暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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★139話 対話の時間

 

浅野side

 

「……ごめんなさい。私、浅野くんを恩人とかお友だちとしてなら見れるけど、好きな人に……、……ううん、浅野くんの気持ちには応えられません」

 

「……正直、赤羽とどうなったかの報告もなかったし、僕でもいけるんじゃないかと思ってたんだけどね」

 

「それは……、お付き合い始めた直後からちょっと周りがバタバタしてて」

 

「分かってるさ。……返事、してくれてありがとう」

 

 

 

 ───二学期末テストが終わって。

 

 

 

 ある意味望み通りで、僕にとってはかなり悔しい結果で終わったテストだったが、……まあ、この結果を受け止め、理事長の支配から解放されたA組のクラスメイト(僕の手下)達がそれぞれ敗北を味わったことで元に戻ったことは喜ばしい。彼らが『他人を見下す事で得られた強さ』には限界があるのだと身をもって体感した事で、今後高等部に上がった時には油断しないで挑むことができるようになるだろう。

 自分の支配を、教育を否定されたことで誤作動を起こしたように見えた理事長がE組に乗り込んだと聞いた時はどうなる事かと思ったが……駐車場で合流した時、父は『先生』ではなく『ただの人間』だった。想像でしかないが、あの完璧面が崩れていたのを見るにまたE組に何かしらで負け、何かを学ばされたのだろう。僕が、そうだったように。

 

「そろそろ終わったよねー、よいしょっと」

 

「おい、まだ……少しは遠慮というものはないのか貴様!」

 

「だぁって煮オレまだ残ってんだもん、飲まずに置いとくとかもったいないじゃん」

 

「あれ……カルマ、さっき、ほとんど飲んでってなかった……?氷溶けて、薄くなってそう、だよ……?」

 

「んーいやいや、これでも結構美味いよ。飲む?」

 

「んーーーーー……、…………やめとく」

 

「だいぶ迷ったね。ちゃんとフルーツの味するってば」

 

「ゲテモノを薄めてもゲテモノに変わりないだろうが……あと真尾さんは人の、というか異性が口を付けたものに抵抗を持とうか」

 

「……え、と……なんで?」

 

「なんで……!?」

 

「浅野君、深く考えない方がいいよ」

 

「お前は、というかお前が気にしろ赤羽。あとストローに口をつけながら話すんじゃない」

 

「……浅野君ってやっぱり育ちがいいというか感性お坊ちゃまだよね」

 

「何の話だ」

 

 期末を終えたことで、冬休みまでの大きな行事は中学部全校生徒での演劇発表会を残すのみとなった。つまり……もう僕ら本校舎組とE組が争うことができる行事はなく、高等部への進級、進学を意識し始める時期。強いていえばE組は外部受験に向けたカリキュラムになるくらいだが……そこはE組だけの事情であって内部進学が決まっている僕らには関係のないこと。だから、というのも違う気もするが、落ち着いた今ならお互いに動きやすいだろうと真尾さんを誘い、以前は別の目的があったが故にまともにゆっくりできなかった『kunugi-kaze』に蓮達4人を伴い訪れていた。

 僕としては真尾さんだけを誘って、蓮達の無事を知らせがてら6人で過ごしたかったんだが……赤髪の男を筆頭とした見知った大勢にため息が出る。彼女の人望なのか、E組が心配性の集まりなのか、はたまたただの好奇心なのか……ほんの数日前まで争っていた僕らとの外出とはいえ、この喫茶店にE組生の大半が集まってるとはどういうことだ、まったく。それでもなけなしの配慮というものがあったらしい赤羽や、それとなく磯貝の元へ離れていった蓮達4人を横目に、目的だった返事の分かっている告白のやり直しはできた。色良い返事は貰えなかったが……どこかスッキリしてる僕がいるのも事実。……だが僕らが空気を切り替える前に、コイツなり僕らを気遣って離れていたんだろう男は、僕らの席にシレッと戻ってきた。

 

「まあいい、さっさと話題を変える。ここからは友達としての会話をしよう」

 

「……浅野くん、切り替え早いね」

 

「悩んでいても仕方ないしね……そもそもそれくらいの精神がなければ椚ヶ丘の支配者(太陽)なんてやってられるか。それにキミの恋人にはなれなくても……コイツに言えない話を聞けるって立場にはなれるだろう?」

 

「は?そんなの必要ないでしょ。イイ子ちゃんな浅野くんにはこの子の全部を抱えるとか無理だろうし〜?」

 

「お前には聞いてない。そもそも始める前から無理と決めつけるのはどうかと思うがな」

 

「だってアミーシャって素直すぎるくらいに素直だから嘘つけないし、俺に言えない事は他のE組に話してるだろうからさぁ。別に相談役とかいらなくない?」

 

「大方E組は真尾さんの様々な事情を知ってるのだろうが、僕は逆に知らないことが多い。つまり、客観視して味方しすぎない立場から話すことができるということでもある。これは踏み込みすぎたE組にはできないことだろう?」

 

「よく知らないやつに相談するってことは、アミーシャの根幹には関われないって知ってる?」

 

「ああ、もちろん。その上で……真尾さん」

 

「え、な、なに……?」

 

「交際はできなくても、僕らは友達として再スタートするわけだ。新しい関係になるのだから、僕から1つ願い事がしたいのだけども、いいかい?」

 

「お願い……?私にできることなら……」

 

「君のことを名前で呼ぶのを許して欲しい。そして、僕のことも名前で呼んでくれないか?特にコイツの前では」

 

「は!?お前何言って、」

 

「……?えと、学秀くん……って呼ぶのであってる?」

 

「……!ああ、それでよろしく頼むよ」

 

「ちょっと!?アミーシャ言うこと聞く必要ないって!」

 

「え、え?だって呼んで欲しいって、」

 

「社交辞令ってやつだから無視すればいいんだって!てかさ、わざわざ俺の前で名前呼ばせるとかいい度胸してるじゃん。大体前からそうだったけど浅野君はさぁ───」

 

「ふん、関係にあぐらをかいて素直なアミサさんに対策しなかったお前の落ち度でしかない。それにアミサさんだって───」

 

「まーだバチバチやってんのかァ?コイツらも飽きないな」

 

「同族嫌悪ってやつだよね。僕らが戻る前に名前呼びの権利は勝ち取るとか言ってたけどそこは達成した感じなのかな」

 

「あ、おかえりなさい、榊原くんたち……磯貝くんとお話、できた?」

 

「で、ことの当事者はコレってな……」

 

「コイツらお前の話で揉めてんだけど、分かってる?」

 

「……え……?」

 

「「「「え、じゃないんだよなぁ……」」」」

 

「うーん……浅野君や赤羽君、E組の連中が近くにいない時の真尾さんって、フラッと知らない人について行かないか心配になってくるんだよね……;同い年なのは分かってるんだけど」

 

「世間知らずで押し通していいのか、天然というべきなのか悩むところだな……E組の奴らコイツのこと純粋培養しすぎだろ」

 

「真尾、誰かに話が通じないとか分からない時は俺らも使えよ。俺らだってお前のことは戦友くらいには思ってんだ、その程度は動いてやるからよ」

 

「ま、それはそれとして。僕ら以外に浅野君が同い年としての素を出すのは珍しいことだし、たまにはこういうのもいいんじゃないかな。支配者として気を張るばっかりじゃ疲れるし、ね?」

 

「う、うん……?えっと……わ、私もこうやって楽しそうにしてる2人、見るの好きだから、その……いいかなって思うよ」

 

「楽しくないからね!?」「楽しくないからな!?」

 

「んー……ふふ、やっぱり2人とも仲良しだね」

 

「……!……はは、確かに」

 

 僕の要望を叶えつつ、赤羽をいじるためにアミサさんとお互いに名前呼びをし合うことができるようになったのはいいんだが、当の本人は面白いくらいにその意図を全く分かってない。それどころか言い合いをする僕らを見て蓮と一緒になってニコニコと……本当に彼女は謎な感性を持つ女性だ。……ん?蓮と瀬尾が頭を撫でようと伸ばした手をアミサさんが拒否せず受け入れている。前に会った時はまだ逃げていたのに、……彼女なりに警戒を解いて歩み寄ってくれているのか。2人も拒否されなかったことに驚いた表情をした後、若干嬉しさをにじませた表情で笑っている。

 何やらアミサさんと蓮、瀬尾の3人で話し始めたな、と視線をそらした先では、こそこそとE組の前原と矢田が荒木と小山の近くでスマホを見せながらなにやら話しているところで……何をしてるのかと思えば僕のスマホが震えた。見れば、荒木からグループチャットへの招待リンクが送られ……『見守り隊』?過去のメッセージの履歴は共有されていないがアルバムは見れるな。メンバーは……提供者はバラバラだがアミサさんが映る写真や動画、彼女に似ている女性や以前倉橋さんが共有してくれた写真の少女……なるほど、アミサさん以外のE組だけのグループに情報共有か何かの為に僕らを入れたということか。

 

 

 

【見守り隊(33)】

『浅野学秀 が参加しました』

 

《とーか:これで5人とも参加できたかな?

 

《陽斗:おーいメッセージ見えてたら

    スタンプでも何でもいいから返信くれ!

 

《渚 :せっかく目の前にいるんだし

    手を挙げるなりこっち見るなり

    してもらうんでもいいんじゃない?

 

 

 メッセージを見て顔をあげると、E組が集まるテーブルの方で困ったような笑顔で僕らの方を見て片手を振っている潮田が目に入る。偶然だと思われないようにスマホを持つ手を軽く挙げておく……スマホを見れてない奴もいるが、僕だけでも把握しておけば最悪問題ないだろう。もう一度画面に目を落とすと既に別のメッセージが書き込まれているところだった。

 

 

 

《RIO :メンバー見てもう察してると思うけど

    アミサはこのグルチャの存在知らないから

    口外禁止ね!それだけ守ってくれたら

    発言とかしないでROMっててくれていいわ

    重要ならメンションするし通知切っててもおk

 

《ひなた:元々アミサは関係なく数人の女子でいろいろ

     共有する為だけに作ったグルチャなんだけど

     情報収集目的で共有の場が欲しいっていう

     カルマを入れたあたりからバグったんだよね

     一応言っておくけど除け者にするつもりで

     ここがあるわけじゃないから

 

《メグ:浅野君達も知ってると思うけど

    アミサって無理無茶無鉄砲がデフォなのよね

    しかも素直な癖に不調も不満も全部隠して

    そういうのに限って全然顔に出さないの

    人を変えるとたまにポロッとこぼすから

    ヘルプ目的で誰か呼ぶのに使うことがあるわ

 

《hinano:気持ちを上手く出すのが苦手だから

      全部自分を後回しにしちゃうんだぁ

      あーちゃん本人は一生懸命だから

      あんまり助けすぎるのもな〜……って

     それとなく間に入れるようにしてるの

 

《神崎:カルマ君はここ見てなくても間に入れるけど

    私達だと難しいこと、多いんだ

 

《原 :見ててくれる人は何人いてもいいもの

    名目上アミサちゃんを見守るチャットだけど

    関係ない共有事項に使ってもらっていいわよ

    現に写真とか唐突に送る人もいるしね

 

《寺坂:イトナなんて

    『空』の一言で飛行機雲送ってきたしな……

    確かにめちゃくちゃくっきり見えたけどよ

 

《友人:前にだけど磯貝は

    学級チャットに貼る前に見てくれって

    確認目的で使ってたよな!

 

《CHIKURIN :浅野達を入れたのか

       だったらこれは彼らにも共有しておこう

       期末前、真尾さんはPTSDに近い症状で

       パニックを起こしたんだ

 

 

 

 は、と綴られた文字を見て思わず顔を上げてアミサさんの方を見る。いつも通りの様子で楽しそうに話している彼女を見るに、そんな調子を崩してる雰囲気はないが……、もう一度画面を見ると次のメッセージが書き込まれようとしていた。……こいつ、誰かと思ったが竹林か。ここに居ないから僕の反応も気にせず次を送ってるんだな。

 

 

《CHIKURIN :幸い彼女をよく知る人達が近くにいて

       対処できたから大事にはならなかった

       ただ、正直何がきっかけになるか

       ハッキリと分からないんだ

       万が一、E組の誰かが近くにいなくて

       君達といる時パニックを起こしたら

       教えて欲しい

 

《愛美:先に分かってさえいれば

    合流する前に対処できるかもしれませんしね

 

《Taisei :このチャット、何かと見てるからな

     誰かには連絡着くはずだぜ

 

 

 

「…………ああ」

 

「学秀くん、どうしたの……?」

 

「ッ!……いや。僕も父も、E組には何かと影響を受けているなと思って」

 

「……んーん、私たちも、一緒だよ。学秀くんたちがずっとライバルとして前を歩いてくれてるから、E組が奮い立つの。きっと、どっちかが欠けてても、今はないと思う、よ」

 

「……そう思うか」

 

「うん」

 

 ……僕ら5人をこのチャットに入れたのはそういうことか。まだお互いに全面的な好感情をもてないながらも強さの一端を知ろうとする僕らと、自分達の持つ個々に尖った力を惜しみなく出して困難にぶつかりながら食らいついてくるE組を、アミサさんを架け橋に繋ぎ、今まで伏せていたことを少しだけ開示し、それでいて身内に押し込めていた一部を解放して。

 これはこれでいい関係なのかもしれない……全てを知ることは許されていない、それでも、まだ子どもでしかない僕らの世界が、この繋がりを通して少し広がった、のかもと思えば。近くに来たアミサさんに違う話題を振ってスマホに気取られないようにしながら、僕も少しはコイツらのことを受け入れてみよう……そう思うことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 浅野くん……改め学秀くんたち5人が、何がきっかけになったのかは分からないけど、最初にこの喫茶店に入った時の硬さがなくなったというか、肩の力を抜いて彼ららしい、何も取り繕ってない素を出しているように見えるようになったというか。態度とか言動が変わったわけじゃないけど、雰囲気が柔らかくなったような気がする。きっとこれは、いい変化……というやつなんだろう、多分。

 喫茶店に来て最初の時のように私とカルマと、学秀くんたち5人とで引っつけたテーブルを囲んで座りながら店内を見回せば、向こうの方には今日のことを教えてないのに居合わせてるE組のクラスメイトがたくさんいて。榊原くんには『セコム』って言われたんだけど、一般の人に負けるほど私が弱くないってE組のみんなは知ってるのに。さっき様子を見に行ったカルマ曰く、女の子は全員いて女子会をしてるらしい……じゃあやっぱりセコムじゃないよね、うん。その後は制服の上からエプロンだけ着けて接客してる磯貝くんを目で追っていると、カチャ、とカップを置く音がして、なんとなしに見れば、その音はこちらを見ている学秀くんの出したものだった。彼の所作はすごくキレイで、こういう時に音を立てないから珍しい……

 

「……、アミサさんに聞きたいことがある」

 

「?」

 

「正直これを聞くかどうか迷いはしたんだが……いくつか違う状況はあれど、あまりにも同じ部分が多すぎてな」

 

 すごく言いにくそうに口を開いた彼は、視線を私に、カルマに、向こうのE組に、五英傑の4人に、磯貝くんに……このお店の中でいくつかのポイントを確認するように向けている。さっきまでの雑談の雰囲気からガラッと変わった学秀くんのソレに、同じテーブルについていた私たちだけでなく、こっちの様子を伺っていたE組のみんなも興味深そうに意識を向けて来ているような気がする。

 

「え、えと……?」

 

「アミサさん、君は……いなくなろうと、考えてないか」

 

「……、……え……」

 

「中学三年生が終わる前に……誰にも告げずに、もしくは消えてもおかしくない状況にして、E組から、……いや日本から離れようとしてないか?そして、その選択肢の中に……自分の死を含めてないか?」

 

「「「!?」」」

 

 ……急に何を言い出したのか、と思った。それと同時にどうしてそれを、と。だってそれは、私のことが、私のホントの姿や過去をE組のみんなに知られてなければ、今頃私が選ぼうとしていた道だったから。本物の凶手……暗殺者《銀》として、私が表の世界で生きるみんなと同じ世界で生きられると思ってなかったし、血を浴びて生きてきた私と関わることで危険に巻き込む可能性を減らすには、離れるのが1番だと。みんなを助けるためだったら死んでも構わなかった。

 でも、E組のみんなは私のことを知っても一緒にいるって。離れるつもりはないし、なんなら離れたら追いかけて何をしてでも連れ戻すって。元々私の決意を知っていたお姉ちゃんたちも、私が表の世界と裏の世界の両方で生きられるように全力でサポートしてくれるって。だから、離れようとか、私の存在ごと消してしまえばいいとか、もう考えてないのに……私と同じように驚いてるカルマやE組の面々を見れば、彼らが教えたなんて選択肢は秒で消える。じゃあ、なんで学秀くんがそれを知ってるの?

 

「浅野君、どういうことだい?話が見えないんだが……」

 

「……テスト前、父の支配下にあったお前達の意識を変えるために、E組に期末テストの上位独占を依頼したんだ。いろいろあって、アミサさんが写った写真を取り返そうと僕の近くに来たんだが……その時に、この喫茶店でさっきの内容について会話している僕らの姿を見た。ほとんど見たままだが、違うことといえば……僕がアミサさんに名前呼びを頼んだ時に赤羽がE組の連中と一緒にいたことや、お前達が戻ってきてなかったこと……連絡先の交換もだな、そんなことはしてなかった。だが、それ以外のこの場にいる奴らや状況があまりにもそっくりだ」

 

「……、なんだァそれ?」

 

「浅野、お前未来でも見たのか?」

 

「だから答えを知るために聞いてるんじゃないか。デジャブとも違うし白昼夢とでも言われた方が説明がつくが、これを夢で片付けていいのかと思ってな……僕が見たものが正しいのか、聞いてしまえば真実はハッキリする。どうだい?」

 

「……私、は……もう、そんなこと考えてない、よ……?」

 

「『もう』……つまり考えていた時期はあったんだね。ここも相違点か……」

 

 どういう、ことだろう。起きてもないことだし、もう私が起こすつもりもない、ありえないことなのに……彼の言うことが正しいなら、今、こうやってみんなが集まることも知ってたってこと、でしょう?学秀くんに未来予知の能力があるって言われた方が納得できるくらいだ。五英傑で話してる声を聞きながら戸惑っていれば、先に復活したらしいカルマが顔を上げて割り込んだ。

 

「……仮に、アミーシャが俺らの近くからいなくなろうとしてるのがホントだったとしてだよ。もう一個の方は何?浅野君はアミーシャ本人から『自分は死んでこの世から消えようとしてる』とでも言ってるのを聞いたってわけ?」

 

「それは違う。この場所では『もう一緒にいられない、近々いなくなろうと思ってる』と聞いただけだ。そっちは別の場所で……」

 

「別?じゃあ浅野君はここでのこと以外も何か見たってこと?」

 

「ああ、だがお前も……、そうか、アミサさんが違うのだから赤羽も知らないのか」

 

「……はぁ?なにそれ。1人で納得して終わらないでくれない」

 

 カルマの質問に答えているようで若干放置しているような気も……学秀くんは難しい表情で何か考えているみたい。彼自身も答えがすぐに出るわけでもないのか、説明がつかないのか黙ってしまった。隣でカルマがイライラしてる雰囲気を感じるけど、それでいながらどこかへ行くこともなく、飽きたとも言わず待つ姿勢なのが少し気になった。……もしかして、カルマには学秀くんが何に悩んでいるのか検討がついてるのだろうか、なんて。

 しばらく……といってもそんなに長くはなかったけど。顔を上げた学秀くんは、私たちだけでなく向こうにいるE組のみんなの方を確認してから口を開いた。

 

「……場所を変えたい。磯貝、片岡、ここに来てないE組も何らかの形で召集しろ。全員が参加するならビデオ通話でもいい。……着いてきて欲しい場所がある」

 

 

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

 

 

 

 

「……ここだ」

 

「ここって……市民会館だよな?なんでこんな所……」

 

 さすがに30人以上でゾロゾロと連れ歩くのは迷惑になるだろうと磯貝くんが言い出して、学秀くんご指名の私とカルマ、メグちゃんと磯貝くんの他、着いていきたいと言った一部のE組生以外は『kunugi-kaze』に残って、来ていなかった男の子たちを含めたビデオ通話で参加することになった。

 着いた場所は私からしたら全く縁のない場所。室内での市民行事があると使うらしいけど、ここに私は来たことがない。知らない場所が少し嫌な感じがして、でも興味もあってカルマの後ろに隠れながら室内を見ていると、学秀くんが足を止めたのは大きなホールへ入る扉の前だった。

 

「……、……理由は僕にも分からない。だが、僕が知る限り今年の()()()()()()は、椚ヶ丘中学校の体育館ではなくここで行われる」

 

「行われるって……さっきから思ってたけど浅野、なんの話しをしてるんだ?」

 

「そうだよ。さっきの喫茶店でのこともだけど、そもそもまだ冬休みですら前なのになんで僕達が卒業してる話になるんだ?」

 

「まるで本当に未来を見てきたような言い草だよな」

 

「未来……?未来って、まさかっ」

 

「浅野、それを見たのって真尾が近くに来た時って言ってたよな!?写真を見た直後とか貰った時じゃないんだよな!?」

 

「あ、あぁ……?」

 

 学秀くんは未来を見てる。それは喫茶店での会話でも感じたことで、やっぱり何らかの形で未来予知でもしたんじゃないか……私がそう考えた時。喫茶店では少し離れたところに座っていたし、私たちの会話の全部を聞いてたわけじゃなかったんだろう、メグちゃんと磯貝くんの表情が大きく変わったのが目に入った。勢いよく詰め寄るように近づいた磯貝くんたち2人の様子に何か言う前に右手に痛いくらいの力が入ったのを感じて、思わずカルマを見上げてみれば真剣な目で彼らを見ていて……。着いてきた渚くんとカエデちゃん、イトナくんも同じような顔をしている。

 2人の勢いに狼狽えながらも浅野くんはホールの出入口から少し外れた階段下の隅へ歩いていくのに私たちもついていけば、そこはちょっとした内緒話ならできそうなくらい周囲の目が届かないところで……、足を止めた学秀くんはこちらを見ないまま小さく、思い出すように呟いた。

 

「……ここで、僕ら五英傑を、磯貝と片岡が呼び出していた。その時、『昨日の夜にアミサさんが、今朝赤羽が死んだ』と教えられて……」

 

「ッ!?」

 

「「「「は!?」」」」

 

「……俺、か。なるほどね」

 

「そっか……浅野君が見たのはカルマ君が見たものの続きってことだったんだ」

 

「それにやり直し前に死んだ可能性のあるE組の誰か、がアミサとカルマの2人なのも確定だ」

 

『そこ、確定できんのか?生徒会長が聞いてないだけで2人以外にもいるとか……』

 

『アミサちゃんは当然として、テストで1番競ってたカルマ君との関わりが深かったからその2人だけ伝えたんじゃないかって?』

 

『ああ。生徒会長様も夢だと思ってたんならそんな細々とは覚えてねぇだろうしよ』

 

『……ううん、磯貝君もメグもマメだから。浅野君達と関わりが大きくなくても正しい情報を出せる限りきっと伝えてると思う。A組って立場でも、アミサを通じてE組と関わりが深かったのは事実だから、みたいなさ』

 

『……、……じゃあ、やっぱり2人、か』

 

『しかもその言い方ってことは、カルマは……』

 

『アミサの時には既に重傷だったか、もしくは後を追ったか……だろうね』

 

「今のカルマ君に言ってもしょうがないけど……何で生きようとしなかったんだろう?」

 

「アミーシャを1人にすることが耐えられなかったんでしょ、多分。大方アミーシャに何らかの形で置いてかれて、死んでも独りにしたくないから追いかけるって選択肢しか、その時の俺にはなかったんじゃない。……ま、同じことになれば今の俺でも、同じ道を選ぶと思うよ」

 

「……カルマ……」

 

 私が、榊原くんたちが、そして知っていることを話したんだろう学秀くんが驚き戸惑う中、私を除いたE組はすごく冷静だった。取り乱すことも、慌てることも、狼狽えることもなく話し合う姿は、ここで明かされることを最初から知っていたかのように、すんなりと受け入れている。

 

 ……あれ?それがホントなのだとしたら。

 

「……ね、ねぇ……、私と、カルマが死んじゃう、とか、やり直しって、何……?みんな、何を知ってるの……?」

 

「それに何だお前達のその落ち着き様は。僕は2人の、……アミサさんと赤羽の死の可能性を話したんだぞ。そんな簡単に受け入れるとは思わなかったし、……世迷い事だと、否定しないのか」

 

「というか赤羽君は自分の死に動揺して無さすぎじゃないかい?」

 

「そうだ、アミサちゃんにはあの時の話し合い含めて今まで伏せてたんだっけ……どうしよう五英傑にはどこまで……」

 

「……もう、話しましょう。機密は話せないから、アミサ達に関係することだけでも……浅野君が断片だけとはいえ見てる時点でもうこれに関しては隠しておけないわ」

 

「真尾についてもだな。……1番知る権利があると思うし」

 

「渚君、リーシャさん達に事後報告になるけどって前提で連絡とっておいて」

 

「律、烏間先生達への共有を頼んだ」

 

「う、うん」

 

『はいっ!』

 

「お姉ちゃんたちに……?なんでわざわざ報告なんて……って、カルマ……?」

 

 

 

 みんなが話すソレは、誰も知るはずのない、だけど選択次第ではこれからあってもおかしくない出来事。なのにみんなが慌てることもなく、落ち着いて構えているように見えるのは、事前に知ってることがあったから。もうことが起こりえない違う分岐を進んでいると確信しているというか……そんな雰囲気。

 

 

 

「……できたら、最後の分岐を乗り越えるまでは黙っておこうと思ってたよ。キーアの気遣いもだけど、アミーシャに限っては明確な命の期限が分かってるからさ」

 

「……キーアちゃんがって……まさか、」

 

 

 

 それはまるで……

 

 

 

「アミーシャの命の期限は、今までキーアが見てきた未来の分岐の中では、15歳まで……いや、この教室を卒業できない。必ずE組として生きてるうちに何らかの理由で命を落としてる。……今は、キーアによってその未来に行き着かないように書き換えた上で、俺っていうイレギュラーをも死なせないために、さらに書き換えられた世界なんだって」

 

 

 

 ≪碧の大樹≫の中でキーアちゃんのいる場所へ向かう途中に見た、キーアちゃんが書き換えてなかったことにされた現実を見た時のようじゃないか。

 

 

 

 





※異動前のつかの間の雑談にて
「そういえば、あの時なぜ言い換えたんだい?」

「?」

「僕のことを『好きな人には見れない』と言いきらずに『気持ちには答えられない』と言い直しただろう。どちらにせよ断りの文句に変わりないし、わざわざ言い換える必要があったのかと思って」

「え、と……?だって私、学秀くんのこと好きなのに、好きな人に見れないは、言葉がおかしい、よね……?」

「……、ん?」

「え?」

「真尾さん……?」

「お、お前、浅野のこと好きなのにフったのか!?」

「赤羽と2人とも好きとかお前やるな……」

「……?え、と、2人……?……あっ、そういうこと……ううん、ちゃんと瀬尾くんたちも好きだよ」

「「「「はァ!?!?」」」」

「ひぇ……?」

「あー、ちょっとすれ違いが大きくなりそうだから1回ストップ。……俺ですら未だに食らうのに、お前らがアミーシャのコレに混乱しないわけないもんねぇ……」

「……なんとなく、言いたいことが分かる気もするが……一応聞こう。わざとか?」

「まっさかー。ほら、さっき榊原と瀬尾が頭撫でるの逃げなかったじゃん?この子なりにお前らって人間が怖いって対象から大丈夫って対象になったのを態度に出してるわけ。それはいい?」

「あ、あぁ……」

「確かにやっと触れてもいいんだと分かって嬉しかったけど……」

「俺らにとって恋愛感情と友人に対する好意って別物だけど、アミーシャからしたら好きって言葉で表す感情に種類がないんだよ。誰が相手でも好きか、嫌いか、どうでもいいか、それだけ。ただその好きに対して『一緒にいたい』とか『甘えたい』とか『近くにいても怖くない』みたいな別の気持ちが乗っかるかどうかで差があるって感じ?アミーシャからしたら感情それぞれに違いがあるというより足し算なわけ」

「「「「…………」」」」

「だから今の返答の意図としては、『浅野君と俺の2人だけが好きなんじゃなくて、ちゃんとお前ら4人のことも好きだから差別してないよ』ってことでしょ」

「うん」

「で、浅野君に対して言葉を言い換えたのは、浅野君が向ける『好き』には答えられないけど自分からしたら『好き』には違いないから、『好き』って言葉を否定したくなくてああなったんだよね?」

「うん」

「ほら」

「「「「いや難しいわ」」」」

「……アミサさんのことを理解するにはまだまだ時間が必要だね」





「……カルマ、怒ってる?」

「んー、怒って欲しい?」

「う、ううん!でも……カルマが嫌なら……怒ってくれていい、よ。私が、上手くわかって、伝えられないのが悪いんだから」

「(本ト、こっちの感情の機敏を察するのは上手いんだよね)……怒ってはないけど、もっと俺を特別扱いして欲しいとは思うかなぁ。アイツらは分別あるからいいとして、異性相手に軽く言うと勘違いする野郎が出てくるしさぁ……アミーシャにとって俺は、他と違う好き、……なんでしょ?」

「……カルマは、最初から私の特別だよ。後ろでも前でもなくて、ずっと隣にいたいのは、カルマだけだから」

「……そ」



++++++++++++++++++++



やっぱりお茶会の時間も流れが変わると感じて書いてみたところ、国家機密(殺せんせー関連)は明かせないにしても、本編ではありえなかった共闘が生まれそうな予感がしてます。すごく長くなりそうだったのでお話を分けてまとめていくことにしたので、浅野君たちの出番はもう少し続きます。

A組とE組としての確執は、テスト前に磯貝君が言っていた通りの「格付けもないただの同級生」な関係に落ち着こうとしてると思ってて、そこに共通して関わってきた存在としてオリ主が架け橋になってるエピソードになりました。
チャットに関しては、E組チャットとは別だと思ってください。ほとんど動かないけど、【129話 訓練後の時間】のような使い方やオリ主関連でどうにもならない事を相談する場、みたいな……

実はオリ主、第一部とは違って第二部ではやり直しの世界にいる自覚がなかったんですよね。第一部ではキーアに呼び出されて死を回避するためにカルマたちと出会う因果を導かれたことを説明されてますが、第二部では知らない間にE組全体の共通の認識になっていて、ここで始めて『キーアの因果律を操作する力の対象に自分が当てはまっていた』ことを知りました。
まだ第一部では拾えてるのに明かされてないことがあったりするので、次回のお話で深堀れたらと思ってます。

浅野君たちをどこまでかかわらせていいものが悩んでます。
が、カルマの進路すら原作からズレようとしてますし、あくまで二次創作で微原作沿いなので……このお話オリジナルの展開をお見せできたらと考えてます。

では、また次回よろしくお願いします!

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