ゴジラは朝ご飯をパンドンと共に作る。
「朝は重いの止めとけ。魚なんかを網で焼いて油を少し落としたのとかが良いかもな……」
「は、はい……あ、味噌汁は……」
「どれ……ん、出汁が取れてるな。そろそろ具を入れるぞ」
「わかりました……でも、何で一緒に入れないんですか?」
「煮込み時間によって硬さが変わるからな。小さい子なら噛み易くて良いんだろうが末妹のオロチはむしろ噛み応えが有るの好きみたいだし」
と、言いながら入れる順番を指示してくれるゴジラ。その間焼けた魚をひっくり返し反対の面を焼く。
匂いに連れられたのかオロチが目を擦りながらやってきた。
「ごはんー?」
「まだ出来てない。これで我慢しろ……」
そう言ってゴジラは魚と一緒に焼いていた茶色くなった骨を渡す。
ボリボリと煎餅の様に食い取り敢えず満足したのかリビングに向かった。
朝飯も終わり、更に今日はシフトも入っておらずフリーのゴジラは子供達と遊ぶ事にした。
といっても近くの川で泳ぐリトル達を見守りながら横になっているだけだが。
冷蔵庫から持ってきた缶ジュースを飲みながら欠伸をする。
「……釣り竿でも持ってくりゃ良かった…………寝るか」
危険が迫れば解るし……と、欠伸をしていると不意に歌声が聞こえてきた。やたら甲高い声で頭痛を覚えるレベルの歌だ。
リトル達も顔をしかめゾーアに至っては気絶している。と、シン・ゴジラが謎の怪音波を攻撃と判断したのか音の発生源に向かって熱線を放った。
「あっつぁ!?」
そして轟ッ!と竜巻が発生してバッサーが出てきた。見た感じ直接当たったわけではなさそうだがビル群を纏めて両断する高熱だ。近くを通過した熱風にやられたのか僅かに赤くなった顔を押さえてゴロゴロ転がっていたので川の水を掛けて冷やしてやった。
「あー熱かった……ってくっさぁ!?」
「騒がしい奴だな。ほら、ファ○リーズ」
「…………心が痛い」
ジャッパが使っていた川の水故臭いに敏感なバッサーにはきつかったらしいので川から上がった後のシン・ゴジラやリトルに使ってやる予定だった消臭剤を吹きかけてやると何故か落ち込まれた。
「で、さっきの喧しくて不快な音は何だ?拾い食いでもして腹を壊したか?」
「女性に対してなんたる発言……!」
「冗談だ。オロチの姉妹だから念の為な……」
「あー……オロチちゃん、この前辛い目に遭ったんだから拾い食いしなくなれば良いんですけどねぇ……」
と、苦笑するバッサー。
「でもオロチちゃんが食べてお腹壊すのって初めてだったんですよねー」
「こっちも俺らの細胞を取り込んで腹壊すだけってのも初めてだな……効かない奴は居たが」
「まあゴジラさん大分チートみたいですからね……お母さんも私より強い、なんて言ってましたし」
「お前の歌もチートだと思うぞ?気絶するかと思ったし……」
「…………私、そんなに下手?」
「ああ」
どこかののけ者のいない島のカフェに入り浸っている鳥類レベルの酷さだった。
「そんな事無いもん!ちゃんと聞いてて!」
「仕方ねーな。おーい、シン、リトル、ジャッパ、ゾーア、耳塞いでろ」
「むー!」
その対応に頬を膨らませたバッサーは見返してやろうと大きく息を吸う。
「わた~しは~バッサぁ~♪オーブを探してる~♪どこにいるの~こんどこそ~ブッコロ───」
「うるせぇ!」
先程より間近で聴かされゴジラも耐えられなかったのか思わず叫ぶ。
何と言う酷い歌だ。怪獣ランドの島周辺で流したら怪獣が嫌う臭いだとか磁気だとか面倒な制御をする必要が無くなりそうだ。
「じゃ、じゃあゴジラさん歌ってみてくださいよ」
「俺?まあ、お前よりはましな歌を歌えると思うけど…………」
と、息を吸うゴジラ。どんな歌が出るのかとニヤリと笑うバッサー。しかし……
「~~~♪」
「………………」
思いの外上手い歌が流れた。その歌声に気付いたリトルやシン・ゴジラ達が上がってきてゴジラの膝に頭を乗せて眠り始め、ジャッパも二人の頭の隙間から頭を乗せる。
ゾーアもデカイ帽子をゴジラの背中に乗せスヤスヤ寝息を立て始めた。
「……そ、その歌は?」
「未希から習ったんだ。リトルの好きな歌なんだとよ…………正確には歌じゃなくて植物の化石が纏っていた電磁波を音にしたものだとか何だとか……まあ詳しくは知らん」
「う、上手いですね……」
「そうか?男の声だし、正直眠ってくれるとは思わなかったな……」
と、リトル達の頭をに撫でてやるゴジラ。
「むにゃむにゃ……パパ……」
「……ジャッパちゃん、スッゴく懐いてますね」
「俺等は臭い平気だからな…………」
「それに比べて私は……お姉ちゃんなのになぁ…………頑張って慣れようとしたんですけど逆に敏感になっちゃって………」
恥ずかしげに頬を掻くバッサー。ゴジラはそんなバッサーの頭を撫でる。
「ふぁ!?な、何を…………!?」
「ん?良い子だからな、頭を撫でてる……」
「いや、あの……恥ずかしいと言うか……て言うか何で……」
「ジャッパの臭い、苦手なのに慣れようとしたんだろ?それで敏感になっちまって、落ち込むのはそれでも慣れてやりたいって思ってんだろ?」
「…………うん」
「よしよし良い子だな……♪」
「──────ッ!」
ボフ!と赤くなるバッサー。何でこんな事になっているのだろうか?頭が混乱してきた…………と、不意に敏感になってしまったバッサーの嗅覚がジャッパの刺激臭以外の変わった臭いを嗅ぎ取る。
「…………この臭い、お酒…………?」
転がっている空き缶を取るとジュースにも見えるラベルの酒の缶が落ちてた。
「よーしよひ……いいこらなぁバッサー……」
「ふわわ!?や、やめ……!ってくさ!ジャッパちゃんがくっさぁ!?」
抱き寄せられ頭を撫でられるバッサー。しかし現在ゴジラの脚にはジャッパ達がおり、臭いがダイレクトに来る。やばい、意識が朦朧として…………
「…………ん?何やってんだバッサー」
と、突然ゴジラが突然
アルコールに適応したのだろう。パッと離れるゴジラ。助かったような残念なような…………