12月25日、カルマ、Happy Birthday!
番外編・クリスマスの時間
中学1年生の冬のこと。カルマくんと渚くんと出会って、5ヶ月くらいたった日のことだ。日が暮れるのも早くなりだいぶ寒くなってきて、気づけば制服の上からコートを羽織ってマフラーを巻いていなければ耐えられないくらいの気温になっていた。いつものように3人で帰る通学路……いつもの街がどこか華やかで、キラキラした飾りで彩られる時期でもある。
「はー……わ、もう息真っ白だ……」
「寒いからね……くしゅっ」
「渚くん、だいじょぶ……?」
「ん、平気だよ、ありがとアミサちゃん……それにしても」
「「なんでカルマくんはフツーなの……?」」
鼻を真っ赤にして手袋をした手をすり合わせても寒がる私と渚くんの隣には、黒いコートを羽織ってマフラーもして息も真っ白なのに平然としてるカルマくんが歩いている。体を縮こまらせて寒がる私たちを横目にまっすぐと姿勢よく歩く姿は……大人だなぁ……同い年のはずだけど。
「俺も寒いよ?ま、そう見えるのは冬生まれだからじゃないの」
「そんなこと言ったら、私だって冬生まれだよ……」
「そういえば、2人って誕生日いつなの?僕は7月20日だけど」
「夏真っ盛りだね……」
「ん、俺?今日」
「「今日!?」」
あれ、今日って確か……。慌ててスマホを取り出して日にちを確認しようとしたけど、手袋をしたままじゃ上手く電源がつけられずに私はワタワタしていて……見かねたらしいカルマくんが私の手からスマホを抜きとって電源を入れてくれた。返してもらったスマホの画面には、イベントとか記念日になると変わる画像を待ち受けに設定していたから、ひょこりと現れた赤い服に白いヒゲの人と茶色の動物が表示される。
「12月25日……カルマくんの誕生日ってクリスマスだったんだ……」
「そ。俺の誕生日ってクリスマスと同じ日だからさ、毎年誕生日もクリスマスもごっちゃにされるんだよね。今年は親いないからどうなることか……」
「あ、そっか。同じ日だと誕生日のプレゼントもクリスマスプレゼントも一緒にされるんだね……」
「そゆこと」
今日が誕生日……もう少し早く知ってれば何かプレゼントの用意ができたのに……ちょっとだけムッとしていた時に2人の会話に違和感を感じた。なぜ、プレゼントが一緒になるのだろう、と。
「……?なんで?」
「なんでって……」
「だって、誕生日は家族とかお友だちからもらうけど、クリスマスはサンタさんでしょ?」
「「……………………」」
プレゼントする人が違うのだから、一緒にされることなんてないはずなのに何を言ってるんだろう……そう思って質問したのに、2人はありえないものを見る目で私を見ながら黙ってしまった。
「……アミサちゃん、一応聞かせてね。クリスマスプレゼントって誰にもらってるの?」
「誰って……サンタさんだよ?」
「…………うん、そうだね……、
(……カルマ君、アミサちゃん普通にサンタさんだよって言ったよね……)」
「(……この様子だとこの子、サンタクロースの存在信じてるね)」
「(……中学1年生で純粋というか、素直というか……家族の人、大変だなぁ)」
「(……渚君、これ、真実は黙っておいた方が面白いよね?)」
「(面白いかどうかで決めちゃダメだよ!?)」
何を当たり前のことを聞いてくるのかとは思ったけど、聞かれたからには素直に答える。……答えたら、渚くんとカルマくんが2人だけでこそこそお話してて、どうしてこんなことを聞いてきたのかまではわからなかったけど。
それよりも今の問題は、カルマくんの誕生日だ。年に1回のお祝いの日なのに……、家族は今年いないって言ってたけど何かしらのお祝いはあるだろう。だけど友だちとして私から何もしないのは私が嫌だし、知ったからには何かしたい……だけど今から準備できるものなんてたかがしれていて……そこでふと思いついたものがあった。
「あ……そうだ。ねぇ、帰りに私の家に寄ってもらっても、いい……?」
◆
ちょっと待っててね、と言い残して玄関を入った所に2人を残して、私は部屋へと上がる。最初は寒いし2人も中に入るように言ったのだけど、さすがに今日は家族で集まるだろうから入るわけにはいかないって断られてしまった……この家、他に人いないのだけど。あんまり待たせるわけにはいかないから、目的のものを手に取るとすぐに玄関へと戻る。
「あ、おかえり」
「た、ただいまです!あの、」
「……ねぇ、アミサちゃん、この家ってもしかして1人で住んでたりするの?」
「そうだけど、どうして?」
すぐに渡してしまおうとしていた私は遮るようにされたカルマくんからのいきなりの質問にキョトンとしてしまった。家族のことは話題になったことがあんまりないし、気にしたこともなかったから話してなかったはず……さっきも結局家には人がいないことを伝えてなかった。疑問をぶつけてきた彼が見ていたのは靴箱……あ、さっき慌てて靴を脱いで入れたから、靴箱の扉が空いたままになって中が見えてるんだ。
「靴箱にも、玄関にも、アミサちゃんのものだろう靴しかないなって思って。ちょっと気になってさ」
「……前に私が外国育ちってお話はしたでしょ?そこから1人でこっちに来てるの。たまに家族とか、同僚の人が来てくれるけど……ほとんど一人暮らしかな」
「…………そっか。ごめん、いきなり変なこと聞いて」
「だから、そんなとこ見てないで待とうって言ったのに……それで、僕達をいきなり家に呼んでどうしたの?」
「……あ、うん。コレなんだけど」
できるだけ自然な笑顔に見えるように笑って伝えれば、一瞬カルマくんは目を見開いて……ふわっと笑って、少しだけ眉を下げて謝ってきた……バレたかな、ちょっとだけ寂しいって思ってたの。上手い具合に渚くんが話題を戻してくれたから、それに乗っかる形で部屋から持ってきた物を手のひらの上に出してみせる。
「これって……オーナメント?」
「うーん、なんていうか……これ『ホワイトストーン』って言ってね、前にお姉ちゃんに会うために里帰りした時にね、ビーチで拾ったの。ほとんどのホワイトストーンは長い時間をかけて砂になっちゃうんだけど、時々こうやって大きさがあって綺麗な形で残るものがあるんだって」
「へえ……じゃあ、それを見つけたらだいぶ運がいいってわけ」
「丸くて真っ白で、宝石みたい……石なんだよね?」
「うん。だけど大事にしてると持ち主の残留思念……想いのこもった珠になるらしいんだ。それで……はい」
持ってきたホワイトストーンを差し出し、反射的に手を出した2人の手のひらに乗せた。
「え、」
「これ……」
「クリスマスにピッタリなんじゃないかなって。
……渚くん、メリークリスマス!
カルマは、お誕生日おめでとう!
2人とも、大好きです……!」
準備したわけでもなく、家にあったものではあるけど……これは私にとって大事な宝物の1つ。だけど、大切な人に渡すものとしてはうってつけなんじゃないかって思うんだ。1人で寂しかった私にできた、初めて大切だって思えた存在……感謝を表すにも丁度いいかなって。……放っておいて、ただの置物としてホコリをかぶってしまうよりいい気がしたし。
「ありがとう、大事にするよ!」
「…………」
「あ、あの……やっぱり、こんなのじゃ……誕生日のプレゼントにはならないかな……?」
すぐに嬉しそうにお礼を言ってくれた渚くんとは違って、カルマくんは手の中のホワイトストーンをじっと見つめて固まってしまっていた。やっぱり、誕生日のプレゼントがただの石、だなんて失礼すぎただろうか。そう思って申し訳なくなっていると、彼は両手でそれを大事そうに握り締めて、
「!」
「……ありがと、最高の誕生日プレゼントだよ」
……意地悪とか、いたずら好きな笑顔とはまた違った、初めて見る少しだけ照れたようなはにかんだ笑顔でお礼を言ってくれたんだ。思わずその顔をじっと見つめてしまって、カルマくんには不思議そうに首を傾げられてしまったけど。
……その喜んでくれた表情に、私はあげてよかったという気持ちとともに……なんだか胸の奥があたたかくなるような……そんな不思議な感覚も一緒に感じていた。
「あれ、そういえば……結局アミサちゃんの誕生日っていつなの?」
「……私、言い忘れてたっけ?」
「……俺の誕生日、そんなに衝撃だった?」
「そのせいだよ」
「そのせいかな。……私は2月29日だよ」
「へえ、確かに冬本ば、……え」
「う、閏年以外誕生日来ないってこと……?」
「うん、だから私って今、ホントは3歳ってことになるのかなー……?」
「これ、ホントに綺麗に石だね。誕生日じゃない僕までもらっちゃったけど」
「そうだね、…………はぁ」
「カルマ君?」
「アミサちゃんの誕生日、まともに祝えないじゃん……」
「……日にちずらすとか、2月28日の日付が変わった直後とかならいいんじゃない?」
「えー……まぁ、それ以外の日で思い出作れるようにすればいいか……でもプレゼント……んー……」
「……(カルマ君、もしかして……)」
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カルマの誕生日、中学1年生バージョンでした。
今考えると、渚以外誕生日が物凄いことになってる。カルマはクリスマス、オリ主は閏年って。カルマの誕生日が衝撃だった上にさらに爆弾を落とされて固まるの図。
渚はこの時に、カルマがオリ主に向ける好意を察してます。でも、カルマ本人がまさか無自覚だとは思ってもおらず……結果、あの修学旅行での一件に繋がるわけです。何話かでのあとがきで書いた、『渚は悟っている』というのは、実はこの時からでした。
ホワイトストーンは、碧の軌跡で出てくるアイテムで、最終的にはファンにとって結構重要なアイテムとなります。クリスマスの番外編を書く気になったのは、このアイテムの存在を思い出したからだったり。
残留思念……何かで使えないかな。