暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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中間テストの時のような女子会ではなく、今回はイリーナ先生放課後塾メンバーが中心となるお話です。

前回から、ギクシャクしてしまった2人が元に戻るまでのお話。


57話 女子会の時間

 

渚side

 殺せんせー暗殺計画のための2泊3日の沖縄リゾートでの滞在が終わり、僕等E組は東京へ戻るための船の中で揺られている。

 当たり前だけど行きと同じように6時間かかるから、殺せんせーは多分既に行きと同じようにテラスで船酔い起こして溶けてると思うし、みんなも思い思いの場所でくつろいだり、景色を楽しんだり、ゲームしたり、好きなことをしてゆったりしてると、思うん、だけど……

 

「はっ、はぁっ、ねぇ渚君!アミーシャ見てない!?」

 

「え、」

 

「チッ、ハズレか……ッ!」

 

「え゛、聞いた意味は!?顔見て判断したよね?!」

 

「今近くにいないのは顔見ればわかるよッ」

 

「もう行っちゃったし……」

 

 ……なんか、明らかにゆったり過ごさず、船の中を走り回ってる人がいるんだよね……赤羽業っていうんだけど。

 見てわかる通り、カルマ君がアミサちゃんと一緒にいたいのか話したいのか、彼女のことを探してるんだけど……全然捕まらないらしくて、彼女がいそうな場所、頼りそうな人選に声をかけながら走り回ってる。船が出港して自由時間になってちょっとしてからずっとコレだから……既に1時間くらい探してないかな。

 

 ちなみに彼女が船に乗りそびれたってことは絶対に無い。なぜなら、

 

「ふーっ、次はあっちに行けば見つからない気がする……」

 

「アミサちゃん、カルマ君がずっと探してるよ……?」

 

「うん、知ってる……でも、捕まらないつもりで逃げてる」

 

「…………;」

 

「……ごめんね、私が来たこと黙ってなくてもいいから」

 

 普通にアミサちゃんが船の中を逃げ回ってるところに、何度も遭遇してるから。というか島のホテルを出てから4班で一緒に船に乗り込んで、割り当てられた船室に荷物を置いて、烏間先生の号令で解散する所までは一緒にいたわけだから、元々船にいることは知ってる。

 だけど……なんでこの2人、自由時間になった途端、延々と追いかけっこみたいなことしてるんだろう……

 

「ねぇ、渚ー……って、何その浮かない顔」

 

「中村さん……いやー……僕の前を何度も通り過ぎてく台風が2つ……ちょっと、ね」

 

「あーね、あたしもこれについてなんか知らないか聞きに来たんだけど知らなそうね。……これ、アミサが逃げてんのよね?……渚は捕まると思う?」

 

「うーん五分五分じゃないかなぁ……本気で逃げたら見つからない気がするけど、こうして姿見せてるわけだし」

 

「それはそう……でもさすがに室内は無いでしょ、入ったとして袋小路よ?」

 

「いや、カルマならさっき俺等の船室にも来たぞ」

 

「『俺の意表を突くために紛れてる気がする』ってな!」

 

「実際カルマが覗きにくる直前までアミサは隠れに来てたわよ……まったく、お互いどんな嗅覚してんだか」

 

「速攻出てったけど……ガチであいつら何やってんだ?」

 

「…………;」

 

 寺坂君達の、というかそれぞれの船室にまで乱入して追いかけっこしてるのか、あの2人;というか時間差で同じ場所に来てるあたり、本トにお互いの思考回路分かりあってるんだなぁ……それでも何がしたいのかよく分からないことに変わりないんだけど。

 

「大方、告白されてどう顔を合わせればいいか分からないアミサと、言うだけ言って返事待ちだからもう隠さなくていい=近くにいたいカルマってことでしょ」

 

「背景は分かりやすいわよね……やってる事が謎だけど」

 

「6時間やり続ける気かァ?」

 

「流石にないだろ、体力尽きるって;」

 

「だよな!……そうだよな?」

 

「自信無くさないで吉田君……」

 

 E組全員と関係者が乗ってもまだ広いと感じる客船とはいえ船は船、そんなに広さがめちゃくちゃあるわけじゃないから、どこかで顔を合わせるでしょ。

 そんな風に僕等はお互いにE組名物となりつつある2人の奇行を結論付けて、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 まさか、本トに6時間逃げ続けて、追い続けて、帰りの点呼の時ですらいつの間にかアミサちゃんが消えてるとは思わなかったけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コミュニケーションアプリ

【ビッチ先生放課後塾(6)】

《RIO :で、なんであそこでチキったんですか?

    ビッチ先生

 

《メグ:いい雰囲気だったんですから、

    最後まで完遂してくださいよビッチ先生

 

《とーか:プロの技見たかったなー?ビッチ先生

 

《hinano:ううぅ、私、隙あれば略奪しますからね

     ビッチ先生〜(><)

 

《Irina:……あんた達には少しだけ感謝してあげるわ

    でもね、大人には大人の事情があんのよ!

    あとビッチビッチビッチうるさいわね!

 

《アミサ:イリーナ先生、数が1個たりないよ?

 

《Irina:ビッチの数の事言ってんじゃないわよ!

    ていうかアミサ、あんたは結局どうなのよ?

 

《とーか:そうだよー、私達気になってるんだから!

     あのあと有希子ちゃんに抱きついたまま

     なんにも説明しないまま寝ちゃうし、

     帰りの船ではカルマ君を避けまくってるし

 

《RIO :カルマ本人が言ってたからぶっちゃけるけど、

    あんた告白されたんじゃないの?

 

《アミサ:……そう、なんだけど……

     その、好きだと嫌なことも笑って聞けるの?

 

《RIO :は?

 

《とーか:え?

 

《hinano:ん?

 

《Irina:はぁ?

 

《メグ:アミサ、言葉たりないからもうちょっと詳しく

 

《アミサ:くわしく……悩み、聞いてもらったの

     でも、かなり嫌な気持ち聞かせたから、

     カルマも嫌になってるかと思って……

     そしたら、重いものを一緒に抱えるから、

     苦しいとか嫌な気持ちを溜め込むくらいなら

     俺に吐き出せばいいって言われたの

     嫌な気持ち聞かせたのに

     なんでそんな優しいこと言えるの?

     って聞いたら、好き、だからって……

 

《メグ:うん、だめだ。詳しくはなったけど

    余計に情報が増えた……!

    言いたいことは分かった気はするけど

    絶対これだけじゃないよね?

    まだまだあるよね!?

 

《ヒナ:あーちゃん自分のこと説明するの苦手だから;

 

《RIO :埒が明かないし直接聞きたいわね

 

《Irina:あんた達、明日は空いてるの?

    空いてるなら椚ヶ丘駅の裏手にある

    ○△って店分かるわね?

    そこへ11時に来なさい。アミサは強制よ

 

《とーか:はい!

 

《hinano:は〜い!

 

《メグ:わかりました!

 

《RIO :ゴチになりまーす!

 

《Irina:割り勘に決まってるでしょ!!

 

《アミサ:あ、そのお店……

     カルマと雨の日限定メニュー食べたとこ……

 

《Ilina:それについても話しなさい!

 

 

 

 

 

【(2)】

~チャットのスクリーンショット~

~チャットのスクリーンショット~

 

《Irina:というわけで、来なさい

 

《:……ビッチ先生、というわけで、の意味が、

 

《Irina:あんたが蒔いたタネでしょうが。来なさい

 

《:……わかったよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 椚ヶ丘中学校特別夏季講習……私たちE組が一学期期末テストで勝ち取った沖縄旅行、またの名を殺せんせー暗殺旅行を終えて家に帰ってきてからのこと。たったの2泊3日のことなのに、濃すぎる旅行だった……前半も非日常な出来事ばかり集まって忘れたくても忘れられないものばかりだったのに、私の思考はこの旅行の最後の最後に全部もっていかれてしまっていた。

 

 

 

〝……アミーシャのことが、好きだから〟

 

 

 

 日本に来て、周りの考えに馴染めずに孤立しながら送っていた中学生活の中、初めてできた友だちの1人であり、誰よりも信頼できる相手として慕っていたカルマ。出会った中学1年生の頃から今まで、それこそ唯一の家族であるお姉ちゃんよりも近くにいて、支え、頼らせてくれた……気を抜いていられる居場所。

 そんな彼からの、私を異性として好きだという告白は、私の思考をぐちゃぐちゃにしてしまうのに時間はかからなかった。

 

 帰ってきてから1人で考えてみて、もう1週間が経つけど、私の気持ちに答えはでなくてモヤモヤしていて……そしたらうまい具合にイリーナ先生が話題を振ってくれたから少しだけ打ち明けてみたら、放課後塾のみんなが相談に乗ってくれるとのこと。

 今、私は……陽斗くんの仕返し大作戦の時くらいに、カルマと2人で来たカフェでケーキをつつきながら、放課後塾のみんなに話を聞いてもらっていた。

 

「……えっと、つまり……カルマに悩みを話していたら、アミサのことを知りたい、1人で苦しもうとするくらいなら一緒に抱えさせてほしい、頼ってほしいって言われた、と……、……これってアミサのことを誰よりも1番近くで守りたいって解釈でいいのよね?」

 

「だと思う」

 

「異議なし」

 

「同じく〜」

 

「で、あんたは何が分からないわけ?」

 

「……カルマに、私のことが好きだって言われて……前、浅野くんにも女性として大切に想ってるって、言われて。……修学旅行の時、みんなに『好き』の気持ちはどんななのか、教えてもらったけど……やっぱり、友だちの『好き』と何が違うのか分からなくて、何も言えなくて」

 

 みんなはなんでか意外だって言うけど、好きって感情くらい、私にだってわかる。お姉ちゃんも、お世話になった人たちも、E組のみんなも、先生たちも、みんなみんな大好きだ。もちろん、カルマのことだって大好き……渚くんと一緒に私を助けてくれた人で、ずっとそばにいてくれている人だから、嫌いなはずがない。

 

 だけど、イリーナ先生みたいに烏間先生に対する『好き』と、私がみんな同じように思っている『好き』の種類は違うんでしょう?陽菜乃ちゃんも、烏間先生のことを『好き』って言ってた……これも、きっと私の思ってるものとは違う『好き』、なんだよね?

 好きと言われたら何か返事を返さなきゃ……だけど、私は何を言えばいいのかわからなくなって、目が合っても避けてしまっていた。

 

「2年近く意識したことなかったのに、やっとカルマが男なんだってちゃんと自覚して、近くにいるとドキドキするってことが分かってきたとこでいきなりだもんね」

 

「……うん、私もカルマのことは好きだよ……でも、これがカルマの求めてる好きと一緒かって言われると……自信なくて……」

 

「やっぱ難しいよね、友情と恋情の違いかぁ……」

 

「こればっかりは感覚の話になってきちゃうから、外野が教えられないもんね」

 

「これこそビッチ先生の出番でしょ。恋愛ナウなんだし」

 

「…………。」

 

「はぁ!?……あぁもう、そんな期待の目で見るんじゃないわよアミサ!……私は、『新鮮だな』が最初よ」

 

「しんせん……?」

 

 現在進行形で恋愛をしているイリーナ先生の『好き』を感じた最初をワクワクしながら聞いてみると、イリーナ先生はタブレットを叩きながら答えてくれた。作業か仕事をしてる合間に、私のために時間を作ってくれたのかな……ちょっと申し訳ない。だけど、放課後塾のみんなも一緒に話を聞いてくれるのはホントにありがたい。

 お昼過ぎの喫茶店だからお客さんは少しずつ入れ替る……そんなザワザワした空間の中で、イリーナ先生の答えはしっかり届いた。だって、私の思う好意というものと全然違っていて、思わず聞き返してしまった。だって、新鮮って……それは好ましいって感情じゃないんじゃないの……?

 

「そ。……私は殺し屋、自分自身の体全体を最大限に魅せて油断を誘い、それで結果を残してきたプロよ。私のテクでオちない男はいるはずがない……と思ってたわ。……なのにあの堅物ときたら……全く見向きもしないで軽くあしらうし、挙句の果てには普段着だけならともかく、女なら軽々しく肌を見せるなとまで言ってきたわ!こちとらこれが仕事だっての!!」

 

「び、ビッチ先生どーどー……」

 

「ていうか烏間先生的に普段の露出はオーケーなんだ……」

 

「はー……はー……ありがと桃花。……でも、これって遠回しに自分を大事にしろって意味だったのよね。女を武器にする私はあんまりいい目で見られない……でも、それが私のスタイルだし、私そのものなんだから変えるつもりはまったくないわ。……カラスマは、そんな私を女性として、プロとして対等に見て、同僚として受け入れて扱ってくれてるって分かった。それに気づいちゃったらもうダメね」

 

「自分をありのままで受け入れてくれる人ってこと……?」

 

「作った自分とかじゃない、中身を見てくれる人って素敵だよね!」

 

「あとはー……オープンでもさりげなくでも自分の欲しい言葉とかして欲しいことを、サラッとやってくれちゃったりねー」

 

 イリーナ先生は新鮮だなって感じたあとに、どうしてだろうって烏間先生のことをちょっと意識して……それで、先生のことをよく見るようになって、知らなかったいいところに気づいて、いつの間にか好きになってたってことなのかな。

 ありのままの自分を、受け入れてくれる人……か。それで、望む言葉、仕草……

 

 

 

〝死んでも、俺は一緒にいるから……離れないよ。……一人には、しない〟

 

〝だから、待ってて。俺が自信を持ってアミーシャの光になれると思えたら、ちゃんと言うからさ〟

 

〝……アミーシャ、迎えに来たよ〟

 

〝ま、連れてかれないように、俺が捕まえとけばいいんだけど〟

 

〝……抱えさせてよ……俺は、できる限りアミーシャのことを守りたい。一番近い所で支えたいし、頼ってほしい……誰よりも、それこそリーシャさん以上にアミーシャのことを理解したい〟

 

 

 

 カルマは何度も私が心の奥底で望んでいた言葉を投げかけてくれた。ずっと、誰にも言えない隠しごとをたくさんしてるのに、カルマはいつも1番に気づいてくれた。そばにいて欲しい時、救い上げて欲しい時、1番最初に迎えに来て寄り添ってくれる。

 上辺だけの私じゃなくて、私そのものを見てくれているから、そんな言葉が出てくる……私が、私自身のことを思いながら彼に言われた言葉で、嫌に思ったことなんて、全然ない……だから……他の人には感じたことのない気持ちは、確かにある。

 

「ま、恋はオチた方が負けとはいうけど残りは意地よ。ここまできたら、なんとしてでもオトしてやるわ……!見てなさいよ、絶対カラスマは△△に決まってるわ、⚫⚫して○○の××で……!」

 

「ビッチ先生、まだ昼間だよ!それにここ、カフェだから〜っ!」

 

「え、ビッチ先生それ詳しく……もごっ!」

 

「中村さんまでっ……どーもすいません……!」

 

 イリーナ先生は自分の恋愛を元に話していたせいか、だんだんとヒートアップし始めてしまって、こんな誰が来るかも分からない喫茶店で絶対大声で言ってはいけないワードを連発しはじめ……桃花ちゃんと陽菜乃ちゃんが慌ててなだめ始めた。莉桜ちゃんは悪ノリしてもっとすごい言葉を引き出そうとしててメグちゃんに口を塞がれた。

 

 ……英語の授業の時にこういうワード……普通に出てくるせいで麻痺しかけてるけど、解説のたびに新しくついてしまう、知らなかった言葉が分かるようになってくから、今の言葉の意味もわかってしまった。

 ……どうしよう、顔が熱いし、心臓がバクバクする……でも逃げるに逃げれなくてどうしようもなくて椅子に小さくなるしかなかった。その時そっと肩に触れる手に気づいて隣を見ると桃花ちゃんが少し笑いながら手を伸ばしていた。

 

「アミサちゃん、まだ答えが欲しいとは言われてないんでしょ?待つって言ってくれてるんでしょ?」

 

「桃花ちゃん……、……うん」

 

「だったら、まずはこれまで通りカルマ君や他の人からの関わりを素直に受け入れてみたら?それでなにか違って感じないかとか……特別に感じないかとか、アミサちゃんのペースで確かめてみなよ」

 

「…………でも私、今、避けちゃってる……これまで通り、できるかな……」

 

「……ふふ、じゃあなんで避けちゃうのか考えてみよう?何を言えばいいかわからなくて返事がすぐにできないから、それなら言わなければいいだけだもん。でも逃げちゃうってことは……それ以外にも理由あるんじゃない?」

 

「……、…………」

 

 桃花ちゃん、鋭い……答えようと思った言葉を先手打たれちゃった。でも、それ以外……桃花ちゃんが言うには私の様子を見ていると私が自覚できてないだけで、もう一個くらい理由がありそうだって言われて、もう一度考えてみる。

 

 顔を合わせるのが恥ずかしいから?……違うと思う。ドキドキするから……これもなんか違う、というか恥ずかしいと一緒じゃないかな。怒られる?……もっと違う、そんな嫌いになるような気持ちじゃなくて、こう、1歩踏み出せないだけで……

 

 ……あ、もしかして、

 

 

 

 

 

「『今までの関係と何か変わってるかもしれなくて怖い』とか考えてそうだけど、俺は変えるつもりないからね」

 

 

 

 

 

 そう、それだ、スッキリした……、…………え?

 

「あれ、カルマなんでいんのー?」

 

「ていうかいつから……」

 

「ビッチ先生に呼ばれたんだよ……その反応からして先生の独断か。いつからって……『私は「新鮮だな」が最初』ってビッチ先生が言ってた時くらい?そんで隠れて聞いてれば……」

 

「〜〜っ!?」

 

「はい逃げなーい」

 

「ビッチ先生、アミサの席を私と矢田さんで挟むように配置したの、これのためですか……?」

 

「そ、間だしすぐに逃げれないでしょ?」

 

 私の考えていたことを一言一句代弁するかのように声が聞こえて、慌てて振り返るとすぐ後ろの席にカルマがニタニタ笑いながら座ってた。え、いつからってそんな前から!?……ぜんっぜん気づかなかった……!

 いらっしゃーいなんて笑顔で手を振るイリーナ先生の手には、さっきと変わらずタブレットが……よく見たらコミュニケーションアプリの画面が表示されていて、私たちと話しながらカルマと連絡を取っていたらしい。お仕事じゃなくてカルマと会話してたってこと……?で、先生がうまく私の気を引きながら話を続けていたから全く気づけなかった、と。

 

 避けてたこともあって気まずくて、すぐに席を立って逃げ出そうとしたのだけど、私がそうしようとするのはお見通しだったみたいで両隣から手が伸びてきて、その上後ろからも捕まってしまった……他でもないカルマに。

 そのまま元の席へと座らされて、後ろからカルマが腕を伸ばして首に絡めてくるから、逃げるにも逃げられなくなった。

 

「はー、やぁっと捕まえた……帰りの船、あれだけ範囲狭いはずなのに下りるまで1回もエンカウントしないし、帰ってきてからも全く会えないし……」

 

「帰りの船……って、6時間もあったのに1回も!?避けてたのは知ってたけど、流石に顔合わせてると思ってた……アミサ、あんたどんだけ本気で逃げてたの?」

 

「だって、……」

 

「あら、その割にカルマ(アンタ)は最初、ここに来るの渋ってたじゃない?」

 

「……さすがにここまで本気で逃げられると燃えるより先に落ち込むって。だったらもうちょっと落ち着かせる時間やるしかないかなー……って」

 

 頭の中がぐちゃぐちゃなままじゃ、顔を合わせて話せる気がしなくて……今まで逃げ続けてた。それこそカルマが今言った通り、逃げると決めたからにはとことん逃げてた……一応補足しておくなら、《月光蝶》みたいな気配遮断クラフトとか、アーツは一切使ってない。使用と引き換えに体力持っていかれて疲れるのに、顔を合わせないようにしたい6時間なんて、とてもじゃないけど逃げきれないと思ったから。

 それで、避けはじめたまではよかったけど、今度は顔を合わせるきっかけを無くしてしまって……会いづらくなってしまい、結局今日まできてしまった。

 

「ま、恋愛なんて人それぞれよ。私のと自分のを比べてちょっとは考えはまとまったでしょ?あとは当事者2人で何とかしなさい」

 

「イリーナ先生……」

 

「……、で、……席を外すとかの気遣いはないわけ?」

 

「ないかな〜!」

 

「相談乗ったし気になるし、いいじゃない」

 

「後で知るか今知るかの違いだから」

 

「……矢田さん、私たちはなんか頼もっか」

 

「あ、じゃあこれ食べてみたいなー」

 

「ねぇプライバシーは?一応気持ちに決着つけるために呼んでくれたんだと思ってたんだけど」

 

「あんた達は、っていうかカルマがオープン過ぎて、最初からプライバシーもへったくれも無いわよ」

 

 話を聞いてもらってたはずなのに、いつの間にか避けてた本人と話すことになるなんて予想できるはずもないよ……この場には居るけど「私たちは関係ありません」とばかりに見て見ぬふりをしてくれてる桃花ちゃんとメグちゃんはまだしも、あとの3人はガッツリ見てる気満々だから、余計に私から言葉が出なくなる。

 

 そのままオロオロしていたら、私に背中から体重をかけていた彼が大きくため息をついてクシャりと頭を撫でてくれた……なんか、たったそれだけのことなのに、すごくひさしぶりの感覚だ……私が避けてたんだから当たり前なんだけど。

 何を言われるかは分からないけど、でも、捕まったからにはちゃんと話を聞かなくちゃいけない……私は少し怖々と、みんなに背を向けてカルマの方に体を向ける。

 

「……もう外野はどうでもいーや……アミーシャ、いくつか聞かせて。俺の告白、嫌だった?」

 

「!……え、と……や、じゃない……ただ、なんて答えればいいのか、わからなくて、その、」

 

「ん、焦んなくていいよ。……じゃあさ、俺は今までと同じように近くにいていい?触ったりとかしてもいい?」

 

「……もう、触ってると思う」

 

「あは、確かに。で、どう?」

 

「……うん、今までと一緒がいい……ごめんね、カルマ」

 

「……いいよ……はぁ、よかった」

 

「……、え、あれ、なんで……」

 

「あーもう、避けてたことそんなに気にしてたの?俺怒ってないって」

 

 私が勝手に悩んで自分で離れていたのに、こうやって迎えに来てくれて、責めもしなくて……罪悪感なのかはよく分からないけど、怒られてるわけでも、悲しいわけでもないのにポロポロと涙がでてきた。

 泣きたくて泣いてるわけじゃないから、勝手に出てきたそれをどう止めればいいか分からない。ちょっとだけ焦った顔をしたカルマが指で拭ってくれるけど、後から後から流れてきて……

 

「……寂しかったんでしょ、あーちゃん」

 

「……、さびし、かった……?」

 

「そ、だっていつも一緒にいたんだよ?あーちゃんはカルマ君とホントは一緒にいたいのに、自分の気持ちがわかんなくなってて避けてて、でも心は一緒にいたいって思ってるから余計モヤモヤして……今、近くにいるって約束してもらえたから寂しい気持ちもなくなって、安心したんだよ」

 

「……そ、なのかな……?」

 

「それなら俺も来たかいあるし嬉しいけどね」

 

 私の1つ1つの言葉に、行動に対して、カルマはホッとしたような、やわらかい顔で、私を撫でながら嬉しそうに笑うから……

 

 

 

 

 

「……私ね、カルマのこと、ちゃんと好きだよ」

 

「っ!」

 

「「「!!!」」」

 

 

 

 

 

 思わず、あの夕方の眠っているカルマを見て、心に浮かんできたその言葉が自然にこぼれ出ていた。

 目の前でカルマが、目を大きくして息を呑んで驚いてるのが分かる。周りで聞いてたみんなが、口を抑えて声をあげないようにしているのがわかる。

 

「みんなが言う通りね、私、カルマには、みんなと何か違う好きって気持ちがあるの……それは私でも分かってるの。でも、それがカルマと一緒の好きなのか……特別な名前を付けていいのかが分からない……自信がないの」

 

「……うん」

 

「でも、ちゃんと向き合うから。ちゃんと、この気持ちにこたえを出すから……それまで待ってて、くれる……?」

 

「待つって言ったでしょ。ありがと……今はその答えで十分めちゃくちゃ嬉しいから」

 

 ゆっくり、ひとつずつ、1人でぐたぐたと悩んでいたことを解消していく。カルマと話していくうちに、私のペースを意識して話してくれてるのが伝わってくる。そして、陽菜乃ちゃんが私の気持ちを代弁するように言葉にしてくれて、それをすんなり受け入れられた……そっか、私、寂しかったんだ。

 そんな私を苦笑しながら優しく撫でて、抱きしめてくれる手に、ひさしぶりに甘えることにした……ケンカしてたわけじゃないけど……これで仲直り、できたかな。

 

 せっかくカルマは、私がこたえを出すまで待つって言ってくれたんだし、カルマが私に好きだって言ってくれたことを分かった上で、他にもいろんな面が見てみたい。いろんな彼の姿を知ってみたい。私の気持ちに、名前を付けたいって改めて思った。

 

 今日たくさんお話を聞いてくれたイリーナ先生たちには、感謝してもしきれないくらい。それにずっと心配かけてただろうから……ひさしぶりに渚くんも一緒に、また、3人でそろって過ごしたい。何より、カルマと一緒にまだ過ごしたいから。

 いろいろあって、多くの経験をして、たくさんの感情を知った夏休みはまだまだ続く。だからこそ、忘れられないことを、たくさんしていきたいな。

 

 

 

 

 

「ま、俺はアミーシャのこたえを待つとは言ったけど……それまで何もしないとは言ってないからね。告白した分ちょっと余裕できたし……E組みんなは知ってるから遠慮する必要も無いし。もっと俺を意識してもらうためにも、……これから覚悟しといてよね、アミーシャ」

 

「……ん、……え?」

 

「あら、今まで以上にやる気じゃない」

 

「というか告白したからってさらにオープンになってない?」

 

「カルマ君ってあーちゃんのこと、こんな重いくらい好きだったんだね〜、愛されてていいなぁ」

 

「……がんばれ、アミサちゃん。カルマ君、外堀含めてアミサちゃんの意識外からどんどん埋めてるから……」

 

「屋上で本音聞いてる身からすると、ちょっと心配ではあるけどね……ヤンデレ化しそうで……」

 

 

 

 

 





「ていうかさぁ…………ねぇ、もう本トこの子可愛すぎるんだけど……!ツイスターゲームやった時も思ったけど、これで意識してやってないとか……俺の理性を殺しにきてるとしか思えない」

「手ェ出てないでしょうね……?」

「だいぶヤバかったけどセーフ。だから片岡さん落ち着いてくれる?」

「アミサ、ホント?」

「ちょっと?」

「え、え、どれのこと……?」

「どれって言ったけどこの子……!」

「誤解しないでくれる!?あと絶対分かってないから!」

「……それもそっか。でもちょっとでも嫌だったり恥ずかしい思いさせられたりしたら言いなさいね?」

「う、うん……?ツイスターゲームの時……耳に、」

「アミーシャ、考えないで頼むから」

「チッ、気になるとこで止めたわね」

「というか1番ツッコみたいのはアレよ、そのアミサの言う『今まで』の時点で恋人同士の距離感だと思うのよね……それってどうなの?」

「それは、まあ……本人達がいいならいいんじゃないかな……?」

「なにビッチ先生、自分がこーゆーのできないからってひがんでんのー?」

「はァ!?あんた、さっきまでしおれてたくせに生意気よッ!?」

「そーそー、生意気ー。生意気ついでにここでやったらしい雨の日デートの話聞かせなさい」

「は!?なんで中村が知って……」

「前原に聞いた。カップル限定メニューなのに気付かれてなかったらしいじゃん?」

「あいつ……っ!!」





「……ん?あら、通知……アミサから?」

《アミサ:イリーナ先生、
     今日は、ありがとございました。
     先生のお話聞いて、少しだけ、だけど
     わかった気がする。
《アミサ:あの、お店では聞けなかったから、
     ここで聞きたいことがあって……

「……ふふ、こうやって素直に受け入れるから可愛いがられるのよ。……って、続きが…………え」




《アミサ:イリーナ先生は、殺し屋。
     烏間先生は、防衛省で働く人……
     だから、イリーナ先生に教えてほしくて
《アミサ:違う世界に住む人を好きになっても、
     いいんですか……?



++++++++++++++++++++



仲直り編。
今回はオリ主が一方的に避けてしまっていたのを、イリーナ塾組がサポートするお話でした。
実はフリースペースでのイリーナ先生への相談を持ちかけるためにも解決に一役買うのはイリーナ先生と前から決めてました。

夏休み、原作ではあと夏祭りの話を残すのみなんですが……真ん中の出来事がごそっと描写されてないので、追加でお話を書いていきます。

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