男子だけじゃない、女子にも強い部分があるってわかるこのお話、かっこいいですよね!
オリ主、少しだけまた前進しました!
素手の暗殺者さんを退けて5階の展望回廊を通り抜け、6階へと向かう……この階層までが一般客が入れる最後のフロアだ。その最後のフロアには、律ちゃんから最初に情報を開示された時点で判明していた、ある問題がある。
「皆さん、この上がテラスです」
「BARフロア……問題の階ね」
「はい。ここからVIPフロアへ通じる階段は店の奥にあります。裏口は鍵がかかっているので室内から侵入して鍵を開けるしかありません」
今までは廊下を通ってその途中にある階段を上っていけばすんなり上の階へ上がってこれたのだけど、この階が一般客用の出入りできる場所とVIPフロアとの境目ってこともあって、ダンスフロア、BARフロアを通り抜けた先にある店の一番奥……そこの階段からしかいくことが出来ない。
一応私たちは今、店の外、その階段近くにある裏口側にいるんだけど……もちろん鍵があいてるわけもなくて、ここは電子ロックじゃないから律ちゃんに開けてもらうこともできず、最初の予定通り中から開けるしかないみたいだ。
「俺と烏間先生が行くと、この体勢だし目立っちまうな……最悪ドラッグとか酒で倒れた人を支えてるって名目で入り込むのもできないことはないけど」
「それなら支えますよってスタッフに言われたら終わりだしな……持ってねーよVIPの証明とか」
「まず持ってたらこんなめんどくさい事しなくていいしな」
「それでもやっぱ不自然だろ。……だからといって、この大人数でぞろぞろ通り抜けるだけってのも考えもんだよな……」
如何にあやしまれずに、如何にトラブルに巻き込まれずに何事もなく通り抜けられるかがここの攻略の鍵になるんだと思う。そう考えると人数が多すぎるのも、人を支える人がいるのも周りの目を引いてしまうし、きっといるだろう見張りに怪しまれたらそれはそれでおしまいだ。
「ねぇ、律……こういう所のセキュリティってさ……」
『そうですね、甘いところはあるかもしれません』
「16人中、女子は律を入れて8人……」
「半分かー、でも戦闘向きと交渉向きが揃ってるし、いい配分なんじゃない?」
「だね、……アミサ、おいで」
「?」
前を歩いていたカエデちゃんやひなたちゃん、凛香ちゃんたちがスマホの律ちゃんを挟んで何かを話し合っていて……振り向いた凛香ちゃんが、カルマの隣を歩いていた私に向かって小さく手招きした。何かと思いながら駆け寄ると、凛香ちゃんは私と手を繋いで、ボソリといった……ここからは、女子の時間って。
「……今少し話し合ったんだけど、先生や男子はここで隠れてて。私達が店に潜入して中から裏口を開けるから……こういうところは女子だけの方が怪しまれないでしょ?」
「それに戦闘向きとしては私、速水さん、岡野さん、アミサ……交渉、考察役としては矢田さん、茅野さん、不破さん、律がいる。このメンツだけでもある程度カバーし切れるとは思う」
「ふむ、確かに。入口のイリーナ先生を見た限り、そして場所柄……若い女性だけの方がチェックは甘いでしょう」
「いや……女子だけでは危険だ……いざという時の男手も……」
「といってもねぇ……前原君みたいに女子の扱いに慣れてる人ならともかく、この人数の女子の中に入って、ハーレム状態であのフロアを歩ける猛者なんているの?」
「……俺、前原とは幼馴染だけど、あそこまで振り切るのって相当厳しいぞ。というかやれても精神的に来るものがある……」
意外と潜入メンバーの女の子って、キレイに得意分野分かれてたんだなって……メグちゃんが名前を上げてるのを聞いて改めて思った。殺せんせーはそれも踏まえて女の子の案をすぐに採用しようとしてくれていたけど、烏間先生は危険だと渋っているし、メグちゃんの言い分も最もだ。
律ちゃんを含めて女の子が8人集まっている中に、身長も違う男の子が1人だけ……なんていうのは、変に悪目立ちしてしまいそう……それこそメグちゃんの言う通り、陽斗くんみたいに女性の扱いというか、接し方に慣れてる人なら違和感なく溶け込めると思うけど。その陽斗くんをよく知る磯貝くんも、烏間先生を支えながらだいぶ遠慮したそうだ。
それでも誰か……と男性陣をぐるっと見るメグちゃんの視線から男性陣が次々と目をそらしていく中、カルマだけが飄々とした笑顔で手を挙げた。
「あ、俺は気にしないよ?というか目の届かないとこに行かせたくないから、ついて行きたい」
「カルマはアミサしか見ないだろうから却下」
「うわ、即答じゃん」
「え、なんで私……」
「え、じゃないのよアミサ。男手も力もあるけど1人だけ守られたんじゃたまったもんじゃないもの」
「1人じゃないよ、みんなのことちゃんと見て……」
「今本人がついて行きたい理由で『目の届かないところに行かせたくない』って言った時点で、気にしてんのが1人ってハッキリしてんのよ」
「えぇ……そんなことないと思う、……思いたいんだけど、なんでみんな目をそらすの……」
カルマは女の子みんなのことを気にしてくれてるのに、なぜか凛香ちゃんがバッサリと断った。その理由に私の名前が出たのが不思議だったのだけど、他の女の子たちはみんな頷いていて、男の子は男の子で「あー……」みたいな顔してて……え、みんなは意味わかったの?
だってさっきの素手の暗殺者さんの時に、しっかり守ってくれたんだから今回だって……と思ったんだけど、みんなに目をそらされたらさすがに自信なくなってくるんだけど……?
「……だったらさ?」
カルマ自身も断られることは想定していたのかそこまで粘らずあっさり引いて、代わりにすぐ隣に立っていた渚くんの両肩を持って前に押し出すとにっこり笑った。
女の子と男の子、みんなの視線が渚くんに集まっていて、私と渚くんはどういうことかって一緒に首を傾げ……先に渚くんが気づいたのか微妙な表情になった。
「なるほど、渚なら違和感無いわね……」
「……プールサイドに1着脱ぎ捨ててあるのを見つけた……渚ならたぶん着れるでしょ、調達してくる」
「化粧ポーチなら私持ってるよ」
「あ、ついでにリボンつけようよ、ちょっとでもかわいくしよ!」
「そうだ、アミサとナギサで名前の響きそっくりだし、ポジション的には姉妹でいこう。で、基本的に2人をセットにしとけばカルマも安心でしょ?」
「うん、よろしく〜」
「……え……まさか……」
「……渚くんが、女の子になってついてくるってこと……?」
「その言い方なんか誤解を招くよ!?」
「え、渚君、とる?」
「とらないよ!!?」
……みんなの言い分で納得した。というわけで、一時的に渚くんは渚ちゃんとなって、女の子についてくることになったみたいです。
◆
屋外プールはまだどこにでもあるって言えばある施設だけど、大音量で絶え間なく音楽が流れているダンスフロア、年齢制限とか世間では違法とされても、このホテルの中では全部合法となるお酒や
お店の外に位置する裏口で男子たちには待っていてもらって、私たちは警備の警戒を問題なくかいくぐり、無事にフロア内へ潜入することができた。室内に入ってすぐ、私は大音量に左耳を抑えて右手を強く握りしめる。
「……うー……音、……人の声も多すぎるし、音楽といろいろ混ざってぐちゃぐちゃしてて、あんまり好きになれない……」
「アミサ、間違っても聞こうとしちゃダメよ」
「……わかって、る……聞かない……」
「まー、鍵開けるまでの我慢だからさ。そ・れ・よ・り……ホラ、渚ちゃん。前に出てしっかり守らなくっちゃ」
「無理……前に立つとか絶対無理!……うぅ……どうして、僕が……」
「諦めな」
「ほら!」
……女装してるはずなのに違和感がなさすぎて、男の子なのに女の子メンバーに放り込まれた……はずの渚くんは、しっかり渚ちゃんとしてこの空間に溶け込んでいた。本人は顔を真っ赤にして小さくなってるけど、多分突貫で着替えた女の子の服が似合ってしまったことに落ち込んでるんだと思う……明らかな違和感さえあれば、これは無理だって避けれたことだろうから。
でも正直私はカルマと離れてしまったこの状況で、渚くんがいてくれて安心できるから……このフロアに入ってきてからずっと渚くんと手を繋がせてもらっていたりする。知らない人がいっぱいで、嫌な目で人を見る人たちがいて……ひさしぶりに私の苦手なものがたくさん集まっている場所、この場所で1人になるのは私こそ絶対に無理だ。
「それに顔立ちはともかく、いい感じにアミサちゃんとそっくりなんだから……姉妹ってことにしちゃえばいいじゃない。ウブな姉妹と同級生の大人な体験……イメージしやすいし、いいシチュエーションでしょこれ!」
「不破さん、それって名前とか身長とか見て言ってるの……?確かにカルマ君にも頼まれたけどさ……」
「人畜無害そうな雰囲気も、たまにヤバい本気だすとこもそっくりよ」
「私と一緒でもいいけどさ、逆に目立ってターゲットにされそうで……」
「速水さんまで……茅野ももうちょっと粘っても、」
「渚おねーちゃん……?」
「……あー……うん、もうそれでいいや。でもおねーちゃん呼びはここでだけにしてね、アミサちゃん……」
渚くんは水色の長い髪を高い位置でツインテールにしていて、私は夜色の髪を高い位置でツーサイドアップにしていること。
渚くんの服装は黒の肩出しで大きなリボンのついたトップスに赤いチェックのスカートに黒のニーハイソックスを合わせていて、私はヘソ出しとまではいかないけど黒のインナーが見える短めで白とオレンジのマーブル柄の肩出しトップスに水色の短パンに黒のニーハイソックスをはいていること。
……とにかく、今の私と渚くんは見た目がいろいろ似ているのだ、優月ちゃんはその事を言ったんじゃないかなって。
あと、私の身長は145cmで渚くんは159cm……ちょうどリーシャお姉ちゃんと同じ身長差ってこともあって、私は渚くんをお姉ちゃんみたいに見ることそのものには違和感ないんだよね、実は。
そのままみんなと一緒に店内を歩きながら、怪しまれない程度に周りを見て、階段を探している最中だった。
「ね、どっから来たの君ら?」
「っ!?」
急に声をかけられたと同時に背後から肩に手を置かれ、私は反射的に乗せられた手から逃げて渚くんの後ろに隠れてしまった。驚いたのと背後から触られるっていういきなりの怖さで逃げてしまったけど、もしかしたら悪い対応で目をつけられてたり、さすがに失礼だったりしたかと思って、そっと顔だけのぞかせてみる。
「ははっ、悪ぃ悪ぃ、脅かしちまった。なぁ、彼女ら……そっちで俺と飲まね?金あるからぁ、なんでもおごってやンよ」
声をかけてきたのは帽子やTシャツでたくさんNew Yorkを強調してる男の子だった。渚くんの肩にも手を置いてることから、私たち2人を同時に呼んでいたみたい……そういえば、最初から言ってたね、「君ら」「彼女ら」って……
私の態度をそこまできにしてなさそうな彼に、どう対応すればいいのか分からなくて、渚くんや他の女子の方を行ったり来たり見ていたんだけど、慌ててる渚くんはともかく……女の子たち側、ものすごく嫌そうな邪魔そうな冷ややかな目で男の子のことを見てた。た、確かに作戦の障害になりそうな不測の事態ではあるけど……そこまでの顔する……?
「……はい、渚。相手してきて」
「え、ええっ!?」
そしてサラッとメグちゃんが渚くんを売った。男の子なのにナンパされたことからなのか、男手とは全く関係の無いところで使われそうになっているからなのか……渋っている渚くんを少し隅に連れて行って説得し始めたメグちゃん。
ついていくにも行けなくて手を離してしまったし、隠れる相手がいなくなっちゃったしで、どうしようかと思ってキョロキョロしていたら……いつの間にか帽子の男の子は私の近くに来ていた。
「へぇ、あの子は渚ちゃんっていうのかぁ……君は渚ちゃんの妹?名前は?」
「!……あ、えと、その……私、アミサっていうの。おにーちゃん、は?」
「そっか、アミサちゃんって言うのか〜、俺ユウジな!」
「……ゆーじくん?」
「そーそー、よろしくな!……お、渚ちゃんも来たな」
「あの……遅くなってごめんね」
「へーきへーき、自己紹介しあっただけだって。なー、アミサちゃんっ!」
「……うん。渚おねーちゃん、あのね、おにーちゃんは、ゆーじくんなの」
「はは……よ、よろしく……(ホント、怖がりなんだか度胸あるんだか……)」
私は妹、渚くんの妹、……そうか、もともと私は妹なんだからいつも通りでいいんだろう……とにかく不自然にならない程度に思い込もうと必死に考えながら自己紹介してみたら、思ったよりも警戒されなかったし、むしろノリが軽い。
あとこの人、なんとなくだけど……そこまで裏表もなくて演じてない人って感じがした。なんというか、必死さがあるというか……会ったばかりだし、そんな評価をする資格なんて私にはないんだけど。
ゆーじくんの言葉に振り返ってみれば、メグちゃんと話し終わったみたいで軽く小走りでこちらに来ている渚くんが見えた。自然と私の隣に並んで、離れていた私の手と繋ぎ直してくれて……一瞬でも離れたのが不安だったの、気づいてくれたのかな。
そこからは基本的に渚くんがゆーじくんとの会話を引き受けてくれて、私は渚くんのよこから顔を出すように混ざることに集中することにした。
◆
「ほら、飲めよ。奢りだ、パーっとやろうぜ!」
「え、いやその……ぼ、……私たちは飲めないんで」
BARラウンジに連れてこられて、ゆーじくんは何のためらいもなくお酒を注文して戻ってきた。勧められたけど、さすがに飲めない……未成年だし、今は他のみんなが目的を果たすまで、もしくは糸口をつかめるまでの時間稼ぎをしなくちゃいけない。
それに……このお酒の色、……さすがにただのお酒だとは思うんだけど、頭の中で警鐘を鳴らしているようで……どうしても直視したくない。無言で反応できない私をよそに、ゆーじくんは渚くんが断るのを聞いて「そうかぁ?」と言いつつ、持ってきたお酒を気にせずに飲んでいく。
「その、ユウジくん……はさ、親と来てるの?」
「親ァ?うちの親にそんな暇あるわけねー。ここだけの話な、俺の親父、テレビで有名なタレントなんだ……2人も絶対知ってるぜ?」
……そっか、烏間先生が言ってたような芸能人や金持ちの子どもって……ゆーじくんみたいな人たちのことだ。得意げに親の自慢話をしてくれてるけど、それは親の話であって彼の話じゃない……彼が主役になる話題が全然出てこない。
そう思いながら聞いていたら、彼はハッと何かに気づいたように話すのをやめて顔をそらした。そのままイライラした手つきでポケットからなにか取り出して口にくわえて……
「それ、タバコじゃないよね?もっと……」
「ん?ああ、ま、法律じゃぁダメなやつだ。最近はじめてよー、俺等の歳でこういうの知ってるやつがかっこいいんだぜ?」
そういいながら火をつけようとした
「……だめ、ゆーじくん、壊れちゃう……」
「学校の先生が言ってたよ。『吸ってかっこよくなるかどうかは知らないが、確実に生きづらくなるだろう』って」
お酒はまだしもドラッグは、確実に人を壊してしまう……私はそんな人を実際に目の前で見てきているし、知っているから。私の知るそれは、様々な思惑の裏側で暗躍していた薬で……たくさんの人が飲み込まれて一時の幸運を掴む人もいたけど、耐えられずに消えてしまった人も、人に戻れなくなった人もいることを知っている。そして、それを利用して大きな事件が起きていたことも、その事件の当事者だからこそ、知っている。
ゆーじくんの持つこれは、私の知るドラッグ、≪
私たちは静かに諭す言葉を並べていたけど、ゆーじくんは気に入らないみたいで、舌打ちとともに思い切り机に拳を叩きつけ、私はビックリして一歩下がってしまった。
「生きづれーんだよ、男はもともとよ!!男はな、無理にでもカッコつけなきゃいけねーんだよ。俺みたく?いつも親と比較されてりゃなおさらな。……お前ら女はいいよなー……最終的にはカッコいい男選ぶだけでいいんだからよ」
「……ゆーじくん、私と似てるね」
「は……?」
多分、ここまでに話してきた中でこの言葉こそが彼の本音……自慢できるお父さんの影で、自分を見失ってしまいそうな彼の……お父さんの話以外で、しっかり自分を出した発言だと思う。
そしてその言葉を聞いて最初に感じたのが、どこか私と似ているところがあるってことだった。
「私にもね、有名なアーティストのお姉ちゃんがいるの。キレイで強くてカッコよくて……誰よりも優しいから、私、大好き。でも、私たちのことをよく知ってる人ならいいけど、何も知らない周りの人には私のことを見てもらえないの。『さすがはあいつの妹だ』『いいな、あの人の妹で』って……頑張って自分を見てもらいたくても、結局お姉ちゃんの影はついてくる」
「…………」
「でもね、今はあんまり気にならないの……私自身を見てくれる人ができたから。何があっても一緒にいるって言ってくれる人ができたから。私の近くで私自身を見てくれて、褒めて、叱ってくれる……誰かを助けることを知ってる、なんでも器用なのにちょっと不器用なとこもある……そんな人」
リーシャお姉ちゃんと私のことを知っている人は、いい。でも、知らない人にとっての私は、有名な姉をもつ妹でしかない……私なりにすごいことができても『さすがリーシャの妹だね』という言葉はどうしてもついてくる。尊敬するお姉ちゃんが褒められるのは嬉しいけど、私の努力も、結果も見てほしい……だから、そういう目を向けられるのが嫌で、これまでずっと隠し続けてきた。
でも、それを打ち明けても一緒にいるって言ってくれる人ができた。まだまだ秘密をいっぱい隠しているのに、何も聞かないで話すまで待つって言ってくれた。お姉ちゃんじゃなくて私を見てくれて、助けてくれて、心配してくれて、でも守るだけじゃなくて手伝わせてくれて、私を信じて任せてくれる……たくさんのはじめてをくれた、大事な人が。
「ゆーじくんにも、そんな人がきっといると思うの。それに……お父さんのこととか無しに、まっすぐ相手を見ることができる人の方が、私は好き、かな……」
「……アミサちゃん……。……、ん?……って、あれ、アミサちゃんって渚ちゃんの妹じゃなかったの?」
「渚おねーちゃんのこと……?私、渚おねーちゃんの『妹分』だから、おねーちゃんって呼んでるの。あってるよね?」
「…………えーと、どゆこと?」
「ごめん、この子こういう子なんだ……否定するにも間違ったことは言ってないから、止めづらくてそのままにしてる……」
「……名前とか色々そっくりなのは?」
「みんなそれ言うんだから……本トの偶然;」
「……うそぉ;」
「渚!アミサちゃん!」
そんな話をしていれば、BARフロアの入口の近くでカエデちゃんが手招きしているのが見える。私たちを呼んだ……ということは、鍵を開けれたか、男手がついに必要になったか、かな。
1度渚くんと視線を合わせて、ここを離れるタイミング見計らう。といっても時間が無いし、挨拶くらいしかできないけど……
「あ、じゃ、ぼ……私行くね」
「……またね、ゆーじくん」
「お、おい、もうかよ!」
彼が引き止める声が聞こえたけど、私たちの優先順位的には、みんなで問題なくこのフロアを抜けることだから……申し訳ないけどゆーじくんには手を振って背を向けて走る。
「ごめんねー。結局私と一緒にいなくてもアミサちゃんナンパされちゃった……」
「もう不可抗力だよ……」
「お、3人ともおかえり」
明らかに階段とエレベーターがあって、ここまでのフロアと見た目が違う場所の前にいる他の女子メンバーと合流してみると、目的の場所の前に見張りがいて、なにか騒ぎを起こすなりしておびき出し、そのあいだに通ってしまいたい……と、言うことでそろそろ本格的に男手がいるかもしれないからと私たちは呼び戻されたみたい。
「……あの辺の植木、燃やす?」
「いやいやいやいやいや……何言っちゃってんの?」
「……できるだろうけどやらなくていいから、それはさすがにトラブルの元だからやめよ!?」
「それにここまで暗い室内だとアーツは目立つよ……他の方法なら考えてあるから」
「うぅ、なんでもいいから早く着替えたいよ……」
「ちょ、おい待ってって彼女たち!俺の十八番のダンス見せてやるよ!ほら、ほら!」
とりあえず騒ぎを起こすなら手っ取り早くボヤ騒ぎかな、と植木に歩いていこうとしたら、みんなに全力で止められた……。
じゃあどうするのって思ったら、どうやら作戦は決まっていたらしくて、いざメグちゃんが話そうとした時……さっきまで私たちと一緒にいたゆーじくんが追いかけてきて、目の前で踊り出した。……えっと……さらっと簡単な挨拶だけで別れちゃったから名残惜しかったのかもしれないけど、タイミング的になんていうか、その……
「「「(邪魔……)」」」
「っ!……ゆーじくん、横……!」
「へ?…………へ!?」
注意も間に合わず、ガッシャン、と音を立ててゆーじくんがダンス(?)で振り回してた腕が、近くを通っていたらしいヤクザみたいな人の飲み物に直撃……中身がその人の服にかかってしまった。ヤクザさんは必要以上にキレて、服の弁償とか殴るとかでゆーじくんにあたりはじめて彼はかなりビビってる。
だけど、ある意味これ、チャンスじゃないかな?同じことを桃花ちゃんも思ったみたいで、ひなたちゃんに何やら耳打ちしてる。ひとつ頷いた彼女は、騒ぎを起こしてる2人へと近づき……
「すみません、ヤクザさん」
「あァ?……ガッ!?」
……蹴った。それはもう、クリーンヒットというやつだと思う。顔を蹴られ、倒れ込んだヤクザさんは当分起きそうにない……胸ぐらを掴まれていたから、勢いで一緒に座り込んでしまったゆーじくんも腰を抜かしてしまったようで……その場で呆然としてる。
その間にヤクザさんが
桃花ちゃんがゆーじくんに今のことを秘密にするように伝えて、警備の人がいない間に男の子たちが待っている裏口へとみんなは走っていく。この場に残っているのは私と渚くんだけだ。
「女子の方があっさりカッコいい事しちゃっても、それでもメゲずにカッコつけなくちゃいけないから……辛いよね、男子は。今度あったらまたカッコつけてよ。できればダンス以外がいいな」
「お話できて楽しかったよ。……おとーさんのお話をしなくてもまっすぐ向き合えて、ゆーじくんらしさが出せたら、それが1番カッコいいと思う……麻薬とかに頼らない、ホントのゆーじくんでいられるといいね」
「……………渚ちゃん、……アミサちゃん……」
最後にもう一度ゆーじくんを振り返って笑顔で手を振ってから、階段へと駆け出す。……女の子と渚くんだけの任務は全部達成、これでこのフロアも突破だ。
「危険な場所へ潜入させてしまいましたね。危ない目に遭いませんでしたか?」
「んーん、ちっとも!」
待っていた男性陣と合流したところで、安心したように問いかける殺せんせーに対して、私たちは先生や男子に頼らなくても、自分たちで潜入をこなしたという満足感でいっぱいの返事を返した。
私と渚くんの方は言わずもがなゆーじくんに、他の女の子たちの方もナンパされたらしいけど、桃花ちゃんの機転で何も起こらずに撃退できたらしい……さすがイリーナ先生の交渉術を学んでるだけある。そして待っている間に烏間先生の体の自由がだいぶきくようになったらしくて、少しずつ体を動かし始めてる……こっちもさすがだ……
「で?変な虫、近寄らなかったよね?」
「え、いや……まあ……僕と一緒にナンパにあったくらい……?」
「はァ?渚君は別に連れてかれてもいいけど、そーいうのからこそ守ってよね、『渚おねーちゃん』?」
「理不尽……ッ!ていうか、僕も一緒にって言ったよね!?」
「渚くんは1人で何とかなるかもだけど、あの子は下手に度胸あるせいで、吹っ切れると何やらかすかわかんないから別」
「……実際そうだったから否定できない……!」
ずっと早く着替えたいって言い続けてきた渚くんは、ようやく着替えられて一息ついてたところで、カルマが詰め寄ってる……笑顔で壁に追い詰めてるし、詰め寄ってるって表現で間違いないよね。聞いてる限り、ゆーじくんとおしゃべりしてたこと、かな。
仲よくおしゃべりしてるところ悪いけど、ゆーじくんに自慢してたら早く会いたくなって、近くにいたくてウズウズしていた私は、静かに2人に近寄り、そのままカルマの腰に抱きつく。
「っ!……なに?」
「あの場所って虫、いたの……?お酒扱ってるのにいいのかな……」
「うん、虫は虫でもそっちじゃないから……って、どーしたの」
「……確認。……えへへ、自慢してたら、私をちゃんと見てくれる人に早く会いたくなったの……ふふ、カルマがいて、よかったなぁって」
「……よく分かんないんだけど」
ゆーじくんに自信満々で話したら、なんとなくホントにそばにいるのか実感したくなったというか……このフロアをこえるために、ほんの少しの間離れただけ、それでも私がいつも安心感を覚える背中は、やっぱり大きいんだなって実感した。
私や渚くんに何があったのか聞きたそうにしてるけど、これは秘密にしておこうかな……私がカルマに対してどう思ってるのか、っていう本音。漠然としたものしかうかばなかったけど、ああやって口に出してみたら、私が普段、彼に対してどう思っているのかがなんとなく分かった気がする。
……これにどう名前をつけたらいいかわからないけど……彼のことが大切な存在だってことは、ちゃんとわかってるから。今はまだ、抱きついていれば自然と降ってくる手のひらの温かさが感じられる位置にいることを大事しておこうと思う。
※説得の裏側
「片岡さん、なんで僕が……」
「……カルマに頼まれてるんじゃないの?」
「う」
「それにほら、そういってる間にも打ち解けちゃってる……あの子、裏があまりない人にはサラッと懐くじゃない?本能的に察してるんでしょ、そーいうの」
「……わかったよ、僕が見てる」
「さっすが、よろしくね」
(合流後、ナンパのことはあっさりバレる)
「さて、階段を上ったとはいえ……まだ油断はできん。そろそろ、移動するぞ……」
「……だって、カルマ、行こ?」
「あー……うん、もうちょっと待って」
「?……カルマ、頭に手があると、顔あげれない……」
「上げなくていいから」
「???」
「カルマ君、真っ赤……」
「あの子、不意打ちも同然に抱きついてたもんね……渚、何か知ってる?」
「なんか、カルマ君に早く会いたくなったんだって。さっきのナンパの時に、カルマ君に会えたから自分でいられるんだって自慢しててさ」
「ナンパされたのよね?なんでカルマが出てくるのよ」
「なんか、話の流れで……」
「……早く気づくといいね」
「ねぇー、聞こえてるから。お前らうっさいよ」
「カルマー……まだ……?」
++++++++++++++++++++
女子の時間。
ちょっと第二部に関わる内容もチラホラ……このリゾート編、空の軌跡、零の軌跡、碧の軌跡とリンクさせやすいワードや世界観が多くて二次創作が捗ってます!
オリ主、ちょっと、自分の気持ちを確認しました。まだ名前をつけるほど理解はしてないですが、意味を持ってそばにいてほしい存在くらいには認識ができてきました。あとはきっかけかなぁ……