オリ主があの状態からすぐに期末テストなんてできるわけが無いので、作中で言っていた通り病院に連れていかれます。
まだまだストックがあるので、1日2話を目標にリニューアル更新がんばります!
★付きストーリーからおってくださいね!
シロさんとイトナくんを追い払ってから、楽しそうに水をかけあってるみんなを、崖の上からカエデちゃんに支えてもらいながら見ていたら……あ、カルマがみんなの拘束抜け出して寺坂くんに飛び蹴りした……いつの間にか殺せんせーが私たちの近くに飛んできていた。
軽く目を細めて笑う殺せんせーをぼーっと見ていると、カエデちゃんも一緒に先生の触手で抱えられて、いつの間にかみんなの所へと運ばれていた。降りてきたことに気づいたみんなが駆け寄ってきて……だいじょぶだよ、心配かけてごめんなさい、殺せんせーに抱えてもらったままそう言おうとしたんだけど、その前に誰かの手のひらで視界を塞がれた。
「お疲れ様、先生の触診でも異常はないってさ」
だいぶ前から
でも、見知ったその気配たちはとても安心するものばかりで……そこで、私の意識は暗転した。
◆
「✕✕✕、勉強の時間だよ」
『──────』
「……✕歳ながら賢い子だ。ほら……外の✕界に、お前のような✕✕✕は知られ✕はいけない✕だ。それにお前にと✕ても守る✕きものだ✕✕?✕✕てく✕るね」
『…………、…………はい、センセイ』
◆
ふと、意識が浮上して最初に目に入ってきたのは白い世界だった。壁も、天井も、カーテンも白い……え、ここどこ……?自分の家でも、学校でもなくて、あと行ったことのある家だとすればカルマの家だけど、こんな部屋なんてなかったはずだし。
ゆっくり体を起こすと私が寝ていた場所も真っ白なベットなことが分かる……左腕に違和感を感じて見てみれば点滴が付いていた。布ズレの音で私が起きたと気づいたのだろう、白い世界を区切るカーテンが引かれ、1人の男の人が顔を見せた。
「……!目が覚めたか……おい、呼んでおけ」
「……烏間、先生……ここは、」
「国が手配した病院だ。真尾さんは大事をとって検査入院……あのタコはクオーツの恩恵があるからある程度回復しているだろうと言っていたが、赤羽君曰く1度心肺停止にもなっている。肺に水が入っているからな……その処置のためだ」
烏間先生の説明を聞いているうちに、病院の先生だろう……白衣の人が何人か部屋に入ってきて、簡単なバイタルチェックや問診などを受けながらゆっくりと自分の周りを見てみる。
私の寝ているベットの他に患者さんはいない……どうやらここは個室のようだ。
枕もとの棚にお菓子や果物、本がいくつか積んである……だれか、私が寝ている間に来てくれてたのかな。……寝ている間に?私、どのくらい寝ていたんだろう……
病室を出ていこうとしているお医者さんに何かを確認していた烏間先生が私の近くへと戻ってきて、あたりを確認している私を見て色々と疑問に思っていることに感づいたのだろう……納得したように1つ頷くと教えてくれた。
「……それらは君が眠っていただいたい3日間の間に見舞いに来たE組の生徒からだ。何があったかは奴や他の生徒達から聞いている……本当に無事でよかった」
……3日も寝てたんだ、私。烏間先生から伝えられた事実に少し驚いた……あの時目を閉じてから、感覚的には一瞬だったのに。不思議な夢みたいなものを見た気もするけど……どんな内容だっけ、忘れちゃった。カルマには死にかけてたって言われたし、何も動かせないくらい体がものすごく重たかったからだいぶ体に負担がかかってたんだね、……多分。
今まで見たこともない安心したような笑顔を烏間先生に向けられて、この人こんな笑顔もできたんだな……なんて少し失礼なことを思っていれば、先生はスーツのポケットからスマホを取り出した。もしかして、お医者さんに確認してたのは携帯を使う許可だったりするのかな。
「少し携帯を使うぞ。……律」
『──はい!お呼びでしょうか、烏間先生!』
「真尾さんの目が覚めたと伝えたい。今日の授業終わりに……
『アミサさん、起きたのですか!?今すぐ映像を繋げますね!!』
……!ま、待て!今繋げたら……!」
先生がスマホに呼びかけた途端に律ちゃんの声が聞こえた……律ちゃん、先生のスマホにもいたんだね。私の目が覚めたことを伝えたいと伝言を頼む烏間先生の姿を見て、先生や先生の部下の人の誰かができるだけ私に付き添ってくれていたことをなんとなく察した。……私の家族は海外にいて付き添える人がいないのもあるだろうけど。
……授業とも言っていたし、今E組のみんなは学校にいるんだろう。病室に付けられた時計を見る限り、今は5時間目の授業中のはず……授業妨害になってしまうから烏間先生は映像をつなげるのを止めたんだろうけど、それにしては慌てすぎな気がする。
先生のスマホからざわざわした音が響き始めると、大きくため息を吐いた烏間先生が頭を押さえながらスマホのINカメラを私の方へと向けた。
『お、映った映った』
『顔色も戻ってるね、安心したよ〜』
『病院着というのもまた……若干はだけてるのもエr
『岡島、黙ろう』
ヒィッ!は、速水!?エアガン下ろせ!!』
『……俺、言わなくてよかったわ』
『は?』
『ナンデモアリマセン』
どうやら律ちゃんが気を利かせて映像を両方に見えるようにしてくれているみたい。小さな画面に、席についているみんながこちらを……律ちゃん本体の方を振り向いて話しかけてくれているのが見える。
教室全体が見えるようにと律ちゃん本体が動いてくれて、最初は映ってなかった愛美ちゃんやカルマの方も見えるようになった……あ、寺坂くん、教室にちゃんと来てる。
「えっと……心配、おかけしました。寝て、起きたら病院で……3日も経ってたんだね」
「一応この後の検査で異常がなければもう数日で退院だ」
「……だそうです」
『そっか、待ってるからな!って、うお!』
検査のほとんどは私が寝ている間に済ませてもらえたみたいで、後は意識がある時の脳波の検査とか口頭での診察とかが残ってるみたい。それが終われば帰れる、それを伝えていたら画面全体が黄色くなった。
『アミサさんッッ!!!目が覚めたようで何よりですッッッ!!カルマ君の処置も適切でしたしアーツの恩恵もありましたから1日くらい休めばあとは通院程度でこちらに復帰するかと思っていたのに、全く目を覚まさないので本当に心配していました!!!原因は分かりませんが精神的な負荷などもかかっているようですから、ドクターストップがとけるまでは無理は禁物ですよ!!!まだまだ夏は続きますし、プールはまた先生が直しましたから元気になったらまたみんなで遊んでください!あっ、あんな目にあいましたし水が怖いようでしたら中に入らなくても涼める方法を一緒に考えましょう!先生とお揃いですねッッ!!もうすぐ期末テストですが眠っていた間の勉強の遅れなどはご心配なく、復帰次第、先生の放課後ヌルヌル講習で補講しましょうね!!!ああ、あとそれから──』
『『『殺せんせー、邪魔!』』』
『にゅやっ!?も、申し訳ありませ──』
『せんせー、俺、頭痛が痛くなる予定なので早退しまーす』
『にゅやぁあッ!?カルマ君、わざとらしい上に色々おかしいですよッ!?ってまだ授業中ですッ!!』
殺せんせー、カメラの位置把握してないのかな……ものすごいドアップで律ちゃんの正面を陣取ってマシンガントークをしていたと思えば、みんなに怒られてる……あと、最後の棒読みってカルマだよね、明らかに。頭痛が痛くなるの……?
その会話を最後に画面の向こうがバタバタと大騒ぎになってしまって、怒涛の勢いで流れていく会話に参加することもできずに何も言えなくなっていると、律ちゃんの正面に座る寿美鈴おかーさんが振り向いてこっそりと教えてくれた。
『寺坂君、だーいぶへこんでたよ……自分が軽い気持ちでやったことで死なせかけたって。カルマ君はカルマ君で不機嫌だし……今の早退だって多分、そっちに行ったんじゃないかな?』
「……そうなの?」
『そ。この3日間、面会時間ギリギリまで病室に2人とも残ってたしね。ちなみに果物は寺坂君が選んだやつ』
端に積んである大きな果物バスケット、まさかの寺坂くんからだった。なんでも寺坂くん、吉田くん、村松くん、綺羅々ちゃんが仲直りした流れのまま、4人で選んで買ってきてくれたんだって。
病室でいきなりそれ出した時は驚いたよー、そう言って今のを私が教えたことは秘密だよ、って人差し指を口に当てて「しー」ってされたから私も「しー?」と真似してみたら、おかーさんは優しく笑って前を向いた。
殺せんせーたちの方が大騒ぎすぎて、誰も私たちの会話には気づいてなさそうだ。区切りがいいからと律ちゃんが通信を切ると、烏間先生はまだ頭を押さえていた。
「……こうなるから、放課後に知らせたかったんだが……」
「こうって……この大騒ぎですか?」
「それもだが、赤羽君はほぼ確実に授業をサボるだろうと思ってな……今律が確認したが案の定抜け出したようだ。この3日間も学校そのものを何度サボろうとしていたことか……」
私がカルマのサボる理由になりかけてたらしい。確か、殺せんせーも言ってたけどそろそろ1学期末テストが近かったはずだから、勉強の方に出てほしいな……
同じことを殺せんせーも烏間先生も心配していたらしくて、登校を渋って
……そういえば私、死にかけたって言われたけど、気づいたらカルマとカエデちゃんが私を覗き込んでたし、あんまり実感ない……実際どうなってたんだろう。あんまり覚えてないけど、カルマが息を荒らげて疲れきってたのとカエデちゃんがボロボロ泣いてたのだけはハッキリ見えて……あと、なんか、目が覚める前に……なんだっけ、あたたかい何かが触れていた、ような……?
思い出そうとしても、もやもやしたのが隠しててよく分からない……気にしなくていいことなのかな。ちょっと疑問が残りながらも首を傾げていると、立ち直ったらしい烏間先生が私を真剣な顔で見つめてきて、私も自然と姿勢を正す。
「……それよりも、赤羽君がこちらに来るまでは違う話がしたい」
「……えっと……はい、それが烏間先生や部下の方がずっと付き添ってくれた理由……なんですよね?」
「……否定はできないな。大変な状況の中で本題に入るのも申し訳ないが、学校ではこの話ができん……単刀直入に言う、例の件について、考えてもらえただろうか?」
「……、……私は──」
◆
烏間先生と少し話をしてから、無言で席を立った先生は、カルマがあの時間に教室を飛び出したのならそろそろ来るだろうって病室を出ていった。生徒たちが団らんする場所に教師がいるのは邪魔だろうってことみたいだけど……烏間先生もE組の先生、E組の一員なんだから、ここにいても何も問題ない気がするけどな……
手持ち無沙汰になった私は枕元に積んであった本の中から1冊を選ぶと足の上に広げる……これ、スウィーツ大全って書いてある。果たしてこれはカエデちゃんからなのか、殺せんせーからなのか。……候補が絞れる時点で私の中でスウィーツと言ったらこの2人ってイメージになってるんだと思う。
頭を使わなくてもいい本だし、のんびり読み進めていれば烏間先生が病室から出ていって5分もしないうちに、ノックもなく少しだけ乱暴に部屋のドアが開けられた。
「アミサ……!」
「あ、ほんとだった」
汗だくで、肩で息をしてやってきた彼は、私があまりにも普通に本を読みながら返事をしたからか、一瞬固まってこちらを見てきた……もう、烏間先生も言ってたけど、大事をとっての入院ってだけなのに。
「カルマ、お疲れさま……先生にベッドから降りちゃダメって言われたから……このままでごめんね」
無言で、強ばった顔でこちらを見る彼はゆっくりと近づいてきた。私は話すのに邪魔になると思って棚へ本を戻す。
「授業中、だったんじゃないの……?そろそろ期末テストなんだから、ちゃんとでなくちゃ……」
棚にやっていた視線を彼に戻してみると、案外近くにまで来ていてびっくりした……彼は少し俯いていて、前髪で影になって表情がよく見えない。
「……カルマ……?どうかし、っ!」
……気がついたら、私は彼の腕の中にいた。私はベッドに座ったまま、彼は立ったままだから頭の上からすっぽり包み込まれているような感じだ。それなのに、全然苦しくなくて……むしろ壊れ物を扱うというのかな、それくらい恐る恐るとした手つきで……それでも顔を上げて彼の顔を見ることができないくらいには強く、抱きしめられていた。
「……怖かった。ただ眠ってるだけだって分かってたけど……アミサが、アミーシャが、息してなかった時みたいに見えて……このまま起きないんじゃないかって」
「……カルマ、」
……そっか、カルマはその『私が心肺停止で死にかけてた』って状況、すぐ目の前で見てるんだ。アーツで少しだけ回復して眠って、すぐに体力さえ戻れば起きると思ってたのにまさかの3日も起きなかったから……心配、してくれてたんだ。
私はそっと点滴がついてない方の腕を彼の背中に回す……一瞬びくりと震えたのが伝わってきた。
「……っ、」
「……いるよ、私、生きてる。ちゃんと息もしてるし、起きてるし……今、カルマに触れてるよ」
そう言ったら、少し、腕の力が強くなった気がした……私はそれに応えるように彼の背中を撫でる。覚えてないけど、死ぬかもしれなかった私を死の淵から連れ戻して、助けてくれた感謝を込めて……そして今生きている私の存在を示すように。
◆
「────とりあえず、この3日であったのはこのくらいかな」
あの後、私から離れた彼の顔はいつもどおりの飄々とした表情だったけど少しだけ赤くなっていて……私がここにいるのかどうかを確かめるためとはいえ、恥ずかしかったとか、かな?……たくさん心配をかけた手前、指摘しないことにした。烏間先生が席を外してたのはやっぱりラッキーだったのかもしれない。
カルマは離れた後、ベッドの横に椅子を持ってきて座ると私が知らない3日間で起きたことをいろいろと話してくれた。
殺せんせーが次の日……はさすがに無理があったけどプールを修復して、あの……プールから上がったあとに使う目を洗う……本校舎のプールにもある、チー、ってやつを追加で増設したんだって。でも塩素を入れたプールで泳いでる訳でも無いし面倒だからって飲みにくい水飲み場としてみんな使ってるらしい。
他にも寺坂くんを筆頭にしたグループ……あの騒動の後に再結成?された通称寺坂組がコソコソと本校舎の方で情報収集かなにかをしているらしいこととか、あのプール事件の時シロさんの服に愛美ちゃん特製の対先生物質に反応して色が落ちにくくなってるペイント弾を当ててみたこととか……
「そうなんだ……カルマ、寺坂くんたちのことなんてよく知ってたね」
「……アミサが、気にしてると思ったし。あの後クラスに本トに馴染めてるか、知りたかったんじゃない?」
「……うん、教室、来てるかなって思ってた。でも律ちゃんが映像に映してくれた時にもいたから……それに、カルマの話も聞いて、仲直りできたみたいだし、ちょっと安心した」
「……そっか」
「あ、律ちゃんの映像といえば……カルマ、頭痛いのへーき?いっぱいお話しちゃってるけど……辛くない?それとも予定ってまだ来てないの……?」
「……あー……あれ教室出るために言った仮病だから……本気にしないでよ」
「え。……そうなの?」
「本気にしないでよ……本気で調子悪いならそもそも休むでしょ」
「……カルマ、ほとんど病気ならないから……信じれない……」
「そこか」
この感じなら、教室へ行った時にまた前みたいに寺坂くんたちと普通に話せるかな、なんて思っていたらカルマはちょっと不機嫌そうで……今まで会話のどこに不機嫌になるところがあったのだろう。
〝カルマ君はカルマ君でちょっと不機嫌そうだし……〟
……おかーさんの言ってた通りなら、今機嫌が悪くなることがあったというよりも、少し前からそんな感じのところがあったってこと……?
私がまた無茶をしたから?心配かけてばかりだから?……でも、これはいつも通りというか、ずっと変わらないことな気がする……治さないといけないとは思ってるんだけど、体がつい動いちゃって、いつも通り心配かけて……って繰り返してるし……今更だよね。
……だったら、私がカルマばかりに寄りかかりすぎて、迷惑になっちゃった……?だけどそうだとしたら、さっきの
1人で悶々と考えてもわからないと思って聞こうとした時、病室の扉をノックする音が響いた。
「……?誰か、きた……?」
「ああ、もうこんな時間だったわけ……」
「……どうぞ?」
ノックの音にカルマの顔を伺って一旦話を切ってもいいか確認すると頷かれた。入室を促してから扉の外にいる気配の1つが少し揺れた気がして、それから静かに病室に入ってきたのは……
「…………」
「あ、寺坂くん……」
扉を開けた向こう側にいたのは先程から話題にあげていた、口を真一文字に結んで、こちらを見ている寺坂くんだった。そっか、いつの間にかもう放課後だったんだ……入口で足を止めたままの彼は真っ直ぐにこっちを見ていて、安心したような怒ってるような不安になってるようなそんな感情がごちゃまぜになった
前みたいに色々見失ってる彼じゃなくてよかったって思いながらも、入ろうとも出ようとも動こうともしない彼に、だんだんと私の方が不安になってくる。
「あ、あの……入らない、の?」
「はぁ……ねぇ、寺坂。さっさとやるならやればぁ?」
「……っ、わーったよ……」
黙っているのも居づらくなってきて声をかければ、一緒になって何かを促しているカルマ。固まっていた彼は決心したように足を踏み入れ……そのまま床に正座した。
「え、え、えぇぇ!?」
「……真尾、悪かった。お前は色々気づいてたのに、全部無視して追い払って……結果、あいつらにいいように使われて、お前を危険な目に合わせちまった」
「え、あの、」
「殴ってくれたっていい、罵ってくれたっていい。お前が今回の一番の被害者だ」
そう言って目を閉じて、動かなくなっちゃった寺坂くん……え、これって私が殴るか罵るかなにかしないとこのままでいる気なの……!?私、寺坂くんを責めるつもり、何一つないんだけど……。
それに、根本的な問題がある。
「私、ベッドから出ちゃダメって言われてるから、そこまで行けない……」
「そーいや言ってたね」
「……覚悟決めてた俺はどうしろってんだ」
そんなこと言われても……申し訳なくなりながら呟いた私の言葉に脱力してしまった寺坂くんを見て、カルマがものすごくいい笑顔で立ち上がると彼の後ろへ……
「アミサがやらないなら俺がこのバカ殴ろうか?バカがバカやらかしたせいで死にかけたわけだし、本人が望んでるわけだし」
「だからバカバカうるせぇぞカルマ!しかもお前には望んでねぇ!あん時既に俺を殴ってるし、蹴りも入れただろうが!」
そのまま寺坂くんの頭をポカポカ叩きながら私の代行を名乗り出た。それもう私に許可求める以前に叩いてるよね?……そんなカルマに対して怒鳴りつつも正座を崩そうとしない寺坂くんがなんだかすごかった。
このままだと2人でケンカして終わる気がしてきて、慌てて代わりになりそうなものを考える……と、そうだ、
「あ、と、じゃあ……2つ、お願いしてもいい……?」
「はァ?……いーけどよ」
「なら1つ目は……こっち、来てください」
「……それ、願いに含めなくてよくねーか……?」
「アミサだから」
「何だよその説得力」
何やらブツブツいいながらも、立ち上がって私の方まで来てくれた寺坂くん。カルマはカルマで寺坂くんの後に続こうとして一度立ち止まり病室のドアの方を見て……何事も無かったかのようにベッドまで戻ってくると、寺坂くんとは反対側のベッド脇に来てベッドを椅子替わりにして座って彼を見ている。
どこかバツが悪そうな顔をしながら私を見下ろす彼に、私は手を差し出した。
「「………は?」」
「はい、2つ目のお願い。寺坂くん、手、貸してくれる?」
「…………お、おう」
「カルマも」
「え、俺も?……はい」
見事にカルマと寺坂くんの疑問の声がかぶったけどあえて聞かなかったことにして、そろっと差し出された寺坂くんの手のひらを右手で握る。それは大きくて、武骨で、でも暖かい手……点滴を動かさないようにしながら、左手でカルマの手を軽く握る……私にとって馴染みのあるこの手は、寺坂くんと同じ男の人の手でも全然違う。
「……カルマの手はね、華奢なのに大きくて……それでちょっと硬いの。多分、ケンカでも道具でも色んなものを扱うことが出来る器用な手だから」
「……アミサ?」
「寺坂くんは、大きくて、ゴツゴツしてるのに多くのものを扱うのが苦手で不器用な手……でも、その分1つのものに集中するのが得意な手、だと思う。だからいっぱい下手に、考えなくていいんじゃないかな……」
「……つまり、どういうことだよ」
「寺坂くんは、寺坂くんに向いてる役割をこなせばいいと思う。私の言葉を聞いて律ちゃんが動けないようにしたこととか……カルマの作戦を、完璧に実行して見せたこととか……ちょっと違うかもだけど、シロさんの作戦を寺坂くんは誰にもバレずに実行しきったのは、すごいことだと思ったから。たくさんある選択肢の中から選ぶのは寺坂くん自身だけどね」
彼は自分の頭で考えて人を使うよりも、自分が動いて周りの人が見てそれについていくのが自然なんだと思う。だからって言いなりになって使われてしまっては意味が無い……いくつもある示された道の中からどれを選んでどのようにこなすかは、寺坂くん自身が決めることだと思うから、そこからは彼自身が考える所だ。
どこか、自分で話しておきながら私自身に重なるところがあるなぁ……なんて考えながら、はい、と握っていた手を離すとポカンとされてしまった。
「まさか、これで終わりか……?」
「え、うん。私満足」
「……仕返しにも何にもなってねぇじゃねーか」
「……だって、寺坂くんに仕返しすることなんてないのに……んー……じゃあ、はい」
「いっ!?はぁ……カルマ、こいつこれでいいのか?また自分のために感情出せてねー気がするんだが」
「……いや、本気で寺坂に不満ないんだよ多分。大方仕返しするならシロにとか思ってんでしょ。それに……前は俺が促さなきゃこういうこと言わなかったのに、自分からお前に伝えるために一生懸命だったじゃん。そこ、見てやってよ……」
「じゃあなんでお前は不機嫌なんだよ……」
「……知らないよ、こんなの」
「?」
仕返し、するんだったら、みんなを危険な目に合わせたシロさんにしたい。結局自分のやりたい暗殺のために、E組のことをどうなってもいいというように軽く扱ったんだから……浮いていたとはいえ、寺坂くんを騙したんだから。そう思ってたのはしっかりカルマが汲み取ってくれていた。
でも、何もしないでは納得してくれてなさそうだったから、まだ持っていきどころに困っていた彼の手をもう一度とって、手の甲を軽くつねっておいた。……ちょっと不服そうな顔はされたけど、これで許してほしい。
なんて、話していたらまた外の気配が揺らいだ気がした。
「そういえば、寺坂くんが来た時からちょっと気になってたんだけど……お部屋の外に、他にも誰かいるよね……?」
「……お前、気付いてたのか?」
「俺も寺坂の近くまで行った時に気付いたけどね。気配の消し方はまだまだだよね〜……習ったじゃん、ナンバとかさ」
「なんだ、バレてたのか……」
「ホント、アミサってそういうのに敏感だもんね」
寺坂くんが来た時、部屋の外には複数の気配があった。なのに入ってきたのは彼1人だったからなんでだろうと思っていれば、彼が正座し出すし殴れとか言い出すし……有耶無耶になって忘れかけてた。
カルマは最初は気づいてなかったんだろうけど、こっちに移動してくる時には分かってたんだろうな。カルマが外に向かって声をかけるように話せば、バツが悪そうというか困ったような表情で、メグちゃんと磯貝くんが病室に入ってきた。
「はい、カルマ。抜け出した罰だってさ」
「げ。……いいじゃん、この3日間我慢したんだしさ〜」
「それは殺せんせーにいいなさいよ。……一応私達はクラス代表でお見舞いと寺坂君の付き添いね。もうすぐ期末だし、アミサが戻ってきたら本格的にまた分裂するってさ。みんな待ってるから」
「ありがと、メグちゃんと磯貝くん。……またやるんだ、あの分裂講習……」
お見舞いっていいながらしっかり殺せんせーからの課題をカルマに渡しつつ、様子を見に来てくれた2人をみて自然と笑顔になれた。
2人とも周りを引っ張るリーダー基質だし、メグちゃんはイケメンなお姉さんって感じで、磯貝くんは弟妹がいるからか妹基質(らしい)私のこともお兄さんのように接してくれるから、少しずつ頼れるようになってきてるクラスメイトだ。……私は今、幸せ……少しずつ、私の大切が増えていく毎日がとても幸せだ。
そして、メグちゃんや磯貝くんたちと話していた私は1つだけ、聞きたいと思っていたことをすっかり忘れていた。カルマが不機嫌な理由……それを思い出したのはみんなが帰ったあとのことで、ちょっと後悔した。
「!うそ、なんでこの本……こっちに売ってるところ見たことないのに……」
「……『カーネリア』に『陽溜まりのアニエス』……誰から?……あれ、手紙?」
【眠っているようだから手紙で失礼するよ。理事長からキミがE組でちょっとした事故があってそれに巻き込まれたと聞いた。詳細は全く流れてこないが……無理はしていないかい?何か困ったことがあればキミならいつでも歓迎するよ。早く学校に戻れることを祈って。
浅野学秀
P.S.
出会った時に読もうとしていた本と同じ出版社の本を取り寄せてみた。興味があると嬉しいが。】
「……浅野くん、来てたんだ。」
++++++++++++++++++++
幕間、病院での一コマでした。
この後色々検査をしていく上で、入院が伸び、1週間もかからずにオリ主は退院します。
ただ、病気とか治療とかにそこまで詳しくないので期間が短いとかこんな簡単に退院出来るはずないでしょ!とか思われるかもしれませんが、前提として体の機能は回復済みということがありますのでご了承を……あとは、ちょっと衰弱というか、なんというかで、はい。
今までの閑話でも、ストーリーでも、話の流れ的にのちのち公開予定のもの、今後の話で重要になりそうなキーワードを、散りばめていくのが楽しいのですが、気づいてくださった方はいるのかな、読み返してくれるかなと毎回楽しみにしています。
今回公開可能なものでいうなら……何人くらいみえますかね、寺坂くんが来た時点で誰かが一緒にいたことに気が付かれた方。バレバレでした?
これ今後に関わってきますか?な部分に気づかれた方、ぜひメッセージとかコメントください!もっとバレないようにちゃんと隠します!!!(笑)
次回、期末テスト編です。
またリニューアル版では少しだけ内容をいじります。