リニューアル前と比べて大幅に変えた部分が出てきます!
前回2話の途中までを使って1つの話にまとめたから、今回は短くなるんじゃないかなと思ってたのですが、改稿前とほとんど長さが変わりませんでした。……なぜ。
また今回、原作通り
【後半部分から若干の戦闘描写や登場人物が傷つく描写、誘拐描写】
があります。
大丈夫な方はお進みください!
「もう、やめときなさいよ……」
「いいじゃんいいじゃん、そーっとぉ……」
「……?あれ、莉桜ちゃんおはよ……どしたの、お布団の上に乗って……?」
「んわっ!アミサ起きてたの?!せっかく寝起きドッキリ仕掛けようと思ったのに!」
「えへへ……今日、みんなといろんなとこ行くの楽しみすぎて、早く起きちゃった。お日様もいなかったからみんなが起きるの待ってたの」
「それは早すぎ……二度寝すればよかったのに」
修学旅行2日目。私はまだ朝日が昇る前の暗い時間には目が覚めちゃってたけど、周りはみんなまだ寝てたからそのまま布団にもぐっていて……7時くらいになってみんなが起きはじめたのに合わせて掛け布団をどかして体を起こした。
そうしたら莉桜ちゃんが私の上に乗りながらいきなり起こして驚かそうとしていたみたいで、掛け布団をどかしつつあいさつしてみたら逆にびっくりさせちゃった。……起きてたし、声も聞こえてたから、つい声掛けちゃっただけだったんだけど、これも旅行の醍醐味ってやつだったのかな……失敗しちゃった。
「おはよー」
「おはようございます」
「あ、布団畳んだらしまうからそっち重ねてー!」
「洗面所使うよー、アイロン持ってくけど使う人ー!」
「はーい」
「………………」
みんなが起きたことを確認したメグちゃんは、みんなへ順番に指示をして動きをまとめていく……例えば使った布団を片付ける為に襖の前まで運んだり、そんなに広くもなければ数もない洗面所を順番に声をかけあって使ったりして、みんなが出発するための身支度を整えていく。
私も着替えたりこの後の京都散策の時用に荷物を準備したりと自分の作業を進めていたけど、ふと顔を上げてみると……大部屋の中をたくさんの人、それも友だちが忙しなく動いている。それをつい新鮮な気持ちで見つめていた。
「アミサちゃん、どうしたの〜?ボーッとしてるけど〜」
「え、……その、学校……行かなくてもみんながいるなーって……家にいる時と違って寂しくないし、賑やかで楽しくて……えへへ、なんか嬉しいなって」
「っ、はー……もう、ホントに……」
「……なんだろうね、この妹感」
「当たり前のこと言ってるだけのはずなのに、妙にくすぐったい……!」
「あぅ、まって、まって、頭ぐしゃぐしゃなっちゃうっ」
「はいはい、大人しく撫でられてなさい」
「あとで結び直してあげるから」
「あ、ついでに髪紐編み込んであげる」
家にいる時はいつもひとりぼっちだし、誰かが家にいたとしても多くて2、3人……目が覚めて、こんなにたくさん人がいるのはなんだか嬉しいし……なにより寂しくない。それを思った通りに陽菜乃ちゃんに言っただけだったのに陽菜乃ちゃんだけじゃなくて、周りで聞いてたらしい他の子たちにも続々と髪の毛をぐしゃぐしゃにする勢いで頭を撫でられた。
大部屋を出発する前に、予想通りぐしゃぐしゃになってしまった髪の毛を、約束通りカエデちゃんと桃花ちゃんに結び直してもらってから、バラバラと大部屋を出て集合場所のロビーへと向かう。ここで班ごとに集合して揃ったところから朝ごはんを食べに行き、その後先生から注意事項を聞いたあとに京都の散策に出発する予定になっている。私たちよりも先に準備が終わっていたらしい男の子たちは、既にロビーに出てきていて思い思いの場所でくつろいでいるようだった。
「おーい、4班の女子はこっちなー!」
「ありがとう杉野君」
「あ、いやぁ……」
杉野くんが手を振って呼んでくれたところにはしおりを膝の上に開いて読んでいたらしい渚くんと、それを椅子にもたれながら覗き込んでいるカルマくんがいて、杉野くんの声を聞いて2人とも顔を上げた。
合流してすぐ、有希子ちゃんが私たち4人を代表してお礼を言ってくれて、杉野くんが照れたように頬をかいている。それを横目にカルマくんは、何とかカバンにしおりを仕舞おうとしている渚くんの横を通って私の近くまで歩いてきた。
「あれ、アミサちゃん髪型いつもと違うね。なんかあった?」
「朝ね、みんながぐしゃぐしゃにしちゃったからーって、カエデちゃんと桃花ちゃんが結んでくれたの」
「へぇ……かわいいじゃん」
「あ、カルマ君!あんまり撫でないでよ、せっかく結んだのに崩れちゃうっ!」
「はいはい」
いつも通りに私の髪に触れようとしたのか、頭を撫でようとしたのか手を伸ばしたカルマくんに、見ていたカエデちゃんから注意が飛んだ。……たしかにせっかく可愛く編んでもらったから、お風呂に入るまではこのままだと嬉しい、かもしれない。でも、朝女の子の部屋で撫でられた時と違って、素直に下ろされる彼の手を見た時は、なぜかちょっと残念に思ってしまって、つい目で追ってしまう。
……あ、そういえば。私に伸びるカルマくんの手を見て、昨日の夜寝る前に莉桜ちゃんから聞いた話を思い出した。
「カルマくん、昨日自由時間の時、私に用事あったの?」
「え?」
「あの時カルマくんも私に手を伸ばしてたよーって、寝る前みんなに教えてもらった、から」
「あー……うん、あの後一緒に旅館の中見て回ろって誘おうとしてただけ。茅野ちゃんに先越されちゃったけどね」
そっか、カルマくんも私を誘おうとしてくれてたのか……私が気付いてたら
「……ほら、そんな難しく考え込んでないで朝メシ食いに行こーよ。4班揃ったんだしさ」
「わ、…………」
「おう、そうだな!烏間先生ー、4班揃ったぜー!」
「朝ごはん、どんな感じなんでしょうね!」
「京都らしいメニューなんじゃない?夜ご飯も美味しかったから楽しみ〜!」
「アミサちゃん、おいで、私と一緒に行こう?」
「……うん!」
いろいろ考えていたら、カルマくんは撫でる、というより私の頭をポンポンと軽く触りながら、そのまま渚くんの方に歩いていってしまった。ちゃんと髪型が崩れないように気にしてくれたんだって気持ちと、さっきダメだった分撫でてもらえた嬉しさでさっきの残念さがどこかに飛んでいった私は、朝ごはんを食べる部屋へと向かうみんなを、私を呼んで待ってくれていた有希子ちゃんと手を繋いで気分よく追いかけた。
「全部顔に出てるんだよねぇ……」
「なんで撫でてくれないの?ってすごい悲しそうな顔してたよね、アミサちゃん」
「本ト……飽きさせないなぁ」
「……カルマ君、機嫌いいね」
「なにが?」
◆
朝ごはんを食べたあとは予定通り、渚くんの持つ殺せんせー特製しおりをおともにして、私たちは京都の街へと繰り出していた。いくつかの想定コースを回りながら周りを確認し、最高の
私たち4班はクラスで最後に暗殺をすることになっているから、殺せんせーと合流するまでに、まだかなりの時間がある。私たちまでに暗殺が成功したらそれはそれ、最終的に暗殺を決行する場所と合図は殺せんせーが合流する前に烏間先生に連絡して
今は杉野くんが希望した川にかかる橋の中央で、もしもここで暗殺を決行する場合、狙撃手から見えるかどうか、撃った場合どうなることが想定できるかを確認している所なんだけど。
「どう?」
「あー……狙いをつけやすいとか隠れにくいとかという意味では悪かぁない気もするけど……」
「……周り、なんにも無さすぎて丸見え、だね……」
「それに思ってたよりも交通も多いですね」
「だよなぁ……」
狙撃、と聞くと高い建物や障害物を隔てた場所から、邪魔するものが無いところを撃つのがいいとは思う……プロなら悪条件でも成功させるんだろうけど、ちょっとでも狙いが絞りやすいようにしたい所。でも、ここまで周りに何も無くて人通りも車も多いと予想通りに殺せんせーが動いてくれる保証がない。
いくつか名所を含めて回っては見たけど事前に地図を見るだけと実際に来てみるのとではやっぱり違う……中々難しい場所決めに、私たちは橋の欄干にもたれながら一息入れることにした。
「あー、もう!せっかく京都に来たんだから抹茶わらび餅食べたーい!」
「では、それに毒を入れるのはどうでしょう?!殺せんせー、甘いものに目がないですから」
「なんで!?」
「いいね、名物で毒殺」
「あ、なら渡すのは私でもできるかも……!それか、口に放り込めば勢いで食べてくれないかな……?」
「もったいないよ、抹茶わらびが!」
「殺せんせーに効く毒があればいいんだけど……」
「んむむむむ……」
殺せんせーに直接毒を渡す、という暗殺を仕掛けたことのある愛美ちゃんは、今では積極的に搦手を学んでいると思う。先生の好みを考えて、その上で暗殺に組み込む……全部の工程を自分で実行出来なくても、案を出して周りが乗れば十分役に立てるから。スウィーツ大好きなカエデちゃんは毒殺でおいしいものを食べられないものにしちゃうことをものすごく反対してるけど、私は効く毒があるなら効果的だと思う。実は対先生BB弾を粉末にしたのあるよって言ったら使ってもらえたりしないかな……なんて。
とりあえずカエデちゃんを宥めるためと私も抹茶わらび餅を食べてみたかったという理由で、近くのお店へ購入しに行き、歩きながら2人で半分こする。甘いものに目がないカルマくんがそろっと手を伸ばしてきたけど、それを避けながら自分の口に入れる……お抹茶、おいしい……もう、カルマくんも買えばよかったのに。
「それにしても、修学旅行の時くらい暗殺のことは忘れたかったよな〜……いい景色じゃん、暗殺なんて縁のない場所でさ」
「いや、そうでもないよ。ちょっと寄りたいコースがあるんだ」
本当は僕たちの想定コースの中に含まれてない場所なんだけど……ど前置きして渚くんが私たちを連れてきた場所には某どこにでもあるコンビニ……の、隣。そこには石碑が建っていて、日本にいればあまりにも有名な人物の名前が刻まれていた。
「坂本龍馬って……あの?」
「あ〜、1867年坂本龍馬暗殺。近江屋の跡地ね」
「さらに、歩いてすぐの距離に本能寺もあるよ。当時と場所は少しズレてるけど」
「あ、そっか。織田信長も暗殺の一種かぁ」
「なるほどなー……言われてみりゃ、こりゃ立派な暗殺旅行だ」
言われるまではあんまり考えたことがなかったけど、今でこそ日本の中心は東京ってみんな思ってても、ここ、京都は昔、長い間日本の中心として栄えていた場所だったって社会で習った。つまり、その時代に大きな影響を与えたとされる人物たちが多く集まっていたということ。
当然、当時は話し合いとか平和的解決よりも戦だったり政治的な殺傷だったりと暴力に訴える方が簡単で結果が分かりやすかったから、それらを手段にとることは多かったに違いない。それに中心人物でなくても関与が疑われれば
「つ、次は八坂神社ですね!」
「あ、それって昨日の夜に言ってた場所だよね……?働く女性のための神社って……」
「ええ、そう。よく覚えてたね」
「えー、もういいから休もう……?京都の甘ったるいコーヒー飲みたいよ……」
男子にとってはあまり魅力的じゃない場所だからかな……今まで大人しく着いてきていたカルマくんが、肩を落としてめんどくさがってる。普段から自由な彼は慣れない集団行動に疲れてきたのもホントだろうけど、甘いものが食べたいのもホントなんだろう。いつもものすごく甘いって有名な煮オレシリーズを飲んでいて、見た目に似合わないくらい甘いものが大好きなカルマくんらしい申し出だった。……さっき抹茶わらび餅を分けなかったこともあって、少し拗ねてるというか、恨めしいというかな視線を向けられているようにも思えて、私は小さく笑ってしまった。それにしても……コーヒーが苦くない……甘いっていうのは私も気になるかも……
───ジャリ
◆
八坂神社にいってお参りして、その帰りにカルマくんお目当てのコーヒーを飲みに行って……次にやってきたのは有希子ちゃんが希望していた祇園だ。ここは京都の中でも有名な花街であり、舞妓さんが歩いていたり歌舞伎劇場なんかもあったりする、昔の街並みが残る場所だ。
だからか観光目当ての人が結構多くて、暗殺を簡単にできる場所じゃない気がしていたんだけど……
「へー、祇園って奥に入るとこんなに
「うん、一見さんお断りの店ばかりだから目的も無くフラッと来る人もいないし、見通しがいい必要も無い。だから、私の希望コースにしてみたの……暗殺にピッタリなんじゃないかって」
実際に中に入ってみる知らなかった……表通りの華やかさとは違って薄暗いそこは、見通しが悪いおかげで
「さっすが神崎さん、下調べカンペキ!」
「じゃあ、ここで決行に決めよっか!」
「なら、烏間先生に連絡だね……」
多少の荒事を起こしてもそう簡単に大事にならないだろうこの場所は、今まで下見してきた場所の中で一番殺せんせーの暗殺に適しているように思えて、全員反対意見が出ないため、ここを私たちの指定とすることになった。
……この時、先のことを思いついていれば。
先生への連絡くらい、表通りに戻ってからすれば。
先生と合流するまでは中に入らなければ。
…………何も起こらなかったのかもしれない。
───たくさんの後悔をしても、もう遅いけれど。
「マジ完璧……何でこんな拉致りやすい場所を歩くかねぇ……」
前から、私たちより背の高い……私たちの中で1番身長の高い
……椚ヶ丘中学校は校風はアレでも腐っても名門校……だからこそ本来あまり縁の無さそうな人たち、ではあるんだけど……私にとっては、カルマくんの喧嘩相手がだいたいこんな感じだったからまだ見慣れていたし、だからこそ周りを見る余裕が少しあった。だけど他の子たちはいきなり現れた人たちに戸惑って完全に足を止めていて……気がつけば私たちの後方からも同じような男の人たちが集まってきていた。自分より体格の大きな集団に挟まれ、囲まれてしまっていた。
それに気づいたとき、私はハッとした。さっき何を考えてたっけ、有希子ちゃんは何て言ったっけ、と。
〝目的も無くフラッと来る人もいない〟
〝見通しが悪くて道が狭いから、逃げる場所もない〟
〝多少の荒事を起こしてもそう簡単に大事になることもない〟
それは殺せんせーの暗殺をしようとしている私たちだけに好条件なわけじゃない……何か、何かまでは分からないけど私たちに対して何かを企んでいる、この人達みたいな存在にだって同じ条件なんだ。……そういえば、この人たち……見覚えがあるような気がするんだけど……
1番前を歩いていた渚くんと杉野くんはまだ、突然のことに動けそうにない。いきなりのことに不安になってしまい、キョロキョロと周りを見ることしかできない私を背後のカエデちゃんたちの方へ押し隠し、カルマくんがみんなより一歩前に出る。
「何、お兄さん等……観光が目的っぽくないんだけど」
「男に用はねー。女置いておうち帰ん……」
────バキッ
自分自身のガタイの良さから私たち中学生を下の存在、弱い集団と見たのだろう……私たちは強いわけが無いと高を括って一瞬目を閉じた男の人……の隙を当たり前のようについてカルマくんが特攻、顔面を掴んで殴り倒す。相手の人たちが知るはずもないけど、カルマくんは喧嘩のスペシャリストなんだから……実力を甘く見た相手が悪いと思う。
「ほらね、渚君。目撃者がいないとこなら喧嘩しても問題ないっしょ」
「あ……っ!」
カルマくんにとって、この程度の喧嘩は軽くこなせるもの……だからカルマくんは渚くんに対していつもの喧嘩のごとく得意げに振り返ったし、私もいつもの通りのやりとりで、いつも通りの喧嘩をするものだと思っていた。
……けど、渚くんが気づいて声を上げた先……カルマくんの後ろで鈍い銀の光が見えた。あれは……ナイフ!
「てめぇ、刺すぞ!!」
……素手での喧嘩は、たくさん見てきた。数は少なかったけど、鈍器を持ち出すやつもいた覚えがある。だけど、刃物を持ちだす相手に出会ったことは、少なくとも私がいた時にはなかった。
目の前のソレがスローモーションのようにゆっくり、鮮明に見えたように感じて、
「刺す?そのつもりも無いのに?」
「……ッカルマ!」
「、っぇ!?って、え!?」
「なっ!?」
……気が付いたら彼の名前を呼び捨てにして叫んでいたし、持っていたカバンをその場に投げ捨てて、私の身体は動いていた。
……私は小さいし、その分体重も軽い……だからこそ小回りがきくし、ある程度の無茶な動きだってできる。
そして……ホントは、
ナイフを持った相手に応戦しようとしたカルマくんは、いきなり私が呼び捨てで名前を呼んだこともあってか反応が一瞬遅れ、その場で動きを一瞬止めた、まさにその瞬間。私は助走のままに跳躍し……カルマくんの左肩に右手を置いて、それを軸にして男の人のナイフを持つ手に飛び蹴りを食らわせた。思い切り蹴りを入れたことで手が痺れたのだろう……ナイフを落とし、手を押さえて数歩離れた男の人を視界に映しながら、私は危なげなく着地すると───
「《──水面に映るは、月の如し──……
「がァッ!?!」
───私固有のクラフトを、発動させた。故郷にいる、黄緑色の髪の私にとってお兄ちゃんの1人ような存在を思い浮かべて……彼の固有クラフトである《ファントムラッシュ》、それの私の体格でも可能な一部をそのまま再現する。フラついた男の人の足元に潜り込み、気を溜めて……しゃがんだ状態からバク転するように一気に気を解放しながら、蹴りあげる!
男の人の顎へキレイに私の足が入り、その人は数人の男の人たちを巻き込みながら勢いよく後方へ吹っ飛んでいって、沈黙した。着地したそのままの位置で前方にまだいる男の人たちの方を見ながら構えを取る。
「……はは、なにそれ?」
「見て取り込んだものを……私の身体能力の制限内、できる範囲でコピーしてそのまま再現できる、クラフト……えと、《魔眼》、みたいなやつ」
「ふぅん、……また聞かせてよね」
……カルマくんの私を見る目が何か、変わった気がした……それは私が恐れていたことの1つで、だからこそ知られたくなかったこと。だけど今このメンバーで動けるのは、多分喧嘩慣れしているカルマくんしかいない、……なら、見せてこなかっただけで、
そう判断した私は、そのまま可能なら他の人にも攻撃して、逃げ道を確保しようと思って体制を低くした……だけど、その時だった。
「嫌!」
「なに!?」
背後から聞こえた声に慌てて振り返れば、後ろから迫っていた男たちにカエデちゃんと有希子ちゃんが捕まっていた。手を出してきたのは前方にいた男の人たちだけだったから、後ろの人たちは退路を塞いでいるだけで手は出してこないと思い込んでいた……私の思い込みのせいだ、守る力のある私が、前に出て2人から離れたせいで……!
「っ!」
「カエデちゃん、有希子ちゃ、」
2人とも逃れようと暴れているけど、両腕を押さえ込まれていて自由に動けないようだ。カルマくんもそちらを向いて、私もすぐに助けに入ろうと身体の向きを変えた、その時だった。
「むぐっ!?」
「このアマ……よくもやってくれたな……!!」
祇園の路地裏は、最初に確認した通り狭くて遮蔽物がある……多分、これだけ大柄な人でも十分隠れていることができる。完全に背を向けていた私の背後から片手だけで口を塞がれ頭を全く動かせず、もう片腕で私の両腕を後ろに拘束され、身体ごと宙に持ち上げられてしまった……前、こんなことがあった時は長く伸ばしていた髪だけを掴まれていたけど、今回は、全く動けず簡単に逃げられそうにない。
カエデちゃんや有希子ちゃんと違って、地面に足をつけていると反撃できると察せられていたのか、私の身体は完全に宙に浮いている状態……それでも足は抑えられてなくて自由だから、暴れてなんとか拘束から逃れようとしていた、私の目に、入ってきたのは。
「ッアミサちゃ」
「っ!!んーーーっ!!!」
「え……っ」
「残念でしたぁ」
私を見て、助けようとしたのかこちらに構えをとったカルマくん。その背後には……鈍器を振りかぶる男の姿。
叫んで知らせようとしたけど、私は口を塞がれていて声は全く言葉にならないし、頭も動かせないから仕草として示すこともできない。思った通りに伝えることができない中、自力で気配に気づいたカルマくんは、それを回避する前に後頭部を思い切り殴られていた。そして私たちの中で1番強いと、
私たちを助けるために加勢しようとした杉野くんも蹴り飛ばされ、渚くんを巻き込んで倒れてしまい……蹴られた場所が悪かったのか動かなくなってしまった。カエデちゃんと有希子ちゃんが、どこかへ連れさらわれていく声と、姿が目に入る。
「むぐ、ん、んーーっ!!」
「チッ、うるせぇなぁ……!」
「ッぐ、ぁ……!?」
それを見て余計に暴れ、叫んだからだろうか……いきなり両腕だけ開放され、頭だけを押さえつけられたことで、全ての体重をいきなり頭で支えることになる。また、身体の拘束が外れたせいでバランスが取れなくなり、予想外のことに混乱したことを自覚した時には、私を拘束していた男の人によって思い切りみぞおちを殴られていた。重たく鈍い傷みが走り、肺に近かいところを殴られたせいか息が詰まる……息が、……そのまま体に力が入らなくなり、意識が保てなくなる。
どんどん薄れていく意識、目の前が真っ暗になっていく中。最後に見えたのは……
渚くんの上でお腹を抑えて倒れ込む杉野くん。
今にも殴られようとしている渚くん。
そして───蹴られながらもこちらを見て、手を伸ばそうとした、カルマくんの姿だった。
「み、みんな!大丈夫ですか…!?」
「良かった、奥田さんは無事だったんだ」
「ごめんなさい……思い切り隠れてました……」
「いや、それで正しいよ……っ、犯罪なれしてやがるよ、あいつ等……通報してもすぐには解決しないだろうね。……ていうか、俺に直接処刑させてほしいんだけど」
「でも、どうやって探し出す……?」
「………」
〝っ!!んーーーっ!!〟
────ギリィッ
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修学旅行、2時間目でした。
この回はアニメも漫画も大好きですが、その分衝撃的な場面ですね。それを損なわず、小説を書けるよう、努力したつもりです。
オリ主が思わず出してしまった素の、隠していた強さ。
オリジナルのクラフト技も登場させました。
……本気になったらどうなるのかな。
まだまだ続きます、修学旅行。
★用語説明★
クラフト:英雄伝説軌跡しりーずにおいて、俗に言う『技』や『必殺技』に該当するもの。ただ『クラフト』という時は、そのキャラクター固有の技のことを指し、『Sクラフト』と言った時は、そのキャラクターの奥義、必殺技のことを指している。