鷹岡戦後~帰還まで
ちょっと恋愛要素……らしき部分もあります
鷹岡さんに投げ捨てられた時には、2人に手を伸ばしたいのに自分の意思ではもう指一本動かせなかった。毒が私の体を蝕んで、何とか息苦しい呼吸をしながら意識を落とさないように保つので精一杯だった。
動けないせいで見ていること以外何もできない悔しさで、渚くんもカルマも2人が目の前で殺されてしまうんじゃないかって恐怖で、涙が止まらなくて……
そんな時に目に入った、見慣れた青い光……その導力光は、このヘリポートへ上がる前に私が彼に託した小さな機械からこぼれ出たもの。
もうEPの尽きた私ではアーツは使えない……持っていてもクオーツの恩恵を得るだけでしか無かったから。だけど、私以外で原理や仕組み、
当然確信は無かったし、私用に調整されたそれは彼の持ち物じゃないから不発に終わる可能性もかなり高かったけど、この土壇場で駆動するのに成功してくれた。期待に、応えてくれた。
「……アミーシャ、迎えに来たよ」
だから、適正のない導力器でアーツを成功させた結果、残った精神力を全部持ってかれて崩れ落ちそうな彼が、渚くんに支えられながら迎えに来てくれたのが、ひどく嬉しかった。
その時にはもう声を出す力もなかったけど、彼には伝わったみたいで強く抱きしめられて……そのカルマから感じるあたたかさをなくさなくて済んだ安心感で、すでに限界だった体からはほとんどの力が抜けた。
もう、いつ
「どいつもこいつも……俺の邪魔しやがってェ……!」
「……、動けそうにないや」
「ううん、大丈夫。1本持ってて……ここから先は僕の番だから」
「渚ァ!人質いなけりゃこっちのもんだ……。俺等の代わりだ!死なねぇ範囲で……ぶっ殺せ」
心残りの1つ、鷹岡さんはきっと渚くんが倒してくれる。根拠なんてなかったけど、カルマに任されて、寺坂くんに後押しされた彼なら、終わらせてくれるって確信があった。私の体がこれ以上冷えないようにって、上着をかぶせてくれた時の表情で……これならきっと、だいじょぶって。
あと1つ……、きっと発動したままのあの謎の杖……。導力光が起動したままなのに効果範囲から出ただけでカルマと渚くんが動けるようになったということは、あの時間停止現象は使用者が止める、もしくは壊れるまで継続されるんじゃなくて、発動している最中に効果範囲にいるかどうかで決まる。今も動いてるだろうそれは、使用者本人の鷹岡さんにしか止められないだろう。
「……、」
律ちゃんが把握してなかった、カルマに対してギリギリのEPを使って発動したはずのアーツ。だけど、私の中を巡る残ったEPは、確かに使ったはずなのに減らないまま存在していた。
……思えば私は、適性があるくせに幻属性のアーツは、ほとんど使ったことがなかった。敵の情報を解析するのも
……私のEP最大値が異様に低いのは……EPを消費しないで幻属性のアーツを操ることができるから……?もしかして、お姉ちゃんが使わないように何度も言ってきたのは……他の人にはありえないことを知られないようにするため……?
考えても分からないけど、その、もしかしてがあるのなら。これが、私が
「 ≪
カルマのアーツで吹き飛ばされた、あの杖は視界には入ってないけど……ずっと何とか破壊したくて対象指定にし続けていた。ズキンズキンと頭に響く嫌な痛みが鳴り止まない中、詠唱は音にはならなかったけど……確かに、視界に入らないところで発動し、バキッと割れる音が耳に入って……きっと、もう、だ、いじょ、……ぶ……
次に瞬きした時には、真っ暗な世界だった。……あれ?なにも見えない……渚くんはどうなったの?……今の今まで音も聞こえていたはずなのに、ただ、無音の世界が広がっていて……カルマの、ぬくもりも……あれ?……わたし、あたたかいなんて、かんじてたっけ……、…………、
──────プツン。
◆
カルマside
「ひっかかったよ!」
「よし、持ち上げるぞ……せーのっ!」
……あれからすぐ。千葉と岡野さん以外に屋上散開要員として出ていた磯貝と不破さんが見つけてきたロープやちょっとした屋上備品を、菅谷が繋ぎ合わせて即席の鉤爪ロープのようなものを作り、ヘリポートから爆破され、落とされたハシゴをかけ直すことができた。さすがに完全に固定されたものじゃないから、みんなおっかなびっくりではあったけど……烏間先生を含めた潜入班全員がヘリポートに上がって、やっと全員が集合した。
もう動けなさそうな寺坂を支えるためにヘリポートの入口付近に残った吉田と木村以外の大半のみんなは、元凶を倒してどこか放心状態で立っている渚君の所へ。治療薬の入ったスーツケースを抱えた烏間先生は、どこかに電話をかけながら倒れ伏した鷹岡の元へそれぞれ駆け寄った。
「アミーシャ、やっと終わったよ……」
「………………」
「……っ、」
冷えきって動かない、だけどまだ命の灯は消えていない腕の中の存在は、1時間近く誰にも心配をかけまいと不調を隠し続けていたんだ。そして、鷹岡の暴挙にも耐え続けて……その精神力には恐れ入るけど、さすがにもう意識は無い。
顔色も真っ青で、痙攣が続く体は、胸が動いてるから息をしてるのは分かるけど……プールの時みたいに、俺がどうこうできるものじゃない。そもそも俺自身も襲ってくる倦怠感と目眩に動けないんだけど。
「赤羽君、真尾さん、無事かッ!?」
「カルマ君!アミサちゃんはッ」
「……、……渚君……烏間先生……」
名前を呼ばれて顔を上げると、駆け寄ってきた渚君と烏間先生、そして心配そうにこちらへ近寄ってくるクラスメイト達。渚君は俺の顔を見て1度足を止めて、悲痛そうな表情に変わった。
「……なに」
「……カルマ君、酷い顔色だよ。アミサちゃんのこともだけど……今座ってるだけでもしんどいんでしょ」
「…………、そんなに?」
「うん、……支えるよ」
「赤羽君、よくあの状況で治療薬を届けてくれた。中身はおそらく本物だ、壊れていない……全て無事だ。……彼女の症状を診たい、そのまま上を向かせて支えてくれ」
「茅野さん、先生も近くに」
「う、うん!」
渚君がアミーシャを抱える俺ごと体を支えてくれるのに甘えて体重をかけさせてもらう。さっき歩く時に俺を支えた時は力もないし崩れ落ちそうだったくせに……それに、あんな敵を倒したくせに、いつも通りっていうのも……なんかムカつく。
烏間先生と茅野ちゃんに差し出された殺せんせーはアミーシャの顔色がすぐわかる位置に来て、俺と渚君が見守る中……烏間先生がバッグから取り出したペンライトで触診を始める。
「……既に瞳孔が開き始めている……植物性の神経毒か」
「鷹岡先生、治療薬の予備を3人分位手元に持ってたんだ。多分スーツケースの方を爆破した後に最後の希望、なんて言って僕が戦闘から逃げられなくするつもりだったんじゃないかって。……でも、他には……アミサちゃんの治療薬を持ってる様子がなくて……」
「鷹岡先生は、E組を、カルマ君の命を人質にとることでアミサさんの心を壊して人形のように扱おうとしていました。ですから、自身で治療薬を持っていると踏んでいたんですが……にゅう……」
「そんな……じゃあ、何もできないってわけ……?冗談でしょ、ねぇ!!」
「……っ、」
今までの無理無茶は自分から首を突っ込んでいったことだからまだしも、今回のことはこの子、全然悪くないじゃん。むしろ自分も被害にあいながらなんとか1番みんなに危害を加えられない方法を探してた、だけなのに。
つい、声を荒らげてしまった……アミーシャを診断して、鷹岡が薬を持ってなかったことを教えてくれただけの3人に、当たることじゃないのは分かってるけど、何かにこの思いはぶつけないと、耐えられそうになかった。
……完全に脱力して動かない、冷えた体を抱き直す……少しでも俺の体温が伝わって欲しくて、……少しでも、なにか反応を返して欲しくて。
「……とにかくここを脱出する。ヘリを呼んだから君等は待機だ……俺が毒使いの男を連れてくる」
そうだ、毒を盛った張本人なら……!鷹岡は俺等に盛ったっていう毒薬もオリジナルの人工的に作られたもので解毒薬もオリジナルの1つだけって言っていた。毒使いの殺し屋が自分で最初の麻酔ガスを特製って言ってたから……多分、あの毒使いの殺し屋が使っている毒は、どこかで手に入れたものじゃなくて全てあいつが作り出した人工的なもの。それなら、アミーシャに盛られた薬もきっと同じ、対処策があるはずだ。
毒使いの殺し屋はホテルに潜入してロビーを抜けたあとの1番最初の敵だったから、ここから1番遠くに転がってるけど……回復した烏間先生の足だったら、ヘリを待つ時間で丁度いいでしょ。
どうにかなるかもしんない……そう思って少し焦りが消えた時だった。俺等のいる屋上に扉が開く音が、聞こえないはずの声が響いたのは。
「ふん、テメー等に薬なんぞ必要無ぇ……ガキ共、このまま生きて帰れるとでも思ったか?」
そこには、ここに来るまでにみんなで協力して倒し、ガムテープでぐるぐる巻きにして放置してきたはずの殺し屋たち3人が立っていた。もちろん、たった今話題にしていた毒使いの殺し屋もいる。あれだけの拘束、どうやって解いたんだよ……しかもおじさんぬに関してはアミーシャが凍らせてたよね?……鼻と唇以外にも、上着から見える肌を真っ赤にしてるから、そのはずなんだけど。
とにかくまた油断できない状況になったのは間違いない。みんなが屋上で拾ったものや各々の武器を持ち、武器を持たないなら構えをとり、烏間先生は何も構えないながらも隙のない立ち方だ。
俺は吉田にスタンガンを投げ返し、自分の体でアミーシャの盾になる。……俺の守るべき最優先は彼女だし、なにより手持ちの武器はワサビとカラシくらいだし……そもそも立てないから、悪いけど今は非戦闘員だ。
「お前達の雇い主は既に倒した、もう闘う理由はないはずだ。俺は充分回復したし、生徒達も充分強い。これ以上互いに被害が出る事はやめにしないか?」
「ん、いーよ」
臨戦態勢をとる俺等を代表して、烏間先生が殺し屋たちに対して説得に入る。こちらの戦力としては渚君と寺坂、俺とアミーシャ以外は、まだまだ力が有り余ってるはずだから充分戦える……それに、こっちの最強の人外(仮)も復活した。これで拒否するなら……、……って、え?いーよ?
「ボスの敵討ちは俺等の契約にゃ含まれてねぇ。それに今言ったろ?そもそもお前等に薬なんざ必要無ぇって」
「お前等に盛ったのはこっち。食中毒菌を改良したものだ……あと3時間位は猛威を振るうが、その後急速に活性を失って無毒になる。アーツ使いのおチビちゃんの状態異常回復魔法が効かないのは当たり前さ……アーツで取り除ける
そう言いながら薬剤が入ってるんだろうアンプルを手に持つ毒使いの男……じゃあ、何?俺等E組の、今も苦しんでる奴らは……発症してない潜入組も含めて、治療薬は何も必要ないってこと……?
彼等が言うには、プロとして仕事を受けた以上
鷹岡の設定した交渉期限は1時間……だったらわざわざ殺すウイルスを使わなくても取引はできるし、俺等が命の危険を感じるには充分だろうからって。プロとしての評価が下がることか、カタギの子どもを大量に殺した実行犯になるか……それらを天秤にかけて、今後のリスクを考えたそうだ。
アミーシャのアーツが効かなかったのは、そのアーツが『状態異常を回復する』だけだから。状態異常は『毒・炎症・凍結』等の、体力には直結しないけどあると動くのに支障が出るもの……病気とはまた違うもの。
最初にホテルで使ったことで感染者の症状が軽くなったのは、発症後も悪化する要因として残っていた毒物を取り除いたから。既に発症していた寺坂を除いた潜入班がここまで元気なのも、病気として発症する前に体に残っていた毒物を取り除いたから……つまり、病気を治していたわけじゃないということ、……納得は、できる。
つまり、最後の突入前に使った状態回復魔法は……、いや、今はいいや。それより、今の説明の中にはアミーシャの神経毒についての説明が抜けていた。明らかにこの子だけは感染したみんなと症状が違うし、今も危険な状態なのに。
「……ねぇ、俺等のことはわかったけど……アミーシャの毒については?」
「悪いな、おチビちゃんに関してはお前等のとは契約が全くの別モノ、アーツ使いを絶望させるために確実に盛れって指示だったからな……すり替えてねぇマジもんの毒だ。……とある組織が開発していた特殊な神経毒……開発中だったそれをサンプルに俺が完成させたもので、そのまま昏睡状態が続けば最悪死に至る」
「なっ……!?」
「「「!!」」」
思わず、彼女を支える腕に力がこもる。……プロとして契約を履行することは当たり前だってわかってるけど……俺等は、普通の生徒は命の危険を感じることだけで済ませるために毒薬をすり替えたのに対して、アミーシャだけアーツを使えるからって理由で、マジで命の危険に晒すとか。
すり替えてもアーツの効かないちょうどいい毒がなかったのかもしれないし、アーティファクトもどきを持ち込んだ鷹岡がこの毒も一緒に持ち込んだんだとしたら、毒の症状を把握している鷹岡の目を盗んですり替えができなかったのかもしれない。……だとしても、普通にそう言い放った毒使いを殺してやろうかって、本気で睨んだ。
「そう殺気立つなって。俺等としてもおチビちゃんを殺すつもりはなかったし、ちゃんと解毒薬も準備してある……ほらよ」
「っ!?」
「わ、」
そう言いながら毒使いの殺し屋は、磯貝に大量の錠剤が入った薬瓶を、渚君には液体の入ったプラスチック製の試験管を投げ渡した。2人して突然のことに驚きつつもなんとかキャッチしたそれは……話の流れからして、多分。
「そっちの錠剤は栄養剤だ……患者に飲ませて寝かしてやんな。『倒れる前より元気になった』って感謝の手紙が届くほどだ」
「「「(アフターケアも万全だ!?)」」」
やっぱり俺等に盛った毒薬の対処策だった。まさか以前より元気になれる栄養剤を渡してくるとは……殺しとは真逆の薬を作ってるとはね……毒と薬は表裏一体ってことか。
「で、お嬢ちゃんの分はその液状薬……そいつは即効性の薬だから口から飲ませてやりゃーいいが……、……そうだな、抑えとけるもんもないし……赤髪の坊や、恋人か?」
「……違うよ。………………まだ」
「「「(ボソッと本音言ったなカルマ……)」」」
「……何?何か言いたそうだけど」
「いやー……うん、まぁね……」
「本人
「……言っとくけど、俺自身が好意を自覚してない頃から、ずっと一緒にいるために近くに居て俺の存在を教え続けたんだ。そのおかげで俺はこの子にとって信頼のできる、何も言わなくてもお互いの意思を分かりあって行動できる相性のいい人、って立ち位置を既に手に入れてるんだよ。後はアミーシャに俺を異性として意識させて、俺にオトすだけ。だから『まだ』で正しいでしょ」
「いや怖ッ!!」
「本人の意識がないからって……」
「……重いくらい好きなんだなぁとは自覚前から思ってたけど、思ってた以上にカルマ君の愛情が重かった……アミサちゃん、これから大変だね……」
「んー……まぁ、その様子を見る限り1番近しい存在ではあるんだろ。……知らん奴にやられるのは嫌だろうから、お前が押さえつけて飲ませることをおすすめしとくぜ」
「は……?」
気になったのは、アミーシャに対しての言葉。
……は?恋人かどうか聞かれたこと?何人かから呆れた顔で見てくる視線を感じるから一応弁解しとくけど、俺は欲しいと決めたからには絶対に手に入れるつもりだし。
それよりも……たかが薬を飲ませるためだけにこの子を押さえつけるようにオススメするって、なんで……
「……赤羽君、今こいつがいる間に服用させよう。知識のない俺達だけの時よりも、何かあった時に対処ができる」
「……うん。……渚君、お願い」
「う、うん……」
烏間先生のいうことも最もだから、これ以上悪化させて取り返しがつかなくなる前に薬を飲ませることにして、手が塞がっている俺の代わりに渚君に薬を飲ませるように頼む。俺は毒使いの殺し屋が言った通り、念の為アミーシャをキツめに抱きしめて体を固定し……準備ができたことを渚君に伝えれば、渚君はアミーシャの口へ薬を流し込んだ。
みんなが固唾を飲んで見守る中、アミーシャはゆっくりと薬剤を飲み込んで……
「ぐ、……うぅ、……あぁぁぁあぁあぁっ!!」
「!!アミーシャ、ちょ、なんで……ッ!?」
突然、苦しそうに声を上げ、腕の中で暴れる彼女を見て、俺は慌てて押さえつける力を強くした。彼女が自分で自分の体をを傷つけるような動きをしていたから……押さえつけでもしないと、無意識のまま、その苦しみを解消しようとそのまま自分にぶつけて、さらに自分の体を傷つける悪循環に陥りそうだったから。
「ちょっと、解毒薬じゃなかったの!?さっきよりも苦しんでるじゃん!」
「……いえ、大丈夫。それでいいんです」
さっきまでなんの反応もなかったのに、薬を飲んだ途端この暴れよう……俺も含めてみんなが慌てている中、茅野ちゃんが毒使いの殺し屋に抗議して……なぜか、茅野ちゃんの腕の中にいる殺せんせーが答えた。……え、苦しむのが、正しい?
「彼の渡した薬は解毒薬と言うよりも免疫力を高めて自然治癒を促す薬でしょう……苦しんだり痛みを感じたりする、ということは……体の機能が回復してきている証拠ですから。ですよね、〝スモッグ〟さん」
「あぁ、これで危険な昏睡状態からは抜け出しただろう。即効性の自然治癒を促す以外にも、さっき渡した栄養剤と同じような効果もあるから回復も早くなる」
「……そう、なんだ……」
「まぁ、もうしばらくは発作のようなものも起きるし苦しむことになるだろうが……それさえ過ぎれば完治するさ。本来協会に伝わるゼムリア苔を使用した秘薬を使うと1日以上寝込むだろうが……明日の昼、遅くても夕方くらいには回復するはずだ」
今まで痛みや触れられた感覚が無くなってたのが戻り始めたってこと……時々まだ自傷しようと動く体……苦しそうな声を出して、荒い呼吸を繰り返すアミーシャを見下ろして……俺はもう1度、強く抱き締めた。
あれだけ冷えきっていた体にゆっくりと体温が戻ってきて、やっと、いつものあたたかさを感じるようになってきて……ようやく安心できた。この小さな体で、よく最後まで抱え込んだよ……
ババババ……と大きな音を立てて、大型のヘリコプターがヘリポートに降りてくる。あれが烏間先生の呼んだやつなんだろう……間違いないね、防衛省ってロゴ入ってるし。
「…………、信用するのは、生徒たちが回復するのを見てからだ。事情も聞くし、しばらく拘束させてもらうぞ」
「……まぁ、しゃーねーな。来週には次の仕事入ってるから、それ以内にな」
ホテルの中にいた鷹岡の手下として見張りをしていたヤツら……烏間先生曰く、防衛省での鷹岡の部下だったらしいソイツらと、今回の黒幕だった鷹岡本人は厳重に拘束され、俺等が乗るヘリとは別の機体の中へと消えていった。
烏間先生の話すこと聞く限り、機密費盗むわ勝手に軍事情報持ってくわと色々やらかしてたみたいだし、今後どうなるかはわかんないけど……二度と姿を見せないでくれるならそれでいーや。……いや、本当は俺直々に仕返ししてやりたかったけどね。
殺し屋たちがヘリに乗り込んだら次は俺等だ……そろそろ立ち上がれるかと渚君に声をかけてアミーシャを抱え直していた時、やってきたのは唇やら鼻やらを真っ赤に腫らしたおじさんぬだった。
「……少年戦士よ」
「っ、なーに、おじさんぬ。リベンジマッチでもやりたいの?悪いけど今は……」
「いや、その状態でリベンジしかけないで!?」
「殺したいのはやまやまだが、俺は私怨で人を殺したことは無いぬ。誰かがお前を殺す依頼を寄越す日を待つぬ……だから狙われる位の人物になるぬ。……それよりも、……」
ジッと、おじさんぬが見つめているのは俺の腕の中にいるアミーシャで……なんとなくこの子をその視線に晒すのが嫌で、体ごとおじさんぬに背を向ける。
「…………何」
「……いや、あの時に少女術師から馴染みの気配を感じたぬ。俺でも敵対したくない、あの……だから確かめようと思っただけぬ。……Yuèguāng、もしそうであるならば、また会うだろうぬ」
「…………」
よく分からない言葉を言って、すれ違いざまに俺と渚君の頭を軽く叩き……おじさんぬは満足気な笑みを浮かべながらヘリに向かって歩いていった。先に乗り込んでいる2人の殺し屋も、搭乗口で姿を見せている。
「そーいうこったガキ共!本気で殺しに来て欲しかったら偉くなれ!そん時ゃ、プロの殺し屋の
そう言い残して……鷹岡の一味と殺し屋達を乗せたヘリコプターは去っていった。殺し屋なりの
……空薬莢じゃないだけいいけど、下手したら大火傷……まぁ、さすがにわかっててバラまいてるんだとは思うけどさ。
「……なんて言うか、あの3人にはちゃんと勝ったはずなのに、勝った気がしないね」
「言い回しがずるいんだよ、まるで俺等があやされてたみたいな感じでまとめやがった。はぁ……ガムテープ巻きの氷漬けになってたくせに……」
「カルマ君;」
こうして、大規模な潜入
渚君がヘリまで支えようとしてくれたけど、俺1人ですらまともに支えられなかったのに、俺が離すつもりのないアミーシャまでいて連れてけんの?なんて思ってたら烏間先生が俺の腕からアミーシャを抱き上げて……
「今の君では大事な生徒を落とすだろう。下に着くまで休め」
「……はぁい」
「うわぁっ!」
「渚、無理するなって」
そんな俺と烏間先生のやり取りを見ていた渚君が俺の体を支えて歩こうとして……案の定支えきれなくてフラついたから、苦笑いの磯貝が反対側から支えに来てくれた。こんなに力になれないなんてぇ……って泣いてるというか、ヘコんでる渚君を横目にふと、烏間先生の方を見たら先に行かずに待っていて……そっか、休め、とは言ったけど別行動とは言わなかったもんね……
乗り込んだヘリの中はまぁまぁな広さがあったから、烏間先生から俺の腕の中に戻されたアミーシャを俺の膝を枕替わりにして横に寝かせてやる……男の膝だし固いだろうけど、布団に入れてやるまではこのままで。
荒い息使いでまだまだ苦しそうな寝息を立てる彼女の髪をすいてやる……少し熱も出てきたし、毒使いのおっさん、まだ苦しむとか言ってたっけ……ホテルでもついてちゃダメかな……女子の部屋だから無理か。男女一緒の雑魚寝になんないかな。
「寺坂君……多分カルマ君も限界だし、代わりに言うよ。……ありがとう、あの時。スタンガン投げてくれたから隙を作れたし、最後のロヴロさんの技も使えた」
「……ケッ、テメーのためじゃねーよ。……チビが俺のために無理しやがったんだ、その借りを返しただけだ」
「……うん」
限界ってまだ俺話せ……あれ、確かにあんまり頭回んないしボーッとしてるかも……あは、寺坂気にしてたんだ……なんだかんだ言いつつもE組にしっかり馴染んでるし……いい傾向なんじゃないの?栄養剤も潜入組全員から今すぐ飲めって言われたのに『ホテルに戻って他の奴らが飲むまで飲まねぇ!』って啖呵切ったくらいだし。バカだけど、仲間思いの所もあんだねぇ……バカだけど。
「……んん……」
「……!アミー、シャ……?」
小さく声が聞こえた気がしてぼんやりしながらヒザに視線を落とすと、うっすらと開けた瞳と目が合った。ぼーっとしてるし、俺の声に反応してるわけでもない……これ多分、夢かなにかだと思ってるし、起きたら覚えてないやつだ。
近くに座ってた渚君や茅野ちゃんにも聞こえてたみたいで、そっとこちらを覗き込んでいる。
「……とーさま……?」
「!」
「……あみさ、ちから、つかわないやくそく、まもって……る……、おねえちゃ、と……ずっと、いっしょ……に……」
……俺を、父親と勘違いしてる……?父親は病気で亡くなってるって前に言ってたから……多分体が弱ったからかなにか夢でも見ていたのか、その姿はまるで幼児退行したかのようで。ほんの少しの笑みを口元に浮かべながらそれだけ呟くと、アミーシャは再び目を閉じた……今度はだいぶ落ち着いた、静かな寝息だ。
不思議なうわ言は気にはなったけど、今は休むことが最優先……か……ふぁ……俺も、さすがにもう、限、界……
「……カルマ君?……はは、寝ちゃったみたい」
「めっずらしい、私達の前で眠そうにしてても……こんな安心した顔で寝てるの見た事ないよ」
「確かにな。大抵その辺フラフラ出ていくから見つけて連れ戻すだけでも大変だよ……真尾が迎えに行くと1発だけど」
「ヌルフフフ……まさかカルマ君が戦術
「
「やっぱりカルマ君って、素行不良でさえなければちゃんとかっこいい男の子なんだよね……ふふ、アミサちゃんも安心した顔してる」
「なんか、いい雰囲気だよね……」
「思いがけず、カルマ君の重い好意も聞いちゃったしね……疲れすぎて口が軽くなってたんだろうなぁ……ただ、アミサちゃんはまだ整理しきれないんだろうけど」
「整理って?」
「アミサちゃん、僕にもカルマ君にも……もちろんみんなにもだけど、まだ話してないことがあるんだと思う。それで多分、いっぱいいっぱいなんだよ……だから、新しい感情とか気持ちを受け入れきれない」
「そこはもう、ヒーローに頑張ってもらわないと!ヒロインが前を向くためにも!お約束の展開でしょ?」
「コイツがヒーローって柄かァ……?」
「そーいえば、ロビー突破した後のアミサ、軽いパニック起こしてたんだった……あとからそれについても聞かなくちゃ」
「女子はみーんな、アミサちゃんの味方だからね」
「男子はカルマの味方ってか?」
「全部が全部はな……あんな唐突に悪口思いつく奴なんだし、場合によるぞ」
「日頃の行い……コイツ自分で味方減らしてるからな」
「敵は?」
「なんか憎めねーから敵では無い……モブ?NPC的な?」
「それもどうなんだよ……」
「なんにせよ……おかえり、アミサ。一緒に帰ってこれて、よかった」
俺は疲れていても、こうやってクラスメイトであっても無意識に警戒しているのか普段は全然寝付けない……だから教室の外で適当にサボってるわけだし。
……でも、精神的に限界だったこともあるけど、不思議とこの時はアミーシャの頭を撫でながら完全に寝落ちていて、他の奴らが何か話しているのはわかっていても、内容は全く入ってこなかった。
そして、ヘリはゆっくりと到着を告げる。
「……!帰ってきたみたいだね」
「!みなさんっ、おかえりなさい!」
「みんな、もう大丈夫だよ!」
「盛られた毒、なんかこれから無毒になるって!」
「なんか栄養剤貰えたし、倒れる前より調子よくなるらしいよ」
「……あれ、アミサちゃんとカルマ君は……?」
「うーん……なんか、起こすのが忍びなくて」
「……あ……ふふ、お二人共、いい顔をしてますね」
『渚さん、せっかくなので写真撮っておいてもいいですか?』
「えぇ!?なんでいきなり……律、誰かに頼まれたの?」
『殺せんせーが、〝手が使えないのがもどかしい、せめてあの姿を写真に……!〟と小声で悶えている声が聞こえたので!』
「……なるほど。律にバックアップとったら僕の端末からは消すからね?あとから怒られたくないし(カルマ君に)」
『はい!』
────パシャリ
++++++++++++++++++++
ホテル潜入編、終了しました!
今回は前回のオリ主視点でのお話と、気絶後のカルマ視点でお送りしました。
ご指摘あるかもなので先出ししますが、オリ主が盛られたのは空の軌跡FCでアガットさんが食らった神経毒……を、手に入れたスモッグさんがいろいろいじっちゃった結果の副産物です。毒を作るからには解毒薬も作るので、回復は早いはず。
ホテル内で散りばめた伏線は回収できたと、思いたい……!散りばめときながら散らかしっぱなしになってる謎があったら、多分きっと今後使われ(る可能性があり)ます。描写のわかりづらいところとかありましたら、教えてください!
では、次回は夕方の時間……一気に平和になるので、恋愛パートも進めたいところ。