UA153000ありがとうございます!
原作でいう128話ショックから始まる事件は、オリジナル要素を入れてまだまだ続きます。
今回もよろしくお願いします!
茅野カエデ。このE組で出会って、同じくらいの身長で、まるで双子のお姉ちゃんのように同じ目線でいろんなものを見てきた、私より少し前で引っ張ってくれるクラスメイト……そんな彼女は存在しないはずの女の子。
磨瀬榛名。三村くんが気づいて律ちゃんが見つけた中で代表作だと上映する画面の中にいる、どんな役でも軽々とこなす天才子役。声は聞き慣れてるのにまるで別人のような性格と見た目で画面の中を生きる女の子。
雪村あぐりの妹……名前はわからない。彼女の自己申告でしかないけどウソは感じなかったから、きっとホントの姿。いつからなのか、最初からなのか。触手と殺意を隠し持っていたお姉さんの復讐のために進む女の子。
どれも彼女だけど2つは存在しないウソの女の子。だけど私たちE組からしたらウソの女の子こそがホンモノなわけで……彼女からしたら殺せんせーさえ殺せるのなら、私たちなんてもう、どうでもいいのかもしれない。
だけど、どんなに彼女が殺せんせーを殺すために復讐心を隠していて私たちに嘘をついていたのだとしても、私たちが彼女を放っておけるわけがない。なんで今まで隠してたのか?暗殺するためにE組へ送り込まれた律ちゃん、イトナくん以外には明確に殺す理由がなかったはずなのに、最初から殺すために今まで教室にいた……その背景は?そもそもいなくなってしまった雪村先生のことだって、わからないことだらけだ。
「……にゅ?……茅野さんから連絡が来ました」
「どこだって?!」
「『今夜7時、椚ヶ丘公園奥のすすき野原まで』」
「「「…………」」」
「……行こう、みんなで。殺せんせー1人で来いって指定がない以上、茅野も俺達が着いてくる可能性は考えてるはずだ」
「そうね。茅野さんを止めて……みんなで真実を知りに行きましょう」
「殺せんせーを暗殺するのは、殺せんせーのことを知ってからでも遅くないんだから。……もう、話してくれるよね?」
「……ええ。先生の……過去の全てを話しましょう。ただし、話すのは茅野さんを含めてクラス皆が揃ってからです」
「俺達は戦いに行くわけでも、茅野の暗殺に参加しに行くわけでもない。だから超体育着で行く必要は無い……最低限の防寒だけしっかりして行こう」
「わ、私、時間には間に合うように行くから、1回帰りたい、な」
「俺が付き合うよ。道中心配なのもあるけど、全員バラバラに向かうよりある程度まとまった人数で行った方がいいでしょ」
「そう……?じゃあ、少し待たせるかも、だけど、すぐすませるから、おうちの前で待っててくれる……?」
「……、ん、おっけー」
「……なら、僕も母さんに説明しておきたいから最寄りまでは一緒に行こうかな」
「親への説明ね……誤魔化すのが難しい人はいる?『死神』の時みたいにアリバイ作りで何人かなら受験勉強教えるって名目で引き受けるけど……」
「いや、どうせ君達は全員で行くつもりだろう。だったら俺が受験対策の補習という名目で学校に残すことにする。今から君達の保護者へ連絡を入れてこよう」
「それがいいわ。アンタ達は安全に向かうことだけ考えてなさい」
「先生達……」
「ありがとうございます!」
「烏間先生から伝えてくれるなら母さんには電話でいいだろうし……うん、僕もアミサちゃんの家まで行くよ」
「ん、早めに準備する」
「真尾みたいに一旦帰りたい奴もいるだろ。女子は男子が迎えに行くから駅で合流しよう」
「ここから直で行く人は教室待機ね!」
「「「了解!」」」
わからないことはたくさんある。でも、彼女はここまで同じ教室で同じ標的を見つめ続けた友だちだから。信頼関係を築いてきたのは、殺せんせーとだけじゃない、烏間先生やイリーナ先生、クラスメイトのみんなともだから。……私が、自分の隠し事を知られて崩れそうになった時にそっと支えてくれたのも、私の事情を話したくなくて困ってた時に事情を知らないはずなのに助けてくれたのも、カエデちゃんだったから。E組は、誰かを迎えに行く時はみんなで、だから。
だから、私も助けたい……しっかり準備して向かわないと。
「……、烏間先生、殺せんせー。ビッチ先生もいい?」
「はい?」
「どうした」
「……、杞憂かもしれないけど、あの人達に連絡しておいた方がいいかも」
「あの人達というと……リーシャさん達ですか」
「うん。ハッキリ何がって言えるわけじゃないんだけど何となくおかしい気がして。……念の為、というか」
「……確かに。やり取り自体は普通だったけど、他ならぬアミサがあの返答っていうのはちょっと違和感があるわね」
「……そうだったか?」
「はぁ……、カラスマってホンット朴念仁だわ。そういう女の小さなサインに気付かないから生徒達からも堅物って言われんのよ……」
「多分だけど渚君も気付いてたよ。だから基本俺ら2人にしてくれるのに一緒に行くって言い出したんだと思うし」
「……すまない、説明を頼む」
「しょーがないわねー……いい?端的に言えば、──────」
「ふむ、カルマ君や渚君だけでなく、イリーナ先生も何か感じてるなら放置しない方がいいでしょう。何もないならそれでもいい……彼らもきっとそう言いますから。……最悪先生が飛んででも迎えに行きますが、近くにはいて欲しいところです」
◆
カルマside
「来たね。じゃ、終わらそ!」
そう言って首元から触手を生やしたクラスメイトの彼女は、全身から異様な雰囲気を出していた。この12月っていう冬の寒さが本格的になってくる時期にノースリーブ、加えてかなり丈の短いワンピースを着る、なんてまるで寒さを感じていないようなのに、首元だけはかなり分厚めのマフラーを巻くというアンバランスさ。……何となくあの『季節感に合わない薄着』と『首元だけを温める』という組み合わせに既視感があって、チラと近くに立つイトナを見れば、頷いた彼曰く、あれは触手の移植者特有の代謝異常だと言う。
茅野ちゃんが、今日まで汗一つかかずに本性を押し隠すことができていたのは彼女お得意の演技の賜物だったのか。雪村先生の復讐のために殺せんせーを殺す、他には目もくれずそれだけを真っ直ぐ見つめ続けた執念からなのか。今日まで触手を出すことなく衝動すら抑え温存していたからこんな異様な姿を見せずに済んでいたのか。それともイトナが触手の恩恵で身体能力を向上させたように、彼女にもある程度何かの耐性が生まれたのか。色んな疑問が渦巻くけど、答えはさすがに分からない。分からない、けど。
「イトナくんのことがあったから、分かってる。触手を体に植え付け続けることは、命にかかわることだって……ッ」
「殺せんせーは俺らがどんな方法で挑んでも、どんなルールを決めても、どんなに人数的、状況的不利になっても仕掛けた暗殺は真っ直ぐに受けてくれるけど、自分の命を軽く扱う暗殺だけはダメだってずっと言ってたじゃん。……俺には、茅野ちゃんが今やってる事が殺し屋として最適解だとは思えない」
「ああ、その状態での全力戦闘はヤバい。触手の侵食が進めば更に生命力を吸われて、最悪……死……」
彼女が今、自分の死すら厭わない暗殺を仕掛けようとしてるってことだけは分かる。きっと今までのどんな暗殺より威力が強くて殺せんせーのスピードにも対応できる手段ではあるけど、イトナっていう事例を知っている俺らからしたら触手に身を任せたソレはもう暗殺ではなく、自殺行為でしかない。
俺が、アミーシャが、イトナが、クラスメイト達が、せめて仕掛ける側に危険のない別の方法にしようと呼びかける声を、殺せんせー目線での真実を聞いてからでも遅くないと口々に止める言葉を、茅野ちゃんは静かに聞いているように見えた。彼女は現状、イトナとは違って触手に飲まれて暴走してるわけじゃないし、理性も残っているようだから俺らの声は届いているはず。だけど、いくら言葉を重ねたって俺らに向けられた殺気が落ち着く気配はなくって。
「……うるさいなぁ。部外者達は黙ってて」
咄嗟に
むしろ俺に抑えられてることも気にせず炎の向こう側へ踏み出そうとしていて危なすぎる。力なら俺が圧倒的に勝てるから抑えられるけど、この2人、俺より圧倒的に素早いからな……気が抜けないんだよ。
「どんな弱点も欠点も、磨き上げれば武器になる……そう教えてくれたのは先生だよ。体が熱くて仕方ないなら……もっともっと熱くして、全部触手に集めればいい!」
茅野ちゃんから伸びる2本の触手、その先には言葉通り炎が燃えている。殺せんせーと自分だけを正確に囲う炎のリング……ぐるっと周囲を見ただけでも俺ら生徒には一切触れないように彼女は殺せんせーを閉じ込め動揺させるフィールドを作り上げた。それくらい彼女が操る触手のコントロールは完璧だ。……だけど。
「やめろ、茅野!こんなの違う!僕も学習したんだよ!自分の身を犠牲にして殺したって……後には何も残らないって!」
「……自分を犠牲にするつもりなんてないよ、渚。ただコイツを殺すだけ……そうと決めたら、一直線だから!!」
「……このままじゃダメだ。触手の使用で壊れないよう肉体強化し、且つ最大の力を発揮できるようにシロに調整されていた俺より遥かに強い……けど、……わずか十数秒の全開戦闘で、もう精神が触手に侵食され始めている。もうアレは茅野の意思以上の攻撃……あそこまで触手に侵食されたらもう手遅れだ。復讐を遂げようが遂げまいが、戦いが終わった数分後には……死ぬと思う」
「そんな……ッ」
触手の力を完全に解放してしまった茅野ちゃんには、渚君の必死な叫びすら届かない。ただの触手でも普通の武器より力や速さが桁違いな上、殺せんせーへ有効なダメージを与えられるのに、今は炎っていう付加価値まで付いてる。イトナとの戦いのように先生が触手の動きを学習したとしても、少し避けただけじゃ熱の範囲からは逃れきれないから後手後手に回ってしまう。加えてまるで火山弾のように上空から縦横無尽に叩きつける攻撃は、見事なくらい先生の触手の動きを読んで的確にダメージを与えている。
しかも殺せんせーは生徒である茅野ちゃんを傷付けることができない……ただでさえ苦手な環境の変化に対応しつつ、防戦一方であの猛攻を何とかしなくちゃいけないっていうハンデにだいぶ苦戦しているように見える。
「死んで!死んで!!死んでェッ!!!」
「なんとかなんねーのかよ……茅野が侵食されてるのを見るしか……ッ」
「でも、どうしたらいいの……?」
「……っ……、」
「……アミサ、どうした?」
普段なら俺らよりも実践を積んだ先生達を頼るとこだけど、
と、そんな時。俺の後ろで小さく声が聞こえた気がして顔だけそっちへ向けると、アミーシャが頭を押さえているのが目に入った。まさかこの戦闘が何かのトリガーだったりするのか?さすがに不調な彼女を守りつつ巻き込まれないように気を配るのは厳しい、……戦いから距離を取るべき?俺が次の行動に迷った一瞬の思考の間にイトナが先に声をかけていて、……俺は今、人を気遣って声をかける余裕すら無いほど焦ってたんだと自覚して、落ち着くために大きく息を吐く。少し落ち着いてから改めて様子を見てみると……前のパニック発作の時みたいな痛みに苦しんでる、というよりこれは……彼女自身も戸惑ってる……?
「死んでって、なのに……殺して、たすけて、って……聞こえ……」
「殺意……茅野?お前、アイツの思考を読んだのか?」
「……かもね、アレだけ目の前で感情爆発させてるわけだし。……でも普段は他人の感情はなんとなく読めてもここまで影響されることないよね?」
「わ、わかんない……なんで……?いつも、こんなにヒトの感情とか、思いとか、意識しても聞こえないのに……っ最近、おかしいの。感覚が敏感になってる、ような……」
「…………」
少し前、二学期期末テストが終わってすぐに理事長が仕掛けた暗殺の時。アミーシャは理事長と殺せんせーのやり取りをそっちのけで、『みんなと違う気がした』からと、茅野ちゃんのことを気にかけていた。実際茅野ちゃんの言い分を聞く限り、自分が復讐するために殺意を抑えてきたのに理事長があっさり殺してしまうかもしれない、という焦りがあったんだろう。自分が殺すつもりだったのに横から取られるかもしれない怒り……多分あの場で、他のE組生が誰も持っていなかった感情だ。だから、拾った。特に、あの時のこの子は目を塞いで耳だけで情報を得ていたから、余計に敏感になってたんだろうと予想がつく。
じゃあ、……今は?両目、両耳含めた五感全てが正常なはずの普段と同じ状況で、違うのは茅野ちゃんの思いの強さくらい、か?だから感応力の高いアミーシャは影響を受けてるのか……本トに、それだけ?……分からないしどうしても違和感は感じるけど、倒れるほどの不調じゃないなら優先すべきはあっちだ。視線をあの攻防へと戻す。
「殺して、助けて、か……多分茅野ちゃん自身、イトナの言う通り触手に侵食されすぎてもう自分では制御が効かないんだ。殺せんせーを殺すことだけを考えて攻撃してるってことは、生存を考えてないってこと……」
「そういうことです!!」
「「「!!!」」」
うにょん、といきなり炎の壁を超えて殺せんせーの顔だけドアップがいくつも現れた。せんせー曰く、攻撃に隙が見当たらなくて俺らとやり取りするために顔だけ何とか伸ばしてるらしく……いや器用だとは思うけど、そっちの方が絶対ムズくね?
「手伝ってください!カルマ君の言う通り、あの異常な火力は彼女が自分の生存を考えず、触手が彼女の生命力を吸っているから実現しているもの……一刻も早く彼女から触手を抜かなくては死んでしまう!!」
「抜くって……」
「イトナの時みたいにか?」
「現状茅野さんの殺意と触手の殺意が一致しているため、神経と触手の根が癒着していて離れません!しかも時間が無いためイトナ君の時のように時間をかける暇がない……なので、戦いながら引き抜きます!!」
そう言って殺せんせーが提示した方法は、明らかに自殺行為だった。ネクタイの下にある心臓……殺せんせーにとって最大の弱点である急所を触手に敢えて突かせる、というもの。イトナの情報提供のおかげで俺らも、当然茅野ちゃんも、そこを完全に破壊すれば殺せんせーが死ぬということを知っている。だからこそ、『心臓へ刺した』=『殺した』という手応えを感じさせれば、少なくとも
でも、そこまでしたとして『茅野ちゃん自身の殺意』を止められるかは五分五分……彼女は復讐のために殺そうとしてるのであって、『殺せたかも』で満足する機械じゃない。殺せんせーが上手く死なないように致死点をズラして触手を受ける予定だから、トドメをさして動かなくなってない時点で本人は死んでないと認識するはず。だから触手の殺意が収まっている間に『茅野ちゃんの殺意』を忘れさせる、『暗殺しなきゃ』という執念から考えが逸れる何かを、俺らがする。
「こればかりは暗殺対象である先生がするわけにいきません。部外者である君達の手で彼女の殺意を弱めれば『殺意』という結合が離れて最小限のダメージで触手を抜けるかもしれない」
「その間ずっと先生の心臓に茅野の触手があるんだろ?先生が先に死ぬんじゃねーの?」
「先生の生死は五分五分でしょうねぇ……それでもクラス全員が無事に卒業できない事は、先生にとっては死ぬ事よりも嫌なんです」
「……せんせ、」
「……ッ」
にこ、と笑顔を俺らに向けた殺せんせーの言葉はE組に……特に、いつかの時間軸では
触手の猛攻へ対応しながら俺らへ指示を出すという2つのことを両立していた殺せんせーだったけど、さすがに厳しくなってきたらしい。少しは時間を稼ぐ、と言い残して残像は消えてしまった。猶予はほとんどない……責任重大すぎるでしょ、いきなり殺意を忘れさせる何か、なんて言われても、そうすぐには思いつくはずがない。吉田は三村に無茶振りしてるのが聞こえるけど、さすがに俺もからかう余裕なんてないから思考を巡らせる。
……この教室で学んで、身に付けてきた技術……狙撃、ナイフ、格闘術……ダメだ、意識は逸らせても茅野ちゃんを傷つけてしまう。渚君の猫騙し、は……もっと無理だよね。意識が別の部分に集中して、極限まで緊張が高まった時に有効なのに、アレだけ興奮の波が激しくブレまくってる相手には効果がないだろう。他に何か……茅野ちゃんが好きなもの、思わず驚くもの、見入るしかないもの……クソッ、どれもこれもこの短時間じゃ用意できない。
「……っ……」
ふと、今まで頭を抑えていたアミーシャが、いつの間にか顔を上げているのが視界に入ってきた。もしかして……何か、思いついた?
「……ダメ元で聞くよ、アミーシャ。茅野ちゃんを止められる?」
「そ、そうだよ!アミサちゃんのアーツならこんな炎のリングも関係なく……!」
「……ダメ、アーツじゃ、無理。超常現象を起こせるとは言っても、アーツは言葉通り
「なんで!?やってみなきゃ……!」
「いや、その手段を選んだ時点で茅野を傷つけちまうってことだろ」
「うん……今、カエデちゃんは殺せんせーを殺すことに
「……つまり、殺すつもりじゃないと乱入はできないってことか」
「どうすれば……もう時間がないよ……っ」
「…………、」
クラスメイトの便乗に否定した言葉を聞いて、みんなの表情が沈む。また、振り出しか?もう猶予はあってないようなもの……と、少し離れたところで先生達を見ていた渚君が、何かに気付いたような、決心した表情でこちらへ向かってくるのが見えた。もしかして渚君に何か考えがあるのか。それなら彼に賭けてみるべき……?
その時、なんとなく彼女のさっきの言い方が引っかかってもう一度アミーシャの様子を伺えば、茅野ちゃんを真っ直ぐ見ながら足を踏み出そうとしつつ躊躇うような、迷っているような素振りをしているのに気付く。そうか、……今、この子は『アーツじゃ、無理』って言ってた……つまり、
「……殺すつもりでアーツ以外なら、できることがある?」
「「「!?」」」
「…………」
「アミーシャ。あの中に割り込んで、茅野ちゃんの殺意を殺せる?」
俺の仮説を聞いて、周りのクラスメイトの目が一斉にアミーシャへと向かう。それを受けて彼女は……一度は俺と合わせた目をすぐに逸らしてはいたものの、少し迷ったように小さく頷いた。
「……カエデちゃんが、演技なしで、私のことを少しでも好きでいてくれてるなら……友だちだと思ってくれてるなら、『殺せんせーを殺す』って殺意から意識を外すくらいのことは、できる。もしかしたら触手も誤認してくれる……でもこの方法、……絶対みんなに、嫌な思い、させる。……特に、カルマは1番見たくないこと、だと思う」
「……カルマ君が?茅野が、じゃなく?」
「……危ないこと、する気なんでしょ」
「…………、……」
アミーシャ本人でも、周りの誰かでも、茅野ちゃんでもなく、見てるだけの
……本トなら止めたい、他の方法を探したい、他の人に任せてしまいたい……だけど、他の方法では俺が納得できる確証と、そいつに任せてもいいと思える信頼、そしてそもそもの時間が無い。それなら。
「……いい。茅野ちゃんが助けられるなら……やって」
「うん。……。
……ごめんなさい」
その、小さな一言の謝罪をこぼした瞬間、彼女は庇うように置いていた俺の腕の中から器用に抜け出して、誰もが止める間もなく炎のリングに向かって勢いよく飛び込んでいった。
「え、あ、アミサちゃん!?」
「もう行くの!?」
「まだ、殺せんせーの合図が来てな、」
クラスメイトの焦る声にも耳を貸さず、アミーシャはその勢いのまま軽々と炎のリングを飛び越えた。彼女が炎の向こう側で着地する前に空中でくるりと体を回した途端、小さな銀色の蝶がいくつか浮かぶのに合わせて夜色の姿が景色の闇に掻き消える。あれは、俺らにも見慣れた彼女の十八番……ステルス効果を自分に付与するクラフト《月光蝶》だ。茅野ちゃんに……いや、触手に部外者の接近を警戒させないために姿を隠して近付こうと使ったのだとして……なんで、今?
もうそろそろ殺せんせーも作戦を決行するだろうけど、先生はまだ茅野ちゃんの触手を受け流しながら、わざと心臓への隙を作るタイミングを見計らっている。だからまだ、いくらか猶予があるはずなのに。アミーシャがあっちへ飛び出すには早すぎる……なのに、今のタイミングを選んで躊躇いもなく飛び込んだ。
……嫌な予感がする。殺せんせーが想定していた作戦の通り『触手の殺意』が弱まった時に決行するんじゃなく、どちらの殺意も高まっている今じゃないといけない理由。そして……アミーシャが言った、俺が1番嫌がることで、見たくない光景になるという忠告……E組まとめてじゃなく、俺だけを、指名する理由。きっと恋人だからみたいなキレイな理由じゃない、あの言い方は他のみんなも知っている、それでも他の誰でもなく、俺だけ……俺だけが正しく分かって、見ているものってこと。
「──────ぁ、」
……まさか。俺だけ、って。
浮かんでしまった最低な答えを否定したくて殺せんせーの方を見ると、ちょうど先生が体を守るように置いていた触手の位置を変え、茅野ちゃんが触手を大きく振り上げたところだった。
きっと、時間を稼ぐためにどんな攻撃が来ても受け流しに専念して、それでいながら殺せんせーが今までガードしていた心臓の位置を、作戦のため無防備に晒したんだろう。当然、激しい攻防の中で触手を合わせながら、最大の隙を狙い続けていた茅野ちゃんがその作られた好機を見逃すはずがない。
──ズドンッ!
爆発するような、今までで1番大きな音を立てて。ついに2つの触手は、同時に最大限に威力を集めて標的を
「殺ッ……タ……、────────ぇ……」
殺せんせーの見立て通り、茅野ちゃんの動きが落ち着いたのは触手を通して標的の急所を的確に攻撃し、殺せたという手応えを、感触を感じて、触手の殺意を満足させたからだろう。だけど、辛そうに顔を歪めながらも、ついに目的を果たせたとばかりに喜色満面の笑みを浮かべた茅野ちゃんが触手の先を見て……固まった。
傍から見ていたE組も、烏間先生達も、それが目に入って時が止まったかのようだった。
触手が
「な、ぜ……アミサさん!?」
先生の心臓に、茅野ちゃんの触手は届かなかった。
触手の先にいたのは。
先生の前に、両手を広げて飛び出して。
茅野ちゃんの触手に胴体を
……アミーシャだったから。
本編の途中でカルマが思い出していたように、歴史をやり直しても起きた内容の大筋は変わりません。ただ、気付かなかったものに気付いたり、やらなかったことに取り組んだり……その結果、起きる事象の中でのそれぞれの立ち位置や解決方法が変化しています。今回のお話で言うなら『カエデによる殺せんせーの暗殺』は必ず起きることなので変えられませんでしたが、第一部の【正体の時間】後書きで、オリ主がやるかやらないか迷っていた行動に出ることを選んだので、カエデちゃんが殺せんせーに触手を刺し、渚君がキスで止める(殺す)あの名シーンを展開するどころじゃなくなりました。
次回最終回!……なわけがありませんのでご安心ください!
そもそも第二部のやり直しの時間軸は、第一部で叶えられなかったハッピーエンドに向かうための世界なので、まだまだ色んなことが起きながら進んでいきます。幸せなこともたくさんありますし、不穏は当分過ぎ去りません(作者がそういう展開大好きなので)。第一部を書きながらこの要素が使いたくて、でもお話の進行上合わなくて諦めていたことなので、ここで上手く組み込めてワクワクしています!次回もオリジナル要素たっぷりでお届けしますし、もう少しこの殺せんせーの真実を知るまでのお話は続きますので、どうぞお付き合いください。
それでは一度このあたりで。
次の更新をお待ちくださいませ!