暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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せっかくなので、暗殺教室の中でも『大人になること』を意識した話も盛り込んでみました。


肝試し、開幕です




55話 肝試しの時間

 

「おーい、女子ー!なんか殺せんせーが遊びたいらしいから、1回着替えてこーい!!」

 

 水着を着てきていた女の子14人(律ちゃんもしっかりスマホの中で水着を着てきて、防水バックに入れたスマホの中で一緒に海に入ってる)で、沖縄の海を堪能していると、砂浜の方から男の子から声がかかる。

 男の子も水着を着てきてたらこのまま夜までいてよかったかもしれないけど、誰も着てこなかったみたいだしね……あれ、岡島くんだけは服を脱いで一緒に遊ぼうとしてなかったっけ……?うーん……きっと1人だけ用意周到だったんだろうな。

 

「えー、もうー?」

 

「ま、夕方とはいえそろそろ周りも見にくくなるしね。変なもの踏んでもヤだし、丁度いいんじゃない?」

 

「短い時間だったけど、海に入れてよかったよね〜」

 

「だね、気持ちよかったし!」

 

「でも殺せんせー何する気だろ……?」

 

「たしかに、1人であんだけはしゃいでたのに、まだはしゃぐ気なのかな」

 

 ザバザバと海を蹴りながら、女の子たちで話しながら、ちょっと名残惜しいけど海を上がる。その途中で私は、なんとなく足を止めて海を振り返った。

 私が入ったことのある海と言えば、クロスベルにあるミシュラムのレイクビーチだけで、あくまでも人工的に作られた場所だから、こんなに周りを区切られない広々とした海で遊ぶのは生まれて初めてだった。今は夏だからこそ、夕日が沈んできているとはいえ、まだまだ日が落ち切るまでは時間がありそうだ。

 

「…………私たちだけ、なんだ」

 

「何がー?」

 

「あ、カエデちゃん……さっきまで防衛省の人たちが、私たちと違って全然休まないで働きづけてたでしょ?でも、もういないから……私たちだけなんだなーって」

 

「そうだねぇ……」

 

「すごいよね、防衛省の人たちもそうだけどさ、烏間先生のこと……私達じゃ全然真似できそうにないもん」

 

「だねー、ビッチ先生もさ、ピアノが弾けたりここって時の度胸があったり、ああ見えてすごい人なわけじゃん?」

 

「ホテルであった殺し屋の人達もそうだよねー、長年の経験?ほら銃の人が言ってたじゃん、味で善し悪しを決めるとか……よく分かんないけどその人なりの技術を身につけてたり、仕事に対してしっかりした考えがあったり」

 

「……反対に、鷹岡先生みたいなお手本にしたくない人もいたりね」

 

「うん。だからこそ、私達はいいなと思った人を追いかけて。ダメだって人は追い越して……それを繰り返して大人になってくんだよ」

 

「……うん」

 

 私たちは、まだまだ子どもだから。手本にしたり、反面教師にしたり、いろんなものを選びとっていく大事な時期なんだろう。みんなにはたくさんの道が、まだあるんだろう。

 ……まだ、私の前にある道は真っ暗で、1本しか見えてないけど……みんなといたら、何か見えてくるものもあるのかな。真っ暗で何も見えないと思っていた道にも、みんなみたいな眩しい存在が近くにいたら……見えてくるものがあるのかな。

 

「アミサ?」

 

「……うん、今行く!」

 

 だからこそ、未来に期待したくなる。

 

 また……来れたらいいな。次も大切な人と一緒に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「肝試し?今から?」

 

 海から上がり、軽くシャワーも浴びてからジャージに着替え直した後、オープンテラスへ集合してくつろいでいる私たちの前に、……えっと、白い着物と頭に白いハチマキ……?な、お化けのコスプレらしきものを身にまとっている殺せんせーが、気合を入れて準備体操をしていた。

 先生曰く、昨日の昼間に3班と行った海底洞窟を見て、ちょうどいい企画ができると思ったらしくて……多分、完全防御形態にならなければ昨日の夜にやりたかったんだろうな。殺せんせーがお化け役として通るみんなを脅かす役をするから、私たちは男女のペアで海底洞窟を歩いて反対側の出口まで抜ける、というものをしたいみたい。

 

 殺せんせーは、今まで完全防御形態で動けなかった分、私たちと遊びたい……から、一緒に歩くんじゃなくて脅かすんだ。なるほど……えっと、とりあえず、

 

「殺せんせー、きもだめし、って何?」

 

「せんせー、俺アミーシャとペアね。……ん?」

 

「「「…………え。」」」

 

「そ、そこからですか!?」

 

 カルマと私の声が同時に響き、みんなの声がハモり、殺せんせーが驚いて固まった。だってお化けはわかるけど、『肝試し』なんて初めて聞いたんだもん……とりあえず復活の早かった何人かが説明してくれて何となくわかった、気がする。

 順路通りに進む道の途中でお化けが出てきて脅かしてくる、道は真っ暗で見えなくて懐中電灯の明かりだけで進むのが王道、普通はダメだけど今回に関してはお化け役が殺せんせーだからやり返しで暗殺仕掛けてもOK、他にもいつ出てくるか分からなくてドキドキするし、ゾクゾク感から涼しさを感じられる夏の風物詩……つまり、あれかな……

 

「ミシュラムにあった、ホラーバスターみたいなやつ……?」

 

「それです!!それの自分で歩くバージョンです!」

 

「……うん、わかった、だいじょぶ……だと、思う」

 

「なるほど、アトラクションで説明すれば一発だったか」

 

「ミシュラムのホラーバスターが何かわかんないけどね……」

 

 私が肝試しがなんなのかを理解したところで、当の殺せんせーはニヤリとしたような何か企んでそうな笑顔を浮かべたあと、先に仕掛けとかを作って設置するために、洞窟の中へと入っていった。

 

 洞窟の外で待っている私たちは、とりあえず男女のペアを作って待つことに……だいたい普段から関わりのある人でペアを組んでくみたいで、渚くんはカエデちゃんと、陽斗くんとひなたちゃん、千葉くんと凜香ちゃん、杉野くんと有希子ちゃん……と、意外とすんなり決まっていく。

 私のペアは1番最初に本人から宣言されてた通りカルマで、他のみんなも異論ないみたい……むしろ私が何か言う前にしれっとみんな私たち2人をペア決め候補から除外してた。当たり前だろ、むしろお前等はお互い以外組む気ないだろむしろ組め!とまで言われたんだけど……そ、そんなに私たちで組んで欲しいのみんな……?

 

 殺せんせーの準備完了の合図をもらって、順番に海底洞窟の中にペアが入っていく中、私たちは洞窟の入口近くで待機することに。

 

「ホラーバスターってどんなの?」

 

「車みたいな乗り物に乗って、コースを進むの。で、途中で魔獣がいっぱい出てくるから、乗り物に設置してある導力銃で撃ってポイントを稼いでくアトラクションだったよ」

 

「ふーん、こっちにもあるシューティングゲームみたいなものか……で、アミーシャ的に平気なの、お化け」

 

「……ダメ、じゃない……と、思う」

 

「……何今の煮え切らない感じ」

 

「魔物にもいるの、お化け。幽霊というか、ゴーストというか……だからゾクゾク系は特に怖いとかないんだけど……ただ、急に消えて急に出てきたり、後ろからいきなり出てきたり、凍らされたり、目を潰されたり、体を石にされたりっていうのは嫌すぎて……基本どうしようもない時以外避けてた」

 

「前半ビックリ系のことかと思ったのに後半なに?」

 

「動けなくなって、見えなくなって、1回攻撃されたら体が崩れて死にかける」

 

「最悪じゃん特に最後、それ死んでない?」

 

「……ギリギリ、死んでない……」

 

「……聞かなかったことにしとく……ま、アミーシャはビックリ系がダメ、と……あとさすがに殺せんせーはそんな状態異常にすることはできな」

 

「「ぎゃーーーーっ!!?!?」」

 

「ッッッ!?!?!?」

 

「あ、マジでビックリ系はダメなわけね……」

 

 私たちの1つ前に海底洞窟の中へ入っていったペアの叫び声が聞こえてきて、思わず体が硬直した……え、殺せんせーが脅かしてるんだよね?知ってて入ってるんだよね?……なのに、そんなに怖いの……!?

 入る直前になって完全に足を止めた私を見て、何故かさっきまで以上に嬉しそうな顔で私の手を握って中へと歩き出すカルマ……なんでそんなに嬉しそうなの……?手を繋いでるから必然的について行くしかないんだけど……

 

 ハッキリ言ってこういう暗いところを歩くのも、足場が悪いところを歩くのも、向こうで言う急に魔物が出てくる道を歩くのも私にとっては一応普通のことだ。でも、あんまり好き好んで行きたいわけじゃないし、今回はマッハ20の殺せんせーが相手……本気でビビらせに来たら、耐えられるか分からない。

 

 

 

 ───ペン……ペンペンペン……ペンペン……

 

 

 

ここは、血塗られた悲劇の洞窟……

 

「ぴ!?」

 

「ちょっと、ぴ、って……」

 

琉球……かつての沖縄で……戦いに敗れた王族達が、非業の死を遂げた場所です……

 

 ごめんなさい開始数秒でもう無理でした耐えられない!!いきなり青白い火の玉と共に現れた緑色の何か……それに驚いて反射的にそっちへ対先生ナイフを投げたのに何事も無かったかのように顔面をすり抜けたかと思えばそれは火の玉と一緒に消えていって……もう既に私は何が何だか分からない状態になっていた。待ってまって私ナイフ投げたのに当たったのになんでそのまま話が続いて

 

決して2人離れぬよう……

 

「〜〜ッ〜ッッ!?!?」

 

「え、ちょ、アミーシャ落ち着いて、相手魔物じゃなくて殺せんせーだから、当たらないのも全部マッハ20で避けてるんだよ、ホンモノじゃないって。……ねぇ、ちょって待ってガチで待ってって、ガチ霊とか魔物とかじゃないって!氷も目潰しもないから!こんな暗闇でナイフ投げたら無くなるし取りに戻れな、ちが、そっち順路じゃない行ったら俺がライト持ってるんだから真っ暗!!ストップ!!!」

 

「……アミサさんに意外な弱点発見ですねぇ……そしてやっぱり、この2人が1番可能性がありそうです……ヌルフフフフフ……」

 

 真っ暗闇に1人で突っ込んでいきそうになっていたところをカルマに全力で連れ戻された時には、お化け殺せんせーはいなくなっていた。

 足なかったし、やっぱりホントにお化けになっちゃったんじゃ……だって1人になったらさまよえる魂に取り殺されるって……!?と言ったら、「だったら殺せんせーはもう死んでるから暗殺できないじゃん」と冷静に突っ込まれてた、それはそうだとやっと落ち着くことができた。

 

 私たちが入ってきた側……次のペアにも同じ語りが聞こえてくるってことは、さっきのはこの肝試しの前提、設定ってことか……琉球?王族?……初っ端で驚きすぎて設定なんにも覚えてないけど。

 そして序盤どころか、最初の最初だというのに、既にカルマは疲れたようにため息をついていた……もう、ホントにごめんなさい……

 

「ここまで驚くとか……ってそういえば、今までも急に後ろから声掛けたり肩叩いたりすると驚きすぎってくらい声上げたり飛び上がってたね」

 

「うぅ……ごめんなさいぃぃ……それにみんな、なんでか後ろから声掛けてくるんだもん……」

 

「……ふ、くくっ……反応かわいいし、しょうがなくね?」

 

「かわいくないもん……っ」

 

 カルマは押し殺せてないくらい笑ってるんだけど、私はもう半分くらい泣いてる。これまで普通に生活してきた中でも、後ろから急に声をかけられたり触れられたりすることには内心ビクビクしてたんだけど、ここまで何が何だか分からなくなったのはこの肝試しが久しぶりすぎて、……入る前に楽しみにしていた自分に、やめておきなさいって言ってあげたい。言ったところで強制だろうけど。ちょっとは心構えできるはず。

 次に何か来るとわかっていても『急に』というのはどうしても慣れないから怖くて、次にわけがわからなくなってはぐれても嫌だからここから動きたくない、でも進まないと次のペアが来ちゃう……もう1人では足が思うように進まなくなっていたら、カルマが手を引いてしがみついてもいいと言ってくれた。遠慮なく手を握るどころか腕にしがみつかせてもらって洞窟の中を歩く。

 

落ち延びたものの中には夫婦もいました。ですが追っ手が迫り……椅子の上で寄り添いながら自殺しました

 

「ッ!」

 

「大丈夫、平気だって……俺がそばにいるから」

 

 案の定、また背後のものすごく近い位置から囁きかけるようにお化っ……こ、殺せんせーの声が響いてきて、次に何を仕掛けてくる気なのか、ビクビクしながらカルマにしがみつく力を強くして、目を閉じ……

 

琉球伝統のカップルベンチです。ここで1分座ると呪いの扉が開きます

 

「……はぁ?」

 

「……へ……?」

 

 殺せんせーの脅かし?に、思わず目を開けて固まった。……えっと、……伝統の……伝統?

 

「……と、とりあえず……座る?」

 

「………………うん、そうだね……、俺すっげぇ恥ずいこと言ったのに……ナニコレ……?」

 

 なんとも気まずい1分が過ぎて扉が開く。殺せんせー自身の服装、設定の時代背景に合わせて古くてボロボロのを着てたのに、伝統だっていうカップルベンチ?というものは真新しいキレイでハートがいっぱいあしらわれたもので……なんで、こんな洞窟の中にあるんだろ。殺せんせーが持ち込んだから?そっか……

 

 

 

 そして、違う意味で思考がわけ分からなくなりそうな案件は、この後も続いた。

 

 

 

 古い一軒家……響くのは包丁を研ぐ、シュッ……シュッ……シュッ……という音だけで……今回はビックリ系ではなかったから普通に観察していたら、

 

血が見たい……同胞を殺されたこの恨み……血を見ねばおさまらぬ……血、もしくは……イチャイチャするカップルが見たい……どっちか見れればワシ満足

 

「やっすい恨みだね」

 

「カップル……自分の子どもが結婚する前に死んじゃった人なのかな……かわいそう……」

 

「素直に設定受け入れなくていいから」

 

「血は流したくないからイチャイチャすれば……って何すればいいの?」

 

「……なんだろうね……スルーでいいと思うよ……」

 

 

 

 ボッボッと、青白い人魂とともに骸骨がカラカラと宙を浮かびながら語りかけてくる場所では……

 

立てこもり飢えた我々は……一本の骨を奪い合って喰らうまでに落ちぶれた……お前達にも同じ事をしてもらうぞ。……さぁ、両端から喰っていけ

 

「いや、それただのポッキーゲームじゃん」

 

「あ、ぽっきーだ。……ん?ゲーム……?」

 

「……はい、あーん」

 

「……?……あ」

 

「ん、」

 

 ────ポキッ

 

「……これでよし」

 

「……なうほろ……?んくっ、……片方の人の口にぽっきーを入れて、もう1人が反対側をくわえて折るってゲーム……たくさん取れた方が勝ち?」

 

「そうそう。……あ、これ俺以外とはやっちゃダメだから」

 

「?そうなの?お菓子を食べあいっこするだけなのに?」

 

「うん、ダメ」

 

 ……という、何を狙ってるのか、企んでいるのかよく分からないものばかりが出てきた。……申し訳ないのだけど、殺せんせーが急に出てくるビックリ系以外は正直怖くない。

 それに対してカルマはものすごく棒読み、もしくは呆れたように律儀に全部ツッコミを入れながら、私がよく分かってない部分の解説をしてくれていた。とりあえず……殺せんせー、ホントに何がしたいんだろう……?

 

 もう恐怖とかドキドキとかどこかに行ってしまった私は、もうしがみつかなくても平気だったんだけど、暗闇を照らす懐中電灯はカルマしか持っていないことには変わりないから、はぐれないように手は繋ぐように言われて、手だけはそのまま。

 

 まぁまぁの距離を歩いてきたし、あと少しだと思われる順路を黙々と歩いていると、ふと、思いだしたようにカルマが話し始めた。

 

「そういえばさ……アミーシャって怖いものってあるの?」

 

「……え、」

 

「あ、この肝試しは除いてね」

 

 急に聞いてきたのは私にとっての怖いもの……怖い……戦闘してる時とか?それとも日常的に……どんな系統でもいいのだろうか。

 

「……知ってる人が、傷つくこと、とか……?」

 

「あ、そっち系できたか。他は?」

 

「……わからないこと、かな」

 

「?」

 

「相手のことがわからない……とか、んん、表現難しいな……知らない人って事じゃなくて……そう、気配や性質が警戒できない相手、とか。そういう人って簡単に懐に入り込めちゃうから……」

 

 心の内を読めない、行動を掴めない相手に挑むのは……どれだけ自分の能力や限界(こと)をわかっていても私にとっては怖いことだ。

 自分はどれだけの力配分で挑めばいいのか、どこまで温存しても耐えられるか……例えば弱い敵1体にSクラフトのような大技を連発してたらこの後に来る強敵相手に戦えるだけの余力が残らないかもしれない。例えば弱いと思っていたら回復力が強すぎて倒しきれないままに長期戦をさせられることになるかもしれない。もちろん、戦略を一歩間違えれば命に直結することだってある。

 

 私だってそんな命のやりとりが日常茶飯事だったから……まぁ、別の方法にすり替えて対処できちゃったから、してはいたのだけど……どんな相手でも油断はしちゃダメだ。

 

「そっか……俺もさ、渚君見て思ったんだよね。怖くないことって怖いなって。……アミーシャは意識飛ばしてたから知らないだろうけど、渚君、鷹岡を倒したあと……誰にも少しも警戒されないで俺等の中に戻ってきた。力もケンカも、俺が100パー勝つよ?……でも、アミーシャの言うとおり、警戒できないって怖いなって初めて知った」

 

 ……確かに、出会った時から私もそれは思ってた。渚くんは、何があっても変わらない。それが彼特有の武器のように感じる。

 

 渚くんはどんな状況であっても、いつもと一緒を再現して冷静に動けるんだ……その様子に周りの人は安心感を覚え、私たちからすればありえない状況なのに本人も周りも少しも取り乱さず、何も変わらないんだ……その様子に、個人的には警戒できない恐怖を感じる。

 渚くんは無意識にそんな性質をもっている人なんだと思う……どんな所へもすぐに溶け込んでしまえる、暗殺や潜入にとても適している性質だと思った。それを、カルマも察している。

 

「アミーシャも似たようなものだけどね、普段の様子じゃ絶対に警戒できない小動物って点で……それでいて、気づかれないように牙を隠し持ってる、そんなトコは渚くんにそっくり」

 

「……っ……」

 

「でも……負けないけどね。先生の命をいただくのは、この俺だよ」

 

「……ふふ、カルマらしいね。私も、負けないよ」

 

「いうねー……ところで、」

 

 会話をやめて足を止める。カルマが懐中電灯で照らす地面には……ラジカセと何やらたくさんの色の丸が描かれたシートが敷いてあり。その近くには『琉球名物ツイスターゲーム』の立て看板が……ついに殺せんせーの前振りがなくなったし、特にやらなきゃいけない条件の提示すらない。

 

「初っ端のカップルベンチから薄々察してたけどさ……あのタコ、怖がらせてくだらねー事企んでるみたいだね」

 

「……ついすたー、げーむ……なんか文字だけはドロドロしてるけど……名物?」

 

「これが名物だったら色々やばいと思うよ……無視して通り過ぎるのが吉……っ!?」

 

 今までのよくわからないやつもカルマが教えてくれて、なんの問題もなくクリアしてきたんだから、当然これも教えてくれると思っていた。なのに、彼は丸無視して素通りしようとするから慌てて足を止め、握りしめた手に軽く力を込めて、前に進めないように踏ん張る。

 

「どんなげーむなの?」

 

「……、……教えて欲しいの?」

 

「……?うん!」

 

「……えぇ……俺だけ拷問じゃね……?」

 

「なんで……?」

 

「これ、……、……まぁいっか……めちゃくちゃ癪だけどノせられてやろ」

 

 これ殺せんせーに見られたら変に勘ぐられるか、からかいのネタじゃね……主に俺の、とかカルマは小さい声でブツブツ言ってたけど、私がやりたいって期待して見ていたら大きなため息ひとつついて、1回だけね、とツイスターゲームの方へと歩き出した。

 

 

 

 

 

「……と、次アミーシャ……左手が赤ね」

 

「ん、と……はい」

 

「うまいじゃん。次は俺……アミーシャ、上通るよ」

 

 体全体を使ってCDの指示に従いながら、両手足でシートにある色を触っていくゲーム……2人でやる時はお互いの体を上手く避けながら色を触っていく、それ自体は元々こういう動作が得意なこともあって難しくはなかったんだけど……

 

「!……か、カルマ……その、……」

 

「……こうなること分かってたから、俺は渋ってたんだけど……?」

 

「ひぅっ!?こ、こえ、……みみ、くすぐったい……っ!」

 

 ゲームを進めていくうちに、自然とお互いの体を密着することになるなんて知らなかった……なにより、カルマの顔がものすごく近い。あのおでことおでこを合わせた時くらい……いや、好きに動けない分今の方がツラい。

 引っ付くのなんて今更だし、恥ずかしいなんて思ったことないのに……ゲームのためとはいえ、自分のタイミングで分かってて触れ合うのと引っ付くつもりがないのに触れ合うのとは全然違う。……今、私は真っ赤になってる自信がある。

 

 最初は淡々とゲームを進めていたカルマなのに、距離が近くなって腕や足を交差し始めた時くらいから、開き直ったのかわざと息を吹きかけてきたり声を低くして喋ったりと、やりたい放題になってて……おかげでなんか恥ずかしくて、くすぐったくて仕方なく、だんだん音楽に集中できなくなってきてて……

 

「ほら、次右足を黄色……」

 

「う、うん……んー……」

 

きゃーーーーーーッ!?化け物でたーーッ!!

 

「ふぇっ!?」

 

「あ、尻もちついたね」

 

 洞窟の中の、どこからか響き渡った悲鳴……これ、殺せんせーの声かな……に驚いて、ただでさえ集中力が落ちていたからお尻を地面につけてしまった。

 ギリギリお尻をつかないように耐えていたから、尻もちを着いても痛くはないんだけど、今の格好は地面に大の字で仰向けに寝転んでいるようなもので……私のすぐ真上に距離を開けないでカルマがいて、私を見下ろしている。……ゲームそのものは私の負けだ。負けはいいんだけど、……近い……っ!

 

「どう、ツイスターゲーム初体験のご感想は?」

 

「う……、ゲーム自体は難しいものじゃないんだけど……、カルマって、その、カッコイイんだもん……こんな、まともに動けないのに近くに顔近づけられたら、……ドキドキしすぎて、心臓こわれちゃうかと思った……」

 

「…………。」

 

「かる、ま……?……わ、」

 

「……、……っぶね、理性トぶとこだった……何この破壊力……知ってたけど」

 

「んんッ、……くすぐったい、」

 

 なんだか急に恥ずかしくなって、口元を手で隠しながら素直に今思ってることをそのまま伝えてみたら、カルマは私の上で目を見開いて固まり……次に体を支えていた腕の力を抜いて、私の上に体重を乗せて覆いかぶさってきた。

 私の肩のあたりにカルマは顔を埋めてもごもごと何か言っているから、話す息が当たってくすぐったい。近くなればなるほど、ふわりと彼の体から不思議な香りを感じる……私にとっては何よりも慣れ親しんだ安心できる香りだ。ついすたーげーむ中とは違って体を支えなくていい分、自由な腕を彼の背に回して、軽くぽんぽんと叩いてあげる。

 

 

 

 

 

 とても長い時間そうしていた気もしたけど、実際は数分もなかったと思う……その格好のまま時間が流れていったが、ゆっくり体を起こしたカルマは、一緒に私のことも抱き起こしてくれた。

 洞窟では、まだ殺せんせーの叫び声が響いている……だんだん近づいてる気がするから、もうすぐここまで来るんだろう。

 

「ごめん、落ち着いた……そろそろ出よ」

 

「……うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海底洞窟を抜けた出口の近くには、先に入ったクラスメイトたちがなんとも言えない顔をして立っていた……やっぱり私たちと同じように、途中のよくわからない脅かしもどきに疑問しか感じなかったらしい。

 

「あ、アミサちゃんたち出てきた!」

 

 私たちが洞窟を抜けたことに気づいた子たちが何人か近づいてきて、出口のすぐ近くから立ち止まっても邪魔になりそうにない広い所へ移動する。そこへ行く間に私のパニック話がカルマの口から語られて、自分の暴走具合に恥ずかしくなって顔を覆った……私、そんなことしてたの……!?

 

「そーだ、アミサ達2人はやった?殺せんせーの仕掛け。……初っ端のカップルベンチみたいにやらなきゃ進めないのもあったけど、基本スルーしてもいいやつばっかだったでしょ」

 

「殺せんせーは文句言ってたけどな……」

 

「んと……イチャイチャ?がみたいお化けと……ぽっきー食べて……ついすたーげーむと……うん、見つけてないのがなかったら、多分、全部やったと思う」

 

「ホントに!?ポッキーゲームとかツイスターゲームも!?」

 

「うん、ぽっきーげーむ、はカルマがいっぱいの方折ったからカルマの勝ちで、あ、チョコの方もらったの、おいしかった。……えと、ツイスターゲームも私が尻もちついて負けちゃった」

 

「「「(ツイスターゲームはともかく、ポッキーゲームは嘘を教えられている……!)」」」

 

「ポッキーゲームやったのか?!真尾、今度俺とも……」

 

「カルマにぽっきーげーむは、カルマ以外とやっちゃダメなゲームって教えてもらったから、ダメなの、なんでかは知らないけど……ごめんね」

 

「「「(サラッと予防線が張られている……!)」」」

 

 この後、洞窟から悲鳴をあげながら飛び出してきた殺せんせーは、ものすごい息切れと何かに謝り倒しながら、すぐさま地面に突っ伏した。

 

 なんか、私たちを脅かして怖がらせる側だから怖くないと思ってたのに、綺羅々ちゃんが口紅を目の周りとか口を裂けてるようにメイクして、懐中電灯で顔の下から照らして逆に脅かしてきて、それを見たら自分の方が怖くなって、洞窟中を飛び回っていたらいろんな怖いものを見つけちゃって、もう脅かし役なんてできないって飛び出てきたらしい。

 突っ伏したまま、日本人形が……玄関の古びたこけしが……ってぶつぶつ言っていた。私たち側でわざと殺せんせーを怖がらせたのはほぼ綺羅々ちゃんだけな気がするんだけどな……要するに、自滅、したんだ……

 

「怖がらせて吊り橋効果でカップル成立を狙ってた、と」

 

「結果を急ぎすぎなんだよ」

 

「怖がらせる前にくっつける方に入ってるから狙いがバレバレ!」

 

「バレてないのアミサだけだよ多分」

 

「わ、私!?私だって何を狙ってるのかとか、何がしたいんだろうなーって、よく分からないことやってるなってのは気づいてたよ?」

 

「うん、目的は察してないんだなーそれ……」

 

 全員が洞窟から出てきてから、吊り橋効果でカップル成立?とかよく分からないことを叫んで殺せんせーは泣きギレしていたけど、莉桜ちゃんとかメグちゃんとかになにか諭されてたくさん頷いていたから、きっとだいじょぶ、だよね……?

 

 なんか、殺せんせーがグズグズと泣きながら何かを呟いた瞬間に、カルマを含めて私以外がスマホを持って殺せんせーの方に集まったけど、……ホントにだいじょぶだよね!?

 

 

 

「何よ、結局誰もいないじゃない!怖がって歩いて損したわ!」

 

「だからくっつくだけ無駄だと言ったろ、徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

「うるさいわね男でしょ!美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!!」

 

 

 

 そして……私たち生徒だけが参加していると思っていた肝試し?に、イリーナ先生と烏間先生も参加していたらしく最後に洞窟から出てきて……なんか、イリーナ先生がコソコソしてる?

 

 それを見た殺せんせーも復活して、これから明日の朝帰るまでにまだ時間があるし……ということで。急遽、私たちの暗殺旅行、最後の作戦が行われることになった。

 

 

 

 

 





「いいんです、カップル成立は失敗しましたが、狙っていた写真は撮れましたから!」

「どれどれ……カルマとアミサの肝試し風景!?え、せんせーそれ私にちょうだい!」

「俺も欲しい!」

「何に使う気だよ!?しかも結局見てたわけ!?殺せんせー、消し……」

「ま、待ってくださいカルマ君!君にはこれでどうでしょう……?」

「…………、他は?」

「「「(一体何の写真だったんだ……!?)」」」





「というか、殺せんせーさ……恋愛(スキャンダル)がどうとか言ってるけど、大部屋でのこと一切知らないんだよね」

「それな、速攻烏間先生に分断されてたし」

「……多分、この肝試し以上に殺せんせー見れなかったことを発狂するよな」

「告白邪魔した時も相当焦ってたもんな」

「……話す?」

「……面白そうだからバラしてもいいと思う」

「アレだ、毒にやられてた真尾が殺せんせーのいなかった間どうだったかってていで話そうぜ。俺等は真尾の体調を心配してるだろう殺せんせーに見られなかった詳細を話すだけだ、何の罪もない……教える都合上、ついでに誰かの話も出ちゃうかもしれないが」

「採用」

「天才」

「だよな。なー、殺せんせー……いい情報あるんだけどぉ?」

「はい、どうかしましたか前原君……」



++++++++++++++++++++



ここの話に来るまでの約50話、オリ主は後ろから声をかけられたり触られるとかなり大げさに反応してるんですよね。ここでそれについてやっと、言えた!
オリ主はお化けが怖いのではなく、後から急に、という気配を読まない慣れた相手の行動に、気づけないことに驚き、怖がってたのです。

ツイスターゲーム、やらせてみたら、カルマ(の理性)が危なかったらしい。ちょっとだけR15に足を突っ込みかけました。水着披露の時にも中村さん胸揉んでますし。

次回、イリーナ先生のくっつけ大作戦。
……と、殺せんせーがあの大部屋での話を知っての話、になるかもしれない。



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