暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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中学生、思春期らしい悩みと戦ってもらうテストの時間がやってきました。

……もう既に試されまくってるので今更ですが。

もうお互いのことを知り尽くしていそうなオリ主とカルマが、お互いに知らない感情と向き合う時間、1時間目です。




37話 一学期末の時間・1時間目

 プールの事件ではいろいろあったけど、1学期末テストの本格的な準備期間に入る前には退院して無事にクラスへ復帰することができた。久しぶりに教室へ入った時、女の子たちにはもみくちゃにされてすごく驚いて……って待って、嬉しいしむず痒い気持ちでいっぱいになってるけどそれより私みんなより小さいから埋まる……!

 

 案の定埋まった私を引っ張り出してくれたのがカルマで、嬉しかったけど助かったと思っていたら、今度は男の子たちからもおかえりって声をかけてもらえたり、渚くんとか陽斗くんとか磯貝くんとか……私とよくスキンシップを取ってくれる面々には頭を撫でてもらえた。千葉くんも1回だけ通りすがりに、ポンって。

 

「真尾!!ホントよかったな!!」

 

「え、わ、ありが、……ふぇ?」

 

「はい、それはダメだからねー」

 

「はい離れて離れて」

 

「お前は遠慮しろ!!!」

 

「というか自重しろよ!!!」

 

「どわッッッ!!だッ!!!」

 

 岡島くんだけは男の子の中でカルマと渚くんを除いて唯一ハグしようとしてくれたんだけど、慌てて腕を広げてみたら私は女の子たちに引っ張り戻されて、岡島くんは男の子たちにどつかれてた……制裁?らしい。

 

「アミサ、ほんっとアンタ危機感というか……」

 

「え、カルマと渚くんは、いつもぎゅーってするよ?」

 

「いやそれはそうなんだけど、岡島はダメ」

 

「なんで……?」

 

「……せ、説明が難しい『なんで』が来てしまった……!」

 

「な、なんて答えるのが正解!?」

 

「アミサちゃん!ぎゅーは私としよ?ほら、ぎゅーっ!」

 

「カエデちゃ……?えへへ、ぎゅーっ」

 

「「「(ナイス茅野さん!!!)」」」

 

 一通り構ってもらってから顔を上げたら、寺坂くんが近くに来てて……病院でも会ってるしどうしたのかなって思っていたら誰よりも頭をグシャグシャに撫でられた。驚いたけど、前以上に仲良くなれた気がして嬉しくなって自然と笑顔になれて……そしたらカルマが寺坂くんを、……ついでに岡島くんも教室の外に連れていってしまった。

 凛香ちゃんに耳を塞がれたから、外で何をしてきたのかは分からないけど、帰ってきたカルマはなんかスッキリした顔してるし、寺坂くんと岡島くんはどこか疲れた顔して机に突っ伏してるし……ほんと、何してきたんだろう。

 

「さて、アミサさんも帰ってきたことですし、そろそろ期末テストに向けてのテスト勉強に入りましょう!今日は天気もいいですし、外でやりましょうか」

 

 殺せんせーのその一言で、E組のみんなで揃って校庭へ出て行き、みんな各々好きな場所に座って問題集を広げて解き始める。先生は中間テストの時みたいにたくさん分身を作りながら……今回は教室の中だけに限られてなくて、距離の開いた位置に座っていてもしっかり生徒ごとに分けて教えてくれていた。

 私の前には、入院中の遅れを取り戻すため、短期間のNARUTO殺せんせーがいる……追いつくまでの間は、寺坂くんとお揃いだ。

 

「殺せんせー、また今回も全員50位以内を目指すの?」

 

 中間テストと同じように対策をするなら目標も同じになるのだろうか……そんな考えからだろう、渚くんが殺せんせーに質問したみたい。それに対して殺せんせーは総合点ではなくて、生徒1人1人にあった目標……どんな生徒にもチャンスとなる、暗殺教室らしい目標を設定したらしい。

 ……殺せんせー、下手に気遣うから色々気にしてた寺坂くんが余計に怒ってるよ……

 

「き、気を取り直して……シロさんが前に言った通り、先生は触手を失うと動きが落ちます。色々と試してみた結果……触手1本につき、先生が失う運動能力はざっと10%!」

 

 先生の触手は何本あるのか分からないけど……でも、1本落とすだけでも、その分常人の私たちでも目で追うことができるスピードに近くなるわけだ。

 実際に今、数本の触手を落としてくれて……なんか、分身のスピードが落ちるというより物語の幸福感が落ちるというよく分からない減り方をしていたけど、分身のスピードは落ちていて、確かに目で追えた。……まさか殺せんせーは、それを暗殺のヒントとして出すためだけに今説明したわけじゃないんだろう……続きに耳を傾ける。

 

「そこで本題です。前回は総合点で評価しましたが……今回は、皆さんの最も得意な教科も評価に入れます。教科ごとに学年1位を取った者には……触手を1本破壊する権利を進呈します」

 

「「「!!!」」」

 

「総合点と5教科全てでそれぞれ誰かがトップを取れば、6本もの触手が破壊できます。これが暗殺教室の期末テストです。賞金100億に近付けるかどうかは、皆さんの努力と成績次第なのです……!」

 

 それって……この教室(E組)には、総合では落ちこぼれの部類に入っていても、一教科だけなら上位争いに食い込めるスペシャリストが何人もいる。むしろ一教科に偏りすぎてE組に来たって人もいるくらいだから、確かにこれはかなりのチャンスだ……!

 全体が秀でた生徒、抜きん出た生徒だけじゃない……何か突出した才能をもつ人たちをそれぞれに評価するやり方。ホントに、どんなことでも殺せんせーは私たちをやる気にさせてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「各教科1位で触手1本かぁ……」

 

「上位ランカー結構いるもんね、E組って」

 

「珍しく気合い入ってんじゃん、奥田さん」

 

「私、理科だけなら大の得意ですから!やっとみんなの役に立てるかも!」

 

 教室に帰ってきてからも、話題になるのはその1点……無条件で触手を破壊できる権利、かなり大きい。愛美ちゃんも、まだ文系科目には苦手意識があるみたいだけど、元々得意なものを生かせるって張り切っている。

 

 

 

────ブブブ……

 

 

 

「あ、悪ぃ。俺のスマホだ……って進藤から?……もしもし、よぉ、なんだ?」

 

 杉野くんのスマホに、珍しい人からの着信だ。

 

 ……球技大会の後、進藤くんは、下校の時に旧校舎へ行く山道の入口に立っていて、私にひどいことを言ってしまったからとわざわざ謝りに来てくれた。

 この時、私は初対面のことから反射的にカルマの後ろに隠れてしまったんだけど……杉野くんがもう平気だからって言ってくれたし、隠れてしまった私に対して気を悪くした様子もなく……むしろ、あんな呼び方や見下した態度をとって悪かったって、わざわざしゃがんで、真っ直ぐ目をあわせて言ってくれた。今では杉野くんを通じて登下校の時に会えば挨拶しあえるようになっている。

 

 一応E組と本校舎の生徒は対立している関係……B組所属の彼がプライベートならともかく、この時期にいきなり電話をかけてきた理由ってなんだろう……?

 

「……はは、相変わらずの上から目線で。……はァ?A組が会議室に集結して自主勉強会?……ちょっと待て、スピーカーにしていいか?……おう、サンキュ」

 

 最初は普通に軽口を言い合って仲のいい友だちらしく会話していたのにいきなり真剣な表情になった杉野くん。スマホのマイクを押さえてから教室にいる人たちへ「本校舎の情報が来たから少し声を控えてほしい」と言って、スマホをスピーカーモードにして机に置いた。

 興味を持ったクラスメイトたちが近くに集まり、近くには来なくても教室にいる人たちはみんなが聞き耳を立てているみたい。

 

「待たせた、詳細頼む」

 

『おう、……俺等3年のクラス序列は最下層にお前等E組、次に横並びでB・C・D組、そして成績優秀者、及び才能に秀でたものを集めた特進クラスA組がある。これがこの椚ヶ丘中学校での当たり前だ、それはいいな?……その頂点であるA組が全員集結して自主勉強会を開いてるんだ……こんなの、初めて見る』

 

 A組が本校舎の生徒ですら初めて見る行動をとった……殺せんせーが各教科1位を狙う目標を提示したのはついさっき、ということはその情報がA組に伝わったから取られた対策、とは考えにくい。

 ……自分たちの判断で学力の底上げに着手したってこと……?さすがの理事長先生も知らないと思うし……あ、でも、さっき烏間先生とイリーナ先生が今回の期末テストの成績が暗殺に直結するってことで、下手に妨害されてしまわないよう理事長先生の妨害を警戒して釘をさしに行ったはず。……まさか、先生たちから伝わってるってことはないよね?

 

『勉強会の音頭を取る中心メンバーは、〝五英傑〟と呼ばれる椚ヶ丘(うち)が誇る天才達だ。

 

1人目。中間テスト総合2位……他を圧倒するマスコミ志望の社会知識……放送部部長、荒木鉄平!!

 

2人目。中間テスト総合3位……人文系コンクールを総ナメにした鋭利な詩人……生徒会書記、榊原蓮!!

 

3人目。中間テスト総合6位……4位だけでなくその下の5位さえもを奪った赤羽、真尾への雪辱に燃える暗記の鬼……生物部部長、小山夏彦!!

 

4人目。中間テスト総合7位……口の悪さとLA仕込みの語学力は追随者ナシ……生徒会議長、瀬尾智也!!

 

「ちょ、ちょっと待て。そ、そのナレーション、お前がやってんの……?」

 

 なんか……、……なんというか、ものすごい、臨場感のあふれるナレーションというか選手の紹介ボイスみたいな声がスマホから聞こえてきた。かっこいいけどなかなか真似しようと思ってできるものじゃない。

 ……というか、会議室が見える場所で電話してるってことは、進藤くん、廊下にいるんじゃ……?彼曰く、一度やってみたかったらしい。……咳払いとともに気を取り直して彼は続ける。

 

『そして……その頂点に君臨するのが……中間テスト総合1位、全国模試でも1位……全教科パーフェクト。理事長(支配者)の遺伝子を引き継ぐ、生徒会長、浅野学秀!!

 

 ……浅野くん。やっぱり、あなたが誰よりも1番立ちふさがってくるんだね。理事長先生の一人息子であり、人望が厚く、成績はトップ、プライドの高いA組の猛者をまとめ上げるカリスマ性……。

 私は彼自身と少しだけ交流があるから分かる、彼こそが私たちの目標を達成する上で1番の壁になる相手だって。それに、他の4人だってただ五英傑と呼ばれているだけじゃない……各教科のスペシャリストがA組には揃ってる。

 

『5人合わせりゃ、下手な教師よりも腕は上だ……ただでさえ優秀なA組の成績がさらに伸びる。奴ら、お前等E組を本校舎へ復帰させないつもりだ……このままじゃ、』

 

「……ありがとな、進藤。口は悪いけど心配してくれてんだろ?でも大丈夫。今の俺等は……E組を出ることが目標じゃない、けど、目標のためにはA組に勝てる点数を取らなくちゃならない。……見ててくれ、頑張るから」

 

 進藤くんは、口ではなんだかんだ言いながらもE組(私たち)を認めてくれている……認めた相手を心配しているからこそ、こうやって電話をくれたんだ。

 そんな相手もいるんだってこのE組のみんなはもう知ってるし、私たちは私たちなりの信念があって目標をもっている。この期末テストでだって、誰もをあっと驚かせるようなことを成し遂げてみせるんだ、絶対に。

 

『……勝手にしろ。E組の頑張りなんて、知った事か。……そういえば杉野、スピーカーと言っていたな……真尾さんは、聞いてるか?』

 

「ふぇっ!?わ、私……?」

 

『ああ、よかった。……真尾さんは中間テストでかなり上位にいただろう?さっきも言ったが、総合6位の小山は特にお前を目の敵にしてる……一応、気を付けておけよ。俺も負けるつもりは無いが、個人的にはお前を応援しているからな!!』

 

「う、うん……!ありがとです、進藤くん。……あっ、ナレーションかっこいいね、臨場感あってこれから戦うって意識が燃える感じで……負けられないなって思ったよ。でも会議室に聞こえてない?だいじょぶ?」

 

『……あ、あぁ、大丈夫だ。……なぁ杉野、時間差で褒め殺されてるんだが……まさかこれも……』

 

「あー、いつもの事だ」

 

『……わかった、真尾の賞賛は素直にありがたく受け取ろう』

 

 どこか兄貴分的な彼らしい激励を、直接名指しでもらってしまった……しかも、それをE組のみんなに聞かれている、……これはもう、頑張るしかない。

 とりあえずは範囲に追いつくために殺せんせーのNARUTO講習を終わらせるのが最優先事項、少しでもみんなの役に立てるように、私なりにやってみようと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ていうか、なんで進藤……」

 

「あー、あの球技大会の一件以来進藤の奴、すっかり真尾のファンになっちまったみたいで……」

 

「……、……チッ、また敵……」

 

「最後の感じ、時間差の褒め殺しに照れてはいそうだけど、あいつの場合推しに褒められて感動してる程度の認識でいい気はするけどな……いつも本校舎(下の方)で会うとあの尊大な態度崩して明らかに可愛がってるし、真尾は真尾で直接会うと態度の急変にビビってるし」

 

「その辺はE組のがアドバンテージ高いわな、電話越しは別として」

 

「……お前もうかうかしてらんねーな、カルマ。余裕なくなってきたんじゃねぇ?」

 

「うっさい、寺坂」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってくれお前等!明日の放課後って空いてるか?」

 

「磯貝君」

 

 明日も期末テスト対策になるんだろう、もうそろそろNARUTO講習を脱出して苦手分野に集中できたらいいな……そんな気持ちでいつものように、カエデちゃんと渚くんとカルマと一緒に帰ろうとしていると、後ろから磯貝くんに話しかけられた。

 なんでもこの期末テストの時期を狙って本校舎の図書室にある勉強スペースの予約を取っておいたらしい。日にちは明日の放課後……さすが私たちの委員長、イケメンだ……!

 

 誘ってもらえたからにはぜひ行っておかなくては……かなり参考書の充実しているあの図書室はもう図書館って言っていいくらいの本がある。だからこそいつも満席だし、予約を取ってもE組は基本的に後回しにされる……それを取ることができたのならかなりチャンスだ。

 

「いくいく!」

 

「わ、私もいいのなら……!」

 

「ほほ〜私も便乗させてもらおうかしら」

 

「中村もいいぞ、定員にはなってないしな」

 

「僕も行くよ!」

 

「……あー、俺パス。3人で行ってきなよ〜……ふぁあ……」

 

「あ、カルマ、…………」

 

 カルマは1人、欠伸をしながら余裕そうに歩いていってしまった。ここ最近、ずっとおかしいとは思ってたけど……カルマが、変だ。何がって言われると説明しにくいんだけど、今で言えばテストを余裕って感じに軽く見てるのもだし、いろんなものを「やっておけばよかったかもね」と言いながらやろうとしないというか……それだけじゃなくて……

 

 思い当たることってわけじゃないけど……私はE組(ここ)に来るまでは無理だった、友だちの間で自然なおしゃべりをしたり一緒にご飯を食べたり勉強したりすることができるようになってきた。

 

 ……残る苦手なことである『人を信じて頼る』ということだけはまだなかなかできなくて、今でもほとんどを唯一無条件で信頼できるカルマと渚くんに寄りかかっているのだけど……

 球技大会では凛香ちゃん、プールの時にはメグちゃん、他にも桃花ちゃんや磯貝くん、陽斗くん、莉桜ちゃん、千葉くんも、かな……お姉ちゃん、お兄ちゃんみたいな人の前でならだいぶ緊張せずに甘えに行けるようになった、と思う。寿美鈴おかーさんもその1人。

 

 渚くんはそんな私が頑張っているのを認めて、ずっと言われていた〝外〟の世界を見ることができるようになってきてるってすごく褒めてくれたんだけど……カルマはどこか不機嫌で。

 ……ずっと寄りかかってばかりじゃ、カルマの迷惑になっちゃうから少しずつ、ほんの少しずつ彼から離れて他の人にも頼れるように頑張ってるのだけど、誰よりも1番見てほしい、褒めてほしい彼には上手く伝わらない。それが悔しくて仕方なかった。

 

 何でなのか聞こうにも、普段話す分には今まで通り普通で……そういう話題になったり、話を聞こうとしたりするたびにのらりくらりと避けられてしまう。だから最近、私は彼のことが分からなくなってきていた。

 呼び止めようと手を伸ばしたまま、その手をどこへ持っていけばいいかもわからなくなって、ゆっくり下ろして目の前で握りしめた時、横から肩を軽くトントンと叩かれた。

 

「アミサちゃん」

 

「……どうしよう……私、最近カルマが分からないの」

 

「……うん」

 

「……一緒にしゃべっててもね、本心が見えないの。聞きたいところだけ上辺が流れていって潜らせてくれない……分からないのが怖いの、……私、なにか間違えちゃった……?」

 

「……アミサちゃんは頑張ってるよ。前のままだったら、きっと全部僕達に依存して他の人に頼れなくなってたと思う……でも、今は周りが見れてるでしょ?……カルマ君自身、自分が不機嫌な理由は分かってるけど、多分それをどうやって解消すればいいかが分からないんだよ」

 

「分かってるのに、解消できないの……?」

 

「そう、カルマ君も最近自覚したばかりのことがあってさ、何とは教えてあげられないけど……初めて向き合う感情とどうやって付き合っていけばいいのかって、今必死なんだよ」

 

「あとは、焦ってるんだろうね。自分とあと1人だけに適用されてた特権のようなものが、最近そうでもなくなってるように感じてて。……私たちからすれば、全然そんなことないのに」

 

「……?……どういうこと……?」

 

「あー……それは言えない、かな、カルマ君の名誉のために。でも、確実にいえるのは……アミサちゃんは何にも悪くないよってことかな」

 

「それに周りがどうこうしてどうにかなるってものでもないしね」

 

 渚くんとカエデちゃんの教えてくれる内容は、全部を理解するには大事なワードが多分隠されていて、よく分からなかった。

 ただ、2人だけ……ううん、なんか近くでこっちを見て聞いてる磯貝くんと莉桜ちゃんも苦笑いしてるのを見ると、みんなは分かってるんだと思う。……きっと、粘っても教えてくれない……なら、まずは目下の目標を頑張って、これについて考えないようにすればいいのか……でも、それすら間違いなんじゃって気さえしてくる。

 

「……さ、帰ろう?混乱させちゃってごめんね。明日、図書室みんなで行って、たくさん勉強しなくちゃ」

 

「ね、気にせず行こ行こ!」

 

「そうよー?明日はひっさびさのクーラーの中で勉強できるんだから!」

 

「堂々と本校舎の施設を使えるんだから、有意義にしなくちゃな!」

 

 優しく手を引いてくれた渚くん、静かに背中を押してくれたカエデちゃん。私たちが帰る動きになったのに気づいて、話題を変えるように明るく声をかけてくれた莉桜ちゃんと磯貝くん……とりあえず返事はできないまでもひとつ頷いて帰路に着く……私の心はまだ、晴れないままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして次の日。なんとか範囲に追いついてNARUTO講習を終えて、私の前の分身殺せんせーは中間テストと同じように理科のハチマキを巻いている。今回は殺せんせーも先に進むよりは今の内容を堅実に、の考えらしくてそこまで焦ってない。

 けど、結局この日もカルマのイライラの原因が分からないまま……図書室での勉強の時間を迎えていた。

 

 久しぶりにクーラーの中という涼しい環境、そして期末テストに絶対役立つ学習書をたくさん見ることが出来る数少ない機会……吸収できるものは吸収して帰らなくてはもったいない。

 というわけで私たちはE組図書室メンバーで借りた机の一角に参考書などを広げて勉強に励んでいた。ちなみにメンバーは、磯貝くん、莉桜ちゃん、有希子ちゃん、愛美ちゃん、渚くん、カエデちゃん、私の7人だ。

 

「あ、……アミサちゃん、数学のここって分かる……?」

 

「ここはね……」

 

「渚ぁ、次その参考書貸して」

 

「ちょっと待ってて、ここ写したら渡すよ」

 

「おやぁ?E組の皆さんじゃないですかぁ!もったいない、君達にこの図書室は豚に真珠じゃないのかなー?」

 

「どけよザコ共。そこ俺等の席だからとっとと帰れ」

 

 隣に座る有希子ちゃんと一緒に数学と国語を教えあいっこしていたら、急に聞こえた私たちを完全に見下す発言。一瞬体がビクついたけど、机の下で有希子ちゃんが手を握ってくれたから……頑張って顔を上げてみれ、ば……そこには昨日進藤くんが教えてくれた五英傑の内、浅野くん以外の4人だと思われる人たちが揃っていた。

 

 元気に言い返してるカエデちゃんだけど、参考書に隠してプリン大全を読んでるのが見えて、渚くんが呆れながらツッこんでる。目的、変わっちゃってるよ……あれ、あの5人内の1人に、ものすごく見覚えあるんですが……確か、瀬尾くん、だっけ。

 

「ここは俺達がちゃんと予約とった席だぞ」

 

「そーそー、クーラーの中で勉強するなんて久々でちょー天国〜」

 

「忘れたのか?この学校じゃ成績の悪いE組はA組に逆らえないこと」

 

「さ、逆らえます!私達、期末テストで各教科1位を狙ってます。そうなったら、大きい顔なんてさせませんから!」

 

「……そ、そのとおり、ですっ!それに……成績が全てなんです、よね……?……他の方はともかく、小山くんと瀬尾くんには私、とやかく言われる筋合いはありませんっ!」

 

「何ィ!?」

 

「はァ!?」

 

「ひぇっ……!」

 

 愛美ちゃん……普段おとなしい彼女が、目標があるからこそ先陣を切って前に出た。怯えながらも、私たちのために言ってくれた……だったら、私にだってここにいるE組の中で唯一反論できるカードがある。中間テスト総合5位という、彼らの言う成績上位であるというカードが。

 1人では多分無理だったけど……有希子ちゃんがだいじょぶって言うように手を繋いでくれてたから、座ったままではあったけど、真っ直ぐ見ていうことができた……ちょっと悲鳴あげちゃったけど。

 

 ……まあ、あの雨の日の仕返しで名前を知った瀬尾くん以外、誰が誰か分からなかったから進藤くん情報で小山くんの名前は言っただけにすぎないけども。

 

「まあまあ、落ち着いて……それに小山、腐すばかりでは見逃すよ。御覧、どんな掃き溜めにも鶴がいる……それに君は鶴というよりは可憐な花のようだ……」

 

「「!!」」

 

「もったいない……学力さえあれば、僕に釣り合う容姿なのに……せめてうちに奉公に来ない……?」

 

「え、いえ、あの……」

 

 そんな私の真っ直ぐ見る努力は数秒と持たず、いきなり背後から髪をすくわれて口付けられた……なんか、よく分からない人に。多分独特な台詞回しや形容詞の多い口調からして、国語が得意な榊原くんだとは思うけど……なんでだろう、直接触れられたわけではないのに背筋が、ゾワッてした。

 私の次に有希子ちゃんへ顔を近づけたかと思うと、小間使いとか奉公とかに誘ってる……色々と近すぎて、下手に動けもしなくて焦っていると、さっき愛美ちゃんに突っかかっていた黒髪メガネの人が何かに気づいたように声を上げた。

 

「……いや、待てよ……記憶を辿れば、こいつら確か中間テストでは……神崎有希子、国語23位。中村莉桜、英語11位。磯貝悠馬、社会14位。奥田愛美、理科17位。そして、真尾有美紗……英語1位、国語2位、数学1位、理科4位、社会3位。……なるほど、一概に学力無しとは言えないなぁ」

 

 この黒髪メガネの人、あれだけ膨大な数(187人も)いる3年生の顔と名前、それに中間テストそれぞれの順位を覚えてるっていうの……?この記憶力のすごさから考えるなら、この人は多分小山くん……進藤くん曰く、総合点4位をとられた私への雪辱に燃える人、だ……うん、多分あってる、今私の名前をあげながらものすごい顔で睨まれたもん。……ということは多分、残ったもう1人のメガネの人が荒木くんなんだろうな。

 

「面白い、ならこういうのはどうだろう?」

 

 そして、その荒木くんだろう人が言い出したことは……私たちが目指すものそのものであり、今までだったら避けて通りたいものであり、今では目標を達成するためにはある意味避けては通れないものだった。

 

「俺等A組と君等E組、5教科でより多く学年トップを取ったクラスが……負けたクラスにどんな事でも命令できる」

 

すなわち、〝元々私たちがやろうとしていた、殺せんせーの触手を破壊するための条件そのもので、A組とE組が学年トップ数を争う〟という賭けだ。

 

「どうした?急に黙ってビビったか?自信があるのは口だけか、ザコ共。なんならこっちは……命賭けても構わないぜ」

 

 ……命。

 

 多分、彼は軽いノリで言ったんだろう。よく言うもんね、友達同士のちょっとしたやり取りや、ちょっとした脅し文句として……だけどそれだけは、私たちE組の前で言っちゃいけなかったね。

 

 

 

 先生という命にずっと向き合い続けてる私たちには。

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、それぞれ自分の近くにいた五英傑の4人の急所に向かって……渚君はシャーペンのペン先を、莉桜ちゃんは定規を、磯貝くんは指先を、私も例外じゃなく……有希子ちゃんが榊原くんの右目にシャーペンのペン先を向け、私は左目ギリギリに突きつけていた。

 

「命は……簡単に賭けない方がいいと思うよ」

 

「じょっ、上等だよ!!受けるんだなこの勝負!!」

 

「死ぬよりキツい命令を与えてやるぜ!!」

 

 渚くんの最後の一言で、彼らは大慌てで図書室から退散していった。退散したけど……ここまで有名な人達と大声で、静かな図書室でやり合ったために、この騒動はたちまち全校に知れ渡ることとなり……1学期末テストは、A組とE組それぞれで学年トップを狙う、熾烈の争いへと発展していくことになる。

 

 

 

 





「君等がE組と賭けをしたってウワサになってるよ。5教科トップをより多く取れた方が、負けたクラスにどんなことでも命令できる?」

「わ、悪い浅野……くだらん賭けとは思ったが、あいつら生意気に突っかかってくるもんで……」

「……ま、いいんじゃないかな。その方がA組にも緊張感が出て。ただ、後でごねられても面倒だしルールは明確にしておこう……勝ったクラスが出せる命令は1つだけ。そしてその命令はテスト後に発表すると」

「1つだけか……」

「で、こちらの命令は?」

「………………、この協定書に同意せよ」

「「「!!!」」」

「こ、これ、今一瞬で考えたのかい?……恐ろしいな」

「恐ろしい?とんでもないよ。これは生徒同士の私的自治に収まる程度の軽い遊びさ」

「な、なるほど……ん?浅野君、この一項はどういうことだい?」

「ん?……ああ、それか。……彼女をこの賭けに巻き込むなんてことはしたくない。それに、いずれこのA組に迎えるべき存在さ……ならば、その項目を入れることになんら問題は無いだろう?」





「ところで……君達、一応聞いておくけど……その図書室にいたE組に対して名乗ったんだろうね?」

「はァ?」

「いや、名乗ってないけど……」

「でも中間テストでも上位7位以内のA組所属だぜ?しかも五英傑だなんて呼ばれてるんだ。みんな知ってるに決まってるだろ」

「……バカだね。特に小山」

「「「は?」」」

「なんだァ?」

「他はともかく、真尾さんは絶対にお前たちが誰が誰か把握してないよ。なんせこの僕が覚えられるまでに3年かかったんだから」

「「「「…………ハァァァッ!?!?」」」」





「…………」

「真尾、どうした?」

「……さっき、話しかけてきた人たち……」

「あー、五英傑な、杉野と進藤との電話に出てきたヤツら。……真尾、まさかと思うけど……」

「……誰が誰なんだろう……多分、あの人がこの人、で……」

「……有名人だと自覚して絡んできただろうに……いっそアイツらも可哀想だな……特にライバル視してるらしい小山……」



++++++++++++++++++++



1学期末テスト、1時間目でした。
この時点で結果発表までを含めて3時間目くらいまであります。テスト後のやり取りを絶対入れたくて……!


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