「最近人気だよな~『GIRLS』」
「かわいい~」「いけてるよねぇ」
国際怪獣救助指導組織、通称『GIRLS』の広告CMを見て笑顔で話し合う人々。そんな人々を見下ろす四つの影。
新宿駅の出口の上に立っていた一人、黒い髪に黒い服、天使の輪のような物が頭の近くに存在する女性が町の人々の言葉に、嘲るような笑みを浮かべた。
「ふん、あの程度でいけているだと?笑わせるな……見ていろ。『GIRLS』の時代はもうすぐ終わる。世界は我々、『BLACK STARS』のモノだ!」
その両隣にたつのは赤いボロボロのマントを羽織りこれまた赤い仮面で顔の左上半分を隠し、鎌を持った少女。臍の部分が丸く切り取られた萌え袖と言われる袖のジャージを着た少女。そして、背後からガシリと黒神の女性の頭を鷲掴みにする黒い服に黒い髪、金の瞳を持った、何やら計算機を使っている男。
「『GIRLS』の時代も『BLACK STARS』の時代もどうでも良いから、働け。せっかく稼いだ家賃無駄に使いやがって……臓器売り飛ばすぞ」
「え?あ、ちょ!?ま、待って!ごめんなさい!」
「クソが、何度計算しても今月も自由に出来る金が………つか何で俺此奴等の面倒見てやってんだ?いっそ俺も『GIRLS』にでも所属するか」
「「「!?」」」
男の言葉に残りの2人はバッ!と振り返る。
「ほえ!?ま、待って待って!貴方に辞められたらご飯代が~!」
「私は貴方について行く。だからお小遣い減らさないでください」
「た、頼む!捨てないでくれ!何でもする、働く意外なら何でもするからぁ!」
「人が今一番して欲しいことをしねぇと宣言して何でもするなんてほざいてんじゃねぇぇぇ!」
駅を利用していた者達がその叫び声に何だ何だと周囲を見回す。男がちっと舌打ちするとその場から立ち去った。
嘗ての時代、科学特捜隊と呼ばれていた組織の制服っぽい制服を着た女子高生平賀サツキ。
学級委員長である彼女は『GIRLS』のイベントに行きたがったクラスメートに掃除当番を押しつけられ帰りが少し遅くなった。断れない自分の性格が恨めしい。
『今話題の『GIRLS』!彼女達のイベントが本日此処、新宿で行われまーす!』
やけに巻き舌な声に引かれビルの大型ディスプレイを見つめるサツキ。どうやらクラスメート達が言っていたイベントの宣伝のようだ。新宿都庁展望台で行われるらしい。
「……………」
──人は、今の自分から離れることを望む。それまでの自分とは違う姿に変わることを夢見る。でも、私が望んだのは……。
「……『GIRLS』か……」
と、何処か疲れたようなため息を吐くサツキ。と、そんなサツキの気分を表すように黒いオーラが身体を覆う。
「──?───!?な、何これ!」
気分的にではなく、物理的に。
髪がまるで意志を持ったように蠢き、身体の奥から何かの力が溢れてくる。周りの人に注目されるなかスカートまでめくれあがる。
「何これ!?どうなってるの!」
異変は彼女だけでは終わらない。突如空中に黒い穴が出現して周囲のものを飲み込み始めた。
「───ッ!」
と、洗濯機と冷蔵庫を同時にエレベーターのないマンションの最上階に運んでいた青年がはっと顔を上げる。
「………昼飯買い忘れた」
取り敢えずバイトの先輩に奢ってもらおう。そう考えながら、今頃あの三馬鹿娘共が遊びほうけていると考えるとムカムカしてきた。
「やっぱ辞めるか?」
「ええ!?こ、このタイミングで!?ご、ごめんね……一人に任せすぎちゃったよね」
「ああ、すいません。副業ではなく本業の」
「ああ、君たくさんバイトしてるもんね。本業なんだっけ?」
「馬鹿三人の保護者」
「あはは。大変だね、おじさんに出来ることがあったら手伝うよ」
「…………じゃあ、つい殺っちまた時に車貸してください。山に埋めるんで」
「任せて!」
不思議現象に襲われたサツキはあの後飛んできた看板にぶつかりそうになるも謎の液体で溶かす人物と赤い触手を操る人物に助けられ、スマホのような物から発する光に触れると不思議現象が終わった。取り敢えず礼を言おうとしたら紙袋をかぶせられ連行された。
(………私、これからどうなっちゃうんだろう)
もしやこのまま売られたりはしないだろうか、などと考えている内に目的地に着いたのか立ち止まる。
「着いたぞ。此処が我々のアジトだ」
「………え?」
紙袋が取られるとボロボロのアパートが姿を現す。ここがアジト?実は中にUFOとかでもあるのだろうか?
「おう、お前等も帰ってきたか……ん?何だそのガキ」
と、その声に振り向くとキーホルダーのリングを指にかけクルクル回す煙草を加えた黒いジャケットを来た青年の姿。
(うわぁ、背ぇ高い………髭全然無い、格好いい……)
父のような無精髭を持たず、しかし同年代にはない大人な雰囲気の男性。顔も整っており思わず頬が染まる。と、サツキの視線に気づき何を思ったのか煙草を携帯灰皿にしまう。
「高校生か?悪いな」
「え?あ、お、お気になさらず……」
「何かイライラすることでもあったの~?すーぐ禁煙解いちゃうんだから♪」
「………埋まるなら山と森、どっちが良い?」
「ひぇ!」
「で、このガキは何だ?売るのか?パーツ分けるなら安上がりの腕の良い医者紹介するが」
「ひぃ!?」
「冗談だ。俺に借金もしてねー奴を殺したりはしねーよ」
それってつまりこの人からお金を借りたら、きちんと返さないと臓器を売られるってことなんじゃ……と、顔を青くするサツキ。そのままアパートの中を移動した。
「……………」
ジャージ姿の女性はポテチを食べ赤い仮面の少女はレトロなテレビでゲームを始める。唯一の男は何やら家計簿を見ながら計算機を使い、カレンダーを見て印を付けている。
そして目の前にはたぶんリーダーらしき黒い格好の女性。
「少女よ、何も怯えることはない。我々は君の仲間だ。我々が出会ったのは全て過去より繋がる定めなのだ」
などと詩的というか、中二的な言葉を紡ぐ女性。
「あの、あなた方は?」
サツキがもっともな疑問を言うと男からとても面倒くさそうな雰囲気が醸し出される。
怒られた!?臓器売られる!?などと恐怖する中目の前の女性が立ち上がる。
「申し遅れてすまない。私はブラック指令だ!」
「シルバーブルーメで~す♪」
と、ジャージ姿の女性。
「ノーバだ」
こっちは赤い仮面の少女。最後に残った黒衣の青年もはぁ、とため息を吐くと「ゴジラ……」と呟いてから立ち上がりサツキの前に集まる三人同様前に立つ。
「四人揃って!」
「生活苦の……」
「地球の支配者」
「
「「「「我等、『BLACK STARS』!」」」」
「っておいゴジラ!生活苦はいらんだろ!」
「…………はぁ、それでえっと…私に何のようでしょうか……」
ブラックと名乗った女性の言葉によると、人類と怪獣の長い戦いの歴史が終結した後現れ始めた怪獣の力と姿を受け継いだ少女達怪獣娘達が現れ、先程駅で起こった不思議現象も怪獣娘であるサツキが行ったことらしい。
「………少女?」
「俺は男だぞ」
そういって造花をもの凄いスピードで作るゴジラ。見た目普通の人だし、普通の人間なのだろうか?
ちなみに彼女達の主な活動は地球侵略らしい。だけどチラリとゴジラを見ると今度はティッシュを箱に詰め始めていた。
「取り敢えず、君の……名は?」
「あ、平賀サ───」
「待て。此処に名前を書くのだ」
名乗ろうとしたサツキに対しブラックは待ったをかけ『名前をここへ書いてネ♡』という文字と矢印を書いた紙を渡してくる。素直に名前を書くサツキ。
書かれた名前を確認したブラックは名を読み上げニヤリと笑い、紙をめくる。ちょうどサツキが名前を書いた位置に穴が開いていた。
「これで、今日から君は我々『BLACK STARS』の準メンバーだ!」
「ほぇ………え!?」
差し出された紙を見ると悪徳商法よろしく二重になっていた紙の下は契約書だった。しっかりと名前が書かれている。自分の筆跡で……。
「というわけで早速、我々とレッツ侵略してみな──」
ガシリとブラックの頭をゴジラが掴む。額に青筋が浮かんでいる。もしかして、助けてくれるのだろうか?
「この契約書に「活動資金は地球侵略のために大切に使うこと」って書かれてんだが、お前等何時大切に使った?」
全然違った。
「シルバー、てめぇは自分の金で菓子買え。ノーバ、電気代考えてゲームしろ。ブラック…………死ね」
「私だけ酷い!?」
「………ちっ。やっぱもう少し稼げるバイトするか。侵略活動に参加出来ねーし」
「稼げるバイト?」
「ちょっと警察が手を出したくてもだせねぇ指定暴力団を抗争に見せかけて潰す。これが結構儲かるんだわ」
「……………」
さっき背後に立った時に触手の先端を喉元に当て背後に立つな、消すぞと言ってきたノーバは特殊部隊出身らしい。だけど、こっちの人の方が怖い。
「大丈夫だよー。ゴジラはなんだかんだいって悪人しかぶち殺さないから」
「基本人間嫌いだけどその辺はちゃんとしてる。お金だされればキチンと働くし」
でも真面目な人らしい。さっき冗談で臓器売られそうになったけど………冗談だよね?
と、その時ブラックがハッ!と表情を変える。
「……来る。よりによってこんな時に」
「へ、何がですか?」
「敵襲だ!全員退避せよ!」
「て、敵襲!?」
まさか、そんな、本当に悪の組織みたいなことが本当に起こるの!?
と、割と失礼なことを考えるサツキ。
ちなみに起きなかった。
ブラックの持つ超能力である予知能力、催眠術、ノーハンドでのブラのホック外しのうち一つである予知能力で予知したのは大家さんの取り立てだった。
「毎度すまん。あの馬鹿、次やったら身体で払わせるんで………肝臓でもいるか?」
「い、いや……ゴジラさんこそ何時もありがとうございます。で、ではこれで……」
マシュマロが好きそうな大家さんはゴジラの過激な言葉に顔を青くして逃げるように立ち去った。
「おいゴジラ!活動資金は大切に───」
「あぁ?」
「ア、スイマセンユルシテクダシイ」
「てめぇはマジでいい加減にしろよ。てめぇに渡してる金は小遣いだけじゃなくて家賃も含めてるって言ってんだろうが」
「ぎゃあああああっ!!」
アイアンクローを食らい逃れようと必死に暴れるブラック。が、抜け出さずとうとう気絶した。
気絶したブラックをシルバーが背負い町中を移動する。起こさなくて良いのかとサツキが尋ねるとこう言うときはお告げがあるからそれを待つと返された。ブラックの持つ予知能力は普段は単なる勘程度だが予知夢は本人曰く絶対当たるらしい。だからそれを下に作戦を立てるのだ。
ちなみにサツキもこの予知夢で見つけた。と、その時タイミングよくブラックが目を開く。
「良く来た、勇者ブラックよ」
「ゆ、勇者ブラック!?」
「ブラックが次のレベルに上がるには、218の経験値が必要だ。シルバーブルーメが次のレベルに上がるには───」
(こ、これはお告げというよりもうロールイングプレイゲームの───)
と、サツキがドン引きする中ブラックは両手を広げる。
「そなたに侵略の呪文を授けよう。『サイジ ヨウカ イトチ ヨウヲ ツカエ』。ではまた会おう……カー」
「起きろ」
「ぶへ!」
予言が終わると再び眠ろうとしたブラックだったがノーバの触手に叩かれ起こされた。
一同は移動してファミレスの席を取る。話す内容は先程のお告げについて。
「それでは侵略作戦会議を行う。先程のお告げ、我が主ブラックスターは我々に何を伝えようとしているのか」
「いっつも訳わかんないよね~……はむ」
と、注文したグラタンを食べるシルバー。
(へぇ、暗号を読み解く必要があるんだ……)
「サツキ、食わねえのか?一応お前の歓迎もかねてるつもりだが……今日は給料日だ、多少の贅沢なら──」
「本当!?じゃあ私もどんどん食べ──」
「シルバー、死にたいならそう言え」
「………すいませんでした」
まずは意見交換と言うことで新人のサツキがどう思うか尋ねられた。
サツキはまずサイジをデパートなどの催事、それに続くようにシルバーがヨウカを
その情報を元にノーバが調べると新宿のデパートで今日まで北海道物産展という催事を行っているらしい。
「成る程。ツカエは普通に使えだろう。問題はここのイトチとヨウヲをどう読み解くかだな……」
「あ、すいませーん!ミラノ風ドリアもひと───ひぃ!何でもありません!」
追加注文しようとしたシルバーだったがゴジラにギロリと睨まれ顔を青くして注文を取り消す。
「シルバーさん、たくさん食べますね。苦しくならないんですか?」
「うん~、私大食い怪獣だから胃腸は強いんだ~………あ、でもゴジラも実は結構食べるよ~?家計だってゴジラの食費減らせばかなり余裕が──」
「てめぇが言うな………ん、どうしたブラック」
「そうか!イトチ、ヨウヲ、ツカエ………胃と腸を使えだ!」
「…………はぁ?」
ブラック曰く『サイジ ヨウカ イトチ ヨウヲ ツカエ』はデパートの催事で食って喰って食いまくれというお告げなのだとか。人気の催事の商品を食い尽くせば人々が空腹に喘ぎ楽しい催事が終わり精神的苦痛を与えられるというお告げなのだとか。
「これで世界侵略は成功したも当然!」
「何処が?」
「ナーッハッハッハッ!」
「ブラックちゃん格好いい~♪」
「行くぞ!『BLACK STARS』!レッツ侵略だ!」
そして一同は移動して新宿デパートへ。ゴジラは宝くじ売場から今回の当選番号の発表日を改めて聞いてから各に軍資金を渡す。
「良いかお前等。活動資金は大切に………もし金払って買っといて残しやがったら、差額分の内臓売り払う。まあ、サツキは初だから大目に見てやる。それと、アレルギーだけでなくどうしても食えない物があったら俺のところに持ってこい」
「任せろ!」
「私好き嫌い無いから平気~」
「了解した」
「あ、えっと……ご馳走様です」
結果。サツキとゴジラ以外全員腹をパンパンに膨らませていた。ブラックもノーバも苦しそうだ。シルバーは良い笑顔だが。
「軍資金はもちろん今月の小遣いが無くなってしまった」
「………もう食べれない」
「そもそも買い占められるほどお金持ってないし、やっぱ違ってたね~」
「お前等って、本当馬鹿だな……」
「でも奢るんですね………というか悪の組織なら強盗とかするのでは?」
「お前は働いたことねぇからそう言えるんだよ。汗水垂らして働いた金を奪われるなんて……俺ならそいつぶち殺すぞ」
「ゴジラは良く強盗団とか~、麻薬の売人とか~人攫い捕まえてボッコボコにして警察に届けるんだよね~」
「…………」
それって侵略者というよりヒーローなのでは?
「たま~に埋めるけど」
「……………」
でも法律は犯しているらしい。
というかこんな侵略作戦で成功した事あるのだろうか?と疑問を抱き質問するとブラックから「あるわけ無いだろう!出来ていたら地球は今頃我々の物だ」とどう反応すれば困る発言をされた。
「まあ、まだ本気を出していないからな。本気を出した私はマジで凄いぞ!」
「流っ石ブラックちゃん!根拠のない自信持たたら祖師ヶ谷一だね」
(………あぁ……まあ、この調子なら侵略って言っても大丈夫そうかな…)
「そもそも俺等は人間よりよほど強いんだ。本気というかその気になりゃ、まあ暴力に訴えてこの町を壊滅させることだって出来る……シルバーなら下水道に消化液を流して町を沈めたりノーバなら赤ガスで町の連中を発狂させたりブラックなら催眠術で」
「ゴジラさんは?」
「俺等此奴等みてぇに何か特殊な感じの力は特に持ってねぇよ。単純に強い、それだけだ」
「じゃあ、何でしないんですか?」
「馬鹿みてぇに力を振るうより、此奴等と馬鹿やってる方が……まあ、楽しいんだよ。此奴等以外に馬鹿やれる友達も居ねぇしな…」
なんか寂しいことを言われた。というかこの人もこの人で、こんな馬鹿騒ぎは嫌いではないのか……基本お金この人持ちみたいだけど。
と、サツキは不意に先程のお告げを思い出す。
「!あの、ここってデパートの最上階ですよね?」
「もちろん、屋上だからな」
「あの手帳貸してもらえますか?」
そういって先程のお告げがメモされた手帳を受け取る。サツキはその手帳をみて確信する。先程ブラック達は『サイジ ヨウカ』『イトチ ヨウヲ ツカエ』で句切っていたが、サツキは『サイジ ヨウカ イ』『トチ ヨウヲ ツカエ』で区切る。つまり最上階、都庁を使え。
「都庁というと………何かこう、本能的にぶち壊したくなるあれか………」
「彼処の最上階、つまり展望室から私の念をテレパシーで送れば、この首都、東京住の人間を支配下における。それはつまり、地球侵略の大いなる足がかりになると言うことだ!」
「流っ石ブラックちゃん。話が急に壮大になったねぇ」
「いや、流石なのはサツキ君だ」
「ふぇ?」
「我等『BLACK STARS』期待の新人、私の目に狂いはなかった!」
「仲間になってくれてありがとう~」
「グッジョブだ!」
と、抱きついてくるシルバーに親指を立てるノーバ。ゴジラも無言で飴(ヌカ・コーラ味:放射性物質抜き)を渡してくる。
誉められ、何処か照れくさいサツキ。
「よし、皆あれをやるぞ!」
「「ラジャー」」
「へいへい」
二人はノリノリで、ゴジラは何処か面倒くさそうな顔をする。あれとは何だろうかと首を傾げるサツキ。
「銀色のレイダー、シルバーブルーメ!」
「赤きスナイパー、ノーバ!」
「黒い破壊神、ゴジラ……」
「漆黒のリーダー、ブラック指令!」
と、順番に名乗り上げシルバーが何やらカンペを見せてくる。書かれていることを飲めと言う事らしい。
「ふぇ……ふぇぇ!?」
驚きながらも、四人の視線にさらされ意を決して読み上げる。
「ご、5人目の
「5人!」
「揃って」
「地球の!」
「支配者」
「
「「「「「我等!『BLACKSTARS』!」」」」」
ちなみにゴジラは急ぎのバイトが入ったので先に帰った。
「ただいま。って、またゲームしてんのか。何時だと思ってやがる」
一仕事終えて返り血だらけのゴジラがアジトに戻るとすでに布団で眠りジャミラ抱き枕を抱きしめるブラックと暗い部屋でゲームをするノーバ。
ゴジラは荷物をポイと部屋に放る。
「ちっと銭湯行ってくる」
「こんな時間に?」
「こんな時間だからこそ俺等みてぇのが利用する銭湯があるんだよ」
と、垢すりとバスタオル、を持って行こうとするゴジラ。その時、ブラックが目を開ける。
「良く来た、勇者ブラックよ」
「……!」
「お、お告げか……頻度が上がったか?」
「ブラックが次のレベルに上がるには、経験──ぶっ!?」
「そこは飛ばせ」
経験値を伝えようとしたブラック──この場合ブラックスターだろうか?──だったが聞く気のないノーバに触手で頬を叩かれた。
学級日誌の仕事を押し付けられ帰るのがほんの少し遅れたサツキは校門の前に来るとやたら人が集まっているのが見える。何だろ?猫か子犬でも迷い込んだのだろうか?ちょっとみてみたい、と背伸びするサツキ。
そこには黒塗りのSSバイクに腰をかけるゴジラの姿が。
「……お………ようサツキ、迎えに来たぞ」
「ゴ、ゴジラさん!?」
名を呼ばれ反応してしまい、視線が集まる。人垣が割れゴジラとサツキの間に一本道が出来るとゴジラはヘルメットを投げてくる。
「乗れ」
「………えっと、はい」
取り敢えずこの視線の集中砲火から逃げ出したかったサツキはヘルメットをかぶり後部座席に腰を下ろすとゴジラの腰に抱きつく。ブルンとエンジンが音を立てドドドドと振動が伝わってきた後、バイクは発進した。
「ゴジラさんバイク持ってるんですね」
「バイクや車の免許持ってりゃ出来る仕事も増えるしな。小型船舶免許も持ってる。いざとなったら鮪釣って金にする」
「そんなに就職先選び放題なのに侵略者なんですねゴジラさん……でもバイクって高いんじゃ」
「まあ侵略活動行う前に勝った奴だからな。旧式だが愛着もある………宝くじで一等と二等と三等が当たって十八億手に入れたし……」
「───へ?」
「つーわけで暫く贅沢できる。そういや、参謀長になったんだってな。昇進祝いだ、何か買ってやるよ」
「あ、じゃあその……本屋に…………」
金は入っても相変わらずボロいアジトで集合した『BLACK STARS』だったが侵略作戦会議を行う前にサツキの提案で侵略者診断をするためにパンダ公園に集まる。
「どうやら古今東西の侵略者達のデータを調べたところ皆さん失敗しているケースが殆どのようです」
「そりゃ成功してたら物語終わるもんな」
「そこで、なぜ失敗したか分析してみました!」
「分析だって、サツキちゃん頭良いんだ~」
「待て、我々に失敗など無い!」
感心するシルバーに対してブラックがその言葉を否定する。曰く、全て勝利への布石だと。が、サツキに黙るように言われた。かなりの迫力だ。
「では、敵に攻められた際、正しい侵略者として行動できるか診断します!」
持っていたスケッチブックをめくると「シチュエーション①『敵の行く手を阻む』」と書かれていた。
「最初はシルバーさんからで……」
「はーい♪頑張りま~す」
「ブラックさん達は正義のヒーロー役をお願いします」
「わ、解った」
「おう……」
「正義のヒーロー、ねぇ………」
situation 1 敵の行く手を阻む!
「皆の笑顔は!」
「私が、守る!」
「えーっと……悪を殺す」
「ふっはっはっはっはー」
「「お、お前は……!?」」
「………何だこの茶番……」
ひっどい演技のやりとりにゴジラが呆れながら木の形をした遊具の上に立つシルバーへと振り向く。
「私の名はシルバーブルー───ぷぎゃん!?」
名乗り上げる途中飛んできた小石が額に当たるシルバー。
「隙だらけた」
「………………えっと、取り敢えず多勢に無勢で勝利した侵略者は居ないので逃げましょう。でも敵に背中を見せると95%の確率で倒されます……後ゴジラさん、口上を少しは待って上げてください」
「何で?」
situation 2 必殺技を出すタイミング!
「ノーバさん、ヒーロー役のゴジラさんと戦ってください」
「ん」
サツキの言葉に向き合うゴジラとノーバ。ゴジラは首をゴキリと鳴らす。
「きな」
「食らえ……ブラッディー・デスサイズ!」
と、普段持っている鎌を巨大化させて切りかかるノーバ。それを指で摘まんで受け止めたゴジラは反撃に腹を殴りつける。
「ヒーローより先に必殺技を出すと97%の確立で対策をとられ、反撃されます!ていうかノーバさん大丈夫ですか!?」
「も、問題ない………♡………はぁ、あ……っ!く、くふ……内臓に響く、この一撃……たまらん」
(何でこの人ちょっと嬉しそうなんだろ………)
褐色肌を紅潮させ腹を押さえてビクビク痙攣するノーバ。苦しがっていると言うより、気持ちよさそうな顔に見えるのはきっと気のせいでは無いのだろう。
「ちなみにヒーロー側が先に必殺技使ってきたらどーすんだ?」
「取り敢えず耐えてください。3分耐えれば勝率が45%程上昇します」
「そうか。じゃあ耐える練習だ……」
「流石にそれは死ぬ……」
ゴキバキと指を鳴らすゴジラにダメージを受け喜んでいたノーバも顔を青くして首を振る。
situation 3 敵を前にしての勝負の預け方!
「観念しろ~、ブラック指令!」
「ふっ。今日のところは見逃してやる。だが、次に会った時がお前たちの最後だ!ナーッハッハッハッ!ナーッハッハッハ───へぶぅ!?」
「だからゴジラさん!口上の途中で攻撃してはいけません!」
「すまん、なんかムカついた」
「それは解りますけど……」
「わかっちゃうの!?」
「それと、高台から宣戦布告して勝利した侵略者は、居ません
situation 4 ヒーローが一人でいる時に出会い対決した時!
「久しいなブラック指令。今日こそ貴様等の最期だ!」
「アウトです!」
「え、何で?」
「この場合ある程度追い込むと結局仲間が駆けつけて負ける可能性が72%。最期ではなく、ある程度痛めつけたら興味を失ったように去りましょう」
「はあ?ノーバとシルバーが加勢したところで俺が負けるわきゃねーだろ」
「……そうなんですか?」
「うむ。ゴジラは我々『BLACK STARS』の筆頭稼ぎ頭にして最強戦力だからな。前にうっかりノーバが幻覚作用の煙を浴びせて、死にかけた」
「山で修行してた時だよね~。あの時は危なかったよぉ」
「…………(ガクガクブルブル)」
「取り敢えずサツキ………お前、真面目だな」
「ちょーマジメだねぇ!」
「クソマジメだ」
そして今回の成績を整理し、サツキがスケッチブックを見せてくる。
「と、言うわけで皆さんの侵略者診断の結果、十段階評価で最低の1となりました」
『危機感』『我慢強さ』『やる気』『慎重さ』『向上心』『計画性』とかかれた六角形のグラフ。
「ノーバは比較的に有能だな。これが特に低いというのがない」
「全部低評価だけど………ゴジラは全部低い」
「金以外で細けーこと考えんのは苦手だ」
サツキは低い結果をみてため息を吐きそうになる。やる気を上げるために行ったことなのにこんなに低いとむしろやる気がなくなるじゃ、と心配になったが、ブラックが笑う。
「良いじゃないか」
「へ?」
「1という数字、私は大好きだ!ナンバーワンでもオンリーワンでもあると言うことだろう!」
「この場合ワーストワンだろ」
「流っ石ブラックちゃん!無駄にポジティブだねえ」
「よし!このまま侵略作戦決行だ!」
落ち込むどころか謎の理論でテンション爆上がりのブラック。
「ノーバ、例のやつを!」
「ほい……」
ブラックの言葉にノーバが手帳を全員に見えるように広げる。
「これは………」
「昨日降りてきたお告げを私がメモしたものだ」
手帳に書かれていたのは『テキノ キチニ ムカウ ハキチ』。
「普通に読んだら『敵の基地に向かうは吉』だな」
「敵の基地に向かえば良いことがあるってことですか?」
「ふっ。そうか、ついに時は満ちたか」
「ふぇ?」
「我々の敵、すなわち『GIRLS』の基地に乗り込み、奴らを攻めろと言う事だな!サツキ参謀長!」
「ふぇぇ!?そんな、そこまで言ってないですよぉ!」
いきなり最終決戦に向かおうとするブラックに慌てるサツキ。
「わぁお、面白そう!」
「行くか」
「まあ、金入ってバイト辞めたから暇だしな」
「ふぇ?」
なんか皆やる気になってる。
「行くぞ『BLACK STARS』!レッツ侵略だ!」
国際怪獣救助支援組織、通称:『GIRLS』本部の近くのビルの屋上に経つ『BLACK STARS』のメンバー。
「あれが『GIRLS』の本部だ」
「あの、『GIRLS』ってどういう人達なんですか?」
「そうだな、一言で言うなら……覚醒しても人間から石を投げられたことのない怪獣娘の集まり」
「ん~、正義の味方?」
「ふん、いい子ちゃんの集まりなど、反吐が出るわ!」
「だが、此奴だけは気をつけろ」
と、ノーバがスマホのような機械で黒髪ロングの二本の角を持った少女の写真を見せてくる。
写真の少女の名はゼットン。最強の怪獣娘であり、彼女の手に掛かった侵略は数知れず。数多の侵略者を消し去った怪獣娘だ。
「消せるものなら消してみるが良い。どんな洗剤でも落ちないしつこさを見せてやる!ナーッハッハッハッ!」
「俺達頑固な汚れかよ………まあ潜入するのは良いが、面倒事を起こすなよ。ん?面倒事を起こしに来たんだから正面から突っ込むべきか?」
「あ、あの。取り敢えず今回は敵情視察と言うことで………騒ぎは起こさないでくださいね」
騒ぎは起きた。
通気口から進入し、戦闘を進んでいたブラックがキッチンらしき場所に落下してお菓子を食べに来た怪獣娘ゴモラと同じく怪獣娘の改造ベムスターに見つかり多勢に無勢と判断して背中を見せぬように背を壁につけ退散した後トレーニングを終えた怪獣娘ガッツ星人、アギラと遭遇してしまった。催眠術で眠らせようとしたブラックだったが先に必殺技を使うと対策されると忠告されたのを思い出し固まってしまった。
何故かノーバが知っていた監視室の中にあるこれまた何故かノーバが知っていた各部屋に繋がる配管からシルバーの溶解液(溶解度調整)を流してガッツ星人とアギラの服を解かしている間に退散。
次にリングの上で実戦訓練をしていたレッドキングとミクロスに遭遇。これはノーバの幻覚作用のある赤いガスを放つ。
どんな幻覚をみたのか、レッドキングにプロレス技をかけられていたがヒーローが先に技を出してきたら耐えるという忠告を思い出しおとなしく喰らうブラック。
不幸はそれだけでは終わらない。エレキングの尻尾を踏んでしまい電気を浴びたり、ノイズラーの爆音を間近で聞くことになったり、幼い怪獣娘達に噛まれたりしていた。というか何で噛まれたんだろう?
シルバーが一通り笑うとブラックと合流するために監視室から外に出て、不意にサツキがノーバとシルバーに何故ブラックと行動をともにするか尋ねる。
「ん~、やっぱりぃ、ブラックちゃんの笑ったり泣きわめいたりする姿インスタに上げたいしね。でもぉ、なんだかんだ一緒にいると楽しいからかなぁ。えへへ」
「右に同じ」
「…………」
ゴジラも似たようなことを言っていた。
「サツキちゃんのぉ、何でも一生懸命なところも楽しいよお」
「ぁ……ありがとうございます………」
「……っ………ふ!」
「あべ!?」
「あ、何だ……お前か」
ノーバが曲がり角から飛び出してきたブラックをひっぱたいて合流する。そして脱出することになった。
「結局俺等何しに来たんだ?」
と、ゴジラが首を傾げながら4人と共に走る。出口は直ぐそこだったのだが、エントランスには複数の影。
ゴモラ、改造ベムスター、レッドキング、ミクロス、エレキング、ピグモン、キングジョー、ガッツ星人、アギラだ。
「ん?カプセルガールズが二人だけ?最後の一人は何処行った?方向性の違いで解散か?」
「違わい!」
「バンドじゃ、ないから……」
ブラックが散々敵敵言うので『GIRLS』について調べていたゴジラは同期で仲良しの三人組、カプセルガールズについて知っていたが一人居ないことに首を傾げる。
「貴方、この前都庁にいなかった?」
「え、そうなの?」
と、ガッツ星人がブラックに話しかける。その場にいなかったアギラは改めてブラックを見る。
「っ……良いだろう、教えてやる!我々は───ッ!」
──高台から宣戦布告して勝利した侵略者は、居ません!
名乗り上げようとしてサツキの言葉を思い出し固まるブラック。急に固まったブラックを不思議そうにみる『GIRLS』の面々。
「わ、我々は『BLACK STARS』……以後、お見知り置きを」
と、丁寧に挨拶するブラック。戸惑う『GIRLS』、ずっこけるゴジラ。
「お前何してんの?」
「だ、だって高台から宣戦布告すると………」
「はぁ……」
と、ため息をはいたゴジラが一歩前に出る。
「俺達は『BLACK STARS』、自身が持つ力を国に縛られることなく使うお前等の同胞」
「同胞?まさか、怪獣娘!?」
「でも男の人も混じってるよ?」
「貴方が彼女達を煽動しているの?」
ゴジラの言葉にピグモンが目を見開きゴモラが首を傾げ改造ベムスターがゴジラに尋ねると、ゴジラは疲れたようなため息を吐く。
「家のボスはこの馬鹿だ。本当に馬鹿なんだよ、今日も何の考えもなしにここに侵入しようとか言うしよぉ……」
「そ、そうなんですか………と、とにかく部外者が勝手にここに入っては困りますう!」
「どうやって入り込んだのか聞かせて貰おう!」
「言うわけねぇだろ」
「だったらとっつかまえて聞くまでだ!」
「やってみろ!」
と、ゴジラが階段から飛び降りる。まさか人間であるはずの男が向かってくるとは思わなかったのか戸惑う『GIRLS』のメンバー。
「待てゴジラ!多勢に無勢で勝てた侵略者は居ない!」
と、ブラックがどこかズレた忠告をする中レッドキングが迎え撃とうと拳を握る。
「ゴジラさん!」
「レッド!駄目です、相手は一般人ですよ─!」
「しま───!」
「心配するなら自分の心配をしろ」
ピグモンの忠告に慌てて拳を止めようとしたレッドキングだったが間に合わず、しかしゴジラは吹っ飛ぶことなく手首を掴み拳を止める。
「うそ!レッドキング先輩のパンチを止めた!?」
「言ったろ?
と、ゴジラの体を青白い光が覆う。そして現れたのは黒い服に黒いズボンと、さっきまでとさほど変わらない格好をしたゴジラ。が、背中には炎を象ったような模様が現れ恐竜のような太い尻尾が生えていた。
「ええ!?へ、変身した!?ゴジラさん怪獣娘じゃなかったんじゃ………!」
「ああ。俺男だからな。娘じゃねぇよっと!」
そのまま驚き固まっているレッドキングをぶん投げる。
「ぐあ!」
もの凄い速さで壁にぶつかるレッド。そのまま気絶し、ゴジラはすぐさま次の標的を見る。標的はガッツだ。理由は攻撃してきたから。
ガッツの放った光線を後ろに飛び退き交わし、背後にあった柱を蹴り前に飛ぶ。と、その首に太い鞭のような物が巻き付いてくる。
「喰らいなさい!」
バチチチ!と音を立て電気が流される。が、ゴジラは首に巻き付いた物───エレキングの尻尾の鞭に噛みつくと逆にエネルギーを流し込む。
「きゃあ!?」
バチン!と鞭の取ってから手に伝わるエネルギーに思わず鞭を手放す。ゴジラは背後にテレポートして殴りかかってきたガッツの腕を掴むと引き寄せ首筋に肘を打ちつけ気絶させる。
「おお!良いぞゴジラ!これはいけるんじゃないか!?でもやりすぎ何じゃ……」
「安心しろよ。加減してる。きちんと痛くないように出来るだけ一発で気絶させてるだろ?」
「そうか。ならばもっと我等『BLACK STARS』の恐ろしさを思い知らせてやれぇい!」
そういう問題なんだろうか?と思ったがブラックが納得しているので取り合えず問題ないという事にしておこう。
と、その時だった。
「何の騒ぎ?」
サツキ達の背後から聞こえた声に振り返る。
「貴方達、見ない顔だけど、何をしているの?」
人形のような無表情。流れる炭の川のような艶やかな長い黒髪。頭に生えた二本の角に、黒いドレス。それは写真で見た姿にそっくりだった。
「あれ、あの人って確か……」
「ゼットン……!」
「ふぇ?ゼットンって、あの!?」
「あわわわ……!」
ノーバが呟いた言葉に振り向いたサツキが驚いていると顔を青くして冷や汗をだらだら流すブラックが目にはいる。
「──ぎぃやあああああ!!」
恐怖からか、とうとう叫びだしたブラック。
「ゴ、ゴジラ!やってしまえ!ほら、彼奴倒せば最強だから!」
「いや、流石におれでも一兆度の炎喰らい続けるとそのうち体温が上がりすぎて炉心が溶けて熱暴走起こして付近一帯溶かしちまうから、町中でゼットンとその他大勢との戦闘するのは無理だ。被害考えなきゃやれんこともないが」
「ふええ!?」
と、まさかの最強戦力からの戦闘拒否。というか被害気にしなければ最強の怪獣娘にも勝てるのかこの人……。
でもこの人が戦えないとなると、もう打つ手ないんじゃ……と、ネガティブな発想をするサツキ。そんなサツキを、薄紫の光が包む。
「へ?え………────ッ!!」
そのまま光に包まれ、アイドルのような服が現れる。さらに髪型もセットされ頭の両端に目のような装飾品が現れ、彼女達の頭上に黒い穴が現れ周囲の空気を吸い子でいく。
「あれは──!?」
「サツキちゃんの能力だ!」
「ふぇ?私の……?ていうか私、何でこんな格好に!?へ、ふわあああ!?」
戸惑うサツキも吸い込まれ、ブラック達も吸い込まれていく。ゴジラは床を蹴り空に開いた穴へと飛ぶ。
「じゃあな『GIRLS』!人間に愛想つきたら、いつでも好きなように力を振るえ。スッとするぞ?」
「サツキちゃんありがと~!お陰で助かったよ~!」
「グッジョブだ」
「おかけで東京が死の街にならずにすんだ」
と、シルバー、ノーバ、ゴジラに礼と賞賛をされる中ブラックがサツキをスマホのような機械で撮る。それは怪獣娘がどんな怪獣の力を引き継いでいるか知ることの出来る機械らしく、サツキの継いだ力はペガッサ星人らしい。
『GIRLS』にも別個体のペガッサ星人の魂を持つ者が居るのだとか。
「やったねサツキちゃ~ん!怪獣娘になれたね~」
「これで君も一人前だな」
「今夜は赤飯にしよう」
「おお。良いねぇ~」
「作るか?買うか?それとも店のにするか?」
どうやら『BLACK STARS』の全員が自分の覚醒を喜んでくれているらしい。何だから嬉しくて思わず笑みがこぼれる。
「それにしてもゼットンが出て来てゴジラが戦えないなんて焦ったね~」
「戦えない訳じゃねーよ。1対1ならともかくあの状況じゃ手間取って時間がかかると思っただけだ」
「ふん!あの程度のことで狼狽えてどうする」
「流っ石ブラックちゃん!こーんな顔してたけど大丈夫だったんだねぇ!」
と、涙目になって狼狽えているブラックの写真を見せるシルバー。どうもこの人は意外と余裕があったらしい。
「ぷっ。泣いてる」
「な、泣いてない!泣いてなんてないぞ!消せ、その写真を今すぐ消せー!」
「うふふ」
吹き出すノーバに顔を赤くして否定し写真を消すように叫ぶブラック。そんな光景を見て笑うサツキはチラリとゴジラを見る。ゴジラもその光景に笑っていた。
それにしても、普通(?)の人ではなく怪獣の力を使える人だっなんて。本当に謎が多い人だ。
「ゴジラさんって、本当に何で『BLACK STARS』に?怪獣の力を………それもあんなに強い力を使えるならもっとこわーい組織に入っててもおかしくないのに。馬鹿騒ぎが好きだとしてもそれって入るまで解りませんよね?それまで他の組織からスカウトとか無かったんですか?」
何気に闇医者とか警察の影の部分とか知ってる人だ。そういった場所から引く手数多だろうし、そういう組織に入らなかったのだろうか?あるいはノーバみたいに元は別の場所に居たとか?
「ん?まあ、腐れ縁ってのもあるな。俺とブラックは幼馴染だからな、最初に誘われたのもそこ………小学生ぐらいの頃、一緒に世界を侵略しようとか言いだして……高校から俺がそこらの不良と喧嘩売られ始めてぶちのめしてたらヤクザとかにも誘われたが人間如きに従うのなんてごめんだしな。その点ブラックは人間じゃねーし」
「人間じゃ、ないんでしょうか?」
「少なくとも人間は空間に穴開けたりしねーよ。けど、ま……お前が人間だろうと怪獣だろうと仲間なのはかわんねぇよ。俺は仲間まで人間だからって嫌う気はねーよ?人間にも良い奴が居るのは知ってるからな」
サツキが来るまでの間ペガッサ星人について調べることにした一同。スマホのような機械を見ていると、ちょうど良いタイミングで扉が開く。
「こんにちは~」
「待っていたぞペガッサ参謀長」
「ペガちゃんヤッホー♪」
「よう」
『BLACK STARS』ではお互い怪獣名で呼び合うのが常識。なので何の怪獣か判明したサツキも今後はペガッサと呼ばれるようになるのだ。
「早速だが、今日はペガッサ参謀長の能力を把握するところから始めたい」
「わ、私の能力……?」
「ペガッサ星人、能力はダークゾーンと呼ばれる何でも吸い込んでしまう異空間を出現させることが出来る」
「この間のあれだな。吸い込んだところと別の場所からも出れるみてぇだし防御のみならず移動にも使えるな。後敵の攻撃を飲み込んで返すとかも出来そうだ」
「おお!そこまで利便性が!」
「とはいえ、異空間に存在したまま此方に攻撃、なんてのは出来ないみたいだな。まあ矛盾してるからな………その矛盾を破って触れられない敵になるくせに紙装甲とかだったら笑えるな」
(な、なんかゴジラさんの顔がちょっと怖い………)
嫌なことでも思い出した、とでも言うようなゴジラの笑みにペガッサが若干引いた。
「というわけで、早速検証しに行くぞ!」
そして一同がやってきたのはお馴染みのパンダ公園。
「ではまずこれを使って変身して貰おう」
そういってブラックが渡してきたのはスマホのような機械。しかしこれはスマホではなくソウルライザーといって怪獣娘達のために造られた機械らしい。これを使い怪獣娘に変身したり逆にその変身を解くことも可能らしい。
「俺はなくても出来るがな……あんまりお勧めしねぇぞ?それになれちまうとそれがないと変身できない。出来たとしても暴走ってなるからな」
「とまあ、ゴジラが言うので我々も初期の頃のみに頼るようにしていた。まあ少なくとも、これを使えば暴走の危険が減るから最初は使うと良い」
「使わなくても変身できるんですか?」
「その辺が『GIRLS』との違いだねえ~。向こうと違って風聞気にしない悪の組織だから暴走なんて恐れないし~」
「ん。暴走してもゴジラに殴ってもらえる。ある時は、縛って……もらえる」
(何で嬉しそうに言ってるだろう………)
殴るとか縛るとか痛そうなのにとても嬉しそうな顔をするノーバ。何も知らない方がペガッサの為だろう。
「『GIRLS』の皆さんも持ってるんですね」
「まあ元々あっちが開発したものだからな。ノーバが闇ルートで持ってきた」
「闇ルートって……」
この人本当に何者なんだろう?とノーバを見るペガッサ。しかしこんなものを誰が買うのだろうか?『BLACK STARS』以外にも野良の怪獣娘組織でもあるのだろうか?
「まあ取り敢えず変身してみろ」
「で、では……やってみます!」
「ペガちゃんファイト~♪」
ペガッサは早速ソウルライザーを起動させる。
「ソウルライド、ペガッサ星人!」
と、ソウルライザーから光が溢れペガッサの身体を包んでいく。光が晴れるとこの間の姿をしたペガッサが居た。
「ふわぁ~、本当に変身できましたぁ」
「やっぱかわうぃね~!アイドルみた~い!」
「あ、アイドルだなんてそんな……!烏滸がましいです!」
「では、早速ダークゾーンを出現させるのだ」
シルバーの言葉にペガッサが慌てているとブラックが提案してくる。とはいえ意識して出す方法など解らない。
取り敢えずブラック達が必殺技の使い方を教えると腕を交差してデュア!と叫んだり頭にある平らな何かを飛ばすような動作をしたり気をためて放つような動作をする。
「ご、ゴジラさんはどうやって必殺技を放つんですか?」
「俺は基本的に通常攻撃しか使わねえよ。まあ強力な技つったら炉心を暴走させて放つ赤色熱線だな………ただ周囲が燃えるし暴走状態続けると炉心溶けて熱暴走するし……その時はソウルライザーねぇと俺死ぬ」
「た、大変なんですね」
「まあそういうわけで俺はゼットンみてぇな1200度以上の炎を使う奴と戦う際は短期で決めなきゃならねぇわけだ。色々制限あるんだよな俺」
「ゼットンさん一兆度の炎が放てるんでしたっけ……想像つきませんね」
「太陽の表面温度はたった8000度………一兆度ってのは太陽系なんて一瞬で蒸発するレベルだ」
多分自分も燃えるからまた別の力で炎を包んでいるのではないかとゴジラは推測している。しかし昔の人間はそんな存在にどうやって勝てたのだろう?
「まあ俺もゼットンも言っちまえば戦闘特化の怪獣……ノーバやシルバーは広域殲滅、ブラックは役立たずと怪獣娘にゃその特性が様々だ。ペガッサ星人ってのは戦闘系じゃねぇからな……必殺技を出し方じゃ出来ねぇじゃねぇ?」
「え、じゃあさっきまでの練習は……?」
「全くの無意味だな」
「む、無意味………」
ゴジラの言葉にズーンと落ち込むペガッサ。その顔の前に何やら黒い穴が現れる。
「おお!今、ダークゾーン発生の兆候があったぞ!」
「ほぇ?」
「もしかして、ペガッサがネガティブになると出現するのかもしれない」
「わ、私がネガティブに……」
「使いどころが限られる能力だな」
「よし、ならば。ペガッサの悪いところを指摘してネガティブにさせるぞ!」
「ふえぇ!?」
新手のいじめだろうか?
悪いところを指摘して嫌な気持ちにさせるなど嫌がらせ以外の何者でもない提案をするブラックに、シルバーは呆れたようにえー、と呟く。
「そりゃブラックちゃんならだらしな~いところとか、学習能力のな~いところとか、大して有名でもないのに~エゴサーチしてるとことか~……いっぱい言えるけどさぁ」
「うむ。よく観察しているな」
うんうん、と頷くブラック。全く応えていない。ある意味超ポジティブシッキングだ。
「ペガッサの悪いところねぇ………クソ真面目なとことか?」
「ええ~、そこは普通に良いところだよぉ~。ペガちゃんは普通に可愛いし、普通に真面目だし、それ以外特に普通だもん♪」
キラキラ光る笑顔を浮かべるシルバー。ペガッサは「普通、ですよね。これといって特徴ないですよね」と落ち込む。
「あれぇ!?何で!?えっと……なんか、ごめん」
「ん?待て、なんか──」
と、落ち込んだペガッサの身体から紫のオーラが溢れる。そして、上空に巨大な穴が開き周囲の空気を吸い込み始める。
「おお!」
「ペガちゃん、出たよ~!」
「へ?」
ビュウビュウと穴に向かって突風が吹き荒れる。公園にいた一般人達が慌てる中ペガッサ達は街頭に捕まる。
「でかしたぞ、ペガッサ参謀長!これでまた地球侵略に一歩近づいた───うおお!?」
と、仁王立ちして高笑いしていたブラックがダークゾーンに向かって吸い込まれ始めた。
「流っ石ブラックちゃん!自らダークゾーンの中に入って調査しようとするなんて!」
「どうみたって違うだろ~!止めろ~!」
「あれって縁掴めるのか……」
ダークゾーンの縁に捕まり吸い込まれるのを必死に耐えるブラックを見てゴジラがダークゾーンを観察する。
「取り敢えずノーバ、助けてやれ。それとペガッサ、解除しろ」
「で、でも消し方が解りません!」
「ソウルライザーで変身を解除して強制終了させろ~!」
「あ、そうか!」
「は、はい!ええっと………」
「早くしろぉぉぉ!ひぃぃ!………ん?」
ブラックはなんとか抵抗していると、ダークゾーンの中に何かがあるのに気がつく。
「何だ、あれは?」
「よし……変身解除!」
ブラックが手を伸ばすのとほぼ同時にペガッサがソウルライザーで変身を解除して、ダークゾーンが消える。吸引力が無くなり地面に向かって落下するブラック。ゴジラが激突する前に受け止める。
「だ、大丈夫ですか?わ、お姫様抱っこ……」
「ナイス、トラブルメイキング!」
「ん?なんだそのガキは……」
と、ゴジラは己の腕の中にいるブラックの胸で眠る幼い少女を見て首を傾げるゴジラ。
アンモナイトの貝殻を三つ合わせたような帽子、先端に向かうにつれ紫に変色していく桃色の髪。紫色のスクール水着に似た服に、同じ色の蟹の鋏のような手袋。
取り敢えずアジトに持って帰ることにした。
「んふ~、可愛い寝顔だねぇ」
「というか、この子誰なんですか?」
「ダークゾーンの中から連れてきた」
「ふぇ?」
ということはダークゾーンに吸い込んでしまっていた子供なのだろうか?
「調べてみたが、付近で子供の捜索願は出てないな……まだ気付かれてないのか、単純に怪獣娘だから捨てられたのか」
「え、この子怪獣娘なんですか?」
「………っ!間違いない……ソウルライザーで撮ってみろ」
ゴジラの言葉にペガッサが振り向きノーバのアホ毛がピンと立ちソウルライザーを持っていたペガッサに命じる。言われたとおりソウルライザーで撮ると情報が出て来た。
ガタノゾーアと言うらしい。その名に驚くブラック。ノーバによるとガタノゾーアとは邪神と詠われた怪獣。嘗て地球を滅ぼしかけた伝説の邪神らしい。その力はゼットンに匹敵、あるいは凌駕すると言っても過言ではない。
「つっても炎じゃなくて闇だからな。相性的には楽に勝てそうだ」
「ゴジラさんも有名な怪獣なんですか?」
「有名ではないな。いわゆる平行世界の怪獣だ……それも、所謂きっかけ………我が主ブラックスター曰……ツブラヤワールドなる単語で一括り出来る幾つもの世界において初めて生まれた怪獣……怪獣という存在の切っ掛け。つまり怪獣の始祖だそうだ」
「な、なんかすごそう」
「まあその個体は溶けて消えたらしいがな。ゴジラはあくまでそれの同族だ……」
「ただ、同族は同族でも進化の切っ掛けが二度の俺の方が強いだろうがな」
「あれ?でも平行世界?この世界の事じゃないんですよね?何で知ってるんですか?」
「俺、力だけじゃなくて記憶も引き継いでるから。んで、このガキどうする?警察に届けりゃ怪獣娘だからそのまま『GIRLS』に持ってかれるぞ」
そうなると『GIRLS』の戦力がまた強化される。いや、正義の組織が精神的不安定な子供を戦わせるとは思わないが……。それでもいざという時はあり得るかもしれない。
「それにしても、何でダークゾーンの中に居たんだろう?」
「それは恐らく、ペガッサ参謀長が闇の世界から最強の怪獣娘を召喚したんだろう」
「ふえぇ、わ、私が!?」
「すごーいペガちゃん、そんな力まで持ってるんだねぇ」
「やるな」
「素晴らしい働きだ、ペガッサ参謀長!」
「いや、普通に最初にダークゾーンを開いた時に吸い込んでたとかじゃねーの?」
何故か闇の世界から連れてきた前提で話す一同に呆れるゴジラチュッパチャプス(ヌカ・コーラ味:放射性物質入り)を食べようとして、薄目をあけたガタノゾーアがジッと此方をみているのに気付く。
「………食べ、たい……」
「いや、これは俺の……」
「食べたい」
「………今抜きのがねえんだ。我慢しろ」
「…………………」
「まあ、怪獣娘だし大丈夫か。ほらよ」
「はぷ」
悲しそうな顔で見上げてくるガタノゾーアにゴジラが折れチュッパチャプスを差し出す。パクリと口に含んだガタノゾーアはそのままジッとゴジラを見つめ、胡座をかいていたゴジラの足の上に座る。
「おお、ゴジラ懐かれたねぇ」
「お菓子で釣るとは、犯罪者め」
「ふむ。取り敢えず『GIRLS』に連れて行かれることはなさそうだ。このガタノゾーアがいれば、『GIRLS』の連中にも勝つことが出来る!」
「ペガちゃん頼りになる~」
「グッジョブだ」
「……は……はい!」
「ガリガリ………おかわり」
「飴は噛み砕くな。歯について虫歯になるだろ」
と、新しい飴を渡すゴジラ。ガタノゾーアがあー、と口を開けてきたので包みを取り口に放り込む。
「そういえばノーバちゃん、昨日お告げ聞いたんだって?」
「ん……」
「なになに~」
シルバーの言葉に頷いたノーバが早速昨日のお告げをメモしたであろう手帳を差し出してくる。
「『リアジュウ バクハツ シロ』」
「リアジュー?」
「リアルが充実している奴の略だ。最近じゃスマホの予測変換にも『リア充』と出て来るほどの造語だな」
コテン、首を傾げ帽子の重みで倒れそうになるガタノゾーアを支えながらゴジラがガタノゾーアの疑問に応える。
「は、なんだか今までのお告げと雰囲気が違うような」
「ただの寝言じゃねーのこれ」
「いや、これはお告げだ。世の中のカップル共を恐怖のズンドコに叩き落とせと言う意味に違いない!よし、このままガタノゾーアを連れて作戦開始だ!」
(………幼馴染が引く手数多の勧誘蹴って自分が立ち上げた組織(?)に入って同居までしてるブラックさんも十分リア充だと思うんだけどなぁ………)
「「ラジャー!」」
「あ、ら、ラジャー!」
ノーバとシルバーもやる気なのでペガッサも慌てて敬礼する。ゴジラは呆れたように肩をすくめた。
「銀色のレイダー!シルバーブルーメ!」
「赤きスナイパー、ノーバ」
「黒い破壊神、ゴジラ」
「漆黒のリーダー、ブラクラ指令!」
「五人目の
「五人!」
「揃って!」
「地球の」
「支配者!」
「
「「「「「我等、『BLACK STARS』!!」」」」」
「行くぞ!レッツ、侵略だ!」
「あーむ。もむもむもむ………」
「ガタちゃん俺の頭が食べ滓だらけなんだが」
ゴジラに肩車されながら買って貰ったお菓子を食べるガタノゾーア含める『BLACK STARS』は変身姿のまま池袋に来ていた。
「なんか、この格好で外を歩くの緊張しますね」
「大丈夫、すぐなれるよ」
「よし、この辺で良いだろう。この先を曲がったところにデートスポットの大きな通りがある。そこに集まるカップル達を邪神ガタノゾーアで驚かせて楽しいデートを悪夢に買えてやるのだ。リア充爆発しろぉ!」
なんかただの嫌がらせにしか見えないのだが。そんなペガッサの心境に気づかないブラックはゴジラの方からガタノゾーアを引き剥がす。
「長き封印から解き放たれ、今こそその力を示す時。さあ、暴れよガタノゾーア!」
「………やだ」
「な!?」
「ぷっ」
ブラックの言葉を拒絶したガタノゾーア。シルバーが思わず吹き出す中ガタノゾーアはゴジラの背中に隠れる。
「本当に最強最悪の怪獣なの~?」
「ソウルライザーのデータがそう言っているのだ!間違いあるまい」
「あ、菓子がつきた。ガタちゃん、俺はちょっと菓子を買ってくる。お姉ちゃん達の言うことを良く聞いておくんだぞ」
「解った。待ってる……」
と、ゴジラがガタノゾーアの頭を撫でてからその場から去った。ブラックはふむ、とその背中をみる。
「ゴジラの言うことは聞くんだな………」
「お菓子上げてたからでしょうか?」
「なるほど。お菓子か!」
「あ、私チョコ持ってるよ。ほら……」
と、袖口から10円チョコを取り出すシルバー。ゴジラが去った方向をみていたガタノゾーアが反応して振り返る。
「おお、反応した!」
「……食べ、たい」
「良いぞ。お前の力でこの辺の奴らを驚かしてくれたらな」
「解った………やる」
「いよぉし。いい子だ」
「はい、これ食べて頑張って~」
と、シルバーが渡してきたチョコを食べるガタノゾーア。帽子が巨大化して、二匹の蛇が出て来て石像をパクリと飲み込む。
「「おお~!」」
「あの小さなチョコ一つであれだけのパワーとは」
「あれたったの10円だよ」
「何!?よし、ならば高級チョコを与えまくるぞ!」
この場合金額より量が重要なのでは?と思ったが口に出さないペガッサであった。
「────フッ!」
「はっ。しゃらくせぇ!」
ピポポポと音を立てか球を放つ美少女に対して、青白い熱線を吐く黒衣の青年。
「私とは、相性が悪いんじゃ無かったの?」
「直接喰らえば嫌でも炉心に響くからな。お前やジャミラの攻撃は、当たれば天敵だ………が、1対1の状況じゃそんなとろくせぇ球あたるかよ」
昔ある人が言った。当たらなければどうという事は無い、と。少なくともゴジラに取ってゼットンの炎はその温度しか注意すべき点が無い。
最強の怪獣娘、ゼットン。『GIRLS』最強戦力ではあるが、タイマンなら『BLACK STARS』最強のゴジラに分がある。
偶然であった彼らは戦闘になり、今に至るわけだが戦いはゴジラが優勢。
「取り敢えずお前がいなけりゃあの馬鹿の侵略活動も捗───りはしないだろが、まあ……敵だし、暫く寝ててもらうぞ」
「貴方こそ、大人しく捕まってもらう」
と、お互い再び戦闘を再開しようとした時だった。
『ギュオオオオオオオオ!!!』
何処から聞こえてくる叫び声。振り向くと巨大な二匹の蛇と数本の触手が天に向かって伸びるのが見えた。
「……ガタちゃん?」
「あれは、何?」
「悪いな。急用が出来た……お前と遊ぶのは、また今度だ!」
「────ッ!?」
ゴジラが放ったけりをバリアーで防ごうとするゼットンだったがそのバリアーごと蹴り飛ばされる。直ぐに体勢を立て直そうとすると、目の前いっぱいを青白い光が包む。バリアーが一瞬で砕かれた。
「……よし、と……」
気絶し人間体に戻ったゼットンをベンチに寝かせたゴジラは池袋に向かって走る。
「うわ、何だこの状況………」
現場にたどり着くと触手に縛られた『GIRLS』のミクロス、レッドキング、ガッツ星人、アギラ、改造ベムスター、ゴモラと、締め付けられて嬉しそうなノーバに擽られているシルバー。そして触手の持ち主である帽子が途轍もない大きさになったガタノゾーア。
「ガタノゾーア!そんな変なのポイしろ!お菓子抜きだぞ!」
「変なのとは何だー!」
ゴジラの言葉に変なの扱いされた一人、ゴモラが叫ぶ。何故か味方のはずのノーバ達を締め付けたり擽ったりする割に『GIRLS』の面々は捕まえているだけのようだ。
「お菓子抜き、やだー………」
と、ゴジラに従い捕まえていた怪獣娘達をポイと放り捨てるガタノゾーア。
「い、今です!」
「んぅ……眩しい~……」
ゴジラの背後でペガッサが叫びソウルライザーを向ける。眩い光が放たれガタノゾーアの怪獣の力が抑えられ帽子が見る見る縮小していく。そして、動き疲れたのか路面に横になって眠るガタノゾーア。
「良くやったなペガッサ」
「ペガッサ、グッジョブだ!」
「ペガちゃんお疲れ様~。ブラックちゃん何にもしてないね~」
ゴジラはガタノゾーアを肩に担ぐととっさの機転を働かせたペガッサを労う。ノーバとシルバーもペガッサを労いつつブラックをディスった。
「指揮官が不甲斐ないと部下に逃げられるぞ」
「な、何だと!?ペガッサが逃げるなど───!」
「ありえないですよ」
ノーバの言葉に慌てるブラックだが、ペガッサ本人から否定される。
「皆さんだけで侵略なんて、あぶなかっしいですから……私がちゃんと、面倒見ていきます!」
満面の笑みを浮かべるペガッサに、『BLACK STARS』達も笑みを浮かべる。
「よく言ったぞペガッサ!これからも私について来たまえ、ナーッハッハッハッ!」
「楽しそうなところ悪いんだけど」
「悪いと思うならまず謝れ」
「え?あ、ご……ごめんなさい……」
「いや謝るないでよアギちゃん。んで、貴方達……ちょーっとお話聞かせてもらおうかな」
「嫌でも着いてきてもらうがな……」
と、その声に振り返ると此方を睨んでくる『GIRLS』の面々。さらにはピポポポと音がしてゼットンもやってきた。
「リベンジマッチ……」
「や、やばくない?」
「こうなったら仕方ない………戦略的撤退だー!」
一同わき目もふらず逃げ出した。当然追ってくる『GIRLS』のメンバー。流石に町中で逃げるもの相手には遠距離攻撃が使えないのかビームなどは飛んでこない。
ペガッサは、人知れず笑みを浮かべる。大変なことになったが、やっと新しい自分が見つかりそうだと……。
登場人物
『BLACK STARS』
ブラック指令(本名:不明)
愛称:ブラック
ゴジラの幼馴染。『BLACK STARS』の漆黒のリーダー。
ブラックスターという謎存在からお告げをもらいそれを元に地球侵略を行うとするが何時も失敗している。が、それは侵略の糧になると反省しない。無職のため金がなく、ボロアパートを自分の名義で借りているが家賃を払うのはゴジラ。その人間性故に尊敬されることは少ないが人は集まる。
ゴジラ(本名:黒慈ユウラ)
愛称:ゴジラ
ブラックの幼馴染。『BLACK STARS』の黒い破壊神。
本編と異なり成人しているため酒や煙草を嗜む。酔ったことはない。
『BLACK STARS』の筆頭(唯一)の稼ぎ頭にして最強戦力。三人の面倒を見る面倒見がよい性格。
マグマの中も遊泳できるほど頑丈だが体温が1200度を越えると炉心が融解して熱暴走起こすという弱点がある。
人間嫌いだが良い奴もいると知っているので無意味に暴れることはしない。ただし貸した金を返さないような奴は臓器を売り払うらしい。たまに埋める。
幾つかの指定暴力団や裏組織にスカウトされたが全て断る。金稼ぎのためにたまに仕事を受けることはある模様。大好物はチュッパチャプス(ヌカ・コーラ味:放射性物質入り)
前世の記憶があるらしく、ゴジラと名乗っているのはその前世の記憶らしい。なお、ソウルライザーのデータ内には存在しない怪獣。
掃除洗濯料理などの家事が得意かつ宝くじを買えば最低でも数千万当たる一家に一人欲しい存在。
シルバーブルーメ(本名:不明)
愛称:シルバー
『BLACK STARS』の銀色のレイダー。
『BLACK STARS』で食費をもっとも消費する。ゴジラ達とは同居していないことから別の家があるらしい。性格はドSでブラックの泣き喚く姿を盗撮するのが趣味。何でも溶かす液体を放てるがゴジラには効果がない。
ノーバ(本名:不明)
愛称:ノーバ
『BLACK STARS』の赤きスナイパー。
『BLACK STARS』でもっとも電気代を消費するゲーマー。元特殊部隊出身らしい。
以前メンバーの能力の把握する際山でゴジラに赤いガスを放ち暴走させた過去がある。その時のことを思い出すと今でも震える。肉体的苦痛に快感を感じるドM。
ペガッサ星人(本名:平賀サツキ)
愛称:ペガッサ
『BLACK STARS』の五人目の
現役女子高生。『BLACK STARS』に攫われ仲間にされたが、組織の実情を知って警戒する必要は少ないと判断。そのまま所属した。
参謀長という役目を賜りブラックスターからのお告げを解読する係り。真面目な性格で悪の組織の敗北要因を研究した。自分がいないと危なっかしいからと面倒見たがる駄目男製造機。将来彼女が悪い男に引っかからないか心配である。(まあその場合ゴジラがその男を消し飛ばすだろうが……)
ガタノゾーア(本名:不明)
愛称:ガタちゃん
ペガッサのダークゾーンの中に居た怪獣娘。今のところ捜索願は出ていない。
眠たがりで食いしん坊。最初にお菓子をくれたゴジラに雛鳥のごとく懐いた。その正体は邪神ガタノゾーアと呼ばれる強力な怪獣の力を継ぐ怪獣娘で、ウィスキーボンボンっで酔っぱらうほどアルコールに弱く酔うと力の制御を忘れ暴れる。大好物はチュッパチャプス(ヌカ・コーラ味:放射性物質入り)。原作と異なりダークゾーンに封印されることなくアジトに居候中。定位置はゴジラの肩。
『GIRLS』
ゼットン(本名:不明)
『GIRLS』最強の怪獣娘。無表情の謎多き美少女。
無表情だがピースサインの自撮り写真を送るなど案外ノリが軽い模様。一兆度の炎使うため戦いが長引くとゴジラに暴走の危険を与える天敵。が、1対1なら短期で決着をつけられるためそこまで驚異ではなくゴジラに敗れた。ゴジラにリベンジマッチするのが目標。
その他『GIRLS』メンバー
シルバーに服溶かされたりノーバの幻覚ガス喰らったりゴジラに気絶させられたりガタちゃんに縛られたりした
その他
バイト先のおじさん
ゴジラがストレスに耐えきれず三馬鹿の誰か、もしくは全員を殺してしまった時に山まで車を貸してくれると約束したおじさん。
以上、設定の『BLACK STARSの破壊神』、近日独立更新予定
そして今日はエイプリルフール