暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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13話 テスト準備の時間

 

渚side

 5月中旬。今日も外は太陽の光がさし、いい天気の晴れた朝。いつも通りE組教室の中で、僕達は授業を受けるために席に着く、僕達の前には……

 

「さて、みなさん」

 

「「「始めましょうか!!!」」」

 

 

 

 

 

「「「……いや、何を?」」」

 

 えーーーーーっと、なんて言えばいいのかな……見たままいえばいいなら、頭に五教科のハチマキを巻いた殺せんせーが大量発生していた。よくよく見れば実態、というか残像が残って声がぶれて重なって聞こえるとはいえ、殺せんせーが別個体として分裂したというわけではなくて……あの凄まじいスピードを駆使して分身を作っている……ということなんだと思う。数もすごいんだけど……ついでに移動するシュバババババッていう音もかなりすごい。

 とりあえず教卓の前の方に分裂した殺せんせーが集まってるのを見たあと、なんとなしにみんなの反応を見てみようとぐるりと教室を見てみれば、後ろの席でアミサちゃんが目をぎゅっと閉じたまま両手で耳を塞いでいて……うん、そうだよね、やっぱりうるさいよね;

 

「学校の中間テストが迫って来ました」

 

「そうそう」

 

「そんなわけでこの時間は」

 

「「「高速強化テスト勉強を行います!」」」

 

「「「うわぁっ!?」」」

 

 殺せんせーの分身が揃って宣言した途端、この教室にいる27人の机の近くに分身が1人ずつ現れた。その分身は1人1人持っている参考書やハチマキが違う……なるほど、みんな苦手教科や学ぶべき内容が違うからそれぞれ見た目から分けてるんだ。変なところで細かいなぁ……ちなみに、僕の前には理科のハチマキを巻いた殺せんせーがいる。

 

「先生の分身が1人ずつマンツーマンで」

 

「それぞれの苦手科目を徹底して復習します」

 

「下らね……ご丁寧に教科別にハチマキとか……って、何で俺だけNARUTOなんだよ!!」

 

「寺坂君は特別コースです。苦手科目が複数ありますからねぇ」

 

 4月から毎日のように見てきてるけど……殺せんせーは、どんどん速くなってると思う。

 

国語6人

数学8人

社会3人

理科5人

英語4人

……NARUTO1人。

 

 ちょっと前まで4、5人ぐらいの分身が限界だったのに……今じゃクラス全員分(27人分)だ。しかも同じ姿で分身するんじゃなくて、27通りの見た目に分けて、27通りの勉強を教えて……って器用さまで発揮しているとか。

 

「ぐにゅあ……」

 

「うわっ!?」

 

 突然、ボクの目の前に立っている殺せんせーの顔の右半分が、真ん中あたりでぐにゅんと内側にえぐれるように変形した……!?な、何が起きたの?……って、僕のところだけじゃなくて全部のせんせーが変形してる!?

 

「急に暗殺しないで下さいカルマ君!!それ避けると残像が全部乱れるんです!!」

 

「ふふ……」

 

「……反対刺したらどうなるの?……あ、ひょーたんみたい」

 

「アミサさん、悪ノリしないでください!」

 

「だって殺せんせーうるさい……」

 

「すみませんねぇぇぇ!」

 

「うるさいー……」

 

 ……原因は、いつものように気になったことにはとりあえず手を出してみるカルマ君と、最近「E組でも、どこにいても、私は私のままでいてもいいんだって分かった」と、どこかふっきれた様子で、ちょっと……いや、かなりカルマ君に影響を受けちゃって、いたずらっ子な面が見えてきているアミサちゃんだった。いや、今現在に関しては、ただただうるさいことに対しての抗議の気持ちだけでカルマ君の動きに乗ったんだろうな、これ;

 

「ていうか、1つのちょっとした変形にここまで影響されるなんて意外と繊細なんだこの分身……でも先生こんなに分身して体力もつの?」

 

「ご心配無く。1体外で休憩させていますから」

 

「それむしろ疲れない!?」

 

 ……この加速度的なパワーアップは……1年後に地球を滅ぼす準備なのかな。なんにしても、僕達殺し屋にはやっかいな暗殺対象であって……

 

「……と、ここまでは分かりましたか?渚君」

 

「……はい」

 

 ……テストを控えた生徒には心強い先生だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は最近、E組の人たちだけであれば、渚くんとカルマくんにずっと引っ付いていなくても、前みたいに1人で行動できるようになってきた。といっても自分から行くのはまだ無理なんだけど……それでも話しかけられたら会話を続けられるようになったし、女の子だけのおしゃべりの輪に入れてもらって、いろんなお話を聞いて楽しめることが増えた、と思う。近いうちに女子会……という女の子だけの集まり、だったっけ?結構前に茅野さんと約束したものにも挑戦予定だ。なんの気兼ねなくいっぱい楽しむ……そのためにも、今回のテストでしっかり全力を出しておきたい。

 

 放課後の教室掃除を終え、私は帰る前に殺せんせーに出された課題プリントを見てもらおうと教員室へ向かった。さっき掃除の時に教員室へ入っていくのを見たから、多分いるはず……と、教員室の前まで来ると見慣れた人影が。

 

「あれ、渚くん……?」

 

「アミサちゃん」

 

「どうしたの?こんなとこで、」

 

 入らないの?と言う前に、静かに、と人差し指を立てられた。慌ててよく分からないまま両手のひらで口を覆って何度か頷いてみせると、渚くんは静かに教員室の中を指さした。

 

 そこには、先生達と……あまり会いたくなかった人が、いた。

 

「率直に言えば、ここE組は……このままでなくては困ります」

 

「……理事長、せんせ……」

 

 思わず、口からこぼれた名前。慌ててもう一度口を押さえて、私も渚くんの下に潜り込み覗き込むように扉の隙間から彼らのやりとりを見ることにした。

 

「……このままと言いますと成績も待遇も最底辺という今の状態を?」

 

「はい。……働き蟻の法則を知っていますか?どんな集団でも20%は怠け、20%は働き、残り60%は平均的になる法則……私が目指すのは5%の怠け者と、95%の働き者がいる集団です。

──『E組のようにはなりたくない』──

──『E組にだけは行きたくない』──

95%の生徒がそう強く思う事で……この理想的な比率は達成できる……」

 

「なるほど合理的です。それで5%のE組は弱く、惨めでなくては困ると」

 

 E組差別の元凶とも言える理事長先生の考え方。私が中学1年生の時に浅野くんと話してから、E組に転級させられる前の約1年半……彼に何度もA組へ勧誘されていた頃、何回か、理事長先生から理事長室へ直接呼び出されたことがあった。その時に何度も聞かされた、この、E組の存在理由にこの待遇の理由……これがどうしても嫌いだった。

 言ってることそのものは理解できるし、やりたいことも分かる。実現できるならどんなにすごいことかって、確かに思わないでもない。でも……私たちは、E組にいるみんなは必ずしもナマケモノなんかじゃない。……確かに落ちこぼれなところはあるかもしれない、けど、毎日必死に頑張ってる。それに、このE組にいるのは、全員が187人いる3年生の下位27人というわけじゃない(・・・・・・・・・・・・・・)。むしろ、本当の下位は本校舎に残っている……だからこそ、弱く、惨めでいる必要なんてあるはずないのに。

 

「今日D組の担任から苦情が来まして……『うちの生徒がE組の生徒からすごい目で睨まれた』『殺すぞ』と脅されたとも」

 

「…………;」

 

「……あの人たち……」

 

 それ、多分私と渚くんのことだ、よね……。明らかに事実をねじ曲げて伝えられている上に、双方の意見を聞く気がまるでないそれに、私は唇を噛んで湧いてきた怒りを押し込めた。

 

「暗殺をしてるのだからそんな目つきも身に付くでしょう……それはそれで結構。……問題は、成績底辺の生徒が一般生徒に逆らう事。……それは私の方針では許されない。以後厳しく慎むよう伝えて下さい。

……あぁそうだ、殺せんせー」

 

「1秒以内に解いて下さいッ」

 

「え、いきなりーッ!?」

 

 理事長先生が私たちの見ているこっちに来る……と、見せかけていきなり振り返ると殺せんせーに向かって何かを投げた。あれは……知恵の輪?大慌てで受け取った殺せんせーは凄まじいスピードで、解きにかかったけど……

 

「あ、ちょ、から、からまっ!?」

 

「「(なんてザマだ!?)」」

 

 ……殺せんせーはいきなりのことにはテンパる、それは私とカルマくんの暗殺の時にも証明されていた。見事に自分で自分の触手に絡まって床で動けなくなって暴れている殺せんせーを見て、私と渚くんは呆れるしかなかった。

 ──────その光景を見た後、静かに私は渚くんの近くからそっと離れて……そして、遮蔽物の何も無い真っ直ぐな廊下の中で、()()()()()

 

 

 

 

 

渚side

 

「……噂通りスピードはすごいですね。確かにこれなら、どんな暗殺だってかわせそうだ。……でもね殺せんせー、この世の中には……スピードで解決出来ない問題もあるんですよ」

 

 理事長先生は、いったいなにを考えているのだろう。殺せんせーなら、何が起きてもどうにかしてしまいそうな気がするけど……その殺せんせーの十八番であるスピードで解決出来ない問題……それが、何かあるというのだろうか。

 

「では私はこの辺で。おや?…………やあ!中間テスト期待してるよ、頑張りなさい」

 

 そのまま考え込んでしまい、理事長先生が教員室を出ようとしていたことを、僕は一瞬忘れていて。扉を開けられたのに気づいて慌てて扉の前から避け、道を開ける……ふと、理事長先生と目が合うと、笑顔で激励された。とても乾いたその「頑張りなさい」の一言は……一瞬で僕を殺せんせーの情報を収集する暗殺者から、エンドのE組へと引き戻した。

 ──ところで、ふと気づく。

 

「……あれ、……アミサちゃん…?」

 

 僕のすぐ近くに、確かに今の今までいたはずの彼女の姿が、いつの間にか消えていたことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ……理事長、先生」

 

「………?……あぁ、君もまだ校舎にいたんだね。どうかな、この校舎での生活には慣れたかい?」

 

 理事長先生が教員室を出て、渚くんに声をかけていくのを見送って、私は旧校舎を出ていく理事長先生を追いかけた。……わざわざこの校舎まで、しかも理事長先生自らが足を運んでここへ来た、その理由を知りたくて。特に全校集会の後に、ここへ来たことになにか意味がある気がしたのだ。

 先生たち(烏間先生たち)では聞き出すのは無理でも、一生徒である私なら……それに仮にもA組に、直接理事長先生に勧誘されたことのある私なら、何か変わるかもしれない。それに……私だって、何かみんなの役に立ちたい。……だから信用出来ない人に1人で会う恐怖を我慢しながら追いかけたのだ。少しでも、情報を引き出すために。私の思いを伝えるために。

 

「……はい。ここは……今までと全然、違う。まだ慣れない、し、これからも、慣れないかも、しれない。だけど……今では、私が私でいられる場所、だと思ってます」

 

「そうか、それはそれは────残念だ。

……惜しいものだな……私達は何度も君が欲しいと声をかけたというのに、君は自分から最底辺へと堕ちるとはね」

 

「……理事長先生は、E組のみんなが、底辺だって……言うんですか……?」

 

「もちろん。この学校はいわば社会の縮図……本校舎の選ばれたA組とは違い、E組は下にいなければならない。そして上位のものが下位のものを指導するのもまた教育の一環なんだよ」

 

 E組は、こんなにいい場所なのに……理事長先生はここを下に、ううん、今より更に底辺に落と(誰もが敬遠する場所に)したいんだ……E組を使って、その他大勢に発破をかけ、もっと底にいる(E組より下の学力の)人たちをそうとは思えない場所までもち上げるために。その為に、その為だけに、変わろうとしているE組が上がってくることを許さない。……さっき教員室で話していたことを裏付ける話を聞くことが出来た、それだけでも十分な収穫だし、ここで離脱してもいいんだけど……あえてもう1つ、私の疑問もぶつけてみる。

 

「……この前の全校集会……あれが終わったタイミングでここに来たのは……それは、忠告をするため……ですか?」

 

「……何故そう思ったのかな?」

 

「……私と渚くんが、本校舎の生徒に反抗したから、です。そうしたら今まで動かなかったあなたが動いた……国からの要請とはいえ1か月近く、人外の得体の知れないものが自分の管理する生徒のそばに居たのに。きっと他にも理由があるとは思います、けど……今までのE組の在り方を否定する行動を、初めてとったのは……あの時の、私たち、だから」

 

「…………そう、よく気がついたね、流石だ、君は本当に周りをよく見ている(ミている)。流石、私がA組に相応しいと見込んだ情報処理能力だ……なら、もう分かるだろう?私が何を言いたいのか。エンドのE組が普通の生徒を押しのけて歩いていくなんて……あってはならない事なんだよ」

 

 ……きっと、きっかけに過ぎないだろうけど、私たち(私と渚くん)のせいで今まで理事長先生が描いていた、完璧に支配されて正常に動いていた歯車に歪が生まれた……それを今後、修正する(元に戻す)ということなのだろう。

 ……でも、私にとってのその歯車は、元々正常に動いている『ように見えていただけ』だった……角度を変えれば歯車の歪さは元々見えていた。────だから、私の思いをもって対抗する。

 

「……私は、ここに来るまでは、人を信じることが怖かった。でも、世界を広げるきっかけがあったから……、信じることを、教えてもらった。私にも、居場所ができた。……本校舎では絶対に手に入らなかったものを、ここでたくさん、もらいました」

 

「……ふむ」

 

「……ただ、上位が偉くて下位が惨めなんて、そんな一言でまとめられないものが、ここに、この教室に、たくさんあるんです。……だから、私はあの時に反抗しました。……私は、負けま、……負けたく、ないからっ」

 

「……ならば、思い知らせてあげよう。殺せんせー共々、このE組校舎にいてはどうにも出来ないことがあるのだということを」

 

「……っ、失礼、します!」

 

 私は理事長先生に背を向けると、旧校舎に向けて(元来た道を戻るように)走った。……もう私は、理事長先生(慣れない人)と一緒にいるのは、1人で耐えることは、限界だったから。……だから、最後の言葉の意味を……聞き返すことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────くるしい。息がおかしい。でも、あと少し、

 

 ────ガラッ

 

「はぁっ、はぁっ、っ、はっ、はぁっ……か、ヒュッ、」

 

「あ、アミサ!?あんたそんなに息を荒らげてどうしたのよ!」

 

「……これは、ストレス性の過呼吸か!?」

 

「……!アミサさん、落ち着いて……ほら、ゆっくり吸って……吐いて……えらいですねぇ」

 

 理事長先生の前(気を張りつめ続ける場所)から、何とか離れたくて……安心できる何かに、すがりたくて。今、生徒がほとんどいない旧校舎で、私が唯一行ける場所は殺せんせーたちが集まる教員室しかなくて……気がついたら、私はノックもしないで中に駆け込んでいた。

 入ってすぐ崩れるように膝をついた私が、ただ走ってきたせいで息が荒いのではなく、トラウマから来る過呼吸に近いと判断した烏間先生の言葉に、すぐさまその辺にあった紙で作った紙袋を私の口に近づける殺せんせー。そのままゆっくりと私の背中を触手で撫でながら、呼吸を合わせる合間に問いかけてきた。

 

「もしや、……アミサさん、理事長先生と?」

 

「……は、、……ひゅ、ぅ、、り、……理事長せんせ、……みんなを底辺、て……でも、私、……やだから、言い返し、て……でも……っ」

 

「大丈夫です。先生たちはちゃんと聞いてます。無理やり話さなくていい……言えることだけ、ゆっくり……」

 

「、ん、……私、たちの、せいで……せんせ、の……歯車を、壊しちゃったから……元に、戻そうとしてるの、」

 

 だんだん、落ち着いて来た私は、さっき話したことを断片的に伝えていく。理事長先生がE組を底辺だと言って、本校舎の底上げを謀っている事。今のE組を否定されることが、我慢できなかったこと。このタイミングで理事長先生がせんせーたちに会いに来たのは、私と渚くんの在り方が理事長先生の方針に合わないために忠告をするためだということ……

 

「あと、E組校舎にいてはどうにもならないことで、思い知らせる……って」

 

「よく、あの巨大な存在から、そこまでの言葉を引き出しました。すばらしい、これはきっと君だからこそできたことでしょう……ここに来てからアミサさんは成長しています。ですが、まだ1人で立ち向かう必要はないんですよ」

 

「……でも、……」

 

「先生、さっき、アミサちゃんが……!」

 

「おや、渚くん丁度いいところに。アミサさんを送ってあげてください……あぁ、それとアミサさん。カバンの中のプリントはチェックしておきましたよ」

 

 これではただ、殺せんせーたちが聞いた話をもう一度繰り返したに過ぎない……役に立てなかったどころか、こうして過呼吸なんて起こして迷惑までかけてしまった。そう、謝ろうとしたところで、渚くんが教員室へ走り込んできた。途中で渚くんとすれ違った気もしてたけど、気のせいではなかったみたいだ。

 紙袋を当てられて座り込んでいた私を見て、なんとなく察してくれたのだろう……慌てて近くまで来てくれた。やっぱり、渚くんの側は落ち着く……私が無条件で頼れる人……差し出された手を握り返しながら、改めてそう思った。そのまま渚くんの手で立たせてもらい、殺せんせーたちに見送られながら、私たちは帰宅することになる。

 

 

 

 

 

「……ねぇ、烏間……気付いた?アミサが理事長から聞いた、引き出した情報(私達では聞けなかったこと)……」

 

「あぁ……先程理事長が言っていた、スピードで解決出来ない問題は……『E組校舎にいてはどうにもならない事』である可能性が高い……この学校では、彼の作った仕組みからは逃げられない。例えお前でもな……」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございますみなさん」

 

「今日は先生、さらに頑張って増えてみました」

 

「「「さぁ、授業開始です!!」」」

 

 ……せんせー、増えすぎじゃないですか……?昨日の段階では生徒1人につき1人の殺せんせーがついてる形だったのに、今日は1人につき4人の殺せんせーが生徒に張り付いて教えていた。人数を増やすことに力を使っているからか、残像はかなり雑だし……なんか変なキャラクターが混じってる気がする(それでもハチマキは付けている)。

 

「ど、どーしたの殺せんせー?なんか気合い入りすぎじゃない?」

 

「んん?そんなことないですよ」

 

 ……もしかして、昨日話してた『スピードで解決出来ない問題』を……あえてスピードで対抗しようとしてる……?私は「もうちょっと!あ、ついでにこっちもやっちゃいましょう」とか言ってどんどん進めていく殺せんせーの指導を受けながら、昨日を思い返していた。

 

「うぅ……やっぱり、うるさい……」

 

「「「「それでもペンを動かすアミサさんはえらいですねぇ!……にゅや?」」」」

 

「……?」

 

「「「「アミサさん、そのノートは……?」」」」

 

「え、……あ、あれ?ごめんなさい、今理科の勉強のはずなのに、」

 

「「「「いえ、それはいいんですが……、……」」」」

 

 

 

 ──────キーンコーンカーンコーン……

 

 

 

 チャイムがなると同時に殺せんせーは全ての分身をやめ、教卓の近くで溶けながらうちわで扇ぎ始めた。顔を真っ赤にして、荒い息で、立ち上がれないようにも見える。

 

「ぜー、ぜー、ぜー…」

 

「……流石に相当疲れたみたいだな」

 

「どうしてそこまで先生をしようとするのかねー?」

 

「……ヌルフフフ、全ては君達のテストの点を上げるためです。そうすれば皆さんは殺す気も失せ、私の評判を聞いて巨乳女子大生も来るでしょう。先生には、良いことずくめです」

 

 えっと、殺す気が失せることはありえるかもしれないけど、女子大生って……やっぱり殺せんせーの好みはそういうのなんだ。……まず国家機密なんだから、私たち以外に知られてないし(知られちゃいけないし)、ありえないと思うけど。

 

「……いや、勉強なんてそれなりでいいよな」

 

「うん、なんたって暗殺すれば賞金100億だし……100億あれば成績悪くても別にねぇ…」

 

「にゅやっ!?そういう考えをしてきますか!?」

 

「俺達、エンドのE組だぜ?テストなんかより暗殺の方がよほど身近なチャンスなんだよ」

 

 ……今の環境でも明るく過ごしているように見えるクラスメイトたちだけど……やっぱり、みんなの中には『エンドのE組』という負の思いが根付いている。一応は本校舎復帰の救済措置(テストで学年順位50位以内)が用意されている……だけど厳しすぎる環境では、何をやっても這い上がることなんてできない……そういった劣等感が……

 

「……なるほど、わかりました……今の君達には暗殺者の資格はありませんね。……全員校庭へ出なさい。……あぁそれと、烏間先生とイリーナ先生も呼んでください」

 

 そういうと顔に暗く大きなバツを描いたまま、外に出ていってしまった殺せんせー。暗殺をするように……自分を殺すように言ったのは殺せんせーなのに、今の私たちには暗殺する資格がないと言い出す……いきなりの事に、私たちは困惑するしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、いきなり呼び出してなんなわけ?」

 

 校庭へ出ると殺せんせーは、朝礼台やサッカーゴールなどのグラウンドに置いてある大きな器具を端の方へと移動させていた。イリーナ先生たちと迎えに行った片岡さん、そしてE組のみんなが全員集まったことを確認すると、作業をしながらも殺せんせーは話し始める。

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺います。あなたはいつも仕事をする時……用意するプランは一つだけですか?」

 

「……?……いいえ、本命のプランは思った通りに行くことの方が少ないわ。不測の事態に備えて……予備のプランをより綿密に作っておくことが暗殺の基本よ。ま、あんたの場合規格外すぎて予備のプランが全部狂ったけど。見てらっしゃい、次こそ必z

「無理ですねぇ……」

ぐ……っ!!!」

 

「では次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教える時……重要なのは第一撃だけですか?」

 

「……第一撃はもちろん最重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では、第一撃は高確率でかわされる。その後の第二擊、第三擊を……如何に高精度で繰り出すかが勝敗を分ける」

 

 ……結局、何が言いたくて私たちを外へ連れ出したのだろう。でも殺せんせーが意味の無いことをするはずがない。

 ……せんせーは、何を聞いた?それに先生たちはなんて答えた……?……イリーナ先生は、一つのことに頼らないで予備こそ念入りには準備すること……烏間先生は、最初に全てをかけないで如何にして次を撃つかが大事だってこと……、……もしかして、

 

「先生方がおっしゃるように、自信を持てる次の手があるから自信を持って暗殺者になれる。……対して君たちはどうでしょう?」

 

 校庭から障害物になるものをどけた殺せんせーは、校庭の中心でくるくると回り始めた……くるくるくるくる……そして、だんだんと空気の流れができていって……

 

「「俺らには暗殺があるからいいや」……と、考えて勉強の目標(ゴール)を低くしている。それは、劣等感の原因から目を背けているだけです。もしこの教室から先生が逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君たちには、E組の劣等感しか残らない。そんな危うい君たちに……先生から警告(アドバイス)です」

 

 

第二の刃を持たざる者は、

暗殺者を名乗る資格無し!!

 

 いつの間にか大きくなっていた空気の塊は、大きな竜巻を起こすまでに成長していた。あまりの風の強さに前は向けないし、スカートを押さえないといけないしで大変な目に……え、竜巻(これ)、本校舎にも見えちゃってるんじゃ……!?

 

「ひゃ、」

 

「わ、」

 

「っとと……っ、2人とも、大丈夫っ?」

 

「……う、うん……」

 

「ありがと……」

 

 近くにいた渚くんが、強風に負けて倒れそうになった私と茅野さんを支えてくれる。渚くんには悪いけど、そのまましがみつかせてもらいながらゆっくりと静かになっていく校庭を、だんだん緑の少なくなっていくグラウンドを見つめる。

 

「……校庭に凸凹や雑草が多かったのでね、少し手入れしておきました」

 

 砂埃が落ち着いた頃には、あの雑草だらけで石が見えていた凸凹の校庭が平らになり、いつの間に引いたのか陸上用のラインまで引かれていた。……心なしか、最初に避けていたサッカーゴールのサビや汚れもきれいになっている気がする。

 

「先生は地球を消せる超生物、この一帯を平らにするなど容易いことです。……もしも君達が自身を持てる第二の刃を示せなければ、相手に値する暗殺者はこの教室にはいないとみなし、校舎ごと平らにして先生は去ります」

 

「第二の刃……いつまでに?」

 

「決まっています……明日です。明日の中間テスト、クラス全員50位以内を取りなさい」

 

「「「!?!?」」」

 

 中間テスト、50位以内……!それは、E組から元のクラスへ戻ることができる、最低ラインの学力だ。

 

「君たちの第二の刃は、既に先生が育てています。本校舎の教師達に劣るほど……先生はトロい教え方をしていません。」

 

 ……いつの間にか、私たちが気づかない間に育てられた第二の刃。確かに、殺せんせーのあの教え方は誰にも真似できるものじゃない。

 

「自信を持ってその刃を振るって来なさい。仕事(ミッション)を成功させ、恥じることなく笑顔で胸を張るのです」

 

 ……、……そうだ、私は知ったじゃないか。

 

「自分達が暗殺者(アサシン)であり、E組であることに!」

 

 ──────どこにいても、私は私でいいんだって。

 

 





「と、いうわけで、続き行きますよォっ!!」

「……まぁ、今回くらいは頑張るか」

「暗殺を続けるためにもね!」





「「はい、アミサさんもカルマ君も、もうちょい行きましょう!ここもいいですねぇ!」」

「……ねぇ、殺せんせー、俺ら2人別々に教えるのめんどくなってるでしょ?」

「さっきから、全く同じ事やってるし……言ってること、8人ともハモってるもんね」

「!!ば、バレましたか…!もういっそ、まとめます!ほら、アミサさん机引っつけて!」

「え、わ、ちょ……っ」

「いきなり…!」





「………………、」

〝〝〝〝アミサさん、そのノートは……?〟〟〟〟

〝え、〟

一発泣いて(1871)=廃藩置県」
答えは文の指示語に注目
√=……


〝……あ、あれ?ごめんなさい、今理科の勉強のはずなのに、〟

「……ふむ、」



++++++++++++++++++++



殺せんせーは隣同士で同じような学力のカルマとオリ主に、最初はそれぞれに4、5人ついて色々言ってましたが、途中からやってる応用・発展・範囲が同じならちょっとくらい被せてもいいかと、楽してたらバレた→めんどくさいので、強制的に2人とも同じように勉強させよう!……の図。

他の人は自分の勉強で必死だから周りを見る余裕もないので、後ろで何が起きているかを知っているのは、隣でバタバタされて嫌でも目に入る寺坂くらいです。

また、前回はなかった展開を少し入れてみました。
オリ主の特性といいますか……それも少しずつ解明されていく予定です。


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