暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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オリ主はまだお休み中。
今回はカルマ視点と烏間先生視点の2場面でお送りします!



80話 死神の時間・5時間目

 

カルマside

 

 ────バァンッ!

 

「……首輪を爆破した……ってことは」

 

「この檻の中の映像を見たってことだ」

 

「よし、焦った死神は烏間先生のところまで戻ってくるはず……結果がわかるまで、このまま待機だ」

 

「ぐぐ……キッついな」

 

「でもまだ楽な方だろ……体力的にはまだラクショーだぜ」

 

 監視カメラの映像を見ているだろう死神は今、多分こう思っていることだろう……破壊もせずに出られるはずもない檻から人質が、標的である殺せんせーを含めて1人残らず消えたって。人質も標的も何もいない場所に水を流したって誰も殺せないし意味もない、この建物からは出られないのだからもう一度全員捕まえに行って振り出しに戻してしまえばいいって。

 ……と、死神にそう考えさせて水を流すことなく烏間先生のいるところまで戻ってもらうのが俺等の狙い。

 

 俺等が今していること……それは、3人1組(スリーマンセル)で肩車をして壁に張り付き、超体育着の暗殺迷彩の保護色を利用して壁の色と同化することで、カメラに映らないようにすることだ。

 

「……これでホントに騙せてんの?」

 

「多分ね。光の加減もバッチリだし、映像くらいなら騙せてるはずだよ」

 

「まったく……ラジコン盗撮の主犯どもが大活躍とはね……」

 

「……なんか、腹立ってきたんだけど……ッ」

 

「後にしろカルマ!今手ぇ出されたら終わる!」

 

「いや後にもするなよ……一応終わった話だろ……」

 

 片岡さんがため息を吐いているとおりこの作戦で力を発揮したのは、作戦を提示した三村を除いてカメラやレンズに詳しい岡島と、電子工学なら右に出る奴がいないイトナ、そして偽装工作など美術に秀でた菅谷だ。

 ……活躍してるメンツがメンツなだけに、嫌なこと思い出して腹が立ってきた……命がかかってなければ手を出してたかもしれない。

 

 

 

++++++++++++++++++++

 

 

 

 まず三村が着目したのは、ビッチ先生が投げつけてきて偶然というか運良くというか……鉄格子に引っかかっていた爆弾付きの首輪が俺等の首に付けられたものと同型だということだった。

 爆弾が脅威だからとそう乱暴に扱うわけにはいかない……もし無理やり外して起爆したり、外したことによって死神へ信号でも送られたりしたら俺等の命に関わるし、なによりそうなるくらいなら外すことの意味が無いからだ。でも、ビッチ先生の置いていったソレが同型ということは……ソレの構造が分かれば俺等に付けられたものの構造もわかるということ。

 

 自分も何かやりたいと騒いでいた殺せんせーが運良く回収できたソレの整備用の蓋を外し、イトナが回線を確認したところ……

 

「……通信(リモコン)回線は、起爆命令と鍵解除の2chだけだ。簡単な構造だから、乱暴に外しても起爆しないし奴にもバレない」

 

「だそうで……殺せんせーと《(イン)》さん、頼むよ」

 

「お安い御用です」

 

……なるほど。ならば万が一細工の途中で死神が脱走を疑って映像を見る可能性があること考えて、監視カメラに映らないように外すべきだな?

 

「はい、限りなく見えないように……安全の確保ができたら手錠もお願いします」

 

承知した……ならば私は姿を隠そう。……そうだな……《月に踊る蝶たちよ》……《月光蝶》

 

「え……」

 

「その技って、アミサちゃんの……」

 

 三村が首輪を外す姿を見られないようにしたい、という要望を出すと、《銀》は1つ頷いて了承したかと思えば、少し迷う素振りを見せたあと、その場でくるりと回り一度の跳躍の後に俺等の前から姿を消していた。……アミーシャと全く同じ、気配を限りなく薄くして空間に姿を隠してしまうクラフト。

 今回の《銀》が使ったこれの効果は、俺等が見たことがあるアミーシャのような気配から姿まで完全に隠してしまうものじゃなくて……気配は限りなく希薄にしてはいるけど完全に無くすのではなく、単に姿だけを見えなくする程度に調節してくれてるようだった。首輪を外すために近くに《銀》がやってくればなんとなく分かり、いきなり外されても俺等が驚いて大きく反応してしまう、なんてことが無いように。隠すことができるなら見せることもできる……俺等のために外す直前にわざと気配を見せてくれてるのだと思う。

 

「あれって真尾と同じクラフトってやつだよな……そっか、《銀》さんも真尾と同じ大陸から日本に来たんだし、同じ技を使えてもおかしくないのか」

 

「クラフトは個人固有のものとは言ってたけど、前にアミサちゃんから聞いた限りだと武器によっては流派とか武術とかあるらしいし、きっと元が同じ型なら同じ技名とかも有り得るだろうしね」

 

「たしかに!」

 

……、……そんなこと、あるのか……?

 

 クラスメイト達はあのクラフトを偶然の一致なんだろうと、それで納得してるけど……俺は違和感が拭えなかった。技の名前の一致ならともかく、普通クラフトを操るのに集中しやすいからと詠唱する言葉まで一字一句同じになるもんかな……って。気合いの入れ方だったり挑発の言葉だったりって人それぞれじゃん?

 それに、アミーシャは確かに戦闘経験者とはいえ立場としてはアルカンシェルに所属するアーティスト、リーシャさんの妹でしかない……ただの一般人のはずだ。対して《銀》は100年もの歴史がある暗殺者……流派も何も、立場だって、存在そのものが違うはずなのに同じ技って使えるものなんだろうか……?他にも共通点があれば疑えるけど……ま、確かめようがないから気になったってどうにもできないことに変わりないんだよね。

 

 何人目かの後に俺も爆弾付きの首輪や手錠を外され、壁に背をつけて腕を隠しながら軽く手首を回していると、手錠を外された両手を呆然と見つめる渚君が目に入って、つい声をかけた。

 

「どーしたの、渚君。何が見えてんの?」

 

「ッ……あ、いや……ま、まだ縛られてるふりしなきゃね。それで三村君、次は?」

 

 ……露骨に話を逸らされたか。一瞬で元の渚君に戻っちゃったから確証があるわけじゃないけど……両手を見つめていた渚君にまた、渚君の中にある何かを感じた……時々感じる、油断しちゃいけない、得体の知れない何かを。

 ……()()?俺は前にも同じように感じたことがあるってことか?渚君に感じたソレは、はじめてじゃない……?

 

 ……気にはなるけど、今はこんなことを考えてる時じゃないよね。よく分からないのと、渚君が脅威になる前に早く潰したいっていう気持ち悪い思いを無理やり押し殺し、頭の隅に追いやった時には、三村が新しい指示を出していた。

 

「次、岡島。監視カメラはどうだ?」

 

「……んー……強めの魚眼だな。忙しい時でも一目見れば部屋全体がチェックできる。あとは《銀》さんが言ってた絶対に壊せない檻の外に1つ……この2つに死角はないけど、お前の読み通り()()()()()()()()場所がある」

 

 次は監視カメラの見え方について……岡島曰く、魚眼レンズだと端の方が大きく歪む代わりに広い視野を確保できるんだそうだ。歪んだ視野は魚眼補正プログラムを組みさえすれば綺麗な平面としてモニターに映すことができるらしいけど、モニターを確認する限り端の方が歪んで表示されてる……つまり、そんな補正は一切入ってない。

 歪んだ場所が正確に映るはずはなく、それを利用すれば死角に入ることはできなくても紛れることはできるかもしれないというのが三村の考えだった。

 

「よし、その見えづらいところに上手く紛れるために……菅谷、できる?」

 

「おう、任せとけ。マジ使えるよ、超体育着の暗殺迷彩……壁の色そっくりに変えられるぜ」

 

 そこで色彩感覚に優れた菅谷が代表して俺等全員の超体育着にカラーリングを施していく……閉じ込められた牢屋の壁と同じ色に、紛れるために。

 

フフ、お前達の考えることは面白いな……だが、人数も人数だ。範囲も狭いだろう……どう紛れるつもりだ?

 

「うーん……カメラの位置からして……ここからここまでが魚眼レンズの歪みで誤魔化せる限度、だな。で、壁にできるだけ寄る必要があるから……9‪×3の肩車が理想だと思ってる」

 

……長時間は土台になる生徒が体力的にキツイ、か……、……いいだろう、体力に関しては私が何とかしてやる

 

「え、何とかって……」

 

……この牢屋の範囲なら全員入るな……肩車をする前に私が継続体力回復アーツをかける。何もしないよりは長時間耐えられるだろう……先に3人1組(スリーマンセル)を組め……ああ、上に乗る者は下手に身動きとらないことだ、下になる者の負担となり、より体力を消耗する

 

「「「はい!」」」

 

 《銀》曰く、かけようとしているアーツの有効範囲は牢屋全体に十分あるらしくて、今すぐに肩車を組む必要はないみたい……俺等は身長や体格の差、実際2人、1人を支える力があるかどうかなどを素早く確認しながら3人1組を組んでいく。それを確認した《銀》は俺等が輪を作る中心に立った。

 そして、夏休みにも目にした太極陰陽図のカバーをつけたエニグマを構えるとぐるりと俺等を見回し、握りこまれた導力器から見慣れた青い光が彼の体を包み込んだ……

 

 ……どうでもいいことなんだけど、こう近くで見ると《銀》ってかなり小柄なんだな……牢屋の外で俺等の前に立って、守ろうとしてくれた背中は大きいように見えてたけど、実際目の前にしてみると俺よりかなり小さい。

 見下ろせる位置に頭があるし、なんならアミーシャくらい……いや、肩の位置くらいには頭があるし、それより少し大きいか。大ぶりのフードも被っているせいでイマイチ分かりづらいな。

 

いくぞ……エニグマ駆動……大地の恵よ、アースグロウ(土属性継続回復魔法)

 

 茶色い光が27人全員の体に染み込むように消えていくのと同時に、A班10人の体に残っていた最初に死神から気絶させられた時の傷が消えていくのが見えた。……そうか、回復魔法だから目に見えたこういう傷も消えるんだっけ……俺自身、左頬に触ると痛みのあった打撲痕が何も無かったかのように回復しているのが分かる。

 

 そして、《銀》からGOサインが出てすぐ、ガタイがよくて体重のある男子を下にして順番に登っていき、壁に向かって三段肩車を組んで、現在に至る……というわけだ。

 

 

 

++++++++++++++++

 

 

 

 これが三村が考えた作戦の全貌……どう、理解してくれた?ただこっちの牢屋側と烏間先生側、お互いの様子を死神にバラさないようにするためにもトランシーバーを付けられないから、烏間先生たち側の様子が分からないんだよね……

 ここに戻ってくるなりどっか分かりやすいところに来てくれるなりしてくれないと、いつまでこうしてればいいか分かんないし。当然目立った音もまだ特に聞こえてこないし、暗殺迷彩を全身に施すために壁側を向いてるからモニターも見れないし。つまり、何が言いたいかというと、肩車に集中するだけじゃ暇。というわけで。

 

「……ねぇ《銀》、聞きたいことがあるんだけどー」

 

「……お前……余裕あんな……ッ」

 

「お前も1番下のくせに……ッ」

 

 多分牢屋のどこかにいるだろう《銀》に向かって話しかける。重さに耐えながら唸ってるやつもいるけど、俺は別にそこまで苦痛でもないしね。俺が話しかけたからか、ゆら、と若干の気配が近くに移動してきてくれたのを感じる。

 ああ、《銀》にはこの牢屋の中……というか、監視カメラの映る範囲内に1人残っているのもおかしいからってことで、クラフトで姿を隠したままでいてもらっている。自分1人であれば完全に姿を隠せるから、《銀》だけに限れば牢屋の中を自由に移動できるわけだ。

 

なんだ?暇そうだな、赤羽業

 

「今の状況って死神がどうこうするまで待つだけだしねー……と、あのさ、前に俺の恋人が自分以外の姿を隠す……マスターアーツ、だっけ。それが使えたんだけど、《銀》は使えたりしないの?使えるんならそれ使った上で《銀》はステルスのクラフト使えば、俺等こんな肩車とかしなくてよかったんじゃないって思って。あと幻属性のアーツにステルス状態にするアーツがあった気がするんだけど、それは使わないの?」

 

 三村が解決策を思いついてこの体勢になった後から湧いてきたちょっとした疑問だったんだけど、もしこれが可能だったならもうちょっと楽できたんじゃないかなって。周りのヤツらも興味があるのか視線がこっちを向いたり、ちょっと静かにしようとした雰囲気を感じる。

 

……お前、アーツの普及しない大陸で生きる子供にしては詳しいな。まあいい……お前の言うマスターアーツは≪幻影のルーン≫の事だな?結論から言えば私も使うことができる、が、1度発動すると術者はアーツを継続発動するか切るかの二択でしか行動できないことは知っているか?

 

「……あ、殺せんせーがそんなこと言ってたかも」

 

「言ってた言ってた。ついでに移動もできないんだっけ」

 

そうだ。つまり、発動後に私自身をステルス化することはできない……解除後にクラフトを使うことはできなくは無いが……そもそもマスターアーツの使用EPが大きいからな、あまり使いたくないのが本音だ。逆にステルス効果をつけた後にマスターアーツを発動したとしよう……基本的にステルス解除条件は、移動以外の行動だ。アーツを発動した時点でステルス効果は切れる。結局、その方法では全員を隠すことができなくなるというわけだ

 

「なるほどねー……」

 

「じゃあ、カルマ君の言ってた幻属性のアーツでステルス化するってやつはどうなの?」

 

……あるぞ。単体対象アーツな上、1度の使用EPが100必要だがな

 

「……えーっと、27人全員にかけると2700ポイント必要で……ひと繋がりのライン持ちだとしても、たしか最大で1200がどうとかって言ってたよね……」

 

「物理的に無理ってことかぁ……」

 

EP回復薬があれば可能かもしれないが、全員にかけ終わる頃には最初にかけた奴らのステルスが切れてるだろう……やるだけ無駄だ

 

「だから提案すらしなかったわけね、納得。……ありがと」

 

 導力魔法やクラフトって、やっぱり不可思議な現象を起こせるとはいえ万能じゃないんだな……死神との交戦のおかげでエニグマの駆動ができたとしても、発動前に妨害されるとアーツ解除、なんてものもあるって分かったし。アミーシャが場を見てから駆動するんじゃなくて、先読みして駆動し始めてることが多々ある理由がわかった気がする。

 

「で、ここまでめちゃくちゃ静かだけど殺せんせーは?」

 

「先生はフツーに保護色になれるから、俺等の隙間を自然に埋めてる」

 

「ほほう、つまり今は素っ裸、と」

 

うぅぅ……もうお嫁に行けない……

 

「赤くなんなよ、バレっから!」

 

 というわけで俺等は檻の中に全員いるけど、カメラを通した死神から見れば誰もいない、標的も人質も全員脱走したあとの部屋が完成っと。

 さっき首輪を爆破したってことは、この部屋の様子を見て、首に付けた爆弾は偽物じゃない、爆破するって言葉はフリじゃないってのを物理的に俺等へ示して脅そうとしたんだろうね。きっと死神は慌ててる……外した首輪を俺等のいない側の歪みが出る壁際に隠し、逃げる時に外して置いていったと誤認して。

 

 

 

 ────ドパァン!

 

 

 

「なに!?」

 

「向こうで何か水に落ちたぞ!」

 

「ふむ……上からの立坑ですねぇ……そして、烏間先生と死神!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間side

 

 生徒達に言われた通り、死神の追跡ではなく瓦礫の下敷きとなったイリーナの救出を選択する。……ある程度の高さと量が積み上がっているが……細々と小さいものまで丁寧にどかす必要は無いだろう、一番下の、彼女のすぐ上に乗っているものから一気に持ち上げてしまえばいいか。

 後々生徒達に知られた時に、過程を色々すっ飛ばして今以上に人外方面に突き進まないでと言われる内容を考えてすぐ、彼女の上に積み上がる瓦礫へ手をかけて持ち上げたところで、意識が戻ったのかぼーっとしながら目を開けたイリーナと目が合った。

 

「……さっさと、出てこい。重いものは俺が背負ってやる」

 

 呆然とした表情のまま無言で瓦礫の下からはい出てきた彼女を座らせ、傷を確認すると左腕が赤く腫れ上がっていることが分かった……骨折か打撲か、あるいは筋を痛めたか。

 医者ではないから自分の所見が正しいかは知らん、あらゆる場合に備えて応急手当をしておくだけだな。俺の着ていたシャツを破ってロープ替わりにしその辺に落ちていた板で添え木として固定してやっていると、無言で作業を見ていたイリーナが突然顔を押さえ、その指の隙間から大量の血が……

 

「おい、血が……!」

 

「……いや、アンタがいい体すぎて興奮した……」

 

「……脳に異常かと思ったが、お前の場合それが正常だな」

 

 たった今押し潰されかけて死にかけていたというのにこいつは……既にあの教室での彼女と変わらず、心配を返せと言いたくなるほど通常運転な様子に少しばかり安堵する。

 

「お前に嵌められてもなお……生徒達はお前の身を案じていた。それを聞いてプロの枠にこだわっていた俺の方が小さく思えた……思いやりがかけていた、すまない」

 

「………、」

 

 任務として動いている以上プロ意識という面で俺自身のプライドがある分やはり譲れないことはある……が、俺の意思ばかり押し付けるようなことをしてしまった、俺の言葉のせいでこの決断をさせてしまったという負い目もあった。だから手当てを続けながらだが、俺なりに真剣に謝った。

 俺の謝罪が受け入れられたのかどうかは、彼女が黙ってしまっていたから分からず、確認する前に瓦礫の向こう側から先程も感じた嫌な気配が近づいてきたのがわかって顔を上げる。少し遅れてだがイリーナも気付いたところはさすがは殺し屋(ほんぎょう)と言ったところか……あれは戻ってきた死神だ。

 

 戻ってきたということは、生徒達の計画通りに進んでいるということ……直にどうにか瓦礫をどかしてこの場所へ戻ってくるだろう。このまま正面からぶつかってはどんな小細工をされるかわからない……少しこちらからも仕掛けてみるか。

 

「イリーナ、お前が育った世界とは違うかもしれない。それでも俺と生徒達の教室(せかい)には、お前が必要だ」

 

 ……これで俺が今イリーナへ直接伝えられる言葉は全て尽くした、あとは彼女が決めること。それだけを伝えて彼女の反応を見ないまま、俺は死神が来ることに備えて身を潜めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

 無事、俺等の作戦は功を奏したらしい。何をどうしたのかまでは知らないけど、死神はだいぶ向こうの方で烏間先生が相手してくれている……これでまた操作室に行かれて仕掛けを動かされない限り、この場所は安全になったはずだ。

 隠れる必要もなくなったから、全員肩車をといて鉄格子の前に集まり、2人の戦いを見守る……見守りたいんだけど、ここからじゃ何か2つくらい動いてるのがいるなーってぐらいしか分からないだよね。遠すぎるんだよ……それだけ安全なんだろうけど。

 

「殺せんせーなら見えるんでしょ!今どうなってるの!?」

 

「え、えぇっとぉ……、死神がナイフを出しあぁ違うワイヤーだ!烏間先生これをおおっすごい!避けざまに返しの肘ああダメだナイフを盾にされッ咄嗟に蹴りに変えーと、えーっと同時!な、なんか、なんかすごい戦いだーーッ!」

 

「何言ってるかサッパリだよ殺せんせー!!」

 

「ミートゥー!!!」

 

「自分でもわかってねーのかよ!?」

 

 目をカタツムリのように伸ばして遠くの様子を見る殺せんせー……夏休みにこの殺せんせーを見たことがある前原曰く、ズーム目というらしい。

 それを使って遠くの烏間先生達の戦いを実況しようとしてくれてんだけど、とにかく実況が下手すぎる。先生の説明スピードで追いつけないくらい早い攻防が繰り広げられてんのはなんとなく分かった気がするけど、結局1番知りたい向こうの状況はサッパリだ。何が起きてるのかが把握できない。殺せんせー、実況やり始めたならすごいの一言でまとめて諦めんなよ……

 

「心配せずとも、そう簡単に烏間先生は殺られません。死神の持つ技術(スキル)は確かに多彩、しかも全ての技術が恐ろしく高度……彼の前ではいくら警戒しても裏をかかれるでしょう」

 

だからカラスマは、あの場所であえての接近戦を選んだ。周りに何も無く、死神が小細工することもできず、且つ自分の最も得意な領域に持ち込むことで、死神がこだわる技術(スキル)の差をほぼ無いものとして……いや、それ以上有利に戦っているわけだ

 

「先生のセリフとられた!?」

 

……フン、さて……

 

 自然と殺せんせーの言葉を引き継いだ《銀》に先生がなんかショックを受けてるけど、みんなは清々しいくらいにそれをスルーしてて。

 今まで姿を隠してくれていた《銀》が見えるようになったかと思えば、自分のリズムを崩すことなく殺せんせーの声を一蹴しながら、檻の中へ入ってきた時のように鉄格子を抜けて外側へと姿を現したことに自然と目が追いかけていた。

 

「《銀》さん、どこへ……?」

 

元よりアレに参戦するつもりは無いが、近くで見届けるのもおもしろい。……それよりもお前の危惧することが起きるのならそろそろだろう。私に構う暇があるなら備えた方がいいのではないか?

 

「そうですねぇ……死神はこんな状況でも秘密兵器を隠し持っている可能性が高い。では、そろそろ準備に入りましょうか。それと《銀》さん、私のことは『お前』ではなく『殺せんせー』と呼んでください」

 

……ふっ、考えておこう。──行くぞ

 

 考えておこうって、それほとんど実行されずに終わるやつじゃ……でも殺せんせーは満足気に頷いてるし、言わなくてもいいか。

 ゆらりと空間に溶けるように《銀》がいなくなると、殺せんせーはアカデミックローブの下からトマトジュースのペットポトルを取り出した。何に使うのかと思えば烏間先生を助けるためです、とだけ言ってフタを開けたペットポトルの口をくわえ、ズーム目にして遠くの戦いを見ているまま、そっと檻の隙間から触手を伸ばした殺せんせー。

 

「脱出は無理でも、触手1本なら檻の隙間からぎりぎり通せますから」

 

「……ポンプ?」

 

「そうです。触手を通して、烏間先生の所までトマトジュースを届けます……まるで、血のように」

 

 烏間先生から、死神によって殺されたもしくは殺されかけた多くの殺し屋達の殺られ方を聞いた殺せんせーは、その方法を瞬時に見抜いたんだとか。それはすれ違いざまに指をさされ、気が付けば胸から大量出血……何も道具を出していないかのような殺り方だから『死神の見えない鎌』と言われてるんだそうだ。

 

 でも、当然カラクリはあるわけで……指先に仕込まれたわずか10口径の仕込み銃、普通に撃っても殺傷能力はゼロに等しいそれで狙っているのは、筋肉と骨の隙間……心臓から伸びる大動脈。裂け目が入った大動脈は自身の血流圧で裂け目を広げていき、そのまま大量出血となるわけだ。

 撃ち込んだ銃弾は血流に流されるため、凶器の特定は不可能に近く銃声もしない……まさに暗殺にうってつけな凶器は、《銀》が言っていたような死神にとってこだわっている花の美しさのようなものなんだろう。

 

「殺せんせートマトジュース飲むっけ?」

 

「あまり好きじゃないですが、烏間先生とこのアジトへ来る途中に買いました。必要になると思いまして」

 

「で、それがその触手となんの関係があるの?」

 

「先生のこれは烏間先生を守るためです。どんなに距離があっても、同じ空間で先生の目が届く限りにいてくれさえすれば、この触手は届きますから、必ず守ることができます」

 

「……そうか、殺せんせーの触手は保護色で隠せる……死神が狙う烏間先生の血管の位置に触手を貼って、トマトジュースを血に見せかければ」

 

「死神は烏間先生が出血して死にかけてるって勘違いするはず……つまり、隙ができる!」

 

 直後、「うぐおぉぉお!?」というものすごい悲鳴がここまで響いてきて反射的に2人の戦う場を見たけど、俺等に見えるわけがない。

 だから烏間先生が死神に何かやったんだろうなとは思ってたけど、カラになったペットボトルを口から離した殺せんせーが、真顔の超棒読みで「わー、金的……」と言ったことで何をしたのかが判明……烏間先生……。烏間先生の殺人ゲンコツなのか蹴りなのかは知らないけどそれを股間に受けるとか最悪じゃん……死神は敵だけど痛みだけは同情するわ。他の男子も同じ男として痛みが分かるからか、そっとソコを押さえるなり、だいぶいたたまれない顔をしてるなりと何かしらのダメージを受けてるのが見て取れる。

 

「全生徒と全先生、クラス皆で掴んだ勝利ですねぇ」

 

 その後、ガァンと大きく鳴った打撃音……嬉しそうにクラス皆で掴んだ勝利だと嬉しそうにしている殺せんせーから、烏間先生が死神にトドメをさしたんだということが分かる。歓声を上げるE組を横目に、俺も安心できたのか張り詰めていた緊張がとけて大きく息をつくことが出来た。

 

 

 

 





『烏間先生!多分死神は檻とかカメラとかを一括操作するスマホを持ってると思います!それで檻を開けられないですか?』

「スマホ……これか。……ああ、これくらいなら俺でも十分に操作できる」

『ホントですか!』

『でも、死神も馬鹿じゃねーんだしさ、ロックくらいかけてんじゃね?』

『バカ、あのタイプのスマホなら指紋認証もあるだろ!』

『そっか、死神は先生のとこに転がってるわけだから、』

「……俺のスマホでは指紋認証はないからよく分からん。死神の、指紋が必要なら…………指を切ればいいのか?

『『『やめてくださいグロい!』』』





ふふ、《痩せ狼》との戦いを感じさせる素手の戦いか……だが、明らかに《痩せ狼》の技量のが上、死神も拍子抜けだな。私の手は必要ないわけだ……まあ、いい。ギリギリまでは見届けさせてもらおうか



++++++++++++++++++++



続きも書いてあったのですが、二万字近くいきそうだったので、いったん切ります。戦いと言うよりは、ほぼほぼカルマ視点の心情語りになりました、死神編5時間目です。この時に渚は覚醒してる……ということは、カルマもだいぶ目に見えて意識してるんじゃないかなと考えてこの展開に持っていきました。そろそろ溜め込み始めてもいいんじゃないかなって思って。

《銀》を登場させたのですが、戦闘シーンに組み込みにくく生徒のフォローに回ってくれてます。次回、《銀》は暗殺者なんだよって場面もきちんと出しますから!

堅物って言われると機械に弱いイメージが強く……烏間先生はどうなんでしょうか?普通に使えるけど、パスコードとかは使っても指紋認証は知らなさそう……と思ってフリートークに書いてみたら物騒になりました。


次回、死神編ラストです!



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