暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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今回はリニューアル前にはなかった新規のお話

一話を通して片岡さん目線で進みます





9話 理由の時間

片岡side

 

「……磯貝君、ちょっと」

 

「片岡?どうしたんだ?」

 

「あれなんだけど……」

 

 3年生が始まって1週間。2年生の3月から始まったE組で最初から空席だった2つの席が埋まり、その席の2人であるカルマと真尾さんが行った衝撃的な暗殺で幕開けたE組復帰騒動が起きたのはつい最近のこと。たったの2日間で殺せんせーの触手が何本も破壊されたり、自分を犠牲にする暗殺を何度も行ったり、殺せんせーの手入れが凝り始めたり……いろいろあったけど、なにやら思うところがあって雰囲気の変わったカルマと本校舎の時にはあまり関わることがなかった真尾さんのために改めて自己紹介……という形で転校生のように前に立った2人をクラスに迎えて、E組は27人でこの暗殺教室を再始動。そこからさらに1週間ほどたったばかりだ。

 そこまでは、サボり常習犯なくせに学力成績優秀で戦闘(喧嘩)のスペシャリストな天才(問題児)と、頭がよくて大人しいのにあの不意をつく暗殺を仕掛ける度胸のある、まだ秘めたものがありそうな女の子が新しく仲間になった……くらいの認識でよかったはずなんだけど。

 

「……、カルマくん、……あの、……」

 

「んー?……あーね。千葉ー、これお前のじゃない?」

 

「ん?ああ、さんきゅ」

 

「名前書いといてよかったねー」

 

 私と磯貝君の視線の先では、件の真尾さんとカルマ、そして席が近い千葉君が何やら話しているところが見える。多分、真尾さんが拾った落し物を千葉君に渡したくて、カルマを介すことでやり取りを成立させている……ってとこだとは思うんだけど……

 

「基本的に真尾ってカルマか渚と一緒にいるよな。いつも一緒だし兄妹みたいだなーとは思ってたけど……あれがどうかしたか?」

 

「記憶違いだったら悪いんだけど……真尾さんがカルマと渚以外の名前、呼んだの見たことある?」

 

「え、……、……言われてみると……ない、な。……、ん?まさかとは思うけど……」

 

「渚からいろいろあって人との関わりを怖がってるとは聞いてるから、慣れてるカルマと渚を間に挟んでやり取りするのはわかるのよね。それでも、男女問わず一切名前を聞かないなんてこと、ある?」

 

 そう、ここに来て1週間はたっているのに、私は彼女がカルマと渚以外の名前を呼んでいるところを見たことも聞いたこともない。教室にいる以上、必ず誰かと何かしらのやり取りはするはずなのに、だ。今だってそう、多分彼女は拾った落し物の記名を見て『千葉』という名前は分かったはず、なのに彼女は一切千葉君の方を見ることなくカルマを頼った。自分からは話しかけられないから、といったらおしまいなんだけど……一瞬でも視線すら送らないところに違和感がある。

 

 さっき渚と一緒にいた時もそうだ。

 

〝あ、渚と真尾さん、おはよー!〟

 

〝、……〟

 

〝茅野、おはよう。今日も元気だね……なんかあった?〟

 

〝いやー新作のデザート見つけちゃってさー!〟

 

 2人ともが挨拶をされたとはいえ、真尾さんが返事をする前に渚が会話の主導を持っていった。その後も会話をしているのは渚と茅野さんだけで、真尾さんはそれを見ているだけ……でも、混ざりたそうにしているわけでもなく、ただじっと見ているだけというか。

 

「……ちょっと確かめてくるわね」

 

「俺も行こうか?」

 

「ううんへーき。というか2人から聞かれる方があの子怖がりそうじゃない?」

 

「……確かにな。じゃあ任せた」

 

「任されました」

 

 磯貝君から離れ、自分の席でカルマと2人で話しているらしい所へ向かう。彼はいつも通りの飄々とした態度だけど、真尾さんは若干強ばってはいるものの、やわらかい表情を浮かべているようにも見える。そんな所へ話しかけるのはちょっと気が引けるけど……今後のためにも、確認しておかなきゃならない。

 

「真尾さん、ちょっと話しかけてもいい?」

 

「っ!」

 

「あれ、片岡さんじゃん。何、殺せんせーから用事でも頼まれてんの?」

 

「用事は頼まれてないんだけど、まあ、関係してくるかな」

 

「へー……関係してくるってことはクラス運営に関わるかもしれないってこと?自主的に動くとかさすが学級委員って感じだね」

 

 普段通りの口調で話しかけると、真尾さんは大きく身体を揺らして表情を変え、目を不安そうに揺らしながらこちらを見る。そして彼女が口を開く前に……やっぱり、今回もそうだ。誰かが話しかけようとすると真尾さんが声を出す前に渚かカルマが割り込んでくる。それも自然体で先に会話をする形で……

 

「カルマも一緒でいいから質問していいかな?」

 

「……う、ん……」

 

「あー、ごめんごめん、そんな難しい事じゃなくて……もしかして、なんだけど……E組のみんなの名前、分からなかったりする?」

 

「!!」

 

──────ガタタン、

 

 私の問いかけを聞いた瞬間、真尾さんはサッと顔を青ざめさせ、大きく開いた目に怯えの色が浮かび、カタカタと震え出す。それを見たカルマがすぐさま立ち上がって真尾さんの近くへ行こうとする前に、彼女は後ずさるように私から、いや少しでもクラスメイトがいない側へと離れようとしたのか、慌てて立ち上がろうとして足をもつれさせ、椅子を倒しながら床に転んだ。

 急に響いた音に教室にいたみんなの目が集まる……本当に予想外だった、名前がわからないんじゃないかと聞いただけで、こんな反応をするだなんて。

 

「え、真尾さ、」

 

「……ぁ……ぁ、ご、ごめんなさ……っ」

 

「ストップ片岡さん、後にしてくれる?……渚くーん!」

 

「うん、空いてる部屋借りれないか聞いてくるよ!」

 

「よっ、と……ついでに殺せんせーもよろしくー」

 

 慌てて声をかけるも、さらに縮こまるように私から離れようとする真尾さんの頭の上から、着ていた黒いカーディガンを脱いで被せたカルマは、渚を呼んで指示を出す……そのまま彼女を軽い動作で抱き抱えると教室から出ていってしまった。あまりにも一瞬の出来事で、私はもちろん見ていたみんなも何も出来ないままで。

 

「「「………………」」」

 

「ど、どうしよう……私、そんな怯えさせるつもりじゃなかったんだけど……」

 

「いや、片岡は悪くないだろ。もちろん真尾もだけど……ごめん、1人で任せて」

 

「停学明けてから、結構普通に話してる姿を見た気になってたんだけどさ〜……そういえば真尾さんが話してた相手って、カルマ君と渚君と殺せんせーだけじゃない?」

 

「1週間前に前で自己紹介した日も、あの後俺らが話しかけても無言だったもんな……」

 

「あんなに怖がるって……ホント、E組に来る前真尾さんに何があったんだろう」

 

 ……やってしまった。同じ教室にいたし、多分、他のみんなにも私達のやり取りは聞こえていただろう……いきなり起きた出来事に、困惑した空気が教室に流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから次の授業が始まる頃に、殺せんせーと渚だけが教室に戻ってきた。聞けば、真尾さんはパニックを起こしてしまっていたらしく、落ち着くまでは空き教室でカルマが側についているらしい。

 

「渚、どうだ?」

 

「カルマ君が片岡さんに「説明もなく出てっちゃってごめんね〜」、だって」

 

「あーもう、2人に申し訳ない……渚、ありがとね」

 

「ううん。それに……カルマ君はアミサちゃんが心配なのもあるだろうけど、サボれてラッキーとも思ってそうだったからね……カルマ君に関しては申し訳ないも何も考えなくていいんじゃないかな」

 

「それもどうなんだよ;」

 

 遠い目というか、苦笑いで渚が目を逸らしている。上手いことカルマのサボり理由に使われてしまった感があるけど、とりあえず心配なのは真尾さんだ。なにせ、意図したつもりはなかったとはいえ私がきっかけでパニックを起こさせてしまったのだから。

 私が何も言えないでいると、こちらを向き直った渚が頬を掻きながら少し困ったような表情で話し始めた。

 

「みんなに伝えずに僕らが勝手にやってたことだから、この事態を想定できなかった僕らも悪いんだ。片岡さんみたいにクラスをよく見てる人が気づくかもしれないって、全然考えてなかったから」

 

「どういうこと?」

 

「……ちょっとだけ、あの話題を出すにはタイミングが早かったんだよ。アミサちゃん、今みんなの名前と顔を覚えてる最中だったから」

 

「というと?」

 

「殺せんせーにさ、全てを拒絶する前にE組のみんなの事を見て、聞いて、接してからでも遅くないんじゃないかって言われて、アミサちゃんはまだみんなの名前すら知らないって思ったんだって。だからみんなと話す時には先に僕らが間に入って、名前を教えてたんだ」

 

 ……2人とも、結構自然に割り込んでいたけど、そういえば会話の最初に必ず名前を呼んでいた。挨拶されて返事を返す時のように、別に名前を呼ぶ必要が無いときでも、必ず。

 

「多分今回パニックを起こしたのは、2年も同じ学校、同じ学年で過ごしてきたのに、誰のことも分からない事実をみんなに知られて、みんなは自分のことを知っているのにガッカリされるかもしれない、またみんなと違うって目で見られるかもしれないって思っちゃったんじゃないかな。……知ってるでしょ、アミサちゃんが本校舎でなんて呼ばれてるか」

 

「確か……椚ヶ丘の校風を受け入れない異端児って……」

 

「そう。あそこじゃ、周りは敵だらけだったから。ここでも同じように異端な存在だと思われたらって……」

 

「そんなこと、」

 

「ないって僕らは分かってるよ。でもアミサちゃんは違う。……E組に落とされた理由が、理由だから」

 

 E組に落とされたから余計に分かる、ここは本校舎の人達に見下される場所……それを当たり前のように全学年、全生徒が受け入れて、行っていて。真尾さんはそれを1年生の頃から受け入れられなくて周りに馴染めず、2年に上がったくらいから、当たり前の事を否定する、みんなから外れた存在として、小柄なところもあいまって『異端児』と呼ぶ人がたくさんいた。みんな、人と同じであることに安心感を覚えるものであるのと同時に、人と違うものを恐れ、拒絶するものだから。

 落とされた側だからこそ私達は同じ立場、同じ境遇……だから同じ価値観を共有できるしそんな扱いをする人達と違う。……って言いたいけれど、そもそも私達は真尾さんが何でE組に来ることになったのかがよく分からない。だって、真尾さんはテストで名前が貼り出されることもあるくらい成績優秀だ。なのに、暴力沙汰での停学でしょ?喧嘩っ早いことで有名だったカルマはともかく、あの性格で素行不良なことをするような子にはどうしても思えない。ましてやあれだけ真尾さんを大切にしているカルマが自分の喧嘩に巻き込んだとも思えない。

 

 どんよりとした空気の漂う教室で、今まで静かに見守っていた殺せんせーがぽにゅんと触手を合わせる音が鳴る。

 

「それについてですが……本当はアミサさんがE組に慣れてきた頃にやろうと思ってたんですがねぇ。アミサさんの調子が戻り次第、今日のホームルームの時間を使わせてもらいます」

 

「それって、」

 

「先生も、書類上の記録と渚君から聞いた話でしか何があったのかを知りません。しかしみなさんより少しだけ事情を知っているのは確か。とはいえ、又聞きの先生たちが話すのでは、真実から遠ざかってしまうかもしれない……お互いを知るために、彼女をE組で受け止めてあげるためにも、当事者の話を聞きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホームルームの直前、真尾さんはカルマの黒いカーディガンを肩から羽織って、彼の腕にしがみつきながら教室に帰ってきた。下を向いたままだから表情が見えないけど、まだ少し震えてるのは気のせいじゃない……謝りたいけど、また怖がらせたらと思うといきにくい。

 自分の席に戻ろうとした2人を殺せんせーが呼び、教卓の横とその斜め後ろに置いた椅子へ座るように指示をしている。なぜ横並びじゃないのかと思えば、前にカルマが座って真尾さんを少し隠せるようにするためだったみたい。

 

「……で、何を話せって?」

 

「みんなが疑問に思ってることですよ。なぜ、2人はE組に来ることになったのか。アミサさんに何があって1人で行動しようとしないのか……先生も何となく知っているとはいえ、イマイチ情報と事実が矛盾しているように思えるんですよ。片岡さんを意図せぬ加害者にしたくないでしょう?それに彼女を外の世界へ目を向けさせるためにも、受け入れる側が知っておくべき必要な事です」

 

「なるほどね……、アミサちゃん、俺が話すけど、いい?」

 

「……、」

 

 先生とカルマが何か小声で少し言い合ってたけど、彼は渋々って感じで前を向いた。カルマの問いかけに小さく、こくんと、無言で頷いた真尾さんは、黒いカーディガンの前あわせの部分を両手で手繰り寄せて小さくなって座っている。

 

「とりあえず俺がここに来た原因だけど……簡潔に言えば教員室ぶっ壊したからだから」

 

「おい、理由;」

 

「簡潔すぎるし物騒すぎんだろ;」

 

「てか暴力沙汰って……喧嘩じゃないんだ原因;」

 

「んー、喧嘩っちゃ喧嘩なんだけどぉ……正確には、イジメられてた3年E組の先輩を見つけて助けに入ったんだよね、俺が」

 

「「「え。」」」

 

「で、それをアミサちゃんも目撃してて、E組の先輩を味方して気遣った」

 

 

 

 ……………………………………。

 

 

 

「……ん?それで?」

 

「それだけだけど?」

 

 それだけ……?

 

「ちょ、ちょっと待って、カルマの喧嘩の理由……やってることそのものは手を出しちゃってるしアレなんだけど、常識的にはおかしいこと何もしてないじゃない!」

 

「それに真尾がしたことって……」

 

 真尾さんなんて、そもそも手を上げてすらいない。喧嘩にあけくれていて指導対象になった、衝動的なハリ手をしてしまった、みたいな理由をつけられたからだと思ってたクラスメイトは多かったみたいで、2人を見る目が変わっていくのを感じる。

 そんなクラスメイトの反応を見てカルマはだるそうに教卓の上に片肘をついて頬杖をしながら淡々と話していく。

 

「俺がのしちゃったいじめてたヤツが3年A組のトップのやつだったらしくてさぁ……ソイツが受験に失敗したら、喧嘩っ早いカルマ()を管理できなかった、アミサちゃんを校風を受け入れ(更生)させられなかった元担任のせいになる=担任としての評価を落とすことになるってこと……で、E組行き」

 

「「「……」」」

 

……俺らが正しいとか、味方とか言っといてさ、こうなったらさっさと見捨てて……、……生きてても人は死ぬんだなって……

 

 ふ、と目を曇らせて呟くようにカルマが言った言葉が、……多分私達に聞こえてないと思ってる、聞かせるつもりがなかっただろう彼の言葉(本心)が、やけにハッキリと聞こえた気がした。そっか……真尾さんだけかと思ってたけど、自分の味方をしてくれる先生って存在を信じていたのは、信じていた存在に裏切られたのは……カルマも同じだったんだ。

 だからだ、きっと。E組(ここ)に来た時、たった2人で周りを頼らない、無謀な暗殺を2人が繰り返していたのは。信用できない『先生』と信用できない『クラスメイト』と組むことは、あの時の2人にはできなかったんだろう。

 

「俺らのE組堕ちの理由は、暴力沙汰……ってなってるけど、正確には俺だけ。アミサちゃんの場合は、確かに教員室で元担任を睨みつけて反抗的な態度はとってたけど直接的な攻撃自体は俺が止めたから未遂だし、ほとんど厄介払いに近いと思う。結局元担任(あいつ)が自分の評価を守りたかっただけだよ。で、最終的に教員室で暴れてきた。──────はい、コレで全部。満足した?」

 

 ふる、と軽く頭を振った彼は何もなかったかのように話を続ける。もう、さっき一瞬だけ見せた暗い目はどこにもない、いつも通りの普通の普段通りのカルマに戻っている。きっと、カルマは普段からいろんな本心を、野性的な警戒心を、あの飄々とした軽い態度の裏に隠しているんだと思う。

 話し終えたらしいカルマの後ろでは、いつの間にか真尾さんが顔を上げて何故か戸惑った表情でいたけど……話の内容そのものに異論はないんだろう、口を開くことはしない。

 

「……満足っていうか、納得したわ」

 

「だな、カルマも真尾も自分の信じたことをやりとおしただけじゃん」

 

「しかも言い方を変えれば2人とも先輩を、ひいては私達E組を庇ったってことでしょ?これは私達に変わって怒ってくれてありがとうってことじゃない?」

 

「その結果暴れてるカルマ君はどうかと思うけど;」

 

「暴れても暴れなくてもE組転級は確定だったし、だったら要らないもの全部ぶっ壊してやろうと思って」

 

「その変に潔いいところがお前らしいわ;」

 

「ニュルフフフフ……さて、アミサさん」

 

「!」

 

 ケロッと悪びれることなく舌を出すカルマはもう本当に元の調子に戻ってるんだろう。話が終わったとみるやいなや、私を含むクラスメイト達とカルマが好きに言い合い始めた姿を見て、後ろにいた真尾さんは困ったような、困惑するような顔でカルマを、みんなの方を行ったり来たりと視線を動かしている。そこに、ぽむっと触手を真尾さんの頭に置き声をかける殺せんせー。

 

「どうです?E組の中に、あなたを否定するような人はいましたか?」

 

「……いな、かった……」

 

「そうでしょう。あんな経験をしていたら、アミサさんが他人を疑ってかかるのも、拒絶してしまおうとするのも仕方がない。しかし、きちんと向き合ってみると見え方もかわる。……今であれば、人を信じてみるのも悪くないでしょう?」

 

「……うん」

 

 ゆるゆると殺せんせーに頭を撫でられ、小さく返事をした真尾さんは、ゆっくりと立ち上がって……黒いカーディガンをしっかり手繰り寄せ直すと前を向き、私達の方へぺこりと頭を下げた。

 

「……ごめん、なさい。私、みんなが悪いわけじゃ、ないのに……勝手に思い込んで、勝手に怖がって、……避けてた。嫌な気持ち、きっとさせてた……ごめんなさい」

 

 声は小さいままで、たどたどしい口調の謝罪の内容ではあったけど……渚もカルマも介さず、初めて真尾さん自身が自分の口で私達に向けて話してくれた。でも……私達は顔を見合わせる、あの子が謝る必要なんて、ないよね?

 

「謝んなくていいよ、真尾さん」

 

「そうそう、嫌な気持ちになんてなってないから!」

 

「こっちこそ事情が分からなくてどう接すればいいかわかんなくて……むしろ、その時のこと思い出させてごめんね。教えてくれてありがとう」

 

「俺らも余裕もって話しかけてくからさ、ちょっとずつでも慣れてくれよな!」

 

「とりあえずは渚とカルマが絶対動ける時に話しかければいいか?」

 

「じゃない?あとは複数人で囲むと……身長的にも怖いよねきっと」

 

「多分茅野ちゃんと渚が1番体格的には近いからー……」

 

 早速これからどうして行くかを、すでに当事者を横目に勝手に話し合い始めたE組のみんな……今はホームルームの時間で学級を良くするために使う時間だからいいんだけどさ。もう、顔を上げたはいいけど、みんなのノリに既においてけぼりにされてる真尾さんがどう返事すればいいのか分からなくなってキョロキョロしてるじゃない。大丈夫かしら、なんてクラスメイトから真尾さんへ視線を移した時だった。

 

「……はぁ、これ俺らの意見聞いてなくねー……?当事者俺らなんだけど」

 

「……、…………ふふ」

 

「「「!」」」

 

 ……今、笑った。今の今まで、E組ではどこか強ばってぎこちない笑顔や表情の真尾さんしか見た事がなかったのに……へにゃ、と固い表情を崩して……やっと、この場所で彼女の本当の笑顔を見た気がする。

 ただそれが同い年にしてはあまりにも幼いというか、可愛いものだったからか、今の今までしゃべっていたみんなが一気にそちらを向いて黙って注目してしまい……いきなり静まり返って何が起きたのか分からなかったらしい真尾さんは慌ててカルマの背中に完全に隠れてしまった。もったいない……でもまだ、そんなすぐには慣れないよね、ちょっとずつ関係は作っていこう。

 改めて、今日から3年E組は本当の意味での再出発。次からの暗殺では、彼女の力も一緒に借りていこう。私も、謝って仲直りして……仲良くなりたいな。

 

 





「あ、あのね……片岡、さん。逃げちゃって……ごめんなさい」

「ううん、私の方こそいきなり踏み込んじゃった。それに嫌なこと思い出させてごめん。でも教えてくれてありがとう」

「!……うん」

「クラス委員とか関係なく、カルマと渚に頼れない時があればいつでも来ていいからね。もちろん私もたくさん話したいし……それに、真尾さんと仲良くなりたいって人はこのクラスにたくさんいるから」

「……、私、変、じゃないの……?」

「こう言っちゃったら悪いんだけど、今まではE組じゃない立場だったから、無関心だった。でもここに来たからこそ理不尽に感じることがたくさんあって……真尾さんが否定していた考え方は、こういう事だったんだなって実感できてるからね」

「……、……」

「全然変なんかじゃないよ。むしろ、最初からその意志を貫き通した真尾さんはすごいと思う」

「……ありが、と……」

(この子、感情表現まっすぐだから……失礼だけど小さい子を相手にしてるみたい。照れてるんだよね、可愛い)




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何話か先の『集会の時間』で若干触れていた内容をここに持ってきました。
リニューアル前の話では、オリ主が人を怖がる=E組もまだ怖い、な場面がなく、いきなり受け入れられる存在のようになっていたので、1度ここでちゃんと話を組み直してみました。

ビッチ先生加入前に入れたこともあって、また今後の内容に変更が出てくるかと思います。
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