暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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今回はラジコン回のオリ主視点。

次回は同じお話のイトナ視点でお送りします!






67話 紡ぐ時間sideアミサ

 

 イトナくんが正式にE組へ来てから6日目……つまり、イトナくんにとってE組で過ごす1週間と1日が経過したばかりの放課後。1日の授業が全て終わって、クラスのみんなが帰宅したり、校庭にいる烏間先生へ追加で暗殺訓練を受けに行ったり、英語の分からないところをイリーナ先生に聞きに行ったり……とそれぞれがそれぞれの放課後を過ごしている中。

 私はこれから教員室で開催される予定の『イリーナ先生放課後塾』の準備をしながら左隣の()()……イトナくんの席に自然と目が行っていた。

 

 ホントならこの席にはイトナくんがいるはずで……なんでいないかといえば、帰りのホームルームが終わった瞬間、殺せんせーが有無を言わせずイトナくんをどこかへと連れ去ったから。

 一瞬で消えたからハッキリとは見えなかったけど……何か紙の束のようなものを持ってたし、廊下を外じゃないほうに曲がっていったのは見えたから、校舎のどこかにはいると思うんだけど。

 

「殺せんせー、何する気なんだろ……」

 

「何かあったの?アミサちゃん」

 

「殺せんせーが大量の紙束と一緒にイトナくんを抱えてどっかいっちゃったから、どうしたのかなって」

 

「うわ〜、紙束がテストとかプリントだったら嫌かも……」

 

 私の独り言に返事があって誰かと前に顔を戻してみたら、桃花ちゃんと陽菜乃ちゃんが私の席に来ているところだった。陽菜乃ちゃんの一言で、なんかあの紙束がテスト用紙なんじゃないかって気がしてきたよ……

 イトナくん、この1週間一緒に過ごしていろいろおしゃべりしてきた中で、あんまり勉強好きじゃないって言ってたから、1日学校で過ごした後にまた勉強ってストレス溜まりそう。それにイトナくんってあの触手の破壊衝動を見た感じ、静かにストレス溜めて後から爆発させるタイプな気がする。……後からなにか、とんでもないこと起きちゃったりしないよね……?

 

「E組に来て1週間、学校もひさしぶりっていうのでテストとかはない……と思いたいね」

 

「さすがの殺せんせーでもそこまでしないよ〜、だって1週間あったんだよ?1枚ずつ個別課題に差し込んだりしてるって」

 

「そう、だよね……あ、私がのんびりしてたから迎えに来てくれたんだよ、ね?ごめん、すぐ準備、」

 

「あ、それなんだけど、」

 

 何も無いといいけど……そう思いながらカバンを持ったところで桃花ちゃんに待ったをかけられた。なんでもさっき廊下でイリーナ先生に会って、今日の放課後が空けれなくなっちゃったから明日に回してほしいって言われたみたい。

 一緒にイリーナ先生のところへ行くためにこっちに来たんじゃなくて先生からの伝言を伝えるために来てくれてたんだって……危ない、誰も居ない教員室でひとりぼっちの待ちぼうけになるところだった。放課後塾の日はいつも、カルマたちを待たせるのも悪いってことで先に帰ってもらってるし、今日の帰りは2人と一緒に帰ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、次の日の放課後……私の左隣の席では、無表情なのに雰囲気だけはドス黒いイトナくんが、殺せんせーが教室から自分へのご褒美のために飛び立っていったのを確認したあと、カバンからそっといくつかの部品を取り出し組み立て始めた。

 ……ちなみに殺せんせーは、お給料が出たから上海ガニを食べに行くんだって……「~アルネ」とか「いーあるさんGO!」って、言葉遣いだけちょこっとなりきってた。なんで中国語の中に英語を混ぜたのかは考えないことにする。

 

「イトナくん、それは?細かいのがいっぱい……」

 

「仕返し用戦闘車……の、部品諸々だ」

 

「仕返しって、……やっぱり昨日連れてかれたのって……」

 

「……あのタコに次から次へとテストを受けさせられた……見てたなら助けてくれ」

 

「うわぁ……って私、殺せんせーがイトナくん連れ去ったとこしか見てないよ」

 

 まさかの陽菜乃ちゃんの予想が大当たりだったみたい……やっぱりストレスは溜まってたみたいで、手に持ったドライバーが怒りからか折れそうなくらいミシミシいっている。

 この話ぶりだと、昨日受けさせられたテストは1教科だけ……とかじゃなくて全教科受けさせられたんだろうな……陽菜乃ちゃんも言ってたけど今日まで1週間あったんだから、授業でやらないで放課後にやるにしても、せめて1日2教科くらいに抑えとけばよかったのに、殺せんせー。相変わらず段取りが悪い。

 

 雰囲気はかなりイライラとした様子なのに、手元はとても慎重に動くイトナくんの様子見て、この戦闘車はだいぶこだわるつもりなんだということが分かる。

 そして、こういうのにあまり詳しくない私はほとんど手伝えないしまず何をしてるかがよく分からない……むしろ、女性陣はみんな難しい気がする。だったら他になにか……と考えて、ふと思いついたことをそのまま言ってみる。

 

「……じゃあ、この戦闘車作戦が終わったら、私の家においでよ。……お疲れ様会、しよう?私、何か作って待ってるから」

 

「……俺はアミサの家、知らない」

 

「あれ……?あ……そっか、そうだよね。殺せんせーの下着泥棒事件の時、泥棒役はイトナくんがやってたって言ってたから……新聞が販売された前の日に私の家に来たの、イトナくんだと勝手に思ってた……最低な勘違いしちゃった、ごめんね……」

 

「……いや、いい」

 

 疲れたあとは甘いものってよくいうし、イトナくんも甘いもの大好きだし……ちょくちょく村松くんの家にご飯を食べに行ってるみたいだから、たまには他の物を食べる機会があってもいいかと思って、何も考えずに彼を家に誘った。

 だけど1度も彼に家の場所なんて教えてないし、初めて誘ったんだから家を知らないのは当たり前に決まってるよね……

 

 あの日、下着泥棒の件で私の家の窓の外で物音を立てた()()()は結局今もわからないまま……今までは、その……Fカップ以上の女性リストの中に私も入ってたから、一応実行犯のイトナくんが私の家にも来たんだと考えてた。

 でも確かにこれは本人から聞いたわけじゃなくて私の想像でしかない……なのに疑って、申し訳ないことしちゃったな……。謝る以外に何をいえばいいんだろうと何も言えなくなっていたら、少しの間、無言のまま手元で作業を進めていたイトナくんが、何か思いついたように顔を上げて私を向いた。

 

「……他に呼んでもいいか?」

 

「……ほ、他にって、イトナくん以外に誰かを……ってこと?私の家、そんなに広くないから、E組の人であんまり大人数にならなければいいけど……誰か、誘いたいの?」

 

「とりあえずカルマ。行き方教えてもらう」

 

「あ、なるほど……うん、いいよ。来る日になったら教えてくれると嬉しいな」

 

「あぁ。その時成果を話せるよう努力する」

 

 確かにカルマなら私の家に何度も来たことあるし、この1週間見てたけどイトナくんとの相性もよさそうだから大歓迎だ。……2人の間でちょっと言葉の端々にトゲトゲしたものを感じるくらいで。

 

 ……イトナくんは、私のことをお姉ちゃんみたいだと言ってくれた。身長はイトナくんより小さいし、甘えたな自覚のある私にはお姉ちゃんらしいところなんて思いつかなかったけど、彼は体を張って守ろうとする度胸と、包み込んでくれるあたたかさが年上のように感じたと言ってくれた。

 ……その分、守らなきゃいけないって思わせる無茶をしょっちゅうするからそのあたりは心配だって言われちゃったけど……なかなか会えない本当の家族とは別に、新しい家族が増えた気分だったりする。

 

「じゃあ、そろそろ時間だから、行ってくるね」

 

「……ああ。……いってらっしゃい、……───」

 

「!……うんっ」

 

 話がまとまったところで私は席を立つ……今日は昨日できなかったイリーナ先生の放課後塾の集まりがある。今日はどんなお話が聞けるのかなぁ……教室を出る前に振り向いたらイトナくん(おとうと)は手元の部品を組み立てることに集中してたけど、こっちを向かないまでも小さく呟きながら手を振ってくれたのが、なんだか嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビッチ先生またね」

 

「お先に失礼します!」

 

「次は私がお菓子もってきます!」

 

「なら、スイートショコラをリクエストしとくわ……アミサなら作れるでしょ、あれ。あんた達全員、寄り道しないで帰りなさいよ」

 

「「「はーい!」」」

 

 昨日約束してたのにできなかった分、とイリーナ先生が入れてくれた紅茶と、今回だけよなんて言いながらクッキーや焼き菓子を出してくれて、それらを味わいながらたくさんのお話を聞いた。

 

 いつも通り経験談に合わせてちょっとした会話術も習い、どうせならE組の男子にも試すとしたらって考えてみなさいと言われて……お互いに相手役になりきってみて、ちょっとしたロールプレイをしたのが面白かった。

 もしやるならこの内容なら誰に仕掛けるといいだろう、無理だと思うならその対策を上げてみるなどなど、実際にはきっと使わないだろうことを想定してだけど、まるで色々クラスの男の子のプロファイルを取っているかのようだった。

 

「それにしても今日も面白かったね〜っ!」

 

「というか何をどうやったらビッチ先生の話からクラスの男子の話になるんだか」

 

「メグもちゃっかり参加してたくせにっ」

 

「そんであそこまで全員の高評価出せる当たり、やっぱりアミサの男子の解像度もすごいわー」

 

「いい所を話せばいいかと思ったのに……最後批評大会になってた……」

 

 主に、ね、みんながそれぞれ男子にどんな評価を向けているのかがわかって……満場一致で高評価だったのは磯貝くん、酷かったのは岡島くんだった……私以外の全員の意見が一致したのがまた、すごい。私は高評価はともかく、低評価は誰にもつけられなくて諦めたんだよね。

 

「ねぇ、帰りにカフェ寄っていこーよ、ケーキ食べたい!」

 

「行く行く!」

 

「言われたそばから寄り道じゃん、それ」

 

「あははっ!アミサは行ける?」

 

「うん、行きたい!………?」

 

 教員室から廊下へ出てすぐ、ふと、いつもの廊下とは違う……なにか違和感がある気がして足を止めた。周りを軽く確認すると、足元に小さな戦車が置いてあることに気づいて、ついそこに注目してしまう。

 廊下の木の色に近い薄いカーキ色だから、同化してて分りづらかった……もしかして、これがイトナくんの作った戦闘車だったりするのかな?

 

「アミサちゃん、どうかしたの〜?」

 

「……あ、なんでもな……え、と……私、教室にお財布置いてきちゃったの思い出した……先に行っててもらっていい?」

 

「え、財布!?」

 

「なんで貴重品を教室に忘れるの……」

 

「その……筆箱見つからなくて1回カバンの中身全部ひっくり返したから、多分その時」

 

「もう、そーいうとこがドジだねぇ……下駄箱のところにいるから、行っておいで〜」

 

「うん、ありがとう!」

 

 先に玄関に向かって歩いていく莉桜ちゃん、メグちゃん、桃花ちゃん、陽菜乃ちゃんの4人を見送ってから戦闘車の近くにしゃがみこむ……お財布を忘れたってのは嘘、ただ3年E組の教室へ行く口実が欲しかっただけ。

 まじまじと見つつ車体を軽く撫でてみる……近くに誰もいないみたいだし、多分これ遠隔操作で動かすラジコンだ。違和感は感じたとはいえほぼ同化できていた色もそうだけど、音もほとんどしなかったし……あの細かい部品を組み立ててここまで静かに動くものを作っちゃうなんてイトナくんってすごい特技を持ってるんだなぁ……あ、ちゃんと戦闘車らしく主砲もついてる。飛び出てくるのは対先生BB弾ってところかな……仕返しって言ってたけど、暗殺にもちゃんと絡めてるんだ。

 

 そっとラジコンを持ち上げて教室へと向かうとそこにはE組の男の子がカルマ以外のみんなが揃っていて、イトナくんの席を囲んで何やら話し合いをしている最中のようだった。邪魔しちゃうのは悪い気がしたけど、戦闘車(これ)、持ってきちゃったし……

 

 

 

 ────コンコンコン

 

 

 

「「「!!!?」」」

 

「あ、えと……お、お邪魔してごめんなさい……そ、そんなに驚かれるとは思わなくて……」

 

「お、おー……」

 

「真尾か、お前でよかったよ……」

 

「???」

 

「お前らなぁ……ま、いいか。どうしたんだ?」

 

「その……コレ、教員室の前のとこに……イトナくんが作ってたやつだよね?多分廊下のへこみに引っかかってたんだと思う……動かなかったから、持ってきちゃった」

 

 ノックした瞬間に全員の目が一気に私へ向いたのがちょっと怖かったのだけど、私だとわかった途端に殆どの男子が安心したように息を吐いたのを見て、お邪魔してもだいじょぶなのだと判断する。とりあえず目的は果たさなくちゃと思って男子の輪の中に入れてもらい、イトナくんへ戦闘車を差し出すと、今度は息を呑む音が……や、やっぱり邪魔だったのかな……?

 余計なお世話だったかと思って少しへこんでいたら、そっと手の上から重さが消えた。

 

「助かる。……ちなみになんで気付いた?できる限り最小限の駆動音に抑えていたはずだ」

 

「んー……色、かな。教員室から出た時に、なんか廊下に違和感があるなって……」

 

「……なるほど、要改造点だな」

 

 動揺も何も無く普通に受け取ったイトナくんは戦闘車の蓋をパカリと開けて、なにやらまたいじり始めた。そっか、対先生用のラジコンってことはバレたら意味が無いってこと……人間である私が気づいたものに殺せんせーが気づかないはずがないってわけだ。

 それを聞いていた菅谷くんがならば学校に紛れるようにするためにも、学校迷彩を塗ると買って出ていて……その時になってやっと、この場は男の子たちみんなで協力して、自分の得意分野を活かした計画を立ててるってことがわかった。これはこれ以上ここにいたらホントに邪魔になっちゃう。

 

「じゃ、じゃあ、頑張って完成させてください……お邪魔しましたっ!」

 

「意見ありがとな〜!」

 

「気をつけて帰れよ!」

 

 出入口でおじぎしてから廊下を走らない程度に急いで下駄箱へ向かう。1回教室を振り返ってみたら、既に男の子はまた集まって何か相談をしているようだった……途中から暗殺教室に加入した元敵、という立場であるイトナくんが馴染めるかどうか……少し、不安だったけど。

 

「……ね、E組のみんなはあったかくて優しいんだよ、……心が苦しくなるくらいに」

 

「あ、やっと来たアミサ!」

 

「ちゃんと見つけた〜?」

 

「……うん、お待たせしましたっ!」

 

 ……だけど、私が見たのは彼を中心にして1つにまとまってる光景で……それがとても安心できるもので。きっと、イトナくんはもう1人で頑張らなくてもだいじょぶだ。

 

 そんな事実を誰かに共有したくて、この後のカフェで4人に報告したら、4人ともが嬉しそうに笑ってくれたから、みんな、心配してはいたけど信頼もしてたんだなってわかった。

 彼らの小さなラジコンから始まった計画が、どこまで殺せんせーに通用するんだろう……結果を教えてもらうのが楽しみになってきた放課後だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、アミサのケーキ来たよ」

 

「わあぁ……!いただきますっ!」

 

「ほら、逃げないからゆっくり食べていいんだよ〜……ふふ、クリームついてる」

 

「あ……えへへ、ありがと陽菜乃ちゃん」

 

「……よし、倉橋さんが気を引いてる今のうちに」

 

「……ねぇ、どう思う?」

 

「どう思うって……女子に一切詳細を話さないで進められてる計画な上、殺せんせーがいないって分かってるはずなのに校舎内を走るラジコン、ねぇ……」

 

「試運転って言ったらそれまでだけどさ、カルマ以外の男子全員が揃ってて、アミサが教室に行ったら驚かれたんでしょ?」

 

「オマケに『来たのが真尾でよかったよ』、ねぇ……」

 

「「「…………」」」

 

「……?あ、あれ?陽菜乃ちゃん、みんなすごい難しい顔してる……、どうしたの……!?」

 

「ううん、気にしなくていいんだよ〜!あっちはあっちで内緒話してるから、あーちゃんは私と内緒話しよ?ほら、最近のカルマ君とのこととか〜」

 

「え……じゃあ、頭打ってカルマの家でお泊まりした時、また休もうとしないから一緒のお布団で寝れば休める?って聞いたら理性がどうとかって怒られたこととか……?」

 

「あーちゃん……それはカルマ君が正しいよ……」

 

「停学中は1人だと私が寝ないからってぎゅーして寝てくれたのに……」

 

「う、うーん……状況が違いすぎるなぁ……」

 

「ちょっと!!そっちはそっちで気になる話しないでくれない!?」

 

「それでも手を出さないカルマを尊敬するわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝……私はいつも通りに待ち合わせて学校に行こうと思っていたんだけど、一緒に行く渚くんと杉野くんそれぞれから先に学校に行っているとメッセージが送られてきていた。

 その時間、なんと朝6時前……なんでも昨日のメンバーは朝一番に集合、菅谷くんが学校迷彩を塗った装甲、内部のギアを吉田くん、というようにそれぞれの担当部位を持ち寄って組み立てを完成させ、ついでに試験走行まで済ませておきたいんだとか。

 

 登校時間になると私の家までカルマが迎えに来てくれて、いつもなら2人との集合場所に行くけど、今日はそのまま一緒に学校へと向かう。

 

「そういえば……男の子はみんなイトナくんの作戦に参加してるみたいなのに、カルマは行かなくていいの?」

 

「あー、うん。俺はメカよりも自分の手で殺りたいし……なにより、昨日も途中で帰ったから詳しいことはなんにも聞いてないんだよね」

 

「……男子みんなで集まるーって渚くん言ってたのに、カルマは呼んでないの……?」

 

「……呼ばれてないね、放課後いなかったからじゃない?」

 

 カルマはイトナくんが戦闘車の主砲とモニターの連動を試して、殺せんせーの最大の急所……【心臓】のことを明かしたあたりまでは教室にいたけど、試運転のあたりになってからは特に手を貸せるような物もないし見てるだけはつまらない、と帰ってきたらしい。だから私が教室に行った時にいなかったんだ。

 

 E組へ向かう山道を登りきり、校舎に近づくと……あれ、教室がなんか騒がしい……?昨日と同じようにイトナくんの席の周りに男の子が集まって、渚くんと磯貝くんだけが少し後ろで見守ってるようにも見えるけど……

 教室にメグちゃんを筆頭に女子が入っていった途端お説教の声が下駄箱まで響いてきてるけど、何があったんだろう。当然カルマも知ってるわけがなくて、状況が飲み込めないままカルマと2人首をかしげながら、離れたところに立っている渚くんに聞こうと前側の扉から教室へ入る。

 

「なにやってんの?」

 

「ちょっと、痴情のもつれが……」

 

「ふーん……」

 

 痴情のもつれって……男の子と女の子とで喧嘩してるからそういうことなのかな……?渚くんは言葉を濁すし磯貝くんは苦笑いするばかりで教えてくれないのかな、と思っていたら、私たちが教室に来たことに気づいたんだろう……男の子に何か説教していた女の子メンバーがぐるりと振り向いた。

 あまりにも一斉に、しかも怒った表情(かお)のまま振り向くものだから、私は驚きすぎてカルマの後ろに隠れてしまった……私が怒られてるわけじゃないはずなのに、なんかみんな怖いよ?

 

「ちょうどいいところに来たわ、カルマ!」

 

「いえ、先に確認よ。あんた、こいつらが昨日から何やってたか知ってる?」

 

「何って……せんせー暗殺用の戦闘車の試作じゃないわけ?俺興味無いから途中で帰ったけど」

 

「アミサ、カルマからなんか聞いてる?あとカルマがいつ帰ったか知ってる?」

 

「え、え、今のと同じこと朝聞いたし、他の男の子からなんにも連絡来てないって……あと、昨日放課後塾のみんなで下駄箱行った時、もうカルマの靴なかったよ……?」

 

「「「よし、カルマは白だ」」」

 

「「なんの話……?」」

 

「ん、アミサちゃんはこっちおいで。逆にカルマ君は向こうで詳しく聞いてきた方がいいわよ」

 

「原!!カルマには1番言ったらダメだってッ」

 

「え、なになに〜?片岡さん教えて〜」

 

「アミサちゃんもしっかり対象にしてるからって、ワザとカルマ君にも黙って計画するなんてしょーもないことしたんだから、しっかり怒られときなさい」

 

 白……ってことは、なにかの犯人ではないってことでいいのかな……?でも結局何が起きているのかはまだ教えてくれてないから聞きたくて、カルマの後ろから少し顔を出してみれば私に気づいたおかーさんが手を広げて呼んでくれたから、遠慮なく抱きつきに行く……と、

 

「なんかねー、最初はちゃんと暗殺のための開発だったらしいんだけど、途中から女子のスカート覗きに発展しちゃったらしくてねぇ……」

 

「昨日の放課後からなんかやってたらしいよ」

 

「昨日の放課後……って、まさか、私が来た時にやってたの……」

 

「さぁ?そこまで暗殺のための開発だったのか、とっくに覗きに発展してたかまでは分かんないけど、アミサちゃんが片岡さん達に話してくれたから被害が出る前に今気付けたのよ。ありがとね」

 

「……そっか、なら、よかったの……かな?」

 

「うん!よかったの!この場にはいたけどあれ以上に発展しそうだったら止めようとしてた磯貝君と渚と、何も知らなかったカルマ君以外にはサイテーって言っていいよ!あと多分イトナくんもメカについては加担してるけど、言い出しっぺではなさそうっ!」

 

「茅野!?」

 

「いや、イトナは中心人物だろ!?」

 

「俺はダメ元でもいいからタコを殺しに行くために、戦闘車の改良の意見を取り入れて作ってただけだぞ」

 

「……………………。」

 

「ま、真尾さーん……?」

 

「ジト目で見られると……不穏なんだが……;」

 

 おかーさんとカエデちゃんからあっちのお説教の理由と内容を聞いて、最初こそ私があの時点でおかしいと気づいておけばよかったのかなぁと思ったけど、ちゃんと女の子の方に気づいたことを話したのが正しかったと教えてもらってホッとした。

 あと、何も知らされてなかったカルマと、見てただけの磯貝くんと渚くんが加担してなかったことと、イトナくんは思いっきり中心で動いてはいたけど、どっちかと言うと機械工作を楽しんでた延長なんだろうってことも分かった。

 

「……………………。」

 

「おっと、どうしたんだ?」

 

「え、アミサちゃん?」

 

「っと……ん、なぁにアミーシャ?」

 

 状況を聞いてちょっと考えて……私たち側に立っていた渚くんと磯貝くんの腕を片方ずつ取りながら、手をポキポキ鳴らして加担してた側らしい男の子たちに詰め寄ろうとしてるカルマの背後から、彼の腕も渚くん側の腕と一緒に抱き込んだ。

 不思議そうにしてる3人の腕をしっかり抱えてぎゅっと抱きしめながら、向こうの男の子たちを見て言っておくことにする。

 

 

 

 

 

「カルマと渚くんと磯貝くんと戦車作り楽しんでたイトナくん以外、みんな女の子の敵なんだ……さいてー……」

 

「「「うッ……!」」」

 

「ぶふっ、あははははははっ!!」

 

「あはは……見つかった時にやめとけばよかったのに」

 

「はは……まぁ、しょうがないよな」

 

 

 

 

 

 だって、純粋に暗殺道具として開発してたならまだしも、明らかに趣旨変わっちゃってるし……その上さいてーって言ってもいいことしようとしてたんでしょ?なら間違ってないはずだ。

 むす、とした気分のままカルマと渚くんの腕にぐりぐりと頭を擦り付けてたら、大半の男の子が言葉に詰まった中、カルマが爆笑しながら私の頭をぐしゃぐしゃと撫でて、渚くんと磯貝くんが苦笑いながら掴んだ私の腕をポンポンと撫でている。

 

「あ、あの心底ガッカリしましたって目で見られるの……めちゃくちゃ心にくるんだが……」

 

「他でもない、普段からほぼ好意の感情しか向けてこない真尾からってのが、キツイ……」

 

「あーあ、アミサちゃんに敵認識されちゃったねー」

 

「当分冷たい目を向けられるわよ〜多分だけど」

 

「女子の目ってだけでも痛いだろうけど、この子に軽蔑の目を向けられるって相当よ?……昨日イリーナ先生のトコで、あたしらがE組男子全員の印象を書き出してたんだけど、相当酷い評価つけてた男子にまで、アミサだけは全員高評価しか付けなかったんだから」

 

「「「……えっ」」」

 

「せっかく全員あーちゃんから好印象しか無かったのにね〜」

 

「1日で低評価に塗り替えたね、おめでとー」

 

「ちょ、待て待て待て!!」

 

「それマジで言ってる!?!?」

 

「大マジよ?全員の好きなところぜーんぶあげてくれて、本トにいい所見つけてすごいなーって思ったくらいなのに」

 

「それ聞いて見直せるとこあるじゃんって思ったばっかだったのにね」

 

「うっそだろぉ……!」

 

 そういえば、その話したの昨日なんだよね。みんな「誰々は、○○だけど××だよね」って言う中、その「だけど」が思いつかなくて諦めたのに……でも、これだとみんな一緒に、……あれ、てことは。

 

「……そっか、これが昨日莉桜ちゃんたちが言ってたことなんだ……男の子はみんなこういうコトが好きって覚えとけばいいんだね……、男の子……、……」

 

「アミサちゃん;ちらっと僕等のこと見て確認してから距離取らないで……;」

 

「……真尾、そういえば俺等も男だったって感じで、思い出したように静かに手を離されるとさすがに俺等でも傷つくぞ……」

 

「……、……ねぇ……」

 

「ほら、真尾に腕離されてショックだったカルマの怒りが再燃しただろ……;」

 

「好きというか男の(さが)だ!中学生男子だぞ!?興味無いやつはいないだろ!!渚も磯貝もカルマもその辺は同じ男だからな!!」

 

「いや、別にそれは否定しないけど、お前等の場合オープンすぎるから引かれてんだって気付け」

 

「……アミーシャ。いい?ああやって女子がいるっていうのも気にせず大っぴらにしてる奴だけ軽蔑して。渚君も俺も磯貝も、男ではあるけど別に誰にも迷惑かけてないでしょ」

 

「カルマ……お前必死だな;」

 

「……カルマも興味あるの?」

 

「……う、………………ひ、……否定は……しないけど……」

 

「あちゃー……答えにくい質問サラッとしちゃったよアミサちゃん……」

 

「はぐらかす事もできたのに、ちゃんと答えたカルマ君は勇者だよ……」

 

「とりあえず……いらない知識つけさせちゃったかもしれないね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか、あの戦闘車壊れちゃったんだ……」

 

 その日の放課後、戦闘車での暗殺(してないけど)作戦が一旦一区切りがついて終わったので、約束通り『学校復帰して1週間お疲れ様会』を私の家で開くことにした。

 確かに来る日になったら教えてね、とは言ったけど、まさかあの女の子対男の子の剣幕の中をサラッと抜け出して私とカルマのところまで来て、

 

〝アミサ、終わったから今日がいい〟

 

〝……?〟

 

〝家、呼んでくれるんだろ?〟

 

〝はぁ?なんでイトナがアミーシャの家に、〟

 

〝カルマ、俺は今日サボる。いい場所教えろ……その時話す〟

 

〝ふーん?……いいよ〟

 

 という感じになるとは思わなかった。

 

 私の家にイトナくんが来るって聞いた瞬間、カルマはすぐさま威嚇してたのに、2人で外へサボりに行って、何時間か後に帰ってきたらなんか意気投合して盛り上がってた。

 ……この2人ってよくトゲトゲした言葉でぶつかりあってたから、どうなることかと思ってたけど、仲良くなったならよかったかな。むしろどんな話題でそんなに盛り上がったのか教えて欲しいくらい。

 

 多分そのサボってる時に誘ったんだろうね……6時過ぎくらいにイトナくんが事前に言ってた通りのカルマと、あと渚くんと磯貝くんも一緒にやってきて、時間も時間だからとテーブルを囲んで今に至る。

 なぜこのメンバーをご飯会に誘ったのかを聞いてみれば、あの計画に参加せずむしろ止めようとしていたから、らしい。イトナくん曰く、他の男の子はともかく、このメンバーなら安心だろ?そこまで覗きに関わってないメンツだ、とのこと。磯貝くんなんて珍しすぎる人選はそういうことか……

 

「いやもう、本ト申し訳ないけどありがたい……チビ達の分だけでもかなり助かるよ」

 

 磯貝くんは私の家の前まで来てても、ギリギリまで家に帰らないといけないからって断ろうとしてたんだけど、多めに作ってるし小さな弟妹とお母さんのために食べきれない分持ち帰ってと言ったら、早めに帰るけどありがたく……と部屋に上がってくれたんだ。

 

「開発に失敗はつきもの……今回ダメなら次、それもダメならまたやればいい」

 

「イトナ君、淡々と作業してたもんね。違う分野で新たな仕事人が誕生したみたいだったよ」

 

「それが何をどうしたら覗きに発展しちゃうかな」

 

「年頃の男子だからってことにしといてほしいかな……」

 

 落ち着いたあとに教えて貰ったのだけど、あのラジコンの主砲にはカメラが取り付けてあって、それを見ながら遠隔操作ができる作りになってたらしい。で、それを見ながら試運転してたところに映りこんだのが……イリーナ先生の放課後塾を終えて教員室から出てきた私たちだった、と。

 見てた男の子たち曰く、「だいぶ際どかったけど見えなかった」みたいで、そこでやめておけば普通に暗殺のための道具作りですんで何も言われなかったのに、好奇心が疼いて止まらなくなったんだとか。

 

「あはは……でも、無事に一段落したからよかったね、……はい、できたよ」

 

「……うまそう」

 

「美味いよ〜アミーシャが作るの。たまに作ってる最中に爆発音するけど」

 

「すごいな、ありがとう。この量を1人で作るの大変だったんじゃないか?」

 

「ううん、お皿とかの用意してもらえたから。私は完成した料理を運ぶだけでいいから助かったよ?」

 

「カルマ君の家に泊まった時はアミサちゃんがご飯作るんだっけ?」

 

「そうそう、最近原さんに料理習ってるらしくてだんだん上達してるから、今日も楽しみだったんだよね」

 

「もっと上手くならなくちゃ、カルマに負けたくないし……その、4人とも男の人だし足りるかわからないけど……1週間お疲れ様でした。……召し上がれ」

 

「「「いただきます」」」

 

 頑張って作ったご飯を美味しいと言いながら食べてくれるのを見ると、照れくさいけどやっぱり嬉しいな。カルマで見慣れてるつもりだったけど、さすがは男の子って感じの速さで消費されていく……想像はしてたつもりだったけど、予想以上だった。

 食べながら箸休めに色々なおしゃべりを楽しみ、お疲れ様会は幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 私のご飯を気に入ってくれたのか、これを機に週に1回か2回、勉強嫌いなイトナくんが私の家で課題をすることを条件にご飯を食べに来るようになる。

 

 

 

 

 





「そうだ、聞いておこうと思ってたことがある」

「私に……?」

「アミサ、履いてるか?」

「「「……………………?」」」

「?」

「履いてる……?あ、スパッツ?」

「違う」

「?」

「……言葉が足りなかった。下着、履いてるか?」

「「「ちょ!?」」」

「へ!?は、履いてるよっ!い、いつそんな疑惑をもたれちゃったの……?」

「アミサが戦闘車を教室に届けてくれた時」

「う……た、確かに、昨日は乾いてなかったからスパッツは、履いてなかったけど……」

「スパッツだけで下着を履き忘れた、なんてことは無いだろ?」

「も、もちろんだよ……っ」

「……アミーシャ、もしかしてだけど、戦闘車の前にしゃがんだりした?」

「え、……うん。教室に持っていく前に色々触らせてもらった」

「……まさか、イトナ君……」

「その時、一瞬映った」

「「「「」」」」

「ちなみに他の男子は他の事で忙しそうだったから見てないはずだ……俺も、さすがに画面を隠した」

「それぞれの得意分野で盛り上がってた時だもんなぁ……暗殺のためって名分があったから俺も近くにいたけどさ」

「……もしかして」

「カルマ君、どういう事か分かったの!?」

「多分ね。……アミーシャ……俺、前に普通の女性下着にしてって言わなかったっけ……?」

「だ、だって、暗殺するのに邪魔なんだもん!動きにくいし……あとお姉ちゃんが動きやすいからオススメって送ってくれたんだもん」

「やっぱりそういう事か……だからって、あんなただの紐みたいな下着はやめてよ……俺、泊まりの時に洗濯回すの、ものすごく辛いんだけど、いろんな意味で」

「紐って……」

「真尾って家でも変わらないんだな……」

「(想像以上だった)」

「アミサ、せめてスパッツがない時は普通のを履いた方がいい」

「……そんなにダメかなぁ……」

「「「ダメ」」」



++++++++++++++++++++



紡ぐ時間でした。
女子視点だと難しいなーと思いながら書いてました。オリ主、下ネタ系に強くないことで周りから純粋認識されているためか、男子の輪に入っても警戒されずに送り出されました。
まさか男子達はそこでオリ主が見たこと聞いたことあったことを女子に、話してしまっているとは思いもしなかっただろう……当然オリ主に告口のつもりはなく、完全に善意です。

フリースペースは、後付けです。本編の中でなんの躊躇もなく戦闘車の正面にしゃがみこんだオリ主……これ、絶対見えてるよな!?から、この会話が生まれました。ちなみに下着については前々から考えていた設定だったりします。だから、夏の水着選びの時、紐ハイレグという際どすぎるものでもあまり動じなかったという裏設定……だって、普段着ているものの形に似ていますから、抵抗なんてあるはずが←




今回はsideアミサです。つまり、次回はsideイトナになります。こっちが捏造を含むちゃんとした本編かもしれません。




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