暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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オリ主の無自覚行動を書くのが楽しい。
カルマ君が振り回されてるのを見ていると、殺Qを思い出す……あれより振り回されてると思う。

今回のお話は、ありがたいことにしおりが多めにはさまれていたお話のリニューアル版です。前話までの流れを汲んで、少し内容が変わってます。




33話 プールの時間

 

 衣替えをした時は暑くなってきたなー……くらいだったのに、もう山の中だからこそ夏本番、という暑さになってきた。これは、E組の生徒たちにとっては地獄の夏のはじまりで……E組のある旧校舎は本校舎と差別化するためにかなり劣悪な環境だからこそ、本校舎の生徒たちはE組に来ないように努力している1つの大きな例がこれ。

 ……何が言いたいかといえば、この蒸し暑い夏の日々でもE組にはクーラーも扇風機もない、ただただ耐えるしかない夏がやってきたということ。……まあ、冬は冬で暖房がないからそれを耐える日々が待っているともいう。

 

 とりあえず今は、

 

「暑ッぢ〜……」

 

「うー……溶ける……」

 

「アイスでもジュースでもいいから、冷たいのが欲しい……」

 

 校舎の外はミンミン蝉さんの大合唱に、カンカン照りのいい天気。みんながみんな、暑さに負けて机に伏せたり椅子にもたれかかったり……正直勉強どころじゃない状態だ。

 

「だらしない……夏の暑さは当然の事です!温暖湿潤気候で暮らすのだから諦めなさい。……ちなみに先生は放課後には寒帯に逃げます」

 

「「「ずりぃよマッハ20!!」」」

 

 自分も暑さにやられて教卓の上に溶けながらもしっかりしろとみんなを諭して……たかと思えば、自分は1人だけ冷たい気候の地域に逃げるとか、ずるいよ殺せんせー……

 この暑さだと考えることはできても話すのも億劫になるな……なんて、軽く下敷きで顔を扇いでいると、前の席の何人かが振り返って私とカルマの方をジトーっとした目で見つめてきた。

 

「それにしても……お2人は涼しそうですね……」

 

「「……え?」」

 

「そうだよ、なんで真尾とカルマ、お前らはこの暑さの中ベストでもなくカーディガン着てんだよ……しかも長袖」

 

「えー、俺はまくってんじゃん」

 

「まくってようが暑ぃーんだよ、見た目が!」

 

「知ってる……?黒って熱を吸収するんだよ……?」

 

「えー、知ってるけど?」

 

「で?アミサはなんで長袖そのまんまなのよ」

 

「ん〜……?」

 

 確かに黒って太陽とかの熱を吸収するっていうし、暑そうに見えてもしょうがないなぁ……なんて、カルマの隣でのほほんと聞いていたら、矛先は私にも向かってきた。

 真尾はどうなんだよ、という目で見られたから、質問に応えようと思いつつ、話す気にはなれないので……もうやっちゃえばいいか。曖昧に返事をしながら立ち上がり、暑さでだれている殺せんせーの元へと歩く。私も暑いよ?暑いけど、結構通気性のいいものを着てるし、薄手だし……

 

 ───ヒュオッ!

 

「にゅやっ!?アミサさん、何をするんですかっ!?」

 

「え、だって〜……長袖カーディガン来てる理由知りたいってみんなが……」

 

「……なるほど、長袖の中に対先生武器を隠してた、と……」

 

「今バラしちまったから、意味なくなった気もするけどな……」

 

「……えへへ〜……バラしちゃったぁ……殺せんせー、当てていい〜……?」

 

「アミサ、平気そうに見えてたけど、あんたも結構限界でしょ……?」

 

 暗器というものは隠してこそ成り立つものなんだけど、暑さのせいかな……ほわほわする頭では上手く考えられなくてバラしちゃった。

 ちょっと暑さでぼーっとする頭で楽しくなりながら殺せんせーの暗殺を堂々と仕掛けていたら、殺せんせーに触手で頭を撫でられた……あ、なんか若干ネタネタしてる気もするけど結構冷たくて気持ちがいい……冷えピタみたいな……

 

「アミサさん、あなた顔真っ赤じゃないですか!至急水分補給をしなさいッッ!脱水症になりかけてますよ!?」

 

「!バッカ、なんで限界に気づいてないのさ……」

 

 あれ、撫でられたんじゃなくて、熱を計られていたみたい……普通にこのままだと危なかったみたいで、わたわたと慌てた殺せんせーの触手で持ち上げられて自分の席に戻された。

 カルマが殺せんせーが言った脱水症状の言葉に反応してか、机にかけてあった私のカバンから水筒を取り出して渡してくれたんだけど……ホント、なんでカルマはこの暑さ平気なんだろう……とりあえずありがたく受け取って水を飲む。

 

「でも、今日ってプール開きだよねっ!体育の時間が待ち遠しい〜」

 

「いや……そのプールがE組(俺ら)にとっちゃ地獄なんだよ……なんせプールは本校舎にしかない。炎天下の山道1kmを往復して入りに行く必要がある。人呼んで『E組死のプール行軍』……特にプール疲れした帰りの山登りは……」

 

 冷たい水を口に含みながら思わずゾッとした……そうだ、ここは山の中……当たり前だけど、こんな所にプールのような大きな設備があるわけが無い。でもカリキュラム上ちゃんとした設備で授業をやる必要があって、そのちゃんとした設備のある本校舎へ行くには歩いていくしかない=帰りも歩き。せっかく冷たいプールで涼んでも、汗をかきながらドロドロになってE組校舎に戻ってきたら今と同じだ。

 ダメ元で本校舎まで運んでほしいと誰かが頼んでたけど、先生でも無理みたい。そうだよね……先生でもさすがにクラスみんなを抱えて運べるわけがないし、国家機密がビュンビュンE組の山を越えて飛び出ちゃいけな……いや、本人結構山を飛び出して好き放題してる気がするかも……

 

「仕方ありません、全員水着に着替えてついてきなさい。そばの裏山に小さな沢があったでしょう……そこに涼みに行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして私たちは水着に着替えて上にジャージの上着をはおり、本校舎のプールではなく裏山へ、ある意味水辺へのE組行軍を開始していた。

 みんな、制服の時よりは少しだけ涼しそうな顔色だ……裏山はたくさんの木々に囲まれているから日陰もたくさんあるし、確か葉っぱの蒸散作用が同時に熱い空気も持っていってくれるんだっけ……。かく言う私も少しだけ体の温度が下がった気がして足取りは軽い。

 

「裏山に沢なんてあったんだ……」

 

「……一応な、つっても足首まであるかないかの深さだぜ」

 

「無いよりは水かけ遊びできるだけましってか…」

 

 4月、カルマと暗殺になにか使える場所がないか探すために裏山に入った時、確かに小さな沢があった。ホントに小さいし、水の量が少ないから溺れることも障害物にもならなさそうで、早いうちに暗殺場所の候補から外してた場所だ。

 ……殺せんせーの暗殺を狙ってカルマと2人で探検した時以来かな……ここに来るのも。そんな気持ちで、まだ最近のことのはずなのに懐かしくなって思い出しながら周りを見ながら歩いていたら、背中に重みが……いや、犯人は分かりきってるんだけど……

 

「……カルマー……おもいー……」

 

「えー、全部体重乗っけてるわけじゃないし、一緒に歩いてるからだいじょーぶでしょー?それとも運んであげようか?」

 

「それってまた抱っこでしょ、やだ。それに私のが、カルマより30cmもちっちゃいの、分かってやってる……?」

 

「わかってるわかってる。そのちっちゃいやつがしょっちゅう無茶するから、できるなら閉じ込めといた方が安心だよね」

 

「無茶してないのに……というか、今の状況のが、無茶してると思う……」

 

「悔しかったら俺よりでかくなってみなよ」

 

「むぅ……」

 

 何故か鷹岡さんがクビになった次の日から、授業中とか席に座ってなくちゃいけない時以外はカルマが私の椅子の後ろから背中に引っ付いているか、カルマの席で座っている彼の足の間に座らせられて後ろから腕を回されて抱き抱えられているか……なんにせよ、離してもらえない。

 

「……これ、カルマ君も暑さにやられてない?」

 

「閉じ込めるって……言い方気をつけてよヤンデレっぽいぞー」

 

「ここぞとばかりに引っ付くなよお前……あと距離感バグってんぞ暑苦しい……」

 

「落ち込んでアミサちゃんから離れなくなるくらいなら、授業サボってないで始めから出なよ……」

 

「本トだよー、カルマ君面倒そうな授業はサボるんだから」

 

「……フン、今回は遅れたけど参加したしー……」

 

 頭に触れている感触と頭の揺れから、ぐりぐりと私の頭頂部に歩きながら頭か顎かを押し付けてるんだと思うけど、器用だなぁ……私は頭が揺れてそろそろバランス崩しそうなんだけど、私が転んだら一緒に転ぶってわかってるのかな。

 

 みんなにいろいろと言われてるけど、カルマはあの鷹岡さんの一件で冒頭の気合を入れる掛け声がどうとかって盛り上がってた場面を見て、最初はホントに授業全部をサボろうと思っていたらしい。そこだけ見たら、確かにただのアットホーム感あるやりとりでしかなく、杞憂だったと勘違いするのも無理はないかもしれない。

 けど、体育に行く前の私があまりにも不安な顔をしてたから、何となく気になってもうちょっとだけ……と残っていたら、誰かまでは判別できなかったけど悲鳴とおかしな音が聞こえ、その直後にアーツ発動時の青い光が見えたから校舎を飛び出してきたんだって。

 

 すぐに飛び出したとはいえ、校庭の端っこで授業していたせいで、私が拳を捌ききれなくてケガをするまでには間に合わず、鷹岡さんの3発目に滑り込んで、私と無理やり場所を入れ替えて盾になることしかできなかった、とカルマは落ち込んで。ついでに軽傷だからアーツがもったいないと私自身の怪我を治療しないで放置してたから、そういうところに目を配れなかった自分が余計にムカついたのだそうだ。……このあたりは全部、聞き出した渚くんと莉桜ちゃん情報だけど。

 

 その後私がアーツについて授業して、自分のために怒って泣きやめなくなった放課後のカルマは、どことなく怒っているように見えて……なんとか理由を聞こうとしても

 

「別に」

 

 としか言わなくて。別にって、理由になってない……もしかしたら渚くんならわかるかもと思ったのに、

 

「隠し事は全部1番に聞きたかったんだって。それに、怒ってるというより……泣くなら自分の前で泣いて欲しいのに、神崎さんとリーシャさんを重ねて泣いたでしょ?悔しいんだよ多分」

 

 と理由が分かるような分からないようなことを言われて、いろいろどうしようもなくなって私まで落ち込んでたんだけど、ついには莉桜ちゃんに

 

「明日には元に戻ってるわよ、そんなに引きずる男でもないっしょ!……代わりにこじらせるかもだけど」

 

 となぐさめと一緒にちょっと怖いことを言われた。

 

 ……そしたらその次の日には、カルマが私から離れなくなったというか……いろいろ悪化してるよね?……こ、これが莉桜ちゃんの言うこじらせてるってこと……?ていうか、何をこじらせてるの?

 莉桜ちゃん、陽斗くん、振り返ってニヤニヤ見つめてくるくらいなら止めてほしい……半分くらいは私の反応を見て遊んでるんだろうけど……

 

「……さて皆さん。さっき先生は言いましたね?マッハ20でもできないことがあると。そのひとつが君たちをプールに連れていくこと……残念ながらそれには1日かかります」

 

「1日だなんて大げさな……本校舎まで1kmあるとはいえ、1日なんてかかりませんよ」

 

「おやぁ?誰が本校舎と言いました?」

 

 そうこうしているうちに、どこからか水音が響き始めた。もうすぐ殺せんせーも言っていた小さな沢の場所だっけ……、……それにしては、水音が大きい気がする。

 ある茂みの前でピタリと足を止めた殺せんせーに続いてみんなも足を止めると、先生はいつも以上に口角を上げてニヤリとした表情を浮かべた。

 

 楽しそうな殺せんせーの声、不自然に大きく聞こえる水の音……思わず、疑問が口をついて出ていた。一緒に顔を上げたカルマも気づいたのか首を傾げたように髪が動く……んん、くすぐったい。

 

「……水……?なんか、あの沢の大きさの割に大きな水音……」

 

「あ、確かに」

 

「よく気が付きましたね……では、ご覧あれ!」

 

 茂みをかき分けたそこには……先生特製、広々としたE組専用のプールが広がっていた。あの小さな沢からは想像もできないほどの深さがあり、コースロープが敷かれた25mコースに飛び込み台、休憩スペースや監視台などかなり充実していて本校舎に劣らない……むしろ、こっちの方が自然に近くて最高の環境かもしれない。

 

「制作に1日、移動に1分……あとは1秒あれば飛び込めますよ」

 

「「「い、いやっほぉう!!!」」」

 

 みんなの顔がたちまち笑顔になって、ジャージを脱いだ子たちから次々にプールへ飛び込んでいく。私も先に飛び込んだ渚くんやカルマにおいでと手を伸ばされ、近くに向かって飛び込み一気に潜る。暑さで沈んでいた気分も、汗で気持ち悪かった体も、冷たいプールに浸かって一気に爽快感でいっぱいになる。……こういうことをしてくれるから、この先生は殺しづらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷあっ!……んふふ、冷たい、気持ちいい!」

 

「あははっ、アミサちゃん髪の毛に草が張り付いてる!取ったげるからおいで……楽しいけど、私はちょっと憂鬱だなぁ。泳ぎは苦手だし……水着は体のラインがはっきり出るし……」

 

「大丈夫さ、茅野。その体もいつかどこかで需要があるさ」

 

「……うん、岡島君、二枚目(ヅラ)して盗撮カメラ用意すんのやめよっか」

 

 殺せんせー作、E組専用プールで遊び始めて、すでにみんなそれぞれがいろんな場所で自由に楽しんでいた。25mプールでどんどん泳ぐ人、ロープの外側からその泳ぎを見ている人、ロープの張っていない場所でビーチバレーを投げて遊ぶ人、いつも通りおしゃべりを水に浸かりながら楽しむ人、休憩スペースで本を読む人、……そのみんなをカメラで撮る人。

 

 泳げないらしいカエデちゃんは、浮き輪持参で殺せんせービーチボールを抱えてプカプカ浮かんでいて、ちょいちょいと手招きされたから、泳いでカエデちゃんの近くへ行って軽く浮き輪に体重をかけながら腕を乗せると、顔や髪の毛に張り付いていた水草を取ってくれた。

 ……だからお礼に私はカエデちゃんの足とか体に軽く水をかけて浮き輪の上にいても少しでも涼めるようにする。水辺だから気持ちいいけど、浸かっているのと使ってないのでは涼しさが全然違うだろうし……。

 

 そうやってじゃれあっていると、カメラを構えた岡島くんが寄ってきてどこかに向けてカメラを連写している……ってあれ、カメラって機械だよね、水の近くに持ってきて、壊れないのかなぁ……

 

「真尾……お前が巨乳なのは知ってたが、そこまですごいトランジスタグラマーだったのか……!!学校指定水着のはずなのに……エロいぞお前!?!?」

 

「……?違うよ、トランジスタグラマーは、私のお姉ちゃんのことを言うんだよ。そう呼ばれてるの聞いたもん」

 

「姉妹揃って低身長でグラマーってかぁっ!?」

 

「うぅ、巨乳は敵だ……だけど、とりあえずアミサちゃんのツッコミどころがおかしいのにもツッコミたいのに、絶対ツッコミ入れても分かってくれないのが悔しい……!」

 

 パシャシャシャシャシャと私たちに向けてものすごい勢いでカメラを連射し始めた岡島くん……叫びながらものすごい勢いのシャッター音を響かせてるせいか、なんか周りからすごい注目浴びてるんだけど……!あと、若干鬼気迫るものを感じて怖い。

 と、そこに水の中から静かに近づく影が……

 

「……岡島ぁ、死にたいの……?」

 

「ヒイィィッ!?は、背後から静かに出てくるなよカルマ!ってイタイイタイイタイイタイッ!!……待て!撮った写真焼き増しするから!出来は保証する!!それでどうだ!?

 

「……、…………どれ」

 

「(……お、迷ってる)ほら、これとか……」

 

「……止めてくれてありがとーって言おうと思ったのに……カルマ君が誘惑に負けてる……珍しい……」

 

 岡島くんの真後ろに水中からザバァって……なんていうんだっけ……海の中から出てくる……そうそう海坊主っていう妖怪のごとく静かに現れたカルマが、岡島くんの肩を掴んでなんかメキメキいわせてる。そのおかげで岡島くんはカルマの対応に追われてる感じで……ちょ、ちょっとあの写真の勢いは怖かったから助かったかもしれない。

 

 私は泳げはするけど足がつかないから、カエデちゃんの浮き輪に掴まらせてもらったままほっと息をはいているとカエデちゃんに頭を撫でてもらえた。そのままなにやらカメラの後ろ側の画面で撮った画像を見ているらしい2人を見ていて、ふと思った。

 ……陸の上ではカルマが175cm、岡島くんが168cmと、カルマの方が高いのに、今は何故か岡島くんの方が背が高く見える。多分、カルマが画面を見るために水に体を沈めていて、岡島くんはカメラを構えるために水中でバタ足しながらバランスを保ってて……身長差が普段と逆転しているんだ。

 

 

 

「悔しかったら俺よりでかくなってみなよ」

 

「……、…………」

 

 

 さっき、カルマ……私の上に体重かけながら自分で言ってたもんね?……陸上でやるより、うまくやればここでもっと簡単にできたりしない?

 

「……ねぇ、カルマ、そっち行くからちょっとだけ背中掴んでいい?」

 

「んぇ?いいけど」

 

 思いついたからには即実行、とカエデちゃんの浮き輪から手を離してカルマの後ろへ泳いで回り込み、不思議そうに岡島くんを手放した(手放した瞬間に岡島くんは大慌てで逃げ出した)彼には前を向いておいてもらう。水から頭だけ出しているカルマの、水中にある肩に両手をかけて……

 

「……よし、届く。カルマ、そのままだからね……、じゃあ、……乗るねっ!」

 

「え?……!?ちょ、乗るってまさkっっっ!?!?!?」

 

 1度水の中に潜って、水底を思い切り蹴って勢いよく水面に上がる……と同時に、カルマの両肩に手をかけてグッと体を持ち上げる!

 できないことは無いけど陸上で同じことをやるよりも、少しは軽い力で体を持ち上げられるのは浮力の関係もあってかな。

 

「……わあ、たかーい!カエデちゃん、見て見て!水の上ならカルマより私の方が大きいよね!」

 

「そ、そうだね……」

 

 ……要するに、何がやりたかったかといえばカルマの両肩に私の両手を置いて上に乗り、手で支える形で身長を高くしたかったのだ。地上でこれやったら重さが全部腕にかかるから長い時間できないし、私はクラスで1番小さいからちょっとでも上になってみたくて……やってみたら思った以上に高い目線で少し得した気分だ。

 

「んふふー……さっきカルマが自分で悔しかったら俺よりでかくなれって言ってたもんね。どうだ、私の方が大きくなったよ?」

 

「ちょ、待って、当たっ……っっこの天然娘ぇ……っ!!」

 

「……?なにが……?」

 

「っっっっ!!!?!?」

 

 このまま両腕で体重を支えていてもいいんだけど、さっき陸上ではカルマが私の頭に体重かけてたよね……同じことしちゃえ。

 私の下でわたわた言ってるけど振り落とそうとはしないから、このままでもいいんだと判断させてもらって、カルマの頭にそのまま上半身から体重をかける形でもたれかかって、少し腕にかかる体重を分散させる。

 

 途端、カルマの動きがビタッと止まってしまって……あれ?今の今まで言葉になってない文句のようなことを言ってたのに、それすらやめちゃった……?というか天然娘って何がって聞いたのに答えてくれない……ちら、と近くにいる人にも視線で聞いてみたけど、みんなに目をそらされたんだけど……なに。

 

「(うわー……でた、無自覚天然兵器)」

 

「(アミサはものすごくはしゃいで楽しそうだけど……)」

 

「(カルマには拷問だよな……後頭部に胸を押し付けられてるようなもんだよ、アレ)」

 

「(でも半分自業自得だよね……確かにプールに来る道中に『悔しければ自分よりでかくなってみれば』って言ってたもん。アミサちゃん的には言われた通り同じことをやり返してるだけなんだよね……)」

 

「(同じこと、にしては破壊力はエグイな……カルマ、プールから上がれるか?)」

 

「(顔真っ赤にして沈んでんぞ、羨ましい……撮ったれ岡島)」

 

「(おうよ)」

 

 

 

────ピピーーッ

 

 

 

「アミサさん、水中で人の上に乗らない!危ないでしょう!」

 

「あ、そっか……カルマ、ごめんね……、……カルマ?」

 

「……………………」

 

 固まったカルマの反応がなくて、彼を呼ぶつもりで上半身を揺らしながら名前を呼んでいたら、プールサイドに設置された監視台に乗っている殺せんせーに笛を鳴らされて注意されてしまった。

 そっか、これよく言う水の中で人の上に乗って溺れさせちゃう行動だ……!ついはしゃいでカルマを沈めかけてしまったと、慌てて肩から降りて、だいじょぶだったか確認しようと前に回り込もうとしたのに、片手で顔の前にストップと手を出され、もう片方の手で自分の顔を隠して押さえたまま、水の中に潜っていってしまった。

 

 

 

────ピピピピッ

 

 

 

「中村さん、原さん!…………あとついでにカルマ君!潜水はほどほどに!溺れたかと心配します!」

 

「は、はーい」

 

「カルマは、ある意味仕方ないからそっとしといてあげてよ殺せんせー……」

 

「注意するなら男子に刺激的なことを平然とやって、分かってない真尾に自覚させてください」

 

「え、私……?」

 

「それはそれ、これはこれです。アミサさんが自覚してない方がカルマ君が振り回されておもしろいので」

 

「ゲスい;」

 

 水中でも赤髪は目立つから……潜ったまま殺せんせーの方へと泳いでいったカルマは、私の近くからずっと水面に上がってきてなくて、殺せんせーが潜水遊びをしていた莉桜ちゃんと寿美鈴ちゃんのついでとばかりに注意してた。

 ……ら、なんか私の名前も上がった。え、水中に沈めかけたのがやっぱりダメなことだった……?!

 

 

 

────ピピッ

 

 

 

「岡島君のカメラも没収!挟間さんも本ばかり読んでないで泳ぎなさい!木村君は……!」

 

 ……えっと、最初に危ないことやった私も私だけど……、……こ、小うるさいよ殺せんせー……。先生が言ってることは何も間違ってないし、私たちが危険のないようにプールを楽しめるよう目を配ってくれているのも分かるんだけど……些細なこととか個人の自由まで全部目をつけて、ピピピピ笛を鳴らされ小さいことをネチネチ言われると、流石にうるさい。

 

「いるよねー、自分の作ったフィールドの中だと王様気分になっちゃう人」

 

「うん、ありがたいのにありがたみが薄れちゃうよ……」

 

「ヌルフフフフフフ……景観選びから間取りまで自然を生かした緻密な設計……皆さんにはふさわしく整然と遊んでもらわなくては」

 

「カタいこといわないでよ殺せんせー、水かけちゃえ!」

 

「きゃんっ!」

 

 ・・・・・・、え?何、今の悲鳴。

 

 陽菜乃ちゃんが監視台の上からぴーぴー笛を鳴らして、ビート板をパタパタしながら私たちを見ている殺せんせーを水遊びに誘おうと水をかけた瞬間に、先生は可愛らしい(?)悲鳴をあげて監視台の隅に逃げた。

 みんなが固まり、予想外なリアクションをとった殺せんせーを凝視している……と、そんな時、今のリアクションから何かを感じたのか、水中から静かに近づいていたカルマが監視台を掴み、前後にガクガクと揺らし始める。

 

「きゃあっ、カルマ君ゆらさないで、やめて、落ちる、落ちますって、頼んます!」

 

 水に入ることを嫌がっていて、陽菜乃ちゃんが水をかけた場所がふやけてる、……もしかして殺せんせー……

 

「……いや別に、泳ぐ気分じゃないだけだしー。水中だと触手がふやけて動けなくなるとかそんなん無いしー」

 

 なんとか、もう見た目は命からがらって感じで陸地に落ちた(降りた、ではなかったと思う。結局カルマによって完全に振り落とされてたから。)殺せんせーは、ぴゅーぴゅー口笛を吹きながら、わざとらしく誤魔化している。

 

 

 

 つまり、殺せんせー……【泳げない】んだ……!

 

 

 

 泳ぐ気満々でビート板を持ってきているのかと思えば、正体は麩菓子で……今の状況を見ていた私たちはほとんど全員が暗殺者としてのスイッチが入っていた。これは、今まで見つけてきた弱点の中でも私たちの力で起こせるものであり、一番役に立ちそうだと直感していた。その時だった。

 

「っ、あ、やば、バランスが……!うわっぷ!」

 

「カエデちゃん!」

 

「背ぇ低いから足ついてないのか!?」

 

 みんなで殺せんせーに注目していたから、すぐに気がつけなかった。泳げないからこそ水の流れに任せて浮き輪で浮かんでいたカエデちゃんが流され、流れが変わるところでバランスを崩したみたい……バランスを立て直す前に水に落ちてしまった。

 近くにいたのは私だけど、同じくらい小さい……というより、私の方が小さいから、助けに入ったら多分一緒に溺れてしまう。どうしようか、捨て身で助けに行くかと迷ったその時、視界の端っこで誰かが飛び込むところが見え……私は安心してプールの端まで流されてしまったものを取りに行くことにした。

 

「はい、大丈夫だよ茅野さん、すぐに浅いところへ行くからね」

 

「メグちゃん、浮き輪……!」

 

「ありがとアミサ」

 

「助かった……ありがと、片岡さん、アミサちゃん!」

 

 一応泳げるほうだから、流された浮き輪を掴んで届ける。カエデちゃんが呼吸できるように水の上に固定する形で頭を抱えながら浅瀬に向かって泳ぐメグちゃんと、体を浮かせられるように渡した浮き輪を抱えるカエデちゃん……よかった、何事もなく助かって。

 

「片岡さん、迅速な対応流石です。そして見事な泳ぎでした……ありがとうございます。そしてアミサさん、自分の力を考えてあえて助けに入らず出来ることをする……その判断で正解です。……やっと、他人に任せるということが出来ましたね」

 

 そういって岸についてすぐに近づいてきた殺せんせーが頭を撫でてくれて……たったそれだけのことではあったけど、朝とは違う理由で私を撫でる触手がとても嬉しかった。

 

 …………安心して喜ぶみんなの後ろの茂みに、制服姿の誰かが見えたのは……気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 





「渚君……本ト、どうにかなんないかなあの天然兵器……」

「今回のに関して『も』、どうにもならないって」

「ちなみにご感想は?」

「どこから湧いたの岡島君……」

「湧いたってひでぇな!俺も一応当事者だから気になってんだよ!」

「そうだとしても、さすがに答えてくれないんじゃ、」

「……めっちゃ柔らかかったし、上で楽しそうにしてんのが可愛かった……」

「答えちゃうの!?」

「くっそ、羨ましいやつめ……先生からカメラ返されたら渾身の1枚やるから待っとけこんちくちょー!」

「……サンキュ」





「………誰だったのかなー……プールにいなくて、制服……」

「アミサちゃん、どうしたの?」

「あ、寿美鈴ちゃん。……さっきプールで……んーん、やっぱ何でもない!多分見間違えだから」

「そう?何かあったらいつでも言いなさいよ」

「うん!」

────くう

「…………」

「……お腹、すきました……」

「いっぱい泳いだもんね。ふふ、今日お弁当一緒に食べようか?おかずわけっこしましょ」

「ホント?やったぁ!……前から思ってたけど、寿美鈴ちゃんって料理上手だよね。おかーさんってこんな感じなのかなぁ……」

「……あら、お母さんでもいいのよ?」

「……えへへ、おかーさん」


++++++++++++++++++++


プールの時間でした。
イチャつかせようとしたらオリ主がはしゃいでやらかしました。反省しても後悔はしてません(カルマの反応を考えるのが楽しかった)。
プロフィールにこそっと書いてあった、薄手のカーディガンの謎を明らかにしましたが、なんだかちょっとしたネタで終わってしまいそうな予感が……これも全て夏の暑さのせいです。

前話で書いた通り、オリ主は『お母さん』という存在を知らずに育ってます。なので、クラスのお母さんと名高い原さんを登場させました……ら、お母さん呼びが定着。以後、お母さん呼びをしたら大抵原さんのことです。

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