暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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UA152400ありがとうございます!
本誌通りの動きをしてたはずなのに、第一部ではニアミスしてたあの人と、タイミングさえ会えばかち合ってたんだろうな、が現実になったお話から始まります。メタいこと言ってますが本文にメタはありません。

今回もよろしくお願いします!



★142話 不穏な時間

 

律side

 

『───あ、そちらの角を曲がったところ周辺もアミサさんに提示いただいた条件に当てはまるかと!』

 

「あっち?……ありがと……こんな時間に付き合わせて、ごめんね」

 

『いえいえ!烏間先生に任されましたし、なによりアミサさん一人を出歩かせるより全然いいですから!』

 

「う、信用ないよぉ……」

 

 演劇発表会も終えて冬休みになるまで後少しという時期。大きな学校行事が全て終わったことで、夏休みに続いてしっかり時間の取れる冬休みに大型の暗殺を仕掛けるべく、私を含めたE組のみなさんは相談に相談を重ねています。烏間先生が政府に便宜を計ってくれたおかげで、学生の考えた突拍子もない暗殺方法を実行するだけの予算や場所が確保され、政府公認で色々できるとみなさんとても楽しそうです。

 そんな中、アミサさんと私は夜の椚ヶ丘を歩いています。理由としては教室の裏に積まれた大量の土砂の量が不自然に変わっていることに気付いたから。そして学校裏の山の斜面にも不自然に抉られ、木々がなぎ倒されているのを見つけてしまったから……業者の伐採にしてはかなり適当な上、切られた木もえぐられた地面もそのままなんてありえません。違和感を感じたアミサさんが烏間先生へ連絡を入れ、人為的なものか怪しい=もしも魔獣がこの地域にいたら、の危険性を考えて私が同行の上で調査をすることになりました。もしも、が現実の場合、適切に確実に対処できるのが今この日本にはアミサさんしかいないから。烏間先生も私達とは別の場所を見て回るそうです。

 

「……でも、……見つけて、気になっただけで動いて、先生たちのお仕事増やしちゃったし、……きっと迷惑、だったよね」

 

『……先生達は迷惑じゃなくて心配してるんですよ。アミサさんはもっと誰かを頼るべきですし、本音を言えばこういう調査をするなら先生の誰かと一緒に行動して欲しいです。でも、こちらでの保護者の立場にある烏間先生も私と一緒ならって許可してくれたわけですから、そこは信用してもらえてると思いましょう?」

 

「……うん、何かあればすぐ動けるようにって、殺せんせーも校舎で待機してくれてるって」

 

『でしたら安心ですね!私もすぐ連絡入れられるようにしておきます!』

 

「……なにもない、かもよ?」

 

『それなら私がアミサさんを独り占めして夜のお散歩をしてるだけってことで。あとからカルマさんに自慢しちゃいましょう!』

 

「ふふ、それって自慢になるの……?……でも、……ありがと、律ちゃん」

 

 月明かりに照らされて、少しだけ笑ったアミサさんから、以前は感じた消えそうな気配は感じられません。髪の色や雰囲気から夜が似合うことには変わりありませんが……普段の言動以外に自分とは真逆のこういう見た目の雰囲気にもカルマさんは好意を抱いてるのだと渚さんから伺いました。

 アミサさんは分かってなさそうですけど、カルマさんが些細なことでもアミサさんと一緒に過ごしたがっているのは、彼女以外にとっては周知の事実。でも、まだまだ人の感情という細やかなものは機械でしかない私にとっては【好意】というのは難しくてよく分かりません。ですが、E組のみなさんとの関わりや教えていただいた行動の理由、アプリを通してのバイタル情報、そういったものから得られるもので少しづつ学習できているはず。殺せんせー曰く、アミサさんも私と同じように感情を学んでいる最中……つまり、私と似たようなものですからきっと彼女の感じることを知るのが私が感情を学ぶ一番の近道。そう思っています。

 

 アミサさんが提示した条件を元に私が検索し、彼女が足を進めた先の見上げた場所。そこは人通りのない山の麓……椚ヶ丘中学校のE組がある裏山とは少し場所が外れたところで、人が来ないからこそあまり情報がないところです。きっと普段通りなら木々が生い茂り、斜面の土色なんてほとんど見えなかったことでしょう。……ですが。

 

「……ここも、荒れてる……さっきの場所も人があまり来なくて壊れても問題ないものが多い場所だった、よね……木の折れ方を見ても自然じゃない、でも人力でも機械でもここ一帯をこんな風に壊すのは……やっぱり魔獣がいると考えるべき?飼い慣らすためにここで調教、とか……、万が一があったら……」

 

『先程の場所の画像解析をしてみましたが、ほぼ同時に叩き折られている木が多いように思います。木の重なり方を見ても一方向ではなく、縦横無尽に、巨大な鞭を振るわれたような……』

 

「……律ちゃん、烏間先生に連絡しよう。その解析データも添えて」

 

『了解で、』

 

「───やあ。政府の犬でもないのにご苦労様だね」

 

『「───ッ!?」』

 

 突然、私達の会話に男性の声が割り込んできました。聞き覚えのある、不穏さを感じる声……私がアミサさんに声をかける前に、彼女に画面を隠されてしまって姿で誰かを確認することができません。マイクは塞がれていないので会話や外の音は聞こえますが……カメラは何も映さず、全てを把握するのが難しいです。……もしかして、あの人に私と会話してることを隠してくれてるのでしょうか……それでいて、私に状況の一端でも分かるようにしてくれてるのかもしれません。

 

「……なんで、あなたが……」

 

「おっと、そんなに警戒しないでくれたまえ。言っておくが、コ(・)レ(・)の犯人は私でもそこにいる彼でもないよ。来たらもうこうなっていた……誰(・)が(・)やったのかは、知っているけどね」

 

「……それを、信じろと?」

 

「んー、でも事実だからねぇ。何にせよ、君とは一度正面から誰にも邪魔されずに話したかったんだ。当事者である君でも知りえない過去の話も含めてね……付き合ってくれるかい?」

 

「…………」

 

 

 

 ──────~♪

 

 

 

「っ、……音楽、……電話、……」

 

「出てくれて構わないよ」

 

「……、もしもし」

 

『アミーシャ?俺だけど』

 

 アミサさんが悩むように黙ってしまったところで突然流れ出したのは何かの曲……単調な電子音だったらエニグマへの通信でしょうけど、E組の何人かに対してはスマホへの着信音を変えていると以前仰ってました。この曲の時は……カルマさんからの着信ですね。あの人も通話の邪魔をする気はないようです。

 当然私の入っているスマホで通話するのですから、話している内容は筒抜けになるわけですが……アミサさん達の会話を聞きつつ、私は外への情報を取り逃さないようにした方がよさそうですね。

 

「……どうしたのカルマ?なんか、あった……?」

 

『や、なんかっていうか俺ら今日久々に別で帰ったじゃん?ちゃんと家に着いたかなって』

 

「……私、小さい子じゃないんだから。心配しなくてもだいじょぶだよ」

 

『俺からしたらアミーシャはだいぶ小さい子、だけどね〜?』

 

「身長は関係ないもん……」

 

『あはっ、そんな拗ねないでよ。……で?何してんの?今外にいるんでしょ』

 

「……、なんで、分かるの……」

 

『あ、やっぱり。家にいるなら「家に着いた」って返事するはずなのに「大丈夫」って言ったからさ。……何か、あった?』

 

「……、……なにも……」

 

『……また何か見つけて一人で動いてるんでしょ。律に聞いてそっち行くから。そこから動かないでよ』

 

「え待っ、……、……」

 

「クク、……彼が来るのを待つかい?私は構わないよ」

 

「……ッ、いいえ、……用事があるのは、私にだけ、でしょう?それなら彼が来る前に終わらせます」

 

 アミサさんの声や内容から何かを感じ取ったのか、カルマさんが通話を切ってしまいました。すぐに校舎に設置された私本体の方へアクセスしてみれば、カルマさんの端末にダウンロードされた私を経由してアミサさんの居場所を検索しているのが分かりました。E組のみなさん個々人の端末にいる私は、本体を通じて同期はしていても独立しているデータでもありますからカルマさんの端末にいる私も独立して動ける……今頃GPSを通じてこの場所へ向かっていることでしょう。

 街外れで学校よりも時間がかかるとはいえ1時間もなくカルマさんが到着する気はしますが、アミサさんの雰囲気は彼に伝えないままに何か、ことを起こそうとしているように感じられて……

 

「……殺せんせーにご執心だったあなたが、イトナくんを手放した後から音沙汰無いのが、気になってた。いつ、動いてもいい、なのに全く動きがなくて……でも、その人の気配は、……あの時の花束も……その人が届けたんでしょう?」

 

「せいかーい。いやぁさすがだね。……さて、話をしようか真尾さん。……いや、《教団》の成功例であり《銀》当代の影、と呼ぶべきか」

 

「……ッ」

 

『ッアミサさん、先生達へ連絡しましょう!私がいるとはいえ、アミサさん一人じゃ、』

 

「…………ごめん。これは、私の問題だから」

 

 

 

 

 ───ブツッ

 

 

 

 

『───アミサさん!?アミサさんッ!!……繋がりません、これはジャミングされてる……?でもそんな機械とか持ってる様子は……いえ、そんなことを考えてる場合じゃないですよね』

 

 【《教団》の成功例】、【《銀》当代の影】。どちらもアミサさんを表すものではありますが、どちらもアミサさんが表に出していない立場でもあります。そして後者はともかく前者はアミサさんのトラウマを抉るようなもの……それをあの人が知っている上で、彼女と何かしらのやり取りをしようとしてるなんて危険すぎると私でも分かります。

 慌てて端末から彼女へ呼びかけましたが、無理やり遮断するような音を立てて彼女の端末へ入れなくなってしまいました。電源を落としたような動きはなかったですし、データ通信そのものを何かに妨害されたような……いえ、私個人で考えてもどうにかなるものじゃないですよね。目下、すぐに伝えるべきは……!

 

『烏間先生!殺せんせー!』

 

「律さん、どうしましたか?」

 

「なにか新しい情報が、」

 

『アミサさんが……アミサさんが、シロさんと接触しました!電波なのか何かに妨害されていて、端末に入れません!』

 

「「「!?!?」」」

 

『繋がらなくなる直前に通話していたカルマさんが異常を察知して向かってます。ですがあの場所にはシロさんだけでなく謎の人物が一緒のようで……私はアミサさんにカメラを塞がれていて確認できてないんですが、さすがにお一人では……ッ』

 

「すぐに、」

 

「お前は姿を見せるな!行っても構わないがシロがいるなら俺が正面から出る!連絡は律を通じて常時繋いでおくから切るんじゃないぞ!」

 

「……ッ、分かりました!」

 

『お願いします、場所はこちらです……ッ』

 

 

 

 

 

 ───数十分後、烏間先生がアミサさんのいる場所に着いた時には、シロさんと謎の同行者の姿はどこにも見当たらず、その場にしゃがみこんだアミサさんと、彼女を揺さぶりながら焦ったように名前を呼ぶカルマさんがいるだけでした。カルマさん曰く、この場に来た時点でシロさん達の姿はなく、アミサさんが道の中心で一人、座り込んでいたそうです。カルマさんに揺さぶられるアミサさんは、意識はあるのにまるで呼びかけが聞こえてないかのような……まるで電池の切れた人形のような、言うなれば、以前フラッシュバックを起こした時と同じで。それでも呼びかけ続け、烏間先生の要請した防衛省の医療班の方がみえる頃には徐々に元の彼女に戻っていきました。

 そう、元(・)に(・)戻(・)っ(・)た(・)……この荒れた場所に到着したばかりの、シロさん達と話したことを全く覚えていない彼女に。カルマさんから電話があったことすら覚えていなかったアミサさんは、カルマさんがこの場にいることに対して不思議そうにしていて……嘘をついてる様子もない彼女の記憶を、掘り返すことなんてできませんでした。違和感は拭えないものの怪我も体調不良も無いことから、いくつかの不自然な場所を見つけたから警戒する、そんな結論を出して解散することにするしかなかったのです。最後までアミサさんの端末のジャミングが解除されなかったがために、この場で何があったのか、シロさんと何を話していたのかは分からないままでした。

 

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 

「……んと、……うん、これで全部。はい、アーツの一覧に効果と範囲、必要EPをも一緒に書き込んだやつ」

 

「サンキュ」

 

 E組教室内は今、私たちだけでは用意も動けもしないような大掛かりな暗殺の相談で盛り上がっている。もうすぐ冬休みだからね、行事ももうないし学校のことを考えなくてもいいから余計に熱が入ってるんだろう。私は私でカルマから依頼された戦術導力器でできることをアーツを見てなくてもイメージできるような説明書……のようなものを作って机に広げたところ。他の人には簡単に使えない私だけの戦法だから、不意打ちとか第二の刃として使いたいんだと思う。早速読み始めたカルマの頭の中では、もう色んな作戦が描かれてるんだろうなぁ……

 ……あ、殺せんせー?殺せんせーならさっき教室を出ていったからここにはいない。多分計画立ててること自体は察してるけど、邪魔しないように配慮してくれてる……私たちが本気で考えた策で殺しに来てくれるって嬉しそうだったもん。鼻はすごく効くけど耳は普通の人たちと同じだからね、教室さえ出てれば盛り上がってるのは分かっても聞き分けて全容を把握するっていうのはできないはず。それをみんなも分かってて自由に作戦会議をしてる。

 

「……俺、夏休みの時は少ないEPで発動できるやつとか火属性のアーツばっか見てたからあんまり他のやつ分かってなかったんだけどさ」

 

「うん……?」

 

「ナニ、この……召喚とか創造とかあるんだけど……?」

 

「えと、E組くらい大きな船を創造したり、塔を建てたり、ブラックホールとか大地震とか発生させたり……?」

 

「……なんていうか、俺視点かなり未来の技術を前借りしてきた感。自然に干渉してる以上のこと起こしてるし、……何より起点になってるのがそんな小さな器械だし」

 

「……それは、……うん……、でも器械がすごいのも当然だけど、それを可能にしてるのはクオーツの導力エネルギーあってこそ、だから。それが無ければこんな超常現象は起こせないから、もちつ、もたれつ……みたいな……?」

 

「あー……言いたいことは分かるけどなんか違う気もする……とりあえず消費EP多すぎるから基本この辺は使わないでね」

 

「はぁい。それに、駆動も時間かかって大変、だから……私もこの辺りはあんまり好きじゃない、かな」

 

「ならいいや」

 

「……ところで……」

 

「ん?」

 

 数枚のルーズリーフに細かく書いたそれをめくり、彼が私の背後から手を伸ばして指さしたのは、各属性ごとの最強攻撃アーツの数々。確かに少ないEPで発動可能なものは、ちょっと炎を生み出したり、雷を発生させたり、空気中の水分を凝固させて氷を撃ち出したり……みたいな、日本の科学技術でももしかしたら再現できそうなもの。だけど上位アーツに関しては、使用者である私でもどうやって自然や上位界に干渉してるのかよく分からないもん。速さを武器にしてる私からしたら、駆動時間の長いアーツはそんなに使わないけど、広範囲を一掃できるから武器では時間がかかりすぎる時に使うことがある、程度のものだし。

 カルマも私の体質(EPの上限が低い)を知っていて苦言を呈してるし、どうしようもない時までは手を出さないようにしよう。改めてそう決めた、んだけど……カルマが資料を手を伸ばすたびに揺れる体と触れる腕がくすぐったくて、そろそろこの状況を説明してもらいたい。

 

「なんでわたしは、さいきんずっとカルマくんにだっこ、されてるんでしょう、か……?」

 

「なんで敬語?なんでくん付け?それヤなんだけど」

 

「その、怒ってるの、かなと……」

 

「怒ってないよ、俺が抱っこしてたいだけ」

 

「え、えぇ……?」

 

「アミーシャはいいんだよ、気にしなくて。俺の懸念は烏間先生も殺せんせーも動いてくれてるから」

 

「それ、先生たちが動いてる以上、私が知らないままじゃ、ダメなんじゃ……」

 

「いいの」

 

「あぅ……」

 

 ……何も、分からなかった……そう、だいぶ前、……鷹岡さんの時だったかな?私がカルマの知らないところでケガをしたあとみたいに、カルマが座る足の間に座らされて、離してもらえない状態が続いてる。しかも今日だけじゃなくて数日ずっと……休み時間になるたびに手を引かれてこうなってる。最初こそ引っ付いてたいのかな、くらいで流せてたんだけど、そろそろ私の知らないところで何かが動いてる気がしてきてる。理由も原因も分からないし。

 ありそうなことでいうなら数日前の夜、律ちゃんと不審な場所の偵察をしていて、気がついたらカルマが心配そうに私の名前を呼んで顔を覗き込んでたことくらい……律ちゃんがいて、先生たちにも事前に伝えた上で動いてたけど、カルマ的には女の子な私1人じゃなくて、大人か自分を連れて行って欲しかったみたい。もしホントに魔獣が原因だったら危険だから私だけで見て回ってたんだけど、……この感じだとそれでもダメだったんだろうな、きっと。

 

「ねぇ、アミサはこの作戦見てどう思う?」

 

「雪山のやつ……?え、と……あの速さで逃げられる前に雪崩に巻き込めたら可能性はあるけど、それを起こすまでの火薬の匂いを何とかしたいよね……人力だと雪を崩すまでに気配でバレそうだし……」

 

「あ、やっぱそこネックかぁ……アーツでいきなり溶かすとかは無理そう?」

 

「できるけど、こんな広範囲じゃ光と衝撃波でバレる、と思う」

 

「できはするんだ……」

 

「私達は素人だからこそ実現不可能とか考えずに思いつきでいろいろ言ってるけど、ビッチ先生含めて本業の人達って使う道具も方法も様々だよねぇ」

 

「なんていうかさ、殺し屋間の情報交換するためのネットワークとかってあったりするの?どんな殺し屋がどんな仕事受けてるのか、どんな手法を使うのか、どんな人物像なのかとかが分かるみたいな」

 

「確かにな。自分のやり方が合わないなら他を参考に、とかするのかな」

 

「んー……仕事を受ける上でのコネクションとか、情報屋とかのツテとかなら《銀》としてそういうのはあるけど……私は基本暗器と符術って自分の得物を使うのが当たり前だからどうなんだろ……?相手に合わせて方法を変えるのはいいとしても、付け焼き刃で中途半端になるくらいなら自分の1番信じる方法を取った方が確実な気はする。情報収集、は、それこそそれ用にシステム構築して勝手に監視するって方法とった方が揉めない、だろうけど、やる人いるのかな……基本個人主義だし、仲間として動く人たちも少ないんじゃない、かなぁ……」

 

「そりゃそうか。自分以外に手伝わせたら取り分減るってことだしやり慣れない方法使ったら成功率落ちるし邪魔なだけだわ」

 

「『死神』さんもありとあらゆる技術を極めてたらしいけど、1つに絞って極めた烏間先生には勝てなかったもんね〜!」

 

「他を気にする腕があるなら別の道でも生きていけそうだし」

 

 優月ちゃんが持ってきた作戦資料に目を通しながら、私視点での懸念をいくつか上げていく。もっとも、私は個人で動くことの方が得意であって、集団での作戦立案はほとんどからっきしなんだけど……作戦を決めてない外部の人目線で新しく気付けることもあるから、向こうの方でも思いついたものは自分だけで留めず、他の人に意見を求めてるのが見える。

 私目線でイリーナ先生が普段話してる(同業者がオープンにできる)範囲、一般人のみんなにも話していい程度のことを教えているとみんな目線でも考えてくれて、みんなにとって今後にかかわることでもないのに分かろうとしてくれるのは、……なんだかあったかい。

 

「というか……」

 

「って、……何」

 

「何、じゃなくてカルマはそろそろアミサから離れなさい。休み時間のたびにその体勢のアンタら見るようになってもう一週間よ?」

 

「やっとメグが言ってくれたー!アミサちゃんまでそのまま話し出すからいつツッコミ入れようかと……;」

 

「ツッコミ役の渚君も諦めてるし、当たり前のようにやってるから私達もスルーしてたよね。……ある意味日常だし」

 

「日常ならいーじゃん、アミーシャも別に嫌がってないしさぁ」

 

「……アミサ本ト?」

 

「い、嫌じゃない、けど、ちょっと恥ずかしい……し、どうしたのかなとは思った、よ?」

 

「お前はされるがままに流されすぎだ;」

 

「いや、さっき疑問は口に出してたぞ。それでも1週間かかってるから遅いけど」

 

 紙の束、かな……それで誰かが軽くカルマの頭を叩いたのか、バサッと紙のこすれる音と一緒に彼が頭をかがめる揺れにつられて、私の体も前に傾く。支えられてるからイスから落ちることはないんだけど、抗議するように彼の振り向く方向へ同じように顔を向ければ、ノートを片手に呆れ顔のメグちゃ、……ノートって、紙の束より分厚くないかな、それ。

 

「てか教室は超人先生達が守ってんだから危険はないでしょ。心配すべきは登下校よ」

 

「え、……あれ、みんなはカルマがこうな理由、知ってるの?」

 

「おう、お前が不審者に遭遇したって律経由で注意喚起回ってきた!」

 

「それに気付いてない真尾を最初に見つけたのが律とカルマと烏間先生ってのもな」

 

「つまり、イトナの時とか『死神』の時みたいにすぐ守れるよう……って建前で合法的に一緒にいたいだけってこと。あと理由伝えたらアミサのことだし『みんなを危険にするくらいなら1人で』とか言い出すでしょ」

 

「……、…………言うかも」

 

「……はぁ;まぁそういう所がアミサちゃんだしねぇ」

 

「カルマ、お前が離れないなら俺も乗る」

 

「いやなんでそうな、あ、コラ!」

 

「お前の真似してるだけだろ。俺も姉さんや兄さん達にアミサを任されてるんだ、同じことをして何が悪い」

 

「だからって俺に乗るのは同じじゃな、ちょっと?!」

 

「……イトナって、マジでカルマと真尾に対しては素直に甘えるよな」

 

「他には毒しか吐かない癖にな」

 

「ふふ、……?」

 

 みんなの話を聞いてれば会話の流れを完全に無視したイトナくんが私の体を足で挟むように座るカルマの足の上に乗ろうとしたみたいで、2人の口喧嘩と私をイスから落とさないようにしつつの軽い押し合いのようなものが始まった。その攻防を見る教室の中が笑い声で包まれて、つられて一緒に笑っていると……今、みんなの声と違った音が、聞こえた気がしてそちらへ、窓の外へ顔を向ける。

 

「ん、どうかしたの?もしかして俺らの腕あたった?」

 

「悪い……」

 

「あ、ううん、じゃなくて変な重たい感じの音が聞こえたっていうか……」

 

「音……?」

 

 そう、誰かの声でも、紙のこすれる音でも、じゃれあって体が触れ合う音でもない。重たくて、何かを打ち付けるような……普段なら存在しないはずの低くて鈍い音。だけどみんなが感じてないのなら気のせいだったのかも……そう、気を抜いた瞬間だった。

 

 

 

────ドゴォォン!!

 

 

 

「「「!?」」」

 

「な、何今の!!」

 

「アミーシャ、場所の想定は!?」

 

「校舎の中じゃない……多分、外……道具倉庫の方!」

 

「行こう、こういうのは分からないままでいる方が危ない!」

 

「各班!点呼を取りつつ固まって外に出るぞ!」

 

「1班、全員いるわ!」

 

「2班も!ケガもなし!」

 

「3班、そろってる!」

 

「あ……わ、私、渚君と茅野さんが結構前に外に出ていくのを見ました!」

 

「ッ4班、渚君と茅野さんの二人以外、四人は一緒にいる!」

 

 私が聞いた音とは比にならない轟音と大きな揺れが教室中に響いて、私を含めてみんなは耳を押さえたり、近くの友だちや机、壁を支えにして転ばないように耐えている。私とイトナくんごと抱えて庇ってくれていたカルマの声を聞いてすぐ音の方向を伝えれば、私たちは集まり慣れた班別に声を掛け合いながらみんなで教室を飛び出した。

 

 

 

 ……たどり着いたそこには、教室にいなかった殺せんせーたちがいた。

 

 

 

 砂埃をあげる倉庫と地面、大穴の空いた地面の隣に泥だらけになってしゃがみこんでいる殺せんせー、慌てたように倉庫から飛び出してきた渚くん、そして、倉庫の屋根の上に立っているのは、

 

 

 

「……か、」

 

「……茅野さん……何、その触手?」

 

 

 

 いつもの髪型を下ろして、別人のように険しい表情をした冷たい目の女の子。その子の首元からは、2本の触手が生えていた。

 

 

 

〝……カエデちゃん、みんなと違う気がした、から〟

 

〝あー、殺せんせー相手でここまで本格的な武器が出てくるの、久々だから見てるだけの私の方が緊張しちゃって!……多分、それがアミサちゃんに伝わっちゃったのかなって〟

 

 

 

 ……私、気づいてたのに。

 

 

 

「ごめんね、茅野カエデは本名じゃないの。私もアミサちゃんと一緒……この教室に入るために名前を変えたんだ。……雪村あぐりの妹……そう言ったらわかるでしょ?人殺し」

 

 

 

〝……ねぇ、アミサちゃんは、この暗殺、成功すると思う?〟

 

〝……!……、……方法としては、有り得る、と思う〟

 

〝……理由、は?〟

 

 

 

 1人だけ、自分に対して怒ってたことに。

 

 助けての声、私は、気づいてたのに。

 

 

 

「……カエデ、ちゃ……」

 

 

 

 踏み込んじゃダメだと、逃げたのは私だ。

 

 ずくん、と濁った色が私の中に広がった。

 

 

 





「……!」

「……ほう、後悔と自己嫌悪。精神の統合作用による感情の共有か……さらに濃度が上がれば……」

「……」

「クク、……法術の専門家がこの地を離れている、邪魔されない今のうちに使ってしまわないとね」



++++++++++++++++++++



いろんな意味で不穏なお話。

原作の演劇の時間冒頭で、カエデちゃんが野良の触手を抑えず発散させるために暴れさせたのか、落とし穴を作ったことで掘り出されてできた土砂の山なのかを見ているシロが描かれていました。第一部を書いた時点では山だと思ってたのでその場所を前者によって荒らされた土地として解釈して、それを見たオリ主が魔獣による破壊と疑いをもって調べた……にしたんですが、第二部を書く上で原作を見直していたら『これ、山じゃないな?』となりまして。急遽描写を変えて再構築した結果、シロと邂逅しました。あれ。



本人も自覚できない、誰も見てない、知らないあの空白の邂逅は、早ければ次回……回収……できるといいな……?と思ってますができるんだろうか。



オリジナルの展開にしたいので、本当なら《D∴G教団》の残党とか、星杯騎士とか、オリキャラとかを入れて話を動かしたいところなんですが、多分入れると自分のことなので設定に凝りだしたり暗殺教室と軌跡シリーズそれぞれの矛盾を追求しだしたりする未来が見えるのでやめました。代わりに既存キャラクターに捏造設定を色々生やしますが、大元の設定は大きく変えないので、ご承知おきくださいませ。……鷹岡先生の時にすでに色々やってるのでだいぶ遅いですねすみません!



ではまた次のお話で!

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