん。

 

「律、先生に伝えてくるから花の名前だけでもヒットしない?」

 

『ちょっと待ってくださいね……壊れてないデータがないか調べてきます!』

 

「………………………………」

 

「ねぇさっきから黙ったままだけどどうしたの……は、」

 

「アミサちゃん……?え、顔色真っ青だよ大丈夫?!」

 

「……、……だい、じょぶ……」

 

「だからなんでそんなに強がるんだって、ほら、こっちもたれていいから……」

 

 あの花を検索するきっかけになったくらいだし、アミサちゃんは見覚えあるのかな、なんて軽く考えてたのに。あの花を見て何かに気付いた様子を見せたあとからだんまりだった彼女は。

 

 

 

『あ、見つけました!こちらの花は【プレロマ草】というものらしいです!』

 

 

 

「──────ッ」

 

 

 

 

 

 データを見つけたことを嬉しそうに報告してくれた律とは反対に、『死神』が教室に来た時のような……いや、それよりも酷い顔色で、いつの間にか小さく唸りながら両手で頭を抑えていたアミサちゃんが、その花の名を聞いた瞬間目を見開いて、声にならない悲鳴をあげた、……気がした。

 

 

 

 

 





「アミーシャ!?」

「アミサちゃん!!」

「え、何、えッ!?」

「神崎さん、その花見えないとこに隠して!」

「あ、う、うん!」

「なんだ!?どうしたんだよ!」

「あの花が原因なの……?」

「ねぇ……何に気付いたの……」



++++++++++++++++++++



やっとここまで辿り着いた……!
多分これで確実に察する読者さんは増えることでしょう。でも詳しくは次のお話で出てくるのでネタバレは厳禁です(・ⅹ・)感想で分からない程度に書くのはOKですが明言は避けてくださいね。分からない人にも見えちゃう場所なので。

最初、このお話を〝幸〟と〝辛〟は線を一本足し引きすると作れる漢字ってところからタイトルをつけようと思ったんですが、上手いこと混ざってくれなかったのでやめました。ここでガッツリ回帰のことに触れてるのでこのタイトルでも間違ってないんじゃないかな……と思ってます。
結構この小説を書く上で『幸せ』ってなんだろう……な場面をたくさん書いてきたんですが、おそらくオリ主は回帰前に一度も『今が幸せ』と言ったことは無い(はず)です。全て『分からない』か『だった』と過去形になってます(多分)。ここで流れがキーアの言うところの最善にあることを明示したくてやってみたんですが……どうでしょうか?

そして幸せがやってくると不幸がやってくる()
次回、オリ主の過去回収その1です。あと1話で収まる気がしない。
次の更新を楽しみにしてくださると嬉しいです。



















神崎さんの華道部は公式設定ですが、花の種類や花言葉まで詳しいかは分かりません。ここでは詳しいことにしておきます。

・バラ(色関係なく):愛、美
・青いバラ:夢叶う、不可能、奇跡、【神の祝福】
・マリーゴールド(色関係なく):嫉妬、絶望、悲しみ
・オレンジのマリーゴールド:【予言】
・パンジー(色関係なく):もの思い、私を思って
・黄色いパンジー:つつましい幸せ、田園の喜び
・黄色いパンジー(西洋):【記憶】
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