暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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後半というか、最後の最後にクロスオーバーあり!
やっとまともに登場させられる……!

今回も、よろしくお願いします!



89話 学園祭の時間~2日目・前編~

 

 

 

 ────某、国際空港にて。

 

 

 

「ん……?……ッ!!ね、ねぇ、あの人って……!」

 

「嘘、本物……!?てことは、近くの2人はもしかして……!」

 

「やべ、オーラが半端ないんだけど……ッ」

 

「わ、私、初めて本物みたぁ……ッ」

 

「え、じゃあ……あの後ろの人達は?警備の人達……とか?」

 

 

 

 

 

「……うーん、疲れたわー!なっがい空の旅だったわね〜」

 

「……疲れたという割には元気ですよね……流石です」

 

「それがこの人なんだから、しょうがないだろ」

 

「ふふ、確かにそうかもしれないね。……それにしても、一応お忍びの予定だったのにすごい人だかり……」

 

「それに関してもこの人のせいだろ。1番有名なんだから変装しろって俺や他の奴も言ったのに、1人だけほとんど生身だぜ?芋づる式にバレるに決まってる」

 

「ちょっと!聞こえてるし生身って言い方はやめなさいよ、素顔と言いなさい!」

 

「……はいはい」

 

「あ、あはは……。……えっと皆さん、お忙しいところいきなり誘ってしまってすいませんでした……来て下さりありがとうございます」

 

「いえ、いい気分転換ですし、私達も久しぶりに会えるから楽しみなので気にしないでください!」

 

「ええ。それに貴重なものも見れましたし……導力機関(オーブメント)を使わないで鉄の塊が空を飛ぶ……こちらでは発展の仕方が違うんですね、とても不思議です」

 

「ホントですよ……それに文化の違いや理解もあるでしょうけど、日本もよくあの得体の知れない機体を着陸させてくれましたよね」

 

「一応こっちにも古代遺物(アーティファクト)が無いとは言いきれないからね。星杯騎士団(グラールリッター)は政府と繋がりがあるのさ……今回は流石に職権乱用だけど」

 

「元気かなぁ……覚えててくれてるかなぁ……早く会いたい!」

 

「おうおう落ち着け。そんで……どうよ、リーダー。地図は任せて大丈夫そうか?」

 

 

 

 

 

「……ああ。よし、皆行くぞ!──俺達の妹に会いに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついに今日は椚ヶ丘学園祭2日目……泣いても笑っても今日が最終日となる。だけど、E組の校舎へと向かう山道を登る私たちの足取りは、正直あまりいいものとは言えなかった。

 

 本校舎を中心に、自然と出来上がってしまっていた、A組対E組の学園祭売り上げ争いという対決ムード……同じ土俵に上がって対等に戦うためには、私たちに不利な条件がかなりたくさんあった。

 それでも頼りになる先生のアドバイスを参考にして、私たちがそれぞれこれまでに磨いてきた勉強する以外の刃を活かし、作り上げた1つのお店。1日目の売り上げはそこそこで、E組というレッテルが貼られてる割には悪くは無いんだけど、勝負になるかどうかで考えると心もとなくて……

 

「…………今日で最後か……」

 

「本校舎に売り上げ速報出てたから見てきたんだけどさ、このペースじゃA組と勝負にならないよ」

 

「そんなに……」

 

 三村くんが本校舎の生徒に紛れて撮ってきてくれた売り上げ速報の写真には、断トツでトップを独走する中学部3─Aと追いかける高等部3─Aを除いて、他のクラスがほとんど横並びになっている状態で映っていた。もちろん中学部3-E(私たちのクラス)も他クラスの結果に埋もれているし、ちょっと頑張ってるけどその他大勢という括りに入るんだろう。

 私たちが頑張ってお店を切り盛りしたとしても、お客さんが来なくては売り上げに繋がらないし、その集客だって1日目に散々試してこの結果。2日目のリピーターを期待しても、そこまでよくはならないだろう。そう、思ってとぼとぼと足を進めていた時だった。

 

「急げ!朝の中継に間に合わねーぞ!」

 

 その声とともにカメラを担いだ男の人、マイクや腕章を装備した数人の人たちが、私たちを追い抜いて山を駆け上がっていく。

 

「……今の人たちすごいね、私たちでも最初は苦労した山道、走っていっちゃった」

 

「真尾、確かにそれもすごいけどそこじゃねーよ」

 

「カメラ持って中継ってことは……テレビ局よね?」

 

「何撮るつもりだ?この先にはE組しか……」

 

 なんとなく道の先もざわざわとしてる気がする……気になった私たちは、さっきよりも足早に校舎へと向かう。そこに広がっていた光景は……

 

「「「な、なんだこりゃーーっ!?」」」

 

 E組校舎の生徒用玄関から、山道の入口までズラッと並んでいる人の列。それは同じ椚ヶ丘の制服を着ている生徒のものもあれば、明らかに一般客だろう私服の人たち……中には家族連れなんて人までいる。

 その数は昨日の比じゃないくらいで……何があったというのだろう。

 

「大変!ネットで口コミが爆発的に広がってる!」

 

『少し潜って情報の発信源を探しました。その結果出てきたのが……法田ユウジ。今一番勢いのあるグルメブロガーです』

 

 律ちゃんが開いてくれたホームページ……正確にはグルメブログを見てみると、そこに載せられている記事は、日本全国各地が自慢する大衆食堂から、テレビなどで取り上げられたけどなかなか自分では足を運べない敷居の高い店など、和洋中なんでもありに取り上げられた料理の紹介の数々だった。

 今見ているだけでもアクセスカウンターがどんどん回っていくそれは、現在進行形でたくさんの人たちに読まれていることを示していた。そしてトップページのプロフィールには、つい昨日顔を合わせたばかりのゆーじくんの写真が。

 

「小さい頃から良いモン沢山食ってたおかげで……憎たらしいけど舌の確かさは折り紙付き。金に任せた食い歩きは、すごい信頼性高いんだって!」

 

「ユウジ君……!!」

 

「ゆーじくん、そういえば写真撮ってた……!私たちのお店を紹介してくれたんだ……!」

 

 

 

【椚ヶ丘の学園祭で、メチャ美味い出店と出会いました。詳しいメニューは次の記事で書くけど、……人生観が変わりました。不利な立地を逆手に取った、自給自足の食材の数々!!『欠点や弱点を武器に変える』……店で働く友達がそう言ってたのを聞いて、偉大な親の陰に隠れて甘やかされ、どこかそれを後ろめたく思ってた自分が……なんか、アホらしくなりました。『出会って結ばれた縁』のおかげで、大切なことを教えてくれた友達にまた会えた。甘やかされた小遣いだって自分の武器!皆の役に立ちゃいいので、開き直ってオススメの情報を発信します!まずは人生観の変わる山の上の店……味わえるのは、あと1日だけ!】

 

 

 

「ほら、アンタ等も早く準備準備!せっかくこんなにお客さんが待ってくれてるんだもん、お店、オープンするよ!」

 

「……!うんっ!」

 

「はい!」

 

「おう!」

 

 そこからはもう、みんな必死だった。開店と同時に席は埋まり、注文が入るたびに山に入っては食材を採って、どんどん料理を作っては出して、また売って……その繰り返し。お客さんは全然途切れることなくやってくるから、嬉しい忙しさ、というやつだ。

 そのうち、ゆかりがあった人たち……進藤くんの率いる球技大会から和解した野球部が再びの来店、メグちゃんと何やら確執のあったらしい女の子、そして前原くんの元カノであの雨の日にE組で復讐する相手となった土屋さん。本校舎だった頃に同じクラスだった……らしい、よく私や渚くんに突っかかってきてたD組の2人に、イリーナ先生の話術に魅せられた高校生たち、どこかで見たことあるような人たちが……ホントにたくさん、来て、来て、いらっしゃって!

 

 昨日とは比べ物にならないくらいの忙しさに、みんな目を回しながらも楽しそうに、笑顔で対応していた。だけど、予想以上にお客さんが入るということは、予想以上に売れるというわけで。

 

「ま、まずいです!どんぐり麺、もうすぐ在庫なくなります!」

 

「でもA組は私たち以上に稼いでるはずよ?」

 

「サイドメニューの山の幸も売れ行きいいよ!残り時間はこれで粘ろ!」

 

「もう少し山奥に足を伸ばせば、まだ在庫は生えてるぜ」

 

「……いや……ここいらで打ち止めにしましょう」

 

 愛美ちゃんがどんぐり麺の在庫の入った箱を見て声を上げた。想定していた量以上にお客さんが来れば、当然想定していた材料では足りなくなるに決まってる。ましてやどんぐり麺に関しては、材料となるどんぐり粉は作るのに10日くらいかかるから……粉がなくなれば麺は作れない。というか、巨大袋に入ってたあの量使い切っちゃったんだ……

 看板メニューの売り切れは仕方がないとしてサイドメニューで残り時間を乗り切るなら……と何人かで話し合いが始まったところで、シャチホコから栗に変身してキッチンに移動していた殺せんせーが私たちを止めた。

 

「でも、それじゃ勝てないよ」

 

「いいんです。これ以上採ると山の生態系を崩しかねない」

 

「むーん……確かにー……」

 

「植物も、鳥も、魚も、菌類も、節足動物も、哺乳類も。あらゆる生物の行動が『縁』となって恵みになる。この学園祭で実感してくれたでしょうか……君達がどれほど多くの『縁』に恵まれてきたことか」

 

 ……『縁』。

 それはいろんなものがあると思う。

 

 教わった人。

 

 助けられた人。

 

 迷惑をかけた人、かけられた人。

 

 ライバルとして互いに争い高めあった人たち。

 

 私がゆーじくんに話した通り、人は生き続ける限り影響を受け、与えて、いろんな『縁』を結び続ける存在だと思ってる。それは偶然かもしれないし必然かもしれないけど、結ばれたものは、きっといつか、何かしらの助けになる。そして……結ばれた『縁』が深まれば、それは『絆』となり、決して途切れることの無いものとなる。……そう、信じてる。

 

「……あーあ、結局今日も授業が目的だったわけね」

 

「くっそ、勝ちたかったけどなー」

 

 うまいこと、殺せんせーの授業の一環としてこの学園祭は使われてたわけだ。……そういえば、このどんぐり麺も山の幸のサイドメニューも、レシピを考えて作ったのは私たちだけど、材料を提案したのは殺せんせーだったっけ。初めからこの結末は読んでたのかな。

 口では悔しそうな顔をしているみんなだったけど、殺せんせーが学んでほしいと願っていた『縁』というものは、これ以上ないほど実感したあとだったから……なんだか、スッキリした気持ちでいっぱいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして朝からE組総動員で働いて、サイドメニューもだんだん売り切れのメニューが出始めて……お客さんの流れも少しは落ち着いてきた。クラス全員が接客に回る必要もなくなって、順番に休憩に入り始めたから……小休憩をもらった私はすぐに戻れるようにお盆だけ持って、私と渚くんとカルマの3人で校舎の近くに集まり、ゆーじくんのブログを読み返していた。

 

「ふー……少し落ち着いてきたかな?」

 

「それでも客はまだまだいるけどねー。もう俺、疲れたわ……」

 

「も、もうちょっとだと思うし、頑張ろ?……それにしても……」

 

 

 

【──これで、この店の紹介を終わります。最後に……俺の人生観を変えてくれた2人の友達へ、……まあ、見てくれてるとは思わねーけどこの場を借りて。】

 

【まずはNちゃん。直接は言えなかったけど、出会って早々、色々勘違いしててごめんなー。Nちゃんの言葉で俺が重いと思ってた自分の境遇がぐっと軽くなりました……ありがとう。今度は、普通にあって飯でも食いに行けたらなーって思います!オススメ紹介するぜ〜!】

 

【そして、……Aちゃん。『人は様々なものに影響を受け、与えながら生きていく存在であり、そうして結ばれたものが縁なんだ』っていう、君の言葉……俺、大事にしていこうと思う。なんて言うか、出会った時から助けられてばっかりだな……好きになってホントよかった。ありがとう】

 

 

 

「……あは、ゆーじくん、最後まで渚くんのこと『渚ちゃん』って呼んでるね」

 

「やっぱり取ろ?俺等もついてくし」

 

「おれら……?」

 

「もちろん、卒業旅行にはアミーシャも連れて行くからに決まってるでしょ?」

 

「だから取らないってば!!」

 

 名前はイニシャルにしてるとはいえ、知ってる人が見れば誰のことか一目瞭然……多分、私も渚くんもゆーじくんのことを知らなかったことから、彼は私たちがブログにはたどり着いてないと思ってこの記事を書いたんだと思う。律ちゃんが教えてくれなかったら、彼のメッセージには絶対にたどり着けなかった……感謝してもしきれない。

 

「……昨日、変な別れ方しちゃったから、お礼、伝えれたらよかったんだけど……」

 

「アミーシャが気にすることじゃないと思うけどね」

 

「カルマ君はアミサちゃんにユウジ君を意識して欲しくないだけでしょ……」

 

「ヤだよ、イヤに決まってんじゃん。なんで大事な恋人を俺がよく知らない他人にわざわざ意識の欠片でも残してやんないといけのさ。未練とかもたれてもヤだし」

 

「私、そもそも告白って気づいてなかったんだから気にする必要ないのに……」

 

「まぁ確かにユウジ君、親がかなり有名な芸能人だって言ってたから、変にそっち界隈に情報流れるのも怖いしね……」

 

「アミーシャがそういう道を選ぶならきっかけに使ってあげてもいいけどね」

 

「使ってあげるとか言い方……」

 

「…………そういう、道……歌の道……かぁ……」

 

 ……どっぷりと私が浸かっている、私の生きてきた道の途中で……そんな、世界を考える余裕なんてない、はずなのに。私も、お姉ちゃんみたいに……、光の指す世界で生きて、夢を見る権利が、あるのかな。

 そんな気持ちを飲み込んで、いつもの軽口や雑談を交わしてから、少し休憩もできたしそろそろ店の営業へ戻ろうか、とエプロンのポケットにスマホを片付けて歩きだそうとした時だった。

 

 

 

「──アミーシャ」

 

 

 

 それは、とても聞き慣れた、大好きな声。

 

 ここでは、聞けるはずのない、あたたかい声。

 

 ────私の、本名(なまえ)を呼ぶ声。

 

 私は弾かれたように顔を上げ、声のした方向を見てみると、そこは料理の食券を買う受付を通り越したE組校舎の入口で……笑顔でこちらを見ながら手を振っている、リーシャお姉ちゃんの姿があった。隣にはいつものトレードマークである青い帽子を目深にかぶって、物珍しそうに周りをキョロキョロと見ているシュリさんの姿も。

 

 このクラスの生徒に会うために来店してくれるお客さんは、かなり限られてるとはいえ少なからずいる。だから、注文の前にその相手に会いたいという要望があれば、接客の担当としてその人がついたり、配膳前後という忙しい合間を縫って話す時間を取れたりするのだ。多分、私の名前を出したか何かで、誰かがここまで案内してくれたんだろう。

 

「お、お姉ちゃん……!?それにシュリさんまで!なんでここに……って、ひゃあぁぁっ!?!?」

 

「アミーシャってうぁもごっ!?」

 

「うわあぁっ!?なになになに!?!?」

 

「妹ちゃんに赤髪君、青髪君もひさしぶりーっ!」

 

「ふふ、ごめんねいきなり。前に通信した時に学園祭って言ってたから、会いに来ちゃった」

 

「おい、イリアさん!アミーシャ達潰れてんぞ!リーシャ姉も止めろよ、妹と赤髪のヤツ潰されてんのに!」

 

 驚いた私が駆け寄るよりも早く、イリーナ先生よりも長くてふわふわしている金色の髪をなびかせた女の人……イリアお姉さんがどこからか現れて私に飛びついてきた。

 そのままぎゅうぎゅうと力強く抱きしめられて、頬擦りされて身動きが全く取れない……ッ、何が起きたのかもよくわからないし、ただでさえ私は小さいからイリアお姉さんに抱き込まれたらなんにも見えないしで、どうすればいいのかと混乱していて、何もできずに固まっている他なかった。

 

「え、……えぇぇぇっ!?い、イリア・プラティエ!?本物!?なんで!?」

 

「木村、落ち着け。前に聞いたろ、真尾のお姉さんがリーシャ・マオってことは、イリア・プラティエの同僚に決まってるだろ」

 

「そういやお前、結構ミーハーだったな……」

 

 E組の面々やまだチラホラと来店しているお客さんたちは、突然の現役有名アーティストたちの登場にざわついている。劇団があるのはクロスベル自治州なのに、クロスベルどころかゼムリア大陸すら飛び出して、遠く離れた島国である日本まで進出してきてる有名アーティストだから……お姉ちゃんたちって。

 普段は特に表に出すことはないけど、隠れミーハーなところがある木村くんはすぐさま正体に気がついて、目をキラキラさせて大興奮みたいだった。

 

「アンタ達、元気にしてた〜?てか赤髪君は妹ちゃんとちょっと進展した?したわよね!?さっきの会話聞いてたけど、この子の本名呼び捨てしてたもんねッ!?!?」

 

「むぐ……あ、の……ッ、とりあえず、離して……くれませんか……ッ?」

 

「あの、イリアさん、それだとアミーシャだけじゃなくてカルマさんも潰れてますし、何も話せませんって……」

 

「……、……カルマ君、完全に巻き込まれ事故……というかイリアさん、どこから現れたんだろう」

 

「渚、隣にいた割には避けれたんだね?」

 

「アミサちゃんより先を歩いてたから偶然だけどね。カルマ君は……突然のことに慌ててアミサちゃんをかばおうとしたら巻き込まれた感じかな」

 

 なんか私の隣にも、もごもごしている存在がいるとは思ってたけど、イリアお姉さんは私のすぐそばにいたカルマも何気に一緒にして抱きしめていたらしい。

 カルマってお姉さんよりも身長高いはずなんだけどな……あの予想のつかない勢いには勝てなかったんだろう、いとも簡単に私と同じように抱きしめられ、その腕から抜け出そうともがいていた。

 

 その後、満足したのかニコニコ笑ってるイリアお姉さんの腕の中から解放してもらえたわけだけど……私たちは息も絶え絶えで疲れきっていたのは言うまでもない。

 

「はぁ、はぁ、……く、苦しかったぁ……」

 

「はー、はー、……あー……なんで俺……巻き込むなら、渚君巻き込めばいいのに……」

 

「それこそなんで僕!?」

 

「くっ……世界的スターに抱きつかれて嫌がるなんてもったいなすぎるだろ……!!」

 

「まったくだ!」

 

 久しぶりに会ったせいなのか、イリアお姉さんのメーターが振り切れてる……全ッ然、容赦がなかった……でも、抱きつきがてらいつものように胸を揉まれなかっただけマシなのかもしれない。

 

 隣で同じように珍しく肩で息をしてるカルマは、暴れるわけにもいかないしイリアお姉さんがどんな人かを知ってるからこそ抵抗せずに再会のハグを受け入れたんだと思う……それにしては激しかった気もするけど。向こうの方で岡島くんとかが何か文句を言ってるけど、さすがにカルマは色々考えた上でこういってるんだと思うよ……多分だけど。

 

「なによ、情けないわねー……で!?進展したんでしょ!?ほらお姉さんに報告はないの?ん?ん!?」

 

「イリアさん、詰め寄りすぎですって……でも、せっかくだから私も聞きたいな。アミーシャが悩んでるとこまでしか私も知らないし……」

 

「俺等は別としてリーシャ姉にすら報告まだだったのか?」

 

「……、そもそもリーシャさんどころかイリアさんとシュリさんの3人揃ってここに来るのも予想できなければ、こんな形で報告することになるとも思ってなかったんだけど?」

 

 ごもっとも。3人がなんでここにいるのかって疑問にすら答えてもらってないのに、なんで今ここでお付き合いの報告をする流れに……?

 いろんな予想外でガチガチに固まってしまった私を見たカルマは、お姉ちゃんたちがどう見ても報告を期待してこっちを見てることを確認すると、しょうがないかって表情になって私の肩を抱き寄せた。そのまま真っ直ぐお姉ちゃんたちの方へ向き直る。

 

「まあ、いいか……その、報告は遅くなったけど、……アミーシャとは、先月からお付き合いさせてもらってます」

 

「そ、その……こちら私の、こ、こいびと、です……?」

 

「……固いしそこで疑問形にされるのは心外なんだけど」

 

「だ、だって……まだちょっと慣れないし、こんないきなり言うことになるなんて思わないもん……ッ」

 

「……『アミーシャは俺のもの』って言ったら『カルマも私のもの』って言い切らなかったっけ?ねぇ、時々大胆になる俺の恋人さん?」

 

「ッッッ!!?!」

 

「堂々とイチャつくなよ赤髪……はぁ、よかったな」

 

「くっついたのね!?本トね!?!?よかったわーッッ応援してはいたけど心配だったのよ、妹ちゃんが鈍すぎるから苦労してんだろうなって!!」

 

「ちょ、もう抱きつかれんのはごめんだけど!?」

 

「ご、ごめんなさいアミーシャ、カルマさん。時々の通信で声を聞けてた私はともかく、イリアさんはあの日以来だからテンション振り切っちゃったみたいで……でも、よかった。おめでとう二人共」

 

 全く悪びれた様子のないイリアお姉さんがもう一度抱きしめようと腕を伸ばしてきたのを、カルマが私を軽く抱えつつ下がって避ける。代わりに謝るリーシャお姉ちゃんと呆れたように堂々とため息をつくシュリさん。……そっか、お姉ちゃんは時間が空いた時とかに通信してくれて、お互いに声を聞いて顔を合わせていたから……こうして会うのはアルカンシェルを訪ねた時以来でもまだ落ち着いていられるんだ。

 私自身ありえないと思ってた来訪ではあるけど、アーティストが揃ってお休みを取ってるなら、こっちに来れなくはない、のかな。そ、それでも、改めて家族のような人たちから、カルマを認めてもらえるのは、嬉しいけど気恥ずかしい……

 

「しっかし先に来て正解だったわ!聞いたのが私達だけだから妹ちゃん達は報告してくれたんだろうし」

 

「そうだとしても飛ばしすぎだと思いますけどね」

 

「『この上に妹ちゃん達がいるのね!』ってあまりにもスピード出して飛ばすから、ペースが違いすぎるってことで、()()()()で先に登ってきたもんな、この山」

 

「……?……俺、ら?」

 

 自分たちが登ってきた山道を振り返りながら呟くシュリさん。その言葉に違和感を感じた……俺等、って?シュリさんの場合、基本的にはアルカンシェルのメンバーで、同じアーティストであるイリアお姉さんとリーシャお姉ちゃんのことを指すと思う。

 でも、この場所には全員揃ってるし、何より彼女の視線は山道の方へ向いていて……

 

「ふふ……せっかくだからと思ってあの人達にも声をかけたの。そうしたら、皆さんなんとしても会いたいから是非にって……」

 

「え……?……────」

 

 思わず漏らした私の疑問を、リーシャお姉ちゃんが拾ってシュリさんと同じように山道に視線を向けた。その視線が向くままに私も山道を見ると、そこにはいくつかの人影が……、……うそ。

 最初は、嘘だと思った。少ししてそれが何かをちゃんと理解しても、頭ではわかってるのに信じられなくて……私は全く、動くことが出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

 アルカンシェルに観劇に行った以来だから……半年くらい前かな?かなり上機嫌に思えるイリアさんによる、まるで大砲のような突撃は、リーシャさん曰く、久しぶりに会えた嬉しさからだという……本ト、アミーシャだけを抱きしめるならまだしも、なんで俺まで……

 思い切り抱きし、……いや、締め付けてきながらイリアさんが言っていた言葉から察するに、俺とアミーシャの進展を聞くためとか言い出しそうだから、あえて聞かないでおこう。

 

 逃げ出そうと思えば出られるんだけど、弟に対するような好意を受けないわけにもいかず、かといって何か素直に好意を返す事もできなくて、されるがままになっているしかなかった。ようやく解放された時には、緊張云々で疲れていて、同じように……いや、体が小さいから俺以上に息苦しかっただろうアミーシャと一緒に、思わず膝に手を付きながら息を整えていればやっぱり聞かれた進展。

 

 

 

〝そ、その……こちら私の、こ、こいびと、です……?〟

 

 

 

 俺に続く形でリーシャさん含む、家族に報告してくれたアミーシャ。明らかに最後疑問形だったけど、大切な子の口からしっかり関係性を言ってもらえるのって……ヤバ、一方的じゃないって実感できて、めちゃくちゃ嬉しい。

 友達への報告じゃなくて自分の身内相手だからこそ、ガチガチになっている彼女が可愛くて少しからかえば簡単に赤くなる。鈍い子ではあるけど、ちゃんと分かっることであれば全部顔に、態度に出る素直で分かりやすい子……こういう所も好きなんだよね。

 

 自分の事のように喜んでくれるイリアさん達に、本トに応援して貰えてたんだなと実感してれば、謎の会話が続く。当然アミーシャも不思議そうにシュリさんの視線の先を追っていて、釣られて俺もそちらを向こうとしたら、

 

 

 

 ────カラン。

 

 

 

 軽い、金属音につけようとした視線を止めて振り返る。初めは何の音かと思ったけど俺の視界に入ってきたのは彼女が持っていたはずのお盆で、これをアミーシャが落とした音だったんだと理解した。

 それを拾ってやりながら、一応俺等の店は飲食店なわけで、そこで使うものを地面に落とすなんて言語道断じゃね?……なんて、軽く言おうと思って顔を上げた先の彼女の顔を見て俺は驚いた。

 

 ……彼女は目を見開いたまま固まり、ある一点を……E組校舎へと繋がる山道の入口を見つめているようだった。かすかに動く口元は何か言おうとしているんだろうけど音になってなくて、……まるで、泣きたいような信じられないような、そんな表情(かお)

 彼女にそんな表情をさせる原因が知りたくて、俺も改めてしっかりそちらを向いてみれば……何人かの男女がちょうど山道を登りきったところのようだ。

 

 

 

「や、やっと着いたわ……」

 ──灰色の腰より長い髪を下ろし、ハーフアップを大きなリボンで結んだ、お淑やかそうな女性。

 

 

 

「アルモリカ村へ徒歩で行った時並に疲れました……」

 ──渚君のような水色の長髪をツーサイドアップにして、全体的に黒い衣装でまとめた気だるげな少女。

 

 

 

「これ、学校、なんだよな……!?アミ姫、毎日ここを登ってんのかよ……!?」

 ──もしかして、アミ姫ってアミーシャのことか?……赤い髪を後ろでひとつに結んだ、オレンジの上着を肩にかけたガタイのいい男性。

 

 

 

「はは、だらしないね。支援課が休止してたせいで鈍ってんじゃないの?」

 ──緑の髪で、どこか浮世離れした蒼い衣装に身を包んだ……男性、でいいのだろうか?線の細い飄々とした人。

 

 

 

「フラっと帰ってきて一番何もやってなさそうなのに……なんで一番息が切れてないんですか?」

 ──暗いピンクのショートヘアで、どこか軍隊の制服を思わせる、それでも女らしいポイントのある服装の女性。

 

 

 

 あの男女5人は何の集まりなのか……見た目からして家族って感じじゃないし、同年代ってわけでもなさそうなのにお互いに信頼し切ってるようにも見えるし。リーシャさんが声をかけたってことは、アミーシャにとっても知り合いの可能性はあるけど、ここまで動揺するものかな……普通にここで会えるとは思ってなかったから驚いてんのかも。

 

 ……あ、後ろからあと2人到着したみたいだ。

 

「……うそ……」

 

「……アミーシャ?」

 

 あの人たちが現れてから初めて、アミーシャの声になってなかった声が言葉になったけど、それでも意思を持って出した声と言うよりは無意識にこぼれ出たもの、という印象で、思わず俺が呼んだ声も多分聞こえていない。

 すぐ近くにいたはずのイリアさんとリーシャさんが少しだけ横にずれて、ニコニコと笑ってるから悪いようにはならないと思うけど。

 

 

 

 

 

「ふぅ……、俺もまだまだだな。大丈夫か?キーア」

 

「うんっ、だいじょーぶだよ!……あっ!アミーシャだっ!見つけたーっ!」

 

 

 

 

 

 あとから山道を登ってきた2人の内で少女の方……身長はアミーシャよりちょっと小さいくらい、茅野ちゃんのより淡い黄緑色のふわふわとした長いツインテールを揺らすその子が、嬉しそうにアミーシャの名前を呼んで彼女へ飛びついた。

 苦笑い気味に笑いながら追いついてきたのは、茶髪の……言っちゃ悪いけど優男って雰囲気の男。だけど、長袖着てるし分かりづらいけど……肩幅というか、身体運びというか……なんていうか無駄のない動き。素人目の俺でも相当強い奴なんじゃないかって察することのできる男だ。

 

「……ッ、キーア、ちゃん?」

 

「そだよー!あれ、アミーシャ髪の毛切っちゃったの?キーアとお揃いのふわふわだったのにー……でもでも、短いのもすっごく似合ってるね!」

 

「こら、キーア。ひさしぶりに会えて嬉しいのはわかるけど、アミーシャが固まってるぞ」

 

 呆然としたように抱きつかれるがままのアミーシャと彼女に頬ずりしている黄緑色の髪の少女の頭を、追いついた男性が軽くクシャクシャにするように撫でている。普通に喜んで受け入れている少女とは違い、アミーシャはまだ理解が追いついていないようだった。

 でも手は繋いだまま少女が体を離した頃、のろのろとした動きではあるけど、キーアと呼ばれた少女と茶髪の男との間で視線をいったりきたりさせて、アミーシャは存在を確かめるように2人に向かって手を伸ばした。

 

「……ロイドさん、ですか……?」

 

「ああ」

 

「ほんもの……?」

 

「本物って;らしい質問だな……ああ、本物だよ」

 

「ほんもの……いきてる……?」

 

「生きてるよ……ほら、温かいだろ?」

 

「あたたかい……もう、みなさん、だいじょぶなんですか……?」

 

「キーアも……もちろん皆も。クロスベルは開放されて再独立が認められた。だからもう安全、ってうわっ!」

 

 それはいつかの、アミーシャが誰も信じられなくなった時、渚君にしたように……信じるために、信じたくてする確認行動に似ていた。アミーシャが不安になるとその行動をとることを知っているんだろう……男はアミーシャと目線を合わせながら、1つ1つの拙い質問に答え、彼女が伸ばした手を体に触れさせて、その上から手のひらで包み込んだ。

 この会話を聞いているだけでも、訪れた男女は危険な状況にあった上に、その渦中……もしくは中心的な人物達だったのだろうと察せれる。アミーシャがこうまでなるってことは、彼女は俺等と過ごしている間も、この人達のことを考え続けていたんだろうか。……なんかそれって妬けるというか、対象に男がいる時点でムカつく部分があるというか。

 

 男が全て言い切る前にアミーシャはそいつに向かって、勢いよく……タックルと形容してもいいくらい思い切り飛びついた。驚きながらもしっかり受け止めた男に対して、アミーシャはボロボロと涙を流しながら、たった一言だけこぼした。

 

 

 

 

 

「────よかった」

 

 

 

 

 

 ……って。

 

 

 

 





「ふふ、サプライズ成功かしら?」

「昨日も通信したんだろ?よくバレなかったな……」

「私等にもサプライズに協力させてるんだから、徹底してるに決まってるじゃない」

「私達はまだ、難しかったとはいえお互いの無事は知れたけど……」

「アミ姫に関しては、完全に外に逃がしてたからなぁ」

「1番危険だったロイドさんが無事だってわかってホッとしたんですね」

「……そうですね、かなり安心したような……張り詰めていた緊張が解けたような、そんな感情が感じとれます」

「……守るためとはいえ、長かったですね」

「2年、待たせたわけだからね」

「…………」

「キーア、どうかしたんですか?」

「どしたー?キー坊」

「…………ずるい」

「「「え?」」」

「き、キーアちゃん?」

「キーアだって……キーアだって、まだ抱きつき足りないのに!ロイドばっかりずるい!とーつげきーッ!!」

「ひゃっ……」

「うわぁっ!?キーア、待て、2人はキツいって……!」

「……キーアちゃん、もっとやっていいわよ」

「むしろ、私もずるいと思ってたんですけど……」

「あはは、1人だけ先に妹分を独り占めしてるんだから、それくらい甘んじて受け止めなよ。ね、リーダー?」





「…………なんか、わちゃわちゃしてるね」

「生き別れの家族と再会出来たって感じの雰囲気バリバリなんだけど……」

「……あの中で家族なのって真尾とリーシャさんだけなんだよな?それにしてはすごい親密感というか……」

「女性陣がそわそわしてるのがすごく気になる……」





「……みんな、みーんなあったかい、……よかった」



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2日目の前半です。
ユウジ君のブログ、後半に付け足しました。個人情報が流失しない程度に、喧嘩(してないけど)別れの後味の悪さをここで(一方的に)解消した感じです。律がお節介したり、E組の誰かがコメントしたりしない限り、渚達がこのブログを読んだことは知られないんじゃないかな、と思います。

今更感ありますが、オリ主の言った『人は生き続ける限り影響を受けて~』云々は、某偉大な父の言葉を引用してます。


予告していましたとおり、碧の軌跡からアルカンシェルメンツ以外にも、ロイド・エリィ・ティオ・ランディ・ワジ・ノエルを参戦させました。一応誰が誰か分かるように書き分けたつもりですが、出しすぎたかな〜……と、失敗した感があります。でも、日本に来るのにメルカバ(ワジの所有する小型飛行機のようなもの)だったら面白いと思ったんですもの。職権乱用してでも会いに来ちゃえば、と。だったらワジとノエルも同行すべきだな!と考えたら大所帯になりました。



学園祭2日目も前中後編となりそうです。もう少しオリジナル話が続きます。

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