オリ主とカルマ&渚
オリ主と女の子
まだ男子たちと交流してないね?ということでちょっとした閑話を書いてみました。
最初のモノローグ以外は、磯貝くんに視点をおまかせしています。
いつの間にか5月になっていたなぁと思えば、E組に新しい英語の先生……もとい、国が雇った殺し屋のイリーナ先生がやってきて早速一波乱。イリーナ先生は、最初こそみんなとギクシャクしていたけど、今では実践英会話術の先生として……そして暗殺教室にとっては
それが終わったかと思えば月に1回ある全校集会。4月にあった1回目は、私はまだ停学中だったから参加することがなくて、これがはじめての全校集会で……すがる相手もいない場所でただただ差別の、ストレスのはけ口にされて地獄を見るしかない。
……そう思っていたのに、自分たちも辛いはずなのに庇ってくれたE組のクラスメイト、アウェイな環境でもマイペースにヌルヌルしてる殺せんせー、見栄っ張りで元気なイリーナ先生、そんな先生たちをため息つきながらまとめようとする烏間先生という、あまりにもE組にいる時と変わらないいつも通りな先生たちのおかげで笑顔で終わることができた。そこで「どこにいても私は私でいていい」のだと知ることができた。
そして、3年生になって1回目の大きなテストである中間テスト……E組のほとんどの人たちが暗殺だけでいいと思うほどやる気のなかった所を、暗殺を続けるためにと学年50位以内をめざしてみんなで頑張った。結果は、E組にいるからこそどうにもできない大きすぎる壁にぶち当たったけど、それと同時に私とカルマくんがトップ5に入ってみせたり、殺せんせーが学力底上げって実績を残していたり……
この暗殺教室に来てから、毎日が忙しいけど、毎日が新しい何かを更新していく……そんな、いろんなことを学ぶ日々。
──────これは、中間テストが終わって、再来週にせまった修学旅行へ行くまでの間に起こったできごと。
◆
磯貝side
「……あ、あれ……?」
「……?」
今日も1日の授業が終わり、掃除と片付けを終えて教室から徐々に生徒が減っていく中。クラスメイトの声などでザワザワとした教室なのに、なぜか困ったような声がしっかり聞こえた気がして、聞こえた方を振り返る。
「あれ、アミサちゃん帰らないの?」
「っ!あ、渚くん……え、えと、うん。ちょっとやることあって……」
「先生から頼まれ事でもしたのか?」
「んー……と、そういうわけじゃないんだけど……」
俺とはけっこう席が離れているはずの教室後方でのやりとりが、不思議と目に入ってきた。席を立たずカバンの中を漁ったりキョロキョロと教室を落ち着きなく見たりしている真尾に、渚と杉野が帰ろうと声を掛けているが……何となく、普段から何でも素直に答える彼女にしては、歯切れの悪いというか、煮え切らない返事をしている気がする。
「俺待ってようか?」
「!う、ううん!だいじょぶだからっ」
「……、……そう?」
しまいには、真尾が1番頼っているように見えるカルマに対しても挙動不審な返事を返していて。案の定その返事にカルマも怪訝そうにしているが、大丈夫と言われてしまったら何も言えないのか渋々引き下がったようだ。
渚、杉野、カルマが教室を出ていくのを自分の席で座ったまま、手を振って見送った真尾は、窓から渚達が校舎を出ていくところを確認したあと、再度カバンを漁り始め……眉を下げ、困ったように首を傾げた後、カバンをそのままに教室を走って出ていった。
少しだけ気になって俺も席を立ち、真尾の席まで来てみる……置いてあるカバンは無防備に口を開けたまま中身が見えていて、さすがにな……とファスナーを閉じておいてやることにした。こういう無頓着な所が彼女らしい。だが、彼女が何に困っているのかが皆目検討がつかない……唯一置いていったカバンを見たところで、何があったのかなんて分かるわけないんだけども。
「磯貝ー、帰ろうぜ……って、真尾の席で何してんの?」
「あ、いや、……前原、もう少し時間あるか?」
「え、あーうん。まだ外でバドミントンやってから帰るーってメンツいるから磯貝さえよければ参加してもいいなーと思ってたし別にいいけど、なんで?」
「いや……ちょっと気になることがあって」
俺は別に用事があるわけじゃない、だけど……明らかに渚とカルマに何か隠している困り事がありそうな真尾を放っておけないし、せめてギリギリまではE組の敷地にいてやろう。そう思って一緒に帰る前原に付き合ってもらいながら、暗殺バドミントンに混ぜてもらうことにした。
◆
磯貝side
前原が言っていた暗殺バドミントンをやるメンバーは岡島、三村、木村、千葉、菅谷だったらしい。俺ら2人が増えると7人……ちょうどいいと1人が得点審判、残りが3対3に分かれて何度か試合を楽しんだ。今は何戦目かのインターバルで、俺を含めみんなが汗を拭いたり水分補給をしたりしている……その最中にふと顔を上げた岡島が何かを二度見した。
「……?……ん、んん?」
「どしたん、岡島」
「いや……あれって、真尾だったりするか?」
「……、多分……てか、よく気づいたな岡島;ほぼ草に埋もれてんじゃねぇか」
岡島が指さすのはE組校舎へ上がるための山道の入口近くの草むらで、なにやら夜色の髪と白い髪紐が揺れている……そんな容姿の奴は
「そういえば、磯貝は真尾の席にいたよな。それ関係だったりすんの?」
「あ、あぁ、直接話したわけじゃないんだけど……帰り間際にカルマにも対しても渚にも対しても態度が変だし、なんか2人にすら言えない困ったことがあるような気がして……」
「はぁ!?あの真尾があいつらに話せないことなんてあんのか!?」
「……結構、言おうとして飲み込んでるとこは見るぞ」
「なんで見……そっか、そういや千葉のすぐ後ろだもんな」
「ああ」
「……とりあえず、他に女子もいないし、見つけちゃったもんはほっとけねーし、行ってみるか?」
「そだな」
どうせ休憩してたところなんだ、息抜きも兼ねて彼女の所へ行ってみることにした……が、こちらは7人、彼女は慣れていない奴や、大人数の自分より大きい奴ら(正直子ども以外はみんな彼女より大きいだろうけど)に囲まれるのは怖がることがある。E組はほぼ大丈夫な気がするが、とりあえず俺たちの中ではデカすぎる
「真尾、お前何やってんの?」
「っ!ま、前原、くん?磯貝くんと、岡島くんまで……」
近くまで行くと、
「って、お前泣いてんの?!いやその前に、」
「真尾……見えるぞ……っっ!」
「岡島ストップ。はぁ……真尾、汗臭いと思うけどコレ腰に巻いとこうな……;」
「な、泣いてない……って、え、なんで磯貝くんの上着……?え、巻くの……スカート汚れてた?」
「う、まぁ……そんなところだよ」
「(スカートで蹲るなよ、パンツ見えるから;)」
「(チクショウ、サラッと上着巻かせてイケメンかよ!)」
「(岡島、お前はガン見するのやめような;)」
岡島が真尾の第一発見者だった理由、こいつのエロレーダーに引っかかったからだとか言わないよな;俺達の言う意味がわかってなさそうな真尾をとりあえず立たせ、俺の上着を腰に巻いてやる……小柄すぎて結んだ袖がものすごく余ってる上、太腿のあたり全部隠れたが、まぁ下着が見えるような状態よりはいいだろう。そんな泣いてないと意地を張っている真尾は、若干涙目のままだし、顔を伏せ気味だ。
「本当にどうしたんだ?教室でもカルマと渚に対してだっていうのに挙動不審だったから」
「あいつらに言えなくても俺らになら言えたりしない?」
「……え、でも……」
「遠慮すんなって。人手がいるならあっちの奴らも手伝うぞ?」
す、と
別に気の短いやつはこのメンバーにはおらず(むしろどっちかと言うと面倒見がいいタイプばかり)、一生懸命な真尾を見守って待っていれば、彼女はようやく小さな口を開いた。
「……、……ないの……」
小さな、小さな震える声で、ポツリポツリと落とされたのは彼女が必死になっている理由であり、
「宝物……、大事なもの、なくなっちゃったの……朝、学校来て、山を登ってすぐは絶対あったの、なのに、帰ろうと思ったら……っ……あの、ね
─────紺色のリスのキーホルダー、見てない……?」
俺達にとっては、今の彼女にできる精一杯のSOSのように感じた。
◆
磯貝side
真尾曰く、いつもカバンの持ち手に付けていて、いつも通り登校してこの山道の入口で今日も頑張ろう、とルーティンのように触れたのは覚えているらしい。が、帰ろうと机にカバンを出してみたら無くなっていた、と。
「で、なんでそれをカルマ達に手伝ってもらわなかったん?あいつらなら頼めば絶対手伝ってくれるだろ」
「……おそろい、なの……カルマくんと、渚くんと……無くしたって、知られたくなくて……」
「あー……でも別に怒るとかなさそうだし、むしろ一緒に探すって言うだろあいつらなら」
「それか新しいおそろいがほしいとか言い出したりしてな!」
「カルマが言いそうだな、ソレ」
「渚だったら?」
「気にしなくてよかったのに、とか」
「あー、言いそう」
真尾は基本的に1人では寄り道もしないだろうから、校舎内はともかく外は登校ルートだけ見ればよさそうだと声をかけに来た3人で外に散らばり、残り4人には校舎内と校舎周辺の捜索を頼んだ。真尾を含めて4人で地面に這いつくばり、探して回るが……真尾曰く、なかなか小さいもののようので簡単には見つからない。
手は止めず、かといって無言で探しているのも真尾がまた落ち込み出したらアレなので、意識をそらす目的も兼ねて俺達はなんとなしに真尾へ話題を振ってやる。今でも自分から発信するのは苦手なようだが、こう、話題を振られれば前までの様子と比べればちゃんと返事を返すようになった。いつもカルマか渚、もしくは女子に囲まれているから、こういう時でもないと話す機会が中々ないし、せっかくだから今のうちに交流しておきたいよな。
「これ聞いていいのか分かんないけどさ、4月の終わりにお前らがE組に来た理由話してくれただろ?仲良くないとあんなことにはならないとは思うんだけどさ……お前達がよく一緒にいたのは実は本校舎の時から時々見てたから知ってたけど、いつぐらいから仲良くなったんだ?」
「あ、確かにちょっと気になる」
「てか、渚はともかく何をどうしたら喧嘩っ早い不良と真逆なお前が出会うんだ?」
「えっと……、実は、2人と出会ったのもある意味喧嘩が最初、なんだよね……」
「そ、そこは変わんねーのな;」
「といっても、相手は高校生くらい……かな。中学1年生の頃に私が大きい男の人たちに暗いところに連れていかれそうになってて、カルマくんが助けてくれたの。渚くんはその時の付き添い」
「は!?」
「お前なぁ……その頃から危ない目に合ってんのか……」
「てかそれも真尾が人を怖がる原因の一つなんだろうな」
「それは分かんないけど……でもあの時も強かったよ、カルマくん」
「ていうか俺的には対象が違うにせよ、カルマが人助けしてることに驚いてるし、いまだに信じられん……」
「知らんかった……」
「だからカルマくん、そんなに怖くないのに……みんな、怖いとか、取っ付きにくいとか言うけど……どっちかと言うと、取っ付きにくいのは私だと思うのに……」
「こらこらネガティブになるんじゃない;」
人のことを考えすぎて自分を追い詰めるタイプだもんな、真尾って……だんだん話の流れからか真尾がネガティブになりつつあるのを慰めつつ元気を戻してやっていると、遠くから「おーい!」というこちらを呼ぶ声が聞こえた。顔を上げてE組校舎の方を見ると、あっちの捜索を任せていた奴らが手を振っている……その中から1人が飛び出してこちらに駆け寄ってきた。
「よ、っと……ほい、探してたキーホルダーってこれか?」
「っ!……これ、です、私のキーホルダー……!ありがとう……っ」
E組の中で一番足が速い木村が代表してこちらまで走ってきて手の中のものを真尾に見せる。そこには紺色の毛糸で作られた手のひらより小さいリスのキーホルダーがあり、真尾が嬉しそうに受け取った。みたところキーホルダーとしてぶら下げるためのボールチェーンが外れている以外は、大きな汚れも破損も無さそうだ。
本人のものということが確定して合図を送れば、違った時のためにか校舎近くで待ってくれていた3人もこちらに歩いて合流した。
「ど、どこにあったんですか?」
「どこっていうか……教室の真尾の机の上に置いてあったぞ?」
「……!……うそ……」
「いやホントに、なぁ?」
「おう、お前の通学カバンの閉じたファスナーの上に乗ってたぜ」
「ご、ごめんなさい……お手間かけちゃったのに、自分の机の上にあったとか……」
木村が後ろの3人に確認するように問かければ、3人とも頷く。それを見て表情が曇りだし、だんだんオロオロしだした真尾……多分、みんなを巻き込んでこんなに探させたのに、とか考えてそうだけど、今の話でおかしい所がある。自分のせいじゃないってわかってもらうためにも、ちゃんと教えてやらないとな。
「いや、真尾は嘘ついてないぞ。俺も真尾が教室を出て直ぐに机の上を見たけど、そのキーホルダーは絶対になかった。それにカバンの閉じたファスナーの上だっけ、むしろ俺がファスナー閉じたんだから、その上に乗ってたんなら俺が気づかないわけが無いだろ?」
「磯貝もいうならそうなんだろ。2人とも同じこと言ってるってことは疑う必要も無いしな」
「……じゃあ、真尾が大事にしてるって知ってる誰かが見つけて置いておいてくれたのかもしれないな」
「だな、いつも持ち手に付けてたんなら、見てたやつは見てただろうし」
「……そっ、か……誰なんだろ、お礼、言いたいな……」
「お前に何も言わず置いていったってことは、知られたくないんだろ。だったらお前は見つけてくれたこの3人にお礼を言っておけばいいんじゃないか?」
「わ、そ、そうだった!木村くんにしか言えてなかったね。菅谷くん、千葉くん、三村くんも……見つけてくれて、ありがとう!磯貝くんと前原くんと岡島くんも……お外で一緒に探してくれて、ありがとう……っ」
「どういたしまして」
「お礼ちゃんと言えてえらいぞー」
「あ、……えへへ……」
俺達の中に真尾を責めたいやつも、迷惑だって思ったやつもいない、それがわかってくれたらいい……そんな気持ちで真尾の頭を撫でてやれば、最初は申し訳なさそうな表情だったが、だんだん嬉しそうに目を細めて手に頭を擦り寄せてくる。……カルマや渚が真尾の頭をしょっちゅう撫でている理由がわかった気がした……これは確かに小動物を愛でている気分になるし、癖になる。
「それにしても取れた原因はなんだったんだ?」
「多分これだ。ボールチェーンが切れてる」
「あー……大抵どんなガチャポンでもこれだよな。手軽に付けれる代わりに切れやすいもんなー、これ」
「んーでも、だいぶ劣化してるしこれはまたちぎれるぜ……真尾さえよければ、別のに付け直せるけどどうする?」
「菅谷ってこういうの得意だもんな。ほら、せっかくだから頼んどけよ」
「ほ、ホント……!?菅谷くん、お願いして、いいですか?」
「ほいよ、任された」
三村に後押しされ、パッと顔に笑顔が戻った真尾からキーホルダーを受け取った菅谷はその場にあぐらをかくと、一緒にここまで持ってきたらしい自分の通学カバンからいくつかの道具を取りだして何やら作業し始めた。よく持ち歩いてたな……とも思ったが、菅谷は急に思い立って作品を作る時がある根っからの芸術家気質のやつだ。何かのために入れてたんだろう、それが今回かなり役立った。それに、こういうのはできるやつに任せておくに限る……俺は手伝えないし真尾と話してようか。
そう思って振り返れば、既に前原によって真尾は連れ出されて話している最中だった。おいおい、いつの間に。
「にしてもそんなに大事なものだったんだな」
「あれね、中学1年生の時に、カルマくんと渚くんと一緒に買ったの。私みたいだねって2人が言ってくれて……あ、2人は2人にそっくりだなーって私が選んだやつ買ってたよ」
「へぇ、いいなそういうの」
「えへへ……赤い猫さんと、水色のウサギさんなんだ。そっくりでしょ?」
「うーん。ノーコメントにしておこうかな!」
「現物みてないしな」
「てか、物持ちいいな?2年近くだろ……そりゃあ金具にガタが来てもおかしくないし、菅谷がいてよかったな」
「だな、当分壊れずすむぞ」
「うんっ!」
「よし、できた!どうだー?」
「わ、ぁ……丈夫そうだし回る……!」
「下手に巻きついてまたねじ切れたら意味ないからな。根元で回るパーツがあったからそれにしといた」
「菅谷くん、ホントにありがとう……!」
「どういたしましてー」
嬉しそうにキーホルダーを抱きしめる真尾の頭を菅谷も撫でている……あ、菅谷も真尾の小動物感に気づいたな、あれは。撫でていない反対の手で口を覆いながら「これはヤバいな……」とか言ってるし。
無事に探し物も見つかったということで、真尾は荷物を取りに教室へ、俺達7人は暗殺バドミントンの片付けもせずにそのままだったことを思い出して校庭へ走った。といってもネットを下ろして道具を道具倉庫へしまうだけだから7人で分担すれば直ぐに片付く……玄関へ向かえばちょうど真尾が靴を履き替えて出てくるところだった。さすがに夕方だし、さっきの話を聞いたあとだと一人で帰すのも怖くて駅までは送ろうとした時だった。
「アミサちゃん、用事終わったー?」
「え、あ、あれ?か、カルマくん!?」
何故か校舎裏からカルマが歩いてきた。……あれ?お前、渚と杉野と一緒に帰ってなかったか……?と思ったが、よく考えたら俺も校舎から出ていく所までは見てたけど、山道を降りていく所までは確認してないな……戻ってきていたのか、実はいたのか、だな。
「なんで、いるの?待たなくていいって言ったのに……」
「ん?のんびりしてたら寝てた」
「えぇぇ……、学校でって、夜になっちゃうよ……」
「いーじゃん、そのおかげでアミサちゃんを1人で帰さなくて済むし?ねぇ?」
「ははは……;」
サラッとなんでもないように彼女の頭を撫でて目線を下に下げさせると、カルマは顔をこちらに向けて俺達に対して片目をつり上げる……何となく真尾を自分の近くに置いて牽制しているようで……ってお前、まさかとは思うけど、真尾を俺達に取られるとか思ってないか?俺達あの危なっかしさを放っておけなくて送ろうとしただけなんだが。
「てか、なんで上着巻いてんの?誰の?」
「あ、俺のだよ。真尾が最初に見かけた時にこう四つ這いでいたから、さ……」
「あー……うん、分かった見えそうだったわけね……」
「そういうこと。……ん。サンキュ」
「え、まってまって、磯貝くんの上着、洗って返すから、」
「いいんだって、磯貝のだし。てか本ト何やってたの?こんな泥だらけになってさ」
「ぅ、……秘密」
真尾は制服の時、普段からジャケットを着ないでカーディガンを羽織っている。そんな彼女が明らかにサイズオーバーな制服を腰に巻いていたら怪訝にも思うよな。手際よく回収して俺に投げ渡すと、真尾は借り物だからと慌てているが、何故か俺より先に返事をするカルマ。まぁ、その通りだから全然いいんだけど……お前、泥を払うように見せかけて、俺の上着を羽織っていたあたりを念入りに払ってないか……?
真尾はカルマには本当のことを言いたくないらしく、目を逸らしながら口をつぐんでいる。だから怒られるようなことでも落胆されるようなことじゃないんだが……ま、カルマと合流したのはキーホルダー返却後だし、カバンには元通りついてるからそう簡単にはバレないだろう、……多分。
そのまま9人で山を降りることになって、せっかくだからとその道中も普段なかなか話せない真尾と俺達とでしゃべっていたんだが、その間カルマはほぼ無言で大人しくついてきていて……さっきまでの様子を見てた分、若干不気味だった。機嫌が悪いのかはよく分からないが、ふもとまで着くやいなや別れの挨拶も程々に、カルマが真尾の手を引いて俺達には一瞥もくれずに歩き出す……いや、まぁ彼女を送るってことなんだろうな、別にいいけどなんか言えよ……;
本校舎の校門で2人と別の道へ別れる……最後まで申し訳なさそうに振り返って手を振ってくれる真尾と、我関せず歩くカルマの2人を見送ったあと、気を取り直して、「さて、俺達も帰るか!」とでもみんなに言おうと振り返った時、カルマが来たあたりから今まで、ずっと黙っていた千葉が、ポツリと呟いた。
「…………なぁ、」
「千葉?どうしたんだ?」
「……、カルマのカーディガンの袖、見たか?」
「え?いや……」
「腕まくりしてたから袖ってほどのもんがそもそも見えなかったけど」
「それにいつも通りだと思ったけど……何かあった?」
「……泥だらけだった。ズボンにも草とかついてたし」
「外で昼寝してたからじゃなくて?本人も言ってたし……」
「だったら背中とか尻に着くだろ。汚れてたのは膝と手の近くだったぞ」
千葉って細かいところを意外とよく見てるよな……ん?カルマ本人が言ってたことと違わないか?一旦整理してみるか……まず、放課後になってすぐ、真尾がキーホルダーをなくしたことに気がついてカルマと渚、杉野を先に帰らせた所を俺が目撃。それから俺達が暗殺バドミントンをやってた30分くらい1人で探していた彼女を俺達が見つけて手伝って、1時間も経たずに教室でみつかって菅谷が5分もかからず修理……片付けには分担したから20分もかかってないから、下校時刻から2時間は経ってないとはいえカルマはE組校舎の敷地のどこかにいたってことになる。
本人は寝てたって言ってるけど、汚れの位置からしておかしくて……そう、俺達のように地面に膝を着いて何かを探しでもしていないとつかない汚れで……って、これは。
「……てことは、真尾の机にキーホルダー置いたのって……」
「「「………………。」」」
つまり、カルマは真尾の様子がおかしかった最初の会話から怪しんでいて、自力で真尾が隠してたことに気がついてたわけで。で、本人に言わずに先に探して見つけておき、そのまま直接渡すと真尾が自分達に無くしたことを隠していたって思いやりを無駄にすることになる。……だから真尾を落ち込ませることを覚悟して机の上に置いておいたっていうのか。
それにまだ5月だ、日中はそうでも無いけど夕方は肌寒い……というのにカーディガンを腕まくりして着ていたのは、袖の汚れを隠すためだった、とか……千葉には気づかれたみたいだけど。
「……なんていうか、なぁ?」
「はは、兄妹みたいだなとは思ってたけど……もしかして」
「……本人から聞いたわけじゃないし、とりあえず黙っとくか」
「今回は真尾と交流できたのを収穫だと思っておこうか」
「……だな」
「……帰るか」
「おう」
何となく、後味悪く濁って終わった気もするが……まあ、めったにない1日だったことには違いない。一応人助けもしたわけだしな。それに本校舎ではほとんど知れなかった真尾のことを少しでも知れたのはよかった……明日からも、カルマは不機嫌になるかもしれないが、構いに行ってみようか。俺はみんなと歩きつつ、彼女の頭を撫でた時のことを思い出して帰路に着いた。
明日からも暗殺教室は続く、それにもうすぐ修学旅行だ。……きっとここでも暗殺は絡んでくるんだろうなぁ……
「で、兄妹のようなやり取りに見えてたけど、カルマは真尾が好きなのか、が気になるんだが」
「おま、流しておいた話題を……」
「いやだって気になるじゃん!?」
「そうだけどな;」
「いやー……とりあえず、真尾は明らかに頼ってるとはいえ、恋愛感情無さそうだよな」
「特別懐いてるとはいえ、俺達に頭撫でられても嬉しそうにしてたしな。普通好きなやつがいたら避けるだろ、多分」
「普通と多分を同列に使うなよ;」
「だって自信ねーもん;」
「……さすがに好きだからこそあの態度なんじゃないか?」
「そうか?」
「約2時間、真尾を待っていたのは帰りが1人にならないためだろ?で、傷つけないようにキーホルダー探してやって、磯貝の上着を払って……w」
「あれはさすがにあからさまだったよなw」
「しかも山道では俺らと話してて拗ねてるし……」
「こんで付き合ってないって、マジで言ってんの?」
「……付き合ってないよな?」
「ない。渚に聞いた」
「「「……………。」」」
+++++++++++++++
磯貝くんや前原くんだけでなく、自分から来そうにないメンバーを絡みに出してみました。明らかに誰かわからないところは誰が話しているかのご想像はお任せします。
たぶん、名前は、出したはずです……!←