流石に6年はお待たせしすぎですね……。ごめんなさい。
みやすさと調べやすさから別サイトにも同じものを連載し始めているのですが、こちらの方が色や文字サイズを変えることができて伝えたいことを伝えやすいので、続きを書き進めることに改めて決意しました。
再投稿という形で、読みやすさと伝わり安さ重視で完結まで頑張ります!
1話 出会いの時間
「よし、上がった!」
「くそ……あんなに勉強したってのに……」
「まぁ、あいつよりはマシだろ?」
「それもそうだな!よし、部活行こうぜ!」
ガヤガヤと賑わう放課後。私は手に持ったテスト用紙を小さく折りたたんでカバンの中にしまって席を立つ。テスト結果で周りが一喜一憂する中、私はそっと教室から歩き出した。
私の通う私立椚ヶ丘中学校は東京都内で……ううん、全国でも有名な進学校だ。偏差値66のこの学校には独自のシステムがある。成績、素行の善し悪しが全てで、世間一般的に認められる結果を残せばそれだけ上を目指せる完全実力主義……その反面、結果を落としてしまえば3年生から存在するという『椚ヶ丘中学校特別強化クラス』
別名『エンドのE組』へと近付いていく、というものだ。
聞いた話では『特別強化』と銘打つ割には成績不良者のみがこのクラスへ落とされるわけではなく、素行不良な者、成績を付ける最たるものであるテストに参加出来なかった者、校則違反者も問答無用で落とされるのだとか……。E組は本校舎から1kmも離れた山の中の旧校舎にあり、当然山の中だから学食はないしトイレも汚い。そして本来なら所属できるはずの部活動は参加できないし、その他全てのことにおいて低待遇だ。そして本校舎の生徒や教師から見下され、嫌がらせや差別も公然とされる。……それが、この学校での当たり前。みんな、そんな環境へ進んで行こうだなんて思わないから、見下されるわけには行かないから、授業だけでなく休み時間も勉強、勉強、勉強……そんな世界、私にとっては、息苦しくて仕方がなかった。私は、ただでさえ自分のことですら、何も決められないまま逃げているのに。
「……テスト、かぁ……」
今日返却されたテストの結果を思えば……正直、私の成績は全然悪くないと思う。勉強は知らないことをたくさん知れて楽しいし、疑問に思ったことに答えを出すのが面白いし、調子のいい時には学内考査の順位表に載ることもある。このまま成績を落とさず、素行にも気をつけて進級すれば、容易に成績トップのクラスに振り分けられるレベル……つまり、上位争いに参加できるくらいの実力は、ある、と思う。……たぶん。
ただ私は、中学1年生ではあるけど、将来進むべき道は既にほぼ用意されている……と、言ってもいい。それは学業成績には左右されない、技を、志を、
……中途半端な私は、家族から離れて1人日本に来た。
道を選んで、進んでしまえばもう感じられないだろう、【当たり前で】【普通】の生活。 この、故郷に比べて圧倒的に平和な日本という国に送り出されて……どうせなら、もう味わえるかも分からない、普通の生活を送ってほしいと唯一の家族に送り出されて、評判のよかったこの学校を選んだ。だけど周りはみんな、いろんな優劣で態度を変える人たちばかりで、私はどうしても好きになれなかった。
……これが、私が、たった1人の家族が私に望んだ、当たり前で普通の生活っていうものなのかな。この学校に入学して半年過ごしてきたけれど、みんな、私の見た目や成績だけを見て集まる人たちばかりだった。心から付き合える〝友だち〟なんて呼べる人は1人もできなかった。……だからといってこの環境に順応したくはなくて。だけど1人ぼっちの私はそんなに強くなくて。
今日も、テストが返ってきたくらいでいつもと変わらない一日が終わり、1人で校門を出る。誰とも顔を合わさず、ゆっくりといつの間にか当たり前となった通学路を歩く。このまま家に帰って、また何も変わらない明日が始まるのだろう……
────ドンッ
「!」
「ッてぇなー……何しやがるんだ?」
……って思ってた。……だから、こんなイレギュラーが起きるなんて、予想外もいいところ。そして、この出来事が私を取り巻く全てが変わった、始まりだったんだ。
◆
???side
その日はいつものように2人で帰っていた。
きっと明日も明後日もその次の日も、僕らにとって当たり前で普通な生活が、変わることなんてないんだろうと思いながら……
────……っ……
「!」
「どうかしたの?カルマ君」
──……〜……っ!!
「……ねぇ、なんか聞こえない?」
「え」
「多分、こっち」
「え、行くの!?」
……どうやら今日は、彼の気まぐれでその〝いつも〟とは違う日になりそうだ。といっても……やっかいごとに巻き込まれに行くのはいつもの事といえばいつもの事なのかもしれないけど。
だけど僕は、躊躇いもせずスイスイ進んでいく彼の後ろ姿を小走りで追いかけながら思ったんだ。
「っ……来ないで、ください!」
きっと、明日からは僕らの普通で当たり前の毎日が変わるんだろうなって。
◆
「〜〜っやだ、来ないで、ください!」
明日が来るのが憂鬱で。顔を伏せたまま、周りなんて何も気にせず歩いていたのがいけなかったのか、前から歩いてきた何人かの男の人たちの1人にぶつかってしまった。すぐに謝りはしたのだけど、最初は私を睨んできたその顔が、明らかに値踏みをするような視線に変わったのを感じて怖くなって。その気持ちの悪い視線から、思わず何か言われる前に逃げたのだけど……
「その制服、椚ヶ丘だろ?エリート様かよ!」
「エリート様にはわからない遊びを教えてやるって、ほら」
「お前小さい割には、結構ないいもんを持ってるしなぁ……」
「嫌、や……です……っ!離して……っ」
……いつまでたっても撒けずしつこい上に、気がついた時には路地裏に追い込まれてしまっていた。いつもと変わらない日常はたしかに嫌だと思っていたけど、こんな変わり方だって嫌……!誰もいないし、なんとかしようと思えばなんとかなるけど、一般人を名乗ってる今は何もできない。掴まれた腕を振り払うことも、今どうすればいいかも分からなかった。力を使わなくても逃げられる方法なんて教えてもらってないし、私がいくら力をつけてもあの人たちにとっては私は守られる存在でしかなかったから必要としなかった。
──そんな、なすすべもなく暗がりに引っ張りこまれそうになっていた時に、聞こえたんだ。
「ねー、お兄さん等。なにやってんの?」
その声の方へ振り向くと、2つの人影。「なんでここにあいつが」とかいいながら、私を離した男の人たちがそちらへ走っていく。途端、ふっ、と足に力が入らなくなって私はその場に座りこんでしまった……あれ、もしかして緊張とか……けっこう怖かったのかな、私。
自分の気持ちすら理解出来ないで呆然としている私の視界の端に、キレイな〝赤〟が揺らいで見えた。気になってそっと顔を上げてみれば、私にちょっかいを出してきた男たちがその揺れる〝赤〟に殴りかかるところだった。
「ッ赤色さん、危な……っ!」
私のせいで巻き込みたくないと思った。けど、
「──ガァッ!」
「……え?」
「え、なぁに?何か言った〜?あははははっ!あ、カバン持ってて〜」
「あー、うん。程々にね」
私なんかが心配する必要が無いくらい、〝赤色〟の彼はとても強かった。サラッとあの人たちに殴りかかったかと思えば一瞬の隙を作り、男の人に乗り上げ、また殴って、蹴って。……これが、喧嘩、という奴なのだろうか。見てる限り、一応命のやりとりってほどのことじゃない、とは思う、……相手は痛そうだけど。でも、わたしの知ってる命のやり取りが当たり前の世界とは大違い。楽しそうに喧嘩する〝赤色〟と一緒にいた〝水色〟の中性的な人はその光景に慣れているのか、普通に投げられたカバンを平然とキャッチして呆れ顔のまま傍観している。不思議だった。私は、目の前の理不尽だろう暴力を見ているにも関わらず、同じ理不尽をぶつけてきたあの男の人たちには恐怖と嫌悪感しか無かったのに、彼らに対しては全然恐怖を感じていなかったことが。
「ねぇ」
「っ!!」
「あ、ご、ごめん!そんなに驚くなんて思わなくて……!そうだ、怪我はない?」
「……う、うん……」
……あれ、この〝水色〟の人、こんなに近くにいたっけ。気がついたらすぐそばに来て声をかけてくれた彼に、私は大袈裟なくらい驚いてしまって、何も悪くないのに謝らせてしまって……少し、申し訳なくなって下を向いた。
「なーにー?俺も混ぜてよ」
「あ、終わったんだ」
返事もまともに返せないうちに、絡んできた男たちを殴っていた〝赤色〟も近くにやって来た。いつの間にか彼らが話す以外に音がしない。慌てて〝赤々〟の後ろへ目をやれば、見事に伸されて動かなくなっている男たちの山。……そうだ、私は固まっている場合じゃない。何事も無かったように2人で会話している彼らは、私を助けてくれたんだ。まずすべきことは……
「あ、あの……助けてくれて……ありが、とう。いきなりで、どうすればいいか分からなくて……怖かった、から……」
「ううん、僕はなんにもしてないよ。むしろしてたのは……」
「あれなら本気になる必要も無いくらいだよ」
「イキイキと不良の中に飛び込んでいったもんね……」
……感謝を受け取ってもらい、改めて突然現われた2人を見ていて思ったけど、見事なくらい色々な部分で正反対の2人のように思う。身長も、髪の色も、性格も。一緒にいたら反発しそうなのに、この2人からは全然そんなものを感じない。……私には無いものをもつ2人を、この時なんだかいいなって思えたんだ。
「僕は潮田渚。よろしくね」
「赤羽業。……見たところ同じ学校同じ学年みたいだし、気軽に下の名前で読んでよ」
「僕も下の名前でいいよ」
「私は、有美紗、……真尾有美紗、です。よろしくね……カルマくん、渚くん」
これが、私にとって全てが始まった2人との出会いだった。
「とりあえず、ここから離れようよ」
「そーだねぇ。…ねぇ、座り込んじゃってるけど……立てる?」
「え、あ…うん。………、」
「………」
「………」
「………ごめんなさい、立てないです……」
「ふーん……よっと、」
「!?」
「あ、暴れないでね?投げ捨てるから」
「な、なげ…!?」
「(カルマくん楽しそうだなぁ…)」
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暗殺教室の原作開始前、主人公たちが中学1年生の時期からこの小説はスタートします。原作リスペクトでオリジナル要素を挟みつつ、恋愛模様やクロスオーバー先の世界観を交えながら進めていくので、どちらのファンにも愛していただけるよう努めます。
気長に追ってもらえると嬉しいです!