みなさまの読んでくださる傾向から、
・朝8時
・夕方17時
を目指して更新をしていきます。
1日1更新か、2更新かはわかりませんが、筆がノリさえすれば3更新することもあるかもしれません!
渚side
南の島での暗殺旅行が数日後にせまり、今日はその訓練と計画の詰めのためにE組生は休みだけどみんなが学校に集まっていた。
ちなみに殺せんせーはいない……プールを作ってくれた時に寒帯へ逃げる、みたいなことは言ってたけど、夏休みに入ったからってことで本当にエベレストに避暑のために逃げたらしい。烏間先生の部下の人がわざわざ殺せんせーハウスなるものの監視に行ってくれているらしくて、しっかり中で触手が動いてるのを確認できるとの事だ。
だから
「あれ……カルマ君、アミサちゃんは?」
「…………風邪ひいた」
「「「は?」」」
この場にはアミサちゃんが来ていない……で、代わりにって言い方はアレなんだけど、本トに珍しくカルマ君が訓練をサボりもせずに来ている。アミサちゃんは前に出ることは苦手にしてるけど、やることはちゃんとやるし1度やると決めた事は最後までやり通す努力家だ。寺坂君達でさえサボらずにこの訓練に来てる……だからこそ今日みたいな計画を遂行するに当たって1番重要になるこの訓練をサボるとは思えない。
アミサちゃんのことはカルマ君に、カルマ君のことはアミサちゃんに聞くのが手っ取り早いことが多いから、今もカルマ君に聞いたんだけど……まさかの返答だった。
「昨日さ、俺ん家で1日一緒に夏休みの課題やってたんだけど、夜にアーツの最終調整って言って風呂で練習してて……」
「待て、今の時点で1、2個ツッこませろ。お前等ホントに仲良すぎねー……?勉強会1日って、その様子だと泊まりだろ?」
「停学中も俺ん家泊めてたわけだし今更じゃね?」
「まぁ、それはいいとして……風呂で練習って何だよ」
泊まりに関しては僕にとっては今更だったから気にならなかったんだけど……やっぱり気になるのはその風呂での練習の話だ。
確かアミサちゃんからの申し出で、アーツを使った先生を追い詰める役を担ってるはずだけど、何をどうするのかまでは殺せんせーに情報を流さない対策として聞いていない。監督役だからと烏間先生には伝えてGOサインは貰ってるらしいし、細かい調整が難しいから集中しなくちゃいけないとは言っていたけど……
「うん、それが続きになるんだけどー……風呂で練習してる最中にアーツの詠唱を間違えたらしくて。悲鳴が聞こえたから様子見に行ったら風呂場が一面氷漬け……なんとか助け出したけど、夏とはいえ氷の中に閉じ込められてたせいで結果的に風邪をひきましたっていう」
「待て待て待て待て、風呂なんだろ!?お前、まさか……!」
「ウソだよな……さすがに、なぁ?」
「は?…………!ち、違うから!!水着、水着着てたからッ!学校指定のやつ!確かに俺の前で服脱ぐとかやらかしてくれてたけど!!」
「カルマ君、それはそれで自爆してるから;」
「アミサもアミサよ;教室男女で分けて着替えてる意味分かってなかったのかって言いたくなるわ;」
「あの子のことだから服の下に水着を着てたから遠慮なく脱いだんでしょうけど……まったく……」
カルマ君の言い方が必要なとこを省きすぎるせいで、今その説明を聞いてた全員が勘違いしてたよ……カルマ君がアミサちゃんの裸を見たんじゃないかって。自分ではどれだけ分かりにくい説明をしたのか気付いていなかったみたいだけど、途中で僕達の視線がかなりひどいものを見る目付きになっていたことから、僕を含めてみんなが何を言いたいのか分かったらしくて大慌てで弁解していた。
まぁ、話の流れからそうだろうとは思ってたけど、この慌て様にみんなが生暖かい目を向けていたのはしょうがない事だろうし……ここまでカルマ君の調子を狂わせられるのは、やっぱりアミサちゃんだけだと思う。
慌てて言わなくていいだろうことまで口走ってるけど、気づいてないんだろうな……カルマ君だからって気にしてなさそうだけどちゃんと男なんだから、目の前で服を脱ぐとか……アミサちゃんにはカルマ君を男として意識してあげて欲しい、本ト。
その後にボソリと続けられたカルマ君が訓練に来ることにした理由も、熱を出したアミサちゃんの看病ってことでサボることも考えたけど、自分の代わりに最終確認と訓練頑張ってきてと送り出されたからなんだとか。確かに他でもないアミサちゃんからそんな頼み方されたら、断れないよねカルマ君は。
「まぁまぁ、ガキ共。夏休みだというのに汗水流してご苦労なことねぇ……」
「ビッチ先生も訓練しろよ……射撃やナイフは俺らと大差ないだろうにさ」
ちなみにこんな会話をしつつも僕等は全員射撃訓練の真っ最中だ。そんな僕達が訓練をする後ろには、ビッチ先生が椅子を出してジュース飲んで1人くつろいでいる……ホント、訓練するでもなく何しに来てるんだろうって態度なんだけど、一応僕等の先生って立場だから様子を見には来てくれてるんだろうな。
でもビッチ先生、うしろ、うしろ……
「大人はズルいのよ……あんた達の作戦に乗じてオイシイ所だけもってくわ」
「ほほう……偉いもんだな、イリーナ」
「っ!!ろ、ロヴロ
ずっと前に烏間先生を相手に暗殺対決を繰り広げていた、ビッチ先生の殺し屋としての師匠であるロヴロさんが立っていて、静かに先生を見下ろしていた。この人は夏休みの特別講師として、また僕等が考えた暗殺計画にプロの視点からアドバイスを貰えるようにと烏間先生が呼んでくれたらしい。
殺し屋として落第が嫌なら着替えろと言われて、サッと姿勢を正してビッチ先生は校舎へ駆け上がって行った……うん、ロヴロさん、普通に怖いもんね。
ロヴロさんは殺し屋の斡旋業者……だからこそ、新しい殺し屋のプロを送るのかと岡野さんが聞いてくれたけど、今回は僕達任せらしい。なんでも、殺せんせーがプロ独特の殺気を覚えてしまうせいでこのE組教室にたどり着けなかったり、ロヴロさんの斡旋した人ではないけど昼間、僕等が校舎にいる時間帯だと襲撃されて断念せざるを得なかったりしているらしい。
それに加えて困ったこと……残りの斡旋予定だった有望な殺し屋数名と連絡がつかなくなったんだとか……他のプロが失敗したことに怖気ついたのかと烏間先生は予想してるけど。
「昼間ねぇ……彼が掃除してるって確か……」
「……イリーナ?」
「……知り合いに、あのタコを昼夜問わず狙う輩の襲撃があるから、今は忙しいって暗殺の手伝いを断られたんです」
「……なるほど」
「あ、ちなみにこの暗殺者です……そうだ、声掛けてみます?気が向けばガキ共の能力アップは手伝うとか言ってましたけど」
「なに!?彼ほどの暗殺者が無償で手伝うと?すぐに連絡を取ってみてくれ……」
着替えてきたらしいビッチ先生が、眉をひそめながら何やらロヴロさんと話している。内容的に昼間の学校の時間の襲撃がない理由についてみたいだけど、重要そうな部分は全部伏せて話しているから全然読み取れない。こういう部分があるから、ビッチ先生は先生じゃなくてちゃんと殺し屋なんだって実感するんだよね。
ロヴロさんから離れて電話をかけ始めたイリーナ先生だったけど、相手の人が電話に出なかったらしくて様子を見に来た烏間先生にキレてる。それに対してなぜかちょっとびっくりした表情の烏間先生に指示されてメールを打ち始めて……って、やっぱりいつものやりとりだ。
「……さて、これが作戦書か……なるほど、先に約束の8本の触手を破壊し、アーツの使い手による追撃でもう1本破壊、間髪入れずクラス全員で攻撃して奴を仕留める……それは分かるが……この一番最初の『精神攻撃』というのはなんだ?」
「まず動揺させて動きを鈍らせるんです。殺せんせー、殺気を伴わない攻撃には案外もろいところあるから」
「この前さ、殺せんせーエロ本拾い読みしてたんスよ。『クラスの皆さんには絶対に内緒ですよ』ってアイス一本配られたけど……今時アイスで口止めできるわけないだろ!!」
「「「クラス全員で散々にいびってやるぜ!!」」」
というわけで、最初の精神攻撃はある意味クラス全員参加の情報提供によって行われる攻撃というわけだ。ただ、触手の破壊権が2本もあるアミサちゃんだけど、エロ本とかのくだりがあるからこの攻撃中だけは席を外させるつもりだ……これにはクラス全員が同意した。
言い方はあれだけど、ゲスな話題には触れさせられない幼女だから……とは誰の言葉だったか、みんなが納得したよね。
まあ、これはアミサちゃんを参加させない以上伏せてる話だし、暗殺の前哨戦で直接的にはあまり関係ない部分でもあるから、ロヴロさんにも詳しく言わなくていいだろう。
「ふむ……皆良いレベルにまとまっている……短期間でよく見出し育てたものだ。人生の大半を暗殺に費やしたものとして……この作戦に合格点を与えよう。彼らなら十分に可能性がある」
「本当ならもう1人見て欲しい生徒がいたんだがな……」
「もしやあの暗殺の時に見事なバランス感覚を見せていた女生徒か?」
「ええ、防衛省としても彼女に話を聞いて協力を得ています。他の生徒がいる手前立場や詳細は伏せますが……彼女は、
「なんと……!ということは」
「イリーナも知らないようなので、内密に」
「……もちろんだ。これはすごいな……ならばあの暗殺計画の穴がほぼ埋まる……この後来る神出鬼没な存在とも相みえることができるのは、またとないチャンスだな」
◆
僕達の考えた暗殺計画に合格点をもらった後、ロヴロさんは訓練を続ける僕たちの間を回りながら……
「狙いが安定しただろう……人によっては立膝よりも胡座で撃つのが向いている」
「君、呼吸が合わせづらそうだな……無理をせず、自分に合ったスタイルで射撃に望むがいい」
1人1人の特徴を掴んでアドバイスをしてくれている。さすがは元本職殺し屋……現役を引退していても、技術、人を見る目の何一つ衰えているようには感じない。
だからかな……サボりがちなカルマ君も熱心にその様子を見て、アドバイスを受け入れている……と思ったら、射撃の順番交代とともに烏間先生の方へと歩いて行った。……あれは用事があってというより何かからかえそうなこととかを感じ取った時のカルマ君だ;通常運転すぎて何も言えない。
その烏間先生といえば、さっきからどこかへ電話をしたりメールなのかスマホを見ていたりと落ち着かない様子……何か、あったのだろうか。
まぁ、あの2人のことはひとまず置いておくとして……僕は1つ、聞いてみたくなった。殺し屋の斡旋業なんてしてるんだ、世の中の殺し屋のことを知り尽くしているだろう、この人に。
「あの、ロヴロさん」
「……ッ!……ああ、なんだ?」
「僕が知ってるプロの殺し屋って……今のところビッチ先生とあなたしかいないんですが、ロヴロさんが知ってる中で、1番優れた殺し屋ってどんな人なんですか?」
「……興味があるのか、殺し屋の世界に?」
「あ、い、いや……そういうわけでは……」
ただ、単純に興味があるだけ……そうだと思いたい。だけど、……以前、鷹岡先生と一騎打ちした時に、烏間先生に僕が選ばれた時から少しだけ疑問だったんだ……なんで僕が、って……。だからこそその世界の欠片でも知ってみたいと思ったのかもしれない。
でも、それだけじゃなくて……プロとして僕等が目指さなくてはいけない先を行く人を知れるなら、僕等が殺せんせーの暗殺を狙う上で虎視眈々と狙う相手を知れるなら、そう思ったんだ。
「そうだな……俺が斡旋する殺し屋の中には
────曰く、〝死神〟と。
……死神。ありふれた名前だけど、それが殺し屋たちにとっては唯一絶対の相手のことを指す……このまま僕達が殺すことが叶わず、学校生活を続けることになったら……もしかしたら姿を見せるかもしれない。
これはいよいよ……南の島のチャンスは逃せそうにない!
「それともう1人……死神とは別格の暗殺者がいる」
「!!」
「そうだな、あの彼からその暗殺者の一片を感じるが……さすがに気のせいだろう」
え、たった今……最高の殺し屋と呼べるのは1人だけって言ったのに……。話しながら目線を送ったのは烏間先生と、カルマ君?
どちらのことを言っているのかまでは判別できなかったけど、やや見つめた後にロヴロさんは烏間先生に声をかけた。
「Mr.カラスマ……連絡は取れたか?」
「ああ、なんとかな……もう到着するらしい」
「ふむ……では、全員集めよう」
先生達だけで分かる会話が交わされて……僕達は全員一度訓練の手を止めて、ロヴロさんのところに集められた。話の内容からして、誰かがここに来るんだとは思うけど……
◆
渚side
「君達は人の寿命はどのくらいだと考える?」
集められて1番最初に問いかけられたのはそんなことだった。いきなり聞かれたその質問にみんな困ったように顔を見合わせている……これはどう答えるのが正解なのだろう、真面目に答えるなら男女ともに80歳くらいだとは思うけど……
「先程そこの少年に聞かれた……1番優れた、最高の殺し屋は誰かと。殺し屋の中でも唯一絶対の存在ならば我々の業界では全員が〝死神〟と答えるだろう。……しかし俺達の中には、まことしやかにささやかれている噂がある。100年以上前から活動し続け、結果を残し続けている不老不死の伝説の凶手がいる、と。……ゼムリア大陸にあるカルバード共和国の建国を影から支えたとも言われ、その東方人街で魔人と呼ばれている神出鬼没な暗殺者。……そいつは、《
100年以上……それが最初の問に繋がるのか。暗殺者として活動するとして、100年以上も現役ということは今その人物がいくつなのかよく分からないし、一刻の建国を影から支えた存在……まさに伝説の魔人という存在なんだ。
……そして、この人の話には、いくつか馴染みのある地名が聞こえてきた。ゼムリア大陸、カルバード共和国……どちらも今日ここには来ていないアミサちゃんに関係のある場所だ。……だからといって彼女に関係あるとも思えないのだけど。同じように思ったのだろう、隣でカルマもなにか考えるように眉間に皺を寄せて手を口元に持っていっている。
「彼は基本、ミラ……分かりやすく言うなら金で動く暗殺者だが、契約を結ぶまでがかなり厳しいと聞く。とにかく神出鬼没でな……コンタクトを取ることすらままならん。だが、そこのバカ弟子がなぜか知り合いらしくてな……気が向けばお前達の鍛錬に協力してもいいと前向きな返事を貰っているらしい」
「でも電話に出ないし、メールも返信ないわよ?」
「あぁ、イリーナ名義ではなく、仕事として俺から改めて依頼する旨を先程スマホを借りた際に追記させてもらった。だから連絡は俺の方に来ている」
「私のツテなのに何でよッ!」
「……そろそろか」
ロヴロさんが事実確認をするようにビッチ先生の方を向いて話してから、スマホを見ていた烏間先生がそう言った瞬間だった。
────僕達の正面……先生達の背後あたりの空間が、ぐにゃりと
「「「!!!」」」
「な、何よあんた達、いきなり変な顔して?」
「来たか……さて、どこから……」
「先生たち、後ろです……!」
「!」
僕達が突然のことに驚いて何もできないでいると……歪んだ空間から1人の人間が出てきた。全身真っ黒な黒装束に身を包み、顔も口元しか見えない仮面に覆われた、見たこともない人物が。
「……初めまして、椚ヶ丘中学校3年E組の諸君……そして、同胞の2人、か。……お初にお目にかかる──私は《
++++++++++++++++++++
カルマside
アミサが自分の不注意でとはいえ、高熱出して訓練に来られなくなって……最初はちょうどいいし看病を理由にサボってやろうと思ってたんだけど、本人から先手を打つように自分の代わりに出席するように頼まれてしまって。……彼女の体調を心配してるのも本トなんだけど、結局訓練に参加していた。
射撃訓練が始まってから、普段の訓練からそう簡単にサボることはしないアミサが来てないって話題になって、俺が理由を何も考えずに話したら……あらぬ誤解を受けそうになった……焦った。俺の説明不足で、俺がかなり変質者みたいに見られるところだった……水着着ててもそこに至るまでの経緯が既に色々とヤバかったけど、それを言ったらコイツらに何言われるかわかんないから黙っておくことにする。あれ、言ったかもしれない……
訓練はといえば……普段のやつも十分厳しいくらいに技術や力をつけられるとは思うけど、今回はプロの殺る側である殺し屋目線のアドバイスがあることで、烏間先生という守る側の教えるテクニックからは盗めない技術やヒントがロヴロさんの言葉の端々にたくさん散りばめられていたように感じた。
だから俺にしては熱心に指導を受けてたつもりだったんだけど……ちょっと気になっていることがある。
ビッチ先生が電話をかけてキレた後くらいに、ロヴロさんが烏間先生に代わって指揮を執り始めた時くらいから、その烏間先生が、ずっとスマホを見ている事だ。案外あれだけ俺等を見てない今だったら、簡単に転ばせられるんじゃねーの?と思って、自分の射撃の順番を終えてそちらへ向かってみた、ら。
「…………なんだよ、その何か心配してる顔。不意打ちしかけらんねーじゃん」
そこで目にしたのは、どこか心配そうにスマホの画面を見つめ、一心に誰かと連絡を取っている様子の烏間先生だったから、正直面食らった。でも、ここまで来ておいてこの好奇心を殺すことも出来なさそうだったから、聞いてみることにする。
「烏間先生、なにやってんの〜?俺等が訓練してる最中にさ」
「!……赤羽君か。なんでもない、協力者がこの後来る予定なんだが少し遅れていてな……、ん?……なるほど」
「ふーん……」
誤魔化されたような、本当のことを話しているような、はっきり分からないけど俺がつっついて詮索できない程度には程々の情報をしっかり開示してきた……聞けないじゃん。
どうやら返事が来たらしく、再びスマホを見始めてしまった烏間先生はきっともう答えてくれないだろうから、銃を頭の後ろに乗せてのんびりと周りを見てみれば……射撃訓練をしているクラスメイトの後ろでロヴロさんに話しかけている渚君が見える。あいつもなにか聞きたいことがあったんだろう……とか考えているとロヴロさんがこちらを向いて目が合った気がした。
「Mr.カラスマ……連絡は取れたか?」
「ああ、なんとかな……もう到着するらしい」
「ふむ……では、全員集めよう」
……すぐにその視線は外れてしまったから何の意図があったのかよく分からないけど……とにかく、俺等は一度全ての手を止めて集められることになった。
そこで聞かされたのは、1人の伝説とも呼ばれる暗殺者の話……国の建国に関わってたり、100年以上生きる不老不死の暗殺者って、規模がでかすぎて想像すんのも面倒くさい。
でも、ロヴロさんの話の中で気になるものは出てきた。……ゼムリア大陸、カルバード共和国……どちらも、アミサの故郷であり関係している地名だ。まあ、これはさすがに偶然の一致だろうし彼女には関係の無いことなんだろうけど……でも出身地なんだから魔人の噂程度なら彼女も知ってるのかもね。同じことを考えたんだろう……俺の隣で渚君が難しい顔しちゃってる。
ちょうど、ロヴロさんがその暗殺者……銀について簡単な説明を終えた時だっただろうか……なぜ急にその話を全員にするのかが気にかかって、不審に思われない程度に周りを見回していた。
────その時だった。先生達の背後の空間がぐにゃりと
現れたのは全身を黒で包み込み、唯一見えているのは口元だけという仮面で顔を隠した1人の小柄な人物だった。
「……初めまして、椚ヶ丘中学校3年E組の諸君……そして、同胞の2人、か。……お初にお目にかかる──私は《
…………早速、ロヴロさんが話したばかりの伝説の魔人のがお出ましか……!先生達が彼って言ってることからあの人は小柄とはいえ男性だろうし、声は渚君のように少し低めで落ち着いたものだ。身長はそこまで高くはなくて、殺し屋って立場のくせに殺気が、感じられない……って、あれ、今、烏間先生が依頼してきたって言わなかったか、こいつ……?
「俺がそうだ。貴方が《
「そうだ。敬称はいらない……今この場で私とお前は雇い雇われる立場……構わず《
「……貴方からの目線でアドバイスなどがあれば、お願いしたい。生徒達は約1週間後に最大の暗殺計画を控えている……出来る限り自信をつけてから実行したいからな」
「……いいだろう。その暗殺についてまとめた物はあるのか?」
……なるほど、ビッチ先生経由で烏間先生がわざわざ雇ったってワケね。目の前で交わされる言葉少ない会話と、現れた《銀》に渡されるいくつかの資料……その内の一つは、さっきロヴロさんが合格点を出した南の島での暗殺計画も含まれている。
「…………」
「……どうだ?」
「この一番上の精神攻撃というのは、なにか揺さぶりをかけるということか?」
「そうらしい……なんでも教師あるまじき行為を生徒の目の前に晒したことが何度もあるそうだ」
「フッ、弱点を暗殺者に対していくつも晒しているわけか……嘆かわしいな」
……殺せんせー、アンタのその弱点の多さというか迂闊さというか……いないところで初対面の奴にまでバカにされてるよ?かばう気なんてさらさらないから黙って見てるけどさ……というか、クラス全員そりゃそうだろって目線で見てるから、ほっといていいでしょ。
パラパラと計画書を最初から見ると1つ頷いて、彼は烏間先生へ計画書を返却する……俺等の訓練風景を見てないわけだけど、こいつはどんな評価を出すつもりだ……?
「……最初の8発の銃を撃つのは中村莉桜、磯貝悠馬、奥田愛美、寺坂竜馬、村松拓也、狭間綺羅々、吉田大成、真尾有美紗で違いないな?今名前を挙げた者は出来る限りの至近距離を取れ……条件を見る限り、外しさえしなければ銃弾を撃ち終わるまで奴は逃げない……外してしまえば奴に安堵という休息の時間を与えることになる。いっそ触手を手に持って撃ってもいいくらいだ」
サラサラと紡ぎ出されたものは、計画の最初の段階……殺せんせーの触手は逃げない、それが生徒の前で決めた約束だから守るだろうけど、万が一にも当てられない可能性は確かに考えてもいなかった。
触手の破壊権を持つ8人は必ず破壊できるから撃ち直すことは可能、でも秒刻みの作戦では命取りになるかもしれないということを失念していた。
……ていうかこの人、なんで俺等の名前と容姿把握してんの?名前を呼びながらそっちの方向見てるよね、明らかに。
「……最後の速水凛香、千葉龍之介が要ということか。そいつらは仕上がっているか?……実際に同じ条件、同等の環境で射撃はしたか?」
「いや、陸上でのみだ……一応バランス感覚を養う特訓はしている。奴の目につく場所で練習するわけにもいかないから、2人以外にもこの場面でさく人員はぶっつけ本番だな」
「……、……そうか。……普通の中学生に下見をさせるわけにもいかないか。……この計画では理論上は合格点でも構わないが、……今のままではほぼ失敗するだろうな」
「「「なっ……!!!」」」
「……さすがに言い過ぎじゃないか?」
「いや、悪いが彼の言い分は正しい。なぜなら彼等はどう足掻いても学生だからな」
「お前たちはプロの暗殺者ではない、相手を殺す重みとプレッシャーを知らない、暗殺のために訓練を受けただけの、ただの子どもでしかないからな。本番の空気というものを知らないだろう?」
「「「!!!」」」
ロヴロさんが合格点を出した作戦、それでも見る人が変われば基準も変わる……《銀》にとっては納得のいかない部分があるんだろうね。バッサリと失敗すると断言されて、こんな直前に士気を下げることを言われた俺等に嫌悪感が広がるが、理由を聞けばそれも霧散した。
……当たり前のように命と向き合う、裏から暗躍するプロからしたら、まだたったの4ヶ月だけ身体運びや武器の扱いを学んだ俺等なんて、ただの子どもに決まってる。
悔しい思いはあれど、反論することもできない……無言になった俺等を見ながら少しの間考えるように黙っていた彼だけど、顔をあげると、確率を上げるためにも練習すべきだと言い出した。
「……烏間惟臣、この辺りに水辺はあるか?潜れる程の深さがあるとなおいい」
「あいつが作ったプールはどうだ?深さは……片岡さん」
「あ、はい、場所によっては飛び込んでも底につかない深さがある所もあります」
「……了解した。……私の得物は射撃ではない。だから生徒の射撃技術の優劣に関しては口出しすることはしない、その辺はロヴロ、お前が担え。……だが、的程度にはなってやろう」
『的になる』……その言葉を理解出来たのは、実際に彼の訓練を受けてみてからのことだった。俺達だけではきっとやらなかっただろうプールを使った訓練……それを提示し、自らも協力する。
悔しかったのは誰一人として、一発も、まともに弾を当てられなかったことだ……いや、当たったには当たったんだけど、あれを当たったと言ってもいいのか……という程度でしかない。
さすがは現役で伝説の暗殺者と呼ばれるだけある。《銀》による指導が終わった後、ロヴロさんが何やら渚君と個別で謎の技を練習していて……視線を戻した時には「時間だ」という一言を残して《銀》は来た時と同じように空間の歪みを作り出して消えるところだった。
俺達全員が予想もしていなかった方法での暗殺訓練、新たな殺し屋との出会い……それらを経て、南の島での暗殺ツアーが幕をあげることになる。
「烏間せんせー……」
「赤羽君?どうした」
「さっきの《銀》って奴さ……なんで俺等の名前全員分把握してんの?」
「あ、それ私も思ってました!」
「俺も……目、は隠れてるんですけど、こちらを見て名前を呼ばれたというか」
「……元々イリーナの知り合いという話は聞いていたな?彼は神出鬼没故に、契約時には契約相手のことをほぼ調べ尽くしていると言っても過言ではない。イリーナから打診があった時点でお前達の事は知られていたのだろう」
「なるほど……」
「ただいまー……」
「…………」
「……さすがにちゃんと寝てたよね?熱は、と……まだ高いか」
「……んん……、………?」
「あ、ごめん。起こした……寝てていーよ」
「……かるま、おかえりなさい……どーだった?いって、よかった……?」
「寝てていいっつってんのに……ただいま。まぁ、よかったよ……先生がロヴロさんとか、暗殺者に依頼してさ、普段とはまた違う訓練だった」
「……そっかぁ……いきたかったな……」
「早く治しなよ。そしたら話してあげるし、俺も聞いてみたいことあるからさ」
「……ん、……」
++++++++++++++++++++
今回は諸事情(風邪っぴき)からオリ主登場せず。
この話で《銀》は出しておきたかったので満足です!ゲームでも銀のセリフは色が変わっているので、真似してみようとしましたが、最初あまりにも浮いてしまったので少し色が違う程度で抑えました。読みにくくなければいいのですが……
《銀》の提示した訓練内容は一応伏せておきます。
別話でちゃんと書かれるのでお待ちください。
あ、書き忘れる寸前でしたが、渚はきちんとロヴロさんから伝授されてます。