「
……分かったでしょ?このサマンサとキャリーの
今、私たちが受けているのはイリーナ先生が主導する英語の授業……学校文法など受験英語を教える殺せんせーと違い、彼女の授業は経験を生かした実践的な会話術で、ネイティブな発音、実践例を交えた英会話を学ぶことができる。つまり、生の英語を聞くことで、いざという時の
ただただ教科書を読み進めるだけの授業よりも分かりやすいし、その場ですぐに私たちの発音を聞いて評価してくれて、飽きさせない豊富な経験談があるのがおもしろい……だからこの授業は私たちE組にとても人気がある。……あるの、だけど……
「この『マジ』に当たるのがご存知Really。はい、木村……言ってみなさい。Really?」
「り、リアリー?」
「はいダメー。LとRがゴチャゴチャよ……この区別はつけられるようになっときなさい。アミサ!あんたやってみなさい」
「え、Really……?」
「ん、さすがね。LとRの発音は日本人とは相性が悪いの……
かなり卑猥というか、エロいというか……使う教材も少し、……少し?刺激の強い海外ドラマの恋愛シーンが多くて、まともに見れない人がたくさんいる授業でもある。しかも、正解しても不正解でも公開ディープキスの刑は問答無用で執行されるから、全員一度は被害にあっている……もちろん、私も。
〝アミサ、ちょっと前に来て私と会話してみなさい〟
〝え、……えっと、
〝アンタって子はホント話が早いから助かるわ〜!ご褒美♡〟
〝え……んんんっっ!?〜っん、……っぁ、ん……っ、ん〟
〝あらぁ……ふふん、アミサ、キスしたことないわよね?なのに無意識で舌を返せるなんて受けの素質があるわ……ん、〟
〝〜〜っっ、んぅ……っ〟
〝……あの、ビッチ先生、真尾がいい反応なのはなんとなく分かるんですけど、見てる俺らが居た堪れないのでやめてあげてください……あと、長くないですか;〟
〝…………〟
〝ついでに、後ろからの無言の殺気が怖いんで……〟
〝この子、どんな難問出しても普段から絶対間違えないもの、今やらなくていつやるのよ!というか……なによカルマ、殺気送るくらいアンタもやって欲しいって?たっく素直に言いなさいよしょうがないわねっ〟
〝は?そんなわけないで、っっっ!?〟
〝……ん、……アンタ器用すぎる上になーんか手馴れてるのよね。特に直すところも無いしつまんないわ〟
〝〜っ、っ、ぷは、ねぇ、俺なんでやられてんの……?〟
〝……私、正解も間違いもしてないのに……〟
〝アミサはご褒美って言ったじゃない。カルマは間接でも直接でもいい女のキスもらっといて文句言うんじゃないわよ〟
〝!……なんでこの人気付いてるわけ……〟
〝見る人が見れば分かるものよ〟
私、イリーナ先生のいう条件と全く関係ない方向というか……問題に答えるもなにも、先生の指名で前に出ただけなのに公開ディープキスくらったんだけど……何気にカルマくんまで巻き添えになってるし……そんなイリーナ先生はほぼ痴女だって、みんなが言っている。授業中に顔色を真っ赤にしたり、真っ青にしたり、机に伏せてみないようにしたり、……ガン見したり。ある意味みんなの性格とかがよく分かる授業でもある。
……私の場合、文章や会話文ならそこまで感情がついてくるわけじゃないから普通にしっかり参加できているつもりだけど、映像を使っての授業はほとんど見れなくて……男女の恋愛が、あんなにドロドロ……違う、濃い……、えっちというか、卑猥というか……ダメだ説明できなくなってきた……とりあえずスゴいものは全くついていける気がしない。
「はい、じゃあ隣同士で黒板の英文3回ずつ言い合ってみなさい。別に感情込めろとは言わないから……あ、寺坂、今日アンタは律とやんなさい」
「はぁ!?なんでだよ!」
「せっかく男女の席順なのに、最後尾は寺坂とカルマ、アミサと律の同性同士になるからに決まってるじゃないって、毎回言ってることでしょ!そんでもって今回はとっくにペアになってるカルマとアミサを外すなら、律のとこに移動するのはアンタしかいないでしょうが」
『よろしくお願いします、寺坂さん!』
「チッ……」
E組の席順は男女別で列になっている……これがイリーナ先生の授業に丁度いいらしくて、先生が持ち出した英文を男女で読み合わせることなんてざらにある。英文によっては前後で女子同士、男子同士になることもあるけど……最後尾の私、カルマくん、寺坂くん、律ちゃんの4人はイリーナ先生の気分でペアを変えられることが多い。無理もないよね、人数の関係で(律ちゃんは設置の問題だろうけど)私たちの席だけ飛び出てるんだもん……。
寺坂くんが渋々椅子を持って律ちゃんの横に移動した頃、私は早々にカルマくんと3回ずつ読み終わり、あとはみんなが終わるまで、のんびりイリーナ先生の授業についておしゃべりをしていた。
「……にしても、アミサちゃんって映像以外結構フツーの顔でビッチ先生の授業受けてるよね……卑猥だな〜とか思ったりしないの?」
「映像は直接的すぎるからアレだけど、それ以外ってそれほどじゃなくない……?」
「そう?だってビッチ先生はアレを駆使して男を手玉に取ってきてるわけじゃん」
「……んーなんていうか……映像って、伝えるために直接的な見せ方してるでしょ?だから『あ、これはダメだ』ってやつは見続けるの無理というか……やっぱり、文章だけでエロトークって言われてもピンと来ない、んだよね……だってただ相手のことを褒めてるんだよ、ね?それがなんでエロいものになるのかが、イマイチ……」
「あー……そっか一応ビッチ先生の持ってくる教材、ギリギリ中学生が見ても平気なヤツだし……アミサちゃん普通に英文訳せるから、直訳するとあんまりソレっぽくなくて実感できないのか」
「……これ、実感してないと危ない?」
「……場合によると思うけどね」
「私からしたら、公開ディープキスが1番……え、えっちな感じがして……それ以上があるの?って感じなんだけど……」
「あー……なるほどねぇ」
「ちょっと、そこの最後尾で余裕スカしてる2人!……おいコラ目を逸らすんじゃないわよ、寺坂と律なわけないでしょアンタ達よアミサとカルマ!余裕ってことは自信あんでしょうね?アンタ達前で実践してみなさい!」
「「え。」」
いきなりの指名に私とカルマくんは驚いて前を向いたけど、みんないつの間にか読み合いを終えていて、……数人机に突っ伏してるのは、早速ディープキスの刑を食らった人なんだろう……イリーナ先生の指名にこちらを向いていた。確かにちゃんと前を向かずに2人で話してたのはいけないことだったな……と思い、一度顔を見合わせてから席を立つ。
前に着くとイリーナ先生に「なんなら雰囲気出して、実際に自分が思う通りに演じてみなさい!」という無茶ぶりを振られ、慌てて英文の解釈をする。……カルマくんが何か思いついたように悪魔的な笑みを浮かべているのが怖いけど、先生が待ってくれるわけが無い。Start!の合図で私は意を決して顔を上げると、振り向きざまにカルマくんの心臓の辺りに右手を添え、軽く寄りかかるように見上げながらセリフを口にする。
「……Oh……sexy guy. it's a miracle.」
イリーナ先生の言う少しでも雰囲気を出す、演じるというのはこういう事なのかな……と、私の解釈だった照れながら甘えるように、カルマくんへの
そのままの姿勢で返答を待っていると、カルマくんがおもむろに顔を近付けてきて、って、え、
「……What? ……Really?」
ち、近い近い近い近い……!!ただでさえ身長差があるからカルマくんが屈むことになるんだけど、だからって私が添えた右手を軽く握り返しながら私の顔に左手を添えて顔を近づけて、しかも囁かれるっていうのは、は……恥ずかし、すぎる……っ!
「……どう?これでこういう風に使うとエロいって理解できた……?」
「あ、え、……ぅ、ぁ……」
「何よ、2人して発音完璧すぎて直すとこないじゃない!つまんないわね……でも、」
「……きゅぅ……」
「やべ……やりすぎた」
「雰囲気出せとは確かに言ったわよ、でも顎クイしながら至近距離で囁くとか……私の授業の意味は理解できてるみたいだけど、予想外の返しに完全キャパオーバーしちゃってるじゃない」
カルマくんはすぐに解放してくれたけど……恥ずかしすぎて立っていられず、顔が真っ赤になってる自覚のある私は両手で顔を覆ったままヘナヘナとその場に座り込んでしまい……ちょうどそのタイミングでチャイムが鳴ったため、挨拶をパスしたひなたちゃんとメグちゃんが私を起こしに来てくれた。
「アミサ、生きてる?大丈夫?」
「うぅ……私の方の英文ならともかく、あのたった二言しか言ってないのに……なんでぇ……」
「免疫ないもんね……いや、アミサの時点で絵になるなーとは思ってたけどさ、アレは見てる私達も予想外だったから……」
「というか、アミサが変にしっかりやるからカルマのイタズラ心に火をつけたんじゃない……?」
「……否定できないわね」
あー、とかうー、とか言葉にならないことを言って蹲っていた私に、2人は色々声をかけてくれたんだけど……ちゃんと返事ができていたかは、わからない。
カルマくんの方はカルマくんの方で、男性陣(+イリーナ先生)が集まって何やら話しているみたいだけど、そっちに意識を向ける余裕が全くない。……今後はこういう実演に指名されないようにしなきゃ、心臓が持たないよ……
「(で、アンタはなんで、普段はやらないのにこういう時は本気出してるわけ?)」
「(しょーがないじゃん、『ビッチ先生の授業が卑猥なのが理解できない』って言ってた時に指名されたから、丁度いいから利用してやろうと思って、つい)」
「(顎クイとか、そーゆーのを女にするのは俺の専売特許だろ!?羨ましい!)」
「(別に前原の専売特許ってことは無いだろ。てか、真尾はお前の『つい』のイタズラ心に巻き込まれたわけか)」
「(いやそもそもさ、アミサちゃんのアレも悪いと思うんだけど。何?ビッチ先生が言うからってあんな甘えるような上目遣いとか……どこで覚えてくんの?演技だとしても真正面でアレはキツいって)」
「(そんなのビッチ先生の授業しかねーだろ;)」
「(私の教材が役に立ってんのね、さすがアミサだわ)」
「(……なんっか腹立つ……)」
「(……結論、たまに無自覚でとんでもない事やらかす真尾も真尾だけど、本気出したカルマ、お前も怖ぇーよ)」
◆
そんな授業があった次の日のこと。
「今日の体育は足場が不安定な場所でナイフを振る訓練だ。全員あの足場の上に立ち、自分の目の前にある風船に向かってナイフを刺せ」
「え……足場って、両足着けるしそんなに難しいことなんてないんじゃないですか?」
「地上と高所、しかも制限された足場を同じものと考えない方がいい。加えて風船の位置は少し離してあるし、風やナイフの当て方一つで揺れ方は不規則に変わる。やってみれば難しさが分かるはずだ……では、最初の組から──」
体育の時間、私たちは9人ずつ校庭の端に立てられた2mくらいの高さで片足がちょうど乗る面積の木の足場の上で、バランスをとりながらナイフを当てる訓練をしていた。私は2番目の組で、今は最初の組が挑戦している姿を見ているところ……元体操部のひなたちゃんやバランス、動体視力のいい凛香ちゃんとかは上手いし、ヒットする位置もいい反面、あまり運動が得意でない竹林くんなんかはまず高所でバランスを取り続けることすら難しそうだ。
今までは地面の上でナイフを振るう、銃を打つことに加えて体作りの基礎中の基礎ばかりを繰り返してきたから、普段から慣れているフィールド以外で体を使うのは結構難しいこと。みんなはそれぞれが慣れないことに戸惑いながら挑戦していく……だけど、私はあまり心配していない。だって、道無き道を行くようなバランス、動きは私の得意分野と言えるから。
「やめ!気をつけて降りろ……では次の組、登る時には俺が手を貸すからその場で待機……!?」
次は私がやる番だとわかっていたから烏間先生が言った手を貸すという言葉も聞かず、前半組が足場から降りて場所が空いたのを確認してすぐ、私は助走もなく足場にする一本の足場に飛び乗った。ナイフを当てる風船の方を向こうと、丸太の足場一本の上で片足立ちのまま軽く跳んで向きを変えるように回転する、と……そちら側に立っていた烏間先生を含めて次にやる人、もう終わった人みんなが私の方を注目していて。
「……?えっと、どうかしましたか……?」
「いや、いやいやいや、どうかしたじゃねーよ、今何やった!?」
「え、普通にピョンって乗って、向き変えた……」
「助走もなしにか!?すげぇな……真尾がそんなに運動神経いいなんて……」
……そうか、ここは日本……私が元々住んでいた、生きてきた場所のように道に出たら魔獣と戦闘、とかが日常的にあるわけじゃないし、いきなりこんなことをしてしまったら不自然なこと。暗殺教室って環境が不自然すぎて、みんなと揃えるために
何人かは「かっけぇ!」とか「すごいな!」とか言ってくれてるけど、普段大人しくしてる私が、いきなりこんな動きをしてしまっては変にしか見えないんじゃ……!?
でも、やってしまったことは取り消せないし、どうしようかと思っていれば何かを考えている様子だった烏間先生がこちらを向く。
「ふむ……真尾さんはパルクールのような動きの経験があるのか?」
「ぱる……?」
「道無き道を壁や障害物を駆使して体一つで進んでいく運動、動きのことだと思えばいい」
「……ぱるくーる、というものは分からないですけど……私の元々住んでいた場所、そこではある事情から必要なことだったので、こんな動きが身についたというか……身につけざるを得なかったといいますか……」
「……そういえば、ここに来てすぐに殺せんせーの襲撃の時に、すごい体勢で触手の破壊に成功してた……運動神経いいの、あたりまえだよ」
「修学旅行の時も、カルマの肩まで飛び上がって飛び蹴りしてたもんな……そら跳べるわ」
「なるほど……得意な分野を伸ばすことは俺も推奨したい。しかし今は君達の能力を把握している最中でもある……もう少しばかりは、俺の目の届く範囲で動いてくれ」
「は、はい……!」
よかった、なんとか烏間先生をありそうな事情でごまかせた、かもしれない。と、少し安心していたのに、烏間先生は私のバランス感覚を試したいと他の8人が二本の足場の上に両足をそれぞれ置きナイフを振るう中、一本の足場の上での課題を指定してきた。……みんなをちょっとずつ観察してるならまだしも、私に注目して観察されたら、出し惜しみしていたら変に隠しているものがバレるかもしれない……それならいっそ、烏間先生には見せてしまおうか。
片足で足場に立ちながらその場で軽くジャンプ、大きく屈伸して跳ね上がる、その場で飛びながら一回転、みんなと同じようにナイフを扱う……などなど、言われるがままに課題をこなした結果、バランスの訓練は他のメンバーの中でも特に優れていたらしい何人かと一緒に別メニューに取り組むことになった。
一応解放してもらえてほっと息をつく間もなく……私に向けられてるわけではないのにチクチクと刺さってくる変な殺気が気になってきた。私の能力を見てもらっている間くらいから、森の奥の方から……その、2つほど向けられているそれが……。最初は一応訓練にまぎれる程度には隠していたようだけど、今では私や烏間先生でなくても気づけるほど目立っていて……
「先生、アレ……」
「気にするな、続けてくれ」
イリーナ先生、殺せんせー、……あと、東欧の顔立ちをした男の人……何がしたいのかわからないけど明らかにこちらを……違う、多分だけど、烏間先生を狙ってる。
だんだんあからさまになっていくソレに我慢出来なくなったのか、区切りもいいしと烏間先生は私たちを校庭の中央へ集めて、そこで話されたことによれば……あのイリーナ先生たちと一緒にいた男の人は、イリーナ先生をこのE組に紹介した殺し屋のお師匠様らしく、いつまで経っても暗殺できないイリーナ先生を
それをイリーナ先生が拒否していた所に殺せんせーが割って入って勝負を持ち出したんだそうだ。内容は、『今日1日の間に烏間先生へナイフを当てること』……!
「迷惑な話だが、君等の授業に影響は与えない……普段通り過ごしてくれ。では、これで体育の授業を……」
「カラスマ先生〜っ!お疲れ様でしたぁ〜!ノド乾いたでしょ、ハイ冷たい飲み物!」
……イリーナ先生、あからさますぎる……!
体育の授業が終わるのを見図らって、最初に殺せんせーに対してしていたような態度で水筒を片手に走ってきたイリーナ先生。今までこんなことしたことなかったし、絶対何か入ってますと、すぐに分かるような……わざとらしくさえ見えるやり方で水筒の飲み物を手渡そうとしている。
「……おおかた筋弛緩剤だな。言っておくが、そもそも、受け取れる間合いまで近寄らせないぞ」
言い切って校舎へと歩いていく烏間先生に焦ったイリーナ先生は転んだふりをして気を引き、近付こうとするけど……烏間先生は当たり前のようにガン無視、スタスタと歩いて行ってしまった。残されたイリーナ先生は、磯貝くん、三村くんの2人が起こしていて……
「ビッチ先生……」
「流石にそれじゃー、俺等も騙せないよ……」
「仕方ないでしょ!!顔見知りに色仕掛けとかどうやったって不自然になるわ!!キャバ嬢だって客が偶然父親だったらぎこちなくなるでしょ!?それと一緒よ!」
「「「知らねーよ!」」」
「え、そうなのかな……?……知り合いのホストのお兄さん、顔見知りのお兄さんに会ってもぎこちなくどころか、むしろ逆に楽しそうにしながら口説いてたよ……?」
「そういう人もいるだろうけど、私には無理!!」
そうなのか……あの人、いつも通りにこやかに対応してたし、ものすごく接近して誘惑してたらしいのに。普段から飄々としてて掴みどころのないお兄さんだったから、あの人がトクベツなのかな。
焦ったように、それでもイライラとした顔で足早にイリーナ先生がここからいなくなって少しして、ハッとしたように慌てて優月ちゃんが私の肩を掴んできた。
「……待って、今アミサちゃん何て言った?」
「え……逆に、楽しそうな顔で口説いてたよって……」
「違う、その前。誰が誰にって?」
「知り合いのホストのお兄さんが、顔見知りのお兄さんに」
「「「…………(同性……?)」」」
「?」
「一応聞くね。お兄さんが、お姉さんに、……じゃなくて?」
「うん、お兄さんが、お兄さんに」
「……。アミサ、お願いだからそれを普通だと思わないで……そういう人もいると思うけど、同性同士で口説き合うのは一応そんなにないから……」
「え、……う、うん……?」
知り合いのホストの
私たちはあとから知ったことだけど、この体育の授業のあと、教員室で仕事をしていた烏間先生にイリーナ先生のお師匠様が真正面から暗殺を仕掛けたけど返り討ちにあったらしく、この『烏間先生を先に殺す対決』は引き分け、もしくはイリーナ先生がナイフを当てるかのどちらかしか無くなったらしい。
私たちとしてはイリーナ先生に頑張ってほしい……だって、私たちの目線で教えてくれて、一緒に成長していってくれる人だから。まだ、知りたいこととか、教えて欲しいことがたくさんあるから。
◆
「お、渚くん見てみ。あそこ」
「あぁ、烏間先生。よくあそこでご飯食べてるよね」
「たいていハンバーガーかカップラーメンだけどね……他のもの、食べてるとこ見たことないよ」
「確かにね……急に弁当食い出しても不気味だけど。……と、その烏間先生に近づいてく女が一人。殺る気だね、ビッチ先生」
お昼休み。お昼ご飯を机に広げ、みんながご飯を食べたり友だちとだべったりしている中……ふと、外を眺めていたカルマくんが声を上げ、それを見始めた私たちを見て、他のクラスメイトたちも窓際に集まってくる。木陰に座ってお昼ごはんの烏間先生と、その烏間先生に近寄っていき、なにやら話しているように見えるイリーナ先生……上着を脱いで、綺麗な体を惜しみなくさらす姿から、あれは色仕掛け……?でも、その手が烏間先生に通用するとは到底思えない。
何を話しているかまでは分からないけど、話がついたのか、イリーナ先生が木の後ろに回り込んでナイフを構え……た、その一瞬で烏間先生が体制を崩して仰向けに倒れ込む。
遠くてはっきりとは分からないけど、多分脱ぎ捨てた上着になにか仕掛けていたか、上着をカモフラージュに何かを隠していたかのどちらかで、その隙を見逃さずイリーナ先生が烏間先生の上に乗り上げた。
「おおぉっ!烏間先生の上をとった!」
「やるじゃんビッチ先生!!」
「……だめ」
「なんで?烏間先生を倒れ込ませるとかそうそうできることじゃ」
「違う、遅いの。上をとって、一息入れるんじゃ……すぐに行動しなきゃ、烏間先生には十分すぎる」
イリーナ先生は勢いよくナイフを振り下ろしたけど、烏間先生にギリギリで止められてしまった。体制を崩して上をとられた動揺があるうちに決め打つならまだしも、イリーナ先生は『烏間先生の上をとれた』ことに安心して少し間をとってしまった。
烏間先生くらいの実力者なら、それだけの隙があれば動揺なんてもうないようなもの、ある程度の立て直しができてしまう……みんなで、力勝負になっては烏間先生に分がある2人の拮抗をハラハラ見守っていると、烏間先生は諦めたようにイリーナ先生の手を離した。……ナイフが、当たった……?つまり、
「当たった……!」
「すげぇ!」
「ビッチ先生残留決定じゃん!」
E組教室の中では見守っていた私たちの拍手が鳴り響いていた。みんな、イリーナ先生の残留を望み、喜んでいることがよくわかる光景だった。
イリーナ先生は、潜入暗殺を得意とする殺し屋……つまり、正面からぶつかる戦闘をすることに重きを置いていない、自分の魅力や女を魅せて油断させてタイミングを見計らう殺し方。つまり、完全武闘派な烏間先生と正面からぶつかるのは相性が悪すぎるし、苦手分野なはず。それでも今回、イリーナ先生はそれから逃げずに挑戦し、立ち向かい、そして彼女なりの戦術を考えて克服した……私たちのいい見本だ。
授業では、……ううん普段からちょっと卑猥なところがあって、高慢で、それでも真っ直ぐで子どものような一面のあるイリーナ先生。この人は、
苦手の克服、かぁ……イリーナ先生は希望する子に放課後英語以外でも交渉術やその他経験を活かした指導をしてくれてるのは、桃花ちゃんや陽菜乃ちゃんに聞いて知ってはいた。今までは苦手意識から敬遠していたんだけど……イリーナ先生も苦手に立ち向かったんだ、私も……少し頑張ってみようかな。
────コンコン
「イリーナ先生、……いますか?」
「あ、アミサちゃんだ〜!」
「アミサじゃない、どうしたの?」
「もしかして……」
「あ、あの、……私も、イリーナ先生の交渉術とか、桃花ちゃんたちの受けてる授業、受けたいって思って……」
「……アンタ、授業の映像見るたびに顔真っ赤にして沈んでるじゃない。前のカルマとの実演だって……この放課後に話してるのはあれ以上よ?アンタに耐えれるの?」
「私だって、先生みたいな挑戦と克服、していきたいって思ったから。……それに、いつまでも私ばっかり……」
「……、私ばっかり?」
「……!な、なんでもないです。……えと、……えと……あ!な、慣れてかないと先生の授業がまともに聞けなくなっちゃう、から!だから、」
「誤魔化したわね……もう、いいわよ。ほら、入んなさい……アンタはいろいろ女を使う素質があるからね……フフ、色々とテクを仕込んであげるわ」
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LRの時間でした。
前半の発音の部分、英文を探してこようと思ったのですが、私の英語力では拾ってくることすら叶わずアニメと翻訳様々でごまかしてます。そしてこの小説のカルマ君は何故かヘタレっぽさが出てるのでかなり頑張ってもらいました。
結果、最後にはオリ主も努力を決意。……ただし、方向は少し間違ってます。
次回、原作では『映画の時間』ですが、この作品はクロスオーバー……改変します!
2部構成になる次のお話は、題して……『舞台の時間』
行き先はハワイではなく、──魔都クロスベル
オリ主のお姉さん、他数名……軌跡シリーズから登場します!
お楽しみに!