UA149500、ありがとございます!
今回どう進めるか悩んでたら、オリ主の現状から組みあげればいいんじゃないかと思いこの形に。
お待たせしました、よろしくお願いします!
理事長先生の一言で一時中断になったとはいえ、校舎は私が重機の下に割り込む前から半壊して崩れてて、このままじゃどうなってもおかしくない。危ないからこの場所にずっといるわけにはいかないと、迎えに来てくれた2人と一緒に屋根から降りて……降りた先には、理事長先生が殺せんせーに対して何かするらしくて、教室から外に出されたみんなが待っていた。
……私たちを迎えてくれた、待っていたみんなの反応はバラバラだった。いきなり窓から飛び出してしまったことを怒る人、危ないことをした私を心配する人、しょうがないなぁと呆れる人、何か言いたそうにしながらこっちを見てる人、……バラバラだけど、誰一人私を邪険に扱う感情を感じないのが、やっぱり変な気分になる。
「あ、こら。目ぇこすらないの」
「……ぅ、あ、れ……?……勝手に出て……泣きたい、わけじゃない、の……なんで……」
カルマに手を掴まれて、初めて目をこすっていたことに気づいた。だって、さっきまでひなたちゃんに目を覆われていたし、もうとっくに止まったと思ってたのに。目を触れなくなったから一気に視界がぼやけて見えずらくなって、頬を涙が流れていく。
……でも、なんで、私はまだ泣いてるんだろう。悲しい、わけじゃない。怖い、なんてこともない。悔しい……のは、ちょっとあるのかもだけど、何か違う。……何も、できないのが嫌、で、自分に……私たちの気持ちも考えずに壊して、危険に晒したあの人たちに、怒ってる、……の、かな。ひなたちゃんとカルマも肯定してくれたし……そう、なのかも。……でも、怒ると涙って出るの……?……よく、分からない。
「はい、コレ濡らしてきたから抑えときな」
「目を塞いでる間はちゃんと言葉で教えてあげるから安心して。アミサなら目を塞いでても音で状況把握できる……あ、いや、やめた方がいい?」
「う、ううん、だいじょぶ、分かる。……ありがと、莉桜ちゃん、優月ちゃん」
「いーえ、それくらいお易い御用よ」
「よかった、ちゃーんと伝えるから任せてね!」
「ひなたも言ってたけど、アミサは今やっと自分の感情と向き合い始めて、それが何かって理解しようとしてる所だから無理に抑えなくていいと思う。むしろ今だからこそ気持ちを整理するべきよ、……涙は、感情が大きく動いた時に流れるものだから」
「そうそう!……それに心ってね、みんな違うの。何をしても何もしなくても何も感じてないつもりでも、心の奥底では色んなことを想ってる。みんな、感じ方も程度も違う……それでも名前の付け方はみんな同じって不思議だよね。普段だったらいつでも味わえるからこそ軽く流されちゃうけど、涙が出たってことは、それだけアミサちゃんにとって感じたものが大きかったってことなんだよ。大事にしてあげて」
「……うん」
莉桜ちゃんに渡された濡れタオルを目に当てれば、涙がタオルに染み込んでいく……元々濡れてるのもあってあまり気にならない。優月ちゃんの気遣いも、メグちゃんの諭すような言葉も、カエデちゃんの考え方も……どれも慌てなくていいんだって思わせてくれるものばかりで、ホッとする。すぐには止まらないし、どう思えば正解なのかも分からないままだけど、それでもいいんだって思えた。
タオルで目を押さえた私は、軽く添えられたいくつかの手に誘導されるまま教室の中に残る殺せんせー、そして理事長先生の声が聞こえる位置まで移動して、理事長先生が仕掛ける『
「アミサ、もうちょいこっち寄っといて。窓から離れた方がいいかも」
「っえ……」
「対先生BB弾を仕込んだ手榴弾を使って暗殺するんだから、万が一爆発した時にはBB弾が飛び散るってことでしょ?殺せんせーにしか影響ないとはいえ見えてないアミサには危ないわ」
「そ、それなら暗殺の時は外して見てれば、」
「……あんたさっき≪魔眼≫を止めようとして無理やり目を抉ろうとしてた自覚ある?」
「あるわけないでしょ。俺が合流した時点で岡野さんが無理やり目を塞いで止めてたんだから」
「……わた、し、そんなことしてた?」
「ほらね」
「ほんとだぁ……;」
「まったく……してたから今物理的に目を使わせないようにしてるんだよ。暴走しかけてたのもあるけどさ」
「いつものアミサの動体視力なら余裕で避けれるだろうね。でも今は酷使した後でもあるし、下手に目を使わせたくないのもあるの。そのまま目は隠して大人しくしてて欲しいな」
「ぅ……、わ、かった……じゃあせめて、先生たちの立ち位置だけ教えて……見ないようにしたまま想像するから……」
「んー、それくらいならいっか。えっと、教室の黒板側入口の扉……木村君側ね、そこの外、数歩出たあたりにビッチ先生と烏間先生。その前、教室の中に一歩入ったあたりに浅野理事長が立ってる。教室の中は、黒板に向けて半円状に机が5つ並べてあって……机の位置は……うーん、ほぼ教室の真ん中でいいかな。殺せんせーはその円の内側にいる感じ」
「……うん、ありがと、……イメージできた、と思う」
軽く肩を引かれて疑問に思う間もなく足を動かせば、多分教室に面する窓際にいるみんなより後ろ側に移動したんだろう……みんなの気配が私の正面に集まっている。教室の中で行われる理事長先生の暗殺をよく見るため、見届けるためって言うのもあるんだろうけど、私がまた前に出てしまわないように壁になってるのもありそうだ。……現に、優月ちゃんが私の肩から手を離してくれないから……そういうことなんだろう、うん。
……気を取り直して。
理事長先生がやろうとしている暗殺は、ある意味王道で、ある意味真っ向勝負で、ある意味自暴自棄で、ある意味無責任だなって感じた。私たちや教室を守るためっていう理由を作って殺せんせーの逃げ道を塞ぎ、挑戦を受けざるを得ない状況を意図的に作り上げた手腕もだけど、殺せんせーの弱点を利用して爆発前に何とかできるだろうスピードを実質的になかったことにした……ずっと前に突然投げられた知恵の輪でパニックになってこんがらがってた殺せんせーのことだ、慌てればまともにマッハ20なスピードを出す間もなくテンパるのが目に見えてる。
理事長先生は、今日まで見て、接して、情報を得て集めた殺せんせーの性格や弱点を踏まえた、私たちE組がやるような暗殺でありつつ、誰よりも単純な方法……だからこそ、直接手をくださなくてもダメージを与え、死へと近づけることができるものを用意してきたんだ。
「さて……最初は数学からで構わないね」
「っ!え、えぇ……」
「どうぞ。心の準備が出来次第解いてください。……もっとも、あなたのスピードなら簡単かもしれませんが」
「も、もろっ、もちろんです」
ギィ、と小さな音を立てて机が、椅子が軋む音がする。殺せんせーの声はどこか緊張してる、というか躊躇ってるような固い声……自信が無さそう、というか。
少しの間無音が続き、ガサ、と紙のこすれる音と殺せんせーが触手を高速で動かしている音がした直後、
──────カチ
「──────ッ!」
──────バアァンッ!
「きゃ……ッ」
「うわ、っ!」
「……マジ、かよ……!」
……スイッチのような音が聞こえて、反射的にその場にしゃがんで目をタオルごと膝に押し付け、空いた両手で耳を塞いだ瞬間、大きな爆発音と一緒に弾けるような音が響いた。爆風と同時にかなりの勢いで飛び散った対先生BB弾の雨が、教室だけじゃなく、中の様子が見やすいようにって窓を開けて見ていた私たちがいる窓の外まで跳んでくる。
「アミーシャ、耳はッ?」
「へ、き、……ちょっとだけ反響してる気がする、けど……」
「……真尾ってホントにこういうの察知するのが得意だよな……」
「……中は?」
「んー……殺せんせーが洋梨になった」
「へ……?用無し……?使い物にならなくなったってこと……?」
「あーっと、カルマ君それ結構分かりづらいしアミサちゃんを変な方向に勘違いさせてる気が;」
「爆発したからBB弾食らって、触手と頭が溶けてる。で、頭の形がしずく型っていうか洋梨の形に似てんのよ」
「聞いてわかる通り、殺せんせーは食らったけど生きてる。でも……正直あと3発耐えられるダメージなのかって言われると……」
「ふふ、まずは1ヒット……あと3回耐えられればあなたの勝ちです。さ、回復する前にさっさと次を解いて下さい」
理事長先生……そして、そのすぐ近くで見守っているんだろう烏間先生とイリーナ先生の所にもBB弾と爆風は届いていたはずなのに、聞こえてくる先生の声は何も感じていないかのように次を促している。
……まさか、こんな単純な方法で……
「──────んな、」
「………?」
「アミーシャ、急にどうしたの?」
「……その、……窓には近づかない、から」
「わ、ちょっと、アミサ!?……もうっ!目が見えてないはずなのに器用なんだからっ!」
「なんでぶつからずに歩けるんだろ……」
「もはやエコロケーションの域だよね。……ん?てことは、過去にも目が見えない状態で動いた経験ありそうじゃんね……うん、後で問い詰めるか」
「ほ、程々にしてあげてね……?」
ふと、みんながいる場所の一角から違和感を感じた。それに誘われるまま、立ち上がって気配だけを頼りにその子の近くに向かって歩き出す。急に動いたのは申し訳ないけど、気になったし……でもこれだけE組のみんなに気遣われてるのもちゃんと分かってるから、危ない側へは寄らないように動く。それは、私が守らなきゃいけない責任だから。
クラスメイトの間をくぐり、私が気になった気配を出していた彼女の近くまでたどり着き、そっと、肩に手を伸ばした。
「……だいじょぶ?」
「ッ!?……あ、アミサちゃんかぁ、ビックリしたよ。どうかしたの?」
「……カエデちゃん、みんなと違う気がした、から」
「!」
ビクリと震えた彼女はかなり動揺した声を一瞬出した、気がする。でも、それだけだ。それ以外は他のクラスメイトたちとズレのない、同じ感情といつもの彼女でしかない。
理事長先生の暗殺が有効だと見せられた瞬間のE組の反応はバラバラだった。『こんな簡単な方法で殺せてしまうのか』と複雑そうだったり、『関係者であっても、いきなり来た人じゃなくて1年近く見て、暗殺に臨んできた自分たちがやりたかったのに』という悔しているような様子だったり、『こんな理不尽を受け入れるしかないのか』って諦めだったり……みんな、暗殺に対して
「茅野がどうかしたの?」
「あ、えと……」
「あー、殺せんせー相手でここまで本格的な武器が出てくるの、久々だから見てるだけの私の方が緊張しちゃって!」
「確かに……夏休み以来じゃない?イトナ君の時は触手だし、『死神』の時ですら武器っていうより水だったしね」
「……あぁ、なるほどね。アミーシャからしたら見えない今、他の奴らより特に大きく感じた気配と感情に反応した先が茅野ちゃんだったってこと」
「そ。……多分、それがアミサちゃんに伝わっちゃったのかなって……心配かけたんだよね、ごめん」
「う、……うん、……だいじょぶ……」
……うそ、かどうかは分からない。だって、私は今耳から得られる情報しかないから。違和感としか捉えなかったんだから、勘違いだったのかもしれない。それに……五感全てを使っていたらもっと精度よく察することもできるんだろうけど……カエデちゃんが言いたくないなら、聞いちゃ、ダメなんだろう。そう思うことにした。
教室の中では理事長先生が殺せんせーを急かしている。多分、もうそろそろ殺せんせーは次の問題集に取り掛かるんだろう。ちゃんと見ることは叶わないけど、音だけでもちゃんと拾おう、そう思って意識を教室に向けようとしたら、目に当てたタオルを抑えてない方の腕を軽く引かれた。
「……ねぇ、アミサちゃんは、この暗殺、成功すると思う?」
「……!……、……方法としては、有り得る、と思う」
「……理由、は?」
「……」
私の腕を引いたカエデちゃんは、殺せんせーを心配しているようでありながら、やっぱりどこか違うことに焦ってるようだった。なんていうか、意見を求めているようで否定してほしそう、だなって。
教室の方にチラ、と気配を伺ってみたけど、まだ大きな動きはなさそう……近くにいるクラスメイトもこの話題は気になってるようで、こちらを伺う視線や耳を向けているように感じる。……これは下手に黙るより、私なりの理由はちゃんと話した方がよさそうだ。カエデちゃんが聞きたいことに答えつつ、彼女が隠したいことに触れないように……
「……殺せんせーは、私たちの先生であるために、教室って居場所と先生って立場を守りたい……だから、
「……まぁ、そう、だよね」
「でも、いつでも何とかしてきちゃったから。きっと、この勝負も死なないんだろうなって思う、かな」
「……そっか、そうだよね。殺せんせーを殺れるのはE組なんだから」
「うん、信じて見守ろう」
「……それに、みんなが言うような不公平さは、私は感じないし……だから殺せんせーは逃げずに受け入れたんだろうし、」
「!?」
「なんで!?」
「それ、どういう……」
「わ、ぇ……え、と……わ、私じゃ聞いてただけだから見てないし、私がそう思った、だけで……」
「それでいいよ、だからアミサちゃん、教えて。多分僕達がこの場で感じたこと以上にアミサちゃんは気付いてると思うから」
ここまでの様子を聞いて私が把握してる限りの情報を組み合わせると……そうとしか思えなくて。ホントはもうちょっと続けるつもりだったんだけど、みんなは『不公平さを感じない』ってところに食いついちゃって、話をそらせなくなってしまった。……仕方ない、かな、上手く私の思う結論に繋げよう。
「……あの暗殺は、理事長先生の【死】が前提になってる、から」
「……え、なんで?」
「浅野理事長にとっては自分の手番まで本物の手榴弾を残さなければ勝ちの賭けでしょ?」
「そんでもって、自分の手番まで本物の手榴弾が残ってると判断したら降りちゃえばいい。殺せんせー
「さっき寺坂も言ってたけど殺せんせーにとって不公平で理不尽な暗殺じゃん!」
「……じゃあ、理事長先生、殺せんせーからどのくらい離れてる、の?」
「……ん?離れてる距離……?」
「教室からでてないし……4mくらい……?」
「そりゃあ人体に影響がないBB弾だとしても至近距離で飛び散るのは危ないから、理事長だって距離はとってるし……ね?」
最初に、優月ちゃんから教室の中の配置を教えてもらってからずっと考えてた。みんなの話しぶりからして、殺せんせーが問題集を開く時に理事長先生は安全のためにって距離を取ってる……だとしても、声が聞こえる範囲で見ているのならって。
「……そうか、そう考えると理事長も条件としては対等なのか」
「……は?」
「竹林君、どういうこと?」
「あのサイズの手榴弾の爆発範囲は、10~15m。前提として殺せんせーに火薬は効かない、効くのは4/5の対先生BB弾入りの手榴弾だけ……対して理事長は真逆、たった一つの本物の手榴弾がアウト。裏を返せば、殺せんせーにとっては安全な対人用の手榴弾がいつ出るか分からないってことは、いつ、理事長が被爆してもおかしくないってことじゃないか」
「てことは……俺達が気付いてなかっただけで理事長も自分の危険を賭けてる……?」
「理事長先生が、いろんな面で強いのは知ってるけど……さすがに烏間先生やイリーナ先生みたいな本物の場数は踏んでない、はず。しかもその2人を盾にしてるわけでもない……本物を殺せんせーが爆発させれば、爆風が最初に襲うのは、理事長先生、だよね。だから、最初から命を賭けてるって意味では対等だと思って」
「「「…………」」」
みんな思うことがあったのか黙ってしまったところで話を切って、教室の中へ体を向けると、ちょうど殺せんせーが次の問題集に触手を伸ばしているところだったみたい。さっきのようにガサ、と紙のこすれる音がした……と思った直後風を切る音、何かがこすれる音がした。手榴弾のハンドルが持ち上がる音は、……しなかった。
「はい、開いて解いて閉じました」
「は、」
「え……」
「この問題集シリーズ、ほぼほぼどのページにどの問題があるのか憶えています。数学だけ難関でした……生徒に長く貸していたので忘れてまして……」
「!あ……も、もしかしなくてもこれ!?」
「はい。ですが、それのおかげで今回の数学では点数アップですよ、矢田さん」
殺せんせーが少し照れたように言うと、桃花ちゃんが慌てて外に持ってきた自分のカバンを漁って問題集を取り出したんだろう音がした。殺せんせーが理事長先生がたまたま持ってきた問題集をたまたま覚えていたのかと思いきや、日本全国で発売されている全ての問題集を憶えていたから対応できたって言っていて……きっと、数学だけ不可抗力でやれなかっただけで、普段から
殺せんせーはそのまま順調に問題集を解いていって……4冊、つまり3つの手榴弾を爆発させることなくクリアした。最後に残った1冊、
「さぁ、浅野理事長。最後の一冊を開きますか?いくらあなたが優れていても……もしも本物の爆弾入りの問題集だったらタダでは済まない」
「アンタが持ち出した賭けだぜ!死にたくなけりゃ、潔く負けを認めちまえよ!……ヒィッ!?」
「っ、それに私達、もし理事長が殺せんせーをクビにしても構いません!」
「この校舎から離れるのは寂しいけど……私達は殺せんせーについていきます」
「家出してでも、どこかの山奥に篭もってでも。僕等は3月まで暗殺教室を続けます」
殺せんせーの負けはなくなって、この暗殺は理事長先生が勝負から降りれば終わりという段階になり、余裕を取り戻した吉田くんが理事長先生に啖呵をきって……すぐに睨まれてメグちゃんに縋った。それを容赦なく引き剥がしたんだろうメグちゃんに有希子ちゃん、磯貝くんが続く。
「……今年のE組の生徒は……いつも私の教育の邪魔をする。ここまで正面切って刃向かわれたのは何度目だろうか……」
独り言のように呟く理事長先生の声は覚悟が決まっているようだった。きっとみんなは、もう殺せんせーを殺せないのだから理事長先生は降りると思ってる。でも、きっと理事長先生は、……完璧な教育を目指すために命を賭けてしまえるあの先生は、この問題集を開くんだろう。
「……理事長先生の命を賭けた覚悟は最初からあった。でも、理事長先生も、みんなも、
「……ぇ、」
────ドグォッ!!
さっきの対先生BB弾が飛び散った時の爆発とは似ても似つかないほどの火薬の匂いと衝撃で、音だけでなく窓の外まで大きく揺れた。ある程度の距離があると踏んでいたのものあって、今度は避けたりしない、まっすぐ教室に意識を向け続ける。
「あれって……月1回の脱皮……?」
「……なぜ、それを自分に使わなかった。私が自爆を選ぶと分かっていたのか?」
「ええ、あなた用に温存しました。私が最後まで解ききってあなたまで順番が回れば……間違いなく自爆を選ぶと信じてましたから。それに、私とあなたは似た者同士です。お互いに意地っ張りで教育バカ、自分の命を使ってでも教育の完成を目指すでしょう……それに……私の求めた教育の理想は、十数年前のあなたの教育とそっくりでした」
殺せんせーも理事長先生も、生徒に対して思っていることは同じ……『いい生徒』に育って欲しいということ。将来社会でその人自身の長所を発揮できる人材を育てたいということ。誰にでも思いやりを持ち、自分の長所も他人の短所もよく理解できる生徒になって欲しいということ。今はともかく理事長先生の元々の教育は、殺せんせーのそんな教育とそっくりだった、ということ。……何があって『強者と弱者』に固執するものになったのかまでは知らないけど、似た者同士の2人の教育バカの道が違ったのは、E組を弱者として『捨てた』か『拾った』かという小さなことなんだ。
それでも、と殺せんせーは言う。E組は弱者だとされていても、纏まった人数がここには揃っていて同じ境遇を共有してるから校内いじめに耐えられるし、なんでも1人で溜め込まずに相談できる集団だと。その集団を作り出したのは、他でもない理事長先生なのだと……理事長先生は他者の踏み台にすべく捨てたつもりになっていた『弱者』を、先生自身も気付かないうちに育て続けていたのだと。
「殺すのではなく生かす教育。これからも……お互いの理想の教育を貫きましょう」
殺せんせーだって、私たちに暗殺をさせようとしているとはいっても、対象は殺せんせーただ1人……人間の命を奪え、殺し屋になれと育てているわけじゃない。だからこそ、
「……私の教育は常に正しい……この十年余りで強い生徒を数多く輩出してきた。ですごあなたも今私のシステムを認めたことですし……恩情をもってこのE組は存続させる事とします。……それと、たまには私も殺りに来ていいですかね」
「もちろんです。好敵手にはナイフが似合う」
ナイフを手に、少しの間黙り込んでいた理事長は、ソレをネクタイピンに押し当てながら……笑った。邪悪でも狂気的でもない、何も企んでない……そんな笑顔で。踵を返し、教室の扉へと歩いていく理事長先生……これで、円満解決……でいいのかな。
「そうそう、真尾さん?君は鷹岡先生の時から懲りないね……まさか重機の間に割り込むとは」
「……!……あ、あの、居場所を壊されるの、嫌で……でも、あの……ご、ごめんなさい……」
……よくなかったみたい。ピタリと足を止めた理事長先生は、背を向けたまま私の名前を呼んだ。それも怒りの感情をもって。
だ、だって、あの時は校舎をこれ以上壊されたくなかったし、声を上げてもやめてくれるような人たちじゃないのは、中に私たちも先生たちもいるって知ってて解体してたことから想像できたから。お誂え向きに私は防ぐ術があったわけで、時間がなかったから他のことは何も考えられなくて、できることがしたい思いだけで、気がついたら振り下ろされる重機の下に潜り込んでいたんだから。衝動的な行動だったんだ。
「……業者からは君と目が合った瞬間に締め付けられるような金縛りのようなものが起きたと聞いているだけだよ。彼らも高所から落ちたわけではないし、後遺症のようなものがあるわけでもないから安心するといい」
「…………」
「やはり分かっていないか。真尾さん、私が怒っているのはね、自分から危険を犯す行為そのものだよ」
「……え、」
何故か廊下側へ出ようとしていた気配が教室の窓際へ近づいてくる。私も、様子を見守っていた烏間先生やイリーナ先生、殺せんせーにクラスメイトたちも、いきなりの行動にザワついて、何が何だかわからなくて。
思わずみんなが窓際から下がったんだろう、空いたスペースに、理事長先生は手榴弾の爆風で吹き飛んだ窓に足をかけ、ひらりと飛び越えて着地した。そのまま私のすぐ近くまで来たのを察して動けずにいると────
「自己犠牲を衝動的にしてしまうのは君の性かもしれない。……それでも……減らす努力はしているのかな」
「!」
「また、私の教え子が
私の頬へ軽く手を添えたあと、ふわりと抱きしめられた。理事長先生はかなり身長が高かったはずなのに、なんて……そんな関係ないことを思わず考えてしまうほど、先生の行動は予想外だった。
両腕ごと抱きしめられて、相手は一般人だから手荒くその腕の中から抜け出すこともできなくて、かといってこのままでい続けるには居心地が悪くて。どうしようかと思っていたんだけど、ふと感じたのは先生の体が少し震えているということ。
……そっか、理事長先生はこの教室が塾だった頃の教え子を1人、亡くしているんだっけ。
この学校に私が入学するにあたって、素性をあらった時に見つけた情報のひとつだ。先生の思う強い生徒を育てたら、その人は人に優しく接しようとするあまり、いじめに反抗することさえできないまま死んでしまったのだとか。
以降、そんな経験があったからこそできた椚ヶ丘のE組制度。今回、私が屋根と重機の間に入ったことは自殺行為でしかない……私には防ぐ手段があったとはいえ、何も知らない人が傍から見れば、なんの対策もなく飛び込んだただの自殺と変わらない。
……心配、なのか。
……心配、してくれたのか。
E組のみんながする心配とは種類が違う。
……私は、理事長先生が目の敵にしているE組なのに。
「……さて、私は帰らせてもらう。駐車場あたりに浅野君がいるような気がするからね」
「ヌルフフフ……お手柔らかに」
「フッ、彼も私の息子ですから。週末には家庭裁判所が荒れるでしょう」
「「「(お前ら親子何する気だよ!!?)」」」
私がされるがままにじっとしていれば、理事長先生は私の頭をひと撫でしてから静かに離れていった。肩を震わせていたし、泣いているのかも……そう思ってたけど、離れていく先生の気配はもういつも通りだった。
……それにしても、駐車場あたりにいる気がするって、なんで息子の行動をわかってるんだろう。殺せんせーは笑ってるけど、家庭裁判所を揺るがす喧嘩(?)……さすが浅野親子、規模がでかい。その後、殺せんせーに返事したり烏間先生に何やら伝えたりする以外には特に話すことなく、理事長先生はE組の山を降って行った。
◆
「……で、壊れた校舎は俺等が直すのかよ」
「理事長は?」
「『君達には一教室あれば充分でしょう』だって」
「そこら辺はブレないな……」
理事長先生は殺せんせーの暗殺とともに、校舎を解体する業者さんと重機を引き連れて帰っていった……私が防いだとはいえ、最初の解体された分はボロボロで、その部分を残していっちゃったんだ。E組の存続は認めても扱い方は相変わらずで、言い分も含めなんとも理事長先生らしい……といえばらしいのかもしれない。そしてその壊れた部分を誰かに頼ることなく、自分たちで修理できちゃうE組もすごいよね。設計はわかばパークの時と同じく千葉くんが担当してくれている。
力仕事でもあるから、高所での作業や木材運びが男の子の仕事で、ほとんどの女の子は足が着くところで釘を打ったり工具を運んだり。ほぼ1日仕事になるからってことで、残りの女子数人がおにぎりなどの差し入れを作っている。ちなみに私は身軽な方だし動く作業に回りたかったんだけど……さすがに今日はもう帰るまで目を閉じて過ごせとみんなに言われてしまったから、我慢だ。かと言って何もできないのも……って悩んでたら陽菜乃ちゃんからたくさんおにぎりが乗ったお盆を渡された。……配ればいいのかな?
「あ、そーいえばさ先生。理事長先生の暗殺でそれどころじゃなくなってたけど……テストのご褒美は?」
「にゅ?……ああそうでした。先生の決定的弱点を教えてあげるんでした」
「「「!」」」
陽菜乃ちゃんの問いに全員が手を止めて殺せんせーに注目した。そういえば、そんなこと言いかけてた気がする……殺せんせー本人が明かす、殺せんせー最大の弱点とは?
「実は先生、意外とパワーがないんです……スピードに特化しすぎて。特に静止状態だと、触手1本なら人間1人でも押さえられる」
「つまり皆で触手を捕まえれば、動きを止められる……!」
殺せんせー最大の武器はやっぱりマッハ20と言われるスピードだ。どんなに技術を磨いたって、どんなに気配を殺せたって、避けられたら全部意味が無い……その動きを止められるのだとしたら!
早速とばかりに殺せんせーの近くにいる人が触手を掴んでみようと手を伸ばしてみたんだろう、殺せんせーもわざと動かないでいてくれるみたいだし、試させてくれてるんだと思ったんだけど。
──にゅるん
──ぬるん
──ぬるぬるん
「って、それが出来たら最初から苦労してねーよ!!」
「不可能なのわかってて教えただろこのタコ!!」
「ふーむ、ダメですかねぇ……あ、要領はあのヌタウナギを掴む感覚です」
「ほとんどの奴が触ったことねーよヌタウナギ!!」
そういえば、殺せんせーの触手って粘液があるよね。自分で調整してヌメリや粘りを纏わせられるんだから、動かなくったって私たちの拘束から抜け出すのなんて簡単に決まってる……つかむにしても、せめて粘液がない時しか無理かな。
1学期から目指し続けた目標を達成して、役に立つんだか立たないんだか、そんな弱点を教えられた、今回の期末テスト。A組とE組の勝負には決着がついたけど、暗殺の決着はまだまだなんだろうな。
「涙は?」
「と、まった……はず」
「痛みは?」
「ない、よ。先生たちもいいよって言ってたし、傷も無さそうだって」
「……ん。よし、じゃあ目を開けて」
「……」
「……ぇ……」
「……?」
「あ、いや……見え方に異常はない?」
「う、うん、普通に見えてるよ……?」
「……そう」
「……?」
「……マ君、カルマ君。カルマ君ったら!」
「…………え?」
「もー、手伝ってよ〜……男手欲しいんだから!」
「あれ、アミサちゃんは?」
「渚君と茅野ちゃんか……アミーシャならさっき目の調子確認して、一応異常はなさそうだったからこれなら全体見て回っていいんじゃない?って言っておいたけど」
「まあ烏間先生とイリーナ先生の方にも行ってたし、カルマ君が『俺も見てからじゃなきゃ行かせない』って引っ張ってっただけだしね……」
「ていうかさっきから1人で何悩んでるの?」
「……あのさ、2人から見てアミーシャの目の色って何色?」
「「え?」」
「いいから答えて」
「え、えーと、紫……んー……紫に近い蒼?」
「どっちかというと、海の色じゃない?深いところとかあんな感じの色な気がする」
「あ、それだ。でも目の色がどうかしたの?」
「……さっきタオルを取った時、銀色っぽかったんだよね。すぐにいつもの海の色っぽく戻ってたけど」
「え、銀色って……光って見えただけじゃないの?」
「……いや、今までにも見たことある気がして……いつだったかな……」
「……あ。ねぇ、アミサちゃんが殺せんせーに幻の鎖を巻き付けて、って時も銀色っぽく光ってなかったかな?」
「え、そうだったの?!渚とカルマ君しかあの時近くで見てないから分かんないんだけど……」
「た、多分だからね?!……って、カルマ君?」
「あ、いや……、うん、多分その時もだと思う。サンキュ、俺も手伝ってくる」
「あ、うん、いってらっしゃい」
「「……」」
「大丈夫かな、2人とも」
「カルマ君がどんどん過保護になっちゃうから、アミサちゃんが落ち着いて……いやせめてワンクッション入れてくれればいいんだけどね」
「……無理じゃないかなぁ」
「……確かに;」
++++++++++++++++++++
書いてたら文字数12345文字でちょっと感動しました!……あ、あ、調整はしてません、嘘じゃないですよ!?……少しだけ意識はしたかもですが。
第1部の教員試験の時間と違って、
・オリ主が一切目が見えない状態
・オリ主が目を塞いでる=こいつを自由にすると何するかわからない=教室の至近距離には近づけるな
ということでとにかく窓際に行けなくされてます。
流れは一緒ですが、自分なりにあの暗殺を落ち着いて噛み砕き直してみたら……あれ、E組のみんなが言うほど理不尽な暗殺じゃないんじゃないか?と思ってオリ主に代弁してもらいました。あと、カエデちゃんとの絡みも少しだけ。
漫画版だとここで伏線張られてるんですよね……見えてないからこそ感情や気配、呼吸などなどから周囲の情報を読み取るオリ主なら、気付くかもなと考えてあえて入れてみました。もちろん真意とかまでは察してません。五感全て使って本気で読もうと思えば読めるのかもしれませんが。
理事長先生が人間ぽくなった不思議。……元々人間ですが。
それではまた次回!
お茶会の時間は改変するか飛ばすか悩んでます。