暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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そういえば、なぜかリニューアル前に
菅谷くんエピソードである、『アートの時間』を書いてなかったんですね。

多分カルマがそこまで出ばらない話だったので敬遠したんだと思いますが……今回、ちょっと加筆しながら書いてみました。




30話 アートの時間

 

 梅雨が明けて暑くなれば、もうすぐ夏といってもいい時期。昨日までは長袖のカッターシャツにジャケットを重ねて着ていたみんなも、7月1日になった今日からは、制服が半袖の夏服に変わった……いわゆる衣替え、というやつだ。

 一応椚ヶ丘中学校には半袖のカッターシャツと上から羽織るボトムスと同じ色のベストの他にに、女の子のリボンタイ、男の子のネクタイは学校指定の制服がある。だけどE組のみんなは指定のベストやタイを着けている人が圧倒的に少ない気がする……ほとんどカッターシャツだけだったり、自前のベストを着ている人ばっかりだ。あれ、そういえば冬服でも結構みんな自由だったな……全校集会で集まった時、E組だけ自由度の高い服装をして集まっていた記憶が……

 

 ちなみに私とカルマに関しては、冬服と変わらず、素材だけは変わった長袖のカーディガンを着ていたりする。私は長袖のままで着てるけど、カルマは暑いのかな?袖をまくって温度調節をしているみたいだ……うん、確認すれば私たちも自由だった。

 

「いやー……肌色が眩しいねェ。健全な男子中学生には辛い時期だぜ、な!渚!」

 

「ま、まぁね……岡島君……」

 

「いけませんよ、露出の季節に平常心を乱しては」

 

「あんたが言うなエロダコ!!!」

 

 土曜日課の今日は授業が午前中だけってこともあって、みんな平日よりはゆるっとした雰囲気と、遅刻しない程度のゆっくりした登校だ。岡島くんは自分の席でなんか教室の中をキョロキョロと見回しながらよく分からないことを言ってるし、殺せんせーは教卓で水着の女の人の写真が載っている雑誌を広げながらキリッといいことを言ってる風の顔をしてる。

 即ツッコミが入っているところを見ると、そんなにいい事じゃないんだろうな……岡島くんは制服の衣替えのことを言ってるんだとして、殺せんせーの水着となるとまた話は別なんじゃ?と思いつつ、2人の言ってることをまとめると、肌色が見えると男の子は平常心じゃなくなるってこと?そういうものなの……?というより肌色……

 

「…………」

 

「……まーたアンタのことだから変なこと考えてそうだけど、一応聞いたげるね。アミサ、何考えてるの?」

 

「え?……えと……腕と足の部分が見えるようになっただけで肌色なの?」

 

「……ん?どゆこと?カルマ解説してくれない?」

 

「……ちょっ、とごめん。俺でも『夏服になって露出面積が増えたって言えるの?』ってのは分かったけど、なんでそうなったのかが汲み取れない。もっかい詳しく」

 

「あ、肌色って露出のこと言ってたのね……」

 

「えー、カルマが諦めるの珍しいじゃん。言うて俺も分からんけど」

 

「なんの話〜?」

 

「なんで人増えて……ちょ、ちょっとまって」

 

 なんとなくあの2人(岡島くんと殺せんせー)の謎の会話について考えていたら、莉桜ちゃんに話しかけられて思ったままそのままの言葉で答えたんだけど……私だけが分かってる言い方では当たり前に上手く伝わらなかったし、いつもたいてい分かってくれるカルマにまで聞き返されてしまった。

 自分の席にカバンを片付けた何人かも私たちの会話を聞いてたみたいで、興味本位でか近くに来て、気付けばなぜか周りに人が増えていた。1番私の言葉足らずな本意に気づいてくれるカルマがわかってくれてない時点で、もちろん誰にも伝わってなかったけど。

 

 伝え直そうと思って言葉を探してみるけど……まず最初ので2人にどう伝わったのかが分からないんだよね、どう言い換えればいいんだろう。それに正直、私自身が上手くわかってないことを説明するのって難しい……最初から細かく言えば伝わるのかな。

 

「えと……岡島くんと殺せんせーの言ってたことって、夏になったから見えてる肌色の部分が増えたってことでしょ?水着はまだ分かるけど、制服の冬服から夏服になって見えるようになったのって腕と足だけだから、肌色増えてないと思う。……あと平常心が乱れるって何……?」

 

「……情報増えてないんだよねぇ……考えてくる……」

 

「OKよろしく」

 

「うーん、確かにカルマの言う通りのことが分かったような分からんような……アミサの思考回路ってホント謎。……そんでもって追加された疑問って、私はいいけど男子的に答えていいのこれ?」

 

「その質問についてだけは答えが分かるだけに答えづらいというか、答えると何かが減りそうっていうか……」

 

「男子の名誉のためにも答えないでもらって……」

 

「俺が!E組に落とされた学力低下の原因みたいなもんってことよ!男なら誰しも通る道だからなッ!」

 

「いやお前が答えるのかよ」

 

「岡島、それは誇ることじゃない」

 

「というかそもそも男子全員そうだって言い方すんな!」

 

「もうちょいオブラートに包めよな」

 

「ならお前は平常心を保てるって言うのか!?男だぞ!?男だったら気になって当然だろ前の席の女子の透けブモガッッ」

 

「女子の前であからさまに言うんじゃねぇよ!?」

 

「……アミサ、聞かなかったことにしといて」

 

「そもそも話、ついてけてなくて……」

 

「じゃあ知らなくていいから、教育に悪い」

 

「私もう14なんだけどな……」

 

 『三人寄れば文殊の知恵』とはいうけど、それより多い3人以上が集まって私の疑問について考えてくれてるけど、結局全員の頭を悩ませてしまっている。これ以上私もうまく言語化できないから、もう噛みくだけないんだけど……

 その最中、なぜか話題の対象だった岡島くんが興奮気味にこっちに来て、自信満々に答えようとしてたけど話してる途中で杉野くんに口を塞がれて怒られてる……話の流れが怒涛の展開すぎて反応できなかった……とりあえず『透けブモガ』って何……?

 

「……、……制服……、何かと比較して……いやあれも制服ってことを言いたいんだとしたら……」

 

「お、ずっと考えてたカルマが浮上してきた」

 

「なんか気づいた?」

 

「……んー、自信ないけどね……アミサ、まさかとは思うけど、アルカンシェルの衣装を制服の基準にしてない?」

 

「え、うん。だって肌色が見えるってああいうことでしょ?」

 

「……うん。……うん、そのまさかか……そんな気はした」

 

 私の返事を聞いて、なんかカルマの中では納得してくれたのか呆れ顔を向けられたんだけど、そんな顔向けられるほどのことだった……?

 

「いや、カルマ君だけで納得されても他全く分からないんだわ。説明してくれる?」

 

「……アミサも制服が学校のってことは理解してるんだろうけどさ、余計な肌色云々って条件が着いたから迷走したんだろーね。……律、あの日に撮ってるでしょ?アルカンシェルの衣装出して」

 

『主演の御三方が写ってるやつにします?』

 

「イリアさんのやつで」

 

『了解しました!こちらでいかがでしょう?』

 

 言葉で言うより見た方が早いってことで、カルマは6月の初めに私と渚くんと殺せんせーと4人で行ったアルカンシェルの公演写真から、衣装がわかりやすいやつを律ちゃんに表示してもらうことにしたらしい。

 すぐに律ちゃんがアルカンシェル側から許可をもらって撮った写真の中の、イリアお姉さんがステージの真ん中で堂々と演技をしている1枚を表示して、周りにいたみんながその写真に注目する。

 

「うお……クロスベルのアルカンシェルって有名だし知ってたけど、写真で改めて見るとだいぶ際どい衣装だな……」

 

『舞台上で踊った際、遠くで見る人にまで映えるためのヒラヒラした動きのある部分と、アーティストの動きを細部まで魅せるために余計なものを取り除いた、作り込まれた衣装ですよね!』

 

「で、この衣装がなんなの?」

 

「そうだね、【衣装】なんだよ……アミサの認識がズレてるのここなんだよね……」

 

「……つまり?」

 

「だって衣装ってことは、舞台の制服ってことでしょ?ここまで見えてたら確かに肌色増えたって思うけど、学校の制服は腕と足だけでしょ……?増えてなくない……?」

 

「「「……これと学校の制服一緒にしちゃダメだって……」」」

 

「えぇ……」

 

 今度はカルマだけでなく、他のみんなまでもが呆れ顔になってしまった。だって、こういう施設で働いてる人たちは、みんなその場所を象徴する制服を身につけているわけで、アーティストの人にとっては舞台衣装こそがその制服なはず。それと岡島くんたちの会話を繋いでみたら、私の中では疑問の説明としてはしっくり来てたんだけど……そもそもの考え方がダメだったみたい。

 結局は『布の量もだけど薄い生地になったから、冬よりも透けたり面積が減ったりしてる。だから下手に下着や肌が見えないように気をつけること』を女の子たちと約束することになった。最初の疑問の着地点が、なんでかみんなと約束することに繋がっちゃったんだけど、なんでこうなったんだろ……?

 

 最終的に今の段階で一応服装チェックしておこうという所にまで発展してしまい、何人かの女の子にお手洗いへと連れて行かれることになってしまった……ほんとなんでこうなったの?

 

「……最後の方、なんでこうなったって顔してたけど、アミサに危機感ないのが原因っていうのを分かってないんだろうな……分かってるわけないよねー、知ってた」

 

「余裕そうだがカルマ……お前だってその他大勢じゃなくて対象が真尾だったら平常心なんて無いだろ!?泊まらせてたこともあったんなら学校以上だろ真尾(あいつ)の場合!」

 

「無意識に男心をくすぐるスキンシップしてくるもんな」

 

「学校と違って家だと私服か。余計無頓着でしょ」

 

「……………………、………………ノーコメントで」

 

「せめてこっち見て言えよ」

 

「しかもすげー間があったな;」

 

「お前がはぐらかしもしないって相当だよ;」

 

「まぁ、アミサだしねぇ」

 

「それ含めてなんでも可愛いって思ってそうだけど」

 

「え?思ってるけど?当たり前じゃん」

 

「おま、男女全員にバレたからって吹っ切れすぎだろ;」

 

「ちょっと前までは男子の前でだけだったのに……」

 

 

 

 

 

 ──────バタバタバタバタッ

 

 

 

 

 

「カルマ!見て見て、菅谷くんがカルマのお母さんとお父さんの写真とお揃いになってるの!」

 

「……なんて?」

 

「噂をしてればE組(オレら)の妹分はまた謎の情報持ち帰ってきたぞ……」

 

「めちゃくちゃ嬉しそうだなー、……って!?」

 

 

 

「今日から半袖なのは計算外だった……晒したくなかったぜ、神々に封印されたこの左腕はよ……」

 

 

 

「「「……どっ……どーした菅谷!?」」」

 

「とりあえずアミサ、手ぇ放そっか」

 

「あ、早く見せたくて引っ張ってきちゃった。ごめんね菅谷くん」

 

「いんや?気にしてねーから行ったれ」

 

「え、菅谷……お前目の前のそれスルーする?」

 

「あの謎暴論の後の空気が吹っ飛んだな、お前すげぇわ」

 

「いや俺登校したの今だからな?前後知らねぇんだわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お手洗いからの帰り道に、ちょうど登校してきたらしい菅谷くんが玄関で靴を履き替えてるところに遭遇して、半袖からのぞく左腕に見事なボディペインティングが施されているのを発見。

 そのボディペインティングが、カルマの家で見た事のある家族写真に写っていたそれと同じように見えて、思わず彼のペイントのされていない右手を掴んで教室に連れて行ってしまった。お手洗いに一緒に行った女の子たちを置き去りにしてた……早く見せたくて、つい……

 

 今よくよく観察すれば、冬服でも絶対に見える左手の甲・指先までしっかり描かれているけど、昨日までは絶対になかった……もしかしなくても、昨日家に帰ってから今日になるまでに仕上げてきたってこと?細かいしすごいキレイなデザインだ。

 

「へ〜、ペイントなんだこれ!」 

 

「メヘンディアートっつってな、色素が定着したら1週間くらい取れねーんだ」

 

「あー、インドのやつっしょ?」

 

「知ってんだカルマ君」

 

「アミサも言ってたけどうちの両親インドかぶれでさ。旅行行く度描いてくるよ」

 

「よ、良かった……!先生てっきりうちのクラスから非行に走る生徒が出たかと;」

 

「……相変わらずそういうとこチキンだよね」

 

 カバンを片付けた菅谷くんがE組(クラス)のみんなに腕を見せて説明してくれている、横で大量の本を積上げている殺せんせー……『グレる少年とグレない少年の違いとは』『なぜ若者は非行に走るのか』『十代の悩み行動理解』『心のケア』『ゼロから入るカウンセリング』……菅谷くんが来るまでなかった本の山を一瞬で教室の床に積上げて数冊開いてるけど、これ全部せんせーの私物かな……持ってたの?

 

「よかったら殺せんせーにも描いてやろうか?まだ塗料残ってんだ」

 

「にゅやッ!いいんですか!?」

 

「へー、溶けたチョコで絵を描くみたいなやり方なんだ」

 

「楽しみですねぇ……先生こういうイレズミみたいなの一度は描いてみたかったんです」

 

 菅谷くんは、修学旅行の前だったかな、私の落し物を探して直してくれた時みたいにちょっとした修理ができたり、絵を描いたり物作りをするのが得意な人で……前に殺せんせーのすぐ取れちゃう変装用のつけ鼻もサイズ感あわせてたっけ。

 元々の腕もいいけど、芸術家気質のある彼はデザインを任せれば、とにかくプロ顔負けのセンスを発揮してくれるって信頼と安心感がある。だからこそ、殺せんせーもワクワクしながら顔に描いてもらってたんだろうけど……

 

 ──────ドロォ

 

「「「ギャーーーーーーー!!!」」」

 

「み゛ッ!?」

 

「来んなこっち!!!」

 

「近い近い怖い怖い怖い!!!」

 

 ペイント塗料が着いた顔の一部がいきなりドロっと溶けだし、殺せんせーが大慌てで教室中を飛び回って、黄色い何かを垂れ流しながら叫びまくりつつ逃げ回る。

 見た目がさながらちょっとした恐怖映像で、教室に点在してる生徒の近くを遠慮なく走り回るから、そこかしこで悲鳴が伝播して……耳、無くなったかと思った……

 

「なるほどな……対先生弾を粉末にして塗料の中に練りこんだのか」

 

「確かに先生完全に油断してたけど……殺すまでじっとしててはくれないよね」

 

「……うーむダメか。真尾が前に対先生BB弾を粉末にしてお菓子の表面にまぶしたら、触手溶かしながら食べてくれたって言ってたし、粉末にしても行けるって分かったからな……上手くいくかと思ったんだが」

 

「アイディアは面白いですが菅谷君、効果としては嫌がらせのレベルです。……ていうか、先生普通にカッコいい模様描いて欲しかったのに……」

 

「わ、悪かったよ!普通の塗料で描いてやるって;」

 

 もしかして、昨日まで無かったメヘンディアートを見える場所に描いて登校してきたのって、この暗殺に自然と繋げるための前フリだったってことなのかな……?だとしたら殺せんせー全力で楽しんで警戒してなかったし、上手なノせ方だったんじゃないかな。

 失敗したのは思ったより塗料によるダメージがなかったのと、殺せんせーを約束で縛らないで自由に逃げ回る隙を作ったままだったことが原因かなぁ……。対先生BB弾の形そのままに使うんじゃなくて、塗料っていう別の素材に混入させた形だから1回に触れる量が少なくなっちゃったのかも。

 

 そんな風に今の暗殺を分析していれば、頭から目の周りまで花や葉っぱモチーフの絵柄で飾ってもらった殺せんせーが、遠慮なく大喜びしているのを見て、みんなも描いて欲しくなったみたい……今教室にいるみんなが「俺も」「私も」と菅谷くんに集まっている。

 こんなに細かい絵を鉛筆でもない画材を使って、こんなに沢山のみんなの肌(キャンバス)に短時間で描きあげてしまうなんて……きっとこれは、彼にしかできない才能だろう。

 

「うし、こんなもんか。真尾も描くか?なんか希望のモチーフとかあれば聞くぜ?」

 

「!……いいの?……だったらお月様がいいな……」

 

「月かー、いいぜ〜……んー、だったら他に使うのはハートとかより星のが合うな……真尾の人柄も自分からみんなを照らして輝かせる太陽みたいな奴というよりは、明るく照らす誰かの光を受けてより存在を主張して誰よりも輝くような奴だもんなー……どっちもピッタリだよな……」

 

「……!……えへへ……」

 

「……ん、これでどうだ?」

 

「わぁぁ……ありがとう!菅谷くんってホントすごいね、こういうとこで、誰にも負けないの……ステキな特技だと思う」

 

「こっちこそありがとな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「……菅谷って芸術のことになると恥ずかしげもなく……そんでもって自由よね。口説き文句みたいなもんよあれ」

 

「しかも全く他意がないんだぜ……本トに本心からその時に思ったことを言ってるだけなんだろうな……」

 

「で、傍から聞いたら口説き文句なのにそれをただの褒め言葉としかとらえず、同じようなものをそのまま返す真尾とそのまま受け取る菅谷な」

 

「そういう所が真尾と菅谷ってそっくりだよな」

 

「「「わかる」」」

 

「だから無言の圧を送るなよカルマ。絶対菅谷なんも考えてないから……なんならお前に自覚の最初のきっかけ作ったのすらアイツだぞ」

 

「…………、……わかってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 菅谷くん含めたみんなが時間を忘れてメヘンディアートに夢中になり、E組のみんなの腕がどんどん菅谷くん色に染められて、描いてもらっている量こそ差はあっても、みんなちょっとずつは何かしらの柄が入った辺りで……

 

「私の色香に悲鳴を上げろオス達よ!!おはよギャーーーーーーーッッ!!!

 

 教室へ楽しそうに入ってきたイリーナ先生の悲鳴が上がった。

 

「なっ、何みんなでバケモノメイクやってんのよアンタら!!!」

 

「いやぁ、しばらくこのままにしておいて塗料をはがすと色素が定着してるんですって。楽しみで授業が手につきません」

 

「お前はそれでも担任か!!!というか1時間授業せずにこの謎メイクに使ったわけ!?今の時間もう私受け持ちの英語だけど!?!?」

 

「にゃやッ!?」

 

「「「あ。」」」

 

 その叫びを聞いてみんなで思わず時計を見ると……確かに朝のホームルームの時間なんてとっくの昔に終わっているし、それどころか殺せんせー受け持ちの社会の授業時間だって終わって、2時間目のイリーナ先生の英語の時間になっている。

 

「……、……と、いうことで、メヘンディアートはインドや中東で伝統的に行われてきたヘナという植物を使ったボディアートというわけです。ちょうどよく実際に体験できましたね!」

 

「無理やり授業っぽくまとめようとすんな!」

 

「あとインドのボディアートって教えてくれたのはカルマ君だし、実際体験させてくれたのは菅谷君だからね!」

 

「殺せんせー誰よりも1番楽しんでただけじゃん!」

 

「うぅ、生徒達が厳しい……ですが先生も描きたくなってきました」

 

「といっても、もうみんな描いちゃったから使える肌のあるやつ(真っ白なキャンバス)残ってないぜ?」

 

「あるじゃないですか、ここに……好き放題描けそうな面積の広いキャンバスが……」

 

「ちょ……ふざっけんじゃないわよ!!誰がそん、グヘッ!」

 

「あーあ、勝手に気絶しちゃったぞビッチ先生……」

 

 無理がありすぎる軌道修正を入れようとした殺せんせーは、『先生も描きたい』って欲に抗わず、授業をするために来たイリーナ先生をも巻き込もうとしている。

 イリーナ先生、生徒の衣替えに合わせてだいぶ薄着にしてきているから、確かにお絵描きするにはだいぶ肌色の面積広いもんね……

 

 みんなにペイントするために、教室中を専用の塗料を持って移動していた菅谷くんだったけど、クラスみんなに描けるだけのたくさんの塗料があっただろうから、その最中に多分落としちゃってたんだろう。逃げようとしたイリーナ先生が踏んですべり、頭を打ったのか動かなくなっちゃった……

 

「とりあえず安静にしておく間……先生はこっち半分、菅谷くんはそっち半分で」

 

「ほっほー。俺と競う気かね?」

 

 そして始まった殺せんせーと菅谷くんとアート対決……当たり前に菅谷くんは外を歩いて楽しくなりそうな可愛らしいものに仕上げてみせた、にも関わらず、殺せんせーは苦手分野から逃げに走った結果なぜか漫画を描いて……器用だね。

 左右の違和感を消すために菅谷くんは上手くフォローしようとしたのに、殺せんせーが笑いを取らないといけないとかキザったらしいのは違うとかで変に張り合った結果……菅谷くんまでヒートアップして収集がつかなくなった。

 

「……どうすんだよこれ、1週間は落ちないって言ってなかったか?」

 

「一応落とせない事ぁ無いけど……めんどいな」

 

「ま、まぁ?ひょっとしたら気に入るかもしれませんし」

 

「……?」

 

「あ、起きた」

 

 ちょっと頭を打った程度の気絶だったからか、そんなに時間が経たなくてもイリーナ先生は目を覚まして……気絶する前にキャンバスにされかかってたのは覚えてたんだろう、すぐに現状、見える範囲を確認してる。

 何も言わず、無言で、静かに教室を出て行ってしまって……静かすぎるのが怖くて、陽斗くんがおそるおそる廊下を覗き……

 

 

 

「ッッ!?全員物陰に隠れろ!!!ビッチ先生は激しくお気に召してない!!本物の銃持ち出してんぞ!!!?!」

 

「うわぁぁぁ!?!」

 

「あっちだ逃げろ!!!!」

 

 

 

「死ね!!あんた達みなごろしにしてやるわ!!!」

───ドドドドドドドド!!!!!

「ごっ……ごめんなさいつい熱中してしまって……でも教室壊れるから実弾やめてぇぇえ!!!」

 

 

 

 まさかの実弾入りの本物の銃器を持ち出したイリーナ先生は、教室にゆらりと戻ってくるとところ構わず乱射し始めた。殺せんせーは実弾を体の中で溶かすことができるらしい……から、全ての弾を自分の体で受け止めて回収しながら、教室と私たちを守っている。

 

 なんとか後ろに周り込めた杉野くんが色素を落とすことを提案してるけど、イリーナ先生を羽交い締めにしてるけど……夏服デビューをとんでもない事にした殺せんせーに、イリーナ先生は怒り心頭で大暴れしている……

 

「……対決なんてしないで菅谷君が全部やればあそこまでは怒らなかっただろうにね。殺せんせーが余計なことするから……」

 

「でも、菅谷くんもいっぱい描いて、止めれなかったから……多分1人で描いててもものすごい量描いて、キレられてた気もする……」

 

「否定できねーわ!……普通はさ、答案の裏に落書きしたらスルーされるか怒られるだろ?」

 

 机の後ろに避難しながら、殺せんせーとイリーナ先生の攻防を見守っていると、菅谷くんが前向きな反省会の真っ最中だった。どっちに転んでもイリーナ先生が怒るきっかけにはなりそうだとカラカラ笑う菅谷くんは、スっと落ち着くと、何かを思い出すように話し出した。

 

「この椚ヶ丘中の中で成績を比べれば、俺と同じくらい成績が悪いやつなんて普通に本校舎にもいるんだよ。だけどわかんねーなりに勉強して、余った時間で答案の裏に落書きしただけなんだけどなー……先生曰く、同じ成績なら俺の方が素行不良なんだってよ」

 

「素行不良……?」

 

「ま、正しいけどね。だけどあのタコは違う。俺が落書きしたらスルーでも怒るでもなく、安っぽい絵を加筆してくるんだよ、嬉々としてさ」

 

 ……じゃあ、ある意味今回のアート対決の結末は、なるべくしてなったのかもしれない。

 

「実は真尾の、カルマのE組落ちの理由聞いた時、勝手に同族意識もっちまってたんだ……俺は普通の中じゃ普通にいられなかった異端、真尾は当たり前を受け入れられなくて本校舎(あっち)じゃありえない行動をとる異端、カルマは……成績優秀さで正義感を正しく評価されなかった異端、なんてな。ちょっとくらい異端な奴でもE組(ここ)じゃ普通だ……な、そうだろ?」

 

「……ふふ、そうかもしれないね」

 

「……うん」

 

 1人の芸術肌が生み出した、アートの世界……本格的な夏のスタートダッシュが、いつもと違う始まりになったかと思ったのに、結局はいつも通りなE組に落ち着いた。

 ここでは他とは違う武器を持っている人でも、違う感性を持っている人でも、誰もが個性を認めてもらえるE組……まず先生からして個性たっぷりだもんね。誰もの居場所になれるここは、みんなにとっても、……私にとっても……もう、切っても切れない場所なのかもしれないね。

 

 

 

 

 





「……で?1時間目の社会と2時間目の会話術の授業時間を潰し。3時間目は室内で銃を乱射し……?生徒の授業時間は残り4時間目の国語しかないわけだが?」

「ひぃぃぃいぃぃ!?!?」

「ちょっと!!!銃は悪かったかもしれないけど、ほぼ私被害者じゃない!!!!??」

「生徒が止まらないなら教師が止めるものだろうが!?本来止める立場であるお前が一緒になってはしゃいでどうする!!!」





「私が輝かなくても、誰かに照らしてもらって輝く……そう言われると私はお月様とかお星様みたいなのかな。お姉ちゃんはアルカンシェルって光に照らされて、ロイドさんって道標を手に入れて誰よりも輝いてる……、……私は、誰に照らしてもらえるんだろう?」



++++++++++++++++++++



アートの時間、半分ちかくオリ主の謎思考で埋まったってホント??
菅谷のセリフに『異端』が出てくるのを見つけて、上手く絡ませたくてこんな位置付けになりました。

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