暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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肝試しの時間と分けることにしたので、まずはちょっとした間の時間を……平和な時間を。




今回恋愛要素、あります





54話 夕方の時間

 

「ん、んん……ふぁ…ぁ………」

 

 あれ、いつ寝ちゃったんだっけ……?確か、1曲歌ったあと、みんながウトウトしだしてたから寝かせられそうな曲をその後も何曲か歌って……多分、そのまま私も一緒に寝ちゃったのかな。

 

 私がもたれて寝ていた有希子ちゃんを起こさないように周りを見てみれば、有希子ちゃんに抱きつくようにカエデちゃんが寝ていたり、その隣に愛美ちゃんがひっついていたり。大の字になって寝ている寺坂くんや岡島くんがいたり、壁にもたれて寝ている磯貝くんや千葉くん、凜香ちゃんがいたり。綺羅々ちゃんが小さくなって寝てたり、しっかり布団を持ってきてその中で寝てる竹林くんがいたり。

 ……そんな感じにE組のみんなが思い思いの場所で眠っていて……さっきは私が1番最後に起きたみたいだけど、今は私が1番最初だったみたい。それにしても穏やかな寝息……目の前でみんなが眠っているこの光景は、ひどく安心できるものだった。

 

「…………んん……、……」

 

「……、……ふふ」

 

 私の脚の上で小さく唸って身動ぎする動きに気づいて視線を落とすと、最初は向こう側を向いていたカルマが、寝返りをして仰向けに寝方を変えて目を閉じていた。……カルマはリクエストしてくれた『星の在り処』の1番を歌ったあたりでもう寝ちゃってたっけ……みんなから話を聞いてて心配だったけど、ちゃんと寝れたみたいでよかった。

 

 ……きっと、種類は違うだろうけど、彼には同じように心配をかけ続けてたんだろうな……そんな申し訳なさと一緒に、それくらい私を見てくれている彼に嬉しさもあって。

 そっと、起こさないように頭を撫でてみると、少しくすぐったそうな表情になったあと、また穏やかな顔になって……カルマも、撫でられるの好きだったりするのかな。以降は抵抗なく撫でられてくれる静かな彼に、まだ眠っているだろうみんなに……頭の中に流れた歌をそのまま、そっと、音に乗せる。

 

「……流れ行く星の、軌跡は、

……道しるべ君へ……続く。

……焦がれれば思い、胸を裂き、

苦しさを月が……笑う。

……叶うことなどない、……はかない望みなら。

せめてひとつ、……傷を残そう。

……はじめての接吻(くちづけ)、さよならの接吻(くちづけ)

……君の涙を、……琥珀に、して……

永遠の愛、閉じ込めよう───」

 

 ……どこか儚くて、悲しい気もする愛の歌……ちょっとだけ、自分の思いと重ねてしまうところのある『琥珀の愛』という歌。……この歌みたいに、いつか、私も……、ううん、今はまだ関係ない事なんだから、そんなこと思っちゃダメだよね。

 

 ……それより……みんな寝てて寂しくなってきちゃった……修学旅行の時に早く起きすぎた時はワクワクが勝ってて全然待てたのに。

 チラ、と足の上の存在を見て、……起こしちゃうかなぁ……そんなことを少し思ったけどそれより甘えたい気持ちが勝って、そっと、上半身を倒してカルマの胸辺りに頭を乗せてみる。緩やかに動く胸の動きに、直接聞こえる少し早い心臓の音に、目を閉じて眠る彼の表情に……安心感と、どこか穏やかで幸せな気持ちが湧いてきて……この気持ちは、きっと───

 

「……好き、だなぁ……」

 

「ふぁぁ……よく寝たぁ!」

 

「ッ!」

 

 誰かが目を覚ましたらしく、慌ててカルマの体にひっつけていた体を起こして背筋を伸ばす。見られては、ない、よね?だったら寝たフリはしなくてもいいはず、ちょっと前から起きててみんなを見てたってことにしよう。

 

 ……って、あれ……今、私、なんて言ったの……?なんでカルマに対して『好き』、なんて言葉が浮かんできたんだろう……どうして……、気がついたら口からこぼれ出ていたその言葉は、意識なんてしてなかったから、自分で自分の気持ちと言葉なのにすごく戸惑って。

 とりあえず……誰にも、聞かれてないよね?急に起きている気配が増えて驚いたのか、それ以外の理由があるのか……心臓がドキドキしてやまない中、ゆっくり深呼吸をしてなんとか気持ちを落ち着ける。

 

 目を覚ましたのはすぐ近くで寝ていた莉桜ちゃんだったみたいで、その声に反応してか、続々と女の子たちが、男の子たちが目を覚ましていく。

 1度しっかり寝て、今はお昼くらいからの仮眠程度だったのもあってか、ちょっとしたきっかけで目が覚めてるのかな。まだしっかり寝てるなーって感じなのは、夜に私の看病……でいいのかな、それでちゃんと寝てなかったカルマくらいだ。

 

「……んー……中村……?ってうわ、あのまましっかり寝てたのかみんな」

 

「いやー、真尾の歌聞いてたらいつの間にかな……」

 

『おはようございます、みなさん!現在午後4時になるところです!』

 

「ありがとう、律」

 

「あれ、……え、もしかしてアミサ今まで歌ってた?」

 

「……んーん、私もみんなを見てたら一緒に寝ちゃってて……今起きたばっかりだよ。みんながまだ寝てたから……みんなが寝てるとこ見ながら待ってたの」

 

「まーた修学旅行の時みたいなことしてるし……もう」

 

「いいの。……みんなが寝てるの見れて、安心だなぁって……一緒でよかったって、心がポカポカしたから」

 

「……あーちゃんってさ、いつも思ってたけどE組のみんなが一緒にいるって確認するの好きだよね〜」

 

 そういえば修学旅行の時もお日様が昇る前に起きちゃって、みんなが起きるの待ってたんだっけ。あの時もみんながいるのが嬉しくて、寂しい気持ちもなくて待つのは全然苦じゃなかったんだよね……メグちゃんよく覚えてたなぁ……

 まだカルマは目を閉じて動かないけど、周りがザワザワし始めたからそろそろ目が覚めてもおかしくないかも……他のみんなが今度こそ起きて、着替えて、お外に行こうって流れになってきた時、ジーっと私の方を見ていた陽菜乃ちゃんが言い出した。

 

「そう言われると、女子も男子も関係なくよくみんなの事見てるもんね」

 

「なんだよ、俺等のこと好きすぎるだろ!」

 

「うん、好き。……私はE組のみんなが、私を私として見てくれるみんなが、大好き」

 

「う……、」

 

「「「……………………。」」」

 

 陽斗くんが言ってきたから思ったことを思ったままに返事しただけなのに、私が言った途端動き出していたみんながその場で固まった。誰1人例外なく、ゆっくり無言でこっちを見てくるみんなが若干怖い……;

 

「……な、なんでみんな黙っちゃうの……?」

 

「あのな、こんなに素直すぎる反応が返ってくると思わなかったんだよ!」

 

「……いや、予想はしてた。でもそれ以上に混じりっけのない好意の破壊力がヤバい……俺今絶対変な顔してる」

 

「コイツ同い年なんだよな……普通恥ずかしがるもんだろ」

 

「嬉しいんだけど、ここまで直球だと照れるんだよね」

 

「アミサちゃんって思春期どこに置いてきちゃったんだろう……そっか8歳だったか、まだ来てなかったわね……」

 

「待っておかーさん、私もう14歳だからね?」

 

「アミサちゃんの純粋すぎるところお母さんは心配だよ」

 

「原さんがアミサを心配しすぎて迷走してる……」

 

「真っ直ぐすぎる好意ってむず痒いぃ……嬉しいんだけど!これをカルマは3年近くよく耐えてるよな」

 

「分かる……あと、その好きはわかるんだなぁと思って……」

 

「「「それな」」」

 

「ま、何にせよ女子は女子で着替えに行きましょ!」

 

「男子ー、残りの片付け任していいよね?」

 

「おう、これくらいならやっとくし、終わったら外行くわ」

 

「よろしくー!あ、神崎ちゃん、そのままその子連れてきて!」

 

「はーい」

 

「え、有希子ちゃん、なんで私持ち上げて……待って、まって、カルマ落ちちゃうから……寝かせてあげてからに……ッ!」

 

「はいはい、お着替えターイム!まだ寝てるように見える奴はその辺置いときゃいいのよ」

 

「だからって、自分で歩けるよー……」

 

「アミサちゃん、今まで膝枕してたから足が痺れてたり固まってたりしてるでしょ?私でも運べるから大丈夫だよ」

 

 今ほど私の身長がみんなより小さいことを恨んだことは、……、……いっぱい、あるけど……っ!何とかカルマの頭をゆっくり布団の上に置けてすぐ、軽く両脇の下に手を入れて持ち上げられただけで体が浮かんで運ばれてしまい、そのまま部屋を出る。うぅ、身長も高くて力もあるメグちゃんならともかく、有希子ちゃんとはそんなに身長変わらないはずなのに……軽く運ばれた……。

 女の子の着替えと荷物置き用に割り当てられた部屋に着くと、もうめんどくさいし今からもジャージでいいよねーっと言いながらみんなで着替えて、私の髪を結びたいと桃花ちゃんと陽菜乃ちゃんに結ばれ……きっと、私たちより先に準備が終わって外に出てるだろう男の子たちを追いかけることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……で、どうだったよ、寝たフリしてたカルマ君?」

 

「………………、うん」

 

「おはようさん、いつから起きてた?」

 

「……みんなが、まだ寝てて、アミーシャだけ起きてた時……」

 

「つまり最初からな」

 

「やっぱり狸寝入りだったんだ……アミサちゃん以外は気づいてたっぽいけど」

 

「そりゃあ、あんだけうるさくなってんのに、疲れてようが真尾がちょっとうなされただけで飛び起きてたような奴が、うなされも反応もしないで寝てるとは思えないって。いつからかは知らなかったけど」

 

「……、……アミーシャが、歌っててさ……」

 

「え。アミサちゃん、起きてからまた歌ってたんだ……」

 

「うん、キレイなんだけど、消えそうで悲しい感じの……そんで……、……、」

 

「いや、急に黙るじゃん……、……って、マジで何があった?」

 

「聞いてもいいやつか……というか、お前ちゃんと頭起きてる?まだ半分寝てないか?」

 

「…………。バレてないと思ってめちゃくちゃ可愛い行動してた上に……分かって言ってるとは思えないけど、俺のこと好きって……」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

「……ぅえ?……あっ、やば」

 

「何それ詳しく!!!!」

 

「夢か!?現実か!?!?説明しろ!!」

 

「ッヤダ、絶対もう言わないから、」

 

「たまにはお前も素直に吐け!!」

 

「悪魔らしいことばっかしてねーでよっ!!」

 

「……カルマ君、寝ぼけてたよね」

 

「だろうな。でも、俺はたまにはこうやってスカしてないカルマも新鮮でいいと思うよ……真尾が絡むとこういう姿が増えるのおもしろいし」

 

「磯貝君、楽しそうだね;」

 

「実際楽しいしな。……ほらみんな!カルマをからかうのはその辺にして、着替えて片付けたら外に行くぞ!」

 

「「「おー」」」

 

「……はぁい」

 

「あ、カルマは後で詳しく教えろよ!」

 

「え、磯貝?」

 

「もう外野から見てたら両想いだと思うんだけどなぁ……」

 

「渚君まで……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椚ヶ丘中学校特別夏期講習……2泊3日の内、初日が殺せんせーの暗殺に、鷹岡さんの襲撃にとあれだけ濃い1日となって、かと思えば2日目に目を覚ましてみればいつの間にか夕焼け空……気がつけば、この沖縄のリゾートに滞在するのもあと少しになっていた。

 2日目の今日は1日のほとんどを昨日のいろんな疲れで眠ってしまっていたのだから、仕方ないといえば仕方ないのだけど……。着替え終わった女の子みんなで一緒に海岸へ足を踏み入れると、私たちに気づいた誰かが向こうの方で手を振っていて……夕焼け色で色の判別はしにくいけど、頭の上で2つぴょこぴょこ揺れてるし渚くんかな。

 

「あ、男子。やっぱり先に来てるじゃん、……おーい!」

 

「みんなジャージだねぇ」

 

「よっ!まーな、他に誰も客いないし、これが楽だわ……」

 

 昨日は旅行だし!ってみんな私服で過ごしていたけど、ここに集まった人たちは、私も含めていつものジャージを着てて……ふふ、旅行っていうよりいつものE組の集まりにいるみたい。場所が違うだけで間違ってはないんだけど。

 

 一緒に浜辺まできた優月ちゃんたちが渚くんたち男の子と合流してから何か話し始めて……手持ち無沙汰になった私は1人、フラっと海に近づく。沖の方には、ここから見てもかなり大きいことがわかるコンクリートの塊が浮かんでいた……あの中に、対先生BB弾などで周りをがっちり固められた殺せんせーがいる、らしい。

 休んでいた私たちと違って、今も忙しそうに歩き回っている烏間先生たち防衛省の人の邪魔にならないところで、靴を、靴下を脱いでそれを両手に持ちながら浅瀬に足をつけ、足首が浸かるところまで歩いてみる。しゅわしゅわする砂に足が沈む感触と、その感覚もすべてさらっていく波……気持ちがいい。それ以外、何も考えず波音と水の動きを感じながら、流れていく波を見ていると、なんとなく気持ちがほっとした。

 

 

 

 ────カシャッ

 

 

 

「!」

 

「おはよ。……といっても、もう夕方だけどね」

 

 後ろから何か小さな電子音が聞こえた気がして、振り向くとちょっと離れたところで海にスマホを向けているカルマがいた。海はちょうど夕日が海に反射して綺麗に見える頃で、キラキラしてる……彼はその写真を撮ってたんだろうけど、逆光で真っ暗になってないかちょっと心配だ。

 私もこの景色は、できるなら残しておきたいくらいだけど上手く撮る自信がないし……ま、目でしっかり見ておくから撮らなくていいや。

 

 スマホをしまって私の近くに来たカルマは、海に入る気は無いのだろう……波打ち際で足を止め、私の方を見て小さく笑った。その姿は夕日でオレンジ色に染まっていて……なんだか赤い髪とオレンジの瞳も相まって、どこか景色に溶けていってしまいそうなキレイさがあった。

 

「……おはよ、カルマ。ちゃんと寝れた?」

 

「ん。……ありがと、だいぶスッキリした」

 

「ふふ、ホントにスッキリした顔してる……よかった。それにしても昨日はビックリなことばかりだったね……お部屋でお着替えしてる時に女の子のみんながね、改めてぎゅってしてくれて……みんなって、こんなにあたたかかったんだなぁって」

 

「ふーん……ていうか、あれだけのことをビックリの一言で済ませないでよ。これまでも含めてさ、何回死にかけて、何回心配させる気なの?」

 

「えへへ……どうだろ、気づいたら体が勝手に動いちゃうんだもん……わかんないや」

 

 私は、死にたいなんて思っているわけじゃないし、自分から無理をしてるつもりもない。自分の力量はわかっているから、それを踏まえて動くことはできているつもりだ……でも、それは『私1人』だったらの話。

 今までは自分1人のことを考えればよかったけど、今はみんながいるからそれも頭に入れて動かなくちゃいけない。……1人の時と、多人数の時。少し勝手が違うだけで……力の加減とか、どこまで私が出ていいかとか、周りを見るのがとても難しい。

 

 だから気がついたら飛び出してるし、私1人で抱え込む選択肢を選んでしまっている。心配をかけたり、迷惑をかけたりしてることもわかってる……それでも、私がその時にできるならやってしまおう、どうしても、そう思ってしまう。

 

「……なんかさ、いつかアミーシャが消えちゃうんじゃないかって気がするんだよね……今だって、このまま夕日が沈んだら、夜にもってかれちゃいそう」

 

 まだまだ明るい、それでも少しずつ沈んでいく夕日を見ながら静かにそう言ったカルマは、眩しそうに目を細めている表情の中にどこか不安げな様子があった。彼はいつも自信たっぷりで涼しい顔で、どんなことでも楽々こなす……それでも最近は相手をよくみて、知ろうとするようになった。

 そんなカルマが表に暗い感情を出すところを見たくなくて、私は消えるつもりはないってことを伝えたくて、海から上がって彼に近づき、手を伸ばす。

 

「カルマ……」

 

「ま、連れてかれないように、俺が捕まえとけばいいんだけど」

 

「あっ……」

 

 伸ばした手がカルマに触れる直前に彼が取り、軽く引き寄せられた。多少ふらつきはしたけどバランスを崩して倒れるほどではないから、自分の足でしっかりと立つ。

 お互い正面から向き合う形になったところでカルマの顔を見あげてみたら、さっきまでの影のあった表情はどこにいったんだろうってくらい、真剣な顔をしていて……でも、躊躇うように少しだけ視線をさまよわせていて……どうしたのかと、思わず身構える。

 

「……ねぇ、アミーシャ。俺、アミーシャのことが───」

 

 いつもより低くて、それなのに落ち着く声……真剣な表情とその声を聞いて、なぜかまた……大きく心臓が跳ねた、気がした。決心したのか、カルマが私をまっすぐ見つめ直して、何かを言おうとした……その時。

 

 

 

 ────ドドーン!!

 

 

 

 地響きと共に大きな爆発音が背後から聞こえ、慌てて振り向いたら、沖で殺せんせーを閉じ込めたコンクリートの塊が爆発し、近くに吹き飛んだ破片の雨を降らせていた。さすがに海岸へ届くような危険はなさそうだけど……どうなったの?

 

「ニュルフフフフ、先生の不甲斐なさから苦労をかけてしまいました。ですが皆さん、敵と戦い、ウイルスと戦い、本当によく頑張りました!」

 

 ……まぁ、薄々わかってはいたけど……海から離れた浜辺には、コンクリートから無事に脱出して元の姿に戻った殺せんせーが……傷1つなく笑っていた。

 

「……やっぱりそう簡単には殺せないね」

 

「簡単に殺れるなら、俺等がもうとっくに殺ってるって」

 

「ふふ、そうだね。……あ、カルマ、何か言いかけてたけど何だったの?」

 

「……、はぁ……なんでもない。雰囲気ぶっ壊されたし……俺、ちょっとあのタコに用ができたから行ってくる」

 

「う、うん……?いってらっしゃい……?」

 

 殺せんせーの方を見ながら話しかければ、隣から聞こえる返事の声がどこか沈んでいる気がして……不思議に思ってカルマに向き直ってみると、彼は頭を抱えていて。

 そしてゆっくりと顔を上げたかと思えば、対先生エアガンを取り出して、静かに怒りをにじませながら殺せんせーの元へ歩いていった……今の短時間で一体何が起きたんだろう……?

 

 そんな殺せんせーはといえば、たくさん分身を作りながら砂のお城を作ったり、スイカ割りを1人でたくさんしたり、空に『SUMMER 大スキ!』の飛行機雲を作ったりと大忙しだ……1日目、あんなに満喫してたのにまだ遊び足りないんだなぁ……あ、カルマが撃って、便乗した寺坂組のみんなが射撃してる。

 

「ア・ミ・サ・ちゃ〜ん?先程とてもいい雰囲気でしたなぁ?」

 

「私も気になる〜!どんな会話したのか、教えて〜?」

 

「びゃっ、……り、莉桜ちゃんに、陽菜乃ちゃんっ!?」

 

 ちょっと楽しそうというか、修学旅行の夜にも同じ感じで殺せんせーのことを追いかけてたなぁ……なんて笑ってたら、後ろから急に肩を掴まれて、変な声が出てしまった。……というかなんでみんな、私の後ろから急に声をかけるんだろう。

 

 それよりも、……いい雰囲気?どんな会話?……2人は何が気になって聞きに来てるんだろう……どれのことを言ってるんだろ。

 

「で?で?」

 

「えと、その……私が海の中に足を入れて遊んでたら、おはよって、それで……ちゃんと寝れたか聞いて……えっと、」

 

「ふふ、ゆっくりでいいよ。順番に教えて?」

 

 うまくまとめて話せない……少しまごつきながら今の会話を順番に並べていく。

 お互いに体調の確認をしあって、夕日に私が消えそうだっていわれて、私は居なくならないよって応えようとしたら手を掴まれて引き寄せられて、カルマが、……そう、確かに何か言おうとしてたのに、殺せんせーがドーンと飛び出してきて、何でもないって言って殺せんせーを撃ちに行っちゃったんだ……あってる、よね?

 

 うんうん唸りながらなんとか伝えようと言葉を考えて、多分全部話しただろうってところで2人を見ると、2人して「あちゃーっ」って顔をしていて、首をかしげるしかなかった。

 

「……これは……戦犯だわ……!」

 

「殺せんせー、タイミング悪すぎ!」

 

「やっぱり、今聞かないといけない、大事な用だったのかな……?」

 

「いや、大事な用ではあると思うけどタイミングが……うーん、ま、この子相手にだいぶ頑張ったみたいだし、機嫌を直してやるためにも!」

 

「お披露目会しに行こっか〜!」

 

「へ……?」

 

 なぜかやる気を出した2人に背中を押されて、向かう場所は他のE組女の子たちが集まっているところ。メグちゃんが、残り少ないこの旅行の時間をめいっぱい楽しもうって言ってて、女の子たちは既にジャージを脱ぎはじめてる……そう、みんな着替えた時、ジャージの下に水着を着てきたんだ。

 もちろん私も着てきてるわけで、みんなと一緒にこれから脱いで海に入りに行く……んだと思ってたんだけど、……えっと、莉桜ちゃんたち、そっち海じゃないよ……?あとみんな、海に行かないでなんでこっちに集まってるの……?

 

「はい、脱いだ脱いだ!おぉ〜、いつ触っても揉み心地のいい……」

 

「り、莉桜ちゃん、自分で脱げ、ひゃぁっ!?んっ、や、やめ、くすぐったい……っ」

 

「あ、もう捕まってる」

 

「アミサって気配を読むの上手いくせに、ちょっとでも信用してくれてると逃げないからさ……」

 

「うん、気付かないふりじゃなくて、気配そのものを読まないんだよね……中村さんのいいおもちゃになってるよ」

 

「あんた、……まさかとは思うけど採寸した時より育ってない?」

 

「な、なにがぁ……?」

 

「さすがにそれは無いか……でも絶対まだまだ余地があるわね!」

 

「あ、私、皆さんのジャージ置いてきますよ!」

 

「奥田さん、私も手伝うね」

 

「お取り込み中しつれーい!ほら、カルマ君達、見てみて!」

 

「ん、なーに……………………っ!?」

 

 他の女の子たちが集まっているところにつくやいなや、自分で脱げるのに莉桜ちゃんにジャージのズボンを下ろされて、何するのかと思ってたら上のジャージまで……。慌てて抵抗したら腕の途中に引っ掛けて後ろ手に動けなくされてしまった、瞬間、なぜか莉桜ちゃんに胸を揉まれた。

 後ろ手にジャージが絡まってる状態で揉まれたから、うまく莉桜ちゃんの手から逃げられないし、どうすればいいのか分からなくなってるところで、優月ちゃんが男の子に声をかけてしまう。待って、今こんな状態じゃ……と止める前に最初に名指しされたカルマが振り向き……固まった。

 

 近くにいた杉野くんとか渚くんとか他の男の子たちも同じような反応で……それはそうだよね……振り返ったら魅力的な水着の女子たちがいるし、ニコニコしたみんなが水着を披露してるし、私は莉桜ちゃんに捕まって胸を揉まれてるっていう状態だし、カオスって言うんだよ多分!これにコメント求めちゃダメだって……!

 

「どーよ!莉桜様監修、女性陣セレクトのこの水着!」

 

「うぅ、莉桜ちゃん、水着みせるのはいいから、せめて離してぇ……」

 

「……っ!……っ!?!?」

 

「……カルマ君、喋れてないよ」

 

「(そりゃそうだろ……真尾の水着姿だけでもカルマにゃストライクだろうに、中村イタズラのおかげであの顔……)」

 

「(顔真っ赤で涙目で、しかもちょっとトロけた顔っての?……男子としてツラいよな……)」

 

「(正直見てるだけの俺もツラい)」

 

「(……否定出来ない)」

 

「……り、律……!写真、撮っといて……ッ!」

 

「「「(そこは抜かりねぇな!?)」」」

 

『カルマさんどうしたんですか?』

 

「……俺、ちょっと落ち着くまで無理だから……っ」

 

『……よく分かりませんが……了解しました!』

 

「……お前、クラスにバレてから、ホンットに隠さなくなったよな……」

 

 顔を真っ赤にして口をぱくぱくとさせていたカルマは、渚くんに声をかけられてからスマホを私たちに向けると、顔を背けてしゃがみこんでしまった。

 そのまま動かなくなっちゃったから心配だけど、私もそれどころじゃないから行きようがない……やっと莉桜ちゃんに離してもらえて息を整えていたら、莉桜ちゃん、というか女子はニヤニヤしてるし、みんな……特に男子は顔を背けるし……私、何かした?

 

 ちなみに、あの買い物の時にみんなで相談して買った水着は、白地のクロスホルタービキニに赤い大きなリボンが胸元についていて、腰にも両サイドに同じデザインのリボン、そこを起点にお尻の方を隠す短いスカートみたいになっているデザインで……スカートだけは、私の好みで譲らなかった部分だ。みんながたくさん相談に乗ってくれて選んだものだからかなり気にいってる。

 

「むふふ〜、サービスはこんくらいでいいでしょ!」

 

「うーん、ちょっとやりすぎな気もするけど……さて、アミサ行くよ!」

 

「わっ!う、うん!」

 

「せっかく元気になったもん、私たちも行こ?」

 

「はい!」

 

 陽菜乃ちゃんの言っていたお披露目会は無事に終わった……のかな?男の子の反応を見れて満足したらしい莉桜ちゃんの声とともに、今度はメグちゃんに手を引かれて……今度こそ海に走り出す。さっき波打ち際で足首だけ波の感触を楽しんでた時とは違って、全身濡れることを気にしなくていいから、みんなと水を掛け合い、海の中に座って流れを楽しんだりと、冷たい海で涼めるしすごく楽しい……!

 

 この後、水をかけあっていたら殺せんせーが走ってきて、水が弱点のくせに参加しようとして「ふやける」って1人慌ててたり、岡島くんが混ざろうとして服を脱ぎ始めたんだけど、こっちに走って来る途中でメグちゃんに目を塞がれて何が起きたのか見せてもらえなかったり、私を莉桜ちゃんに預けた桃花ちゃん、凜香ちゃん、陽菜乃ちゃん、メグちゃん、ひなたちゃんが岡島くんとなんか喧嘩してる音がしたり、花火をするから一緒に遊ぼうって殺せんせーが駄々をこねたり、イリーナ先生が男子を追いかけ回してたり……みんながとても楽しそうに、遊べなかった分を取り戻すかのようにたくさん遊んだんだ。

 

 

 

 





※あの時撮った写真は
「……逆光だからこそ、アミーシャは消えそうなんだ……そうに、決まってる……」

「か、カルマ君……何か言いましたか?」

「……人が告白しようとしたのを邪魔しといて、聞ける立場だと思ってんの?普段からとことん下世話なくせにそこだけタイミング悪いとか救えないね。……さっさと当たれよこのタコ!!!」

「ハッ、せっかくの生徒のスキャンダルを先生のせいで逃した……!?」

「……カルマ君がキレるタイミングって、たいていアミサちゃんが絡んでるよね」

「で、たいてい言わなくていいこと言って自爆してんだよな」

「お取り込み中しつれーい!ほらカルマ君達、見てみてこの子!」

「ん、なーに…………っ!?」
(本編へ続く)





「で、どーだったよ。水着の感想は」

「……中村、感謝。めっちゃかわいい……でもお前のイタズラはいらない」

「えー、あんないい乳が目の前にあったら揉まなきゃ損じゃん!カルマ好みの水着に真っ赤な顔をプラスしてやったのにー」

「他のやつも見てるから嫌なんだよ……そんなんだからオッサンって言われてんの、わかってる?」

「……はいはい、じゃあ、水着選びの裏話教えてあげるからそれでどーよ?」

「……内容による」

「水着、あの子が自分で選んだものにも私等が勧めたものから選ぶ時も全部共通点があったのよ。1つはスカート……パレオみたいにヒラヒラしたのが着たいってずっと言ってたわ。もう1つが……必ず入ってんのよ、どこかに〝赤い〟部分が」

「!」

「あの子の持ち物見てみ?無意識みたいだけど、もともと持ってたもの以外、必ず赤を優先的に選んでるから。最近身につけてると安心できるんですって。……何を意識してんのかしらねー?」

「…………」

「これくらい、自惚れてもいいんでない?あ、あと……ほい」

「……?……ばっ!!」

「うしししし、あの子が自分で選んできた下着だけど、明らかにアンタの目と髪の色よね!」

「水着と下着はさすがに違うでしょ!!あの子の名誉のためにも!……はぁ、……でも、そっか……」

「嬉しそうねぇ……真っ赤だけど」

「……うるさい」



++++++++++++++++++++



カルマが告白しようする&オリ主が1人静かに『好き』という気持ちに向き合い始めました。

告白については完全に殺せんせーが邪魔しました。
お互いに「相手が夕焼けに/夜に消えてしまいそう」って感じる所までは予定通りだったのに、引き留めようした結果何故か告白に繋がるという。多くのE組に目撃されてた可能性があったから、中断してある意味よかったんじゃないかな……

次回、肝試しの時間です!





歌詞をお借りしました(ファルコム音楽フリー宣言の規約上、こちらにコピーライト表記します)⬇
「琥珀の愛/ 空を見上げて~ 英雄伝説 空の軌跡 ボーカルバージョン ~ / Copyright © Nihon Falcom Corporation」
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