暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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最近ありがたいことに日間ランキング30位前後に載ったようで、閲覧が伸びていてとても嬉しいです!
UAも120000が目前でドキドキしています。
いつも読んでくださる読者のみなさん、ありがとうございます!

今回はいろんな繋がりを意識したお話です。
ひさしぶりの人や、いつものメンバーが揃います。



───★お知らせ★───
この小説はクロスオーバー先のゲームである軌跡シリーズ、『閃の軌跡』『創の軌跡』発売前から動いていた小説なので、若干の時系列の歪みがありますが、暗殺教室側の時系列と合わせるためにいじっています。
特にクロスベルの再独立のあたり……本来この小説の時系列と照らし合わせると高1の3月に当たるんですが、それだと成り立たなくなるので……
ファンの方にはズレが気になるかと思いますが、構成上ご了承くださいませ

また、エニグマがクロスベル全域くらいしか通信範囲ないの忘れてました!!←
ここもふわっと改変します。
──────



59話 繋がる時間

 

 夏休みが始まってすぐ、大規模な暗殺計画に備えてみっちりと訓練をして、沖縄に行って一言じゃ言い表せないくらいのいろんなことを経験して、帰ってきてから放課後塾のみんなや浅野くんと会って……って、あれ、夏休みってこんなに短かったっけ……?

 昨年までの私のスマホには気軽に連絡を取れない身内の連絡先とカルマ、渚くんくらいしか入ってなかったのに、今ではE組のみんなや、その他縁を繋いだ関係者の情報でいっぱいだ。だからかな……ただ勉強するくらいしかやることがなくて長く感じていた1年生、カルマと渚くんに連れ出してもらう約束をしていたのに2人が疎遠になってきていて出かけられなかった2年生と違って、今年の夏休みが濃くて、短く感じる理由は。

 

「……あ、こんな所にも写り込んでる……」

 

 沖縄での写真を見返していると、結構殺せんせーが無理やり写真の中に写り込もうとしているのがわかる……だってほぼ残像だもん。

 多分みんなと一緒に写真に写りたいけど、自分が国家機密だから写るわけにいかないっていう先生なりの苦肉の策なんだろう。ほとんど幽霊みたいだけど……たまに黄色い触手の一部だけ写ってるのもあるけど……私たちがスマホを構える度に頑張ってるんだろうなぁ。1枚くらい、全身写ったのもあっていいのにね、合成ですって言い張るから。

 

 

 

 ─────ピリリリリ……

 

 

 

「え、この音……私のエニグマ……?」

 

 手に持ったスマホからじゃない電子音が聞こえて少し戸惑ったけど、私の持ち物の中には他にも呼び出し音がなるものがある……机の上に置いていた戦術導力器(エニグマ)を手に取って、受信ボタンを押した。

 

「……はい、マオです」

 

『アミーシャ?時間が取れたから通信繋げちゃったけど……今大丈夫だった?』

 

「お姉ちゃん……!うん、だいじょぶだよ」

 

 通信相手は私のお姉ちゃんであるリーシャ・マオ……約2ヶ月前にアルカンシェルへ行って直接顔を合わせてからも、時々ではあるけどこうしてお姉ちゃんから通信が来る時がある。

 

 2年前に起きた《クロスベル事変》……私のもう1つの故郷であるクロスベル自治州がクロスベル独立国として成立してから、《七の至宝(セプトテリオン)》の1つである《幻の至宝(デミウルゴス)》を模した《零の至宝》……それの力を増幅し、ゼムリア大陸中にある七曜脈を通じて世界とリンクできる神樹《碧の大樹》が崩壊するまでの事件。それが終わった後、……つまり、私がクロスベルからお姉ちゃんたちによって離され、日本に来た頃……クロスベルは2つの大国(エレボニア帝国とカルバード共和国)から侵攻された。

 2大大国から侵攻されても、特務支援課のみなさんと協力者の活躍もあってエレボニア帝国を中心に起きた事件を解決することができたらしい。だけど、クロスベルはまた再独立に向けて荒れてるらしくて……帝国からマークされる前にゼムリア大陸を離れた私はともかく、顔と素性の割れたお姉ちゃん含むクロスベル解放の立役者の人たちは、指名手配されてる人もいて……身を隠しながら動き続けている、らしい。

 

 だからこそ、外にいる私がこっちから下手に連絡して邪魔するわけにはいかないから……唯一の家族と話したくても、お姉ちゃんから連絡が来る時を待つしかない。

 いつもたわいのない会話をするだけだけど……それでも、なかなか会えない家族との時間は何よりも優先したい。

 

『そっちは夏休みだっけ、暑いでしょ体調は崩してない?』

 

「うん、今は元気だよ」

 

『今は……もう、また何か無理したんでしょ?』

 

「……う……、で、でも、解決したし……、……そう!お姉ちゃんが渡してくれた私のエニグマが役に立ったんだよ、みんなの、私の命も守ってくれたの」

 

『うーん……おかしいな……命の危険がないように巻き込まないために日本に送ったはずだったんだけど……』

 

「それは、ほら……私の今の居場所は特殊だから……」

 

『それはそうだけど……国に交渉しようか?生徒はあくまで一般人だから限度を考えてって……』

 

「それしたらお姉ちゃんも引っ張り出されそうだからやめよ……?だいじょぶだよ、私たちには心強い先生たちがいるから」

 

 E組のクラスメイトみんなの家族とは違って、私のお姉ちゃんは断ったとはいえ、誰にも言えないけどある意味関係者だから、日本の国家機密の事情(殺せんせーのこと)を知っている。殺せんせーの暗殺を統括する……というか、その国との繋ぎ役である烏間先生は当然そのことを知ってるはずで、それに直通で繋ぎをとるための手段もあって……うん、そう思うと、やっぱり私の立ち位置って結構特殊なんだな……

 そういう事情もあるし、私しかいない家の中ということもあって、殺せんせーの話題を特に気にせず話せるのは、ストレスがないって言う意味でもありがたい。鷹岡さんの襲撃事件についての話題は避けながら、この夏休み中の話をしていると、通信先のお姉ちゃんが笑っている声が聞こえた。

 

「……お姉ちゃん?どうしたの……?」

 

『……ううん、アミーシャの声が前となんか違うなって。……もしかして、カルマさんと何かあったの?』

 

「ッ!え、あ、な、なんで……っ」

 

『当たっちゃった?イリアさんもあれからずっと気にしてるし……あ、もしかして』

 

「こ、告白された、だけだからっ!まだ……私の気持ちが分からないままじゃ失礼だから……お返事、してないし……」

 

『ふふ……』

 

 唐突に出てきた名前に、ビックリして思わず反応しちゃった……お姉ちゃん的には軽く聞いただけだったんだろうな、楽しそうに笑ってるだけでそれ以上は深く聞いてこようとはしない。

 ……ちゃんと、私から言うまでは聞かないつもりだろう……話せば、聞いてくれるのかもしれないけど……

 

 ……そうだ、お姉ちゃんも……一緒にクロスベルに来た時は私たちの道を進むだけで他に何も見えてなかったのに、アルカンシェルに出会って、ロイドさんと出会って色々変わった。せっかくだから、お姉ちゃんにも聞いてみようかな……

 

「……ねぇ、お姉ちゃん……、お姉ちゃんにとっての大切な人って、どんな存在……?」

 

『!……そっかそっか、アミーシャも興味をもつようになったのね。……ふふ、これもカルマさんのおかげかしら』

 

「え……」

 

『アルカンシェルから帰る時に『リーシャさんにとっての光がアルカンシェルなら、俺はアミーシャの光になります』って言い切った男の人だもの。今まで恋どころか人の存在に全く興味のなかったアミーシャからそんな話題が出るってことは、カルマさんの頑張りがあったからでしょう?』

 

「…………、……」

 

 そ、その通り過ぎて何も言えない……私がそういうことを意識するようになったのは、全部カルマからのアプローチあってこそのものだから。

 ……そういえば、カルマは修学旅行の時に私のことを好きだって気づいたって……アルカンシェルに行ったのは6月だから、その時にはもう……って、あれ?

 

「私が知らなかったのに、なんでお姉ちゃんが知ってるの……?」

 

『あはは……私が言うのもなんだけど、アミーシャって人に興味が無さすぎて鈍いから……ちなみにあの場にいたアミーシャ以外の全員が気づいてたかな』

 

「うそ……知らなかった……」

 

 私の知らない内に、E組を飛び出すどころか大陸を越えて唯一の家族にいろいろ知られてるとは思わなかった……私が話さなくてもお姉ちゃんがカルマのおかげで私が変わったって察してるわけだよね。

 そんな前から……というか、さっきお姉ちゃん、イリアお姉さんも気にしてるって言ってなかった?イリアお姉さんまで私たちがどうなるか気にしてるってこと……?まだどうなるか分からないのに?

 

 私は大混乱してるっていうのに、お姉ちゃんはマイペースに話を続けようとしてるし……もう。

 

『でも、そうね……私にとっての大切な人、か……、……私にとっては迷いを断ち切ってくれた人、かな』

 

「……え……」

 

『だって、彼は警察としてずっと誰かの道標(しるべ)になって、それでいて現在進行形でたくさんの人を救っている存在だから。私とは真逆の世界を生きる人……協力者として関係を持ったとしても本当なら交わることもおかしい存在。だけど、アルカンシェルも道も捨てられなかった私に、全てを受け継ぐというならどちらも私だと示してくれた。だから、私は今私でいられてると思ってるし、私の世界から彼のためにこの地を守って、協力したいと思う……こんな感じでどう?』

 

「……、……そっか……みんなきっかけも、大切な人に思うこともこんなに違うんだね……」

 

 イリーナ先生の烏間先生に対する『自分の世界になかった新鮮さ』を感じたことで始まった恋も。

 

 お姉ちゃんの『自分の迷いを断ち切ってくれた』から支え続けたいと思うようになった願いも。

 

 浅野くんが言っていた『自分の意思を貫き通す強さ』を見て好ましく思ったという言葉も。

 

 カルマの、『同じ思いを抱えて、誰よりも知りたい』っていう想いも。

 

 想いの名前は全部同じ『好き』だとしても、想うようになったきっかけも、その言葉にのせた意味もみんな違うんだ。

 ……誰かに聞いて、こたえが出るわけじゃない。参考にはできても、結局は自分がどう思うか、どうしたいかってこと……分かってはいたけど自分で決着をつけるしかないんだ。

 

「ありがと、お姉ちゃん。ちょっとだけ……向き合い方がわかった気がする」

 

『お役に立てたならよかった』

 

 お姉ちゃんと話して、私の気持ちと真っ直ぐ向き合えそうだと思った時だった。

 

 

 

 ───ピーンポーン……

 

 

 

「あれ、誰かきたのかな……宅配?来る予定あったっけ……ねぇ、まだだいじょぶ……?」

 

『ええ、繋げたまま待ってるね』

 

「うん!」

 

 1度通信を切ってしまったら、もう一度かけ直せるとも限らないし、次に話せるのはいつになるのか分からない……名残惜しくてお願いしたら、お姉ちゃんも待っててくれると言ってくれて、安心してエニグマを机に置いてから玄関に向かう。

 なにか頼んでたっけ……たまにお姉ちゃんがサプライズって届けてくれることもあるけど、通信口で特に何も言ってなかったし……あ、言ったらサプライズにならないか。外に行くわけじゃないし、靴は履かなくていいかな……裸足のまま玄関の鍵に手をかける。

 

「は、い……ッ!?」

 

 なんにも考えずに玄関の扉を開けると……開いた隙間からグッ、と何かを差し込まれたと体に当たる前に気づき、反射的に後ろへ飛び退く。

 何、今の……ッ!すぐに迎撃する姿勢をとるために玄関横に置いてあった写真立てを左手に持って、何が来てもいいように構えをとった、んだけど。

 

「だーかーらぁ、モニター付きのインターホンなのになんで1回付けて確認しないのって俺何回も言ってると思うんだけど?」

 

「へ、……カルマ……?」

 

「うん……アミサちゃん、流石に不用心すぎるよ……」

 

「渚くんまで……」

 

 私が飛び退いたおかげで鍵が開いたままの玄関扉を躊躇いなく開けて入ってきたのは、回覧板を手に呆れたような、怒ったような声でこちらを見下ろしているカルマと、肩からカバンをかけてカルマの後ろで苦い顔をしている渚くんだった。

 ……多分、扉の隙間から差し込んできたのはカルマが持ってるあの回覧板だ……外に置いてあったのかな。

 

「なんだ、来たの2人だったんだ……ならいいyイタッ!」

 

 カルマと渚くんの2人だったら警戒しなくていいや、そう思って体に変に入っていた力を抜きながら、手に持っていた写真立てを靴箱の上に置いた所で、背後から硬いもので結構遠慮なく頭をパシンと叩かれた。

 頭を押さえて振り返ると回覧板を肩の上でポンポンと弾ませるカルマ……ってもしかしなくてもそれで叩いたの?

 

「ならいいやー……じゃないから。結果的に俺等だったからよかったけど不審者だったらどうするの」

 

「ちゃ、ちゃんと最初の回覧板当たってないもん!」

 

「いやその後実質侵入されてるからね?」

 

「僕等だから侵入されたって感覚ないかもしれないけど、一応招かれて入ったわけじゃないからね……?」

 

「あ」

 

「あ。じゃないんだよねー……たっく……」

 

 靴箱の上に回覧板を置きながら反対の手で私の頭を撫でる……叩いたところを撫でてる割には髪の毛をぐしゃぐしゃにしてる気がするけど……されるがままになっていると、お邪魔していい感じ?と改めて聞かれて1つ頷く。

 

 カルマが靴を脱いで玄関に揃える後ろで、困ったようにしていた渚くんがホッとしたように靴を脱いで靴箱にしまってるのを見て、思わず視線を行ったり来たりさせてしまう。いや、別にどっちでもいいんだけど、なんで2人は靴1つで違う脱ぎ方してるんだろうって思って、つい。

 

「えと、2人は何か用事あったの?」

 

「ううん、僕の個別課題をどっか涼しいお店でやろうと思って外に出たらすぐ近くでカルマ君に会って、アミサちゃんが暇してそうなら誘おうかなって」

 

「俺は普通に遊びに来ただけ〜。だって俺等もう終わらしてるし?」

 

「え。本トに2人とも旅行前に終わらせてたの?」

 

「「うん」」

 

「アレだけ旅行前に訓練詰め込まれてたのに……?僕なんて共通課題だけは終わらせたけどあとは全然だよ……」

 

「そのカバンの中身課題だったんだ……外暑かったと思うし、1回休憩してからお外行く?そのまま私の家にいてくれてもいいし」

 

「……とりあえず、お言葉に甘えて休憩させてもらってもいい?」

 

「ていうかモニター確認してないのもそうだけどさ、すぐに出てこなかったのはなんか忙しかったとか?」

 

「あ、ううん、通信してただけだからだいじょぶ……あ!エニグマ、付けっぱなし!」

 

「付けっぱなし……え、火とかじゃなくてエニグマを?」

 

「その前に通信って言ってなかった?もしかして……」

 

「2人とも、お部屋入っちゃっていいからねー!」

 

「……だ、そうだから手だけ洗って入ろっか。こっちだよ渚くん」

 

「勝手知ったる様子で……」

 

 予定外にカルマと渚くんが来てくれたから、つい玄関で長めに話し込んじゃった……お姉ちゃん、まだ繋げてくれてるかな?そんな思いで通信をしていた元の部屋に駆け込むと、エニグマは繋がったままだった……よかった。

 

「お姉ちゃん、お待たせ……っ」

 

『おかえりなさい、大丈夫だった?』

 

「うん、あのねあのね、遊びに来てくれたの!」

 

『うーん……オーブメント越しだと分からないから主語が欲しいかな……』

 

「えへへ……ほら、早く早く!」

 

「お邪魔します……アミサちゃん、洗面所借りたよ」

 

「お邪魔しまーす、……ひさしぶり、リーシャさん」

 

『……もしかして、ナギサさんとカルマさん?わ、おひさしぶりですね……ふふ、ちょっと噂はしてましたけど、こんなにすぐ話せるなんて思いませんでした』

 

「「噂?」」

 

「あわわわ……お、お姉ちゃん、それは内緒なの……っ」

 

『ふふ、はいはい』

 

 エニグマはスマホみたいにビデオ通話、みたいなことはできないから、お姉ちゃん側から2人の様子を見せてあげることはできないけど……面識のある2人だから、声を聞かせてあげたかったんだ。

 次世代以降の戦術導力器なら音声だけじゃなくて映像も送れるようになるらしいけど……今のクロスベルじゃ、私のサンプルも取れないしオーダーメイドするの難しいもんね……お姉ちゃんは持ってるのかな?

 

 そんなことを考えながらあとから部屋に入ってきた2人をエニグマの前に急かしたら、お姉ちゃんが直前に話してた恋バナ(恋愛相談)をふわっと言っちゃうから慌てて止める……それは流石に本人には聞かれたくない。

 

「あ、聞いてよリーシャさん。アミーシャったらさぁ、インターホンのモニター見ない上に開ける時も誰が来たか確認せずに扉開けるんだよ?危機感無さすぎるよね」

 

『え、そっちには玄関の外を確認できるカメラなんてあるんですか?アミーシャ、まだ未成年の一人暮らしなんだから使えるものはちゃんと使って自衛しないと……』

 

「う、その、危ない人なら倒しちゃえばいいかなって……」

 

「だから俺が簡単に侵入できてるってば。……待って、リーシャさんその言い方だとリーシャさんの家にはないってことじゃ?」

 

『ありませんよ?だって私なんかを襲いに来る人はいませんし……倒しちゃえば一緒でしょう?』

 

「……結局姉妹で一緒のこと言ってるの、気付いてる?」

 

「……そういえば、リーシャさんって治安のあまりよくない地区の安いアパートで暮らしてるってイリアさん言ってなかった?」

 

「ダメだ……この姉妹どっちもどっちだったっけ……」

 

 そしてこっちはこっちでサラッとさっきの私の行動をバラすカルマっていう……なんでみんな私の言動を話しちゃうんだろう……また私の頭を撫でてるカルマに、不満の気持ちをぶつけるつもりでちょっと強めに肘を入れてみたけど軽く受け止められてしまった、……残念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局、外に出るのもなんだし……とローテーブルに渚くんが殺せんせー作の個別課題を広げてる横でカルマも腰を落ち着けたから、私は2人にお茶と何か食べられるものを持ってくることに。

 もう少しなら通信できそうだというお姉ちゃんとエニグマを繋いだまま、キッチンで2人の飲み物とかを用意して戻ると、カルマが渚くんにちょっかいを出してるところだった。ちょっかい、というか……カルマはちょっとなら渚くんを手伝うつもりがあるみたいで、たまに問題を指さして間違いを指摘したり、勝手にページをめくって戻して先に解いた公式を使うよう誘導したりと手を出してるのが見える。たまーに問題をじっと見てたり、スマホを見てたりしてるだけに見えるのに、口に出さずにいきなり動くから渚くんがそのたびにビクビクしてる……

 

「えと、よければ飲んで……?食べれるのはこれくらいしかないけど」

 

「アミサちゃんありがとう……ちょっと疲れた……」

 

「お、気が利くじゃん。ありが、と……、なんで皿……っ」

 

「だってお盆ないもん……」

 

「コップだけ、重ねて持ってきてっ……ボトルで麦茶、別で持ってくればっ……よかったんじゃない……っ?」

 

「……あ、そっか」

 

「もう、本トかんべんして……っ、なんでそんないつもいつも可愛い行動更新してくんだよ……っ」

 

「カルマ君……もうなんでも可愛いって思ってるんだから意味ないでしょ」

 

「そうだけどさぁ……っ」

 

「……かわいくないもん、私がもっといい方法思いつかなかっただけだし……」

 

「そこでネガティブ入らないでよアミサちゃん;カルマ君は褒めてる……というかそういう所がツボなんだから」

 

 麦茶と作り置きしてたミックスジェラートを持ってくると、カルマは嬉しそうに立ち上がって私の手からこぼしそうな方、と麦茶を乗せたお盆代わりのお皿を受け取ってくれて、渚くんは考え疲れたのか広げていた問題集を床に置いて机に突っ伏した。

 それよりカルマがずっと笑ってるんだけど……だって家に来る人ってそんなにいないから、お盆なんていらないかと……平皿ならお盆と見た目似てるし……笑いながら運ぶから麦茶がずっと揺れてるんだけど、こぼれてないのがすごい。ちなみにコップはたまにカルマが遊びに来るってわかってから買い足したり、なんとなく気になって買ったりしたものがあるから、人数分どころかまだいくつか棚にあったりする。

 

「渚くんお疲れ様、ジェラート甘いし冷たいから休憩になるよ」

 

「ありがとう……カルマ君がちょくちょく手を出してくるから気が抜けなくて……」

 

「殺せんせーも学期末に言ってたけど、渚君って結構肝心なところでケアレスミスをする癖があるんだよ。あと、そこさっきやったじゃん?とか思ったらついね」

 

「うーん……嬉しいんだけど、せめて先に一声かけて欲しいかなぁ」

 

 市販品のアイスじゃなくて、レシピ通りに作ったミックスジェラートなら体力回復効果もあるし、暑い今にはちょうどいいかなと思って持ってきたけど、ホントにピッタリだったかもしれない。しばらくたわいない話をしながらジェラートの冷たさを堪能していると、エニグマではなくてスマホの方からピコピコ音が鳴った。

 

「?……あ、律ちゃん」

 

『アミサさん、私もリーシャさんとお話したいです!』

 

『アミーシャ、声がするってことはリツさんのスマホが近くにあるの?』

 

「そう、これで……はい、どうかな、聞こえる?」

 

『おひさしぶりです!』

 

『ええ、ひさしぶり……ふふ、これでコロセンセーさん以外のみなさんの声を聞けましたね』

 

「まぁ、殺せんせーは……一般家庭には呼べないよね」

 

「本人勝手に山を飛び出してるから案外その辺にいるかもしれないけどね」

 

「あはは……」

 

 言われてみれば、言い方が合ってるのかは分からないけど、こうやって集まる?のは約2ヶ月ぶり。殺せんせーとアルカンシェルの2人はいないけど、偶然かかってきたひさしぶりの連絡で、私の事情を知ってるメンバーがほぼ全員集まってるっていうのは、……ちょっと嬉しいな。

 

『アミサさん、浮かない顔してますが……どうかしたんですか?』

 

「え……、あ、……」

 

 それでもやっぱり顔が見れないことを残念に思っていたら、スマホから私の表情を見ていたらしい律ちゃんが、不思議そうに尋ねてきた。顔に出ちゃってたんだ……嬉しいって気持ちもあるのに、それよりも強く思ってしまうのは……やっぱり……

 

「……その、顔が見れないの、寂しいなって……ないものねだり、なんだけど……」

 

『……そうね……あの短時間でアミーシャに渡せたのは、2年前にあなたが使ってた戦術導力器(オーブメント)であるENIGMA Ⅱ(エニグマツー)だけだものね……あなたがクロスベルを離れた後、映像ごと通信で送れる導力器(オーブメント)も開発されて、どんどんアミーシャの持ってるスマホと謙遜ない性能になってきてるんだけど……流石に旧型機にこっちの性能は求められないもの』

 

「確かにスマホ同士だとしても、古いものと新しいものでは機能も仕組みも違うから、新しいもの同士でできることが新旧で使えないことって多いもんね……」

 

「ご、ごめんねお姉ちゃん、今も難しい時期なんでしょ?あの時に私の導力器(オーブメント)だけでも持ち出せたのは奇跡だって分かってるから……前まではスマホと導力器(オーブメント)の周波数を無理やり合わせてたのが、導力器同士で会話できるようになっただけ、断線しないで話しやすくなったし……」

 

『ううん、いきなり個別調整できてないオーブメントを使うことになるより使い慣れたものの方がいいだろうし……助けになればと思ってやったことだから。実際役に立ったんでしょう?』

 

「……うん……」

 

「アミサちゃん……そっか、前から導力器とスマホで音声だけなら繋げてたんだ……」

 

『すみません、お二人を軽率に傷つけることを言ってしまいました……』

 

「……、……ねぇ、ちょっと思ったんだけどさ」

 

「『?』」

 

 きっかけになった律ちゃんも一緒に落ち込んでしまい、私たち姉妹もしょうがないことと割り切るしかない、そう切り替えようとした時、会話を遮るように話し出したカルマの声に、私もお姉ちゃんもほぼ同時に切り上げてカルマに先を促す。

 

「アミーシャ、渚君も言ってたし俺も見た事あるけど、スマホと導力器(オーブメント)を繋ぐことは、できるんだよね?」

 

「う、うん……周波数を合わせて、だから……ちょっとした事で他の音を拾っちゃったり、切れちゃったりすることもいっぱいあったけど……」

 

「リーシャさんの戦術導力器(オーブメント)は、話を聞いてる限りこっちのスマホと謙遜ない通信機能と、動画や音声を送れる機能が付いてるんだよね?」

 

『え、ええ、そうですね……?他にもメール、カメラ、ボイスレコーダーなども搭載されてますが……』

 

「すごい……エプスタイン財団、開発が早いのはいいんだけど、切り替えるのが唐突すぎるから、対応するのが毎回大変なんだよね……」

 

『私が今使ってるのはエレボニア帝国のラインフォルト社とエプスタイン財団の共同開発らしいけどね』

 

「今までエプスタイン財団一辺倒だったのに?」

 

「脱線してるから話を戻すよー。その性能ならさ……律、アミーシャの導力器とリーシャさんの導力器を繋いで同じ性能を求めることは不可能でも、()()()()()()()()()()()()()()()、リーシャさんの導力器とアミーシャのスマホを繋いで映像を映すことはできないの?」

 

『「「『?!』」」』

 

「……そっ、か……今までは周波数を合わせて通信してたから、音声しか届けられないって思ってたけど」

 

「確かに!データそのものである律を通してだったら!」

 

『で、できるかもしれません!既にアミサさんのスマホには私の端末データが既にダウンロードされてますし……導力ネットワークにさえ上手く入りこむことができれば……!』

 

『リツさん、導力ネットワークはまだそこまでセキュリティに特化してないはずです。入り込みやすい分、危険も多いので気をつけてください』

 

『はい、やってみます!』

 

『アミーシャ、1度通信を切るね』

 

「……うん……っ」

 

 導力器同士での通信だとしても、導力器とスマホでの通信だとしても、その繋ぐ同士のそれぞれの機械ができることしかできないのが普通だと思ってたから、考えもしなかった。……違う機械同士をデータ(律ちゃん)を経由して繋ぐ、だなんて。

 カルマの思いつきを試すために、律ちゃんが1度姿を消した私のスマホを握る……もし、この思いつきが上手くいくのなら……私は既に通信の切れたエニグマを手放していた。

 

 

 

『───リーシャさんを見つけました!繋ぎます……!』

 

「───ッ!」

 

 

 

 プツン、とスマホの画面にノイズが走ったあと、私のスマホにはきっと私と同じように導力器を覗き込んでいるんだろう、お姉ちゃんの姿が映っていた。

 

 

 

『───アミーシャ、見える?』

 

「……ッ!うん、お姉ちゃん、見えるよ……」

 

『……ふふ、私からも3人の姿がちゃんと見える。リツさんは小窓でちゃんと映ってくれるのね?』

 

『私だってちゃんとお会いしたいですから!』

 

「律ちゃん……ありがとう……っ!」

 

 

 

 今まで。こっちに来てからアルカンシェルに行くまでは、距離が遠すぎるせいで不安定な通信が精一杯で、会うことすらできなくて。2ヶ月前に殺せんせーのおかげでやっと顔を見ることができたけど、その後はまた前と同じ……それでも、戦術導力器を手に入れたことで今までより長く、安定した通信ができるようになっただけ幸せだった。

 

 だけど、また、私の願いを叶えてもらっちゃった。

 

 

 

「……よかったね、アミサちゃん」

 

「思い付きだったけど、上手くいくもんだね。律に感謝しなきゃ」

 

『あ、そうです!リーシャさん、カルマさんとナギサさんのスマホも繋いで構いませんか?』

 

「「!!」」

 

『お二人とも連絡が取れる方が、といいますか、リーシャさんも連絡先はいくつかあった方がいいですよね……?』

 

『……そう、ですね。もしもの時のために、アミーシャ以外にも連絡できるようになるといいかもしれない……リツさん、お願いできますか?』

 

『わかりました!』

 

「これは……僕等リーシャさんにアミサちゃんの保護者認定されてるってことでいいのかな?」

 

「かもね。俺等からも近況報告できるようになるし、リーシャさんと連絡取りやすくなるのはありがたいなー……でも、こっちからはかけない方がいいんだよね?」

 

『はい。こちらはまだまだ荒れてますから……申し訳ないんですが、出れないことも多いと思いますし、作戦に支障が出ても困るので……』

 

「分かりました。僕等は連絡できるようになったとわかっただけ十分です」

 

「最悪どうしても伝えないといけないことがあった時は、律を経由して音を鳴らさないようにメッセージだけ送るようにするよ。いいよね、律?」

 

『お任せください!』

 

 

 

 

 

 ひょんなことから、私たち姉妹の経験談とそれらを合わせた2人の知恵、そしてE組の中でもデータそのものな存在である彼女のおかげで、私は新しく繋がりを手に入れることができて、……なんて、幸せなんだろう。

 

 これからは今まで以上に家族を身近に感じることができる、大きな繋がり……私は、みんなのおかげで手に入れた、大切な家族(リーシャお姉ちゃん)大好きな友だち(カルマと渚くんと律ちゃん)と繋がった端末を強く抱きしめた。

 

 

 

 

 

 





「……アミーシャ、元気そうでよかった」

ああ、いい仲間に恵まれたんだな。……あの2人が前に言っていた?

「はい、私にとっての大切なものがアルカンシェルで、あなたであるように……アミーシャにとって、1番大切なものになりつつある存在です」

そっか。……なあ、リーシャ……ずっと気にかかってることがあるんだ。あの時別行動だったから、アミーシャは見てないよな……あの資料、アレについては……

「……ごめんなさい。あの子が思い出すまでは、伏せて起きたいんです。本当なら、最期まで思い出して欲しくない……でも、あの子はそろそろ自分で気づいてしまうかもしれない」

……その時は、君や彼等が支えるんじゃないか。周りがなんて言おうと……たった1人の妹なんだろ?

「……はい、そうですね。すみません、もうすぐ決戦だと言うのに時間を取ってしまって。もしものためにアミーシャと話しておきたくて……もう、吹っ切れました」

ああ。……行こう、リーシャ。俺達の手で、クロスベルを解放するんだ

「はい、行きましょう───ロイドさん」



++++++++++++++++++++



 夏休みの話として、もう1つ新しく書いてみました。
 タイトル通り、『マオ姉妹』の繋がり、『さまざまな好意』による繋がり、『通信』としての繋がりと、いろんな繋がりを意識するお話になるようにしてみたつもりです。

 律の存在を有効活用しました!←
 でも、データである彼女ならできる気がする……

 最初はスマホと導力器をつなぐことはできないって書こうとしてたんですが、『舞台の時間・2時間目』でオリ主がまだ戦術導力器を手に入れてないのに、お姉ちゃんと通信する場面を入れてしまってたのを思い出して、急遽、周波数を合わせて音声だけ繋げられるようにしていたということにしてみました。

 律がいないと映像や画像などは送れないということに……つまり、最近あげた『メイドの日』の番外編で、ランディが写真を送るために、自分の導力器を使わずにオリ主のスマホを使ってカルマに写真を送るしかなかったという理由付けになったかなと思ってます。矛盾はなくなっただろうか……?

次回は夏祭りの時間にいきたいと思います!
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