2025年クリスマス~お正月の暗殺教室イッキ見に触発されて、1話書き上げちゃった『殺せんせークエスト』のお話です。
ホントなら単行本沿いでちゃんと全部書いてあげたいところですが……作者、ギャグを意図して書くのは苦手で上手くかける自信が無い。でもネタだけなら湧いてくる……なので書きたいところだけ抽出して書きます!!本編の息抜きでもあるので!!
余裕ができたらちゃんとシリーズとしても書きたい……(最後までしっかり書きあげる自信はない)
原作でいう、『Q2、赤い悪魔』の続きだと思ってください
では、どうぞよろしくお願いします!
渚side
魔王である殺せんせーを倒すべく烏間先生が提案したのは、北の洞窟に住む『赤い悪魔カルマ』『進化の魔術師リツ』『銀の狂戦士イトナ』『幻月の暗殺者アミサ』という大陸に名の知れた同世代の戦士達をE組に迎え入れること。その中でもカルマ君であれば、僕の幼馴染みだからこそ他の3人より引き入れるのに説得しやすいだろうってことで、僕らクヌギガオカ魔法学校のE組は彼の住処である洞窟……通称『カルマの洞窟』に来ていた。とはいっても、正直彼は一筋縄じゃいかない曲者だ。
いろいろ……カルマ君が殺せんせーに一撃を与えたり、他人を見下すと『運のよさ』がマイナスになるバグで自滅したり、殺せんせーがカルマ君を連れ去って回復の泉で風呂に入ったりと、とにかくいろいろあったけど、なんとかE組の制服を着せる所までは成功した。でも、僕らが流れを作って無理矢理仲間に加えようとしても思った通り本人は流されずに難色を示していて……まあ、ただ彼は根が優しいから僕らの押しにぐらついてくれてはいる。
「はぁ〜……まぁ、わざわざ来てくれたのもあるし、しょうがないからE組に入ってあげてもいいよ。殺せんせーにも少しは興味出てきたし」
「ホント!?」
「バグ持ちで残念な部分があるとはいえ……あいつの強さはお墨付きだ!」
「有名な赤い悪魔が加入すれば百人力だぜ!」
「しかも既に魔王へ一撃入れてるしね、期待しかないや!」
「!……カルマ、どこかいっちゃうの……?」
「ふふ、そう簡単にどこか行くわけないでしょ。もちろん……お前らもこーんな大人数で押し切ればいけるとか思ってないよね?E組加入はそっちの都合……こっちがタダでお願い、聞いてあげるわけなくない?」
「「「!」」」
「勝手にウチに来てこんだけ色々やらかしてくれてんだからさ、当たり前じゃん?この罠とか準備するのめんどくさいのに……ん?……うわ、落とし穴そのままだし勝手に落書きされてるしぃ……?」
「そういえば殺せんせーがここに来るまでのトラップに手を加えてたね……」
「いろんな意味で危ない加筆もしてたし間違っちゃいない;」
「あの黄色いの……服、返してくれないのかな」
「本ト、他のはいいとしても、……俺の居場所で俺の服を返さないのは、……ねぇー?勝手に剥いで勝手に着せてさ……」
「ねーって、マジでこの洞窟がお前の家なんか;」
「トラップしかけてんのもこの感じカルマだよね……」
「しかもこの辺荒らしたのってほぼ殺せんせーと自分のバグじゃん;」
「だってこの場所居心地いいよ〜?身も隠せるし、好きにできるし、何より人があんまり来ないから自由だし」
「え、人が来ないって……そうでしょうか?」
「そりゃダンジョンだからな;好き好んで居座るやつはそうそういねーよ」
「あ、そういうわけじゃ、……え?」
「それはそうだけど……、?」
「うん?別にそうでもないんじゃないの……?」
「……あの女の子たち、正直な人、かもしれない……」
「……ふぅん。あと、ここならいろいろやっても周りに影響が出ることも少ないからね、都合いいんだよ」
「マジで何やったんだよお前;」
カルマ君はマイペースに文句言ってるし……;まぁ、僕らがしたのはカルマ君を引き入れるためのダンジョン攻略とはいえ、住処にしてるところに入られるって自分の家を荒らされてるようなものだからイラつくのは分からないでもないけど。
不服そうに辺りを見渡すカルマ君の視線の先にふと目をやれば、E組マントの少し寄れたあたりを軽く握ってる……元々マントは身に着けてたけど、殺せんせーが取り替えちゃったからなぁ。E組の制服だと見慣れないし何か仕込んでたとしたら不便そうだ。
「で?お前がE組についてくる条件はなんなんだよ」
「そうだね……俺からの条件は、この洞窟のどこかにいる俺の大事な子を魔法を使わずに見つけることができる人が……そーだね、全員とは言わない、合わせて3人以上いたらE組に入ってあげる。どう?」
「「「大事な子……?」」」
「うん、俺のお姫様♡」
「わ、私、お姫様じゃないもん……じゃなくて、その……いいの?」
僕らの反応を見て作ったようないい笑顔を浮かべるカルマ君。自然な笑顔とも、バグが発動するような見下すような笑みとも違う……ああいう表情をしている彼は、人をあまり信用してないと考えていい。つまり……E組は今、彼から試されてる。
「だってぇ、E組に俺だけ行ったら1人になっちゃうでしょ?だからって魔王を倒すために子どもを頼る国になんて任せられないし、そっちが俺らをセットで受け入れてくれんならいーよ。あ、この条件にチャレンジするなら渚君が参加するのは禁止ね」
「で、でもE組はバグ持ちの集まりで……カルマ君もバグがあって強いからスカウトに来たわけで!」
「その子もE組に来るってことなら魔王退治に参加するってこと、つまりバグがないと意味がないんじゃ?」
「いや、ちょっと待って。僕が参加禁止でバグ持ちってことは、もしかしてそれ、アミサちゃんのことであってる……?」
「渚、知ってるの!?」
「てか今渚……アミサって言った?」
「アミサって……もしかして『幻月の暗殺者アミサ』か!?」
「か、烏間先生の言っていた勇者に近い実力があると大陸で必ず名が上がる戦士が、もう1人この洞窟にいるのか!?」
「う、うん。僕の幼馴染みはカルマ君ともう1人いて、確かにその子もバグ持ちだけど、今この洞窟に一緒にいるとは僕も知らなかっ、……え、待って連れてくってことはもしかして……!」
「……、そう、そうだよ、やっとなんだ。やっと……っ」
「か、カルマ君……!」
「な、なんだよ、なんかそいつはヤバいのか……?!」
「もしかして、その子が病弱でやっと治療法が見つかったとか……!?」
思い詰めたような表情で下を向いたカルマ君と、それを見て気づけた僕の反応を見聞きしたみんなが、ごくりと固唾を飲んで見守ってるのが分かる。肩を震わせて顔を隠す彼を見て、みんなも心配してくれてるんだろう。
僕はその理由に当たりをつけてるけど、……これを、みんなに聞かせるのはどうかとも思う。……でも、彼女を、彼等を迎え入れるならみんなが知っておくべきことだ。意を決して、口を開いた。
「……カルマ君。
……やっっっと告白したの!?あんなに前からアピールしてたのに!?今更!?」
「うるっさいな今更で悪いかよ!!!天然鈍感自己肯定感皆無な小動物が俺のアピール全スルーするからキッカケが無かったんだって!!!」
「いやほぼ両想いだったくせにヘタレてたのはカルマ君でしょ!?」
「ヘタレじゃないし!こっちが自覚しててもあっちが分かってないのに告白する意味ないじゃん!?告白したところで『好き?私も好きだよ一緒だ嬉しい』で終わるのが目に見えてんだよ!何も分かってなくてほわほわしてるのも可愛いんだけど!」
「うぅ……、私が悪かったからぁ……っ」
「それは確かに!でもその反応はくっついたんだねおめでとう!!」
「ありがとね!!」
「ありがと……、はずかしい……」
「お前リア充かよ!!!」
「深刻な話だと思ったのに……」
「だから顔隠してたのか……」
僕からツッコまれるのを想定してたんだろう、真っ赤になって顔を上げて怒る彼をE組のみんなが生暖かく見ている……一部男子は嫉妬の目線だし、女子の中には呆れ顔の人もいる。
いやカルマ君の言い分もものすごく分かるけどね。だってあの子本トにド天然だし、僕が一緒にいた頃には既に分かりやすかったカルマ君の好意に全く気付かないんだもん。
「とーにーかーく!俺を連れていきたいならこれ以上は譲る気ないよッ!あ、渚君を頼っちゃ意味ないから、必ずお前らだけでクリアしてよね」
「そ、そんなこと言っても、さすがにその子についての情報が少なすぎるよ!」
「そうだ!元々俺らも烏間先生からカルマについてしか聞いてねーもん!殺せんせーの攻略本にもカルマがラスボスでそれ以外に載ってねーし!」
「さすがに違うダンジョンの攻略情報は載せられませんからねぇ……しかし!渚君がダメなら先生がこの
「「「殺せんせー!」」」
「だーめ。全部バラしたらこの条件にした意味が無いでしょ?」
「そ、それはそうかもしれないけど……でも、その条件を出してきたってことは、もう数人はクリアできる可能性があるって、カルマ君も少しは信じてくれてるんじゃないの?」
「それに初見クリアさせる気が無さすぎませんか?君も条件をつけた以上、ある程度はクリア出来る要素は残すべきでしょう……クリアできない緊急クエストは受理できませんから」
「…………」
僕は手伝えない、カルマ君も彼女を守るためとはいえほとんど情報を開示しない。その状態で緊急クエストをクリアするなんて、低レベルで駆け出しすぎるE組には無理難題すぎる。
当然何とかしたい殺せんせーが手助けしてくれようとするけど、カルマ君が即却下。でもその返事を予測してた僕と、それに乗って粘ってくれた殺せんせーのおかげか、カルマ君が少しだけ迷う素振りを見せる。あと少し……なにか後押しがあれば。僕はカルマ君の方を懇願するようにじっと見つめる。
「……カルマと渚くん以外にも信じていいか、みてみたい、から……少しだけ、手加減してあげよ……?」
「……、……そう?じゃあ仕方ないから少しだけなら情報あげてもいいよ。どーせ殺せんせーは『幻月の暗殺者』についてはある程度調べてそうだし……俺、殺せんせー、渚君……なんでも質問していいから1人1つだけ情報をあげるってのはどう?」
「……いいですねぇ、先生でも答えられるものならしっかりヒントを渡しましょう!渚君も構いませんね?」
「も、もちろん!妥協してくれてありがとう!」
「ま、仕方ないかなって。あ、当たり前だけど直接答えを教えるのは無し。あと渚君と殺せんせーは聞かれた質問にどんな形でも答えたら取り消しちゃダメだから」
「分かった!」
「分かりました」
「よし、じゃあ早速俺から重要な事を聞かせてもらいたい!」
カルマ君からの補足の直後、キリッとした真剣な表情で前に進み出たのは岡島君だった。正直、E組がもらえた質問の機会はたったの3回……それでも嘘偽りなく必ず答えてもらえる制約があるから、無駄にしない為にも何を聞くか相談するべきだと思うんだけど、あんなに真剣な顔をした岡島君を邪魔するのははばかられる。
「その『幻月の暗殺者』は女なんだろ?洞窟を出てこっちに来るなら環境が変わるってこと……つまり、彼女に対して配慮が必要ってことだ」
「お、岡島……!」
「あんたタダの変態じゃなかったのね……!」
「見直したわ……!」
「……俺も洞窟出てそっち行くなら環境変わるんだけど?」
「男より女だろ!?しかもそこまでお前が躊躇うなら相当大事にしてるんだって分かる。だった気にするのはそっちだ!」
「……へぇ」
岡島君、かっこいいよ……!周りの女子の反応から岡島君の性格を察して不快そうな感情を浮かべていたカルマ君ですら、好感触な反応を見せて、興味深そうに話を聞く姿勢になっている。
これなら、1つ目の質問を任せてもいいかもしれない!僕らが期待する中、少し照れたように居住まいを正した岡島君は、
「3人の内、誰でもいい。分かる奴が答えてくれ……
その子のスリーサイズはいくつだ!?」
「ひぇっ」
「「「最ッ低!!」」」
「ガフッ!!!」
堂々と当たり前のように変態発言をぶちかました。そんな彼に対し、女子達が言葉だけでなく速攻で制裁を加えていて……いや、岡島君が通常運転すぎてもう……やっぱり相談すべきだった。後悔してももう遅いんだけど。
「見直したのが馬鹿だったわ……」
「警戒しておくべきでしたね……」
「いや大事だろ!?イダッ!あ、新しく女生徒が増えるなら男子たるもの心構えがだな!?ゴッ!?」
「いらないよそんなセクハラな心構え!!」
「たった今あの『赤い悪魔』の彼女だって判明したのに特攻できるそのメンタルよ……」
「そこにシビれぬ憧れない……」
「ふぅむ、あの『幻月の暗殺者』の戦闘スタイルから考えて、彼女の胸はFカップですねぇ」
「そんで殺せんせーがなんで知ってるの!?」
「「「でっか……」」」
「こっちも最低だ!!!」
「あとデカいって言った男子も最低!!」
「な、なんで知ってるの……?こ、怖い……」
「……ねー、アイツも殺せんせーも切り刻んでいい?いいよね??」
「お、落ち着いて……!」
「あと殺せんせーが答えた時点でもう質問1回分消費しちゃってんだけど!?」
「バカ貴重な質問になに聞いちゃった上に答えてんだ!?」
「あ、つ、つい答えてしまいました!!」
「巨乳は敵だ!!」
「茅野さんはなんか違わないかな!?」
「あーもう、岡島を締めるのは後回しよ!次は私が質問するわ!」
もうめちゃくちゃだ……!ホントなんで殺せんせーはあの子のスタイルを把握してるんだよ、本人じゃないけど僕でもさすがに怖い。
戦闘不能に追い込んできそうなカルマ君とアミサちゃんのスタイルを知って半泣きの茅野をどうにかなだめて、代わりに前に出たのはE組の学級委員の1人である片岡さんだった。真面目で曲がったことは絶対にしないって信頼があるから、誰も邪魔しない。
「……カルマ君に質問。そのアミサちゃん、って子のバグは何なのか教えてもらえる?」
「……なーんだ、ちゃんとまともな質問もできる奴もいるんじゃーん?」
───ガンッ
片岡さんが質問した瞬間、ハッと鼻で笑ったカルマ君の頭上からタライが降ってきていい音を立てた。……つまり、
「「「(全員岡島の質問レベルの頭だってナメられてた……)」」」
「そうだね……これは俺が答えてあげる。彼女のバグはステータス『回避率』の異常……プラス補正が付きすぎて自分、もしくは自分を巻き込むものが
───だから、やりようによってはこんなこともできる」
───ザシュッ
カルマ君が親指で自分の首を切るように動かした瞬間、殺せんせーの触手が3本、いきなり切断された。
「「「!!!?」」」
「にゅや……っ!?」
「こ、殺せんせーの触手が誰もいないのにちぎれた……!?」
「あははっ!……ね、気付けなかったでしょー?」
───ガンッ
殺せんせーも慌てて振り返ってるけど、既にただ誰もいない空間がそこにあるだけ、それはまるで幻のようだっただろう……
殺せんせーも、E組の大半も何が起きたか分からない中、カルマ君は落ちてきたタライが頭に当たってるのにすごく嬉しそうに笑ってる。
「もちろん俺じゃないよ、やったのはあの子だし。これがあの子が『幻月の暗殺者』って呼ばれる由来……じゃ、最後の質問をどーぞ?渚君が答えてくれるよ」
「あ、あの!」
「!……奥田さんが、最後の質問するのでいい?」
「あ、え、えっと……その……」
「こっち、見てくれてる……やっぱり、あの子には私が見えるんだ……」
結構重要なことを教えてくれたカルマ君だけど、あと1回だけ質問のチャンスが残ってる。ここでいい情報を引き出せば軽くクリアできるかも……と、思っていたら、少し前から不思議そうに疑問を浮かべていて、近くの何人かと相談していた奥田さんが声を上げた。
いつも引っ込み思案で後ろに下がりがちな彼女が珍しく声を上げたことで一気に注目が集まり、ガチっと固まってしまった所にみんなに確認する形で声をかければ、奥田さんはおずおずと顔を上げてクラスメイトの反応を伺っている。
「あ、あの……、聞けば、なんでも答えてくれるんですもんね……?」
「ルール上、直接的な答えにならなければ……」
「……ホントなら皆さんのために、見つけ方とか聞くべきなんでしょうけど……、さっき、神崎さんと相談したんです。あえて、見つけられてからの事を聞かせてください!……その子を見つけたら、ここにいればいいでしょうか!」
「「!」」
「奥田、それは……」
「その質問は悪手じゃないか?」
「まだ渚も答えてないし取り消した方が」
「い、いえ!きっと私以外にもいるって信じてます!……ど、どうですか……?」
「「…………」」
……こんな質問をしてくるってことは、奥田さんは確定、そしてその相談を受けてたっていう神崎さんも確定でいいだろう。ちょっと予想外って感じで驚いたように目を見開いたカルマ君と目が合って、僕はこの質問に答えることを決めた。
「……いいよ」
「……!わ、分かりました!」
僕の返事の意図を察してくれたのか、奥田さんが神崎さんの方を向いて、彼女が頷いたのを確認して元気に返事をした。
それを見て僕は察した……多分、このクエストは僕らを甘く見たカルマ君の負けだ。
「……これで質問タイムしゅーりょー。改めて言っておいてあげるけど、この洞窟にいるのはモンスターとE組のお前ら、あとは俺と探し人だけ。それ以外に人間はいないのはダンジョンの主である俺が保証してあげる。じゃ、E組のみなさん……がんばって?」
「よし、この洞窟内をもう一度くまなく探しに行くぞ……!」
「おう!」
「端から端まで確認すればさすがに見つかるだろ!俺ら以外がいるのは確かだし!」
「とりあえずトラップは殺せんせーが無効化してるから安心だな……」
「一応うっすらと人の気配はあるんだけどねー、姿そのものは見えないや」
「あ、分かる!誰かいるっていうか違和感はあるんだけど……」
「ん?おーい、そっちの奴らも班で分かれて捜索しようぜ!」
「てか、4班揃ってなんで来ないんだよ。渚は参加できないんだから待たなくていいんだぞー?」
「「「………」」」
カルマ君がルールを再度説明するとE組の大半が洞窟を引き返すために背を向けて歩き出した。もちろんカルマ君が提示した条件である、女の子の捜索のため……なんだけど。
「……ねぇ、出発しない君らはなんなの?見つかんなかったら俺は絶対E組に行かないよ」
僕とカルマ君の近くには、何故かその場から動かない奥田さん、神崎さん、杉野、茅野の4人がいて。カルマ君が煽るように追い立てるけど、4人は顔を見合わせるだけで背を向けようとしない……そして。
「わ、私は……その、……もう女の子を見つけてるので!」
「私もー!というか、殺せんせーがカルマ君に制服を着せたあたりからその子、ずっといたよね?」
「私も奥田さんと茅野さんと同じ。……杉野君もじゃない?」
「えあっ、お、おう!……そこにいる夜色の髪の子がそうだろ?」
「「「え……」」」
「………………チッ」
「「「(し、舌打ちした!?)」」」
「カルマ君の負けだよ。まったく、たったの3人でいいだなんて、僕らを少なく見積もるから……」
ほとんど迷いなく、躊躇いもなく、4人は答えて、カルマ君が不機嫌そうに盛大に舌打ちをした。殺せんせーを含めてE組の大半が困惑する中、仕掛けた側のカルマ君が諦めたように大きくため息をついた。
「ふふ、思ったより、たくさんいた。すごいね」
「……はぁー……仕方ないか。《状態異常回復魔法》」
カルマ君が差し出した右手にふわりと、キレイであたたかい光が集束していき……それを彼は自分の左隣へと押し付ける。その光が落ち着いた時には、多分ほとんどのクラスメイトが見えてなかったんだろう1人の女の子が……カルマ君のマントに顔を隠して潜り込んでいるのが見えるようになっていた。
「お、女の子が……!」
「にゅやっそんなところに!?」
「え、そいつがさっき殺せんせーの触手ちぎったってことだよな?……想像してたよりめちゃくちゃチビなんだが!?」
「もしかしてその子、そこにずっと居たの……?!」
「うん、殺せんせーに攻撃する前後以外はずっといたよ」
「というか俺のバグが発動してなかったのに気付いてなかったんだ?」
「へ?」
「……あ!たしかに……」
そうなんだよね。カルマ君がE組の制服を着せられる前まで、僕らをナメて見下してしかいなかった彼が一言しゃべる度にタライが降ってきたり落とし穴が開いたりしてたのに、アミサちゃんを探す緊急クエストが始まって彼から詳細を聞いている最中は、明らかにカルマ君が僕らを見下していても何も起こらなかった。
あの時、彼女はカルマ君のマント越しにずっと引っ付いていたから、彼女のバグの効果である、いわゆる『絶対回避』がカルマ君のバグにも影響していたんだ。
「……アミーシャ、もういいよ」
「……うん、」
「(……ん?渚、アミーシャって?あの子の名前はアミサちゃんじゃないの?)」
「(あー……アミサちゃんの呼び名だよ。一部の人にだけ呼ばれることを許した真名というか本名みたいなものらしいね)」
「(へぇ……つまりカルマ君だけの呼び名ってことかぁ……)」
「……カルマ、いい?」
「いいよ、いってらっしゃい」
「え、……っと……どうかしたの?」
カルマ君が彼女のバグである『ステルス』の状態異常を解除したからこそ姿がはっきり見えて、E組みんなが彼女の容姿でざわつく中、マイペースに会話してる2人。
多分彼に指示されるがまま素直に顔を隠していただろう彼女は、カルマ君に声をかけられてぴょこ、とマントの隙間から顔を出すと、何かを伺うようにジッと彼の方を向いて。それを確認したカルマ君が言葉少なに軽く彼女を僕の方へと押し出してくるから、慌てて僕の方へ歩いてくる彼女へと向き直る。
「えと、……渚くん、ひさしぶり……?」
「ひ、ひさしぶり……流れを全く読まないのも君らしいけど、なんで疑問形なの;」
「あいさつ、大事。でも、知らない人ばっかだし、カルマはまだって言うから……待ってたの」
「渚君が俺を連れ出そうとしだしたあたりからそいつらのことずっと警戒してたからね。結構序盤から渚君に挨拶したいけど知らない人だらけだって震えてたんだから」
「いや、見えてたから知ってるけど、……相変わらず怖がりなんだから;」
「ふふ、渚くんは変わらないから、安心」
「……ほら、もーいいでしょ」
「わぷ」
僕に躊躇いもせずに抱きついて、そのまま顔を上げた彼女は、キョトンとした顔で周りの混乱を一切気にせず僕に話しかけてきた……いや、まあそうだね、挨拶は大事だね、……うん。
カルマ君は僕が相手だからある程度は我慢してくれてたけど、少ししてアミサちゃんが満足した頃、べりっと引き剥がして自分のマントで彼女をくるんでしまった。いや、そんなムッとした顔で僕を見なくても、取ったりしないって。
「さて、カルマ君。E組はしっかりクエストをクリアしました、ということで約束通り2人でE組に来てもらいましょう!そして……そろそろ説明を求めます!」
「情報だけ一丁前に知ってて殺せんせーも見つけれなかったくせにー」
「えらそーにしてー」
「そ、それはそうですけどクリアはクリアでしょう!!君の出した『3人以上が彼女を視認すること』という条件を4人がクリアしたんですから!」
僕らのやり取りが一段落したと判断したらしい殺せんせーがクワッと両手を挙げながら僕らの周りをものすごい速さで動き回っている。うわ、残像を残して逃げないように囲んでるんだ、……すばやさの無駄な使い方だ。
「……アミーシャのステルスは状態異常だから《状態異常回復魔法》さえ使えば見えるようになるし、一定の条件下では効力を発揮しない。その条件はいくつかあるけど、1番大きいのは……」
「「「ごくり。」」」
「アミーシャを見ようとする人に、一途に愛するもの、譲れない何かがあること」
「「「……え?」」」
「俺は当然アミーシャ。渚君は、……俺らのことが大好きだから、多分それでしょ」
「れ、恋愛でじゃないよ。正直2人のことは実力でもいろんな面でも1番信頼してるから」
「……そう。あー、あと対象は恋愛でも物体でも概念でも好きなものならなんでもいーよ。ただ、少しでも邪念が入ると一気に気配が薄れるらしいけど」
すごくざっくりした条件に、みんなが戸惑ってる。分かる分かる、僕も初めて知った時はビックリしたもん……でも色々検証してきてそうとしか説明できないんだよね。
「分かりやすく説明するなら……アミーシャは嘘発見器みたいな魔法を常時使ってると思ってくれればいいよ。恋愛でも夢中なものでもなんでもいいけど、ブレるやつ、嘘つくヤツにはアミーシャを一切認識できないからすぐ分かる」
「「「あー……」」」
うっすらとしか見えなかった、気配だけを感じた人達には、好きな物、人があるんだろうけど、別のことにも意識がいくこともあるんだと思う。浮気とかじゃなく意志がブレるというか……説明は難しいけど、基本人はそういうものだからこれが大多数のはずなんだ。全く見えなかった人は浮気性なのか、まだ譲れない程好きなものが見つからないのか、興味が無いか、かな。
逆に最初からアミサちゃんの存在に気付いて見えてた人達には、明確にこれと言い切れる好きな対象があったり、譲れないものだと認識してるものがあることが分かる。アミサちゃん曰く……そういう人って、嘘をつかない、つけない、もしくは人を傷つけるような嘘をつかないらしい。だからそういう人なら信じてもいいんだと言っていた……彼女は一度、その法則に逆らって人を信じて、裏切られたことがあるから。
「……だから、カルマは3人以上って条件をつけたんだな。その子がE組に来ても安心して過ごせるように……少なくとも絶対大丈夫といえるやつが渚の他にいないかを確かめるために」
「……、……あー、もう恥っずい!なんでそこまで見透かすんだよ!」
「決まってます、あなた方2人を心から歓迎するためです!」
「「「!」」」
磯貝君がたった今気づきました!というように最初のカルマの言葉の意味を解釈したのを口にして、カルマ君が遂に白旗を上げた。
それを見た殺せんせーがニマニマとした笑顔で近寄っていき、触手で2人の頭を撫でる。2人して何が起きたか分からないって顔で先生のことを見上げていて……イタズラばっかしてるカルマ君とか後ろに隠れて顔をあげないアミサちゃんばっかり見てきたから、僕からしてもすごく新鮮だ。
「ここにいたE組の中で、姿がハッキリと見えていたのはここの4人のようでしたが、見えなくても気配は全員が感じていました。つまり、カルマ君が気にしているアミサさんが傷つけられる環境ではないということの証明ではありませんか?」
「「……っ」」
「アミサさんも、彼女を守ってきたカルマ君にもすぐには信じられないでしょう。それでも……E組で、あなた方の力を使ってみませんか?」
「……はっ、魔王が自分を倒す戦力を自分で育ててるって本気だったんだ」
「ヌルフフフ……アミサさんにはこれを」
「……!これって……《状態異常防止》効果のある装備……?」
「本来は敵から受ける状態異常を防ぐ装備ですが、アミサさんの場合自分自身に意図せぬバッドステータスを常に課している状態です。そこで先生、ちょっと装備に手を加えて自分の状態異常を抑え込む効果に変えてみました!」
「アイテムの効果をいじったの!?」
「なんでも出来るな……」
「自分のバッドステータスを先生の暗殺に利用したのは君達が初めてです。E組にはまだまだ芽の出ていないバグがたくさんあります……どうです?自分の状態異常をコントロールしながらいろいろ試してみたくなりませんか?」
殺せんせーがブローチのようなものをアミサちゃんに着けると、周囲のみんなの視線がしっかりと彼女の方へ向いた。どうやらカルマ君のかけた《状態異常解除魔法》が既に薄れてきていて、彼女の解像度が下がってぼやっとしてたらしい。本来は外部からかけられる妨害をアミサちゃんは本来は不可能なはずな自分から自分にかけてるわけで、それを打ち消すことに成功したみたい。さすが魔王、なだけあるのかな?
それぞれが説得されたことで、カルマ君とアミサちゃんは互いに目を合わせ……仕方ないなって顔でそれぞれが殺せんせーに手を差し出した。
「いーよ、約束したし守ってあげる。これからよろしくね、せんせ」
「……カルマと、渚くんがいっしょなら……がんばってもいい、かな。よろしくおねがい、します」
「はい、よろしくお願いします……
───バチュン!バチュン!
にゅやぁッッ!?」
2人と殺せんせーが手を繋いだ瞬間、バチュン!と繋いだ触手が爆発して、殺せんせーが大慌てで一気に2人から距離をとった。対して、カルマ君とアミサちゃんは2人して楽しそうに笑っている……その袖口から覗いているのは、短剣で。
「……ふふ、油断大敵」
「だからチョロイって言われるんだよ」
「にゅやぁぁぁ!?!?!」
……うーん、2人がタッグを組むと凶悪だなぁ。多分初めて見たみんなが引いてるよ。
こうして、
「とりあえず奥田さん、あの子がオバケじゃなくてよかったね」
「よかったです〜……本トに安心しました……」
「いやそもそもなんで奥田ちゃんの中ではあの子がオバケなんてことになってたの;」
「見えてたんだよね?」
「そ、その……見えてましたし声も聞こえてたんですけど……」
「急に奥田さんが『カルマ君の隣にいる女の子に誰も気づいてないようなんですけど、私にだけ見えるお化けなんでしょうか』って相談しに来るんだもん。私にも見えてたからなんでお化け?って思ったら……」
「カルマ君とアミサちゃんが話してるのに誰も違和感を感じてないようでしたから……」
「……え、あの2人話してたの?」
「俺達の目の前で?」
「「「話してたよー」」」
「「「……まじか」」」
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冒頭から一応オリ主が目の前にいるていでお話を書いているので、一部渚がオリ主の存在を知っていて行動していたり、カルマの言動に違和感が残るように書いたつもりです(違和感があると信じてます)。
渚で言うと⬇
『不服そうに辺りを見渡すカルマ君の視線の先にふと目をやれば、E組マントの少し寄れたあたりを軽く握ってる……元々マントは身に着けてたけど、殺せんせーが取り替えちゃったからなぁ。E組の制服だと見慣れないし何か仕込んでたとしたら不便そうだ。』
という場面で、『誰が』がないのでカルマでもオリ主でもどちらの行動とも取れるんですが、正確に書くなら軽くマントを握ってるのはカルマではなくオリ主なんです。なので、うっすら最初からオリ主が近くにいたことを暗示してたつもりです。分かりにくい。
また、カルマのセリフと会話の繋がりに違和感がある前後に見えませんがオリ主がいます。よければ遡って、会話を反転させてみてください。