体育の授業が終わり、他の子達が教室へ帰っていく中……私とカルマくんはさっきの体育の授業をしていたスーツの男の人に呼ばれ、教員室へ足を運んでいた。
「君たちが今日から復帰の赤羽君と真尾さんだな。俺は防衛省の烏間という……今回の体育から教師を務めることになった。アイツが担任という契約ではあるが明らかに人じゃないからな……書類上の担任は俺ということになる」
「へー……じゃあ烏間『先生』ってワケ。……アミサちゃん、どう?」
「……せんせー……なんだ。防衛省のままなら、少しは信用してあげようと思ったのに……。あの体術指導は、下手な指導者より良かったから……」
この男の人、指導者としてだったら私の父と同等の
「……、……まあいい。君たちは早速やってくれたが、我々から依頼するのは学業をこなしつつ、あの超生物の暗殺をすることだ……ちなみに今回のあの作戦、立案はどちらだ?」
「へー、さっすが。2人で立てた作戦じゃないって気づいたんだ。俺が戦闘でこの子が隠密に特化してるから、俺がナイフ、というか対先生武器だっけ?その威力を試すついでにアレの意識を俺に持ってこさせておいて、威力を確認したアミサちゃんが不意をついて切り落とす……その流れだけは決めてあったから、あとは各自やりたいように動いただけ」
「なるほどな……」
カルマくんと烏間さんが話しているのを話半分に聞いていた……どうでもいい人相手の会話とか、別に参加する必要は無いだろうし。……こうして窓の外を見てみるとおんなじ自然、おんなじ空が広がっているのに……私の住む世界もだけど、ここも大概変な場所だと思う。
そう、自分の思考の海で過ごしている間にお話は終わったみたいで、カルマくんに軽く体を揺さぶられて意識がこっちへ戻ってきた。私がいつも通りカーディガンの左袖を掴んだことをカルマくんは確認すると、教員室を出ようとし……ふと思い出した様に部屋を見回して言った。
「あ、そーだ烏間先生。この教員室であのタコの席ってどこ?」
◆
──ブニョンッ
──ブニョンッ
──ブニョンッ…………
私達が教室へ入るともうみんなは小テストを始めていた。渚くんに教えてもらった私たちの席、一番後ろに並んだ二つの机へ向かう……私は左隣が空いていて、右側がカルマくんだと聞いている。後ろの扉から入ったのだけど、扉を開けた瞬間クラスの大半が振り向いたのに驚いて、足が止まってしまった……カルマくんが引っ張ってくれなきゃ、中に入るのは無理だったと思う。
席につけば机の上にはみんながやっているものと同じだと思われる小テスト……何気なくカルマくんと視線を交わしたあと、私はすぐに解き始めた。学校に長い間通ってなかったからって見くびらないでよ、せんせー……?……さっさと終わらせて次の準備に入ってしまおう。
……それより、教室へ入る前から響くこのブニョンブニョンっていう変な音は……なに。
「……なぁ、さっきから何やってんだ殺せんせー ?」
「さぁ……壁パン、じゃない?」
「ああ……さっきカルマと真尾さんにおちょくられて、ムカついてるのか」
「触手がやわらかいから壁にダメージ伝わってないな」
「ていうかさっきグラウンドでも同じことやってなかったか?」
……アイツが触手で壁を叩いている音だったらしい。というか私たちのせいって言われても、チョロいアレがいけないんだと思うんだけど……とりあえず、うるさいし、気が散ります。
「あーもう!ブニョンブニョンうるさいよ殺せんせー!!小テスト中なんだから!!」
「ここ、これは失礼!!」
……ほら、怒られた。
と、そんな(一応)小テスト中という静かな空間だったのが、触手パンチへの抗議がはっきり出たことでみんなの集中力が途切れたみたいだ……テストの緊張したような、張り詰めていたようだった教室の空気が緩やかなものに変わった気がした。
「よォカルマァ。大丈夫かぁ?あのバケモン怒らせちまってよぉ」
「どーなっても知らねーぞー」
「チビちゃん共々、またおうちにこもってた方が良いんじゃなーい?」
「殺されかけたら怒るのは当り前じゃん、寺坂。しくじってちびっちゃった誰かの時と違ってさ」
「な、ちびってねーよ!!テメケンカ売ってんのかァ!!」
「こらそこ!!テスト中に大きな音立てない!!厳しい先生ならカンニングとみなされますよ!?」
(((いやあんたの触手もうるさいよ)))
……なんか、カルマくんの側の人達がうるさく喋りはじめた。しかも私をチビって言ったのダレ。
そちらにそっと目を向けてみれば、絡んできていたのは、体が大きくて声の大きい男の子……カルマくんが呼んでたし名前は寺坂くん、でいいのだろう。後の二人は、……、覚えてないや。……むしろこの教室にいる人のこと、私は全然わからない。
私とカルマくんは停学明けってことで、一応2年生までに関わりがあった前提で教室に入れられていて自己紹介の時間とかなかったし、
だんだん違う方へ思考がズレ始めていたその時、カルマくんが教員室から持ってきたクーラーボックスを足元に引き寄せて、静かに中身を取り出すのが見えた……それを見て意識を切り替える。……そろそろ、次の作戦開始だ。忍ばせていたものを周りの雑音で隠すようにそっと床に転がす。
「……っと、ごめんごめん殺せんせー。俺もう終わったからさ……ジェラート食って静かにしてるわ」
「ダメですよ!授業中にそんなも、の……、……ん?そっ……それは……!昨日先生がイタリア行って買ったやつ!!」
(((お前のかよ!!)))
烏間さんにアイツの机の場所を聞いて物色してもいいか尋ねたら、生徒の個人情報にさえ触れなければ今のうちに漁っても黙認する、という返答をもらった。あのジェラートはその時に見つけたもののうちの1つだ。
「あぁ。ごめーん教員室で冷やしてあったからさ……アミサちゃんも、どう?」
「……(ペロッ)……味はおいしーけど、持って帰ってきて日本の冷凍庫で保管したからかな……食感、ヘン。買ったその場で食べた方がおいしーのに……ソフィーユさんもそう言ってた」
「ごめんじゃ済みません!!溶けないように苦労して寒い成層圏を飛んで来たのに!!……というかアミサさん、今サラっと舐めましたよね!?しかもコメント辛辣すぎます!あと誰ですかソフィーユさん!?」
「……、つっこみお疲れ様です」
「へー……でどーすんの?……ん、……殴る?」
「殴りません!!残りを先生が舐めるだけです!!そう、ペロペロと、ぉ!?」
カルマくんが挑発するようにジェラートをひと舐めし……ニヤリとした笑みをアイツに向ける。案の定簡単にその挑発に乗って、ジェラートを取り返そうとカルマくんの元へ近づいて……あっは、予想通り……きた。その瞬間、足の触手がさっきバラまいたものを踏みつけ、
──バシュッ
「(対先生BB弾!!……っ!)」
……溶ける。
それを確認したとほぼ同時に私は驚いているソイツの触手を目掛けて素早く発砲した……顔はカルマくんが狙う手はずになっている。
「あっははっ!まァーた引っかかった……ナイスアシスト〜、アミサちゃん」
「……でも、弾けてないってことは命中はゼロ……あ、でも煙が上がってるし、かすりはしたのかなぁ……?」
完全に破壊を狙って撃った私とは違い、パン、パン、パン、と3発……間を空けて顔を狙うカルマくん……ソイツは慌てて避けていた。音を立てて椅子を引き、小テストの答案を持ったカルマくんが銃を構えたまま立ち上がり……そいつへ触れるくらいの位置で銃を突きつける。私は自分の席に座ったまま銃をそいつへ向け、反対の手で教員室で見つけたもう1つ持ち出した
「……何度でもこういう手使うよ。授業の邪魔とか関係ないし。それが嫌なら……俺でも俺の親でも殺せばいい」
「……でも、その瞬間から、もう誰もアナタを先生とは見てくれない。ただの人殺しのモンスター……タダでさえ『先生』っていうのは腐ってるのに、さらに私たちからの評価も落とす」
カルマくんは淡々と話しながら、銃とは逆の手に持つジェラートをソイツの胸元へ押し付ける……もし、それが対先生物質だったなら深々と突き刺さっていただろう。それを見てから、私も銃を答案に持ち替えて立ち上がる。
「あんたという『先生』は、……俺達に殺された事になる…………はい、テスト。多分全問正解……アミサちゃんも終わった?」
「ん……あ、ねぇ『せんせー』……?教員室はせんせーの部屋かもだけど……図書館に置いてないような本って持ってきていいの?」
「にゅやっ!?な、なぜその秘蔵雑誌を……!?」
「「烏間先生(さん)が持っていっていいって言ったから。」
……あと、カルマくんが、渡すんだったら私の方が精神的にダメージでかいからって……この本、なに……?」
「烏間先生ィッ!?というか、アミサさん、内容わからない本を軽々しく扱っちゃいけません!あなた女の子でしょう!」
「……えっと、……女の子だと、触っちゃいけない本なの……?」
「あー、うん。俗にいうe……
「わかってない子はわからないままでいいんですよカルマくん!!!」
……うっさいな〜」
◆
渚side
「じゃね『先生』~明日も遊ぼうね!」
「……ばいばい」
そう言って一時の嵐を巻き起こした2人は教室から出ていった。僕達教室にいるメンバーはもう、テストどころじゃなくなっている……だって今日だけでもう、2回も暗殺を仕掛けて2回とも触手の破壊を達成してるんだから。
カルマ君は頭の回転がすごく速い……今もそうだ。先生が先生であるためには越えられない一線があるのを見抜いた上で、殺せんせーにギリギリの駆け引きを仕掛けている。……けど本質を見通す頭の良さとどんな物でも扱いこなす器用さを、人とぶつかるために使ってしまう。
そして今までの暗殺を見る限り、アミサちゃんは不意打ちや機動力に優れてる。それに加えて相手の感情や雰囲気、気配を悟るのがかなり上手い。やっぱり、頭の回転も早いのだろう……でも、今は一部を除いて全部拒絶しちゃってるせいで周りを見ることが出来ていない。その負の感情の向くまま、殺せんせーにぶつけている。
殺せんせーもそれに気づいているのかな……先生は、カルマ君に押し付けられたジェラートをハンカチで拭い、それを静かに、じっと見つめていた。
……と、いう所で、今までの一件をすぐ隣で見ていた岡島くんが、多分僕達みんなが聞きたくても聞けなかったことを聞いた。
「……殺せんせー、ちなみにその本は何だったんですか?」
「!?い、いえ……別に、エロい本とか持ち込んだりなんてしてませんからね!……ね!?」
(((なんつーもん、持ち込んでんだよ!?)))
「てか、真尾さん気づいてなかったんだ……」
「……アミサちゃん……変な所で知らないこと多いから……多分エロ本がなんなのかも分からないと思う」
「それは相当純粋というか世間知らずというか……」
「多分カルマ君が中身を見ないように立ち回ってたと思うし、アミサちゃんはアミサちゃんで見ちゃダメって言われれば素直に見ないから」
「じゃあさっきのアレ、わざととか演技じゃなくて完全に本心で言ってたんだな;」
◆
教室を出た私とカルマくんは、全員が旧校舎の中にいるのをいいことに、誰にも邪魔されないで山の中を探索していた。校舎の裏手、裏山の中の小さな沢、少し奥へ入れば山葡萄の茂み……全部が暗殺の舞台なら、なにか使えるものがあるかもしれないと様々な自然の立地を見て回る。そして最後に、切り立った崖に一本松が生える場所を見つけてここまで来るあいだに見つけたものを話し合う。
カルマくんが言うには、こうやって早めに探索しておけばサボり場も見つかるかもしれないし、なにか使えそうなものを得られるかもしれないということだった。サボり場って……もうすでにあの教室に価値は無いと結論づけてるのかな。その後も使えそうなものを話し合い、もしすべて使えなかった時の最後の手段も一応想定したあたりで、気がつけば放課後になっていた。
「じゃーな渚!」
「うん。また明日~」
家へ帰る前に近くの店で飲み物を買う……この店にはあまり見たことのない瓶コーラが置いてあって、なんとなく手に取っているとカルマくんが自分の分と合わせて2本、レジへ持っていっ……しまった、奢らせちゃった。その分夜ご飯にカルマくんの好きな物をひと品追加しようと考えながら駅へ向かっていると、渚くんとクラスメイトの……なんか爽やかそうでスポーツ系の男の子がいて、2人がちょうど別れるところだった。これは丁度いいと私たちは渚くんに近づく……その時、聞こえた声。
「……おい渚だぜ。なんかすっかりE組に馴染んでんだけど」
「だっせぇ。ありゃもぉ俺等のクラスに戻って来ねーな……しかもよ、停学明けの赤羽と異端児の真尾までE組復帰らしいぞ」
「うっわ、最悪。マジ死んでもE組落ちたくねーわ」
遠くから見ていてもわかる。渚くんにもその声が届いていて、でも何も言い返せないでいることに。アイツらにとっては、椚ヶ丘中学校が
──ガッシャン
「えー、死んでも嫌なんだ。……じゃ、今死ぬ?」
彼は色々言っていた男子生徒たちの頭上の柱に空ビンを叩きつけ、割れて尖った
「あはは、殺るわけないじゃん」
「……カルマ君」
「ずっと良い玩具があるのにまた停学とかなるヒマ無いし、」
「認められて堂々と殺る、そんなこと、普段ならやれないことなんだから……だったら全力で楽しまなきゃ、でしょう?」
「アミサちゃんまで……」
まだ中身の残っていたコーラを両手で持って飲みながら、2人の近くへ追いつく。飲みきってからふと思う……瓶コーラはガラス、ということは簡単に捨てられないじゃないか、と。カルマくんが普通に武器にして、割って、投げ捨てた分は見ないことにして、私の分くらいはと王冠を一応つけ直してカバンに入れる。
そのまま話すことも無く、自然と3人で歩きながら駅の改札を通り、いつかのように電車を待つ……あ、ひさしぶりに3人揃ったんだ。
「でさぁ渚君。聞きたい事あるんだけど。殺せんせーの事ちょっと詳しいって?」
「……う、うんまぁ……ちょっと」
「あの先生さぁ……直接タコとか言ったら怒るかな?」
「……タコ?うーん、むしろ逆かな?自画像タコだし。ゲームの自機もタコらしいし。この前なんか校庭に穴掘って『タコつぼ。』……っていう一発ギャグやってたし……まあまあウケてたし先生にとってちょっとしたトレードマークらしいよ」
「……ふーん……そ~だ、くだらねー事考えた」
「……じゃあ、明日は朝一番に起きて準備、だね?」
「明日はアラーム間違えないでよ〜?」
「うぅ〜……」
「……カルマ君達……次は何企んでんの?」
じゃあ、今アラーム設定するから確認してね、なんて話を続けてスマホに目を落とした時に、渚くんの疑問が聞こえた。……もちろん、そんなの決まってる。
私たちはホームを背に渚くんへと向き直る……私たちの
「……俺さぁ、嬉しいんだ。ただのモンスターならどうしようと思ってたけど……案外ちゃんとした先生で。……ちゃんとした先生を殺せるなんて、さ。…………前の先生は自分で勝手に死んじゃったから」
「いらないモノは、壊してもいいでしょ?みんなが傷つく前に、私たちでお掃除するの……もう、信じて裏切られるくらいなら……最初から壊してあげる」
「…………」
ちょうど来た電車で夕日が反射し、カルマくんの
◆
私たちは朝一番である所に寄り、誰もいない教室へ入って設置する。続々と登校してくるクラスメイトたちは先にもう教室にいる私たちを見て驚いた顔をしたあと、それを見つけてもう一度驚いてる。そして……
「おはようございます」
「…………」
「……ん?どうしましたか皆さん?」
教室へ入ってきたばかりの『せんせー』はまだ気付いていない……教卓の上にホンモノのタコが1匹、アイスピックで刺された状態で死んでいることに。みんなの視線がそこへ向いていることに気づいたソイツは他のクラスメイトと同じように教卓へ釘付けになった。
「あ、ごっめーん!殺せんせーと間違えて殺しちゃったぁ。捨てとくから持ってきてよ」
わざとらしくカルマくんがソイツを呼ぶ……自分をタコって表現するくらいなんだもん、ちょっとくらいは精神的にきて欲しいよね。
「……わかりました」
……きたきた。私はエアガン、カルマくんはナイフを背中に構える……近くまで来たら、あはっ……今日は何本もらおうかな……
……来いよ、殺せんせー
……おいでよ、せんせー
身体を殺すのは今じゃなくても別にいい
体を殺すのは後でいい…いつでもできる
まずはじわじわ……心から殺してやるよ
まずはじわじわ……精神から殺ってあげる
ソイツはタコを持ったまま、私とカルマくんの間の列を通ってこっちに来る。……あと少しで射程に入る、というところで……そいつがタコごと上に掲げていた触手の先が、なぜかドリルになった。
「「!?」」
「見せてあげましょう。このドリル触手の威力と自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を……先生は暗殺者を決して無事では帰さない」
「!?あッつ!!」
「うくっ……!」
何をする気?あのドリル触手とやらを、ミサイルの火を、武器として使う?でも先生であることにこだわってるらしいアイツは、生徒に危害を加えられないはずじゃ……そんなことを考えながら、目の前の光景を怪訝に思っていれば、一瞬で口に入れられた出来立てのたこ焼き。そんなの予期しているはずもなくて、2人して慌てて吐き出す。
「2人ともその顔色では朝食を食べていないでしょう。マッハでタコヤキを作りました。これを食べれば健康優良児に近付けますね」
「……ッ……」
「……、……」
「先生はね、手入れをするのです。錆びて鈍った暗殺者の刃を……。今日1日2人とも本気で殺しに来るがいい。そのたびに先生は君達を手入れする」
「「……!」」
「放課後までに君達の心と身体をピカピカに磨いてあげよう」
……そっか、なら言質はとった。好きにやらせてもらおう。
「やってくれたね……殺す」
「まず、朝からたこ焼きの方がやだ……」
「まぁ、言質はとったし授業関係なく仕掛けてこーよ」
「本人がいいって言ったんだもんね……」
「……ていうかさ、」
「あちっ、アチチチチッッ!!!!?」
「「(そんな一気に口に入れたら当然だと思うんだけど……バカなの?)」」
◆
身体よりも『先生』としての精神から
〝今日一日、二人とも本気で殺しにくるがいい〟
その言葉を引き出した……つまり、元々初日から無視してたところもあったけど、今日1日は授業中も、休み時間も、この場所で過ごしている間は私たちの動きに制限を付けられることはない、と私たちは解釈した。思いつく限りの策を使って、殺せんせー……アナタを殺してあげます。
◆
─1時間目・数学─《カルマ+アミサ》
「どうしてもこの数字が余ってしまう!そんな割り切れないお悩みを持つあなた!!でも大丈夫ピッタリの方法を用意しました!!黒板に書くので皆で一緒に解いてみましょう」
「………」
テレビショッピングかよ、とでも言いたくなる謳い文句で授業を進める殺せんせー……せんせーは今、黒板に向かって数式やそれに至るまでの過程を文章にして書いている。……あの内容ならもう数行は書くだろうし、書くことに集中しているアイツがこちらを見ることは無い。
──────ガッシャン
「……あ。……」
アミサちゃんの左腕が『偶然』フタの開いた筆箱に当たって中身が落ち、バラバラと中身が音を立てた今がチャンスだと、俺はカーディガンの下に仕込んだエアガンを取り出して構え……
「……でこれを全部カッコ良くまとめちゃってそれから……するとあらビックリ……、……となります。ああカルマ君銃を抜いて撃つまでが遅すぎますよ」
「なっ……」
「ヒマだったのでネイルアートを入れときました」
いつの間にか俺の手の中からエアガンが奪われ、その手の爪にはネイルアートが施されていた……ご丁寧にたこ焼きのラインアート付きだ。このタコ……朝の一件、根に持ってやがる。
「……そしてアミサさん、撹乱のためにあなたが『偶然』を装って筆箱を落とし、音を立てたのはお見事でした。しかし音が鳴らす場所が悪かったですねぇ……はい、筆箱を拾うついでにデコってみました」
「……っ!!……、……」
机に戻された筆箱の勝手に飾られたリボンやバッジを無言で剥ぎ取るアミサちゃん。銃を取り出す音、構えた時などの微かな音、それらの気配をアミサちゃんが別の音を立てることで撹乱しようとしてくれたようだが、俺の近くで音を立てたことでそちらだけでなく俺へも意識を向けさせることにもなってしまったと。
その後アミサちゃんから無言で差し出された除光液はありがたく借りて、次までには剥がしてしまうことに……差し出された彼女の手は申し訳なさそうで、あまり力が入っていなかった。
─2時間目・音楽─《アミサ》
……歌は、好き。簡単には歌えないもの……例えば、高度な歌唱技術が必要なもの、ものすごく高音域のもの、早口で滑舌がモノをいうもの……それらを歌いきる達成感が、好きだ。歌いきるためには音をよく聞く必要がある。
……だから、かな。私は音を聞いている時に……人の発する波が
「……というわけです。では、ワンコーラスずつアレンジしてみましょうか。音作りの授業ですし、どのように歌を歌ってくれても構いません……楽譜通り正確なものでもいいですし、叫んだり突飛なもの、あっと驚くものでもいい。ふむ……では、千葉くん、中村さん、磯貝君、真尾さんの順で行きましょう」
今回の授業は曲のアレンジについてらしい。ちょうどよく私の名前も呼ばれた……試してみたいことがあったんだ。『せんせー』が適当に決めた順番に好きなように音を奏でていく……千葉くんと磯貝くんは時々低い音を混ぜるけどそこまで原曲を崩さない。でも、中村さんが変化をつけて少し遊んだから、周りの聞いている人達の波長に変化が出てきた。次は何が来るんだろうっていう、期待。よくやったな、おもしろいという賞賛。
そして回ってきた、私の番。最初は聞く姿勢があるから見えた波は小さい……そこにワザと音を当てる!
「……〜……」
……あんまり、変化が見えない。じゃあ次、……意識が大きな波の時に大きな音を当てたら……?
「……──っ!」
「「「っ!」」」
……、今、『せんせー』を含めて聞いていた全員の波が一瞬止まった……なるほど、大きな波に音をうまく当てると波長が乱れて、上手く行けば止まる……これは、これから使えるかもしれない。それが確かめられればじゅーぶん。私の出番は終わったからさっさと席に戻ろうと思ったんだけど、何故かみんながこっちを見てきた……暗殺をしなかったから?……暗殺の材料手に入れたから、ある意味やったんだけどな。……私の歌が下手、だからかな……なるほど。
(((何だ今の、腹の底から響くような歌声……)))
「(にゅ……これは……クラップ音を声で代用した……いや、まさかそんなことを一般の中学生がいきなりやれるはずが……)」
「…………」
─3時間目・理科─《アミサ》
今日の理科は科学の実験のために理科室で行う……実験ということもあって人体には有害な物質を扱うこともある。……つまり、生徒に危害を加えられないせんせー=危険な薬品を扱う時に危ないことがあれば生徒を守るということ……?……あれの予行練習がてら試してみる価値はある、かな。
今アイツは両手(触手を手と言っていいのかは疑問だけど)に試験管を持ちながら薬品の説明をしている。……体長高いしみんなに見えるように見せながら説明してるから、小さい私が近づけば……薬品の真下からすべてを見上げることになる。静かに席を立ち、説明でこちらを見ていないように見えるせんせーへと近寄り……
「……はい、このように変化が見えましたね?……では酸性とアルカリ性の説明は以上で……」
「……殺せんせー、」
「!!!は、はじめて先生のことを『殺せんせー』と呼んでくれましたね真尾さんっ!!どうかしましたかっ!?」
「……後ろじゃあ、……変化も何も、見にくかったから、……近くで見たくて……」
「そうですかそうですか、では、よく見ていてください。まずこっちの……」
……ここだ。
コイツが嬉しそうに私を見て、試験管を私に近づけた瞬間に私は手で試験管を払い、中の薬品が机だけでなく私にもかかるようひっくり返し、ほぼ同じタイミングで対先生ナイフを振るう。原則からいけば薬品から、私守るためにコイツは私に近づくはずだ……そうすればナイフで殺れる。もし守らないというなら自分から浴びに行った私は大火傷、先生として怪我を負わせない責任を果たせないことになる……!
「……!?」
「この試験管の中には人間が触れると危険な劇薬が入ってます……ああ、中身はご心配なく、こぼれた数滴もマッハで拾い集めておきました。アミサさんには火傷を防ぐためのミトンを履かせておきましたよ」
今の一瞬の間にコイツは私からのナイフをハンカチで包んで奪い、万が一の火傷を防ぐため手に可愛らしいミトンを履かせた上で、ひっくり返した試験管の中身を一滴残らず拾い集めたのだ。……これも、ダメだったみたい。
─4時間目・技術家庭科─《カルマ》
2時間目の音楽が終わったあと、アミサちゃんから音の波について聞いたけど……正直なんのことかわからなかった。あの時、アミサちゃんの加えたアレンジはオリジナルでは静かなところを高音域に持っていき、ラストで盛り上げるもので……あの瞬間、一瞬意識を何かに持っていかれたのは確か。一瞬すぎて瞬き程度だったから、ほとんどみんな歌に圧倒された……みたいに思ってて気づいてないけど……アミサちゃんが話してる通りなら、結構怖いことしてると思う。……アミサちゃんは、俺に見えていない何かを見ている……?……って、考えすぎか。
その後の3時間目……アミサちゃんは見事に自分を犠牲にして『先生』としてのタコを殺しに行ったけど、ダメだった。悔しそうに席に戻ってきてからは、下を向いている。……今度は俺が仕掛ける……調理実習はスープだ。この時間、殺せんせーは生徒の様子を見るために家庭科室中を歩き回る。
「不破さんの班は出来ましたか?」
「……うーんどうだろ。なんかトゲトゲしてんだよね」
「どれどれ……」
「へえ。じゃあ作り直したら?……1回捨てて、さ!!」
だから俺は、味見をしようと立ち止まり鍋に顔を近づけた瞬間に先生に向かって鍋をひっくり返し、すぐさまナイフを振る……!
「……!?」
「エプロンを忘れてますよカルマ君。スープならご心配なく全部空中でスポイトで吸っておきました。ついでに砂糖も加えてね」
「あ!!マイルドになってる!!」
スポイトって、そんなのありかよ!?しかもこんな……男がつけるようなもんでもないエプロンを着させられて、屈辱でしかない!……しかも誰だ、かわいいとか言ったヤツ!
─5時間目・国語─
渚side
……無理だ。
殺せんせーはけっこう弱点が多い。バナナの皮を踏んで滑ってコケるっていう、普通ありえないようなことでもちょいちょいドジ踏むし、周りの突然の環境の変化とか慌てた時は反応速度も人並みに落ちる。
……けど。どんなにカルマ君やアミサちゃんが不意打ちに長けていても
「『─私がそんな事を考えている間にも……』」
……机間を殺せんせーが通り過ぎ、背中を見せた瞬間にカルマ君が右手の仕込みナイフ、アミサちゃんが左手の投げナイフを構えようとして……
「『─赤蛙はまた失敗して戻って来た……』」
殺せんせーの、触手に頭と手を止められ動けなくなる。顔を合わせていない、アミサちゃんのナイフすら後ろの触手でハンカチごしに止めている。
「『─私はそろそろ退屈し始めていた私は道路からいくつかの石を拾ってきて……』」
教科書を読むのを全く止めず、複数の触手にコームやらスプレーやらを構え、呆然とした2人の髪の毛をセットし始めた、殺せんせー。
……ガチで警戒してる先生の前では……この暗殺は無理ゲーだ。
◆
私とカルマくんが昨日話し合った、切り立った崖に一本松が生えている場所。その一本松の上に登り、下には何にもない崖側に私が横を向いて狭い中体操座りをし、地面側にそちらを背に向けたカルマくんが腰を下ろしている。カルマくんは苛立ちを隠せずに爪を噛んでいて、私は自分の膝に顔を埋めた……私だって授業以外でも色々仕掛けた、それでも、何一つとして成功しなかった。……なんで?早く、早く殺らなきゃ、誰かの害になる前に掃除しなくちゃいけないのに……っ
その時、1人ついてきていた渚くんが私たちに声をかけた。
「……カルマ君、……アミサちゃん……、焦らないで皆と一緒に殺ってこうよ。殺せんせーに個人マークされちゃったら……どんな手を使っても1人じゃ殺せない。普通の先生とは違うんだから」
まるで、数多の盾とどこでも見通せる第三の目があるようなイメージが沸き起こる、……そう、普通の先生じゃないんだから当たり前といえば当たり前、なんだけど。
「先生……ねぇ」
〝赤羽!!お前が正しい!!〟
〝喧嘩早いおまえは問題行動も多いがな。おまえが正しい限り先生はいつでもおまえの味方だ!!〟
「……、…………」
〝いやいや……大丈夫ですよ、真尾は優しすぎるだけです。それにあいつには今、D組(うち)の赤羽がついてます。間違ったことはしないに決まっているじゃないですか〟
〝生徒を守ってこその教師でしょう?〟
「……やだね俺が殺りたいんだ。変なトコで死なれんのが一番ムカつく」
「渚くんは、私のコト、知ってるクセに。……せんせーなんて、みんなろくでもない、タダのゴミでしょ。みんながそれをシるマエに、……ワタシが、ワタシタチでヤるのが、いちばんイイの」
「…………」
「カルマ君にアミサさん。今日はたくさん先生に手入れをされましたね。まだまだ殺しに来てもいいですよ?もっとピカピカに磨いてあげます」
私たちと渚くんが喋っているここへヌルヌル音を立てながら、アイツがやってきた。なんか触手を合わせながら、顔色まで変えて……明らかに私たちをナメているのが分かる。
でも……そっか。まだまだ殺しに行っていいんだ。あぁ、それならこの場所にうってつけな暗殺がある……昨日話した作戦がイきる時が来た。カルマくんもそれを考えたのだろう、一度私に視線をやり、崖下を見た後にもう一度視線を交わす。そして渚くんと『せんせー』に向き直った。
「……確認したいんだけど、……殺せんせーって先生だよね?」
「……?……はい」
「先生ってさ命をかけて生徒を守ってくれるひと?」
「もちろん先生ですから」
「そっか。良かった……それが知りたかったんだぁ……ねぇ、今ってまだ朝約束した『今日』の中に入るんだよね……?」
「えぇ、入りますねぇ……」
「じゃあ、今からそっちに戻って殺っても問題ないわけだ……、……行こうかアミサちゃん」
────これが、合図だ。
「うん……、っ!?や、あ、え……?」
「っ、アミサちゃん!?」
「にゅ!?」
「ちょ、」
「き、きゃあぁぁぁぁぁっ!?」
私はカルマくんに呼ばれ、体操座りから立ち上がろうとする……がうまく立ち上がることが出来ずにその場でバランスを崩した。狭い木の幹で、バランスを崩せばどうなるか……決まっている、私は落ちる。下は崖だ……何も、無い。慌てたようにカルマくんが私の名前を呼んで、スグに手を伸ばし、届かないと気づいた時には私と同じようにバランスを崩して……落ちたあと。
慌てて渚くんが走り込んできて、崖から落ちていく私たちをのぞき込み……そして、目を見開いた。
────私を抱えたカルマくんが笑みを浮かべながら……そしてカルマくんに下から抱えられた私が無表情で崖の上を見つめて……銃を構える私たちの姿を見たのだから。それに続いて私たちの目には、崖の縁まで飛び込んできた『せんせー』が見えた。
助けに来れば救出する間に撃たれて死ぬ
……まっすぐおいでよ、撃ち殺してあげる
見殺しにすれば先生としてのあんたは死ぬ!!
それとも生徒二人を見殺しにした先生として死ぬ?
あ、はははっ!走馬灯っぽいの見えてきたぁ……
俺の、私の、
停学になった時のこと……
そいつのすべてに絶望したら、そいつは私たちの中で死んだも同然、死体も同然、処理をするのも当たり前!
殺せんせー!!
あんたは俺の手で殺してやるよ!!
あんたは私の手で殺してあげる!!
────あぁ、でも、どっちにしろ私たちは死んじゃうんだろうな。地面に叩きつけられて死ぬか、粉々になって死ぬか。アイツにとって二択なら、私たちにとってもその二択でしかない。
────……別に、どうでもいっか。見捨てられて、裏切られて……そんな世界で生きるくらいなら、私は……
「……死んでも、」
「……?」
「死んでも、俺は一緒にいるから……離れないよ。……一人には、しない」
……カルマ、くん……
────シュルルルッ
「な……っ……え……」
「!なに、これ……」
何か、衝撃が走ったかと思えば、私たちの体は黄色いネバネバした蜘蛛の巣のようなネットの上に落ちていた。……死んで、ない……?元々カルマくんにキツめに抱きかかえられていて、あまり動けない状態ではあったけれど、それ以上にネットに張り付く手足に戸惑っていれば、ぴょこんとネットの下にアイツが現れる。
「お二人とも。自らを使った計算ずくの暗殺お見事です。事故で崖に落ちたことを装って、先生を慌てさせることも折り込み済みですね。音速で助ければ君達の肉体は耐えられない。かといってゆっくり助ければその間に撃たれる……そこで先生、ちょっとネバネバしてみました。これでは撃てませんねぇ……ヌルフフフフフフ」
「……くっそ、何でもアリかよこの触手!!」
ネットがネバっと腕や髪、足にも体にも全部引っ付いて取れないから、全く動けないし……当然銃も撃てない。これじゃあ……!
「……ああちなみに」
必死に体を外そうとする私たちのすぐ真横から顔を出し、私たちをまっすぐ見る顔に、反射的に動きが止まる。
「見捨てるという選択肢は先生には無い」
「「……………ぇ……」」
「いつでも信じて飛び降りて下さい」
「…………………はっ」
──こりゃダメだ
──死なないし殺せない
──少なくとも……
──先生としては
「…………………っ……」
──これが、先生っていうもの?
──私が知ってるのと、全然違う
──……もう一度……もう一度、だけ、
──信じてみても、いいのかな……
◆
「うーわー……2人して平然と無茶したねぇ……しかもあれ、演技だったんでしょ?わざと落ちたってこと……?」
「別にぃ……今のが考えてた限りじゃ1番殺せると思ったんだけど。……ていうか、そう思ったからこその理科でのアミサちゃんでしょ?2人がかりでここまでダメなんじゃ、しばらくは大人しくして計画の練り直しかな〜」
そう、私がした理科での自己犠牲暗殺はこの作戦をすることを想定していた。生徒が危ない目にあったら助けに入るかどうかを見て、この最後の作戦でせんせーが絶対に飛び込んで来てくれるかどうかを事前にやっておきたかった。……結果は目論見通りではあったけど……
「おやぁ?もうネタ切れですか?報復用の手入れ道具はまだ沢山ありますよ?君達も案外チョロいですねぇ」
……このヒト、初日にいきなりチョロイって挑発されたこと根に持ってたよね、絶対。
「殺すよ明日にでも」
今までとは違う
「……アミサさん、先生はあなたの事情を全ては知りません」
「…………」
「しかし……〝外〟には目を向けてみましたか?」
「……?」
それは、いつも渚くんに言われていたことだった。
〝ゆっくりでいいから……〝外〟を見てみてよ〟
「渚君から、貴女が信じていた先生に、周りにいた人達に裏切られて周りを信じられなくなっていることは聞きました。あなたの信じることを全て否定され、誰にも認められない環境は辛かったことでしょう。しかし、そんな貴女にもいつもそばに居てくれる、信じられる存在はいたでしょう?」
……初めてあった時から、カルマくんと渚くんは信じられた。……なんで?……私を見て、私のことを聞いて、それでいて彼らが自分の意見を言ったとしても、私を否定しなかったからだ。全部、心からの言葉だとわかったから、だから信じられた。
「しかし、〝外〟はどうでしょう?貴女はまだ、カルマ君と渚君の3人の世界しか見ることが出来ていない……少なくとも、E組のクラスメイトの事は全く見えていないでしょう?先生という存在を信じられないことは……せんせー的には信じてほしいですがひとまず置いておいて。まずは他の人を見て、聞いて、接して……それから拒絶するのでも遅くはないのではないですか?」
私はE組の人たちのこと、全く分からない。同じクラスになった人もいるだろうに、すれ違ったことのある人もいるだろうに、もしかしたら話したことだったあるかもしれないのに……誰一人として、わからない。
「あぁ、少なくとも先生は、貴女を見捨てるなんてことは絶対にしません。何度でも探して、引っ張りあげて、1人にはさせません」
「……、……でも、わからない……」
「最初のきっかけ作りに関しては先生におまかせを!明日の朝、早めに登校して教員室へ来てください。……あぁ、もちろん、不安ならカルマ君も一緒で構いませんよ」
……ここまで、かな。これじゃあ、信じてみるしか、ない……
「………、……うん。がんばって、みる。……ありがと、殺せんせー……」
そう答えると、嬉しそうに目を細めた殺せんせーが、よく言えました、御褒美です、と触手で私の頭を撫でてくれた……何故かすぐにカルマくんがナイフで払ってたけど。
そしていつものように私がカルマくんのカーディガンを掴み、カルマくんは私がついてきていることを確認すると、おもむろにポケットへ手を突っ込んでがま口財布を取り出した。……あれ、カルマくんってがま口だっけ……?
「じゃ、帰ろうぜ渚君、アミサちゃん。帰り、メシ食ってこーよ」
「ん……?アーーッ!!ちょッ、それ先生の財布!?」
……せんせーのでしたか。
「だーかーらぁ、教員室に無防備で置いとくなって。烏間先生もため息ついてたよ〜?」
「返しなさい!!」
「いいよー」
「え、な、中身抜かれてますけど!?」
「はした金だったからぁ……募金しちゃった」
「にゅやーッ!?!?!?こ、この、不良慈善者!どんな金額でもお金はお金!小銭を笑うものは小銭に泣くのですよ!?それなのに君と言ったら……!」
「あははっ!」
私は、私の手を取って引っ張りあげてくれた殺せんせーを、ほんの少しだけ信じてみようかと思う。すぐに全部信じるのは、まだ無理だけど……でも、頼ってみるくらいはしてもいいかな、なんて。
◆
「……っ」
「………怖いの?」
「!!」
「みなさん、待ってますよ」
「……、……でも、……」
「……俺も一緒にやるから、ほら」
「……うん……」
────ガラッ
「おはようございます。はい、席につい……てますね、渚君、昨日のお願いを早速ありがとうございます。では!今日はまず、大切なお知らせがあります!」
「殺せんせー、カルマと真尾さんまだ来てねーぞ!」
「そうだよ、今やるより、二人が来てからの方が……」
「えー、お知らせというのはですねぇ……みなさんもよく知っている人ですが、ここで会うのは『はじめて』でしょうからねぇ……」
(((スルーしやがった!?)))
「改めて挨拶を、と思いまして。……ではどうぞ『カルマ君、アミサさん』」
「「「!!!」」」
「は〜い、俺はご存知の通り赤羽業ね、みんな気軽に下の名前で呼んでよ。よろしく〜!……ほら、」
「……ぁっ、……っ……真尾、有美紗……です。その……がんばる、……ます。……よ、よろしく、お願いします……」
「……へへ、よろしく!真尾さん!」
「真尾ちゃん、おはよー!よろしくね!」
「あ、そう言えばカルマや渚は呼んでたけど下の名前聞いた事なかったや。ラッキー!」
「……、……ぁ……」
「ちょっと〜、俺にはなんにもないわけ?」
「カルマはなぁ……カルマだし」
「はぁ?」
「真尾さんって、本校舎の時はかかわりなかったけど、こうしてみると小動物みたいだよな!」
「でも、昨日もその前もカッコよかったよ!だけどさ、1人とか2人で殺るんじゃなくて……E組みんなで頑張ろ!」
「……っ、」
「え、ちょ、……な、なんで隠れちゃうの!?」
「「……………ね、〝外〟の世界も案外悪くないでしょ?」」
「そういえば、真尾さんって歌うまいんだね!」
「そうだよ、あれすごかった!また音楽の時間が楽しみだぜ……!」
「あ、私の名前はね……」
「俺も。……話したことねぇし、ちょっとずつな!」
「…………」
「……えーっと、カルマ君?」
「……アミサちゃんがああやって受け入れられるのを見るのは嬉しいけど、……なんかムカつく」
「あー……取られた感じがしてるわけね」
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漫画を、アニメを見ていて思った疑問。
殺せんせーの弱点の一つに猫舌あるはずなのに、あんな大量にアツアツたこ焼きを口入れて平気だったのか?と。
最後の会話で殺せんせー、オリ主、カルマ、渚以外は誰がどのセリフを言ったのか自由に想像してみてください。
二択の時間で一番困ったのは、カルマの暗殺だけにしてしまうとオリ主の出番が消えること。ということで急遽、オリ主主体の暗殺も決行しました!
音楽の時間のあれは、公式設定です(卒業アルバムの時間)。
あ、ちなみにソフィーユさんは英雄伝説碧の軌跡の歓楽街でジェラートを売っている売り子さんです。
NPCですが、ちゃんと名前があるんですよ、探してみてくださいね~!