暗殺教室─私の進む道─   作:0波音0

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ここから数話かけて、完全にオリジナル話です。
オリ主の設定の一部を掘り下げつつ、クロスオーバー要素を投入していきます。

今回もよろしくお願いします!




91話 インターミッション~『アミーシャ』~

 

「あれ、イリアさんとシュリはどこに行ったんだ?」

 

「なんでも興味深い人がいたから話してくる、とイリアさんがシュリさんを引っ張っていきましたが……止めた方が良かったですかね?」

 

「あの金髪の美人な女性だね?服装や見た目は落ち着いて見えるのに身のこなしが普通じゃない!ってイリアさんは言ってたけど」

 

「ワジさんが『美人』とか言うと本音なのかお世辞なのかよく分かりませんね……流石は副業の副業:ホスト」

 

「ふふ、ひどいなぁ……全部本音だよ。イリアさんの言う『普通じゃない』がどういう意味かは知らないけどね」

 

「……まあ、イリアさん達には言えないこともあるからちょうどいいかもしれないな。後は彼等に話す内容か」

 

「感謝を伝えるのは当然として……どこまで話します?リーシャさん」

 

「えっと、アミーシャの同級生が聞いても当たり障りのない部分だけ……あとはアレです、彼等の目的のために使えるものは使ってもらおうかと」

 

「はは、俺達を使()()()()()って。リーシャも言うようになったね」

 

「だな。ま、そのへんでとどめて正解だろ……あの生徒達はまだ15かそこら……守られるべき子どもだ。平和な世界で生きてる奴等を進んで裏の、国の事情に関わらせるわけにはいかないしな」

 

「でしたら……警察だからこそ触れることになる政治の裏事情や、 特務支援課(わたしたち)だったから関わることになった様々な陰謀……そこらへんは表面的にフワッと、ですね。あとはそれぞれの得意分野で担当すれば……」

 

「そうね、じゃあその間キーアちゃんは……て、あら?そういえばキーアちゃんは?」

 

「キーアちゃんでしたら、アミーシャとカルマさん……えっと、ほら、赤髪の男の子がいましたよね?あの子に話があるみたいで、先程呼び出して貰いに行ってましたよ」

 

「あいつか!アミ姫に構ってるロイドにガン付けて、俺等を引き離しにかかって来た奴!」

 

「あの殺気な……プロと相違無かったぞ、あれ……」

 

「確かに途中から真っ青だったもんね、キミ。でもあの程度の接触で殺気を向けてくるってことは……彼はアミーシャの恋人かな?」

 

「「「!!」」」

 

「ふふ、カルマさんはアミーシャを振り向かせようと必死でしたから」

 

「リーシャさん、微妙に答えがズレてると思います……」

 

「でも、やっぱりそうですよね。ちょっと観察してるだけでも、アミーシャへの好意の感情が大きくてビックリしました」

 

「私達にとっては見慣れたスキンシップでも、恋人からしたら、そりゃあいい気はしませんよねぇ……ロイドさんってホントに、ホンットーに思わせぶりで勘違いさせるような言動が多すぎるんです!!」

 

「つまり完全ロイドの自業自得なのね」

 

「う……そ、それは置いといて……アミーシャと彼の2人か……リーシャ、それの内容聞いてたりするか?」

 

「いえ、特には……ただ、『2人に謝らなくちゃいけない』と言ってましたけど」

 

 

 

 

 

「そうか……ごめん、俺も様子見てくるよ。アミーシャだけにならともかく、初対面の人に謝るってことは……キーアの〝御子〟としての力が関係してくるかもしれない。保護者としてそれを放置するわけにはいかないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚side

 2日間続く学園祭は残り数時間となったけど、僕等3年E組の出店はメインのどんぐりつけ麺が売り切れ、その他メニューも山の生態系を守るために最終を断念し一足先に閉店を決めた。最後のお客さん(僕の母さん)が帰って後片付けも済ませ、売り上げや総客数の集計結果も出し終えたところで順番に教室に戻っていく。

 ほとんど全員が自分の席につき、殺せんせーがこの学園祭についてまとめを話した後、僕は皆が自由時間だと解散してしまう前に前に出た。調理場にいた人は知ってるけど、それ以外の知らない何人かが席を立とうとしていたのを止めて、不思議そうに座りなおしてくれたのを確認して話す……リーシャさんからのお願いと、今この場にいない2人のことを説明しなくちゃだからね。

 

「────というわけで、本校舎に行こうとしてた人には申し訳ないんだけど……皆にはここに残って欲しいんだ」

 

「いやいや、全然いいぜ。むしろ、またとない機会だから喜んで待たせてもらうし!」

 

「本校舎行ってもウチらアウェイなのに変わりないしね〜。行っても冷やかし程度の予定だったから問題なし!」

 

「あ、渚!アミサちゃんとカルマ君がいないみたいだけど、それはいいの?」

 

「そうじゃん、アミサなんて久しぶりに会えたお姉さんなんでしょ?」

 

「あ、うん。なんか一緒に来てた黄緑色の髪の女の子が2人に用があるんだって。それが終わった後から合流するみたい」

 

 ……よかった、まずは全員にここで待ってもらうことはできるみたいだ。僕は磯貝君みたいに前に出て何かをするタイプじゃないから、ちゃんと伝えられるか心配だったんだけど、反応は悪くないし聞いていた殺せんせーは「国語力がついてますねぇ」なんて言って涙をふくフリしながら頷いてるし、大丈夫なんだろう。

 それに予想通りこの場にいない2人を心配する声は上がったけど、個人的な用事だと説明すれば納得してもらえた。……といったところで、

 

「ねぇ、殺せんせーは姿見せちゃっていいの?」

 

「あ、確かに〜。リーシャさんって、烏間先生が『絶対秘密』って言ってた家族にあたると思うんだけど」

 

「……俺もそう言ったのだが……既に変装した姿で真尾さんのお姉さんに担任として会ってしまっているらしくてな。コイツがこの場にいないと矛盾が出てしまうから仕方なく、だ」

 

「俺等は家族にも第三者にもバラすなって言われてんのに……」

 

「……殺せんせー、前にも言った気がするけど自分が国家機密の自覚あんの?」

 

「にゅや……」

 

 これまた当然の疑問が飛び出して、烏間先生が頭抱えちゃった……そうだよね、殺せんせーって軽率すぎるよね。クラスメイト達もジトーっとした目で殺せんせーを見ていて、烏間先生相手では強気だったせんせーも、流石に少し肩身が狭そうな表情で小さくなっている。

 でもその件に関しては僕等がワガママ言ってアルカンシェルに連れていってもらったのも理由の一つだし、リーシャさん達に会うことになったのもほとんど不可抗力だしなぁ……

 

 

 

 ───コンコンコン……

 

 

 

「あ、来たみたい。リーシャさんです、よ、ね……?」

 

 なんてことを話していれば、僕が前に立ってからあまり時間を置くことなく、教室の扉をノックする音が聞こえてきた。途端に静まりかえって扉に注目が集まる教室……リーシャさんを待たせるわけにもいかないし、と返事をしながら近寄った教室の扉を開けた先には、ノックした手を下ろす最中だったリーシャさんの姿、と。

 

「あ、ナギサさん」

 

「おー、この子が舞台見に来てくれたって言ってた?」

 

「わわ、可愛らしい子ですね」

 

「あ、うちのリーダーは後から合流予定なんだよね。だから先にこのメンバーで邪魔するよ」

 

「……どうも」

 

「お邪魔します」

 

「…………へ?あ、はい……、……え?」

 

 あの、リーシャさん……リーシャさんが呼んだらしい人達まで一緒に来るなんて、聞いてなかったんですけども。

 

 

 

 

 

++++++++++++++++

 

 

 

 

 

「お時間をとってくださりありがとうございます。皆さんがアミーシャのクラスメイトなんですね……半年以上、挨拶も何も出来ずにごめんなさい。私はリーシャ・マオ、妹がお世話になってます」

 

「い、いえ!俺等の方こそ真尾にはかなり助けられてきてますし。それに……最初こそあまり交流がなかったですけど、今ではクラスメイトってだけじゃなくて皆の可愛い妹分ですから……当然です」

 

「……ありがとうございます、そう言って頂けて安心しました」

 

 教室の扉を開けた僕についてリーシャさん達が入ってきて、黒板を背にして前に並ぶ……僕等はリーシャさん1人で来るものだと思い込んでたから、6人もの人が訪ねてきたことに驚いてその人達を見つめていた。僕も席についた事で彼等はE組からいっせいに注目されることになったけど、特に動揺した様子もなく……逆に興味深そうに僕等を見返している……すごい。

 僕等1人1人を見回していたリーシャさんが1歩前に出て告げた感謝の言葉に、誰も何も言えない中クラスを代表して磯貝君が慌てて応えていた。確かにこの場にいる27人の中じゃ、人前での対応に1番場馴れしてるのは磯貝君だ。それでもやっぱり緊張はしているのか、どこか固い。僕でも分かったいつもと違う磯貝君の緊張は、初めて顔を合わせたはずのリーシャさん達にも伝わっていたようで、ふわりと安心するような笑みを浮かべて……

 

「ふふ、いつも通りに話してくださっていいんですよ。ほら、私はアミーシャと似てるでしょうし、皆さんがいつもアミーシャに話しかけているみたいに」

 

「……いや、リーシャよ。確かにお前さんら姉妹は似てるっちゃ似てるが……」

 

「さすがにそれは無理があるかと……」

 

「……?そうでしょうか……?」

 

 結構な無理難題をなんてこともないように言い切った。……同級生のアミサちゃんだと思って超有名人に話しかける、なんてのは、いくらそっくりでも躊躇います。

 同じような事を考えたのか、リーシャさんと一緒に入ってきた赤い髪の男の人と、水色の髪の女の人が冷静にツッコミを入れていた。それに対してリーシャさんはキョトンとした表情を浮かべていたけど、気を取り直したように僕等に向き直る。

 

「えぇっと……アミーシャから定期的に通信を貰ってたので、皆さんとの学校生活は何となく分かります。ただ、アミーシャは自分の事をほとんど話さなくて……皆さんから見て、あの子はどんな子なのかとか、様子とかを是非聞いてみたかったんです」

 

 アミサちゃんをこの場に同席させなかった理由の1つはどうやらこれを聞くためだったらしい。確かに自分の印象とか、目の前で話されるのって覚悟がなくちゃ聞けないだろうし、言う方も躊躇うよね。

 でも、改めて聞かれるとすぐには応えられないもので……僕等は少しの間頭を捻り、普段の彼女を思い出しながら……思い付いたものをその場でぽつりぽつりと言っていくことにした。

 

「そうだなー……頭が良くてどんな事でもサラッとこなす器用さがある女の子って感じですかね。ただ、天然なのかズレてるのか……話してると気が抜ける時がそれはもう毎日のように……」

 

「それでも芯は真っ直ぐだから、信じたものを最後まで信じ抜く強さがあると思うな〜!信じるってことを大切にしてると思う」

 

「誰に対しても好意的でいい所を見つけるのが上手い。その分世間知らずも目立つ子どもみたいな奴」

 

「普段からオドオドしてるくせに負けず嫌いで、たまに誰も考えてなかったような奇策だったり考えだったりをぶっ込んでくる。それでカルマと組むとマジでヤバイ……2人して平気で俺を使う策を立てやがって……」

 

「2人して頭の回転早いからね……何回寺坂と殺せんせーが物理的に犠牲になったことか……」

 

「な、なってませんよ!?……数回危なかったですが」

 

「で、ですが、そんなカルマ君ととても仲良しですし、私はお似合いなカップルだと思いますよ!」

 

「お互いの事はお互いが1番分かってるってのが態度に出てるんだよね〜。信頼しあってるっていうか……だから未だに距離感がおかしいけど、ちょっと最近は意識してるなって感じがするかなぁ」

 

「カルマがベタ惚れなんだけど、アミサはアミサでちゃんと同じくらい好きなんだよね……表現の仕方を知らないのもあるんだろうけど、好意の伝え方が子どもっぽくて分かりにくいのもあの子らしいし、お互い突然吹っ切れるから見てて飽きないし」

 

 最初はアミサちゃん自身の印象やそれぞれが思う彼女を話しているだけだったのに、だんだん『アミサちゃんといえばカルマ君』という感じの話にシフトしていた。そうだよね、どっちか探すと必ずと言っていいほど隣にいるくらい、僕等にとっては当たり前の日常だ。

 

「んーと、あとは……アミサちゃんって私達と同い年のはずなんだけど、なんかほっとけないんだよね〜……実質8歳っていうのも聞いてるし、同級生でありつつ本トの妹分だと思ってる」

 

「だいぶ改善されてきたとはいえ、放っとくとフラフラどこかに行っちゃうし、どこでどんな天然発揮してるか分からないからどうしても過保護になる……」

 

「アレだろ、結構怖がりなわりに懐いた瞬間色々動作が小動物っぽく見えてくるから。守ってやらなきゃって感じになるんだよな」

 

「あとは……カルマも散々言ってるけど自己評価がめちゃくちゃ低い。あのスペックの高さはもっと自慢してもいいくらいなのに」

 

「自分の価値を低く見てるから、たまに怖くなるわ……あの子、夏のリゾートといい、イトナの時といい、無理無茶自己犠牲がデフォだから」

 

「いつの間にか行動してて頭抱えるもんね」

 

「……やっぱり、こちらでもそうなんですね」

 

 前半はニコニコと聞いていたリーシャさんだったけど、普段のありのままの彼女について聞かれているならと隠さずに伝えたアミサちゃんの心配な部分について僕等が話し出すと、徐々に表情がくもり始めた。

 ここまで全く口を挟まずに聞いていたリーシャさん……そして、一緒に前に立っている人達の様子がおかしいと気付いた皆は、だんだんと静かになっていく。……やっぱり、という事は……アミサちゃんの自己評価の低さはずっと前からということなのかな。

 

「アミーシャは……私といた幼少の時も、クロスベルで彼等……特務支援課の方やアルカンシェルの人達と過ごしていた時も、幼い言動の影で自分を必要のないものとして扱ってる節がありました。みなさんも知っているようですが精神年齢と体の年齢がチグハグなことも関係しているのかもしれません」

 

 そう言って、彼等のことをぐるりと一瞥したあと……僕等に視線を戻して、リーシャさんは重たそうな口を開いた。

 

 

 

 

 

「聞いたことがあるかもしれませんが、私がアミーシャをクロスベルから出したのは、少しでも危険から遠ざけるため。でも、それだけが理由ではありません。

 

 

 

本当の理由は……壊れてしまいそうだったから。

 

 

 

ただでさえ不安定なのに、私達と一緒だとあの子が歪なまま成長するか、自分を、自我を殺してしまうのは時間の問題だった。あの子が無意識に記憶に蓋をしている約6年の成長を取り戻してもらうため。そして、人の中で生きることを知ってもらうために、こちらへやったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ティオside

 

 ここからは少し、リーシャさんには話しづらい内容でしょうから、私がお話します。

 

 私はティオ・プラトー……エプスタイン財団……アミーシャのを見たことがあるかもしれませんが、戦術導力器(オーブメント)など、様々な導力器を制作している組織からの出向する形で特務支援課に所属し、情報処理を得意としています。

 ……子どもが所属してるのはどういうことか?そうですね、私は今17歳ですが、ある特別な力を見込まれて11歳の頃から財団に引き取られて働いてます。あっちでは意外といますよ、私くらいでも働く人。あ、ちなみにここにいるリーシャさんを除いた特務支援課の中では最年少です。

 

 まずは、特務支援課についてお話しなくてはいけませんね。特務支援課というのは、クロスベル自治州の警察に新しく立ち上げられた部署で、『市民の安全を第一に考え様々な要望に答える』という行動方針……まあ、つまりは何でも屋のような場所です。

 

 ……私達は警察に見えない?まあ、当たり前だと思います。今はここにいませんが、茶髪の男性……ロイドさんだけが正式な捜査官の資格を持ってますし、こちらのノエルさんは警備隊からの出向という形で所属しています。この2人以外は、正式な警察組織としての資格を持っていませんから。

 

 クロスベル警察にこの部署ができたのは、ゼムリア大陸の各地に拠点がある、『遊撃士(ブレイサー)』と呼ばれる民間団体の限界である制限や、大小様々なしがらみの影響を受けずに立ち回れるようにするため……と、聞いています。

 ……私達がどんなことをしてきたのか、気になるようでしたら後から合流予定のロイドさんに聞いてください。これ以上詳しく話すのはめんどくさいです。……とにかく、私達は様々な事情からこの特務支援課に集められました。そして、当然ながらそれぞれに得意分野があります。

 

 先程から名前を出しているロイドさんは、私達の中で唯一捜査官資格を持つ私達のリーダーであり、推理力と柔軟性に優れた方で現在21歳です。

 

 エリィさんは政治・経済方面へのコネクションを数多く持つ、交渉上手な筆記試験、射撃成績ともに満点を叩き出した才女です。エリィさんも現在21歳。

 

 ランディさんは元イェ、……あ、これはまだ言わない方がいいですか?自分で説明する?……では、戦闘力に優れた元警備隊所属ということで。現在24歳、この中では1番年上ですね。

 

 ノエルさんは車や兵器関連の知識が深く、運転やそれらの使役に特化しています。先程も言いましたが警備隊所属で特務支援課には補充メンバーとして出向してきていて、21歳の軍人さんです。

 

 ワジさんは……何て説明すれば。元不良グループのトップ……夜だけ現れる謎のホスト……性別不詳……え、戦う神父さん?……だそうです。暗示や薬物、古代遺物(アーティファクト)について詳しい方です。……20歳でよかったですよね?

 

 ……私を含め、皆さん、本所属も能力も年齢もバラバラなんです。1人1人得意不得意が違う、生きてきた人生の経験が違う、してきた努力だって違う……それは人として生きてれば当たり前……当たり前、なんですが。……私達と一緒にいることで、アミーシャは自分をいらないものとして認識してしまいました。

 

 いえ、いらないものとは少し違いますね……自分がいなくても、ここの誰かの力があれば大抵のことが解決出来てしまう。私達からすれば十分大人の間で渡り合える能力があるにもかかわらず、私達と比べて特別な力をもたない自分は役に立たないと思い込んでしまった。

 それに拍車をかけたのはキーアに出会ってから……キーアは、今11歳……出会った当時、彼女はアミーシャよりも年下で記憶喪失だったんです。なのに料理も、勉強も、様々な知識も……大人を軽く超える能力をもっていた。

 

 そのせいか、私達には及ばないと思い込んでしまったあの子が、それぞれ特化した力のある市民から頼られる特務支援課を危険の矢面に立てるくらいなら、自分が盾になればみんなの役に立てる、と無意識下で考えてしまうまでにそう時間はかかりませんでした。

 あの子は、……どこか、自分は人として壊れているから、道具だからと考えている節があります。

 

 ……なぜ、私がアミーシャの自覚していない感情や思いをハッキリと理解しているか、きっと皆さんは不思議に思ってますよね。私はとある事情から、感応能力が高められていて……他人の感情や意図を読み取ることができます。それで、リーシャさんすら気付くことのなかったアミーシャの根底にある思いを知ってしまいました。

 

 そして、アミーシャが記憶に蓋をしている、とリーシャさんが先程言いましたが……、実は家族であるリーシャさんも、私達も、あの子の全てを知っているわけじゃないんです。一応アミーシャに何があったのかは把握してますが……全貌は本人にしか分からない。それでも、死んでしまいたいと思うような経験をして、それを忘れることで自分を守っているのは確かです。

 だから……それを思い出させることは、私達としては避けたいことなんです……記憶を戻したくないんです。でも、私達と一緒にいたらどうしてもその忘れた記憶に触れる機会が来る。

 

 ……だから、アミーシャが壊れてしまう前に。

 

 ……自分というものを殺してしまう前に。

 

 ……彼女を人として生きられるようにするために、私達の近くから離すことを選んだんです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは……?」

 

「俺とアミーシャが初めて命をかけた場所……そして、助けられた場所」

 

「ここなら、人が来ることはほとんどないと思うよ」

 

 私たちはキーアちゃんの要望に従い、E組校舎からあまり離れていなくて、できるだけ誰も来ないような場所……裏山で1本の木が崖からせり出している、あの殺せんせーに飛び降り暗殺をしかけた場所へと来ていた。

 この場所は裏山の中でも奥まった場所にあるし、崖ということもあって烏間先生が授業に使うこともない……知っているのは私とカルマ、殺せんせーと渚くんだけだ。少しの間崖の下をのぞき込んでみたり、周りを見渡してみたりと確認していたキーアちゃんは、私たち2人に向き直ると、小さく口を開いた。

 

「……2人とも、急に呼び出してごめんね。キーアね、アミーシャとカルマに謝らなきゃいけないことがあるの」

 

「キーアちゃん……?」

 

「いや、その前に俺とキミ、今日が初対面だよね……?なのに謝るとか言われたって心当たりないんだけど」

 

 カルマの言う通りだと思う。謝りたいと言われても、私にはなんのことか全然思い当たらないし……そもそも、なぜ名乗ってもいないカルマのことを初対面のはずのキーアちゃんが知っているのか。

 

「アミーシャは、キーアが《零の至宝》って呼ばれてたこと、知ってるよね?」

 

「う、うん、もちろん……」

 

「……何それ?」

 

「えっと……」

 

「……いいよ、アミーシャ……カルマに教えてあげて。このあと話すことに、関わってくることだから」

 

 当然カルマがそれを知っているはずがなくて、でもそれは軽々しく説明してもいいものでもなくて。キーアちゃんを伺えば、私の口から説明して欲しいとの事だった。本人からの許可があるのなら……私の知っている限りの情報を話そうと思う。

 

 

 

 もう既に力を失ってるとはいえ、キーアちゃんは《零の至宝》と呼ばれていた。

 

 それは、ゼムリア大陸の古代の人々が空の女神(エイドス)から授かったとされる7つの属性を司る至宝、《七の至宝(セプトテリオン)》の内、自我をもち、消滅してしまった《幻》を司る《虚ろなる神(デミウルゴス)》を再現しようとした結果生まれた、人の手によって創られた至宝のこと。キーアちゃんはその核として生み出された500年前に造られた人造人間(ホムンクルス)

 

 といっても、見た目は全然普通の女の子と変わらない……そう、見た目だけなら。

 

 カルマは私の導力器(オーブメント)を使おうとしたことがあるから、それに7つの属性があるのは知ってるよね。《零の至宝》であるがために、キーアちゃんには本来の《幻》だけでなく、《時》、《空》の上位三属性の力を司る、失われた至宝よりも遥かに高位の存在になっていたの。

 その能力は……因果律の操作。人の認識を司る《幻》と、時空を操る《時》、《空》の力を使って世界の理や歴史に干渉することで、現実世界を改変し、世界を組み替える力をもっていたんだって。あとは……一定の条件下で人々の知識や経験、思いを集積したり、周囲の人々の認識と因果を操作して好意をもたせ、心と魂を掴む力だったかな。

 ちょっと、難しかったかもしれないけど、《零の至宝》については、私が説明できる限りではこんな感じ、でいいはずだよ。

 

 

 

「……ふぅん、なるほどね……」

 

「キーアは2年前、大きな事件の黒幕によってロイド達が殺されちゃう未来を見て……それで、その未来を回避するために因果律に干渉したの。でも、……それはズルだった。『例え間違って悲劇を起こしたとしてもそれを無かったことにするのは、それに関わった人の尊厳を犯すこと。それじゃあ人は成長できない』……そう、教えられたんだ」

 

 

 

 

 

「────それで、キーアは《零の至宝》としての力を放棄して……俺達の家族として今を生きてるんだ」

 

 

 

 

 

「「「!?!?」」」

 

 聞こえるはずのない第三者の声に、私たちは森の方を慌てて振り返る……そこには、少し苦笑い気味に歩いてくるロイドお兄ちゃんの姿があった。

 

「ロイド、なんで……」

 

「ごめん、キーアがアミーシャだけならともかく、初対面の……えっとカルマ君でいいのかな?キミにも伝えたいことがあるって言った時点で、キーアの至宝の力と何か関係があるんじゃないかと思って。校舎から姿が見えるうちに追いかけてきたんだ……一応、付き添おうかと思ってさ」

 

「そっか、最初からここに来るのがバレてたんなら、誰にも知られない場所って言っても意味ないよね……それにしてもキーアちゃん、何でもう無くなったはずの至宝の能力の話なんて……」

 

「…………」

 

 ロイドお兄ちゃんの合流理由がわかったところで、私はキーアちゃんに問いかける……だけど、ここまでスムーズに進んでいた会話が、キーアちゃんが言いづらそうに口を閉ざしたことで止まってしまった。

 ……私には、これだけの情報じゃ彼女が何を言いたかったのか分からない……困ってロイドお兄ちゃんやキーアちゃん 、カルマの方を見て、そのカルマが何かを考えながらブツブツと呟いていることに気づいた。

 

「……アミーシャに……いや、俺にも話すってことは俺にも関係すること……至宝の力は因果律への干渉……2年前……、2年前なら俺等が出会った頃、……まさか」

 

「……カルマ?」

 

「ねえ、キーア……もしかして、その力を放棄する前に……俺等に、……違うか、アミーシャに、何かあったんじゃないの?」

 

「…………え」

 

「時系列が合うんだよ……キーアが至宝の力を使ったのも、力を放棄したのも、……俺と渚君がアミーシャと出会ったのも、全部2年前の話だ。わざわざその話を持ち出したってことは、何かしら関係性があるんじゃないの?その時点で俺と渚君に関してはキーアと全く接点がない、なら助けたかったのはアミーシャ……どう?」

 

「……たったこれだけの情報でそこまでたどり着くなんて……カルマって、鋭いんだね」

 

 長い長い沈黙の後で、キーアちゃんは諦めたような声でポツリと呟く。

 

 

 

 

 

「アミーシャはね、2年前……最初の現実では死んでるの」

 

 

 

 

 

 それを聞いた瞬間、私も、カルマも、そしてロイドお兄ちゃんまでもが目を見開いた。だって、今、私は生きている……でも、キーアちゃんの見た現実では私は死んでいた。……キーアちゃんが書き換えたっていうロイドお兄ちゃんたちの例と同じだ、……ということは、

 

「学校の帰り道、不良に襲われて……暗い所に連れ込まれて、そのまま……」

 

「2年前で不良……それってもしかして、中1の時に俺と渚君が路地裏で不良からアミーシャを助けた、初めてあった時のこと……?」

 

「……ぐ、偶然、何かの偶然で未来が変わったとかじゃ……」

 

「うん、……そうかもしれない。でもね、アミーシャが運良く助かったとしても……それからのアミーシャが一人ぼっちだと、何回やり直しても未来で、15歳になる前に必ず死ぬ運命しかなかったの。別の不良に……崖から落ちて……高校生に連れ去られて、プールで溺れて、特殊な毒で、殺し屋に見せしめとして……だから、現実を変えた。ロイド達がエステルとヨシュアの依頼を手伝ったことでレンの介入する未来に繋がったように……あの日、カルマとナギサがアミーシャのことを助ける現実に」

 

 キーアちゃんが上げた、私が死んでしまったという原因は、全てに覚えがあった。

 

 

 

 不良に襲われた……私がカルマと渚くんの2人に出会ったあの日のこと。

 

 別の不良に……確かに、カルマや渚くんと出会ってなければ別の日に同じようなことがあってもおかしくなかった。なかったのは2人がずっと一緒にいてくれたのと、カルマが喧嘩と称して追い払ってくれてたから。

 

 崖から落ちて……殺せんせーに2人でしかけた、この場所での暗殺。理科の実験で先生は生徒を危険から守ることを確信していた私は、カルマがやらなければ1人で実行して……殺せんせーが助けにこなければ間違いなく死んでいた。

 

 高校生に連れ去られて……修学旅行のことだろう。カルマが真っ直ぐ私の所に来てくれなければ、性的な危険と一緒に命の危険もあった。

 

 プールで溺れて……カルマが烏間先生の心肺蘇生法を覚えていて、私にしてくれてなかったら……心肺停止になっていた私は確実に死んでいた。

 

 特殊な毒で……夏休みのホテルでのことだ。みんなはすり替えられた食中毒菌、私だけ致死性のある毒……これも、そう。

 

 殺し屋に見せしめとして……死神の事件のことかな。

 

 

 

 全部……私が生き残った理由の全部に、カルマが、渚くんがいる。カルマたちが助けてくれたから、私は今も生きている……?

 

「その時はまだ、ロイドにダメって言われてなかったから……ただ、アミーシャに死んで欲しくなくて、並行して未来を変えるために力を使ってた……これが1番最善だって……」

 

「……私を、助けて、くれたんでしょう……?だったら、謝りたいとかそんなの、」

 

「違うの、それだけじゃないの、あのね……っ、……多分、カルマがアミーシャのことを好きなの、キーアが力を使ったからなんだよ」

 

「…………え、」

 

「アミーシャ、さっき言ってたよね。キーアには周囲の人々の認識と因果を操作して好意をもたせ、心と魂を掴む力があるって。キーアも自分に無意識に使ってた……もしかしたら、キーアが……アミーシャを1人にしないためにアミーシャを中心に周囲の人に働きかけて……」

 

 それを聞いた瞬間、私の中で何かがざわついた。キーアちゃんは無意識だとしても、自分自身に使った力は完璧だった。

 じゃあ、他人(わたし)に対してだったら?私は《幻》属性に適性と耐性がある。それが、キーアちゃんの力に抵抗しているのだとしたら。どれだけ自分の内側に入れていても、心のどこかで信じきれずにいるE組のクラスメイトたち……渚くんとカルマにだって、未だ気づいたら向けてしまっている警戒心……それが全部、キーアちゃんの力に抵抗する裏付けだとしたら。

 

「……じゃあ、みんなが、E組のみんなが私に優しいのは……そのせい……?カルマが、私を好きだって言ってくれたのも……私が、好きになったのも、……キーアちゃんの力があったから……?私の気持ちは、みんなは、作り物だったってこと……?」

 

「アミーシャ……!キーア、言い過ぎだ!それにあの時言っただろう、どんなに認識や因果を操作したとしても、一緒に過ごした記憶は現実で本物だって!」

 

「でも……!」

 

 キーアちゃんに向かってロイドさんが怒っている……でも、私はそれどころじゃなかった。いきなり知らされたこと……これまで私が感じていたみんなからの温もりは全部、作られたもの?偽物だった……?だったら『私』はホントなら……

 どんどん暗くなっていく目の前と、私の心は、何も受け入れたくないと全部を拒絶してしまいそうだった。

 

「……ねぇ、キーア。俺を、俺の気持ちをあんまり舐めないでよ」

 

 そんな私の意識を明るい場所へと引きあげたのは、……やっぱりどんな時でも変わらない、赤色の光だった。

 

「アミーシャを好きな気持ちが植え付けられたもの?操作されたから?……そんなわけないじゃん。俺は俺の意思でこの子を好きになったし、今じゃ死んでも一緒にいるって誓えるくらいには離れるつもりもないよ」

 

 そう言いながら私を引き寄せ、抱きしめてくれたカルマ……私を捕まえている腕は痛いくらいだったけど、不思議と嫌だとは感じなくて……どう頑張っても、それが偽りの感情からくる行動だとは思えなかった、……思いたく、なかった。

 

「それに、2年前に力を放棄したってことは、キーアが認識と因果に干渉し続けることは今じゃ不可能になってるはず。……キーアは、アミーシャを助けるために俺を選んで……『出会う』っていう好きになる()()()()を俺に与えてくれたんでしょ?じゃあ、そこから先は俺自身の意思だ。渚君だって、E組のやつらなんて特にそう……自分の意思でこの子と接して、好きになったんだ。キミに操作されたからじゃない」

 

「……カルマ……」

 

「……はは、目の前で盛大に惚気られた気分だよ。リーシャからなんとなくは聞いてたけど、カルマ君はアミーシャの事が好きで、大切にしてくれてるんだね」

 

「好きとかその程度なわけないじゃん、……俺はアミーシャのこと、愛してるから」

 

「……っ、」

 

「そっ、か……アミーシャ、カルマ……困らせるような事言って……ごめんなさい」

 

 カルマがものすごく恥ずかしいことを言っているのを聞いて、私は彼に抱きしめられるままに彼の胸板に熱くなってきた顔を押し付けて隠す。あれだけ濁っていた感情が溶けていくのも感じていて……やっぱり、このカルマのおかげで感じられる感情全てが、キーアちゃんの力のせいとは考えたくない。

 

 キーアちゃんは、私たちにぺこりと謝ったあと、ロイドお兄ちゃんへと抱きついていた……らしい。らしいというのは私は顔をカルマに押し付けていたから声しか聞こえていなくて、カルマだけがそれを見ていたからだ。キーアちゃんは私と同じように顔をロイドお兄ちゃんに押し付けて……だから、誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 ────ごめんなさい、……このままアミーシャが自分の事を誰にも話せないままだったら……きっと、誰も望まない未来がやってくる。

 

 

 

 

 

 そう、彼女が言っていたことを。

 

 

 

 

 





「……さ、落ち着いたか?2人とも」

「……ぐすっ、うんっ」

「うー、……落ち着いた、けど……恥ずかしい」

「アミーシャはそのままでいいの、そういうところが可愛いから」

「……~~~っ!」

「っ、痛いって……何さ」

「か、かるまが恥ずかしいこと言うのが悪いの……!」

「本心なんだから隠す必要なくない?……だから痛いってば、」

「……ロイド。カルマってアミーシャのことホントに大好きなんだね。それにアミーシャもきっと……」

「はは、キーアにまでそう言われるって……でも、これでわかったんじゃないか?彼等はキーアの力なんかじゃない、自分自身の意思で愛し合ってるんだって」

「…………うん。でも、このままだと……きっと、みんなが……」

「……俺はキーアの見た、数ある分岐の先にある現実は知らないけど……キーアがもう干渉できない以上、彼等の選択に託すしかないだろう」

「……そう、だね。……、…………よしっ!カルマー!キーアと一緒に教室に帰ろ!」

「……は!?え、何で、」

「アミーシャはキーアのお姉ちゃん、だったらカルマはキーアのお兄ちゃんだから!」

「(何か、同じようなことをイトナの口から聞いた覚えがあるんだけど)」

「ほらほらレッツゴー!」

「ちょっと、引っ張らないでよ……!」





「「…………」」

「……行っちゃったね」

「そ、そうだな……えっと、アミーシャ……俺は3人を追いかけてきただけだから、帰り道を知らないんだ。案内してくれるかい?」

「う、うん……っ!えっと、こっちだよ……」



++++++++++++++++++++



インターミッション、それは零の軌跡と碧の軌跡に使われていた、断章のような扱いのお話。……というわけで、インターミッション前半でした。

クロスオーバーさせる上で、どこで暗殺教室と軌跡シリーズを絡めていくかで作者はかなり悩みました。……悩みましたが、『キーア』という存在を使うことで上手く時系列を整理することが出来たと考えています。軌跡シリーズとしてのオリ主の立場と、暗殺教室側でのオリ主の立場……今回の話では、それのすり合わせができたと思ってます。

オリ主ははっきりいって総合的に様々な分野でずばぬけた才能を持つ、いわゆるチートです。リーシャの戦闘訓練にも泣き言ひとつ言わずに着いていき、5歳年上の姉と同じ量、同じハードルをこなすことが出来た時点でお察しというやつです。ただ、環境が良くなかった。オリ主の周囲には常に何かしらで秀でた能力を持つ人達がいたために、自分の才能に気が付けずに押し殺すことに繋がった、という背景設定があったりします。これについては、次話で。

さて、これまでのお話を読んでいて、なんとなく察しのついている読者様もいると思いますが、この『暗殺教室─私の進む道─』は分岐点があります。数ある選択肢を選ぶか選ばないか、違う行動をとることによって結末が変わることになります。

そのため、片方の分岐点では暗殺教室の物語が途中で飛ぶことになり、いきなり「え、その話になるの?」な現象が起こることが予想されますので、あらかじめ把握をよろしくお願いします。

まだまだ、この物語は続きますので、どうぞお付き合いくださいませ!



では、次回でお会いしましょう。


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